JP2008239650A - 炭酸ジエステル組成物、炭酸ジエステルの精製方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応で副生するモノヒドロキシ化合物の蒸留工程において、第一蒸留工程でモノヒドロキシ化合物と分離した高沸物を第二蒸留工程で蒸留する際に、第一蒸留工程で得られた高沸物から5重量%未満を除去し、さらに90重量%迄を蒸留塔の塔頂から留出し、炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールの含有量が100重量ppm以下の炭酸ジエステルを得、これをポリカーボネート製造工程にリサイクルする。
【選択図】図1
Description
また、未反応炭酸ジエステルは、ポリカーボネート樹脂の製造工程において副生フェノールと同伴して留出することから、効率よく精製し、ポリカーボネート樹脂の製造工程に循環供給する必要がある。
即ち、本発明の目的は、ポリカーボネート樹脂の製造工程における未反応炭酸ジエステルを効率よくリサイクルし、原料の消費と廃棄物とを低減し、且つ、色調良好なポリカーボネート樹脂を得るポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することにある。
(1) 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート製造工程において、前記ポリカーボネート製造工程から、主に副生モノヒドロキシ化合物を含有する留出液を蒸留により分離し、且つ、炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールの含有量が100重量ppm以下であることを特徴とする炭酸ジエステル組成物。
(2) 前記アルキルフェノールがイソプロペニルフェノールであることを特徴とする前記(1)に記載の炭酸ジエステル組成物。
(4) 前記ポリカーボネート製造工程にリサイクルする前記炭酸ジエステルの組成物と、モノヒドロキシ化合物及びカルボニル化合物を用いて製造する炭酸ジエステルと、の混合物を、当該ポリカーボネート製造工程の原料として使用することを特徴とする前記(3)に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
(5) 前記混合物は、炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールの含有量が30重量ppm以下であることを特徴とする前記(4)に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
(7) 前記第二蒸留工程において、前記第一蒸留工程の前記蒸留残渣量の5重量%分を蒸留塔頂より抜き出し、且つ、10重量%分を蒸留塔底から抜き出し、残りを精製物とすることを特徴とする前記(6)に記載の炭酸ジエステルの精製方法。
(8) 前記第二蒸留工程において塩基性物質を添加することを特徴とする前記(6)に記載の炭酸ジエステルの精製方法。
(10) 前記塩基性物質は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とする前記(8)又は前記(9)に記載の炭酸ジエステルの精製方法。
(11) 前記芳香族ジヒドロキシ化合物がビスフェノール類であることを特徴とする前記(6)乃至前記(10)のいずれか1項に記載の炭酸ジエステルの精製方法。
(13)前記(6)乃至前記(11)のいずれか1つに記載の炭酸ジエステルの精製方法で得られる炭酸ジエステルとモノヒドロキシ化合物及びカルボニル化合物から製造される炭酸ジエステルとの混合物を、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート製造工程の原料として使用することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
本実施の形態において使用するポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により製造する。
ここで、ジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい化合物として挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応に基づく溶融重縮合により製造する芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
以下、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用い、エステル交換触媒の存在下、連続的に溶融重縮合反応を行うことにより、芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法(溶融法)について説明する。
本実施の形態において使用する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、以下、BPAと略記することがある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
本実施の形態において使用する炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
なお、A’上の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜炭素数10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等が例示される。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
即ち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、炭酸ジエステル1.01〜1.30、好ましくは1.02〜1.20のモル比で用いられる。モル比が過度に小さいと、得られる芳香族ポリカーボネートの末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が過度に大きいと、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネートの生産が困難となる傾向となる他、樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となることがあり、好ましくない。
上述した炭酸ジエステルは、通常、フェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物及びカルボニル化合物を原料としてアルカリ系触媒の存在下の合成反応により製造する。
カルボニル化合物としては、炭酸ジエステルのカルボニル基を形成するものであれば特に限定されず、例えば、塩化カルボニル(ホスゲン)、一酸化炭素、炭酸ジアルキル等が挙げられる。中でも塩化カルボニル(ホスゲン)が好ましい。
また、アルカリ系触媒としては、ピリジン等が挙げられる。
本実施の形態で使用する炭酸ジエステルは、上述したように芳香族モノヒドロキシ化合物及びカルボニル化合物を原料としてアルカリ系触媒存在下の合成反応を行う反応工程後、反応液を脱塩酸処理及び除去しきれない塩酸をアルカリ性水溶液により中和処理して水洗する洗浄工程と、さらに、蒸留工程を経て製造する。
本実施の形態において使用するエステル交換触媒としては、通常、エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際に用いられる触媒が挙げられ、特に限定されない。一般的には、例えば、アルカリ金属化合物、ベリリウム化合物又はマグネシウム化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。
これらのエステル交換触媒の中でも、実用的にはアルカリ金属化合物が望ましい。これらのエステル交換触媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル交換触媒の使用量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1×10−9〜1×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モルの範囲で用いられる。
これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、特に、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、水酸化セシウムが好ましい。
次に、本実施の形態が適用されるポリカーボネートの製造方法について、芳香族ポリカーボネートの製造方法を例に挙げて説明する。
図1は、ポリカーボネート製造方法の製造工程フロー図である。ここでは、ポリカーボネート樹脂を製造するポリカーボネート製造工程と原料の炭酸ジエステルを製造する炭酸ジエステル製造工程とが併設されている場合の工程フローについて説明する。
次に、これらの原料を用いて芳香族ポリカーボネートを製造する(ポリカーボネート製造工程:ステップ104)。
重縮合工程後、反応を停止し、重合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程や、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程、芳香族ポリカーボネートを所定の粒径のペレットに形成する工程等を適宜追加してもよい。
次に、ポリカーボネート製造工程の各工程について説明する。
芳香族ポリカーボネートの原料として使用する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとは、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を用いて、原料混合溶融液として調製する。溶融混合の温度は、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを用い、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合は、通常20℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲から選択する。
この際、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの割合は、炭酸ジエステルが過剰になるように調整し、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルは通常1.01モル〜1.30モル、好ましくは1.02モル〜1.20モルの割合になるように調整する。
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とのエステル交換反応による重縮合は、通常、2段階以上、好ましくは3段〜7段の多段方式で連続的に行う。具体的な反応条件としては、温度:150℃〜320℃、圧力:常圧〜0.01Torr(1.3Pa)、平均滞留時間:5分〜150分の範囲である。
多段方式の各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に系外に除去するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。尚、製造する芳香族ポリカーボネートの色相等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましい。
ここで、反応器としては、例えば、撹拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型撹拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等を用いる。
触媒の溶解に使用する水の性状は、含有する不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、通常、蒸留水や脱イオン水等が好ましい。
次に、副生モノヒドロキシ化合物蒸留工程について説明する。
上述したポリカーボネート製造工程における重縮合反応の進行とともに、副生モノヒドロキシ化合物を系外に除去する。
本実施の形態において、副生モノヒドロキシ化合物は、先ず、第一蒸留工程(ステップ105)で、主留のモノヒドロキシ化合物を蒸留塔の塔頂から抜き出し炭酸ジエステル製造工程及び/又は芳香族ジヒドロキシ化合物製造工程にリサイクルする(ステップ106)。また、モノヒドロキシ化合物と分離した高沸分を蒸留塔釜残留成分として抜き出し、第二蒸留工程に送る。
第二蒸留工程(ステップ107)では、先ず、第一蒸留工程で分離された高沸分の5重量%未満(初留)を抜き出す。続いて、高沸分の5重量%〜90重量%を蒸留し、炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールの含有量が100重量ppm以下である炭酸ジエステルを蒸留塔の塔頂から抜き出す。また、残りは蒸留残渣として処理する。尚、この蒸留工程は回分式でも連続式でもよい。
ここで、第一蒸留工程の条件は特に限定されないが、通常、炭酸ジエステルがジフェニルカーボネートである場合、塔頂温度100℃〜150℃、圧力100Torr〜300Torrである。また、第二蒸留工程の条件は特に限定されないが、通常、塔頂温度80℃〜120℃、圧力30Torr〜80Torrである。
第一蒸留工程で得られる高沸物中に含まれる炭酸ジエステル以外の成分としては、例えば、フェノールや炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールが挙げられる。アルキルフェノールの具体的としては、イソプロペニルフェノール等が挙げられる。
特に、イソプロペニルフェノールの含有量が100重量ppm以下に低減した炭酸ジエステルをポリカーボネート製造工程における原料として使用することにより、得られるポリカーボネート樹脂の色調低下を防止することができる。
図2は、ポリカーボネート製造方法の他の製造工程フロー図である。図2に示すように、芳香族ジヒドロキシ化合物は、前述したように所定の製造工程(芳香族ジヒドロキシ化合物製造工程)において製造する(ステップ201:図2では、S201と表示する。以下、同様。)。又、本実施の形態では、炭酸ジエステル化合物は、他炭酸ジエステル製造工程により製造する(ステップ202)。次に、これらの原料を用いて芳香族ポリカーボネートを製造する(ポリカーボネート製造工程:ステップ203)。
一方、重縮合反応の進行とともに副生モノヒドロキシ化合物を系外に除去する。副生モノヒドロキシ化合物は、副生モノヒドロキシ化合物蒸留工程において、第一蒸留工程(ステップ204)で、モノヒドロキシ化合物を蒸留塔の塔頂から抜き出し芳香族ジヒドロキシ化合物製造工程及び/又は他炭酸ジエステル製造工程にリサイクルする(ステップ205)。また、モノヒドロキシ化合物と分離した高沸分を第二蒸留工程に送る。
第二蒸留工程(ステップ206)では、先ず、第一蒸留工程で分離された高沸分の5重量%未満(初留)を抜き出す。続いて、高沸分の5重量%〜90重量%を蒸留し、炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールの含有量が100重量ppm以下である炭酸ジエステルを蒸留塔の塔頂から抜き出す。尚、残りは蒸留残渣として処理する。尚、この蒸留工程は回分式でも連続式でもよい。
このようなリサイクルする炭酸ジエステルと、予め他炭酸ジエステル製造工程で製造した合成炭酸ジエステルとの混合物は、炭酸ジエステル以外の成分の含有量が大幅に低減された原料としてポリカーボネート製造工程で使用することができる。
このとき、また、ポリカーボネート製造工程に用いるリサイクル炭酸ジエステルと、予め他炭酸ジエステル製造工程で製造した合成炭酸ジエステルとの混合物中に含まれるアルキルフェノールの含有量は特に限定されないが、炭酸ジエステルに対し30重量ppm以下、好ましくは20重量ppm以下である。
特に、イソプロペニルフェノールの含有量が30重量ppm以下に低減した炭酸ジエステル混合物を原料として使用することにより、ポリカーボネートの色調低下を防止することができる。
ここで、塩基性物質としては特に限定されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらの酸化物、水酸化物、炭酸塩等が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これらの塩基性物質は、それぞれ単独で使用することができ、また、複数の塩基性物質を用いることができる。
副生モノヒドロキシ化合物蒸留工程における塩基性物質の添加量は、特に限定されないが、通常0.1重量ppm〜1重量%、好ましくは、1重量ppm〜1000重量ppm、より好ましくは、10重量ppm〜200重量ppmである。
次に、図面に基づき、本実施の形態が適用される芳香族ポリカーボネートの製造方法の一例を具体的に説明する。
図3は、芳香族ポリカーボネートの製造装置の一例を示す図である。図3に示す製造装置において、芳香族ポリカーボネートは、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を調製する原調工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いて重縮合反応する重縮合工程とを経て製造する。
その後、反応を停止させ重合反応液中の未反応原料や反応副生物を脱揮除去する工程(図示せず)や、熱安定剤、離型剤、色剤等を添加する工程(図示せず)、芳香族ポリカーボネートを所定の粒径のペレットに形成する工程(図示せず)を経て、芳香族ポリカーボネートのペレットを成形する。
また、第1原料混合槽2aには、DPC供給口1a−1から、炭酸ジエステルであるジフェニルカーボネート(以下、DPCと記載することがある。)を溶融状態で供給し、BPA供給口1bからは、芳香族ジヒドロキシ化合物であるビスフェノールA(以下、BPAと記載することがある。)を粉末状態で供給し、溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールAを溶解する。
また、4基の反応器には、それぞれ重縮合反応により生成する副生物等を排出するための留出管8a,8b,8c,8dを取り付けている。
さらに、留出管8a,8b,8c,8dを経由して留出した副生フェノール等を精製するための、第1蒸留塔91aと第2蒸留塔91b、及び、第2蒸留塔91bの蒸留塔釜残留成分を蒸留する第3蒸留塔91cが設けている。
第1竪型反応器6aでは、窒素雰囲気下、例えば、温度220℃、圧力13.33kPa(100Torr)、撹拌翼の回転数を160rpmに保持し、副生したフェノールを留出管8aから留出させながら平均滞留時間60分になるように液面レベルを一定に保ち、重縮合反応を行う。
副生フェノールは、第一蒸留工程において、2基の蒸留塔(第1蒸留塔91a,第2蒸留塔91b)を使用して主留(フェノール)と高沸分(略、DPC)とを分離する。即ち、副生フェノールは、先ず、第1蒸留塔91aにて塔頂配管92aから初留を抜き出す。次に、第1蒸留塔91aで所流を抜き出した残りの留分は、塔底配管93aを介して引き続き第2蒸留塔91bに送られ、第2蒸留塔91bの塔頂配管92bから主留(フェノール)を抜き出し、塔底配管93bから高沸分(略、DPC)を蒸留塔釜残留成分として抜き出す。
続いて、第4蒸留塔91dで、塔底配管93cを介して送られた高沸分の5重量%〜90重量%を蒸留し、塔頂配管92dから、炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールの含有量が100重量ppm以下である炭酸ジエステルを抜き出す。尚、残りは塔底配管93dから蒸留残渣として排出する。第4蒸留塔91dの塔頂から留出した炭酸ジエステル(DPC)は、塔頂配管92dにより、DPC供給口1a−1を経て、第1原料混合槽2aに循環供給する。
(1)粘度平均分子量(Mv)
ポリカーボネート樹脂をジクロロメタンに溶解し、濃度(C)600g/Lの溶液を調製する。次に、ウベローデ型毛細管粘度計を用いて、温度20℃に設定する恒温水槽中で、溶媒(ジクロロメタン)の流下速度(t0)と試料溶液の流下速度(t)を測定し、以下の式に従い、粘度平均分子量(Mv)を求める。
ηsp=(t/t0)−1
a=0.28×ηsp+1
b=10×(ηsp/C)
[η]=b/a
Mv=51400×[η]exp1.205
ポリカーボネート樹脂を窒素雰囲気下、120℃で6時間の乾燥後、射出成形機(株式会社日本製鋼所製J−100)により360℃で調製した3mm厚の射出成形片について、カラーテスター(スガ試験機株式会社製SC−1−CH)を用いてYI値を測定する。YI値が大きいほど着色していることを示す。
ジフェニルカーボネート組成物に含まれるイソプロペニルフェノール(IPP)量は、液体クロマトグラフィーで定量分析し、ジフェニルカーボネート組成物に対する重量比で表す。
図3に示す製造装置において、ジフェニルカーボネート(DPC)とビスフェノールA(BPA)とを窒素ガス雰囲気下、(DPC/BPA)0.977重量比で溶融混合し原料混合物を得る。次に、この原料混合物を窒素雰囲気下、210℃、100Torrに制御した第1縦型反応器6a内に連続供給し、平均滞留時間が60分になるように槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ液面レベルを一定に保つ。
また、第1縦型反応器6a内に原料混合物の供給を開始すると同時に、触媒として炭酸セシウム水溶液をビスフェノールA1モルに対し、0.5×10−6モルの流量で連続供給する。
反応器より蒸発するガスは、それぞれ多段凝縮器で凝縮液化され、一部を各反応器に還流し、残りを副生フェノールタンクに回収する。各反応器の重合条件は以下の通りである。
(第1縦型反応器6a)210℃、100Torr
(第2縦型反応器6b)240℃、15Torr
(第3縦型反応器6c)260℃、0.5Torr
(第4横型反応器9a)280℃、0.5Torr
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量Mvは21,000であり、初期YIは1.7である。
この蒸留塔釜残留成分の組成は、フェノール1.9重量%、ビスフェノールA1.3重量%、ジフェニルカーボネート90.4重量%、その他6.4重量%である。
上述したポリカーボネート樹脂の製造工程において、第2蒸留塔91bにて得られた蒸留塔釜残留成分約5,300gを、スルーザーパッキング(住友重機工業株式会社製)を充填した理論段数8段の蒸留塔釜部に仕込み、バッチ式で蒸留精製を行う。
蒸留精製は、真空度20Torr〜15Torr、還流比1の条件で徐々に熱媒温度を上昇させる。初期留出分から全重量の30%(1,500g)を分取する。
この分取した留出分中のジフェニルカーボネート純度は87.44%であり、イソプロペニルフェノールは36重量ppmである。
40L第1反応器内を10torrにし、次いで、窒素で大気圧にする操作を5回繰り返し、内部を窒素置換する。次に、温度230℃の熱媒を通じて昇温し、前述のDPC混合物を溶解させた後、300rpmで撹拌し、内温を220℃に保ちながら、40分間かけて40L第1反応器内の圧力を760torrから100torrに減圧する。
続いて、この40L第2反応器内を大気圧にまで放圧し、38rpmで撹拌しながら、系内を減圧にする。40L第2反応器内の圧力が0.5torrに到達後、0.5torrを保持したまま90分間縮合反応を行い、重合反応を行う。40L第2反応器内の最終的な内部温度は280℃である。
重合反応終了後、40L第2反応器内を窒素で復圧し、槽底からポリカーボネートポリマーをストランド状で抜き出し、回転式カッターでペレット化する。
得られるポリカーボネートの粘度平均分子量Mvは20,700であり、初期YIは1.83である。
実施例1において、釜残留成分のバッチ式蒸留精製を行い、初期留出分から全重量の30%〜85%を分取し、それ以外は実施例1と同様の条件で操作を行い、ポリカーボネートを製造する。
実施例1において、全還流状態で、1N水酸化ナトリウム水溶液13mLを蒸留塔頂に供給し、それ以外は実施例1と同様の操作を行って蒸留塔釜残留成分のバッチ式蒸留精製を行い、初期留出分から全重量の30%(1,500g)までの留出分を分取する。
この分取した留出分のジフェニルカーボネート純度は87.01%であり、イソプロペニルフェノールは未検出である。このジフェニルカーボネートを用いて、実施例1と同様の方法でポリカーボネートを製造する。
得られるポリカーボネートの粘度平均分子量Mvは21,400、YIは1.76である。
実施例1において、全還流状態で、1N水酸化ナトリウム水溶液13mLを蒸留塔頂に供給し、それ以外は実施例1と同様の操作を行って蒸留塔釜残留成分のバッチ式蒸留精製を行い、初期留出分から全重量の87%までの留出分を分取し、それ以外は実施例1と同様の条件で操作を行い、ポリカーボネートを製造する。
実施例1〜実施例4の結果の中、ジフェニルカーボネート(DPC)中のイソプロペニルフェノール(IPP)量を表1に示す。
実施例1において、全還流状態で、1N水酸化ナトリウム水溶液を供給せず、それ以外は実施例1と同様の操作を行って蒸留塔釜残留成分のバッチ式蒸留精製を行い、初期留出分から表2に示す留出分をそれぞれ分取する。
このジフェニルカーボネートと予め他のジフェニルカーボネート精製工程により得られたジフェニルカーボネートとを、表2に示す割合で混合し、それ以外は、実施例1と同様の方法でポリカーボネートを製造する。
比較例1〜比較例6にけるジフェニルカーボネート(DPC)中のイソプロペニルフェノール(IPP)量を表2に示す。
本実施の形態において得られるポリカーボネート樹脂は、例えば、光ディスク基板、ICやLEDの精密電子部材の搬送容器、電子機器のハウジング等に使用する樹脂剤として有用である。
Claims (13)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート製造工程において、
前記ポリカーボネート製造工程から、主に副生モノヒドロキシ化合物を含有する留出液を蒸留により分離し、且つ、炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールの含有量が100重量ppm以下であることを特徴とする炭酸ジエステル組成物。 - 前記アルキルフェノールがイソプロペニルフェノールであることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ジエステル組成物。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によりポリカーボネートを製造するポリカーボネート製造工程と、
前記ポリカーボネート製造工程において副生する主に副生モノヒドロキシ化合物を含有する留出液を蒸留する副生モノヒドロキシ化合物蒸留工程と、を有し、
前記副生モノヒドロキシ化合物蒸留工程において前記留出液から分離し、且つ炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールの含有量が100重量ppm以下である炭酸ジエステルを前記ポリカーボネート製造工程にリサイクルする
ことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。 - 前記ポリカーボネート製造工程にリサイクルする前記炭酸ジエステルの組成物と、モノヒドロキシ化合物及びカルボニル化合物を用いて製造する炭酸ジエステルと、の混合物を、当該ポリカーボネート製造工程の原料として使用することを特徴とする請求項3に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記混合物は、炭素数1〜炭素数5のアルキル基を有するアルキルフェノールの含有量が30重量ppm以下であることを特徴とする請求項4に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート製造工程と、
前記ポリカーボネート製造工程において副生する主に副生モノヒドロキシ化合物を含有する留出液を蒸留する副生モノヒドロキシ化合物蒸留工程と、を有し、
前記副生モノヒドロキシ化合物蒸留工程は、
前記副生モノヒドロキシ化合物を蒸留する第一蒸留工程と、
前記第一蒸留工程で得られる蒸留残渣中に含まれる炭酸ジエステルを留出する第二蒸留工程とを、有し、
前記第二蒸留工程において、前記第一蒸留工程で得られる前記蒸留残渣量の90重量%分を蒸留塔頂から留出する
ことを特徴とする炭酸ジエステルの精製方法。 - 前記第二蒸留工程において、前記第一蒸留工程の前記蒸留残渣量の5重量%分を蒸留塔頂より抜き出し、且つ、10重量%分を蒸留塔底から抜き出し、残りを精製物とすることを特徴とする請求項6に記載の炭酸ジエステルの精製方法。
- 前記第二蒸留工程において塩基性物質を添加することを特徴とする請求項6に記載の炭酸ジエステルの精製方法。
- 前記塩基性物質は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び/又はこれらの酸化物、水酸化物、炭酸塩から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載の炭酸ジエステルの精製方法。
- 前記塩基性物質は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とする請求項8又は9に記載の炭酸ジエステルの精製方法。
- 前記芳香族ジヒドロキシ化合物がビスフェノール類であることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の炭酸ジエステルの精製方法。
- 請求項6乃至11のいずれか1項に記載の炭酸ジエステルの精製方法で得られる炭酸ジエステルを、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート製造工程にリサイクルすることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 請求項6乃至11のいずれか1項に記載の炭酸ジエステルの精製方法で得られる炭酸ジエステルとモノヒドロキシ化合物及びカルボニル化合物から製造される炭酸ジエステルとの混合物を、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によるポリカーボネート製造工程の原料として使用することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
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