JP2008248039A - 高分子結晶体およびその製造方法 - Google Patents

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正道 彦坂
Kaori Watanabe
香織 渡辺
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Abstract

【課題】本発明は、機械的強度、耐熱性、透明性等の特性が優れた高分子結晶体、特にPPをはじめとする汎用プラスチックにおいて機械的強度、耐熱性、透明性等の特性が優れた高分子結晶体、特に高分子結晶体のバルク成形体を提供する。
【解決手段】本発明にかかる高分子結晶体は、高分子の結晶および核剤を含有する高分子結晶体であって、下記の(I)、(II)および(III)の条件、または(I)、(II)および(III’)の条件を満たす。(I)0.1〜0.5重量%の核剤を含有する。(II)高分子結晶体の結晶化度が70%以上である。(III)上記高分子の結晶のサイズが300nm以下である。(III’)上記高分子の結晶の数密度が40μm−3以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、機械的強度、耐熱性、透明性等の特性が優れた高分子結晶体およびその製造方法に関するものである。より好ましくは、本発明は上記優れた特性を備えた高分子結晶体のバルク成形体およびその製造方法に関するものである。
ポリエチレン(以下「PE」という)やポリプロピレン(以下「PP」という)やポリスチレン(以下「PS」という)やポリ塩化ビニル(以下「PVC」という)等をはじめとする、いわゆる「汎用プラスチック」は、100円以下/kgと非常に安価であるだけではなく、成形が容易で、金属およびセラミックスに比べて重さが数分の一と軽量であるゆえに、袋や各種包装、各種容器、シート類等の多様な生活用品材料や自動車、電気などの工業部品や日用品、雑貨用等の材料として、よく利用されている。
しかしながら、当該汎用プラスチックは、機械的強度が不十分で耐熱性が低い等の欠点を有している。そのため、自動車等の機械製品や、電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられる材料に対して要求される十分な特性を上記汎用プラスチックは有していないために、その適用範囲が制限されているというのが現状である。例えばPEの場合、軟化温度が通常90℃程度である。また比較的耐熱性が高いとされるPPであっても、通常130℃程度で軟化してしまう。またPPは、ポリカーボネート(以下「PC」という)、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)やPSなどに比して透明性が不十分であるので、光学用材料やボトルや透明容器としては使用できないという欠点を有している。
一方、PET、PC、フッ素樹脂(テフロン(登録商標)等)やナイロン、ポリメチルペンテン、ポリオキシメチレン、アクリル樹脂等のいわゆる「エンジニアリングプラスチック」は、機械的強度と耐熱性や透明性等に優れており、通常150℃では軟化しない。よって、エンジニアリングプラスチックは、自動車や機械製品および電気製品をはじめとする高性能が要求される各種工業製品用材料や光学用材料として利用されている。しかしエンジニアリングプラスチックは、数百円/kg〜数千円/kgと非常に高価であること、およびモノマーリサイクルが困難または不可能なために環境負荷が大変大きいこと等の重大な欠点をエンジニアリングプラスチックは有している。
したがって、汎用プラスチックの機械的強度、耐熱性、および透明性等の材料特性を大幅に改善することによって、当該汎用プラスチックがエンジニアリングプラスチックの代替、さらには金属材料の代替として利用可能となれば、高分子製や金属製の各種工業製品や生活用品のコストを大幅に削減し、軽量化により大幅に省エネルギーし操作性を向上させることが可能になる。例えば、PETは現在、清涼飲料水をはじめとする飲料等のボトルとして利用されているが、かかるPETをPPに置き換えることが可能になれば、大幅にボトルのコストを削減することが可能となる。また、PETはモノマーリサイクルを行うことは可能である。しかしPETのモノマーリサイクルは容易ではないために、使用済みのPETボトルは裁断された後に、衣料用繊維等やフィルム等の低品質な用途に1、2度再利用された後に廃棄されているというのが現状である。一方、PPはモノマーリサイクルが容易なため、完全なリサクルが実現可能となり、石油などの化石燃料の消費および二酸化炭素(CO2)の発生を抑えることができるというメリットもある。
上記のように、汎用プラスチックの機械的強度、耐熱性、および透明性等の特性を向上させてエンジニアリングプラスチックや金属の代替として汎用プラスチックを利用するためには、PPやPEにおける結晶の割合(結晶化度)を著しく高める、より好ましくはPPやPEの非晶質を殆ど含まない結晶だけからなる結晶体を作製することが求められる。特に、PPはPEに比べて機械的強度が高く、また耐熱性も高いという利点を有しているために、非常に期待され、数%という高い年産増加率を維持している重要な高分子である。
ここで高分子の結晶性を向上させる方法としては、高分子の融液の冷却速度を低下させる方法が知られている。しかし当該方法では、結晶化度の増加が全く不十分なばかりでなく、製品の生産性が著しく低下したり、結晶粒径が粗大化して機械的強度が低下したりするという欠点がある。またその他の方法としては、高分子の融液を高圧下で冷却して結晶化度を増大させるという方法が提案されている。しかし、当該方法は、高分子の融液を数百気圧以上に加圧する必要があり、理論的には可能であるが、工業規模生産では製造装置の設計が困難な上に、生産コストが高くなってしまう。よって、上記方法は、現実的に困難である。また、高分子の結晶性を向上させるその他の方法としては、核剤を高分子融液に添加する方法が知られている。しかし現行の核剤を添加する方法では、結晶化度はせいぜい40〜50%であり、十分であるとはいえない。したがって、汎用プラスチック等の高分子において結晶化度を飛躍的に向上させる方法、および高分子の結晶体を生産する方法は、現在のところ完成されていない。
ところで、これまでの多くの研究により、融液中の分子鎖が無秩序な形態(例えば、糸鞠状(ランダムコイル))で存在する高分子の融液(「等方融液」という)を、せん断流動場において結晶化させることによって、流れに沿って配向した太さ数μmの細い繊維状の特徴的な結晶形態(shish)と、それに串刺しにされた十nm厚の薄板状結晶と非晶とがサンドイッチ状に積層した形態(kebab)とが、融液中にまばらに生成することが明らかにされている(非特許文献1参照)。上記の状態は、「shish-kebab(シシ−ケバブ = 焼き鳥の”串”と“肉”との意)」と称される。
shish-kebab生成初期にはshishのみがまばらに生成する。shishの構造は分子鎖が伸び切って結晶化した「伸びきり鎖結晶(Extended chain crystal:ECC)」であり(非特許文献5参照)、kebabの結晶部分の構造は、分子鎖が薄板状結晶の表面で折りたたんでいる「折りたたみ鎖結晶(folded chain crystal:FCC)」であると考えられている。shish-kebabの分子論的生成メカニズムは、速度論的研究に基づく研究例が無く、明らかではなかった。折りたたみ鎖結晶は、高分子結晶で最も広く見られる薄板状結晶(ラメラ結晶という)である。また、金型へ射出成形した場合に、表面に”skin”と呼ばれる数百μm厚の薄い結晶性皮膜と、その内部にcoreと呼ばれる折りたたみ鎖結晶と非晶との「積層構造(積層ラメラ構造という)」の集合体とが形成されることは良く知られている(非特許文献6参照)。skinはshish-kebabからなっていると考えられているが、shishはまばらにしか存在していないことが確認されている。skin構造の生成メカニズムは、速度論的研究に基づく研究例が無く解明されていない。
本発明者らは、shishの生成メカニズムを初めて速度論的に研究し、融液中の一部の分子鎖が、異物界面において、界面との「トポロジー的相互作用」のために伸長して互いに液晶的に配向秩序を持った融液(「配向融液」または「Oriented melt」という)になるために、shishが融液の一部に生成する、というメカニズムを明らかにした(例えば非特許文献2および3参照)。ここで、「トポロジー的相互作用」とは「ひも状の高分子鎖が絡まり合っているためにお互いに引っ張り合う」効果のことであり、高分子固有の相互作用として公知のことである。本発明者らは、高分子のトポロジー的結晶化メカニズム理論を初めて提唱し、伸びきり鎖結晶と折りたたみ鎖結晶の起源を解明した。この理論は「滑り拡散理論」と呼ばれ、世界的に認められている(非特許文献7参照)。
また本発明者らは、低せん断速度=0.01〜0.1s−1のせん断流動結晶化において発見した、「渦巻き結晶(spiralite)」の生成メカニズム解明から、せん断結晶化において、分子鎖が伸長されて配向融液が発生し、核生成および成長速度が著しく加速される、という普遍的メカニズムを理論的に提唱した(非特許文献4参照)。
よって、高分子融液全体を配向融液にすることができれば、高分子の結晶化が起こり易くなり、結晶化度を高めることができるといえる。ここで高分子融液全体が配向融液となったものを「バルクの配向融液」という。さらに高分子融液全体を配向融液の状態のままで結晶化することができれば、高分子の大部分の分子鎖が配向した構造を有する結晶体(これをバルクの「高分子配向結晶体」と呼ぶ)を生産し得ることが期待される。この場合にはさらに核生成が著しく促進され、結晶サイズをナノメートルオーダーにすることが可能となり、高い透明性を有し、飛躍的に機械的強度と耐熱性が増大した高分子を得ることができるということも期待される。
本発明者らはこれまでに、臨界伸長ひずみ速度を決定する手段を確立した。そして、決定された臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で高分子融液を伸長することによって、当該高分子融液を配向融液状態にし、さらに当該高分子融液の配向融液状態を維持しつつ冷却することによって、高分子配向結晶体を得ることに成功している。上記方法では、核剤を用いることなく結晶化度の高い高分子配向結晶体を得ることができる。
A.Keller, M.J.Machin, J.Macromol.Sci., Phys., B2, 501 (1968) S. Yamazaki, M.Hikosaka et al, Polymer, 46, 2005, 1675-1684. S. Yamazaki, M.Hikosaka et al, Polymer, 46, 2005, 1685-1692. K.Watanabe et al, Macromolecules 39(4), 2006, 1515-1524. B. Wunderlich, T. Arakawa, J. Polym. Sci., 2, 3697-3706(1964) 藤山 光美、「ポリプロピレン射出成形物のスキン層の構造」、高分子論文集,32(7), PP411-417(1975) M.Hikosaka, Polymer 1987 28 1257-1257
本発明は、上記本発明者らが確立した高分子結晶体の製造方法において、高分子の結晶化効率を向上させることによって、高分子結晶体における結晶化度の向上を図ることを目的とした。さらには、ある一定以上の厚さを有する高分子結晶体のバルク成形体を得ることを、本発明は目的とした。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、高分子融液に微細な核剤(ナノ核剤)を所定量配合させ、それを臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で高分子融液を伸長し冷却することによって、高分子結晶体のバルク成形体を得ることができるということを発見し本発明を完成させるに至った。なお、下記のごとく高結晶化度、かつ結晶サイズが極めて小さい(数密度が極めて高い)高分子結晶体のバルク成形体はこれまでに見出されていない。
すなわち本発明は、高分子の結晶および核剤を含有する高分子結晶体であって、下記の(I)、(II)および(III)の条件を満たすことを特徴とする高分子結晶体を包含する。(I)0.1〜0.5重量%の核剤を含有する;
(II)高分子結晶体の結晶化度が70%以上である;
(III)上記高分子の結晶のサイズが300nm以下である。
なお本発明にかかる高分子結晶体は、高分子の結晶のサイズが100nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。
ここで結晶サイズD−3=数密度ν(μm−3)であるため、本発明にかかる高分子結晶体は、高分子の結晶および核剤を含有する高分子結晶体であって、
下記の(I)、(II)および(III’)の条件を満たすものであると表現することができる。
(I)0.1〜0.5重量%の核剤を含有する;
(II)高分子結晶体の結晶化度が70%以上である;
(III’)上記高分子の結晶の数密度が40μm−3以上である。
なお、上記高分子の結晶の数密度は103μm−3以上であることが好ましく、105μm−3以上であることがさらに好ましい。
また上記本発明にかかる高分子結晶体は、0.15〜0.4重量%の核剤を含有するものであることが好ましい。
また本発明にかかる高分子結晶体は、その結晶化度が80%以上であることが好ましく、さらに結晶化度が90%以上であることが好ましい。
上記のごとく本発明にかかる高分子結晶体は、その結晶化度が70%以上ときわめて高く、かつ結晶サイズが300nm以下と極めて微細であり、結晶の数密度が102μm−3以上と高密度である。したがって、上記高分子結晶体は、機械的強度、耐熱性、透明性等の特性が優れたものである。
なお、上記高分子は、汎用プラスチック、特にポリプロピレンであることが好ましい。汎用プラスチックは安価であるために、これに高い機械的強度などの物性を与えることによって、金属等の代替物として利用する極めて意義は大きい。またPPは完全なモノマーリサイクルが可能であるため、環境に対しても極めてやさしい材料となり得る。
また本発明にかかる高分子結晶体は、数平均粒子径が0.1μm以下の核剤が0.1〜0.5重量%含有する高分子融液を、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長し、当該高分子融液を配向融液状態にする配向融液化工程と、当該高分子融液の配向融液状態を維持しつつ冷却結晶化する急冷結晶化工程とを含む製造方法により製造されるものであってもよい。また上記製造方法は、高分子融液の臨界伸長ひずみ速度を決定する、臨界伸長ひずみ速度決定工程を含む方法であってもよい。ここで上記臨界伸長ひずみ速度決定工程は、半径x0および厚さ2z0であるディスク状の高分子融液を透明板で挟み、当該高分子融液を冷却して過冷却状態にし、当該高分子融液を透明板によって、厚さ方向に一定速度vで押しつぶし、当該高分子融液が配向結晶となる臨界点半径xを計測し、ε=αx*2、ただしα=v/(2x0 20)である、式から臨界伸長ひずみ速度 εを算出する工程であってもよい。当該高分子融液が配向結晶となる臨界点の厚さ2zを計測し、ε=(v/2)z*−1である、式から臨界伸長ひずみ速度 εを算出する工程であってもよい。
また、上記臨界伸長ひずみ速度決定工程は、中心距離x’0および厚さ2z0であり、幅一定の板状の高分子融液を透明板で挟み、当該高分子融液を冷却して過冷却状態にし、当該高分子融液を透明板によって、厚さ方向に一定速度vで押しつぶし、当該高分子融液が配向結晶となる臨界点中心距離x’を計測し、ε=αx’、ただしα=v/(x’00)である、式から臨界伸長ひずみ速度 εを算出することを特徴とする工程であってもよい。
上記のとおり、本発明者らがこれまでに確立した方法において、数平均粒子径が0.1μm以下の微細な核剤(「ナノ核剤」という)が所定量(0.1〜0.5重量%)含有する高分子融液を用いることによって、さらに高分子の結晶化効率が向上し、結晶化度の高い高分子結晶体を容易に得ることができる。また、上記方法によれば、ある一定上の厚さを持った高分子結晶体のバルク成形体を得ることができる。これまでに、(II)高分子結晶体の結晶化度が70%以上且つ(III)上記高分子の結晶のサイズが300nm以下である高分子結晶体のバルク成形体、または(II)高分子結晶体の結晶化度が70%以上且つ
(III’)上記高分子の結晶の数密度が40μm−3以上である高分子結晶体のバルク成形体は得られていない。
このとき、上記高分子融液は、汎用プラスチック融液であることが好ましく、ポリプロピレン融液であることがさらに好ましく、アイソタクティックポリプロピレン融液であることがさらに好ましい。汎用プラスチックの高分子配向結晶体、およびポリプロピレンの高分子配向結晶体は、耐熱性、機械的強度等の特性が向上しており、また結晶分子のサイズがナノメートルオーダーであるために透明性が高い。ここで「機械的強度」は破断強度、剛性および靭性等、総合的な強度を意味する。またメチル基が同一方向に配列しているアイソタクティックポリプロピレンであれば、さらに結晶性が向上するために、上記の物性の向上が著しいため好ましいといえる。それゆえ、これまで機械的強度や耐熱性等が不十分である等の理由により適用できなかった、自動車および電気製品をはじめとする各種工業部品等にポリプロピレンをはじめとする汎用プラスチックを適用することができ、当該工業部品等のコストを大幅に低下することができるという効果を奏する。また、既述の通りPPはモノマーリサイクルが容易なため化石燃料の使用量を減少させ、世界的課題であるCO2削減に貢献することができる。
また本発明は、上記高分子結晶体の押出し成形体、射出成形体、ブロー成形体をも包含する。ここで、「押し出し成形体」とは自体公知の押出し成形法によって得られた成形体、「射出成形体」とは自体公知の射出成形によって得られた成形体、「ブロー成形体」とは自体公知のブロー成形によって得られた成形体のことを意味する。
また本発明は、数平均粒子径が0.1μm以下の核剤が0.1〜0.5重量%含有する高分子融液を、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長し、当該高分子融液を配向融液状態にする配向融液化工程と、当該高分子融液の配向融液状態を維持しつつ冷却結晶化する急冷結晶化工程とを含む高分子結晶体の製造方法をも包含する。なお上記高分子融液は、汎用プラスチック融液であることが好ましく、ポリプロピレン融液であることがさらに好ましく、アイソタクティックポリプロピレン融液であることがさらに好ましい。
上記のように本発明によれば、機械的強度、耐熱性、透明性等の特性が優れた高分子結晶体、特にバルク成形体を提供することができる。それゆえ、汎用プラスチックをエンジニアリングプラスチックの代替として利用することができ、高分子製の各種工業製品のコストを大幅に削減することができるという効果を奏する。また、高分子を金属と同等の強度にすることが可能であるため、当該高分子結晶体のバルク成形体を金属の代替として利用が可能となるという効果を奏する。金属の代替が出来れば比重が金属の1/8と大変軽量なので、例えば乗り物用内装・外装材として使用すれば乗り物の重量を数分の一に軽量化でき燃費を大幅に軽減できる。よって、本発明は大幅な省エネルギーに貢献し得る。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
<1.本発明にかかる高分子結晶体>
本発明にかかる高分子結晶体は、高分子の結晶および核剤を含有する高分子結晶体であって、下記の(I)、(II)および(III)の条件を満たすことを特徴とするものである。(I)0.1〜0.5重量%の核剤を含有する;
(II)高分子結晶体の結晶化度が70%以上である;
(III)上記高分子の結晶のサイズが300nm以下である。
ここで結晶サイズD−3=数密度ν(μm−3)であるため、本発明にかかる高分子結晶体は、高分子の結晶および核剤を含有する高分子結晶体であって、下記の(I)、(II)および(III’)の条件を満たすものであると表現することもできる。
(I)0.1〜0.5重量%の核剤を含有する;
(II)高分子結晶体の結晶化度が70%以上である;
(III’)上記高分子の結晶の数密度が40μm−3以上である。
上記高分子は特に限定されるものではなく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等のいわゆる汎用プラスチックであっても、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、テフロン(登録商標)などのフッ素樹脂、等のいわゆるエンジニアリングプラスチックであってもよい。安価な汎用プラスチックの機械的性質、耐熱性、透明性等の特性を改善することによってエンジニアリングプラスチックの代替として利用することが可能となれば、樹脂製の工業部品等のコストを大幅に削減することができる。よって、汎用プラスチックを本発明の製造方法に適用することが好ましい。さらに汎用プラスチックのうちPPが好ましい。PPは他の汎用性プラスチックに比して、耐熱性が高く、機械的強度が高いという好ましい特性を有しているからである。またPPのうち、アイソタクティックポリプロピレン(以下、適宜「iPP」という)が特に好ましい。アイソタクティックポリプロピレンは、メチル基が同一方向に配列した構造を有しているために結晶性がよく、高分子配向結晶体が得られやすいからである。また得られた高分子配向結晶体の結晶分子が通常のPPに比して微細となり易く、より透明性が高い高分子配向結晶体を取得することができる。また上記高分子は、単一の高分子からなるものであっても、複数種の高分子の混合物からなるものであってもよい。例えば、PP、PE、ポリブテンー1等を適宜組み合わせることが可能である。複数種の高分子を組み合わせることによって、一つの高分子の物性上の欠点を他の高分子の物性により補うことができる。高分子の混合比率は、目的に応じて適宜設定すればよい。
また本発明における上記高分子は以下のように特定され得る。すなわち上記高分子は、結晶性樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ステレオブロックポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン重合体、エチレン/プロピレンブロックまたはランダム共重合体等のα−オレフイン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の熱可塑性直鎖ポリエステル系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド等のポリスルフィド系ポリマー;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸系ポリマー;ポリヘキサメチレンアジパミド等の直鎖ポリアミド系ポリマー;シンジオタクチックポリスチレン等の結晶性のポリスチレン系ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル酸、メタクリル酸、ナイロン等の縮合系ポリマー等が挙げられる。
上記結晶性樹脂の中では、本発明で用いられる核剤の使用効果が顕著であるポリオレフィン系樹脂が好適であり、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンブロックまたはランダム共重合体、エチレン以外のα−オレフィン/プロピレンブロックまたはランダム共重合体およびこれらのプロピレン系重合体と他のα−オレフイン重合体との混合物等のポリプロピレン系樹脂、およびポリエチレンが特に好適である。
また、本発明にかかる高分子結晶体は、数平均粒子径が0.1μm以下(さらに好ましくは50nm以下)の微細な核剤(「ナノ核剤」という)を含むものである。上記数平均粒子径の条件を満たす核剤を用いることで、核剤の表面積が大きくなり、造核効果が十分に得ることができる。よって高分子結晶体の結晶化度が顕著に向上し、機械的強度、耐熱性、透明性等の特性が優れた高分子結晶体を得ることができる。よって本発明によれば、ある一定以上の厚みを有する高分子結晶体のバルク成形体を得ることができる。ここでバルク体とは厚さが1mm以上の成形体のことをいう。ここで成形体における「厚さ」とは、当該成形体において最も薄い部分の大きさのことをいう。なおバルク成形体には、シート状のものも含まれる。
なお、上記数平均粒径は下記数式(1)により定義される。
Figure 2008248039
(数式中、xは粒径、f(x)は粒径の数分布関数である。)
数平均粒子径は、「Polymer Journal, Vol. 39, No.1, pp55-64(2007)」の記載にしたがって測定することができる。簡単には、上記数平均粒子径は、小角X線散乱法(SAXS法)、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等により核剤の粒子径を測定することにより求めることができる。なお「粒子径」は、粒子の形状が実質的に円形状である場合はその円の直径が意図され、実質的に楕円形状である場合はその楕円の長径が意図され、実質的に正方形状である場合はその正方形の辺の長さが意図され、実質的に長方形状である場合はその長方形の長辺の長さが意図される。
ここで、一般的に「核剤」とは、それが含まれることによって高分子結晶体の結晶化度を向上させることができる物質のことをいう。また、核剤として用いられる物質は、高分子の結晶化温度において溶融しない(または溶融し難い)物質である必要がある。本発明にかかる高分子結晶体には、核剤を含有している。このように核剤を含有することによって、バルク成形体においても結晶粒子が微細化されるとともに、結晶化速度が向上して高速成形が可能になる。核剤としては、下記一般式(1)に示される化合物からなる核剤を好ましく用いることができる。
Figure 2008248039
(式中、Rは酸素、硫黄または炭素数1〜10の炭化水素基であり、RおよびRは水素または炭素数1〜10の炭化水素基であり、RおよびRは同種であっても異種であってもよく、R同士、R同士またはRとRとが結合して環状となっていてもよく、Mは1〜3価の金属原子であり、nは1〜3の整数である。)
具体的には、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-i-プロピル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-チオビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-チオビス-(4-t-オクチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-t- ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム- ビス-(2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート)、マグネシウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4'-ジメチル-5,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-ビフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[(4,4'-ジメチル-6,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-ビフェニル)フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-m-ブチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-エチルフェニル)フォスフェート、カリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フオスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム-トリス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェル)フォスフェート]およびアルミニウム-トリス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、およびこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
上記のうち、特にナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートが特に好ましい。
また本発明においては、下記一般式(2)に示される化合物からなる核剤も好ましく用いることができる。
Figure 2008248039
(式中、Rは水素または炭素数1〜10の炭化水素基であり、Mは1〜3価の金属原子であり、nは1〜3の整数である。)
具体的には、ナトリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-エチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-i-プロピルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-t-オクチルフェニル)フォスフェート、カリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、マグネシウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-ビス(4-t-プチルフェニル)フォスフェート、アルミニウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、およびこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
上記のうち、ナトリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェートが特に好ましい。
また本発明においては、下記一般式(3)に示される化合物からなる核剤も好ましく用いることができる。
Figure 2008248039
(式中、Rは水素または炭素数1〜10の炭化水素基である。)
具体的には、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2.4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-i-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-s-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-t-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(2',4'-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3-ベンジリデン-2-4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトールおよび1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトール、並びにこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
上記のうちでは、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトール、およびこれらの2種類以上の混合物が特に好ましい。
さらに核剤としては、芳香族カルボン酸あるいは脂肪族カルボン酸の金属塩が挙げられ、例えば、安息香酸アルミニウム塩、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩やアジピン酸ナトリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、ピローレカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。また後述するタルクなどの無機化合物も核剤として用いることができる。
本発明の高分子結晶体を調製する際には、上記核剤を高分子結晶体に対して、0.1〜0.5重量%、好ましくは0.15〜0.4重量%、さらに好ましくは0.2〜0.3重量%の量で用いることが望ましい。核剤の含有量が上記の範囲であることで、隣り合う核剤間の距離をナノメートルサイズの制御することが可能となり、当該核剤を核として形成される高分子の結晶サイズもナノメートルサイズに制御することが可能となる。
上記ナノ核剤の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、「Polymer Journal, Vol. 39, No.1, pp55-64(2007)」の記載にしたがって製造することができる。簡単には、上記ナノ核剤はスプレードライ法、溶液結晶化法により製造することが可能である。
高分子結晶体における核剤の含有量は、核剤を分析し得る公知の分析方法を用いることによって求めることができる。
また本発明にかかる高分子結晶体は、その結晶化度が70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ここで「高分子結晶体の結晶化度」とは、高分子結晶体に含まれる結晶体の割合のことを意味する。高分子結晶体の結晶化度は、公知の方法によって検討することができる。例えば、水とエチルアルコールを用いた密度法により,結晶化度を決定し得る(L.E.Alexander著,「高分子のX線回折(上)」,化学同人,1973,p.171を参照のこと)。高分子結晶体の結晶化度χは、下記数式(2)で求められる。
Figure 2008248039
上式中ρは試料の結晶密度を示し、ρaは非晶密度を示し、ρは結晶密度を示す。またρaおよびρは、文献値が利用可能である(Qirk R.P. and Alsamarriaie M.A.A.、Awiley-interscience publication, New York, Polymer Handbook, 1989を参照のこと)。例えばPolymer Handbookによれば、iPPの結晶密度および非晶密度は、それぞれρa=0.855(g/cm3)およびρ=0.936(g/cm3)である。
また本発明にかかる高分子結晶体は、高分子結晶体に含まれる結晶のサイズが300nm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。上記結晶のサイズは公知のX線散乱法によって検討することができる。X線散乱法は、例えば小角X線散乱法(SAXS法)により行い得る。X線散乱法を行い得る実験施設は、例えば、広島大学産学連携センターVBL設置のX線小角散乱装置や、(財)高輝度光科学研究センター(JASRI)SPring-8、ビームライン BL40B2 や、高エネルギー科学研究所(KEK)Photon Factory(PF)、ビームライン BL10C等が挙げられる。また検出に使用されるX線の波長は、例えば0.1nmまたは0.15nmが挙げられる。検出器としては、イメージング・プレート(Imaging Plate)や位置敏感検出器(PSPC)などが利用可能である。
またSAXS法における、小角(q)Å−1−X線散乱強度(I)曲線のピークは、平均サイズDの微結晶がランダムにお互いに詰まっている場合の微結晶間最近接距離(=結晶サイズD)に相当するため(参考文献:A.Guinier著、「X線結晶学の理論と実際」、理学電機(株)、p513、1967、)、結晶サイズDはBraggの式から求められる。
Braggの式: D=2π÷q
また本発明にかかる高分子結晶体は、高分子結晶体に含まれる結晶の上記結晶の数密度が40μm−3以上、好ましくは103μm−3以上、さらに好ましくは105μm−3以上である。上記数密度νは下式により求めることができる。
(式) 数密度ν(μm−3)=結晶サイズD−3
Hall-Petch’s law によれば、結晶の強度は結晶サイズDの平方根の逆数に比例して増大することが知られているため、本発明にかかる高分子結晶体の強度が著しく向上していることは容易に理解され得る。例えば、結晶サイズDが1μmから10nmになった場合、√100=10倍の強度となる。
本発明にかかる高分子結晶体は、高分子の結晶を含むものであればよく、結晶のみならず非晶質(アモルファス)が含まれていてもよい。
また本発明にかかる高分子結晶体には、その他の添加剤が含まれていてもよい。本発明にかかる高分子結晶体に含まれていてもよいその他の添加剤としては、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックスなどを挙げることができる。
また、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを用いることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(=3,5‐ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン)、ステアリル(3,3-ジメチル-4-ヒドロキシベンジル)チオグリコレート、ステアリル-β-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェノール)プロピオネート、ジステアリル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、2,4,6-トリス(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシベンジルチオ)-1,3,5-トリアジン、ジステアリル(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-tert-ブチルベンジル)マロネート、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)p-クレゾール]、ビス[3,5-ビス[4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシド]グリコールエステル、4,4'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチル)ベンジルイソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、2-オクチルチオ-4,6-ジ(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル)フェノキシ-1,3,5-トリアジン、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)などのフェノール類および4,4'-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)の炭酸オリゴエステル(例えば、重合度2〜10)などの多価フェノール炭酸オリゴエステル類が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−、ジミリスチル−、ジステアリル−などのジアルキルチオジプロピオネートおよびブチル−、オクチル−、ラウリル−、ステアリル−などのアルキルチオプロピオン酸の多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート)のエステル(例えば、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート)が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチル-ジフエニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)-4,4'-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)ジホスファイト、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ホスファイト、トリス(モノ・ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、水素化-4,4'-イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)]・1,6-ヘキサンジオールジホスファイト、フェニル・4,4'-イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス[4,4'-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェノール)]ホスファイト、フェニル・ジイソデシルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)、トリス(1,3-ジ-ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、4,4'-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェノール)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10-ジ-ヒドロ-9-オキサ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられる。
さらに他の酸化防止剤として、6-ヒドロキシクロマン誘導体例えば、α、β、γ、δの各種トコフェロールあるいはこれらの混合物、2-(4-メチル-ペンタ-3-エニル)-6-ヒドロキシクロマンの2,5-ジメチル置換体、2,5,8-トリメチル置換体、2,5,7,8-テトラメチル置換体、2,2,7-トリメチル-5-tert-ブチル-6-ヒドロキシクロマン、2,2,5-トリメチル-7-tert-ブチル-6-ヒドロキシクロマン、2,2,5-トリメチル-6-tert-ブチル-6-ヒドロキシクロマン、2,2'-ジメチル-5-tert-ブチル-6-ヒドロキシクロマンなどを用いることもできる。
また本発明にかかる高分子結晶体は、
一般式(4) MAl(OH)2x+3y−2z(A)・aH2O ・・・(4)
(MはMg、CaまたはZnであり、Aは水酸基以外のアニオンであり、x、y、zは正数、aは0または正数である)で示される複化合物、例えば、
MgAl(OH)16CO・4HO、
MgAl(OH)14CO・4HO、
Mg10Al(OH)22(CO・4HO、
MgAl(OH)16HPO・4H2O、
CaAl(OH)16CO・4HO、
ZnAl(OH)16CO・4HO、
ZnAl(OH)16SO・4HO、
MgAl(OH)16SO・4HOなどを塩酸吸収剤として含有していてもよい。
また本発明にかかる高分子結晶体に含まれ得る光安定剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン-2,2'-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンなどのヒドロキシベンゾフェノン類、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール類、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類、2,2'-チオビス(4-tert-オクチルフェノール)Ni塩、[2,2'-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)]-n-ブチルアミンNi、(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホン酸モノエチルエステルNi塩などのニッケル化合物類、α-シアノ-β-メチル-β-(p-メトキシフェニル)アクリル酸メチルなどの置換アクリロニトリル類およびN'-2-エチルフェニル-N-エトキシ-5-tert-ブチルフェニルシュウ酸ジアミド、N-2-エチルフェニル-N'-2-エトキシフェニルシュウ酸ジアミドなどのシュウ酸ジアニリド類、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)セバシエート、ポリ[{(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ}-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル{4-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン]、2-(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジル)エタノールとコハク酸ジメチルとの縮合物などのヒンダードアミン化合物が挙げられる。
また本発明にかかる高分子結晶体に含まれ得る滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの脂肪族炭化水素類、カプリン類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸などの高級脂肪酸類またはこれらの金属塩類(例えば、リチウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩)、パルミチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族アルコール類、カプロン類アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリル酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどの脂肪族アミド類、脂肪族とアルコールとのエステル類、フルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、フルオロアルキルスルホン酸金属塩などのフッ素化合物類が挙げられる。
上記のような添加剤は、高分子結晶体100重量部に対して0.0001〜10重量部の量で用いられる。
また本発明にかかる高分子結晶体は、無機充填材を含有していてもよい。無機充填材として具体的には、微粉末タルク、カオリナイト、焼成クレー、バイロフィライト、セリサイト、ウォラスナイトなどの天然珪酸または珪酸塩、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、酸化亜鉛、亜鉛華、酸化マグネシウムなどの酸化物、硫酸バリウム、含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸などの合成珪酸または珪酸塩などの粉末状充填材、マイカなどのフレーク状充填材、グラスファイバー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Fiber)、ゾノトライト、チタン酸カリウム、エレスタダイトなどの繊維状充填材、 ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状充填材などを用いることができる。
本発明にかかる高分子結晶体には、これらのうちでもタルク、炭酸カルシウム、グラスファイバー、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが配合されていてもよく、通常平均粒径0.01〜10μmの微粉末タルクが好ましく用いられる。
なおタルクの平均粒径は、液相沈降方法によって測定することができる。
また本発明にかかる高分子結晶体に用いられる無機充填材特にタルクは、無処理であっても予め表面処理されていてもよい。この表面処理に例としては、具体的には、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、樹脂酸、ポリエチレングリコールなどの処理剤を用いる化学的または物理的処理が挙げられる。このような表面処理が施されたタルクを用いると、ウェルド強度、塗装性、成形加工性にも優れた高分子結晶体を得ることができる。このような無機充填材は、2種類以上併用してもよい。
また本発明にかかる高分子結晶体には、このような無機充填材とともに、ハイスチレン類、リグニン、再ゴムなどの有機充填材を用いることもできる。
本発明にかかる高分子結晶体は、上記のような添加剤、充填材などを含有することによって、物性バランス、耐久性、塗装性、印刷性、耐傷付き性および成形加工性などが一層向上された成形体を形成することができる。
本発明にかかる高分子結晶体に、添加剤、無機充填材などの各成分を、本発明に開示した高分子結晶体の製造方法を利用して混練することにより、本発明の高分子結晶体を製造することができる。
<2.本発明にかかる高分子結晶体の製造方法>
上記の本発明にかかる高分子結晶体の製造方法の一態様として、本発明者らが独自に開発した高分子配向結晶体の製造方法を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明にかかる高分子結晶体の製造方法の一態様は、数平均粒子径が0.1μm以下の核剤が0.1〜0.5重量%含有する高分子融液(「ナノ核剤高分子融液」という)を、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長し、当該高分子融液を配向融液状態にする配向融液化工程と、当該高分子融液の配向融液状態を維持しつつ冷却結晶化する急冷結晶化工程とを含む方法である。また上記製造方法は、ナノ核剤高分子融液の臨界伸長ひずみ速度を決定する、臨界伸長ひずみ速度決定工程を含む方法であってもよい。ここで上記臨界伸長ひずみ速度決定工程は、半径x0および厚さ2z0であるディスク状のナノ核剤高分子融液を透明板で挟み、当該高分子融液を冷却して過冷却状態にし、当該高分子融液を透明板によって、厚さ方向に一定速度vで押しつぶし、当該高分子融液が配向結晶となる臨界点半径xを計測し、ε=αx*2、ただしα=v/(2x0 20)である、式から臨界伸長ひずみ速度 εを算出する工程であってもよい。当該高分子融液が配向結晶となる臨界点の厚さ2zを計測し、ε=(v/2)z*−1である、式から臨界伸長ひずみ速度 εを算出する工程であってもよい。
また、上記臨界伸長ひずみ速度決定工程は、中心距離x’0および厚さ2z0であり、幅一定の板状のナノ核剤高分子融液を透明板で挟み、当該高分子融液を冷却して過冷却状態にし、当該高分子融液を透明板によって、厚さ方向に一定速度vで押しつぶし、当該高分子融液が配向結晶となる臨界点中心距離x’を計測し、ε=αx’、ただしα=v/(x’00)である、式から臨界伸長ひずみ速度 εを算出することを特徴とする工程であってもよい。
既述のナノ核剤を所定量含む高分子の配向融液を、配向融液の状態を維持したまま結晶化することによって、ナノ核剤を含まない配向融液の場合に比して核生成効率が向上する。これにより、高分子の結晶化効率が向上し、結晶化度の高い高分子結晶体を容易に得ることができる。また、上記方法によれば、ある一定上の厚さを持った高分子結晶体のバルク成形体を得ることができる。
通常、高分子融液中に存在する高分子の分子鎖は、無秩序で等方的な形態(例えば、糸鞠状(ランダムコイル))で存在している。このような状態の高分子融液のことを、「等方融液」または「Isotropic melt」という。当該等方融液に対して、せん断、伸長等の外場が加わる場合には、高分子の分子鎖が伸長されるが、熱力学的法則によりエントロピー緩和が生じて分子鎖がもとの無秩序な状態に戻ろうとする。ある一定のひずみ速度以上の外場が加わると、分子鎖がもとの無秩序な状態に戻ろうとするエントロピー緩和に打ち勝って、分子鎖が高い配向秩序を持った融液(「配向融液」または「Oriented melt」という)になる。このようにエントロピー緩和に打ち勝つことができ、高分子の等方融液を配向融液にし得るひずみ速度のことを「臨界ひずみ速度」という。特に高分子融液を伸長してバルクの配向融液にし得る、臨界ひずみ速度のことを「臨界伸長ひずみ速度」という。
したがって、高分子配向結晶体を製造するためには、まず高分子融液を、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長する必要がある。しかしこれまで、当該臨界伸長ひずみ速度を決定する方法および手段が確立されていなかった。以下に、高分子配向結晶体の製造方法に含まれることが好ましい、高分子融液の臨界伸長ひずみ速度を決定し得る「臨界伸長ひずみ速度決定工程」について説明する。なお、高分子配向結晶体の製造方法には、当該「臨界伸長ひずみ速度決定工程」が含まれている態様であっても、含まれていない態様であってもよい。
ナノ核剤高分子融液は、数平均粒子径が0.1μm以下の核剤を高分子融液中分散させることによって得られる。その具体的方法は特に限定されるものではなく、ナノ核剤および高分子の材料に応じて好ましい方法を適宜採用し得る。以下に、「Polymer Journal, Vol. 39, No.1, pp55-64(2007)」の記載にしたがって、高分子としてポリオレフィン樹脂を用いた場合のナノ核剤高分子融液の取得方法を示す。ただし本発明はこれに限定されるものではない。
アルコール系溶媒に、「1.本発明にかかる高分子結晶体」の項で示した有機酸金属塩を溶解し、さらに芳香族系溶媒を添加して加熱し、さらにポリオレフィン樹脂を加えて溶解した後、冷却して有機酸金属塩(=ナノ核剤)を析出させる。有機酸金属塩はアルコール系溶媒に対し、低温でより高い溶解性を示すのでポリオレフィン樹脂を加熱溶解する温度で飽和濃度に近い濃度であることが好ましい。飽和濃度より濃度があまり高いと有機酸金属塩の数平均粒子径が0.1μmを越えてしまいナノ核剤とならない。上記アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第三ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが挙げられる。ポリオレフィン樹脂を芳香族系溶媒に溶解すべくより高温に加熱でき、かつ有機酸金属塩の溶解性にも優れるため、ブタノールが特に好ましい。他方、芳香族系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンや工業用の混合溶媒などが用いられる。ポリオレフィン樹脂の溶解性、脱溶媒の容易性、安全性の観点から、キシレンが特に好ましい。
(2−1:臨界伸長ひずみ速度決定工程)
本発明者らは、臨界伸長ひずみ速度を決定し得る、Compression型結晶化装置(以下、適宜「結晶化装置」という)を独自に開発した。かかる結晶化装置によって、高分子融液の伸長結晶化を光学顕微鏡で直接観察できるようになった。当該結晶化装置の構成を、図1の概略図を用いて説明する。当該結晶化装置10は、一対の透明板(上部透明板1および下部透明板2)で構成されており、当該透明板は温度制御手段(図示せず)によって所望の温度に制御可能となっている。透明板は、当該透明板で挟まれている高分子の試料を光学顕微鏡で観察できる程度の透明性を有する板状体であれば、それを構成する素材については特に限定されるものではない。ただし、透明板は高温のナノ核剤高分子融液を挟む必要があるため、耐熱性が高い素材であることが好ましく、例えば、ガラス製、石英製、サファイヤ、ダイヤモンドであることが好ましい。また透明板の表面は、平面であることが好ましい。
次に当該結晶化装置10を用いて、ナノ核剤高分子融液の臨界伸長ひずみ速度を決定する方法について説明する。まず下部透明板2の上に、ディスク状のナノ核剤高分子融液(試料)3’を載置し、さらに上部透明板1と下部透明板2で当該試料を挟み、偏光顕微鏡にセットし、結晶化過程を直接観察する。次に試料を急冷(冷却速度:30℃/min以上)して、ナノ核剤高分子融液(試料)を一定の温度(結晶化温度)にして、過冷却状態に保持する(過冷却度ΔT:20K以上)。次に上部透明板1を下部透明板2側へ、一定速度(速度:0〜70mm/s以上)で移動させることによって、ナノ核剤高分子融液(試料)3’を厚さ方向へ一定速度で押しつぶす(なお、この時、下部透明板2側を上部透明板1へ移動させてもよい)。結晶化したナノ核剤高分子融液(試料)3のうち、ナノ核剤高分子融液が配向融液となり、高分子配向結晶体となったかどうかは、例えば、上記結晶サイズDを測定し、それが300nm以下であれば高分子配向結晶体となっていると判断でき、300nmを超えていれば高分子配向結晶体となっていないと判断できる。換言すれば、結晶サイズDの検討結果により、ナノ核剤高分子融液が配向結晶となる臨界点が決定される。
図1を用いて、ナノ核剤高分子融液の臨界伸長ひずみ速度を決定する方法を、さらに具体的に説明する。図1において破線で示すナノ核剤高分子融液3’は、透明板(上部透明板1および下部透明板2)で、押しつぶされる前のナノ核剤高分子融液を示している。一方、同図中、実線で示すナノ核剤高分子融液3は、透明板(上部透明板1および下部透明板2)で、押しつぶされた後のナノ核剤高分子融液を示している。なお、同図中、破線で示す上部透明板1’は、高分子試料3’をつぶす前の上部透明板およびその位置を示している。またディスク状の高分子試料の中心点を同図中「0」で示した。
なお、下部透明板2から上部透明板1に向かう方向を厚さ方向(図1におけるz軸方向)とし、上部透明板1と下部透明板2とに挟まれているディスク状のナノ核剤高分子融液3について両透明板間の距離をディスク状のナノ核剤高分子融液の厚さとする。また、ナノ核剤高分子融液3よりなるディスク、すなわち円盤の中心からの距離を半径とする。
つぶされる前のナノ核剤高分子融液3’は(半径、厚さ)=(x0、2z0)であるとし、当該ナノ核剤高分子融液3’を一定速度vで押しつぶした場合における、伸長ひずみ速度 ε(x)は、
ε(x)=(dx/dt)/x・・・(i)
と定義できる。ただし、ナノ核剤高分子融液3は(半径、厚さ)=(x、2z)で、tは時間である。
数式(i)、v=dz/dt・・・(ii)、および
体積保存:πx2z=πx0 20・・・(iii)から、
ε(x)は、
ε(x)=αx2・・・(iv)である。
ただしα=v/(2z00 2)を表す。
よって、ディスク状のナノ核剤高分子融液の半径xにおける伸長ひずみ速度 ε(x)は、数式(iv)によって計算することができる。
したがって、当該結晶化装置を用いて上述のようにして、ナノ核剤高分子融液が配向結晶となる臨界点(「x」)を結晶サイズDの検討結果から見出し、数式(iv)に代入するによって、臨界点における伸長ひずみ速度 ε(x)、すなわち臨界伸長ひずみ速度 εを決定することができる。
また上記数式(i)、(ii)、(iii)からε(z)は、
ε(z)=(v/2)z−1・・・(v)である。
よって、ディスク状のナノ核剤高分子融液の厚さ2zにおける伸長ひずみ速度 ε(z)は、数式(v)によって計算することができる。
したがって、当該結晶化装置を用いて上述のようにして、ナノ核剤高分子融液が配向結晶となる臨界点(「z」)を結晶サイズDの検討結果から見出し、数式(v)に代入するによって、臨界点における伸長ひずみ速度 ε(z)、すなわち臨界伸長ひずみ速度 εを決定することができる。
なお上記で説示したCompression型結晶化装置においては、平板である下部透明板2上に、ナノ核剤高分子融液をディスク状に載置して試験を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、板状のナノ高分子融液を用いても同様に臨界伸長ひずみ速度を決定することができる。板状のナノ高分子融液を用いて臨界伸長ひずみ速度を決定する際に使用するCompression型結晶化装置の一例を図2に示した。図2(a)は当該結晶化装置の側面図であり、図2(b)は同結晶化装置の上面図である。なお、図1に示すCompression型結晶化装置と共通する部材については、共通の部材番号を付し、その説明は省略する。図2に示す結晶化装置は、幅方向の長さ(2y0)が一定である方形の凹部が下部透明板2上に設けられている。また当該凹部と嵌合する凸部が上部透明板1上に設けられている。前記凹部にナノ核剤高分子融液を載置し、前記凸部で、当該ナノ核剤高分子融液を押しつぶしてもよい。
なお、下部透明板から上部透明板に向かう方向を厚さ方向(図2におけるz軸方向)とし、上部透明板と下部透明板とに挟まれている板状のナノ核剤高分子融液について、両透明板間の距離を板状のナノ核剤高分子融液の厚さとする。また上部透明板と下部透明板で押しつぶした時にナノ核剤高分子融液が伸長する方向を長手方向(図2におけるx軸方向)、当該長手方向および厚さ方向に直交する方向を幅方向(図2におけるy軸方向)とする。また、板状のナノ核剤高分子融液の長手方向の中点から、当該ナノ核剤高分子融液の長手方向の一端までの距離を中心距離とする。
押しつぶされる前のナノ核剤高分子融液3’は(中心距離、厚さ)=(x’0、2z0)であるとし、押しつぶされた後のナノ核剤高分子融液3は、(中心距離、厚さ)=(x’、2z)であるとすると、当該ナノ核剤高分子融液3’を一定速度vで押しつぶした場合における中心距離x’における伸長ひずみ速度 ε(x’)は、
ε(x’)=(dx’/dt)/x’・・・(i’)
と定義できる。
ただし、ナノ核剤高分子融液3は(中心距離、厚さ)=(x’、2z)で、tは時間である。
数式(i)、v=dz/dt・・・(ii)、および
体積保存:x’yz=x’000・・・(iii’)、y=y0から、
ε(x’)は、
ε(x’)=αx’2・・・(iv’)である。
ただしα=v/(2x’0 20)を表す。
よって、板状のナノ核剤高分子融液の中心距離x’における伸長ひずみ速度 ε(x’)は、数式(iv’)によって計算することができる。
したがって、上述のようにして、ナノ核剤高分子融液が配向結晶となる臨界点中心距離(「x’」)を見出し、数式(iv’)に代入するによって、臨界点における伸長ひずみ速度 ε(x’)、すなわち臨界伸長ひずみ速度 εを決定することができる。
以上説示したとおり、板状のナノ核剤高分子融液を用いた場合は、ナノ核剤高分子融液の試料を1次元的に伸長することができるため、上記数式(iv’)を用いて、各ひずみ速度における高分子の結晶化挙動を観察することができ、容易に臨界伸長ひずみ速度 εを決定することができる。
(2−2:配向融液化工程)
次に、高分子配向結晶体の製造方法に含まれる「配向融液化工程」について説明する。当該「配向融液化工程」は、上記「臨界伸長ひずみ速度 ε決定工程」において決定した臨界伸長ひずみ速度 εの条件をもとにして、ナノ核剤高分子融液を当該臨界伸長ひずみ速度 ε以上のひずみ速度で伸長し、当該ナノ核剤高分子融液を配向融液状態にする工程である。
当該工程では、ナノ核剤高分子融液を臨界伸長ひずみ速度 ε以上のひずみ速度で伸長する工程であれば、その伸長方法、伸長するための手段等は特に限定されるものではない。当該配向融液化工程の一例を、図3および4を用いて説明する。ただし本発明はこれに限定されるものではない。図3および4は、ナノ核剤高分子融液のシート成形やフィルム成形などの押出し成形、射出成形、ブロー成形等に用いられるダイの側断面図である。かかるダイを用いてナノ核剤高分子融液を吐出または射出する際、または、それに引き続くロールや金型においてナノ核剤高分子融液中の分子鎖を伸長し、臨界伸長ひずみ速度 ε以上にすることによって、ナノ核剤高分子融液を配向融液にすることができる。
図3および4に示すダイを用いて、ダイ内において「長さΔx、幅Δy、厚さΔz」であった板状(四角柱状)のナノ核剤高分子融液21が、ダイから吐出または射出後、またはロールまたは金型などで変形を受けた後に、結晶化する直前において、「長さΔx、幅Δy、厚さΔz」の板状(四角柱状)のナノ核剤高分子融液22に、時間Δtかけて圧縮または伸長変形されたとすると、ナノ核剤高分子融液の伸長ひずみ速度は、
式ε(β)=(β−1)÷Δt・・・(vi)で算出できる。
ただしβは圧縮比であり、β=(ΔyΔz)÷(ΔyΔz)である。
ここで「長さ」とは、四角柱状のナノ核剤高分子融液の面であって、ナノ核剤高分子融液を射出する方向に面している面を底面および上面とすると、底面と上面との距離のことをいう。また方形である底面また上面のある一辺の長さを「幅」とし、上記一辺と直交する一辺の長さを「厚さ」という。
したがって数式(vi)により求められる伸長ひずみ速度 εが、臨界伸長ひずみ速度以上となるように、ダイ内部のナノ核剤高分子融液の「幅Δy、厚さΔz」と、吐出または射出後、若しくはロールまたは金型による変形後のナノ核剤高分子融液の「幅Δy、厚さΔz」、ならびにΔt(圧縮変形所要時間)を適宜選択して、ナノ核剤高分子融液の「圧縮変形」を行えば配向融液を調製することができる。
(2−3:急冷結晶化工程)
高分子配向結晶体の製造方法に含まれる「急冷結晶化工程」について説明する。当該「急冷結晶化工程」は、ナノ核剤高分子融液の配向融液状態を維持しつつ冷却する工程である。当該急冷結晶化工程によって、高分子の配向融液に含まれる分子鎖同士の会合による核生成および成長が起こることによる結晶化、およびナノ核剤を核とする結晶化が起こり、高分子結晶体が生成する。
配向融液状態の高分子融液を放置すると、熱力学的法則にしたがってエントロピーが増大し、元の等方融液の状態に戻る。したがって配向融液状態を維持したまま結晶化するためには、できるだけ急速に冷却結晶化することが好ましいといえる。また高分子融液を冷却する時の雰囲気の温度(すなわち「過冷却度ΔT」)は、高分子の融点より低い温度であれば特に限定されるものではない。特に最適な過冷却度は、高分子の種類により著しく異なるために適宜最適な条件を採用すればよい。例えばポリプロピレンの場合は、ΔT=20〜60℃が好ましい。上記の好ましい範囲以下の過冷却度であると、結晶化速度が著しく遅くなり、高分子配向結晶体の収率が低下してしまう場合がある。一方上記好ましい範囲以上の過冷却度であると、分子鎖の拡散が遅くなるために結晶化速度が低下してしまう場合がある。
また冷却の方法は、気相で行われても、液相で行われてもよい。冷却の方法は、高分子の製造において通常行なわれている方法および手段、またはその改変法を適宜選択の上、採用すればよい。本発明にかかる高分子配向結晶体の製造方法に用いられる装置(一例)の模式図を図5に示す。当該模式図を用いて、本工程をより具体的説明すれば、例えばダイの絞り孔32から吐出または射出したナノ核剤高分子配向融液31を、所望の冷却温度となっている急冷結晶化部33と接触させることが挙げられる。これによって、該急冷結晶化部33以降においてナノ核剤高分子配向結晶体34が生成することとなる。また絞り孔32から射出したナノ核剤高分子配向融液31を所望の冷却温度の水等の液体に流入して冷却してもよい。また絞り孔32から射出したナノ核剤高分子配向融液31を所望の冷却温度の雰囲気に曝してもよい。また絞り孔32から射出したナノ核剤高分子配向融液31を所望の冷却温度であるローラーと接触させることにより冷却してもよい。またダイ33から金型へナノ核剤高分子配向融液31を射出して成形加工を行う場合には、当該金型を所望の冷却温度で冷却すればよい。
なお、高分子配向結晶体の製造方法に用いられる装置のその他の例を図6に示す。図6に示された装置は、図5に示された装置にナノ核剤高分子配向融液31を引き抜くためのローラー35が備えられたものである。かかるローラー35は、既述のごとくナノ核剤高分子配向融液31を所望の冷却温度に冷却するために用いられてもよい。
上記のようにして得られた高分子配向結晶体は、これまで得ることができなかった高分子配向結晶体のバルク成形体である。上記高分子配向結晶体のバルク成形体は、ほぼ全体が稠密なshishから出来ている点において、従来の配向結晶材料である「まばらに生成したshishとそれをとりまく積層ラメラ構造であるkebabを含む不完全な配向結晶材料」や、本発明者らが発見した「渦巻き結晶(spiralite)」のごとく、ごく一部が配向結晶となったそれとは異なるものである。
上記のようにして製造された高分子配向結晶体の利用としては、例えば、以下のものが挙げられる。PPの高分子配向結晶体は、自動車用内装材の大部分(90%以上)として利用が可能である。またPPの高分子配向結晶体は、高強度および高靱性を活かして金属の代替として自動車、航空機、ロケット、電車、船舶、バイク、および自転車など乗り物の内装・外装材、または工作機械用の部品や機械部材として利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、高剛性・軽量を活かしてスピーカーやマイク用振動板として利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、高透明性を活かしてPCの代替としてCDやDVDとして利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、高透明性を活かして液晶やプラズマディスプレイ用マスクなどとして利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、高透明性を活かしてディスポーザブル注射器、点滴用器具、薬品容器などの医療用品または機器として利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、高透明性を活かしてガラスの代替として各種瓶、グラス、家庭用小型水槽から業務用大型水槽として利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、高透明性を活かしてコンタクトレンズ,めがね用レンズ,各種光学レンズとして利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、高透明性を活かしてビル用・住宅用ガラスとして利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、高剛性や高靱性や軽量を活かしてスキー靴、スキー板、ボード、ラケット、各種ネット、テント、リュックサックなどの広範なスポーツ用品として利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、高剛性や高靱性や軽量を活かして、針、はさみ、ミシンなどの手芸用品や装飾用品として利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、ショーウインドウやディスプレイ部品などの商業用品として利用が可能である。また同高分子配向結晶体は、ブランコ,シーソー,ジェットコースターなどの公園、遊園地、テーマパーク用器具または設備として利用が可能である。その他、同高分子配向結晶体は、電気・電子・情報機器、または時計等精密機器の部品の構造材や箱材;ファイル、フォルダ、筆箱、筆記用具、はさみなどの文房具;包丁、ボール、などの料理用具;食品、お菓子、タバコなどの包装材;食品容器、食器、割り箸、楊枝;家庭用家具、オフィス家具などの家具;ビルや住宅用の建材、内装材、および外装材;道路または橋梁用の材料;玩具用の材料;超強力繊維や糸;漁業用漁具、漁網、つり用具;農業用具、農業用品;レジ袋,ゴミ袋;各種パイプ;園芸用品;および運輸用コンテナ、パレット、箱;等として利用が可能である。
他方、PEの高分子配向結晶体は、超強力繊維や超強力糸として利用が可能である。
他方、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子配向結晶体は、高い強誘電や圧電特性を活かして、高精度超音波素子高速スィッチング素子、高能率スピーカー、または高感度マイクロフォンなどとして利用が可能である。
他方、PETの高分子配向結晶体は200℃程度の高耐熱性が要求される工業用材料として利用が可能である。
以上のように、本発明によれば高分子結晶体を生産することができる。よって、汎用プラスチックをエンジニアリングプラスチックの代替として利用することができ、高分子製の各種工業製品のコストを大幅に削減することができるという効果を奏する。また、高分子を金属と同等の強度にすることが可能であるため、当該高分子結晶体を金属の代替として利用が可能となるという効果を奏する。
それゆえ本発明は、高分子製部品を取り扱う種々の産業のみならず金属製部品を取り扱う産業全般において利用が可能である。
高分子融液の臨界伸長ひずみ速度の決定に用いられる、Compression型結晶化装置を示す模式図である。 (a)はCompression型結晶化装置の側面図であり、(b)は同結晶化装置の上面図である。 本発明にかかる高分子配向結晶体の製造方法に使用するダイ(一例)のy軸方向から見た側断面図である。 本発明にかかる高分子配向結晶体の製造方法に使用するダイ(一例)のz軸方向から見た側断面図である。 本発明にかかる高分子配向結晶体の製造方法に用いられる装置(一例)の模式図である。 本発明にかかる高分子配向結晶体の製造方法に用いられる装置(その他の例)の模式図である。
符号の説明
1、1’ 上部透明板
2、2’ 下部透明板
3 ナノ核剤高分子融液
10 Compression型結晶化装置

Claims (23)

  1. 高分子の結晶および核剤を含有する高分子結晶体であって、
    下記の(I)、(II)および(III)の条件を満たすことを特徴とする高分子結晶体:
    (I)0.1〜0.5重量%の核剤を含有する;
    (II)高分子結晶体の結晶化度が70%以上である;
    (III)上記高分子の結晶のサイズが300nm以下である。
  2. 高分子の結晶および核剤を含有する高分子結晶体であって、
    下記の(I)、(II)および(III’)の条件を満たすことを特徴とする高分子結晶体:
    (I)0.1〜0.5重量%の核剤を含有する;
    (II)高分子結晶体の結晶化度が70%以上である;
    (III’)上記高分子の結晶の数密度が40μm−3以上である。
  3. 0.15〜0.4重量%の核剤を含有する、請求項1または2に記載の高分子結晶体。
  4. 高分子結晶体の結晶化度が80%以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高分子結晶体。
  5. 高分子結晶体の結晶化度が90%以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高分子結晶体。
  6. 上記高分子の結晶のサイズが100nm以下である、請求項1、3、4または5に記載の高分子結晶体。
  7. 上記高分子の結晶のサイズが20nm以下である、請求項1、3、4、または5に記載の高分子結晶体。
  8. 上記高分子の結晶の数密度が103μm−3以上である、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の高分子結晶体。
  9. 上記高分子の結晶の数密度が105μm−3以上である、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の高分子結晶体。
  10. 上記高分子が汎用プラスチックである、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の高分子結晶体。
  11. 上記高分子がポリプロピレンである、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の高分子結晶体。
  12. 上記高分子結晶体は、
    数平均粒子径が0.1μm以下の核剤が0.1〜0.5重量%含有する高分子融液を、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長し、当該高分子融液を配向融液状態にする配向融液化工程と、当該高分子融液の配向融液状態を維持しつつ冷却結晶化する急冷結晶化工程とを含む製造方法により製造される、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の高分子結晶体。
  13. 上記高分子融液は、汎用プラスチック融液である、請求項12に記載の高分子結晶体。
  14. 上記高分子融液は、ポリプロピレン融液である、請求項12に記載の高分子結晶体。
  15. 上記高分子融液は、アイソタクティックポリプロピレン融液である、請求項12に記載の高分子結晶体。
  16. バルク成形体である請求項1ないし15のいずれか1項に記載の高分子結晶体。
  17. 押し出し成形体である請求項16に記載の高分子結晶体。
  18. 射出成形体である請求項16に記載の高分子結晶体。
  19. ブロー成形体である請求項16に記載の高分子結晶体。
  20. 数平均粒子径が0.1μm以下の核剤が0.1〜0.5重量%含有する高分子融液を、臨界伸長ひずみ速度以上のひずみ速度で伸長し、当該高分子融液を配向融液状態にする配向融液化工程と、
    当該高分子融液の配向融液状態を維持しつつ冷却結晶化する急冷結晶化工程とを含むことを特徴とする高分子結晶体の製造方法。
  21. 上記高分子融液は、汎用プラスチック融液である、請求項20に記載の高分子結晶体の製造方法。
  22. 上記高分子融液は、ポリプロピレン融液である、請求項20に記載の高分子結晶体の製造方法。
  23. 上記高分子融液は、アイソタクティックポリプロピレン融液である、請求項20に記載の高分子結晶体の製造方法。
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