JP2008189850A - インクジェット記録用インク組成物、及び、インクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のインクジェット記録用インク組成物は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。一般式(1)中、R1、R2及びR3は、各々独立にアルキル基、アリール基、又は重合性二重結合を有する一価の基を表す。但し、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは、アルキル基又はアリール基であり、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは重合性二重結合を有する一価の基である。
【化1】
【選択図】なし
Description
詳しくは、析出物の生成や相分離が起こり難く、硬化後においては、画像部が充分な柔軟性と密着性とを有するインクジェット記録用インク組成物、及び、それを用いたインクジェット記録方法に関する。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率よく使用でき、ランニングコストが安い。更に、インクジェット方式は、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
このようなインク組成物は形成された画像部の強度に優れるものの、柔軟性には乏しい。このインク組成物を可撓性や柔軟性にすぐれた樹脂膜などの被記録媒体に適用した場合、被記録媒体の変形に対して形成された画像部が追従せず、使用態様によっては画像部にクラックなどの損傷を生じるといった問題を有している。
これらのインク組成物は、いずれも優れた硬化性を有するものの、これらにより形成された被膜の柔軟性は不充分であった。
<1> (A)下記一般式(1)で表される化合物と、(B)ラジカル重合開始剤と、を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク組成物である。
本発明のインク組成物は、一般式(1)で表される化合物(以下、「特定の燐酸エステルモノマー」と称する場合がある)を含有する。
また、一般式(1)では、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは重合性二重結合を有する一価の基であるが、全てが重合性二重結合を有する一価の基であることはない。つまり、化合物中に重合部位を1つ又は2つ有する。重合部位を3つ有する場合には、重合反応によってより緻密な網目構造が形成されるため、剛直な重合体が生成する。しかし、一般式(1)で表される化合物中の重合部位は1つ又は2つであるので、得られる硬化体は充分な柔軟性を示すものと推測される。
更に、一般式(1)で表される化合物は、燐酸のOH部分が全てエステル化され水酸基を有さない。上記重合性二重結合を有する一価の基でエステル化されていない燐酸のOH部分は、アルキル基又はアリール基でエステル化されているので、一般式(1)で表される化合物は水酸基を有さないことから、疎水性の高いインク中において溶解性が高く、インク中での析出や相分離を起こし難い。
該アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが、インク溶解性及び低粘度の観点からより好ましい。
R1、R2又はR3が置換アルキル基の場合、導入可能な置換基としては、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が好ましく挙げられる。
具体的には、R1、R2又はR3で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、を挙げることができ、インク溶解性及び低粘度の観点からフェニル基であることが好ましい。
R1、R2又はR3が置換アリール基の場合、導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等を好ましく挙げられる。
より具体的には、一般式(1)で表される化合物は、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物であることが好ましく、より好ましくは、一般式(2−1)又は一般式(3−1)で表される化合物の場合である。
Z1、Z2、Z3及びZ4として好ましくは、アルキレン基を含有する2価の連結基である。前記アルキレン基としては、炭素数1〜20のアルキレン基であることが好ましい。具体的には、炭素数3〜12程度のアルキレン基が好ましく、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等が挙げられる。
Z1、Z2、Z3及びZ4中に含有される該アルキレン基は、置換基を有していても無置換であってもよく、導入可能な置換基としては、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が好ましく挙げられる。しかし、該アルキレン基は、無置換のアルキレン基であることが好ましい。
Z1とZ2とは、同一であっても異なっていてもよい。また、Z3とZ4とは、同一であっても異なっていてもよい。
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、ラジカル重合開始剤を含有する。
ラジカル重合開始剤としては、併用する重合性化合物の種類、インク組成物の使用目的に応じて、公知の重合開始剤を適宜選択して使用することができる。
本発明のインク組成物に使用するラジカル重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。放射線には、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
熱重合開始剤及び光重合開始剤としては公知の化合物が使用できる。
本発明においてラジカル重合開始剤は単一種で用いてもよいし、併用してもよい。効果の観点からは、2種以上のラジカル重合開始剤を併用することが好ましい
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、透明インクであってもよいので着色剤を含有させることは必須ではないが、着色画像を形成しようとするときには、(C)着色剤を含有させる。
本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に好適に使用し得る着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点からは、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤あるいはマゼンタ顔料としては、例えば、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36、等が挙げられる。
青又はシアン顔料としては、例えば、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60、等が挙げられる。
緑顔料としては、例えば、Pigment Green 7、26、36、50、党が挙げられる。
黄顔料としては、例えば、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、等が挙げられる。
黒顔料としては、例えば、Pigment Black 7、28、26、等が挙げられる。
白色顔料としては、例えば、PigmentWhite 6、18、21、等が挙げられる。
これらの顔料は、目的に応じて適宜選択して使用できる。
以下に、本発明で使用することのできる油溶性染料について説明する。
本発明で使用することのできる油溶性染料とは、水に実質的に不溶な染料を意味する。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる染料の質量)が1g以下であり、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下であるものを指す。従って、油溶性染料とは、所謂水に不溶性の顔料や油溶性色素を意味し、これらの中でも油溶性色素が好ましい。
これらの中で特に好ましいものは、Nubian Black PC−0850、Oil Black HBB 、Oil Yellow 129、Oil Yellow 105、Oil Pink 312、Oil Red 5B、Oil Scarlet 308、Vali Fast Blue 2606、Oil Blue BOS(オリエント化学(株)製)、Aizen Spilon Blue GNH(保土ヶ谷化学(株)製)、NeopenYellow 075、Neopen Mazenta SE1378、Neopen Blue 808、Neopen Blue FF4012、Neopen Cyan FF4238(BASF社製)等である。
また、本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で、分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99、100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
なお、一般式(1)で表される化合物を含めて重合性化合物を2種類以上併用している場合には、分散適性の観点のみを考慮すれば、最も粘度の低い重合性化合物に着色剤を予め添加させることが好ましい。
以下、これら任意の成分について以下に説明する。
本発明のインク組成物では、(A)一般式(1)で表される化合物に加えて、(D)他の重合性化合物を含むことも好ましい。本発明に併用可能な他の重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物が挙げられる。(D)他の重合性化合物は、目的とする諸特性、或いは、前記(B)ラジカル重合開始剤との関連において適宜選択して用いればよい。
以下、本発明に適用しうる他の重合性化合物について説明する。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、接着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物、トリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
ここで(D)他の重合性化合物として列挙されているモノマーは、低分子量であっても感作性が小さいものであり、かつ、反応性が高く、粘度が低く、記録媒体への接着性に優れる。
特に、PETフィルムやPPフィルムといった柔軟な被記録媒体への記録に使用するインク組成物においては、上記化合物群の中から選ばれるモノアクリレート、前述の(A)一般式(1)で表される化合物から選択される1種と、(D)成分から選択される多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーとの併用は、膜に可撓性を持たせて接着性を高めつつ、膜強度を高められるため好ましい。
更に、単官能、二官能、三官能以上の多官能モノマーの少なくとも3種の重合性化合物を併用する態様が、安全性を維持しつつ、更に、感度、滲み、被記録媒体との接着性をより改善することができるという観点から、好ましい態様として挙げられる。
モノアクリレートと併用しうるオリゴマーとしては、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマーが特に好ましい。
なお、メタクリレートは、皮膚低刺激性がアクリレートより良好である。
上記化合物の中でもアルコキシアクリレートを70質量%以下の量で使用し、残部をアクリレートとする場合、良好な感度、滲み特性、臭気特性を有するため好ましい。
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
カチオン重合開始剤は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
本発明のインク組成物には、(B)ラジカル重合開始剤の活性光線照射による分解を促進させるために(E)増感色素を添加することができる。増感色素は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感色素は、重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより重合開始剤の化学変化、即ち、分解、ラジカル、酸或いは塩基の生成を促進させるものである。
多核芳香族類(例えば、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)等が挙げられ、多核芳香族類およびチオキサントン類が好ましい類として挙げられる。
本発明のインク組成物は、共増感剤を含有することもできる。本発明において共増感剤は、増感色素の活性放射線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
この様な共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
本発明のインク組成物には、必要に応じて、他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、溶剤等が挙げられる。
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。また、本発明のインクジェト記録用インク組成物は、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
有機溶剤の量は、本発明のインク組成物全体の質量に対し、例えば、0.1〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
また、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への接着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
本発明のインク組成物はインクジェット記録用インクとして使用するため、このような使用態様における好ましい物性について説明する。
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、40〜80℃、好ましくは25〜50℃)において、粘度が、好ましくは7〜30mPa・sであり、より好ましくは7〜25mPa・sである。例えば、本発明のインク組成物の室温(25〜30℃)での粘度は、好ましくは10〜50mPa・s、より好ましくは12〜40mPa・sである。
本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となる。更にインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。
本発明のインクジェット記録方法、及び該インクジェット記録方法に適用しうるインクジェット記録装置について、以下説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェッと記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(i−1)及び(i−2)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成しうる公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。即ち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(i−1)工程における被記録媒体へのインクの吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜100pl、好ましくは、8〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4000×4000dpi、好ましくは、400×400〜1600×1600dpi、より好ましくは、720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる(B)ラジカル重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの開始種を発生し、その開始種の機能により(A)一般式(1)で表される化合物や、所望により併用される(D)他の重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において(B)ラジカル重合開始剤と共に(E)増感色素が存在すると、系中の(E)増感色素が活性放射線を吸収して励起状態となり、(B)ラジカル重合開始剤と接触することによって(A)重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
更に、活性放射線は、露光面照度が、例えば、10〜2,000mW/cm2、好ましくは、20〜1,000mW/cm2で照射されることが適当である。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、特に好ましくは50〜800mW/cm2である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(例えば、0.01〜0.5秒、好ましくは、0.01〜0.3秒、より好ましくは、0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。WO99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
<インクの調製>
(イエロー色インク組成物)
・一般式(1)で表される化合物〔例示化合物(1)〕 22.0部
・N−ビニルカプロラクタム 16.0部
・2−フェノキシエチルアクリレート(Sartomer社製SR339) 21.4部
・トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer社製SR351) 3.0部
・ジプロピレングリコールジアクリレート(Sartomer社製SR508) 1.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Cromophtal Yellow LA(Ciba Specialty Chemicals社製顔料) 3.6部
・Genorad 16(Rahn社製重合抑制剤) 0.05部
・Rapi-Cure DVE-3(ISP Europe社製ビニルエーテル化合物) 2.0部
・Lucirin TPO(BASF社製光開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光開始剤) 4.0部
・Irgacure 184(Ciba Specialty Chemicals社製光開始剤) 4.0部
・イソプロピルチオキサントン(ITX) 1.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
・一般式(1)で表される化合物〔例示化合物(1)〕 20.0部
・N−ビニルカプロラクタム 15.0部
・2−フェノキシエチルアクリレート(Sartomer社製、SR339) 26.4部
・トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer社製、SR351) 5.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 0.4部
・Cinquasia Mazenta RT-355D(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料) 3.6部
・Genorad 16(Rahn社製、重合抑制剤) 0.05部
・Rapi-Cure DVE-3(ISP Europe社製、ビニルエーテル化合物) 4.0部
・Lucirin TPO(BASF社製、光開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光開始剤) 4.0部
・Irgacure 184(Ciba Specialty Chemicals社製、光開始剤) 4.0部
・イソプロピルチオキサントン(ITX) 1.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製、消泡剤) 0.05部
・一般式(1)で表される化合物〔例示化合物(1)〕 12.0部
・トリデシルアクリレート(Sartomer社製SR498E) 11.0部
・2−フェノキシエチルアクリレート(Sartomer社製SR339) 23.4部
・N−ビニルカプロラクタム 13.0部
・トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer社製SR351) 8.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Irgalite Blue GLVO(Ciba Specialty Chemicals社製顔料) 3.6部
・Genorad 16(Rahn社製、重合抑制剤) 0.05部
・Rapi-Cure DVE-3(ISP Europe社製ビニルエーテル化合物) 4.0部
・Lucirin TPO(BASF社製光開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光開始剤) 4.0部
・Irgacure 184(Ciba Specialty Chemicals社製光開始剤) 4.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
・一般式(1)で表される化合物〔例示化合物(1)〕 20.0部
・イソボルニルアクリレート(Sartomer社製SR506D) 17.0部
・2−フェノキシエチルアクリレート(Sartomer社製SR339) 28.4部
・トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer社製SR351) 6.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Microlith Black C-K(Ciba Specialty Chemicals社製顔料) 2.6部
・Genorad 16(Rahn社製重合抑制剤) 0.05部
・Lucirin TPO(BASF社製光開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光開始剤) 4.0部
・Irgacure 184(Ciba Specialty Chemicals社製光開始剤) 4.0部
・イソプロピルチオキサントン(ITX) 1.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
次に、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体上に100%被覆画像を形成した。
ピエゾ型のインクジェットヘッド(東芝テック製のCA3ヘッド)を、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出するように駆動させた。
以下の項目について評価を行なった。
4色インクジェット画像を上記被記録媒体に記録したところ、いずれの被記録媒体においてもドットの滲みの無い高解像度の画像が得られた。上質紙においてもインクが裏周りすることなく、充分にインクが硬化し、未反応モノマーによる臭気が殆どしなかった。
透明二軸延伸ポリプロピレンフィルムに記録した実施例1の4色インクジェット画像は充分な可とう性があり、折り曲げても4色インクジェット画像にクラックが入ることは無かった。
上記それぞれの被記録媒体上に記録した4色インクジェット画像について、セロテープ(登録商標)での剥離による密着性テストを行なった。
実施例1の4色インクジェット画像は、この密着性テストにおいても問題無かった。
インクとしてマゼンタインク1のみを用いた以外は、上記4色インクジェット画像の場合と同様にして、インクジェット画像を下記評価項目に記載の被記録媒体に形成し、そのマゼンタ画像および画像形成前のマゼンタインク1について下記の方法に準じて、インクへの溶解性、被記録媒体に対する密着性、硬化物の柔軟性の評価を行った。結果を表1に示す。
調整したマゼンタインク1を目視で、濁り、析出物および相分離について観察した。表1において、○は、析出物および相分離が観測されなかったものであり、×は析出物又は相分離が観測されたものを示す。
柔軟性の評価は、被記録媒体としてPVCシート(Avery社製)を用いて行った。
マゼンタ画像を有するPVCシートを、10回折り曲げた後に硬化膜(画像)に生じた亀裂の程度によって評価した。この折り曲げ試験は、亀裂がまったく生じない状態を5点とした5段階評価の官能評価であり、3点以上を実用上問題の無い状態と評価する。
被記録媒体に対する密着性の官能評価は、被記録媒体としてコロナ処理ポリプロピレン板を用いて行った。
マゼンタ画像を有するコロナ処理ポリプロピレン板を、クロスハッチテスト(EN ISO2409)により評価し、ASTM法による表記5B〜1Bで表した。5Bが最も密着性に優れ、3B以上を実用上問題の無いレベルであると評価する。
<マゼンタインク2>
実施例1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、一般式(1)で表される化合物[例示化合物(1)]20質量部を、[例示化合物(2)]20質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク2を調製した。
<マゼンタインク3>
実施例1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、一般式(1)で表される化合物[例示化合物(1)]20質量部を、[例示化合物(3)]30質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク3を調製した。
<マゼンタインク4>
実施例1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、一般式(1)で表される化合物[例示化合物(1)]20質量部を、[例示化合物(4)]30質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク4を調製した。
<マゼンタインク5>
以下の組成で混合し、得られた混合液を絶対濾過精度2μmのフィルターにて濾過して、マゼンタインク5とした。
・特定重合性化合物〔例示化合物(9)〕(Sartomer社製、SR351) 5.0部
・N−ビニルカプロラクタム 25.0部
・2−フェノキシエチルアクリレート(Sartomer社製、SR339) 36.4部
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 0.4部
・Cinquasia Mazenta RT-355D(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料) 3.6部
・Genorad 16(Rahn社製、重合抑制剤) 0.05部
・Rapi-Cure DVE-3(ISP Europe社製、ビニルエーテル化合物) 4.0部
・Lucirin TPO(BASF社製、光開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光開始剤) 4.0部
・Irgacure 184(Ciba Specialty Chemicals社製、光開始剤) 4.0部
・イソプロピルチオキサントン(ITX) 1.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製、消泡剤) 0.05部
<マゼンタインク6>
実施例1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、一般式(1)で表される化合物[例示化合物(1)]20質量部を、2−フェノキシエチルアクリレート20質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク6を調製した。
<マゼンタインク7>
実施例1で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、一般式(1)で表される化合物[例示化合物(1)]20質量部を、下記[比較化合物1]20質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク7を調製した。
<マゼンタインク8>
実施例5で調製したマゼンタインク1において、重合性化合物として用いたモノマーのうち、一般式(1)で表される化合物[例示化合物(9)]5質量部を、下記[比較化合物2]5質量部に変更した以外は、前記マゼンタインク5と同様にして、マゼンタインク8を調製した。
更に、燐酸エステルを用いた場合であっても、重合性二重結合を有する基で全てエステル化された燐酸エステルを用いた比較例3では、柔軟性に乏しく、また密着性については実用できる程度ではあったが、本実施例に比べると劣るものであった。
Claims (4)
- 更に、(C)着色剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- (i−1)被記録媒体上に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物を吐出する工程と、
(i−2)吐出されたインクジェット記録用インク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
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