JP2008239775A - ディーゼル機関用潤滑油組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の組成物は、潤滑油基油と、該基油に配合する、塩基価100mgKOH/g以上のサリシレート系清浄剤と、ジチオリン酸亜鉛とを含有し、組成物の塩基価が15mgKOH/g以上のディーゼル機関用潤滑油組成物であって、エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤を含有するか、若しくはセカンダリーアルキル基を有するジチオリン酸亜鉛を含み、且つ組成物が無灰分散剤を全く含有しないか、窒素量として0.005質量%未満含有することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
近年これらの内燃機関用潤滑油は、高効率化により、燃焼温度が高くなっているため、耐熱性により優れることが求められている。また、最近の舶用内燃機関には、アンチポリッシングの装着が検討されているが、これにより潤滑油の消費量は減少し、潤滑油の補給回数や補給量が少なくなるメリットが生じる一方、舶用内燃機関の潤滑条件は一層厳しさを増す状況となる。さらに潤滑油の長期の使用により、煤混入量も大幅に増大することは避けられない状況となるため、煤による異常摩耗や粘度上昇の抑制手段も必要とされる。
このような観点から、従来の舶用等のディーゼルエンジン油としては、酸化安定性や耐熱性の高いサリシレート系添加剤の使用、高塩基価の潤滑油の使用、煤分散性やスラッジ分散性の高いコハク酸イミド系分散剤の使用、あるいは、ジチオリン酸亜鉛等の極圧剤の使用が検討されている(例えば特許文献1〜15参照)。
一方、一部の内燃機関では潤滑油の劣化や煤等の混入による不溶解分や劣化の原因となる水を分離除去するために遠心清浄機や各種フィルタ、ストレーナー等の浄油装置が使用されることがある。このような遠心清浄機等の浄油装置は、その浄油条件が緩い場合、スラッジ、摩耗粉あるいは水分等の不純物の除去が不十分となるため、その浄油条件が厳しいほど好ましい。しかし、遠心清浄機等の浄油装置においては、潤滑油中の添加剤及び水が高温で接触して加水分解が起こりやすく、あるいは添加剤の相互作用による沈殿が生成しやすく、そのため、例えば、摩耗防止性能、高温清浄性能等の潤滑油の初期性能を早期に低下させることがある。潤滑油にコハク酸イミド系分散剤を過度に含有させると、水分離性が悪くなるため、浄油装置の機能が十分発揮できなくなり、従って、浄油装置を装着した内燃機関においては、煤分散性やスラッジ分散性が期待されるコハク酸イミド系分散剤を過度に使用した潤滑油の使用は制限せざるを得ない状況にある。
本発明の別の課題は、水分離性が重要である浄油装置を装着したディーゼル機関において、煤や不溶解分の分散性が期待できるコハク酸イミド系分散剤等の無灰分散剤の使用が制限される中で、高塩基価のサリシレート系清浄剤と、ジチオリン酸亜鉛とを併用し、潤滑油の塩基価が15mgKOH/g以上とした場合においても、これら添加剤の相互作用による潤滑油の粘度増加を抑制することができ、さらには組成物の塩基価の保持性能を高めることができるディーゼル機関用潤滑油組成物を提供することにある。
また本発明によれば、無灰分散剤を窒素量として0.005質量%以上含有する組成物(A)が提供される。
さらに本発明によれば、潤滑油基油と、該基油に配合する、塩基価100mgKOH/g以上のサリシレート系清浄剤と、ジチオリン酸亜鉛とを含有し、組成物の塩基価が15mgKOH/g以上のディーゼル機関用潤滑油組成物であって、該ジチオリン酸亜鉛が、セカンダリーアルキル基を有するジチオリン酸亜鉛を含み、該組成物が無灰分散剤を全く含有しないか、窒素量として0.005質量%未満含有することを特徴とするディーゼル機関用潤滑油組成物(以下、組成物(B)と略すことがあり、組成物(A)及び組成物(B)をまとめて本発明の組成物ということがある)が提供される。
本発明の組成物(B)は、上記に加え、無灰分散剤を含有しないか、含有するとしても極わずかに制限されるので、遠心分離器等の浄油装置を備えたディーゼル機関に対し、該浄油装置における加水分解安定性が良好となり、長期使用に耐えうる性能を保持できる。
従って、本発明の組成物は、硫黄分が0.01質量%、好ましくは0.1質量%以上のA重油やC重油等の燃料を用いる漁船用ディーゼル機関、トランクピストンディーゼル機関等の船舶用ディーゼル機関用の内燃機関用だけでなく、該燃料を用いる発電用ディーゼル機関、鉄道車両用ディーゼル機関用の潤滑油組成物としても好適に用いることができる。
本発明の組成物は、硫黄分が0.01質量%の燃料を用いる漁船用ディーゼル機関、トランクピストンディーゼル機関等の船舶用ディーゼル機関用、あるいは、該燃料を用いる発電用ディーゼル機関、鉄道車両用ディーゼル機関用として好適に用いることができる。
硫黄分が0.01質量%以上の燃料としては、例えば、A重油、B重油、C重油、アスファルト、原油等が挙げられ、その硫黄分は、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜3.5質量%である。また、該燃料は、通常、アスファルテン分や残留炭素分を、少なくとも残留炭素分(JIS K 2270)が0.02質量%以上(10%残留炭素分が0.2質量%以上)含むものである。
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油が例示できる。
なお、上記全芳香族分とは、ASTM D2549に準拠して測定した芳香族留分(aromatic fraction)含有量を意味する。通常この芳香族留分には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンの他、アントラセン、フェナントレン、これらのアルキル化物、ベンゼン環が四環以上縮合した化合物、及びピリジン類、キノリン類、フェノール類、ナフトール類等のヘテロ芳香族を有する化合物等が含まれる。
鉱油系基油中の硫黄分は特に制限はないが、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。硫黄分は0質量%でも良いが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。鉱油系基油が、硫黄分をある程度含むことにより、添加剤の溶解性を十分に高めることができる。
本発明の組成物においては、100℃での動粘度が4mm2/s以上17mm2/s未満の潤滑油基油を主成分、例えば、基油全量基準で50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有させ、必要に応じて100℃での動粘度が17〜50mm2/sの潤滑油基油を配合することができる。
サリシレート系清浄剤としてはその構造に特に制限はないが、炭素数1〜40のアルキル基を1〜2個有するサリチル酸の金属塩、好ましくはアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられる。
また、3−アルキルサリチル酸金属塩の構成比は、アルキルサリチル酸金属塩100mol%に対し、通常40〜100mol%、好ましくは45〜80mol%、さらに好ましくは50〜60mol%である。
なお、4−アルキルサリチル酸金属塩及び5−アルキルサリチル酸金属塩の合計の構成比は、アルキルサリチル酸金属塩100mol%に対し、上記3−アルキルサリチル酸金属塩、ジアルキルサリチル酸金属塩を除いた構成比に相当し、通常0〜60mol%、好ましくは20〜50mol%、さらに好ましくは30〜45mol%である。ジアルキルサリチル酸金属塩を少量含むことで高温清浄性、低温特性に優れ、加水分解安定性にも優れる組成物を得ることができ、3−アルキルサリシレートの構成比を40mol%以上とすることで、5−アルキルサリチル酸金属塩の構成比を相対的に低くすることができ、油溶性を向上させることができる。
炭素数10〜40のアルキル基としては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、及びトリアコンチル基が挙げられる。これらアルキル基は直鎖状であっても分枝状であってもよく、1級アルキル基、2級アルキル基、3級アルキル基であってもよいが、本発明においては上記所望のサリチル酸金属塩を得やすい点で、2級アルキル基であることが特に好ましい。
ここで、フェノール又はサリチル酸とオレフィンの反応割合を、好ましくは、例えば1:1〜1.15(モル比)、より好ましくは1:1.05〜1.1(モル比)に制御することで、モノアルキルサリチル酸金属塩とジアルキルサリチル酸金属塩の構成比を所望の割合に制御することができる。また、オレフィンとして直鎖α−オレフィンを用いることで、3−アルキルサリチル酸金属塩、5−アルキルサリチル酸金属塩等の構成比を本願所望の割合に制御しやすくなるとともに、本発明において好ましい2級アルキルを有するアルキルサリチル酸金属塩を主成分として得ることができるため特に好ましい。
なお、オレフィンとして分岐オレフィンを用いた場合には、ほぼ5−アルキルサリチル酸金属塩のみを得やすいが、本願所望の構成となるように3−アルキルサリチル酸金属塩等を混合して油溶性を改善する必要があり、製造プロセスが多様化する点で好ましくない。
なお、これらの反応は、通常、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等の溶媒中で行われ、その金属含有量が1.0〜20質量%、特に2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。
本発明においては、塩基価が200〜300mgKOH/gの(過)塩基性サリシレート系清浄剤を使用する場合、塩基価が200mgKOH/g未満又は300mgKOH/gを越える(過)塩基性サリシレート系清浄剤を単独で使用する場合と比べ、ジチオリン酸亜鉛等との相互作用による粘度増加が相対的に大きい傾向にあるため、塩基価が200〜300mgKOH/gの(過)塩基性サリシレート系清浄剤を含有する場合においても粘度増加を十分に抑制することが重要となる。
なお、ここでいう塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
本発明の組成物において、サリシレート系清浄剤の含有量は、組成物全量基準で、通常1〜30質量%、好ましくは5〜15質量%、さらに好ましくは7〜10質量%である。
フェネート系清浄剤としては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは炭素数10〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノールと硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイドアルカリ土類金属塩、又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
フェネート系清浄剤の塩基価は、通常0〜500mgKOH/g、好ましくは20〜450mgKOH/g、より好ましくは150〜300mgKOH/gである。
フェネート系清浄剤を使用する場合の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、通常0.1〜30質量%、好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは1.5〜3質量%である。
スルホネート系清浄剤としては、カルシウムスルホネート系清浄剤、マグネシウムスルホネート系清浄剤が好ましく、カルシウムスルホネート系清浄剤が特に好ましい。
スルホネート系清浄剤を使用する場合の含有量は特に制限はないが、通常0.1〜30質量%の範囲から選ばれるが、上記したミセル安定性の懸念があるため、その配合量は少ない方が良い。
ジチオリン酸亜鉛としては、式(1)で表されるジチオリン酸亜鉛が例示できる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が挙げられ、特に炭素数3〜8のアルキル基が一般的に用いられる。アルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、第1級(プライマリー)アルキル基でも第2級(セカンダリー)アルキル基でも良い。
式(1)で示されるジチオリン酸亜鉛の製造にあたり、R1、R2、R3及びR4を導入する際にα−オレフィンの混合物を原料とする場合があるが、この場合、式(1)で表される化合物としては互いに異なる構造のアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物となる。
アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基が挙げられる。これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良く、また全ての置換異性体が含まれる。
エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤を使用する場合、後述する無灰分散剤を併用すると、さらなる粘度増加抑制効果が発揮される。しかし、エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤に代えて、アミン系酸化防止剤やビスフェノール系酸化防止剤を使用しても上記粘度増加抑制効果は発揮されない。
本発明の組成物(B)は、後述する無灰分散剤が過度に含まれると、相互作用によりセカンダリーアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛による粘度増加抑制効果が損なわれてしまうため、無灰分散剤を全く含まないか、含むとしてもその含有量は制限されなければならない。
このように組成物(A)及び組成物(B)により、添加剤同士の相互作用が複雑に絡み合うため、添加剤の組み合わせや使用する用途の選択は極めて重要となる。
前記サリシレート系清浄剤を含む金属系清浄剤に起因する組成物中の金属量(M)あるいはサリシレート系清浄剤に起因する組成物中の金属量(M')と、前記ジチオリン酸亜鉛に起因するリン量(P)との質量比(M/P)あるいは(M'/P)は特に制限はないが、好ましくは4以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。M/PあるいはM'/P比が高いほど、上記粘度増加を大幅に改善することができる。
エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤としては、潤滑油用として公知の任意のものが使用可能であり特に限定されず、例えば、式(2)又は式(3)で表される化合物の中から選ばれる1種または2種以上の化合物が好ましく挙げられる。
R31としては、水素原子又は上述したような炭素数1〜4のアルキル基が挙げられるが、組成物が酸化安定性に優れる点から、メチル基又はtert−ブチル基が好ましい。
R32で示される炭素数1〜6のアルキレン基は、直鎖状でも分枝状であっても良く、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジメチレン基)、エチルメチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられる。式(2)で示される化合物が少ない反応工程で製造できる点で、R32は炭素数1〜2のアルキレン基、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジメチレン基)であることがより好ましい。
R33は、基油に対する溶解性に優れる点から、炭素数4〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が好ましく、炭素数6〜12の直鎖状又は分枝状アルキル基がより好ましく、炭素数6〜12の分枝状アルキル基が特に好ましい。
R10及びR14は、水素原子又は上述したような炭素数1〜4のアルキル基が挙げられるが、組成物が酸化安定性に優れる点から、それぞれ個別に、メチル基又はtert−ブチル基であるのが好ましい。
R11及びR12の炭素数1〜6のアルキレン基は、直鎖状でも分枝状であっても良く、例えば、それぞれ個別に、R32について上述した各種アルキレン基が挙げられる。式(3)で表される化合物が少ない反応工程で製造できる点およびその原料の入手が容易である点で、R11及びR12はそれぞれ個別に、炭素数1〜2のアルキレン基、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジメチレン基)がより好ましい。
Xの炭素数1〜18のアルキレン基は直鎖状でも分枝状でも良く、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジメチレン基)、エチルメチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基が挙げられる。原料入手の容易さ等から、炭素数1〜6のアルキレン基、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジメチレン基)、エチルメチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基がより好ましく、エチレン基(ジメチレン基)、トリメチレン基、直鎖ブチレン基(テトラメチレン基)、直鎖ペンチレン基(ペンタメチレン基)、直鎖ヘキシレン基(ヘキサメチレン基)等の炭素数2〜6の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができる。例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体が挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、コハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、マンニッヒ塩基が挙げられ、その誘導体としては、これら含窒素化合物にホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物、(チオ)リン酸、(チオ)リン酸塩等のリン化合物、有機酸、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等を作用させた誘導体が挙げられる。本発明においては、これらの中から任意に選ばれる1種あるいは2種以上を配合することができる。
無灰分散剤としては、高温清浄性の点からモノタイプ及び/又はビスタイプのコハク酸イミド系無灰分散剤、特にビスタイプのコハク酸イミド系無灰分散剤が好ましく、また、コハク酸イミド系無灰分散剤としては、ホウ素を含有していても、含有していなくても良いが、耐焼付き性の点でホウ素を含有しているものであることが特に好ましい。
本発明の組成物(A)において、無灰分散剤を配合する場合の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜4質量%、さらに好ましくは1〜3質量%であり、窒素量としての含有量は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.015質量%以上であり、また、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.04質量%以下である。無灰分散剤の含有量が上記未満の場合でも良好な粘度増加抑制効果を発揮できるが、上記範囲とすることで、より一層の粘度増加抑制効果が発揮されることとなり、また、煤分散性能も向上される。
このような添加剤としては、例えば、上記以外の酸化防止剤、上記以外の摩耗防止剤又は極圧剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、又は着色剤が挙げられ。
本発明の組成物において、摩耗防止剤又は極圧剤を使用する場合の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、通常0.01〜5質量%である。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステルが挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリルが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリシレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール、アルミニウムステアレート、オレイン酸カリウム、N−ジアルキル−アリルアミンニトロアミノアルカノール、イソアミルオクチルホスフェートの芳香族アミン塩、アルキルアルキレンジホスフェート、チオエーテルの金属誘導体、ジスルフィドの金属誘導体、脂肪族炭化水素のフッ素化合物、トリエチルシラン、ジクロロシラン、アルキルフェニルポリエチレングリコールエーテルスルフィド、フルオロアルキルエーテルが挙げられる。
本発明の組成物の100℃における動粘度は特に制限はないが、好ましくは6〜50mm2/s、より好ましくは9.3〜30mm2/s、特に好ましくは12.5〜21.9mm2/sである。ここでいう100℃における動粘度とは、ASTM D−445に規定される100℃での動粘度を示す。
本発明の組成物の硫酸灰分量は特に制限はないが、好ましくは1.2質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。ここでいう硫酸灰分とは、JIS K2272の5.「硫酸灰分の試験方法」に規定される方法により測定される値を示し、主として金属含有添加剤に起因するものである。
実施例1〜9、比較例1〜12、参考例1〜2
表1及び表2に示す組成に従い、本発明の潤滑油組成物(実施例1〜9)、比較用の潤滑油組成物(比較例1〜12)、参考用の潤滑油組成物(参考例1〜2)をそれぞれ調製した。得られた組成物をJIS K 2514の4.項に準拠した方法(ISOT)により、165.5℃、48時間強制劣化させ、試験後の組成物について動粘度、酸価、塩基価、ペンタン不溶分(B法)、ラッカードを測定した。結果を表1及び2に示す。また、得られた結果と、新油の動粘度及び塩基価から、新油に対する試験後の組成物の粘度比、塩基価保持率を算出した。結果を表1及び2に示す。
(表1)
1)100℃動粘度:7.2mm2/s、粘度指数100
2)100℃動粘度:10.5mm2/s、粘度指数95
3)100℃動粘度:32mm2/s、粘度指数95
4)170BN、230BN及び320BNの過塩基性Caサリシレート混合物
5)255BNの過塩基性Caフェネート
6)1ryC8アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛
7)2ryC3/C6アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛
8)ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤(窒素量:2質量%、ホウ素量0.5質量%)
9)オクチル-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
10)ジアルキルジフェニルアミン
(表2)
1)100℃動粘度:7.2mm2/s、粘度指数100
2)100℃動粘度:10.5mm2/s、粘度指数95
3)100℃動粘度:32mm2/s、粘度指数95
4)230BNの過塩基性Caサリシレート
5)1ryC8アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛
6)2ryC3/C6アルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛
7)ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤(窒素量:2質量%、ホウ素量0.5質量%)
8)オクチル-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
9)チオジエチレン ビス[3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
10)4,4'-メチレンビス-(2,6-ジターシャリーブチルフェノール)
11)ジアルキルジフェニルアミン
12)60BNの中性Caサリシレート
表1及び2の参考例1及び2の結果から、高塩基性サリシレート系清浄剤を含む金属系清浄剤の含有量が少なく、塩基価(過塩素酸法)が15mgKOH/g未満又はカルシウム量が0.5質量%未満の潤滑油組成物(参考例1)、あるいは、塩基価(過塩素酸法)が100mgKOH/g未満のサリシレート系清浄剤を使用した場合(参考例2)においては、劣化後の粘度増加は小さく、本発明の課題にあるような、サリシレート系清浄剤とジチオリン酸亜鉛との相互作用による粘度増加は小さい。従って、本発明の課題は、高塩基性サリシレートを含む金属系清浄剤を多量に含む場合に、ジチオリン酸亜鉛との相互作用による粘度増加が顕著となる特有の現象を解決することにある。
表1及び2の結果から、エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤を使用した本発明の組成物(A)(実施例1〜5、8及び9)は、劣化後の粘度増加が極めて小さく、また、塩基価の保持率も高いことがわかる。なお、無灰分散剤を窒素量として0.005質量%以上含むことによって上記効果が一層高まっていることが確認されている。それに対し、組成物(B)以外の組成物であって、無灰酸化防止剤を含有しない組成物(比較例1、3、4,6〜9)、酸化防止剤として、エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤の代わりにアミン系酸化防止剤を使用した組成物(比較例2、5、11及び12)、エステル結合を有しないビスフェノール系酸化防止剤を使用した組成物(比較例10)では、エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤を使用した組成物よりも粘度増加が大きく、塩基価の保持率も低いことがわかる。
なお、エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤を使用しない場合には、無灰分散剤使用による効果は認められないか、本発明の効果よりも小さく、エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤を使用せず、無灰分散剤を特定量以上含む場合には、ジチオリン酸亜鉛のアルキル基のタイプによる効果は認められない。このことは、酸化防止剤としてエステル結合を有するフェノール系酸化防止剤を使用することで初めて、高塩基性のサリシレート系清浄剤とジチオリン酸亜鉛との相互作用による粘度増加及び塩基価の低下を抑制できるという、全く予想しえない格別な効果が得られたことがわかる。
表1及び2の結果から、無灰分散剤を含まず、セカンダリーアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛を使用した組成物(B)(実施例6、7)は、劣化後の粘度増加が極めて小さく、また、塩基価の保持率も高いことがわかる。これに対し、無灰分散剤を含まず、プライマリーアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛を使用した組成物(比較例8)、比較例8の組成物にアミン系酸化防止剤を使用した組成物(比較例12)、あるいは、セカンダリーアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛を使用したとしても、無灰分散剤を特定量以上含有する組成物(比較例3、6、7)では、組成物(B)に比べ粘度増加が大きく、塩基価の保持率も低いことがわかる。このことから、セカンダリーアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛を使用する効果は、無灰分散剤により阻害されることがわかる。
Claims (7)
- 潤滑油基油と、該基油に配合する、塩基価100mgKOH/g以上のサリシレート系清浄剤と、ジチオリン酸亜鉛とを含有し、組成物の塩基価が15mgKOH/g以上のディーゼル機関用潤滑油組成物であって、エステル結合を有するフェノール系酸化防止剤を含有することを特徴とするディーゼル機関用潤滑油組成物。
- 無灰分散剤を窒素量として0.005質量%以上含有する請求項1に記載の組成物。
- 潤滑油基油と、該基油に配合する、塩基価100mgKOH/g以上のサリシレート系清浄剤と、ジチオリン酸亜鉛とを含有し、組成物の塩基価が15mgKOH/g以上のディーゼル機関用潤滑油組成物であって、該ジチオリン酸亜鉛が、セカンダリーアルキル基を有するジチオリン酸亜鉛を含み、該組成物が無灰分散剤を全く含有しないか、窒素量として0.005質量%未満含有することを特徴とするディーゼル機関用潤滑油組成物。
- 浄油装置を備えたディーゼル機関用であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
- 塩基価100〜300mgKOH/gのフェネート系清浄剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
- 組成物中のサリシレート系清浄剤に起因する金属の含有量(M)と、ジチオリン酸亜鉛に起因するリン含有量(P)との質量比(M/P)が4以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
- アンチポリッシング装置を備えたディーゼル機関用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
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