JP4421185B2 - 磁石材料とそれを用いたボンド磁石 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高性能永久磁石などとして用いられる磁石材料とそれを用いたボンド磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
Sm−Co系磁石やNd−Fe−B系磁石などの希土類系高性能永久磁石は、主としてモータや計測器などの電気機器に使用されている。各種電気機器への小形化および低価格化の要求が高まり、それらに対応するために永久磁石の高性能化を図ることが求められている。特に、HDD装置、CD装置、DVD装置などに用いられる媒体駆動用のスピンドルモータ、またCD装置やDVD装置に用いられる光ピックアップの駆動用アクチュエータには、装置の小形・高性能化を実現する上で、より一層高性能化を図った永久磁石が求められている。
【0003】
また、上述したような要求特性以外にも、使用環境や製造過程などで持続的もしくは一時的に高温に晒された場合においても、熱減磁が少ない永久磁石、すなわち耐熱性に優れる永久磁石が要求される用途もある。例えば、ページャや携帯電話に使用される振動モータには小形・軽量化を求められていると共に、他の電子部品と同様に組立コストの削減を図る上で、表面実装が可能な部品形状への要求が高まりつつある。
【0004】
表面実装工程ではリフロー炉による半田付けが実施されるが、永久磁石を組み込んだ小形モータをリフロー炉に通過させると、モータに組み込まれた磁石の温度上昇に応じて熱減磁が生じる。永久磁石に熱減磁が生じると、その減少幅に応じてモータ出力が低下するため、熱減磁を最小限にするように耐熱性を向上させた永久磁石が求められている。さらに、自動車のスピードメータに使用されるモータに代表されるように、使用環境温度が高い用途においても、耐熱性に優れる永久磁石が求められている。
【0005】
上述したような永久磁石への要求に対して、例えば永久磁石の高性能化(最大磁気エネルギー積((BH)max)の向上など)については、TbCu7型結晶構造を有する相(以下、TbCu7型結晶相と記す)を主相とするR1−R2−Fe(Co)−N系磁石材料(R1:Smなどの希土類元素、R2:ZrやHfなど)が提案されている(特許文献1など参照)。ここで、このような磁石材料を使用した永久磁石としては、例えば磁石粉末を樹脂系バインダなどと混合し、この混合物を例えば圧縮成形した成形体(圧縮成形体)により構成されるボンド磁石が一般的に使用されている。
【0006】
また、永久磁石の高耐熱性化に対してはキュリー温度並びに保磁力の増大が有効である。例えば、特許文献2にはTbCu7型結晶相を有するSm−Fe−N系磁石材料に、SmxFe100-x-y-vyv(MはHfおよびZrから選ばれる1種または2種、7≦x≦12、0.1≦y≦1.5、0.5≦v≦20(原子%))の合金組成を適用することによって、保磁力などの磁気特性を向上させることが記載されている。上記したように保磁力の増大は耐熱性の向上に対して有効である。なお、特許文献2にはSmの30原子%以下をCe、もしくはCe以外の希土類元素で置換することが記載されている。
【0007】
しかしながら、上述した特許文献2に記載されているSm−Fe−N系磁石材料は、高保磁力化に基づいて耐熱性に優れるものの、着磁性が悪いという欠点を有している。このため、強磁界着磁では良好な特性が得られたとしても、工業的に用いられる20〜25kOe程度の磁界では着磁性が悪く、本来の特性を実現することができない。さらに、量産性を考えた場合には特性のばらつきが大きいことに起因して、良好な特性を再現性よく実現できないという問題がある。
【0008】
一方、特許文献3にはTbCu7型結晶相を有するSm−Fe−N系磁石材料に、Rx100-x-y-vyv(RはSmおよびLaを必須元素として含む希土類元素(Sm比率:50原子%以上、La比率:0.05〜2原子%)、TはFeまたはFe−Co、MはZrやHfなど、4≦x≦15、0≦y≦10、10≦v≦20(原子%))の合金組成を適用すると共に、TbCu7型結晶相からなる硬質磁性相に加えて、面積比で10%未満のbcc構造の軟質磁性相を含ませることによって、Sm−Fe−N系磁石材料の着磁性を改善することが記載されている。このSm−Fe−N系磁石材料は着磁性に優れる反面、耐熱性が不十分であることから、特にリフロー炉などを通過させる際に生じる熱減磁が大きく、本来の高(BH)maxを活かすことができないという問題を有している。
【0009】
さらに、Sm−Fe−N系磁石材料を用いたボンド磁石の(BH)maxなどを改善するためには、例えば特許文献4に記載されているように、薄片状磁石材料とバインダとの圧縮成形体を高密度化(特許文献4では6.0×103kg/m3以上)することが有効である。ただし、特許文献4に記載されているように、磁石材料とバインダとの混合物にプレス圧力を複数回印加したり、また圧縮成形用金型に回転運動や往復運動などを加えることは、圧縮成形体の高密度化に対して有効であるものの、実用的な生産性の観点からは製造工数や製造コストの増大を招くことから、通常の圧縮成形工程で高密度化を達成することが望まれる。
【0010】
【特許文献1】
特開平6-127936号公報
【特許文献2】
特開2002-57017号公報
【特許文献3】
特開2001-135509号公報
【特許文献4】
特開2001-35714号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、TbCu7型結晶相を有するSm−Fe−N系磁石材料は、高(BH)maxを有する高性能磁石材料として期待されているものの、高耐熱性をもたらす高保磁力と実用性の向上などに繋がる着磁性とを両立させたSm−Fe−N系磁石材料は得られていないのが現状である。前述したように、高耐熱性が求められる用途も拡大していることから、着磁性を維持しつつ耐熱性を向上させたSm−Fe−N系磁石材料が強く求められている。また、Sm−Fe−N系磁石材料を用いたボンド磁石の実用的特性を高めるためには、高密度ボンド磁石の製造性や量産性を高めることが望まれている。
【0012】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、TbCu7型結晶相を主相とするSm−Fe−N系磁石材料の高耐熱性と着磁性を両立させ、耐熱用途などにおける実用性の向上を図った磁石材料、さらには高密度ボンド磁石の製造性や特性を高めることを可能にした磁石材料を提供することを目的としており、またそのような磁石材料を用いることによって、耐熱性や磁気特性の向上を図ると共に、着磁性や製造性などに基づく実用性を高めたボンド磁石を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はTbCu7型結晶相を主相とするSm−Fe−N系磁石材料の耐熱性と着磁性を両立させ、さらには磁気特性や生産性などを改善するために鋭意研究を重ねた結果、TbCu7型結晶相を主相とする磁性合金の組成を制御し、磁石材料に高保磁力をもたらすSmの一部をZrと共に他の希土類元素R、具体的にはCe、PrおよびNdから選ばれる少なくとも1種の元素で置換すると共に、これら置換元素の含有量を制御することによって、着磁性を維持しつつ耐熱性を向上させることが可能であること、さらにはボンド磁石の製造性や特性を高めることが可能であることを見出した。
【0014】
本発明の磁石材料はこのような知見に基づいて成されたものである。すなわち、本発明の磁石材料は請求項1に記載したように、希土類元素−鉄−窒素を主成分とし、かつTbCu型結晶相を主相とする磁石材料であって、
一般式:(Sm1−x−yZr)(Fe1−aCo
(式中、RはCe、PrおよびNdから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0≦a≦0.2を満足する数、x、y、zおよびvはそれぞれ原子比で0.01≦x≦0.1、0.05≦y≦0.1、8.2≦z≦8.、1.≦v≦1.を満足する数である)
で表される組成を有し、保磁力が876kA/m(11kOe)以上、かつ120℃での熱減磁(パーミアンス2の条件による)が5%以下であることを特徴としている。
【0015】
本発明の磁石材料は請求項2に記載したように、最大磁気エネルギー積(BH)maxが145kJ/m 以上であることが好ましい。また、本発明の磁石材料を構成するTbCu型結晶相は、請求項3に記載したように15〜40nmの範囲の平均結晶粒径を有することが好ましい。さらに、本発明の磁石材料は請求項4に記載したように、平均板厚が8〜30μmの範囲の合金薄片を有することが好ましい。
【0016】
本発明のボンド磁石は、請求項に記載したように、磁石材料とバインダ成分との混合物を磁石形状に成形してなるボンド磁石において、前記磁石材料が上記した本発明の磁石材料であることを特徴としている。本発明のボンド磁石は、請求項7に記載したように、最大磁気エネルギー積(BH)maxが103kJ/m 以上であることが好ましい。本発明のボンド磁石において、バインダ成分は請求項8に記載したように樹脂系バインダであることが好ましく、また樹脂系バインダを0.5〜5質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
本発明の磁石材料は、希土類元素(RE)−鉄(Fe)−窒素(N)を主成分とし、かつTbCu型結晶相を主相とするものである。このTbCu型結晶相を主相とするRE−Fe−N系磁石材料は、
一般式:(Sm1−x−yZr)(Fe1−aCo …(1)
(式中、RはCe、PrおよびNdから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0≦a≦0.2を満足する数、x、y、zおよびvはそれぞれ原子比で0.01≦x≦0.1、0.05≦y≦0.1、8.2≦z≦8.、1.≦v≦1.を満足する数である)
で表される組成を有している。
【0019】
上記した(1)式において、サマリウム(Sm)は磁石材料の基本となる元素であり、Fe−Nと格子を組むことで大きな磁気異方性エネルギーをもたらし、ひいては高い保磁力を与える成分である。保磁力の増大は前述したように耐熱性の向上に有効に作用する。ただし、Smの含有比率が高くなりすぎると着磁性が低下するため、本発明ではSmの一部をR元素とZrで置換している。
【0020】
ジルコニウム(Zr)は、磁気異方性エネルギーの制御による着磁性の改善、急冷効果すなわち結晶粒の微細化による磁石特性の向上、熱処理後の結晶粒の均質化効果、さらには急冷効果や特性の安定化などによる量産性の向上などをもたらす成分である。このようなZrの含有量yは原子比で0.05〜0.1の範囲とする。Zrの含有量yが0.05未満では安定した急冷効果を得ることができないため、磁石材料(合金薄片など)の量産性が低下する。一方、Zrの含有量yが0.1を超えると強度や靭性などが高くなりすぎて、ボンド磁石の作製時(例えば圧縮成形時)において磁石材料に割れが生じにくくなる。これはボンド磁石の成形体密度の低下、ひいては(BH)maxの減少などをもたらすことになる。Zrの含有量yは0.07〜0.15の範囲とすることがより好ましい。
【0021】
上述したように、Smの一部をZrで置換することによって、磁気異方性の制御による着磁性の改善効果などが得られるものの、過剰なZrによる置換は磁石材料の量産性の低下やボンド磁石の特性低下などをもたらす。そこで、本発明ではSmの一部をZrと同時に他の希土類元素、具体的にはCe、PrおよびNdから選ばれる少なくとも1種のR元素で置換している。このようなR元素は、主相の磁気異方性の制御による着磁性の改善、磁石材料の残留磁化Brの向上、磁石材料(合金薄片など)の砕けやすさの向上によるボンド磁石の高密度化や高性能化などに寄与する成分である。
【0022】
R元素の含有量xはZr含有量の減少を補う上で、原子比で0.01〜0.1の範囲とする。R元素の含有量xが0.01未満では上述したような効果を十分に得ることができない。一方、R元素の含有量xが0.1を超えると磁気異方性エネルギーが低下しすぎてしまい、保磁力ひいては耐熱性が低下する。R元素の含有量xは0.02〜0.1の範囲とすることがより好ましい。さらに、上述したR元素(Ce、Pr、Nd)のうち、特にPrおよびNdから選ばれる少なくとも1種を適用することが好ましい。これは飽和磁化が向上することから、高残留磁化ひいては高磁気エネルギー積を実現できることによる。また、同じ残留磁束密度を得るためには、結晶粒の微細化による高残留磁束密度化の効果を低減することができる。すなわち、結晶粒を若干大きくすることによって、熱に弱いレマネンスエンハンスメントの部分を低減できるため、不可逆熱減磁を抑制することができる。なお、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Lu、Yなどの他の希土類元素を不可避不純物として含有していても特に問題はない。
【0023】
上述したように、本発明の磁石材料はSmの一部をZrと共にR元素(Ce、Pr、Nd)で置換することに特徴を有する。これらSmの置換元素は、R元素とZrの合計量(x+y)が0.06〜0.25の範囲となるように調整することがより好ましい。このような置換元素量の範囲において、TbCu7型結晶相を主相とするRE−Fe−N系磁石材料に高残留磁化と好適な磁気異方性を付与することができる。R元素とZrの合計量(x+y)は0.08〜0.20の範囲とすることがさらに好ましい。
【0024】
鉄(Fe)およびコバルト(Co)は磁石材料の飽和磁化を増大させる働きを有する。飽和磁化の増大は残留磁化の増大をもたらし、これに伴って最大磁気エネルギー積((BH)max)も向上する。このようなFeとCoの合計量zは原子比で8.2〜8.の範囲とする。原子比zが8.2未満では十分な残留磁化が得られず、その結果として(BH)maxが低下する。一方、原子比zが8.を超えると高保磁力が得られにくくなり、その結果として耐熱性の低下を招く。FeとCoの合計量の原子比zは8.3〜8.8の範囲とすることがより好ましい。
【0025】
本発明の磁石材料は、主相のTbCu型結晶相を構成する磁性元素として少なくともFeを含んでいればよい。従って、FeとCoの比率を示すaの値は0を含むものである。耐食性などの点からFeとCoの組合せを使用することが好ましく、磁気異方性の適正化効果や飽和磁化の増大効果をより確実に得る上で、FeとCoの合計量に対するFe量の比率は80%以上(aの値=0.2以下)とする。aの値は0.03〜0.2の範囲とすることがさらに好ましい。
【0026】
なお、FeもしくはFe−Coの一部は、Ti、Cr、Cu、Mo、W、Mn、Ga、Al、Sn、Ta、Nb、SiおよびNiから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、M元素と記す)で置換してもよい。このようなM元素でFeもしくはFe−Coの一部を置換することによって、耐食性や耐熱性などの実用上の諸特性を改善することができる。ただし、あまり多量のM元素で置換すると磁気特性の低下が顕著となるため、M元素によるFeもしくはFe−Coの置換量は10原子%以下とすることが好ましい。
【0027】
窒素(N)は主として主相の格子間位置に存在し、Nを含まない場合と比較して主相のキュリー温度や磁気異方性を向上させる働きを示す。これらのうち、磁気異方性の向上は、磁石材料に十分な保磁力、ひいては良好な耐熱性を付与するために重要である。Nは少量の配合でその効果を発揮するが、その量が少なすぎたり、また多すぎると減磁曲線が2段となったり、保磁力の低下などが生じるため、Nの含有量vは原子比で1.〜1.の範囲とする
【0028】
なお、Nの一部はH、CおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、X元素と記す)で置換してもよく、これにより保磁力などの磁気特性を改善することができる。ただし、X元素によるNの置換量があまり多いと、主相のキュリー温度や磁気異方性の向上効果が低下するため、X元素によるNの置換量は20原子%以下とすることが好ましい。
【0029】
上記した(1)式で実質的に表される磁石材料は、酸化物などの不可避不純物を含有することを許容する。また、磁石材料は微量の硼素(B)を含んでいてもよい。Bは磁石材料(合金薄片)を急冷工程で作製する際のアモルファス化、さらには熱処理後の結晶粒の微細化、および結晶粒の微細化による残留磁化の向上や軟磁性相の析出抑制などに対して有効な働きを示す。
【0030】
本発明の磁石材料における主相(TbCu7型結晶相)とは、合金中のアモルファス相を含む構成相中の体積比が最大のものを指し、体積比で70%以上含むことが好ましい。さらに、磁石特性などの観点からはTbCu7型結晶相を体積比で80%以上含むことが望ましい。結晶構造はX線回折などにより容易に確認することができる。また、主相としてのTbCu7型結晶相の結晶粒径は、平均結晶粒径として15〜40nmの範囲であることが好ましい。
【0031】
このように、TbCu7型結晶相(結晶粒)を微細化することによって、残留磁化が大きくて最大磁気エネルギー積に優れると共に、保磁力も高い磁石材料が得られる。TbCu7型結晶相の平均結晶粒径が15nm未満であると、磁石材料の保磁力の低下、あるいは不可逆熱減磁率の増大を招くおそれがある。一方、平均結晶粒径が40nmを超えると、残留磁化ひいては最大エネルギー積を十分に高めることができないおそれがある。主相としてのTbCu7型結晶相の平均結晶粒径は17〜35nmの範囲であることがさらに好ましい。
【0032】
なお、TbCu7型結晶相(硬磁性相)の平均結晶粒径は、例えばTEM観察で得られた一視野の微細結晶の集合写真において、TbCu7型結晶相であることが確認された結晶粒の粒径の最大値と最小値の平均をとり、これを10視野について測定して平均を求めて平均結晶粒径とする。あるいは、X線回折の半値幅からシェラーの式で平均結晶粒径を求めてもよい。
【0033】
本発明の磁石材料は、上述したようにSmの一部を置換するZrおよびR元素の含有量、FeもしくはFe−Coの含有量、Nの含有量、さらにはTbCu7型結晶相の平均結晶粒径などに基づいて、良好な着磁性を維持した上で、高保磁力ひいては高耐熱性を付与したものである。磁石材料の保磁力に関しては、高耐熱性を得るために876kA/m(11kOe)以上であることが好ましい。言い換えると、本発明の磁石材料は良好な着磁性を維持した上で、876kA/m以上の保磁力を得ることを可能にしたものである。
【0034】
RE−Fe−N系磁石材料の保磁力が876kA/m未満であると、100℃以上の高温環境に晒されたときに熱減磁が大きいため、RE−Fe−N系磁石材料本来の高性能を発揮することができない。磁石材料の保磁力を876kA/m以上に制御することで、例えば120℃以上の高温環境下でも低い熱減磁が得られる。耐熱性の観点から磁石材料の保磁力は955kA/m(12kOe)以上であることがより好ましい。なお、保磁力は上述したように合金組成により調整され、また熱処理条件や窒化処理条件によっても制御することができる。
【0035】
上述したように、本発明の磁石材料は高保磁力に基づいて、高温環境下における熱減磁が少ないという特性を有している。具体的には、本発明の磁石材料は120℃での熱減磁がパーミアンス2の条件で5%以下とされている。このように、高温環境下(120℃)における熱減磁を低減することによって、本発明の磁石材料を用いた各種電気機器の耐熱性の向上、また表面実装工程におけるリフロー炉の適用などが可能となる。磁石材料の120℃での熱減磁は、合金組成や製造プロセスの最適化などで磁気異方性エネルギーや保磁力を制御することにより3%以下にすることができる。
【0036】
上記した熱減磁(条件:パーミアンス2)は以下のようにして求めるものである。まず、磁石材料を用いて円筒状ボンド磁石(直径10mm×高さ7mmの円筒状試料)を作製する。このボンド磁石を約3.9MA/m(50kOe)で着磁した後、サーチコイルとデジタル磁束計を用いて開放磁束量Φ1(Wb)を測定し、次いで大気中にて120℃×2時間の条件で加熱し、さらに室温まで冷却した後、この大気中加熱後の開放磁束量Φ2(Wb)を測定する。これらの測定値から熱減磁率を下記の式に基づいて求める。
式:熱減磁率={(Φ1−Φ2)/Φ1}×100(%)
【0037】
さらに、上述したTbCu7型結晶相を有する磁石材料は高保磁力を得た上で、合金組成やプロセス制御などに基づいて磁気異方性エネルギーを適正化しているため、実用的な着磁性を有するものである。具体的には、磁界強度が3.98MA/m(50kOe)の条件で着磁した際の最大磁気エネルギー積((BH)max-50)と1.59MA/m(20kOe)の条件で着磁した際の最大磁気エネルギー積((BH)max-20)との比から求められる着磁率を80%以上にすることができる。この着磁率はさらに精密な合金組成制御やプロセス調整を行うことで85%以上にすることができる。
【0038】
上記した着磁率は以下のようにして求めるものである。まず、磁石材料を用いて円筒状ボンド磁石を作製する。このボンド磁石を着磁界1.59MA/m(20kOe)で着磁した後に(BH)max-20(kJ/m3)を測定し、次いで測定後のボンド磁石を同一方向に3.98MA/m(50kOe)で着磁した後に(BH)max-50(kJ/m3)を測定する。これらの測定値から着磁率を下記の式に基づいて求める。
式:着磁率={(BH)max-20/(BH)max-50}×100(%)
【0039】
本発明の磁石材料は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、所定組成の母合金インゴットをアーク溶解や高周波溶解などにより調製する。母合金インゴットには、基本的には上述した(1)式の合金組成から窒素を除いた組成、すなわち
一般式:(Sm1−x−yZr)(Fe1−aCo …(2)
(式中、RはCe、PrおよびNdから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0≦a≦0.2を満足する数、x、yおよびzはそれぞれ原子比で0.01≦x≦0.1、0.05≦y≦0.1、8.2≦z≦8.を満足する数である)
で実質的に表される組成を有するものが用いられる。
【0040】
このような母合金を再溶融した後、この合金溶湯を不活性雰囲気中で単ロールや双ロールなどの高速移動する冷却体上に射出して急冷することによって、微細なTbCu7型結晶相を主相とする薄片状(または薄帯状)合金材(一部にアモルファス相を含む)、もしくは完全にアモルファス化させた薄片状合金材を作製する。このような薄片状合金材の作製条件は、ロール材質にCu基材料(例えばBeCu合金)を用い、かつロール周速を20〜50m/sとすることが好ましい。冷却ロールはCu基材料にCrやNiをメッキしたものであってもよい。
【0041】
急冷法により得られる薄片状合金材の板厚は、平均板厚として8〜30μmの範囲であることが好ましい。平均板厚が8μm未満であると、薄片状合金材の表面に顕著な凹凸が見られ、場合によっては板厚方向に貫通する孔が生じて特性低下をもたらすおそれがある。一方、平均板厚が30μmを超えると、急冷時のアモルファス化もしくは微細結晶化が困難となり、その後のプロセスで高磁気特性が得られにくくなる。薄片状合金材の平均板厚は10〜25μmであることがより好ましく、さらに好ましくは12〜20μmである。
【0042】
ここで、上述した薄片状(または薄帯状)合金材は、特に合金組成中のZr量に基づいて量産性に優れるものである。すなわち、上記した(2)式におけるZrの含有量yが0.05未満では、急冷時における冷却ロールとの密着性が低下して、優れた磁気特性を得るのに十分な急冷を実現することができない。Zrの含有量yが多い分には量産性に関する問題はないが、前述したように薄片状磁石材料に割れが生じにくくなり、通常の製造工程ではボンド磁石を高密度化することが困難となる。このように、ボンド磁石の高密度化の点から、Zrの含有量yは0.1以下とする。
【0043】
また、合金組成中のFeまたはFe−Coの原子比zも、薄片状(または薄帯状)合金材の量産性に影響を及ぼす。すなわち、FeまたはFe−Coの原子比zが8.9を超えると、急冷時における冷却ロールとの密着性が低下し、優れた磁気特性を得るのに十分な急冷が実現できない。また、Feなどの析出量が多くなり、高保磁力ひいては高耐熱性の磁石材料が得られにくくなる。さらに、冷却ロール上に射出する合金溶湯の温度も融点の高さから高く設定する必要があり、十分な冷却速度が取れにくくなる。一方、FeまたはFe−Coの原子比zが8.2未満であると、前述したように高残留磁化が得られにくくなり、その結果として(BH)maxの低下する。
【0044】
そして、急冷法により得られる薄片状合金材には、必要に応じて不活性雰囲気中で熱処理が施される。この熱処理で組織調整(例えば微細結晶化)することによって、微細でかつ均質なTbCu7型結晶相を主相とする薄片状合金材を再現性よく得ることが可能となる。結晶化のための熱処理、あるいは均質かつ微細な金属組織を得るのための熱処理は、合金組成や冷却条件などにより最適条件が異なるものの、例えばArなどの不活性ガス雰囲気や真空中にて700〜850℃の温度で10分〜24時間の条件で実施することが好ましい。熱処理条件は740〜820℃の温度で30分〜10時間とすることがより好ましい。この際、熱処理条件などによってはα−Fe相の析出などを招いて磁気特性を劣化させることがあるが、α−Fe相などの軟磁性相の比率が面積比で10%以下であれば許容され、上述したような磁気特性を得ることができる。
【0045】
次に、上述したTbCu7型結晶相を主相とする薄片状合金材に窒素を導入するための熱処理を行う。この窒素導入のための熱処理(窒化処理)は、窒素ガス雰囲気中、あるいはアンモニアガスと水素、窒素、アルゴンなどのガスとの混合ガス雰囲気中で実施する。窒化処理条件は雰囲気ガスによっても異なるが、例えば650〜800℃の温度で30分〜5時間の条件で行うことが好ましい。このような窒化処理を経ることによって、前述した(1)式で示される合金組成を有すると共に、TbCu7型結晶相を主相とする薄片状磁石材料(磁石粉末)が得られる。窒化処理は、5mm以下の長さのフレークが50質量%以上の薄片状合金材(必要に応じて破砕)に対して行うことが好ましく、これにより窒化反応速度を高めることができる。
【0046】
上述したような本発明の磁石材料はボンド磁石の作製に好適に用いられるものである。すなわち、磁石材料をバインダ成分と混合し、この混合物を所望の磁石形状に圧縮成形することによって、本発明のボンド磁石を構成する成形体が得られる。磁石形状は特に限定されるものではなく、例えばリング状、棒状、平板状などのいずれでもよいが、特に厚さの薄いボンド磁石に対して有効である。また、ボンド磁石の作製に使用するバインダは特に限定されるものではなく、通常の樹脂系バインダやメタルバインダを使用することができるが、本発明は樹脂系バインダを用いたボンド磁石に対して特に効果的である。
【0047】
樹脂系バインダとしては、例えばエポキシ系、ナイロン系、ポリアミド系、ポリイミド系、シリコーン系などの各種樹脂を使用することができ、特にエポキシ系樹脂が好適である。耐熱性が要求される用途に使用する場合には、エポキシ系、ポリアミド系、ポリイミド系などを用いることが好ましい。このような樹脂系バインダは、磁石材料に対して0.5〜5質量%の範囲で含有させることが好ましい。バインダ量が5質量%を超えるとボンド磁石の磁気特性が低下する。一方、バインダ量が0.5質量%未満であると、磁石材料間の接着が不十分になるおそれがある。バインダ量は1〜3質量%の範囲がより好ましい。バインダとしてエポキシ系樹脂のような熱硬化性樹脂を用いる場合には、圧縮成形工程後に100〜200℃程度の温度で硬化処理を行うことが好ましい。
【0048】
なお、本発明のボンド磁石には、チタン系、シリコーン系などのカップリング剤を加えてもよい。カップリング剤は磁石粉末の分散性を向上させるなどして、磁石密度の向上に対して有効に作用する。また、脂肪酸、脂肪酸塩類、アミン類、アミン酸類などの滑剤で磁石粉末の表面を処理してもよい。このような処理もボンド磁石の密度向上に対して有効に作用する。
【0049】
本発明の磁石材料を用いたボンド磁石は、前述したように充填密度を高くすることができるため、ボンド磁石としての特性を高めることができる。これは以下の理由による。すなわち、上述したような方法で作製したボンド磁石において、バインダ成分は磁気特性に寄与しないため、ボンド磁石としての最大磁気エネルギー積は磁石材料とバインダ成分との比率で決まる。つまり、バインダ成分の使用量だけ最大磁気エネルギー積が減少することを意味する。
【0050】
また、ボンド磁石内部をSEMなどで微視的に見ると空隙を確認できるが、この空隙も磁気特性に寄与しないため、空隙の量だけ最大磁気エネルギー積の減少に繋がる。この空隙は薄片状磁石材料が折り重なる際に隙間を埋めるように微細に砕けないことによるものであり、薄片状磁石材料の砕けやすさを増すことでボンド磁石内部の空隙を減少させることができる。すなわち、磁石材料の砕けやすさを増すことによって、ボンド磁石としての最大磁気エネルギー積を向上させることが可能である。
【0051】
例えば、SmとZrのみで磁気異方性エネルギーを調整した磁石材料は、ボンド磁石を作製する際に割れが生じにくいため、高密度化するためには工業的な圧縮力を超えるような圧縮工程、もしくは複雑な圧縮工程を行う必要がある。これに対して、本発明ではSmとR元素とZrの組合せで磁気異方性を調整しているため、薄片状磁石材料が割れやすく、これによって一般的な圧縮工程を適用した場合においてもボンド磁石を高密度化することができる。これはボンド磁石の量産性の向上、さらには量産時における特性向上などに寄与する。
【0052】
なお、Sm、R元素およびZrは非常に酸化されやすく、しかも最も飽和磁化が大きいFeも酸化されやすいため、磁石材料の製造工程で酸素が混入すると酸化物などを形成し、飽和磁化および最大磁気エネルギー積の低下につながり、場合によっては2段の減磁曲線となる。このようなことから、酸素含有量は少ないほうがよく、具体的には1000ppm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは850ppm以下である。
【0053】
本発明のボンド磁石は、モータ、計測器などの各種電気機器に利用することができる。特に、HDD、CD、DVDなどに用いられる媒体駆動用スピンドルモータ、光ピックアップのレンズアクチュエータ、プリンタ用モータ、携帯電話などの振動発生用ページャモータ、自動車用スピードメータのアクチュエータなど、小形・高性能が求められる種々のモータの部品として好適である。特に、耐熱性が求められる用途に対して、本発明のボンド磁石は好適である。
【0054】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0055】
実施例1
まず、高純度のSm、Ce、Zr、Fe、Coの各金属原料を所定の割合で調合し、Ar雰囲気中で高周波溶解して母合金インゴットを作製した。次いで、この母合金インゴットをAr雰囲気中で高周波誘導加熱により溶融した後、ノズルから合金溶湯を周速35m/sで回転する冷却ロール上に噴射して急冷させて薄帯状合金を作製した。薄帯状合金の平均板厚は約15μmであった。なお、急冷は1回30kgを単位とし、また冷却ロールの材質をBeCu合金、ロール径を500mmとして実施した。
【0056】
続いて、上記した薄帯状合金をAr雰囲気中にて770℃で60分間熱処理した。熱処理後の薄帯状合金のX線回折を行ったところ、微小なα−Fe相の回折ピークを除いて、全てのピークがTbCu7型結晶構造で指数付けされることを確認した。次いで、薄帯状合金を平均粒度が300μm程度となるように粉砕して薄片状とした後、アンモニアと水素の流量比を1:10とした混合ガス(NH3+H2)中にて460℃×3時間の条件で熱処理して窒素を導入し、さらに同一温度の窒素ガス中にて2時間熱処理することによって、目的とする磁石材料(磁石粉末)を作製した。
【0057】
上記した磁石材料は化学分析の結果、[(Sm0.81Ce0.10Zr0.09)(Fe0.85Co0.158.51.5]の組成を有していることが確認された。また、この磁石材料をTEM観察することによって、主相(TbCu7型結晶相)の平均結晶粒径を測定した。その結果、TbCu7型結晶相の平均結晶粒径は28nmであった。また磁石材料の磁気特性として、残留磁束密度Br、保磁力iHc、最大磁気エネルギー積(BH)maxを測定したところ、Brは920mT、iHcは1043kA/m、(BH)maxは150kJ/m3であった。磁石材料の合金組成や特性は表1に示す通りである。
【0058】
このようにして得た磁石材料(合金粉末)に、バインダとしてエポキシ樹脂を2質量%添加して混合した後、この混合物を油圧式プレス成形装置にセットし、1000MPaの圧力条件で圧縮成形した。この圧縮成形体を120℃×1時間の条件で加熱処理することによって、目的とするボンド磁石(50個)を得た。得られたボンド磁石の密度を測定すると共に、ボンド磁石の磁気特性として残留磁束密度Br、保磁力iHc、最大磁気エネルギー積(BH)maxを測定した。さらに、前述した方法にしたがってボンド磁石の熱減磁率と着磁率を測定した。これらの測定結果を表2に示す。測定結果は50個のボンド磁石の平均値である。
【0059】
実施例2〜29
実施例1と同様に、高純度の各金属原料を所定の割合で調合し、Ar雰囲気中で高周波溶解して母合金インゴットをそれぞれ作製した。次いで、これら母合金インゴットをAr雰囲気中で高周波誘導加熱により溶融した後、ノズルから合金溶湯を周速35〜45m/sで回転する冷却ロール上に噴射して急冷させることによって、それぞれ薄帯状合金を作製した。各薄帯状合金の平均板厚は表1に示す通りである。なお、急冷時の条件は実施例1と同様とした。
【0060】
続いて、上記した各薄帯状合金をAr雰囲気中にて770〜800℃で30〜60分間熱処理した。熱処理後の各薄帯状合金のX線回折を行ったところ、微小なα−Fe相の回折ピークを除いて、全てのピークがTbCu7型結晶構造で指数付けされることを確認した。次いで、各薄帯状合金を平均粒度が300μm程度となるように粉砕して薄片状とした後、アンモニアと水素の流量比を1:10とした混合ガス(NH3+H2)中にて460℃×3時間の条件で熱処理して窒素を導入し、さらに同一温度の窒素ガス中にて2時間熱処理することによって、目的とする磁石材料(磁石粉末)をそれぞれ作製した。
【0061】
各磁石材料の合金組成はそれぞれ表1に示す通りである。また、各磁石材料の主相(TbCu7型結晶相)の平均結晶粒径、残留磁束密度Br、保磁力iHc、最大磁気エネルギー積(BH)maxを測定した。これらの測定結果は表1に示す通りである。
【0062】
このようにして得た各磁石材料(合金粉末)に、バインダとしてエポキシ樹脂を2質量%添加して混合した後、この混合物を実施例1と同一条件で圧縮成形した。これら圧縮成形体を120℃×1時間の条件で加熱処理することによって、それぞれ目的とするボンド磁石(各50個)を得た。得られた各実施例のボンド磁石の密度、残留磁束密度Br、保磁力iHc、最大磁気エネルギー積(BH)maxを測定した。さらに、前述した方法にしたがって各ボンド磁石の熱減磁率と着磁率を測定した。それらの測定結果を表2に示す。
【0063】
比較例1〜12
表1に示す合金組成を適用する以外は、上述した実施例と同様にして磁石材料(磁石粉末)をそれぞれ作製し、さらに各磁石材料を用いて上述した実施例と同様にしてボンド磁石(各50個)を作製した。これら比較例の磁石材料およびボンド磁石についても、実施例と同様にして特性を測定、評価した。これらの測定結果を表2に併せて示す。
【0064】
比較例13
表1に示す磁石材料組成を満足するように調製した合金溶湯を、周速0.5m/sで回転する冷却ロール上に噴射して急冷させることによって、平均板厚が約300μmのフレーク状合金を作製した。このフレーク状合金に1×105Paの水素ガス雰囲気中にて675℃×1時間の条件で水素化・分解反応処理を施し、続いて6Paの真空中で790℃×1.5時間の脱水素・再結合反応処理を行った。次に、Ar雰囲気中で微粉化し、さらに1×105Paの窒素雰囲気中にて440℃×8時間の条件で熱処理(窒化処理)して磁石材料とした。この磁石材料を用いる以外は、上述した実施例と同様にしてボンド磁石(50個)を作製した。この比較例13の磁石材料およびボンド磁石についても、実施例と同様にして特性を測定、評価した。その測定結果を表2に併せて示す。
【0065】
【表1】
Figure 0004421185
【0066】
【表2】
Figure 0004421185
【0067】
表1から明らかなように、実施例1〜29による各磁石材料は、量産性を念頭に1回の急冷量を増やして作製したにもかかわらず、優れた着磁性と大幅に低減された熱減磁率とが両立していることが分かる。さらに、実施例1〜29による各磁石材料を用いて作製したボンド磁石は、いずれも高密度とそれに基づく高磁石特性(高(BH)maxなど)が得られていることが分かる。一方、比較例1〜13は、磁石粉末としての特性が低い、磁石粉末の特性は高いがボンド磁石にした場合に密度が上がりにくく特性が低い、着磁特性が悪い、あるいは熱減磁率が大きいなどのいずれかに当てはまり、実用性の低いものであった。
【0068】
また、(Sm0.9-yNd0.1Zry)(Fe0.85Co0.158.5v組成におけるZrの含有量yと磁石材料(磁石粉末)の(BH)maxとの関係を図1に示す。さらに、同様な組成の磁石材料(磁石粉末)を用いて作製したボンド磁石の密度とZrの含有量yとの関係を図2に示す。図1からはZr含有量が低すぎると急冷効果の低下などに基づいて磁気特性が低下し、一方Zr含有量が多すぎても、言い換えるとSmの置換量が多すぎても磁気特性が低下することが分かる。また、図2からはZr含有量がボンド磁石の密度、言い換えると磁石材料の割れやすさに影響していることが分かる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば高耐熱性と良好な着磁性を両立させた磁石材料(TbCu7型結晶相を主相とする磁石材料)を提供することができる。これは耐熱用途などにおける高性能磁石材料、さらにはそれを用いたボンド磁石の実用性向上に大きく寄与するものである。さらに、本発明の磁石材料はボンド磁石の高密度化に対しても有効であるため、耐熱性や磁気特性の向上を図ると共に、着磁性や製造性などを高めたボンド磁石を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例における磁石材料中のZrの含有量yと磁石材料の(BH)maxとの関係を示す図である。
【図2】 本発明の実施例における磁石材料中のZrの含有量yとそれを用いて作製したボンド磁石の密度との関係を示す図である。

Claims (8)

  1. 希土類元素−鉄−窒素を主成分とし、かつTbCu型結晶相を主相とする磁石材料であって、
    一般式:(Sm1−x−yZr)(Fe1−aCo
    (式中、RはCe、PrおよびNdから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0≦a≦0.2を満足する数、x、y、zおよびvはそれぞれ原子比で0.01≦x≦0.1、0.05≦y≦0.1、8.2≦z≦8.、1.≦v≦1.を満足する数である)
    で表される組成を有し、保磁力が876kA/m以上、かつ120℃での熱減磁(パーミアンス2の条件による)が5%以下であることを特徴とする磁石材料。
  2. 請求項1記載の磁石材料において、
    最大磁気エネルギー積(BH)maxが145kJ/m以上であることを特徴とする磁石材料。
  3. 請求項1または請求項2記載の磁石材料において、
    前記TbCu型結晶相は15〜40nmの範囲の平均結晶粒径を有することを特徴とする磁石材料。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の磁石材料において、
    平均板厚が8〜30μmの範囲の合金薄片を有することを特徴とする磁石材料。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の磁石材料において、
    着磁界3.98MA/mで着磁した際の最大磁気エネルギー積を(BH)max−50、着磁界1.59MA/mで着磁した際の最大磁気エネルギー積を(BH)max−20としたとき、これらの比から求められる着磁率({(BH)max−20/(BH)max−50}×100)が80%以上であることを特徴とする磁石材料。
  6. 磁石材料とバインダ成分との混合物を磁石形状に成形してなるボンド磁石において、
    前記磁石材料は請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の磁石材料であることを特徴とするボンド磁石。
  7. 請求項6記載のボンド磁石において、
    最大磁気エネルギー積(BH)maxが103kJ/m以上であることを特徴とするボンド磁石。
  8. 請求項7記載のボンド磁石において、
    前記バインダ成分は樹脂系バインダからなり、かつ前記樹脂系バインダを0.5〜5質量%の範囲で含有することを特徴とするボンド磁石。
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