JP2008223052A - 希土類磁石合金、希土類磁石合金薄帯の製造方法、およびボンド磁石 - Google Patents
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Abstract
【課題】希土類元素が比較的少ない量でありながら、十分な磁気特性を備えた希土類磁石合金を得る。
【解決手段】磁石の合金組成式がRw Tx My Yz (Rは、Yを除くNd、Pr、Dy、Ho、Tbのうちの少なくとも1種を含む希土類元素、TはFe、またはFeの一部を20%以上のCoで置換したもの、MはB、またはBおよびC)であり、組成比率w、x、y、zが、3.0≦w≦5.0at%、x=100−w−y−z、6.0≦y≦8.0at%、および、0.1≦z≦1.0at%を満足することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】磁石の合金組成式がRw Tx My Yz (Rは、Yを除くNd、Pr、Dy、Ho、Tbのうちの少なくとも1種を含む希土類元素、TはFe、またはFeの一部を20%以上のCoで置換したもの、MはB、またはBおよびC)であり、組成比率w、x、y、zが、3.0≦w≦5.0at%、x=100−w−y−z、6.0≦y≦8.0at%、および、0.1≦z≦1.0at%を満足することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、低希土類元素および低B(ボロン)であるにも拘わらず高残留磁束密度および耐熱性を有する希土類磁石合金、希土類磁石合金薄帯の製造方法、およびボンド磁石に関するものである。
Ndに代表される希土類元素、鉄、ボロンを含む希土類磁石合金が知られている。たとえば、ネオジウム−鉄−ボロン系磁石合金がそれである。このような磁石合金は、その粉末を樹脂バインダを用いて成形して着磁したボンド磁石、その粉末をホットプレスにより成形し着磁した熱間成形磁石などに用いられる。これらの磁石は、比較的高い磁気特性と成形の容易性とが同時に得られ、種々のモータの部品などに広く用いられている。
保磁力を引き下げて着磁を容易にするためや、高価な元素の消費を少なくして低コストとするために、Nd( ネオジウム) などの希土類元素の割合を低くする試みがなされているが、Nd量を少なくすると磁石の温度特性が悪くなり、高温とされたときの不可逆減磁率が使用に耐えられない程度の値に増加する。
これに対し、希土類元素の割合を低くしても温度特性の悪化を回避した希土類−鉄−ボロン系磁石合金が提案されている。たとえば、特許文献1に記載されたものがそれである。この技術は、合金組成Rw Fe100−w−x−y−z Cox By Mz (ただし、RはYを含む希土類元素から選んだ1種または2種以上の金属、MはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、TaおよびWから選んだ1種または2種以上の金属であり、w=2〜12、x=0〜10、y=3〜9、z≦0.5)を持つ磁石合金の急冷薄帯を粉砕することにより、希土類−鉄−ボロン系磁石合金を得るものである。これによれば、希土類−鉄−ボロン系磁石合金において、Ndなどの希土類の量を低減することにより保磁力を低下させ着磁を容易にするとともに残留磁束密度を向上させた合金組成を採用したとき、従来は避けられなかった温度特性の悪化を防止でき、高温で使用したときの不可逆減磁率の度合いが小さい磁石が得られる。
特開平9−320824号公報
ところで、上記従来の希土類−鉄−ボロン系磁石合金では、確かに希土類元素の含有量が少なくされているが、保磁力、残留磁束密度等の磁気特性が必ずしも十分なものではないという問題があった。すなわち、保磁力、残留磁束密度等のどの磁気特性においても必要な値が得られバランスのとれた希土類磁石合金が待ち望まれていた。
そこで、本発明は、希土類元素が比較的少ない量でありながら、十分な磁気特性を備えた希土類磁石合金を得ることを課題とする。
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、希土類磁石合金であって、その合金の組成式はRw Tx My Yz (Rは、Yを除くNd、Pr、Dy、Ho、Tbのうちの少なくとも1種を含む希土類元素、Tは、Fe、またはFeの一部を20%以下のCoで置換したもの、MはB、またはBおよびC)であり、組成比率w、x、y、zが、3.0≦w≦5.0at%、x=100−w−y−z、6.0≦y≦8.0at%、および、0.1≦z≦1.0at%を満足することを特徴とする。
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記組成式Rw Tx My Yz のうち、Feが0.1〜3.0at%のTiで置換されていることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1または2に係る発明において、前記組成式Rw Tx My Yz のうち、Feが0.1〜2.0at%のNbで置換されていることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至請求項3のいずれかの希土類磁石合金の溶湯を冷却して得られる希土類磁石合金薄帯であって、その希土類磁石合金薄帯を着磁し、その着磁後の希土類磁石合金薄帯を125℃まで加熱したときの不可逆減磁率が4.0%以下であることを特徴とする。
また、請求項5に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至請求項3のいずれかの希土類磁石合金の溶湯を冷却して得られる希土類磁石合金薄帯を、粉砕し、樹脂と混合し、成形することによって得られるボンド磁石である。
また、請求項6に係る発明の要旨とするところは、希土類磁石合金薄帯の製造方法であって、(a) 請求項1乃至3のいずれかの希土類磁石合金の溶湯を回転する冷却ホイール上に供給することにより薄帯を形成する薄帯形成工程と、(b) その薄帯を熱処理してその薄帯を結晶化させる熱処理工程とを、含むことを特徴とする。
また、請求項7に係る発明の要旨とするところは、請求項6に係る発明において、前記冷却ホイールは、20〜40m/secの周速で回転することを特徴とする。
また、請求項8に係る発明の要旨とするところは、請求項6または7に係る発明において、前記熱処理工程の熱処理温度が675〜725℃であることを特徴とする。
請求項1にかかる発明の希土類磁石合金によれば、その合金の組成式がRw Tx My Yz (Rは、Yを除くNd、Pr、Dy、Ho、Tbのうちの少なくとも1種を含む希土類元素、Tは、Fe、またはFeの一部を20%以下のCoで置換したもの、MはB、またはBおよびC)であり、組成比率w、x、y、zが、3.0≦w≦5.0at%、x=100−w−y−z、6.0≦y≦8.0at%、および、0.1≦z≦1.0at%を満足するものであることから、十分な磁石性能を備えた低希土類元素且つ低ボロンの希土類磁石合金が得られる。
上記請求項1に係る発明の希土類磁石合金において、その合金の組成式Rw Tx My Yz 中のRの組成比率wの範囲は3.0≦w≦5.0at%である。wがその下限値3.0at%を下回ると、最大エネルギー積(BH)max、保磁力HcJ、HcBが低下する。反対に、wがその上限値である5.0at%を上まわると、残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)が低下する。したがって、磁気特性のバランスを考えて上記Rの組成比率wの範囲が定められている。なお、5.0at%は、磁石組成の改良とYの最適な添加により、この種の磁石合金に代表的な値12を大幅に下回っている。これにより低コスト化を実現できる。また、上記組成式Rw Tx My Yz 中のMの組成比率yの範囲は6.0≦y≦8.0at%である。yがその下限値6.0を下回ると、最大エネルギー積(BH)max、保磁力HcJ、HcBが低下する。反対に、yがその上限値8.0at%を上まわると、残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)が低下する。したがって、磁気特性のバランスを考えて上記Mの組成比率yの範囲が定められている。また、上記組成式Rw Tx My Yz 中のYの組成比率zの範囲は0.1≦z≦1.0at%である。zがその下限値0.1at%を下回ると、最大エネルギー積(BH)max、保磁力HcJ、HcBが低下する。反対に、zがその上限値である1 .0at%を上まわると、残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)が低下する。Y( イットリウム)は保磁力増加効果が得られるが、大量に含まれると、保磁力HcJ、HcBや残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)を低下させる。したがって、磁気特性のバランスを考えて上記Yの組成比率zの範囲が定められている。合金の組成式Rw Tx My Yz の中のTの組成比率x( =100−w−y−z) は、上記組成比率w、y、zが決まることに従って、決定される。
また、請求項2に係る発明の希土類磁石合金によれば、前記組成式Rw Tx My Yz のうち、Feが0.1〜3.0at%のTi( チタン)で置換されていることから、磁石の組成中の結晶が小さくなり、磁束密度および保磁力が一層高められる。すなわち、上記合金の組成式Rw Tx My Yz の中のFeはその0.1〜3.0at%のTiで置換されている。一般に、Tiの添加は、合金の磁気特性を向上させる効果がある。TiがFeの0.1at%を下回ると、保磁力HcJ、HcBに関しての磁気特性が低下する。反対に、TiがFeの3.0at%を上まわると、残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)に関しての磁気特性が低下する。
また、請求項3に係る発明の希土類磁石合金によれば、前記組成式のうち、Feが0.1〜2.0at%のNb( ニオブ)で置換されていることから、磁石の組成中の結晶が小さくなり、磁束密度および保磁力が一層高められる。すなわち、上記合金の組成式Rw Tx My Yz の中のFeはその0.1〜2.0at%のNbで置換されている。一般に、Nbの添加は、合金の磁気特性を向上させる効果がある。NbがFeの0.1at%を下回ると、最大エネルギー積(BH)max、保磁力HcJ、HcBに関しての磁気特性が低下する。反対に、NbがFeの2.0at%を上まわると、残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)に関しての磁気特性が低下する。
また、請求項4に係る発明の希土類磁石合金薄帯によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかの希土類磁石合金の溶湯を冷却して得られる希土類磁石合金薄帯であって、その希土類磁石合金薄帯を着磁し、その着磁後の希土類磁石合金薄帯を125℃まで加熱したときの不可逆減磁率が4.0%以下であるので、磁石の組成中の結晶が小さくなり、磁束密度および保磁力が一層高められる。
また、請求項5に係る発明のボンド磁石によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかの希土類磁石合金の溶湯を冷却して得られる希土類磁石合金薄帯を、粉砕し、樹脂と混合し、成形することによって得られるボンド磁石であるので、十分な磁気性能を備えた低希土類元素且つ低ボロンの希土類磁石合金を含むボンド磁石が得られる。
また、請求項6に係る発明の希土類磁石合金薄帯の製造方法によれば、(a) 請求項1乃至3のいずれかの希土類磁石合金の溶湯を回転する冷却ホイール上に供給することにより薄帯を形成する薄帯形成工程と、(b) その薄帯を熱処理してその薄帯を結晶化させる熱処理工程とを、含むことから、磁石を構成する希土類磁石合金の組成中において、磁気的に寄与できる大きさの結晶が多く得られるので、保磁力を始めとする磁気特性が高められる。
また、請求項7に係る発明の希土類磁石合金薄帯の製造方法によれば、前記冷却ホイールは、20〜40m/secの周速で回転することから、磁石を構成する希土類磁石合金の組成中の結晶が磁気的に寄与できる大きさとなるための適切な冷却速度が得られるので、保磁力を始めとする磁気特性が高められる。冷却ホイールの周速が20m/secを下回ると、冷却ホイールの回転が遅過ぎて薄帯( リボン)の厚みが厚くなり、結晶が大きくなるので、磁気特性が低下する。反対に、冷却ホイールの周速が40m/secを上回ると、冷却ホイールの回転が速すぎて冷却ホイールから剥がれ易くなることから冷却効果が得られず、磁気特性の向上が望めない。
また、請求項8に係る発明の希土類磁石合金薄帯の製造方法によれば、前記熱処理工程の熱処理温度が675〜725℃であることから、磁石を構成する希土類磁石合金の組成中において磁気的に寄与できる大きさの結晶が増加されるので、保磁力を始めとする磁気特性が高められる。熱処理温度が675℃を下まわると、磁気的に寄与できる大きさの結晶の増加が不十分であり、熱処理温度が725℃を超えると結晶が大きくなりすぎて結晶数が減少し磁気的に寄与できる大きさの結晶数が十分に得られない。
ここで、好適には、前記希土類磁石合金の組成式Rw Tx My Yz において、RはYを除く希土類元素として定義されるが、そのRとして、Nd、Pr( プラセオジム)だけでなく、Dy( ジスブロジウム)、Ho( ホルミウム)、Tb( テルビウム)などの他の希土類元素が用いられても同様の効果が得られる。
また、好適には、前記希土類磁石合金の組成式Rw Tx My Yz において、TはFeのみであってもよいしFeの一部を20%以下のCoで置換したものであっても同様の効果が得られる。Feの一部をCoで置換した場合、残留磁化特性を向上させることができる。ここで、20%以下としたのは、20%を越えると保磁力が減少するためである。また、MはBのみであってもよいが、そのBにCが加えられたものであっても同様の効果が得られる。
また、好適には、前記希土類磁石合金は、125℃まで加熱したときの不可逆減磁率が4.0%以上である。これによれば、高い温度特性が得られる。
また、好適には、前記希土類磁石合金薄帯を粉砕し、樹脂と混合し、成形することによってボンド磁石を得ることができる。これによれば、磁束密度、保磁力において十分な磁石性能を備えた低希土類元素且つ低ボロンの希土類磁石合金から成る安価なボンド磁石が得られる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、たとえば図2に示す円筒状のボンド磁石10を製造するための製造工程を説明する図である。図1において、溶解工程P1では、溶解炉内に投入する複数種類の原料を調合して溶解することにより希土類磁石合金の溶湯12が作製される。原料は、その希土類磁石合金の組成式をRw Tx My Yz (Rは、Yを除くNd、Pr、Dy、Ho、Tbのうちの少なくとも1種を含む希土類元素、Tは、Fe、またはFeの一部を20%以下のCoで置換したもの、MはB、またはBおよびC)としたとき、その組成比率w、x、y、zが、3.0≦w≦5.0at%、x=100−w−y−z、6.0≦y≦8.0at%、および、0.1≦z≦1.0at%を満足するように調合され、溶解炉内においてその原料にたとえば高周波加熱が加えられることにより溶解される。
続く急冷工程( 急冷薄帯製造工程)P2では、図3に示すように溶解工程P1で溶解させられた溶湯12が急冷装置14を用いてロール急冷法により超急冷される。この急冷装置14を用いて行われる単ロール法では、真空若しくはアルゴンガスなどの不活性雰囲気下において、所定の周速で回転させられている冷却ホイール16の表面上に、前記溶解工程P1で溶解させられた溶湯12が溶湯容器18内から落下させられる。溶湯12は、回転させられている冷却ホイール16の表面に接触させられることによって急冷され、リボン20と呼ばれる偏平な原料片である薄帯が形成される。上記冷却ホイール16の周速は、磁石合金の組成によって異なるが、たとえば、20〜40m/秒である。また、冷却ホイール16は、熱伝導度が高い銅、または、銅とクロムやベリリウムなどとの合金等の熱伝導の良い材質から円柱状或いは厚肉円板状に構成される。この急冷工程P2により製造されるリボン20の厚さは、10〜40μm程度である。
次いで、粉砕工程P3では、上記急冷工程P2で得られたリボン20がたとえばピンミルなどの粉砕機で粉砕されて、フレーク状の磁石粉末が製造される。
次の熱処理工程P4では、上記磁石粉末の結晶の完全性を高めるようにすなわち磁気的に寄与できる大きさの結晶をアモルファス状態から増加させるように、上記粉砕工程P3により製造された磁石粉末が、アルゴンガスなどの不活性雰囲気下において500〜900℃、好適には675℃程度で5乃至10分程度加熱される。
混合工程P5では、上記磁石粉末から選別された150μm以下の磁粉粒子に、エポキシ樹脂等のバインダがたとえば2.5重量%の割合で添加された後、混練される。次いで、プレス成形工程P6では、このように混練された成形材料が所定の金型内に充填された状態でプレス成形される。そして、硬化工程P7では、オーブン内でたとえば200℃で1時間程度の加熱が加えられることにより成形品が硬化され、図2に示すボンド磁石10が得られる。そして、測定工程P8において、磁気性能の測定とともに、温度特性等の評価試験が行われる。
上述のように、本実施例のボンド磁石10に用いられる希土類磁石合金によれば、その合金の組成式がRw Tx My Yz (Rは、Yを除くNd、Pr、Dy、Ho、Tbのうちの少なくとも1種を含む希土類元素、Tは、Fe、またはFeの一部を20%以下のCoで置換したもの、MはB、またはBおよびC)であり、組成比率w、x、y、zが、3.0≦w≦5.0at%、x=100−w−y−z、6.0≦y≦8.0at%、および、0.1≦z≦1.0at%を満足するものであるので、十分な磁石性能を備えた低希土類元素且つ低ボロンの希土類磁石合金が得られる。
また、本実施例のボンド磁石10に用いられる希土類磁石合金によれば、その組成式Rw Tx My Yz のうち、Feが0.1〜3.0at%のTi( チタン)で置換されていることから、磁石の組成中の結晶が小さくなり、磁束密度および保磁力が一層高められる。
また、本実施例のボンド磁石10に用いられる希土類磁石合金によれば、その組成式のうち、Feが0.1〜2.0at%のNb( ニオブ)で置換されていることから、磁石の組成中の結晶が小さくなり、磁束密度および保磁力が一層高められる。
また、本実施例の希土類磁石合金薄帯の製造方法によれば、(a) 希土類磁石合金の溶湯12を回転する冷却ホイール16上に供給することによりリボン( 薄帯)20を形成する急冷工程P2と、(b) そのリボン( 薄帯)20を熱処理してそのリボン20を結晶化させる熱処理工程P4とを、含むことから、ボンド磁石10を構成する希土類磁石合金の組成中において、磁気的に寄与できる大きさの結晶が多く得られるので、保磁力を始めとする磁気特性が高められる。
また、本実施例の希土類磁石合金薄帯の製造方法によれば、冷却ホイール16は、20〜40m/secの周速で回転することから、ボンド磁石10を構成する希土類磁石合金の組成中の結晶が磁気的に寄与できる大きさとなるための適切な冷却速度が得られるので、保磁力を始めとする磁気特性が高められる。
また、本実施例の希土類磁石合金薄帯の製造方法によれば、熱処理工程P4の熱処理温度が675〜725℃であることから、ボンド磁石10を構成する希土類磁石合金の組成中において磁気的に寄与できる大きさの結晶が増加されるので、保磁力を始めとする磁気特性が高められる。
また、本実施例の希土類磁石合金を含むボンド磁石10によれば、粉砕工程P3においてリボン( 希土類磁石合金薄帯) 20が粉砕され、混合工程P5においてエポキシ樹脂等のバインダ樹脂と混合され、成形工程P6においてプレス成形されることによって得られるものであることから、磁束密度、保磁力において十分な磁石性能を備えた低希土類元素且つ低ボロンの希土類磁石合金から成る安価なボンド磁石10が得られる。
以下、上記ボンド磁石10に用いられる希土類磁石合金の作用効果を検証する為に本発明者が行った各実験例について説明する。
<実験1>
合金組成Rw Fe82.2−wCo8 Ti1.5 Nb1 B7 Y0.3 内の希土類元素Rの組成比率wが2.7at%、3.0at%、3.5at%、4.0at%、5.0at%である5種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で5種類のリボン状の試料( およそ5×1×0.02mm)を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、HcB[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
合金組成Rw Fe82.2−wCo8 Ti1.5 Nb1 B7 Y0.3 内の希土類元素Rの組成比率wが2.7at%、3.0at%、3.5at%、4.0at%、5.0at%である5種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で5種類のリボン状の試料( およそ5×1×0.02mm)を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、HcB[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
図4は、上記実験1の測定結果を示している。図4に示されるように、上記Rの組成比率wは、磁気特性のバランスを考慮すると、3.0≦w≦5.0at%の範囲内で好適な磁気性能が得られている。Rの組成比率wがその下限値3.0at%を下回ると、最大エネルギー積(BH)max、保磁力HcJ、HcBに関しての磁気特性が低下する。反対に、Rの組成比率wがその上限値である5.0at%を上まわると、残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)に関しての磁気特性が低下する。
<実験2>
Pr3.5 Fe79 Co8 Ti1.5 Nb1 B7 で示される低希土類且つ低ボロンの組成にY( イットリウム)をFeの一部を置換する形態で複数種類の割合で添加し、その合金組成Pr3.5 Fe79−z Co8 Ti1.5 Nb1 Yz B7 内のYの組成比率zが0at%、0.3at%、0.5at%、0.7at%、1.0at%、1.3at%である6種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、実験1と同様に、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で6種類の所定形状のリボン状の試料を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、HcB[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
Pr3.5 Fe79 Co8 Ti1.5 Nb1 B7 で示される低希土類且つ低ボロンの組成にY( イットリウム)をFeの一部を置換する形態で複数種類の割合で添加し、その合金組成Pr3.5 Fe79−z Co8 Ti1.5 Nb1 Yz B7 内のYの組成比率zが0at%、0.3at%、0.5at%、0.7at%、1.0at%、1.3at%である6種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、実験1と同様に、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で6種類の所定形状のリボン状の試料を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、HcB[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
図5は、上記実験2の測定結果を示している。図5において、上記Yの組成比率zは、磁気特性のバランスを考慮すると、0.1≦z≦1.0at%の範囲内で好適な磁気性能が得られている。Yの組成比率zがその下限値0.1at%を下回ると、最大エネルギー積(BH)max、保磁力HcJ、HcBに関しての磁気特性が低下する。反対に、Yの組成比率zがその上限値である1.0at%を上まわると、残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)に関しての磁気特性が低下する。
<実験3>
上記同様のPr3.5 Fe79Co8 Ti1.5 Nb1 B7 で示される低希土類且つ低ボロンの組成にY( イットリウム)をFeの一部を複数種類の割合でFeと置換して、その合金組成Pr3.5 Fe79−z Co8Ti1.5 Nb1 B7 Yz内のYの組成比率zが0at%、0.3at%、0.5at%、0.7at%、1.0at%である5種類の磁石合金の溶湯を作り、図1に示すものと同様の工程P1乃至P7で5種類のリボン状の試料を作製した。次いで、それらリボン状の試料を着磁した後、先ず加熱前の常温で残留磁束密度Brをそれぞれ測定した。次いで、それらリボン状の試料をオーブン内にて125℃にて加熱して常温に戻した状態で、加熱後の残留磁束密度Br’をそれぞれ測定した。そして、それらの測定値から各リボン状の試料の不可逆減磁率DM(%)を以下の式にしたがってそれぞれ算出した。
上記同様のPr3.5 Fe79Co8 Ti1.5 Nb1 B7 で示される低希土類且つ低ボロンの組成にY( イットリウム)をFeの一部を複数種類の割合でFeと置換して、その合金組成Pr3.5 Fe79−z Co8Ti1.5 Nb1 B7 Yz内のYの組成比率zが0at%、0.3at%、0.5at%、0.7at%、1.0at%である5種類の磁石合金の溶湯を作り、図1に示すものと同様の工程P1乃至P7で5種類のリボン状の試料を作製した。次いで、それらリボン状の試料を着磁した後、先ず加熱前の常温で残留磁束密度Brをそれぞれ測定した。次いで、それらリボン状の試料をオーブン内にて125℃にて加熱して常温に戻した状態で、加熱後の残留磁束密度Br’をそれぞれ測定した。そして、それらの測定値から各リボン状の試料の不可逆減磁率DM(%)を以下の式にしたがってそれぞれ算出した。
DM(%)=100×[ Br−Br’] /Br
図6は、Yの組成比率zが0at%、0.3at%、0.5at%、0.7at%、1.0at%である5種類の磁石合金を含む所定形状のリボン状の試料の不可逆減磁率DM(%)を示している。不可逆減磁率DM(%)は、Yが添加されることにより改善され、添加量の増加すなわち組成比率zの増加とともに不可逆減磁率DM(%)が零に向かって減少する。換言すれば、Yがたとえその組成比率zが0.1at%であっても添加されることによって磁石合金の温度特性が明らかに改善され、組成比率zが増加するに伴ってさらにその磁石合金の温度特性が一層改善される。
<実験4>
Pr5 Fe79.7Co8 B7 Y0.3で示される低希土類且つ低ボロンの組成にTi( チタン)をFeの一部を置換する形態で複数種類の割合で添加し、その合金組成Pr5 Fe79.7−tCo8 Tit B7 Y0.3内のTiの組成比率tが0at%、1.0at%、1.5at%、2.0at%、3.0at%、4.0at%である6種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、実験1と同様に、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で6種類の所定形状の試料を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 ] 、保磁力HcJ[ 単位:kA/m] 、残留磁化Jr [ 単位:T] をそれぞれ測定した。
Pr5 Fe79.7Co8 B7 Y0.3で示される低希土類且つ低ボロンの組成にTi( チタン)をFeの一部を置換する形態で複数種類の割合で添加し、その合金組成Pr5 Fe79.7−tCo8 Tit B7 Y0.3内のTiの組成比率tが0at%、1.0at%、1.5at%、2.0at%、3.0at%、4.0at%である6種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、実験1と同様に、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で6種類の所定形状の試料を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 ] 、保磁力HcJ[ 単位:kA/m] 、残留磁化Jr [ 単位:T] をそれぞれ測定した。
図7は、上記実験4の測定結果を示している。図7において、上記Tiの組成比率tは、磁気特性のバランスを考慮すると、1.0≦t≦3.0at%の範囲内で好適な磁気性能が得られている。tがその下限値1.0at%を下回ると、保磁力HcJに関しての磁気特性が低下する。反対に、tがその上限値である3.0at%を上まわると、最大エネルギー積(BH)max、保磁力HcJ、残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)に関しての磁気特性が低下する。
<実験5>
Pr5Fe78.2 Co8 Ti1.5 B7 Y0.3で示される低希土類且つ低ボロンの組成にNb( ニオブ)をFeの一部を置換する形態で複数種類の割合で添加し、その合金組成Pr5 Fe78.2−nCo8 Ti1.5 B7 Y0.3内のNbの組成比率nが0at%、1.0at%、2.0at%、3.0at%である4種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、実験1と同様に、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で4種類の所定形状の試料を作製し、2種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 ] 、保磁力HcJ[ 単位:kA/m] をそれぞれ測定した。
Pr5Fe78.2 Co8 Ti1.5 B7 Y0.3で示される低希土類且つ低ボロンの組成にNb( ニオブ)をFeの一部を置換する形態で複数種類の割合で添加し、その合金組成Pr5 Fe78.2−nCo8 Ti1.5 B7 Y0.3内のNbの組成比率nが0at%、1.0at%、2.0at%、3.0at%である4種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、実験1と同様に、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で4種類の所定形状の試料を作製し、2種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 ] 、保磁力HcJ[ 単位:kA/m] をそれぞれ測定した。
図8および図9は、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxと上記Nbの組成比率nとの関係を示すものであって、上記実験5の測定結果を示している。図8および図9において、上記Nbの組成比率nは、磁気特性のバランスを考慮すると、0.1≦t≦2.0at%の範囲内で好適な磁気性能が得られている。Nbの組成比率nがその下限値0.1at%を下回ると、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxに関しての磁気特性が低下する。反対に、Nbの組成nがその上限値である2.0at%を上まわると、保磁力HcJが一定値に安定し、最大エネルギー積(BH)maxが低下する。
<実験6>
Pr5 Fe84.2 Co8 Ti1.5 Nb1ByY0.3で示される低希土類且つ低ボロンの組成中のB( ボロン)を複数種類の割合で加え、その合金組成Pr5 Fe84.2Co8 Ti1.5 Nb1Y0.3内のBの組成比率yが5.0at%、6.0at%、7.0at%、8.0at%、9.0at%である5種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、実験1と同様に、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で3種類の所定形状の試料を作製し、2種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ[ 単位:kA/m又はkOe]、残留磁化Jr[単位:T](残留磁束密度Br[単位:kG]) をそれぞれ測定した。
Pr5 Fe84.2 Co8 Ti1.5 Nb1ByY0.3で示される低希土類且つ低ボロンの組成中のB( ボロン)を複数種類の割合で加え、その合金組成Pr5 Fe84.2Co8 Ti1.5 Nb1Y0.3内のBの組成比率yが5.0at%、6.0at%、7.0at%、8.0at%、9.0at%である5種類の磁石合金の溶湯を作る所定の原料を調合する他は、実験1と同様に、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で3種類の所定形状の試料を作製し、2種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ[ 単位:kA/m又はkOe]、残留磁化Jr[単位:T](残留磁束密度Br[単位:kG]) をそれぞれ測定した。
図10は、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxと上記Bの組成比率yとの関係を示すものであって、上記実験6の測定結果を示している。図10において、上記Bの組成比率yは、磁気特性のバランスを考慮すると、6.0≦y≦8.0at%の範囲内で好適な磁気性能が得られている。Bの組成比率yがその下限値6.0at%を下回ると、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxに関しての磁気特性が低下する。反対に、Bの組成比率yがその上限値である8.0at%を上まわると、残留磁化Jr ( 残留磁束密度Br)および最大エネルギー積(BH)maxが低下する。
<実験7>
Pr3.5 Fe78.5Co8 Ti1.5 Nb1 B7 Y0.5 で示される低希土類且つ低ボロンの合金組成の溶湯を用いて、急冷工程P2において冷却ホイール16を、20.0、25.0、30.0、40.0という4種類の周速RV(m/s)を用いて急冷を行った他は、実験1と同様に図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で4種類の所定形状の試料を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、HcB[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
Pr3.5 Fe78.5Co8 Ti1.5 Nb1 B7 Y0.5 で示される低希土類且つ低ボロンの合金組成の溶湯を用いて、急冷工程P2において冷却ホイール16を、20.0、25.0、30.0、40.0という4種類の周速RV(m/s)を用いて急冷を行った他は、実験1と同様に図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で4種類の所定形状の試料を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、HcB[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
図11は、上記実験7の測定結果を示している。図11において、上記冷却ホイール16の周速RV(m/s)は、磁気特性のバランスを考慮すると、20.0≦RV≦40.0の範囲内で好適な磁気性能が得られている。周速RVがその下限値20.0を下回ると、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxに関しての磁気特性が低下する。反対に、周速RVがその上限値である40.0を上まわると、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxに関しての磁気特性が低下する。冷却ホイール16の周速RVがその下限値20.0m/sを下回ると、冷却ホイール16の回転が遅過ぎてリボン( 薄帯)20の厚みが厚くなり、結晶が大きくなるので、磁気特性が低下すると考えられる。反対に、冷却ホイール16の周速RVが40m/sを上回ると、冷却ホイール16の回転が速すぎて冷却ホイール16から剥がれ易くなることから冷却効果が得られず、磁気特性の向上が望めない。
<実験8>
Pr3.5 Fe78.3Co8 Ti1.5 Nb1 B7 Y0.7 で示される低希土類且つ低ボロンの合金組成を用いて、熱処理工程P4で4種類の異なる熱処理温度TTすなわち650℃、675℃、700℃、725℃で熱処理を行った他は、実験1と同様に図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で4種類の所定形状の試料を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、HcB[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
Pr3.5 Fe78.3Co8 Ti1.5 Nb1 B7 Y0.7 で示される低希土類且つ低ボロンの合金組成を用いて、熱処理工程P4で4種類の異なる熱処理温度TTすなわち650℃、675℃、700℃、725℃で熱処理を行った他は、実験1と同様に図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で4種類の所定形状の試料を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、HcB[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
図12は、上記実験8の測定結果を示している。図12において、熱処理温度TT(℃)は、磁気特性のバランスを考慮すると、675℃乃至725℃の範囲内で好適な磁気性能が得られている。熱処理温度TTがその下限値675℃を下回ると、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxだけでなく、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])に関しての磁気特性が低下する。反対に、熱処理温度TTがその上限値である725℃を上まわると、同様に、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxだけでなく、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])に関しての磁気特性が低下する。熱処理温度TTが675℃を下まわると、磁気的に寄与できる大きさの結晶の増加が不十分となり、熱処理温度TTが725℃を超えると結晶が大きくなりすぎて十分な保磁力が得られないからである。
<実験9>
図13の表の合金組成に示す成分を有する原料を用いて、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で16種類の所定形状の試料( 実施例1〜8、比較例1〜8) を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
図13の表の合金組成に示す成分を有する原料を用いて、図1に示す工程P1、P2、P4と同様の工程で16種類の所定形状の試料( 実施例1〜8、比較例1〜8) を作製し、3種類の磁気特性、最大エネルギー積(BH)max[ 単位:kJ/m3 又はMGOe] 、保磁力HcJ、[ 単位:kA/m又はkOe] 、残留磁化Jr [ 単位:T] ( 残留磁束密度Br[単位:kG])をそれぞれ測定した。
図13の表は、上記実験9の測定結果を示している。その図13の表において、実施例1〜8の合金組成は、Prに対応する希土類元素Rの組成比率wが3.5乃至5at%、Yの組成比率zが0.3乃至0.7at%、Bの組成比率yが7at%であり、残留磁化Jrが1.20乃至1.38、保磁力HcJが201乃至369、最大エネルギー積(BH)maxが100乃至127である。すなわち、残留磁束密度Br1.20以上、且つ最大エネルギー積(BH)maxが100以上で比較的大きく、しかも保磁力HcJが過大或いは過少な値ではなく比較的安定した値であり、バランスのとれた高い磁石性能が得られる。
これに対し、図13の表において、比較例1では、Co、Ti、Nb、Yが含まれていないことから、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxが小さく、十分な磁石性能が得られない。また、比較例2では、比較例1の成分に加えてAgが加えられているものの、Co、Ti、Nb、Yが含まれていないことから、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxが小さく、十分な磁石性能が得られない。また、比較例3では、比較例1の成分に加えてTiが加えられているものの、Co、Nb、Yが含まれていないことから、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxが小さく、十分な磁石性能が得られない。比較例4では、比較例1の成分に加えてCo、Cu、Nbが加えられているものの、Yが含まれていないことから、保磁力HcJは改善されるけれども最大エネルギー積(BH)maxが小さく、十分な磁石性能が得られない。比較例5では、比較例1の成分に加えてCo、Ti、V、Cが加えられているものの、Yが含まれていないことから、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxは改善されるものの、残留磁化が小さく、十分な磁石性能が得られない。比較例6では、比較例1の成分に加えてTi、V、Cが加えられているものの、Yが含まれていないことから、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxは改善されるものの、残留磁化が小さく、十分な磁石性能が得られない。比較例7では、比較例1の成分に加えてCo、Ti、Nbが加えられているものの、Yが含まれていないことから、保磁力HcJおよび最大エネルギー積(BH)maxは改善されるものの、残留磁化が小さく、十分な磁石性能が得られない。比較例8では、比較例1の成分に加えてCo、Ti、Nbが加えられているものの、Yが含まれていないことから、保磁力HcJは改善されるものの、残留磁化および最大エネルギー積(BH)maxが小さく、十分な磁石性能が得られない。
その他一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
12:溶湯
16:冷却ホイール
P2:急冷工程( 急冷薄帯製造工程)
P4:熱処理工程
16:冷却ホイール
P2:急冷工程( 急冷薄帯製造工程)
P4:熱処理工程
Claims (8)
- 組成式がRw Tx My Yz (Rは、Yを除くNd、Pr、Dy、Ho、Tbのうちの少なくとも1種を含む希土類元素、Tは、Fe、またはFeの一部を20%以下のCoで置換したもの、MはB、またはBおよびC)であり、組成比率w、x、y、zが、3.0≦w≦5.0at%、x=100−w−y−z、6.0≦y≦8.0at%、および、0.1≦z≦1.0at%を満足することを特徴とする希土類磁石合金。
- 前記組成式のうち、Feが0.1〜3.0at%のTiで置換されていることを特徴とする請求項1の希土類磁石合金。
- 前記組成式のうち、Feが0.1〜2.0at%のNbで置換されていることを特徴とする請求項1または2の希土類磁石合金。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかの希土類磁石合金の溶湯を冷却して得られる希土類磁石合金薄帯であって、該希土類磁石合金薄帯を着磁し、該着磁後の希土類磁石合金薄帯を125℃まで加熱したときの不可逆減磁率が4.0%以下であることを特徴とする希土類磁石合金薄帯。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかの希土類磁石合金の溶湯を冷却して得られる希土類磁石合金薄帯を、粉砕し、樹脂と混合し、成形することによって得られるボンド磁石。
- 請求項1乃至3のいずれかの希土類磁石合金の溶湯を回転する冷却ホイール上に供給することにより薄帯を形成する薄帯形成工程と、
該薄帯を熱処理して該薄帯を結晶化させる熱処理工程と
を、含むことを特徴とする希土類磁石合金薄帯の製造方法。 - 前記冷却ホイールは、20〜40m/secの周速で回転することを特徴とする請求項6の希土類磁石合金薄帯の製造方法。
- 前記熱処理工程の熱処理温度が675〜725℃であることを特徴とする請求項6または7の希土類磁石合金薄帯の製造方法。
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-
2007
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