JP2008213643A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】別途高精度の舵角センサやトルクリミッタ等を追加することなく、端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界となった時に中間シャフト等のトルク伝達部材に伝達される衝撃力を緩和することができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング機構に操舵補助トルクを伝達する電動モータ12と、操舵トルクに基づく電流指令値に応じて電動モータ12を駆動制御するコントローラ15とを備え、コントローラ15は、モータトルクの変化率ΔTmaに基づいて端当て時か否かを判定する端当て判定部52を有する。そして、モータトルク変化率ΔTmaが、操舵角δに応じて設定される操舵限界を判断する閾値ΔTmaTH以上であるとき、パルス幅変調信号のデューティ比を所定値に固定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、少なくとも操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、ステアリング機構に操舵補助力を与える電動モータと、前記電流指令値に基づいて電動モータを制御するモータ制御部とを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
従来、ステアリング装置として運転者がステアリングホイールを操舵する操舵トルクに応じて電動モータ駆動することによりステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が普及している。
一般に、ステアリング機構では、ステアリングホイールを中立位置から左及び右の何れかの操舵方向に操舵を続けて、ステアリングホイールの操作量がその最大値に相当する最大舵角に達すると、ステアリング機構がメカニカルストッパに当接してそれ以上の操舵ができない操舵限界となる。このような操舵限界となって、メカニカルストッパに当接する状態となることを所謂端当てと称している。
そして、ステアリングホイールが素早く操作される場合即ち操舵速度が大きい場合には、電動パワーステアリング装置で発生する操舵補助力も大きくなり、端当ての際に生じる衝撃力が大きなものとなり、その結果、ステアリング機構の耐久性が低下したり、操舵操作において運転者が不快感を覚えたりすることがある。
このため、従来、端当て時の衝撃を緩和するように構成された電動パワーステアリング装置として、舵角が最大舵角近傍の所定舵角を超えると電動機の操舵補助トルクを低減補正するアンローダ補正部を有し、このアンローダ補正部で、操舵速度が速いほど前記補助操舵トルクの低減補正量を増大修正するというものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、操舵輪が所定の最大舵角に接近して減衰開始舵角を超えたことが検出された場合に、電動モータの駆動力を減衰させる減衰手段と、操舵輪の負荷及び操舵輪の操舵速度に応じて前記減衰開始舵角を設定する減衰開始舵角設定手段とを備えた電気式パワーステアリング装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
ところが、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、最大舵角近傍において操舵補助トルクの低減補正量を増大修正するようにしているので、舵角を検出するセンサが必要となると共に、操舵速度が速い場合には、電動機の慣性により、必ずしも端当て時の衝撃を十分に緩和することができない。
また、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、操舵輪の負荷及び操舵輪の操舵速度に応じて減衰開始舵角を設定するので、操舵速度が高速である場合には、最大舵角と減衰開始舵角との差を大きくする(電動モータの駆動力を減衰させる時点を早める)ことで、モータ慣性によって端当て時に大きな衝撃が発生することを防止することが可能となるものであるが、最大舵角近傍でアシスト力が不足してしまうと共に、ステアリングホイールを最大舵角近傍から中立位置へ向かって切り戻す場合には、電動モータの駆動力の減衰により、操舵補助力が不十分となってステアリングホイールが最大舵角付近に張り付くような感覚を与え、操舵フィーリングが悪化してしまう。
そこで、機械的に端当ての衝撃を低減することが考えられている(例えば、特許文献3参照)。
この特許文献3に記載の発明では、電動モータから操舵輪への操舵力伝達系の途中であって、電動モータから伝えられるトルクが作用する部分に、該部分に作用するトルクが所定値に達した場合に当該トルクの伝達を制限するトルクリミッタを設けることにより、操舵輪がステアリングエンドに達した時等、操舵輪の操舵動作が急激に停止した場合に瞬間的に増加する電動モータの回転エネルギによるトルクをトルクリミッタにより制限し、所定値以上のトルクの操舵輪側への電動を阻止して大きな衝撃力の発生を防止するようにしている。
特開2001−253356号公報(第1頁、図2、図7) 特開2001−30933号公報(第1頁、図2、図3) 特開2000−335431号公報(第1頁、図2、図3)
ところで、端当て時やタイヤが縁石に当接した時のように操舵限界に達した時の衝撃荷重が及ぼす影響のうち、ステアリングシャフトとステアリングギヤとの間に介挿されたトルク伝達部材としての中間シャフトに与える影響が大きく、この中間シャフトの耐久性が低下する。
上記各従来例にあっては、ステアリング機構がメカニカルストッパに当接する端当て時などの操舵限界となった時の衝撃を緩和できるものであるが、第1及び第2の従来例のような対策では、ステアリングホイールの絶対角度情報を使用するため、高精度の舵角センサ又は絶対舵角推定機能が必要となり、横滑り防止装置用の低精度の舵角センサを流用することはできず、高価な舵角センサや絶対舵角推定機能を必要とするので、製造コストが嵩む。また、タイヤが縁石に当接した場合など、舵角に関係なく中間シャフト等のトルク伝達部材に伝達される衝撃力を緩和することができない。
また、第3の従来例のように、端当て時の衝撃を、トルクリミッタを使用して機械的に防止するには、トルクリミッタを組込む必要があり、同様に製造コストが嵩む。
そこで、本発明は、別途高精度の舵角センサやトルクリミッタ等を追加することなく、端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界となった時に中間シャフト等のトルク伝達部材に伝達される衝撃力を緩和することができる電動パワーステアリング装置を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、請求項1に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、前記ステアリング機構のステアリングシャフトに与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記モータ制御手段は、操舵角を検出又は推定する操舵角検出手段と、該操舵角検出手段で検出又は推定した操舵角に基づいて操舵限界を判断する閾値を設定する閾値設定手段と、前記電動モータと前記ステアリングシャフト間に発生しているモータトルクを検出するモータトルク検出手段と、該モータトルク検出手段で検出したモータトルクの変化率を演算するモータトルク変化率検出手段と、該モータトルク変化率検出手段で演算したモータトルクの変化率が、前記閾値設定手段で設定した閾値以上であるとき、デューティ比制限条件を満足したものと判断して、前記パルス幅変調信号のデューティ比を、前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制する所定値に固定するデューティ比制限手段とを有することを特徴としている。
また、請求項2に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記閾値設定手段は、前記操舵角検出手段で検出した操舵角が大きいほど、前記モータトルクの変化率が前記閾値を越えやすくなる方向に当該閾値を変更することで、操舵限界と判断し易くすることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記電動モータの駆動電流を検出する駆動電流検出手段と、前記電動モータの回転角加速度を検出する回転角加速度検出手段とを有し、前記モータトルク検出手段は、前記駆動電流検出手段で検出したモータ駆動電流と前記回転角加速度検出手段で検出した回転角加速度とから前記電動モータと前記ステアリングシャフトとの間に発生しているトルクを演算することを特徴としている。
また、請求項4に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記モータトルク検出手段は、前記電動モータの出力軸から前記ステアリングシャフトに至る間のトルク伝達軸に配設した磁歪式トルクセンサで構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項5に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1〜4の何れか1項に係る発明において、前記操舵角検出手段は、操舵角センサで構成されていることを特徴としている。
また、請求項6に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1〜4の何れか1項に係る発明において、前記操舵角検出手段は、車両の舵角位置を相対的に検出する舵角位置検出手段と、舵角位置の中立点を特定する中立点特定手段とを有し、前記舵角位置検出手段で検出した舵角位置及び中立点特定手段で特定した中立点に基づいて操舵角を推定することを特徴としている。
本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、モータトルクの変化率が、操舵角に基づいて設定される操舵限界を判断する閾値以上であるとき、デューティ比制限条件を満足したものと判断して、パルス幅変調信号のデューティ比をステアリング機構のステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制する所定値に固定するので、ステアリングシャフト及びステアリングギヤ間に介挿された中間シャフト等のトルク伝達部材に過大なトルクが伝達される前に電動モータで発生する操舵補助トルクを制限することができ、別途高精度の舵角センサやトルクリミッタ等を追加することなく、端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界となった時に中間シャフト等のトルク伝達部材に伝達される衝撃力を緩和することができるという効果が得られる。
また、操舵角が大きいほど、モータトルクの変化率が上記閾値を越えやすくなる方向に当該閾値を変更して、操舵限界と判断し易くすることで、本来のラックエンド当てにおけるデューティ比の制限制御の効果を低減させることなく、舵角エンド以外での操舵限界の誤検出を防止することができるという効果が得られる。さらに、舵角エンド以外においてデューティ比の制限制御を非作動とするわけではないため、縁石当てが発生した場合など、舵角エンド以外にてトルク伝達部材への過大トルクを抑制する必要がある場合には、確実に上記制限制御を機能させることができるという効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る電動パワーステアリング装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図中、符号SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aとこの入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、2つのヨーク4a,4bとこれらを連結する十字連結部4cとで構成されるユニバーサルジョイント4を介して中間シャフト5に伝達され、さらに、2つのヨーク6a,6bとこれらを連結する十字連結部6cとで構成されるユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。
このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ8を介して左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ8は、ギヤハウジング8a内に、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8bとこのピニオン8bに噛合するラック軸8cとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8bに伝達された回転運動をラック軸8cで直進運動に変換している。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速ギヤ11と、この減速ギヤ11に連結された操舵補助力を発生する電動機としての例えばブラシレスモータで構成される電動モータ12とを備えている。
また、減速ギヤ11のステアリングホイール1側に連接されたハウジング13内に操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を非接触の磁気センサで検出するように構成されている。
そして、操舵トルクセンサ14から出力される操舵トルク検出値Tは、図2に示すように、コントローラ15に入力される。このコントローラ15には、トルク検出値Tの他に車速センサ16で検出した車速検出値V、電動モータ12に流れるモータ電流Iu〜Iw、レゾルバ、エンコーダ等で構成される回転角センサ17で検出した電動モータ12の回転角θ、及び操舵角センサ18で検出した操舵角δも入力される。そして、入力されるトルク検出値T及び車速検出値Vに応じた操舵補助力を電動モータ12で発生させる操舵補助トルク指令値IM *を算出し、算出した操舵補助トルク指令値IM *に対して、回転角θに基づいて算出するモータ角速度ω及びモータ角加速度αに基づいて各種補償処理を行ってからd−q軸電流指令値Id*,Iq*に変換する。また、モータ電流Iu〜Iwを3相/d−q変換してd−q軸モータ電流Id,Iqを算出し、前記d−q軸電流指令値Id*,Iq*とd−q軸モータ電流Id,Iqとに基づいて電動モータ12に供給する駆動電流をフィードバック処理して、その結果をd−q/3相変換し、電動モータ12を駆動制御するモータ電流Iu,Iv及びIwを出力する。
すなわち、コントローラ15は、操舵トルクT及び車速Vに基づいて操舵補助トルク指令値IM *を演算する操舵補助トルク指令値演算部21と、算出された操舵補助トルク指令値IM *を補償する指令値補償部22と、この指令値補償部22で補償されたトルク指令値Irに基づいてd−q軸電流指令値Id*,Iq*を算出し、これら指令電流に基づいてモータ電流Iu〜Iwを生成するモータ電流制御部23とを備えている。
また、コントローラ15は、操舵角センサ18で検出した操舵角δに基づいて、ステアリングギヤ8のラック軸8cがラックストロークエンドに達するか又はタイヤが縁石等に接触してこれ以上の転舵ができない操舵限界に達しているか否かを判断するための閾値ΔTmaTHを設定する舵角判定部51と、q軸電流Iq及びモータ角加速度αに基づいて、電動モータ12とステアリングシャフト2との間に発生しているモータトルクTmaを演算すると共に、そのモータトルクTmaに基づいてステアリングギヤ8のラック軸8cが操舵限界に達しているか否かを判断し、選択信号SLを出力する端当て判定部52とを備えている。そして、端当て判定部52から出力される選択信号SLは、モータ電流制御部23の後述するデューティ比演算部65に出力されるようになっている。
操舵補助トルク指令値演算部21では、先ず、トルク指令値演算部41で、操舵トルクT及び車速Vをもとに図3に示す操舵補助トルク指令値算出マップを参照して電流指令値となる操舵補助トルク指令値IM *を算出する。
この操舵補助トルク指令値算出マップは、図3に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助トルク指令値IM *をとると共に、車速Vをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成され、操舵トルクTが“0”からその近傍の設定値Ts1までの間は操舵補助トルク指令値IM *が“0”を維持し、操舵トルクTが設定値Ts1を超えると最初は操舵補助トルク指令値IM *が操舵トルクTの増加に対して比較的緩やかに増加するが、さらに操舵トルクTが増加すると、その増加に対して操舵補助トルク指令値IM *が急峻に増加するように設定され、この特性曲線が車速の増加に従って傾きが小さくなるように設定されている。
そして、位相補償部42で、上記操舵補助トルク指令値IM *に対して位相補償を行い、位相補償後の操舵補助トルク指令値IM *を後述する加算器38に出力する。また、トルク微分回路43では、操舵トルクTを微分した操舵トルク変化率Tdをもとに操舵トルクTに対する補償値を算出し、これを後述する加算器38に出力する。
指令値補償部22は、回転角センサ17で検出されるモータ回転角θを微分してモータ角速度ωを算出する角速度演算部31と、この角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出する角加速度演算部32と、角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωに基づいてヨーレートの収斂性を補償する収斂性補償部33と、角加速度演算部32で算出されたモータ角加速度αに基づいて電動モータ12の慣性により発生するトルク相当分を補償して慣性感又は制御応答性の悪化を防止する慣性補償部34と、セルフアライニングトルク(SAT)を推定するSAT推定フィードバック部35とを少なくとも有する。
ここで、収斂性補償部33は、角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωが入力され、車両のヨーの収斂性を改善するためにステアリングホイール1が振れ回る動作に対して、ブレーキをかけるように、収斂性補償値Icを算出する。
また、SAT推定フィードバック部35は、操舵トルクT、モータ角速度ω、モータ角加速度α及び操舵補助トルク指令値演算部21で算出した操舵補助トルク指令値IM *が入力され、これらに基づいてセルフアライニングトルクSATを推定演算する。
このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図4に示して説明する。
すなわち、ドライバがステアリングホイール1を操舵することによって操舵トルクTが発生し、その操舵トルクTに従って電動モータ12がアシストトルクTmを発生する。その結果、車輪Wが転舵され、反力としてセルフアライニングトルクSATが発生する。また、その際、電動モータ12の慣性J及び摩擦(静摩擦)Frによってステアリングホイール1の操舵の抵抗となるトルクが生じる。これらの力の釣り合いを考えると、下記(1)式のような運動方程式が得られる。
J・α+Fr・sign(ω)+SAT=Tm+T ………(1)
ここで、上記(1)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(2)式が得られる。
SAT(s)=Tm(s)+T(s)−J・ω´(s)−Fr・sign(ω(s)) ………(2)
上記(2)式から分かるように、電動モータ12の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ω、回転角加速度α、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを推定することができる。ここで、アシストトルクTmは操舵補助トルク指令値IM *に比例するので、アシストトルクTmに代えて操舵補助トルク指令値IM *を適用する。
そして、慣性補償部34で算出された慣性補償値Ii及びSAT推定フィードバック部35で算出されたセルフアライニングトルクSATが加算器36で加算され、この加算器36の加算出力と収斂性補償部33で算出された収斂性補償値Icとが加算器37で加算されて指令補償値Icomが算出され、この指令補償値Icomが操舵補助トルク指令値演算部21から出力される操舵補助トルク指令値IM *に加算器38で加算されて補償後トルク指令値Irが算出され、この補償後トルク指令値Irがモータ電流制御部23に出力される。
モータ電流制御部23は、電動モータ12の各相コイルLu、Lv及びLwに供給されるモータ電流Iu、Iv及びIwを検出するモータ電流検出器60と、制限後トルク指令値Irからd−q軸電流指令値Id*,Iq*を算出する電流指令値算出部61と、モータ電流Iu、Iv及びIwをd−q軸モータ電流Id,Iqに変換する3相/d−q変換部62と、d−q軸電流指令値Id*,Iq*からd−q軸モータ電流Id,Iqを個別に減算して各相電流偏差ΔId,ΔIqを求める減算器61d,61qと、各相電流偏差ΔId,ΔIqに対して比例積分制御を行って電圧指令値Vd,Vqを算出する電流制御部63と、当該電圧指令値Vd,Vqが入力されて、3相の電圧指令値Vu,Vv,Vwが算出されるd−q/3相変換部64と、これら電圧指令値Vu、Vv及びVwに基づいてデューティ演算を行って各相のデューティ比Du、Dv及びDwを算出するデューティ比演算部65とを備えている。
さらに、モータ電流制御部23は、デューティ比演算部65から出力されるデューティ比に基づいてパルス幅変調を行ってパルス幅変調信号を求め、このパルス幅変調信号に基づいて3相モータ電流Iu、Iv及びIwを電動モータ12に出力するインバータ66を備えている。
前記デューティ比演算部65は、図5に示すように、端当て判定部52から出力される選択信号SLに応じて、電圧指令値Vu、Vv及びVwに基づいて演算される各相のデューティ比DuB、DvB及びDwBと、デューティ比DuB、DvB及びDwBを所定値(例えば、3%)に制限した制限デューティ比DuL、DvL及びDwLとのうち一方を選択して、最終的な各相のデューティ比Du、Dv及びDwとして出力するデューティ演算/制限演算部65u、65v及び65wを備えている。
ここで、ディーティ演算/制限演算部65uは、電圧指令値Vuに基づいて正負のデューティ比DuBを演算するデューティ比演算部65aと、このデューティ比演算部65aで算出されたデューティ比DuBを所定値(例えば、3%)に制限するリミッタ65bとを備えている。
さらに、ディーティ演算/制限演算部65uは、テューティ比DuB及び制限デューティ比DuLが入力され、選択信号SLが、ステアリングギヤ8のラック軸8cがラックストロークエンドに達するか又はタイヤが縁石等に接触してこれ以上の転舵ができない操舵限界に達していないことを意味する論理値“0”であるときにデューティ比DuBを選択し、選択信号SLが操舵限界に達していることを意味する論理値“1”であるときに制限デューティ比DuLを選択して、デューティ比Duとして出力する選択スイッチ部65cを備えている。また、他のデューティ演算/制限演算部65v及び65wも上記デューティ演算/制限演算部65uと同様の構成を有する。
舵角判定部51には、操舵角センサ18で検出した操舵角δが入力され、操舵角δに基づいて、図6に示す閾値算出マップを参照して、ステアリングギヤ8のラック軸8cが操舵限界に達しているか否かを判断するための閾値である操舵限界検出閾値ΔTmaTHを算出する。
ここで、操舵限界検出閾値ΔTmaTHは、ステアリングギヤ8のラック軸8cがラックストロークエンドに達するか又はタイヤが縁石等に接触してこれ以上の転舵ができない操舵限界となったときに生じる通常の操舵では発生することがない大きな傾きのモータトルクを判別する閾値であり、閾値算出マップは、操舵角δがラックエンド付近の所定舵角δthまでの領域では閾値ΔTmaTH=TH1に算出され、操舵角δが所定舵角δth以上の領域では、操舵角δが大きくなるにつれて閾値ΔTmaTHが所定値TH1より小さく算出されるように設定されている。このように、舵角センタにおける閾値ΔTmaTHより、ラックエンド付近での閾値ΔTmaTHが小さく算出されるようになっている。
端当て判定部52には、舵角判定部51で算出される操舵限界検出閾値ΔTmaTH、3相/d−q変換部62から出力されるq軸電流Iq及び角加速度演算部32で算出されたモータ角加速度αが入力され、これらに基づいて、ステアリングギヤ8のラック軸8cがラックストロークエンドに達するか又はタイヤが縁石等に接触してこれ以上の転舵ができない操舵限界となっているか否かを判定する。
図7は、端当て判定部52で実行される端当て判定処理手順を示すフローチャートである。
先ず、ステップS1で、端当て判定部52は、舵角判定部51で算出した操舵限界検出閾値ΔTmaTHを読み込み、ステップS2に移行する。
ステップS2では、端当て判定部52は、3相/d−q変換部62から出力されるq軸電流Iq及び角加速度演算部32で演算されるモータ角加速度αを読み込み、これらに基づいて、下記(3)式の演算を行ってモータトルクTmaを算出する。
Tma= Kt・Iq−Jm・α ………(3)
ここで、Ktはモータのトルク定数、Jmはモータのロータ部の慣性モーメントである。
次に、ステップS3では、端当て判定部52は、前記ステップS2で演算したモータトルクTmaを微分して、モータトルク変化率ΔTmaを演算し、ステップS4に移行する。
ステップS4では、端当て判定部52は、前記ステップS3で算出したモータトルク変化率ΔTmaが、前記ステップS1で読み込んだ操舵限界検出閾値ΔTmaTH以上であるか否かを判定する。そして、このステップS4で、ΔTma≧ΔTmaTHであると判定したときには、操舵限界に達したものと判断してステップS5に移行する。
ステップS5では、端当て判定部52は、論理値“1”の選択信号SLをデューティ比演算部65に出力してから端当て判定処理を終了する。
また、前記ステップS4で、端当て判定部52がΔTma<ΔTmaTHであると判定したときには、ステップS6に移行し、論理値"0"の選択信号SLをデューティ比演算部65に出力してから端当て判定処理を終了する。
通常操舵時にラック軸8cが操舵限界に到達したときの操舵トルクT(q軸電流Iq)とモータ角速度ωとの波形は、図8に示すようになる。なお、前述したように、操舵トルクTに基づいて演算されたd−q軸電流指令値Id*,Iq*をもとに電動モータ12が駆動制御されるため、q軸電流Iqは操舵トルクTに基づいて決定されることになり、q軸電流Iqは操舵トルクTと同等の波形となる。
時点t1でラック軸8cが操舵限界となったものとすると、図8(a)に示すように、操舵トルクT(q軸電流Iq)が通常の操舵では発生しないような大きな傾きで増加する。モータトルクTmaは前記(3)式をもとに演算されるものであり、q軸電流の増加に伴ってモータトルクTmaも増加するため、モータトルク波形も図8(a)と同等の波形となる。このため、ΔTma≧ΔTmaTHであるときには、確実に操舵限界に達したものと判断することができる。
また、据え切りのようなハンドルが重い状態で操舵限界に達したときの操舵トルクT(q軸電流Iq)とモータ角速度ωとの波形は、図9に示すようになる。時点t11でラック軸8cが操舵限界となったものとすると、図9(a)に示すように、操舵トルクT(q軸電流Iq)は増加するが、操舵限界となる前の操舵トルクT(q軸電流Iq)がもともと大きいため、変化率は小さい。また、変化する時間も短い。
しかし、この場合、図9(b)に示すようにモータ角速度ωは急激に低下する。モータトルクTmaは、上述したように前記(3)式をもとに演算されるものであるため、モータ角加速度αが負の方向に大きいほど大きくなる。このため、据え切り状態である場合にも、モータトルク波形は図8(a)と同等の波形となり、ΔTma≧ΔTmaTHであるときには、確実に操舵限界に達したものと判断することができる。
なお、図2において、操舵トルクセンサ14が操舵トルク検出手段に対応し、操舵角センサ18が操舵角検出手段に対応し、操舵補助トルク指令値演算部21及び指令値補償部22が電流指令値演算手段に対応し、舵角判定部51が閾値設定手段に対応し、端当て判定部52及びデューティ比演算部65がデューティ比制限手段に対応し、モータ電流制御部23がモータ制御手段に対応し、角加速度演算部32が回転角加速度検出手段に対応し、モータ電流検出器60が駆動電流検出手段に対応している。
また、図7において、ステップS2の処理がモータトルク検出手段に対応し、ステップS3の処理がモータトルク変化率検出手段に対応している。
次に、本発明の実施形態における動作について説明する。
今、車両の走行を開始するために、イグニッションスイッチをオン状態としたものとすると、コントローラ15に電源が投入されて操舵補助制御処理が実行開始され、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクT、車速センサ16で検出した車速V、モータ電流検出器60で検出したモータ電流検出値Iu〜Iw、回転角センサ17で検出したモータ回転角θ、操舵角センサ18で検出した操舵角δがコントローラ15に供給される。
したがって、操舵補助トルク指令値演算部21で、操舵トルクTと車速Vとに基づいて図3に示す操舵補助トルク指令値算出マップを参照して操舵補助トルク指令値IM *を算出する。一方、回転角センサ17で検出したモータ回転角θが角速度演算部31に入力されてモータ角速度ωが算出され、このモータ角速度ωが角加速度演算部32に入力されてモータ角加速度αが算出される。
そして、収斂性補償部33でモータ角速度ωに基づいて収斂性補償値Icが算出され、慣性補償部34でモータ角加速度αに基づいて慣性補償値Iiが算出され、さらにSAT推定フィードバック部35でモータ角速度ω及びモータ角加速度αに基づいてセルフアライニングトルクSATが算出され、これらが加算器36及び37で加算されて指令値補償値Icomが算出され、これが加算器38で操舵補助トルク指令値IM *に加算されて補償後トルク指令値Irが算出される。
このとき、車両が停止状態にあって、ステアリングホイール1が操舵されていない状態では、操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTが“0”であり、車速センサ16で検出される車速Vも“0”であるので、操舵補助トルク指令値演算部21で算出される操舵補助トルク指令値IM *も“0”となっている。また、角速度演算部32で演算されるモータ角加速度αも“0”となっている。
電動モータ12が停止状態にあるので、モータ電流検出器60で検出したモータ電流Iu〜Iwも“0”であり、このモータ電流Iu〜Iwを3相/d−q軸変換部62で変換したq軸電流Iqも“0”となる。このため、端当て判定部52は、図7のステップS2で前記(3)式をもとにTma=0に算出する。
ΔTma<ΔTmaTHであるため、端当て判定部52は、図7のステップS4でNoと判定し、操舵限界に達していないものと判断してステップS6に移行して、論理値"0"の選択信号SLをデューティ比演算部65に出力する。
そのため、デューティ比演算部65は、各相のデューティ比DuB、DvB及びDwBをそのままデューティ比Du、Dv及びDwとして出力し、これらに基づいて電動モータ12が駆動制御される。このとき、デューティ比DuB、DvB及びDwBは0%であるので、インバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwも“0”となって、電動モータ12は停止状態を継続する。
この電動モータ12の停止状態で、ステアリングホイール1を右切り(又は左切り)操舵する所謂据え切りを行うと、操舵トルクセンサ14で操舵方向に応じた操舵トルクTが検出され、この操舵トルクTがコントローラ15に供給される。このとき、車速Vが“0”であるので、操舵補助トルク指令値演算部21では、図3の一番内側の特性曲線が選択されて操舵トルクTの増大に応じて早めに大きな値となる操舵補助トルク指令値IM *が算出され、この操舵補助指令値IM *が加算器38に出力される。また、操舵によりモータ角加速度αが出力される。
そして、指令値補償部22で算出される指令補償値Icomによって操舵補助指令値IM *に対する補償が行われ、補償後トルク指令値Irが算出される。
この状態で発生するモータトルク変化率ΔTmaは、モータ角加速度αのみによるものなので、操舵限界到達時のモータトルク変化率よりは小さく、ΔTma<ΔTmaTHとなって、端当て判定部52では論理値“0”の選択信号SLの出力を継続し、デューティ比演算部65は、デューティ比DuB〜DwBをそのままデューティ比Du〜Dwとして出力し、これらに基づいて電動モータ12が駆動制御される。これにより、操舵トルクTに応じた操舵補助トルクが発生され、これが減速ギヤ11を介してステアリングシャフト2の出力軸2bに伝達されるので、据え切り状態での操舵を軽く行うことができる。
また、本実施形態では、操舵限界検出閾値ΔTmaTHは操舵角δに応じて設定されるものであり、上記のようにラックストロークエンドに達していない場合には、図6の閾値算出マップを参照して、操舵限界検出閾値ΔTmaTHが、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTmaTHを超え難くなるような比較的大きいTH1に設定されるため、操舵限界と判断し難くなって、操舵限界の誤検出を防止することができる。
その後、車両を発進させると、車速センサ16で検出される車速Vが増加することにより、操舵補助トルク指令値演算部21では、図3のマップにおいて車速Vが速くなるほど外側の特性曲線が選択されることになる。したがって、操舵トルクTの増加に対応する操舵補助トルク指令値IM *の増加量が少なくなることにより、電動モータ12で発生される操舵補助トルクも据え切り時に比較して小さい値となり、車速Vに応じた最適な操舵補助トルクを発生させることができる。
ところで、前述した据え切り状態や車庫入れ等の極低速走行状態でステアリングホイール1を右又は左に操舵限界まで比較的速い操舵を行うと、操舵限界に達するまでは、前述したように、コントローラ15で、そのときの操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTに応じたモータ電流Iu〜Iwが形成されて、これらが電動モータ12に供給され、軽い操舵を行うことができる。
このとき、据え切り状態や極低速走行状態での操舵であるので、操舵トルクTが大きく、パルス幅変調部63から出力されるパルス幅変調信号のデューティ比は略100%に近い状態となっている。
この状態で、操舵限界に達すると、ラック軸8cの移動が停止されることにより、ピニオン8b、ピニオンシャフト7、ユニバーサルジョイント6、中間シャフト5、ユニバーサルジョイント4、ステアリングシャフト2の出力軸2bの回転が停止し、これに応じて減速ギヤ11を介して電動モータ12の回転も停止される。
このとき、コントローラ15では、パルス幅変調信号のデューティ比が100%に近い状態であるため、インバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwが急増し、且つモータの慣性モーメントによるトルクが加わる。したがって、端当て判定部52で演算されるモータトルクTmaが急勾配で増加する状態となり、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTmaTH以上となる。このとき、操舵角δが大きく舵角エンド側にある場合、舵角判定部51で閾値ΔTmaTHが比較的小さい値に設定されていることから、操舵限界と判断し易くなっている。
そして、端当て判定部52は、図7のステップS4でYesと判定してステップS5に移行し、論理値“1”の選択信号SLがデューティ比演算部65に出力する。これにより、デューティ比演算部65は、デューティ比DuB、DvB及びDwBを所定値(3%)に制限し、これをデューティ比Du、Dv及びDwとして出力する。その結果、所定値(3%)に固定されたデューティ比に基づいて電動モータ12が駆動制御されることになる。
このように、デューティ比が制限されることにより、インバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwが減少されて、電動モータ12で発生する操舵補助トルクが減少し、中間シャフト5に伝達される伝達トルクのピーク値が、デューティ比の制限を行わない場合と比較して抑制されることになり、中間シャフト等のトルク伝達部材の耐久性を向上させることができる。
しかも、モータ電流検出器60で検出したモータ電流Iu〜Iwと角加速度演算部32で演算したモータ角加速度αに基づいてモータトルク値Tmaを演算し、これを微分してモータトルク変化率ΔTmaを演算し、その演算結果と閾値ΔTmaTHとを比較することにより、端当て状態やタイヤが縁石に接触した状態の操舵限界を検出するので、操舵限界に達した時から短時間(例えば10msec程度)で操舵限界状態を検出することができる。
また、この操舵限界検出時から短時間(例えば20msec程度)で電動モータ12によって発生する操舵補助トルクを制限することができるので、操舵限界到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間(約30msec程度)内に操舵補助トルク制限を行うことが可能となり、中間シャフトに発生するトルクを低減して、中間シャフト5の耐久性の低下を防止することができる。しかも、この効果を別途高精度の舵角センサ等のセンサを設けることなく発揮することができる。
このように、上記実施形態では、モータトルクの変化率が、操舵角に基づいて設定される操舵限界を判断する閾値以上であるとき、デューティ比制限条件を満足したものと判断して、パルス幅変調信号のデューティ比をステアリング機構のステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制する所定値に固定するので、ステアリングシャフト及びステアリングギヤ間に介挿された中間シャフト等のトルク伝達部材に過大なトルクが伝達される前に電動モータで発生する操舵補助トルクを制限することができ、別途高精度の舵角センサやトルクリミッタ等を追加することなく、端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界となった時に中間シャフト等のトルク伝達部材に伝達される衝撃力を緩和することができる。
また、操舵角が大きいほど、モータトルクの変化率が操舵限界検出閾値を越えやすくなる方向に閾値を変更することで、操舵限界と判断し易くするので、本来のラックエンド当てにおけるデューティ比の制限制御の効果を低減させることなく、舵角エンド以外での操舵限界の誤検出を防止することができる。また、舵角エンド以外においてデューティ比の制限制御を非作動とするわけではないため、縁石当てが発生した場合など、舵角エンド以外にてトルク伝達部材への過大トルクを抑制する必要がある場合には、確実に上記制限制御を機能させることができる。
また、操舵角検出手段を操舵角センサで構成し、操舵角センサで検出した操舵角に基づいて操舵限界検出閾値を設定するので、閾値設定を比較的簡易な構成で行うことができると共に、横滑り防止装置用の低精度の舵角センサを流用可能であるため、ステアリングホイールの絶対角度情報を使用して操舵限界を検出する場合のように高精度の舵角センサを別途設ける必要はなく、製造コストが嵩むのを抑制することができる。
また、上記実施形態においては、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTmaTH以上であるときに、操舵限界であるとしてデューティ比を所定値に固定する場合について説明したが、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTmaTH以上であり、且つモータトルクTmaが所定値(例えば2.0Nm)以上であるときに操舵限界であると判断したり、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTmaTH以上であり、且つモータトルクTmaが所定値(例えば2.0Nm)以上である状態を所定時間(例えば10msec)継続したときに操舵限界であると判断したりすることもできる。
これにより正確に操舵限界到達状態を検出することができる。この場合には、通常操舵時に、車両が例えばベルジアン路(石畳路)等で制動を行うことにより、タイヤから大きな振動荷重が入力されるときがあり、この振動荷重が大きいと電動モータ12のモータ電流の傾きが大きくなる傾向があるが、タイヤからの振動荷重に対して継続して大きな電流が流れることはないので、この走行状態を誤検出することを確実に防止することができる。
また、操舵限界が生じるのは、ステアリングホイール1を切り増し方向に操舵する場合のみであることから、モータトルクTmaの符号とモータトルク変化率ΔTmaの符号とが一致する切り増し状態であり、且つモータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTmaTH以上であるときに操舵限界であると判断することもできる。
さらに、端当て判定部52に、角速度演算部31で算出されるモータ角速度ωをさらに供給し、モータ角速度ωが所定値以上で且つモータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTmaTH以上であるときに操舵限界であると判断することもできる。操舵限界到達時のモータ角速度ωは図10に示すように急激に低下するので、この場合には、モータ角速度ωとして、操舵限界となる直前のモータ角速度(所定時間前(例えば20msec程度前)のモータ角速度)を使用する。
このように、モータ角速度ωを操舵限界検出条件に入れることにより、モータ角速度ωが所定値より小さい状態では、操舵限界到達時の衝撃荷重も小さく、中間シャフト5に伝達される伝達トルクのピーク値も小さいので、小さい値の固定デューティ比を使用する操舵補助トルク制限を行う必要がないと判断し、モータ角速度ωが所定値以上である場合には、操舵限界到達時の衝撃荷重が大きくなるので、中間シャフト5に伝達され伝達トルクのピーク値も大きくなることから操舵補助トルク制限を行う必要があるとして、当該操舵補助トルク制限を行い、中間シャフト5に伝達されるピークトルクを確実に減少させることができる。
さらにまた、上記実施形態においては、デューティ比を所定値に固定する操舵補助トルク制限の継続時間を所定時間(例えば20msec程度)に設定し、操舵補助トルク制限状態を上記所定時間継続した後に、当該制限を解除することもできる。これにより、中間シャフト5に発生する伝達トルクのピークを低減するに十分な時間だけ操舵補助トルク制限を継続させて、長い時間操舵補助トルク制限が継続されることに起因する運転者の違和感を抑制することができる。このとき、モータ角速度ωが大きいときには衝撃荷重も大きいことから、モータ角速度ωが大きいほど、操舵補助トルク制限の継続時間を長く設定する。
また、上記実施形態においては、操舵限界検出時に、比較的小さい値の制限デューティ比DuL〜DwLに基づいて電動モータ12を制御する場合について説明したが、インバータの上アーム部(又は下アーム部)を構成する3つのスイッチング素子に対するパルス幅変調信号のデューティ比を0%とし、下アーム部(又は上アーム部)を構成する3つのスイッチング素子に対するパルス幅変調信号のデューティ比を100%に固定して、電動モータ12の各コイルを短絡状態の閉回路とすることにより、電磁ブレーキモードとし、電動モータ12のロータの慣性力が中間シャフト5に伝達されないようにすることもできる。
さらにまた、上記実施形態においては、制限デューティ比DuL〜DwLを例えば3%に設定する場合について説明したが、電動モータ12の特性に合わせて任意の固定デューティ比を設定することができる。
さらに、上記実施形態においては、d軸電流Id及びq軸電流Iqとd軸目標電流Id*及びq軸目標電流Iq*との偏差に対して比例積分制御を行う場合について説明したが、電流指令値算出部61の出力側に3相/2相変換部を設けて電流指令値Iu*、Iv*及びIw*に変換し、3つの減算部で電流指令値Iu*〜Iw*とモータ電流Iu〜Iwとの偏差に対して夫々比例積分制御を行うこともできる。
また、上記実施形態においては、デューティ比演算部65aでデューティ比DuBを演算してからリミッタ65bで制限デューティ比DuLを算出し、これらを選択スイッチ部65cで選択する場合について説明したが、電圧指令値Vu〜Vwをリミッタで所定値に制限し、電圧指令値Vu〜Vwと制限電圧指令値VuL〜VwLとを選択スイッチ部で選択し、選択された指令値に基づいてデューティ比Du〜Dw、Dを演算することもできる。
さらに、上記実施形態においては、q軸電流Iqとモータ角加速度αとに基づいてモータトルクTmaを演算するように構成した場合について説明したが、電動モータ12の出力軸、減速ギヤ11の入出力軸等のトルク伝達軸に磁歪式トルクセンサなどのトルクセンサを配設して直接モータトルクTmaを検出するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、操舵角検出手段として操舵角センサ18を適用する場合について説明したが、操舵角センサ18に代えて、コントローラ15に操舵角δを推定する操舵角推定部を設けることもできる。この場合、操舵角推定部に、例えば、車両の舵角位置を相対的に検出する舵角位置検出部(舵角位置検出手段)と、舵角位置の中立点を特定する中立点特定部(中立点特定手段)とを設け、舵角位置検出部で検出した舵角位置及び中立点特定部で特定した中立点に基づいて操舵角を推定するようにすればよい。このとき、ステアリングホイールの絶対角度情報を使用して操舵限界を検出する場合のように、高精度の絶対舵角推定機能を必要とすることがないため、製造コストが嵩むのを抑制することができる。
さらに、上記実施形態においては、操舵角センサや操舵角推定部で検出又は推定した操舵角を利用する場合について説明したが、セルフアライニングトルクSATは、タイヤ及び路面のグリップがある程度確保されている場合、車両走行特性として、操舵角と相関があると言える為、操舵角の代わりにセルフアライニングトルクSATを適用することもできる。
なおさらに、上記実施形態においては、電動モータとしてブラシレスモータを適用する場合について説明したが、ブラシモータシステムを適用することもできる。この場合、例えば、モータの逆起電力からモータ角速度ωを推定すればよい。
本発明の実施形態における電動パワーステアリング装置の概略構成図である。 本実施形態におけるコントローラの構成を示すブロック図である。 操舵補助トルク指令値算出マップである。 セルフアライニングトルクの説明に供する模式図である。 デューティ比演算部の具体的構成を示すブロック図ある。 閾値算出マップである。 端当て判定処理手順を示すフローチャートである。 通常操舵時における操舵限界到達時の操舵トルク変化及びモータ角速度変化を示す信号波形図である。 据え切り時における操舵限界到達時の操舵トルク変化及びモータ角速度変化を示す信号波形図である。
符号の説明
SM…ステアリング機構、1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…ステアリングコラム、4,6…ユニバーサルジョイント、5…中間シャフト、8…ステアリングギヤ、10…操舵補助機構、11…減速ギヤ、12…電動モータ、14…操舵トルクセンサ、15…コントロールユニット、16…車速センサ、17…回転センサ、18…操舵角センサ、21…操舵補助トルク指令値演算部、22…指令値補償部、23…モータ電流制御部、51…舵角判定部、52…端当て判定部

Claims (6)

  1. ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、前記ステアリング機構のステアリングシャフトに与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
    前記モータ制御手段は、操舵角を検出又は推定する操舵角検出手段と、該操舵角検出手段で検出又は推定した操舵角に基づいて操舵限界を判断する閾値を設定する閾値設定手段と、前記電動モータと前記ステアリングシャフト間に発生しているモータトルクを検出するモータトルク検出手段と、該モータトルク検出手段で検出したモータトルクの変化率を演算するモータトルク変化率検出手段と、該モータトルク変化率検出手段で演算したモータトルクの変化率が、前記閾値設定手段で設定した閾値以上であるとき、デューティ比制限条件を満足したものと判断して、前記パルス幅変調信号のデューティ比を、前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制する所定値に固定するデューティ比制限手段とを有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記閾値設定手段は、前記操舵角検出手段で検出した操舵角が大きいほど、前記モータトルクの変化率が前記閾値を越えやすくなる方向に当該閾値を変更することで、操舵限界と判断し易くすることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記電動モータの駆動電流を検出する駆動電流検出手段と、前記電動モータの回転角加速度を検出する回転角加速度検出手段とを有し、前記モータトルク検出手段は、前記駆動電流検出手段で検出したモータ駆動電流と前記回転角加速度検出手段で検出した回転角加速度とから前記電動モータと前記ステアリングシャフトとの間に発生しているトルクを演算することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記モータトルク検出手段は、前記電動モータの出力軸から前記ステアリングシャフトに至る間のトルク伝達軸に配設した磁歪式トルクセンサで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記操舵角検出手段は、操舵角センサで構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  6. 前記操舵角検出手段は、車両の舵角位置を相対的に検出する舵角位置検出手段と、舵角位置の中立点を特定する中立点特定手段とを有し、前記舵角位置検出手段で検出した舵角位置及び中立点特定手段で特定した中立点に基づいて操舵角を推定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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