JP2008179663A - 架橋性ニトリルゴム組成物およびゴム架橋物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 圧縮永久ひずみが小さく、かつ、耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物を提供すること。
【解決手段】 α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(a)、BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)およびポリアミン系架橋剤(c)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物により上記課題が解決される。好ましくは前記BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)が脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸塩および樹脂酸エステルよりなる群より選ばれる少なくとも1種の有機物で表面処理されたものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、圧縮永久ひずみが小さく、かつ、耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物に関する。
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムに代表される、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有するゴムを水素化してなるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(「高飽和ニトリルゴム」とも言う。)は、耐油性、耐熱性および耐オゾン性に優れたゴムとして知られている。高飽和ニトリルゴムの架橋物は、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベルト、ホースなどの種々の用途で、主に自動車用ゴム製品に用いられている。最近、市場での品質要求が高度化し、殊にエンジンまわりのシール用途などにおいて長寿命性が要求され、加えて白色に近い淡色のゴム架橋物が求められるようになった。そのため、従来に増して圧縮永久ひずみが小さく、かつ、耐摩耗性に優れたゴム架橋物であって、しかも可能であれば淡色化のため、該ゴム架橋物を補強性充填剤であるカーボンブラックの配合なしに実現することが望まれるようになった。
特許文献1は、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル単量体単位を含有する高飽和ニトリルゴム、ポリアミン系架橋剤および塩基性架橋促進剤を含有する架橋性ゴム組成物を架橋して得られるゴム架橋物が耐熱性、耐屈曲疲労性などに優れ、圧縮永久ひずみが小さいことを報じている。しかしながら、該ゴム架橋物においてカーボンブラックの配合なしに耐屈曲疲労性に優れ、かつ、圧縮永久ひずみを小さくすることには限度があり、従って淡色化の実現のニーズに応えることは難しい面があった。
特開2001−55471号公報
本発明の目的は、圧縮永久ひずみが小さく、かつ、耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究した結果、α、β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含有する高飽和ニトリルゴムに、特定の炭酸カルシウムを配合し、特定の架橋剤で架橋することにより上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに到った。
かくして本発明によれば、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(a)、BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)およびポリアミン系架橋剤(c)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物が提供される。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物において、好ましくは前記BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)が、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸塩および樹脂酸エステルよりなる群より選ばれる少なくとも1種の有機物で表面処理されたものである。
また好ましくは本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、カーボンブラック含有量が2重量%以下のものである。
また、別の本発明によれば、上記のいずれかの架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供され、好ましくは前記ゴム架橋物のJIS K6264−2のピコ摩耗試験による摩耗容積が10×10-2cm以下であり、また好ましくは前記ゴム架橋物がシール用ゴム部材またはガスケットである。
本発明により圧縮永久ひずみが小さく、かつ、耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物が提供される。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(a)、BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)およびポリアミン系架橋剤(c)を含有してなるものである。
高飽和ニトリルゴム(a)のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成する単量体(以下、「α,β−エチレン性不飽和ニトリル」と記すことがある。)は、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリルはこれらの複数種を併用してもよい。
高飽和ニトリルゴム(a)におけるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎるとゴム架橋物は耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
高飽和ニトリルゴム(a)のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を形成する単量体は、架橋のためのフリーのカルボキシル基を1個有している。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有することにより、得られるゴム架橋物は引張応力の優れたものとなる。
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体のエステル部の、酸素原子を介してカルボニル基と結合する有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基およびアルキルシクロアルキル基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは2〜6であり、シクロアルキル基の炭素数は好ましくは5〜12、より好ましくは6〜10であり、アルキルシクロアルキル基の炭素数は好ましくは6〜12、より好ましくは7〜10である。該有機基の炭素数が小さすぎると架橋性ニトリルゴム組成物の加工安定性が低下するおそれがあり、逆に、炭素数が大きすぎると架橋速度が遅くなったり、ゴム架橋物の機械的特性が低下したりする可能性がある。
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体の例としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著に現れる点で、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのα,β−エチレン性不飽和結合を形成する二つの炭素原子の各々にカルボキシル基を有するジカルボン酸のモノエステルが好ましく、マレイン酸モノn−ブチル、シトラコン酸モノプロピルなどの該二つのカルボキシル基をシス位(シス配置)に有するジカルボン酸のモノエステルがより好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。
高飽和ニトリルゴム(a)におけるα、β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量は、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%である。α、β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が少なすぎるとゴム架橋物の引張り応力が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると架橋性ニトリルゴム組成物のスコーチ安定性の悪化やゴム架橋物の耐疲労性の低下が起こる可能性がある。
高飽和ニトリルゴム(a)は、上記のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα、β−エチレン性ジカルボン酸モノエステル単量体単位の他に、ゴム架橋物がゴム弾性を保有するために、通常、ジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位を有する。
ジエン単量体単位を形成するジエン単量体の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数が4以上の共役ジエン単量体;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエン単量体が挙げられる。これらの中では共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
α−オレフィン単量体単位を形成するα−オレフィン単量体としては、好ましくは炭素数が2〜12のものであり、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。
高飽和ニトリルゴム(a)におけるジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位の含有量は、好ましくは20〜89.9重量%、より好ましくは30〜84.8重量%、特に好ましくは40〜79.5重量%である。これらの含有量が少なすぎるとゴム架橋物のゴム弾性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
高飽和ニトリルゴム(a)は、また、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、並びに、ジエン単量体および/またはα−オレフィン単量体、と共重合可能なその他の単量体の単位を含有することができる。このようなその他の単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル〔アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの意。以下同様。〕単量体であってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸エトキシメチルなどの (メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体であってアルコキシアルキル基の炭素数が1〜18でアルコキシ基の炭素数が1〜12のもの;アクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸アミノメチルなどのアミノ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であってアルキル基の炭素数が1〜16のもの;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体であってアルキル基の炭素数が1〜16のもの;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ジフルオロメチルなどのフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であってアルキル基の炭素数が1〜16のもの;
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジn−ブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;フマル酸ジメチル、フマル酸ジn−ブチルなどのフマル酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;マレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどのフマル酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn−ブチルなどのイタコン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの:イタコン酸ジシクロヘキシルなどのイタコン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸などが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、 N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが例示される。
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。高飽和ニトリルゴム(a)が有するその他の単量体単位の含有量は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
本発明で使用する高飽和ニトリルゴム(a)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、高飽和ニトリルゴム(a)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは5×10−4〜5×10−1ephr、より好ましくは1×10−3〜1×10−1ephr、特に好ましくは5×10−3〜6×10−2ephrである。高飽和ニトリルゴム(a)のカルボキシル基含有量が少なすぎると架橋性ニトリルゴム組成物は十分に架橋せず、ゴム架橋物の引張応力が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると架橋性ニトリルゴム組成物のスコーチ安定性が悪化したり、ゴム架橋物の耐疲労性が低下したりする可能性がある。
上記α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位、ジエン単量体および/またはα−オレフィン単量体、並びに、その他の単量体単位は置換基を有していても良い。かかる置換基に限定はなく、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボキシル基、ハロゲン、アセチル基、アミノ基および水酸基等が挙げられる。また、置換基の結合位置は、上記各単量体単位を形成する単量体の重合反応部位のα−炭素ないしβ−炭素のいずれでも良い。さらにはこれらα−炭素ないしβ−炭素にアルキル基、シクロアルキル基またはアルキルシクロアルキル基が結合する場合はそれらの基に結合するものでも良い。
高飽和ニトリルゴム(a)は、そのヨウ素価が120以下、好ましくは80以下、より好ましくは25以下、特に好ましくは15以下のものである。高飽和ニトリルゴム(a)のヨウ素価が高すぎると、ゴム架橋物の耐オゾン性が低下するおそれがある。
また、高飽和ニトリルゴム(a)のポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは15〜200、より好ましくは20〜150、特に好ましくは30〜120である。高飽和ニトリルゴム(a)のムーニー粘度が低すぎるとゴム架橋物の強度特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると架橋性ニトリルゴム組成物の加工性が低下する可能性がある。
上記高飽和ニトリルゴム(a)の製造方法は、特に限定されない。一般的には、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、ジエン単量体および/またはα−オレフィン単量体、および、必要に応じて加えられるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合する方法が便利で好ましい。重合法としては、公知の乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御が容易であることから乳化重合法が好ましい。
共重合して得られた共重合体のヨウ素価が120より高い場合は、共重合体の水素化(水素添加反応)を行うと良い。水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)を含有する。炭酸カルシウム(b)としては、重質炭酸カルシウム、胡粉、白亜などの天然炭酸カルシウムであってBET比表面積が10m/g以上のもの;軽質炭酸カルシウム(沈降炭酸カルシウムとも言う。)である合成炭酸カルシウムであってBET比表面積が10m/g以上のもの;のどちらでも使用可能であるが、BET比表面積が10m/g以上のものの調達の容易さから合成炭酸カルシウムが好ましい。
重質炭酸カルシウムは粗晶質石灰石を、胡粉は風化貝殻を、白亜は風化微生物殻をそれぞれ粉砕して製造され、形状は不定形で、1次粒径は4μmが標準である。軽質炭酸カルシウムは、緻密質石灰石を焼成して生石灰と炭酸ガスとし、生石灰に水を加えてなる消石灰に前記炭酸ガスを吹き込んで製造される。この吹き込み条件により粒径や粒子形が調整される。また、軽質炭酸カルシウムには、塩化カルシウムや消石灰に炭酸ナトリウムを反応させて得ることもできる。軽質炭酸カルシウムの粒子形および1次粒径には、紡錘状(Calcite)や棒状(Aragonite)で1〜5μm(軽微性)のもの、立方体(斜方晶)型で0.02〜0.1μm(膠質)および0.1〜1μm(半膠質)のものなどがある。
炭酸カルシウム(b)の、気体(窒素)吸着法に基づく測定によるBET比表面積は10m/g以上、好ましくは15〜200m/g、より好ましくは20〜100m/gである。炭酸カルシウム(b)のBET比表面積が小さすぎると耐摩耗性に劣り、逆に、BET比表面積が大きすぎると圧縮永久ひずみが大きくなる傾向がある。
BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)としては、粒子表面を、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸塩および樹脂酸エステルよりなる群より選ばれる少なくとも1種の有機物で表面処理されたものが好ましく、脂肪酸または樹脂酸で表面処理されたものが特に好ましい。
脂肪酸としては、炭素数6〜24、特に10〜20の飽和もしくは不飽和の脂肪酸が好ましく挙げられる。炭素数が6〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸などを挙げることができる。特に、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸が好ましい。これらは2種以上混合して用いてもよい。
脂肪酸塩としては、上記炭素数6〜24、特に10〜20の飽和もしくは不飽和の脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
脂肪酸エステルとしては、上記炭素数6〜24、特に10〜20の飽和もしくは不飽和の脂肪酸と、炭素数が6〜18のアルコール、特に炭素数10〜18の飽和脂肪族アルコールとのエステルなどが好ましく挙げられる。
樹脂酸としては、例えば、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などのアビエチン酸類あるいはその重合体、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン等が挙げられ、ロジン(特にロジンに含有されるロジン酸)が好ましい。
樹脂酸塩としては、上記樹脂酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましい。
樹脂酸エステルとしては、ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセロールエステル、水添ロジンのメチルエステル、水添ロジンのトリエチレングリコール・エステル、水添ロジンのペンタエリスリトール・エステルなどが挙げられる。
上記表面処理された炭酸カルシウム(b)は、炭酸カルシウム自体の凝集が固くならないことに加えて高飽和ニトリルゴム(a)に親和性があるので、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物におけるBET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)の含有量は、高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対し、好ましくは5〜150重量部、より好ましくは10〜120重量部、特に好ましくは20〜100重量部である。該炭酸カルシウム(b)の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐摩耗性が不十分となるおそれがあり、逆に、多すぎると加工性が悪くなる可能性がある。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物が含有するポリアミン系架橋剤(c)は、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物が好ましい。その具体例として、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物;などが挙げられるが、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物におけるポリアミン系架橋剤(c)の含有量は、高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部である。ポリアミン系架橋剤(b)の含有量が少なすぎると、耐摩耗性に優れ、かつ、圧縮永久ひずみが小さいゴム架橋物が得られないおそれがあり、逆に、多すぎるとゴム架橋物の耐疲労性が低下する可能性がある。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物には、上記高飽和ニトリルゴム(a)、BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)、ポリアミン系架橋剤(c)以外に、ゴム加工分野において通常使用される配合剤、例えば、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、補強性充填材(カーボンブラック、シリカなど)、非補強性充填材(クレー、タルク、珪藻土など)、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料等を配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、目的に応じた量を適宜配合することができる。
また、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲で上記高飽和ニトリルゴム(a)以外のゴムを配合してもよい。高飽和ニトリルゴム(a)以外のゴムを配合する場合は、高飽和ニトリルゴム(a)100重量部当たり30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得られるゴム架橋物は、非常に強い補強効果を有する充填剤であるカーボンブラックを含有しなくても、圧縮永久ひずみが小さく、かつ、耐摩耗性に優れる。従って、カーボンブラックの含有量が好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である架橋性ニトリルゴム組成物を架橋することにより、圧縮永久ひずみが小さく、耐摩耗性に優れた淡色のゴム架橋物を得ることができる。
なお、顔料等の着色剤を配合することにより、容易に所定の色に着色することができる。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、上記各成分を好ましくは非水系で混合して調製される。本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を調製する方法に限定はないが、通常、ポリアミン系架橋剤(c)および熱に不安定な架橋助剤などを除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で一次混練した後、ロールなどに移してポリアミン系架橋剤(c)等を加えて二次混練する。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物の水分含有量は、好ましくは3重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下である。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)(コンパウンドムーニー)は、好ましくは15〜150、より好ましくは50〜120である。本発明の架橋性ニトリルゴム組成物が上記コンパウンドムーニーを有すると、成形加工性に優れる。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物はスコーチ安定性に優れ、170℃にて測定したJIS K6300−2に規定の10%加硫(架橋)に対応する時間tc(10)が好ましくは0.1〜10分、より好ましくは0.3〜5分、特に好ましくは0.5〜3分である。また、90%加硫(架橋)に対応する時間tc(90)が好ましくは3〜60分、より好ましくは5〜30分、特に好ましくは7〜25分である。
この架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して本発明のゴム架橋物を得るには、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、架橋反応により架橋物として形状を固定化する。予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
本発明のゴム架橋物は、耐油性、耐熱性および耐オゾン性に優れる高飽和ニトリルゴムの特性に加えて圧縮永久ひずみが小さく、また、特に耐摩耗性が大いに改善された特徴を有する。本発明のゴム架橋物のJIS K6264−2のピコ摩耗試験に基づく測定による摩耗容積は、好ましくは10×10−2cm以下、より好ましくは8×10−2cm以下、特に好ましくは6×10−2cm以下である。
これらの特徴を有する本発明のゴム架橋物は、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置およびボールねじ等)用のシール、バルブおよびバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、プラターなどの各種シール用ゴム部材;および、インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;として好適に用いられる。
また、本発明のゴム架橋物は、印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、などの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、化粧品、および医薬品の分野、食品と接触する分野、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することもできる。
以下に製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下の配合において「部」は、特に断わりのない限り重量基準である。
試験、評価は下記によった。
(1)カルボキシル基含有量
ゴムのカルボキシル基含有量は、水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、ゴム100グラムに対するカルボキシル基のモル数として求めた。単位はephrである。
(2)ムーニー粘度(ポリマームーニー、コンパウンドムーニー)
JIS K6300−1に従って測定した。単位は(ML1+4、100℃)。
(3)架橋特性〔tc(10)、tc(90)の測定〕
JIS K6300−2に従って、10%加硫(架橋)に対応する時間tc(10)および90%加硫(架橋)に対応する時間tc(90)を測定した。測定温度は170℃で、単位はmin(分)である。tc(10)、tc(90)の値が大きいとスコーチ安定性に優れることを示す。
(4)常態物性(引張強さ、100%引張応力、伸び)
架橋性ニトリルゴム組成物を縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状架橋物を得た。これをギヤー式オーブンに移して170℃で4時間二次架橋して得られたシート状架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強さ、100%引張応力および伸びを測定した。
(5)常態物性(硬さ)
上記(4)と同様に一次および二次架橋して得たシート状ゴム架橋物につき、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機、タイプAを用いてゴム架橋物の硬さを測定した。
(6)O−リング圧縮永久ひずみ
内径30mm、リング径3mmの金型を用いて、架橋性ゴム組成物を170℃で20分間、プレス圧10MPaで架橋した後、170℃で4時間二次架橋を行ってO−リング試験片を得た。圧縮永久ひずみは、この試験片を用いて25%圧縮状態で150℃にて168時間保持する条件で、JIS K6262に従って測定した。
(7)ピコ摩耗試験
上記(4)と同様に一次および二次架橋して得たシート状ゴム架橋物につき、JIS K6264−2に規定されたピコ摩耗試験の方法に従い、正転20回、逆転20回を各々2回繰り返し、合計80回回転させた後に摩耗容積を測定した。摩耗容積の値が小さいほど摩耗の度合いが小さく、耐摩耗性に優れることを示す。
(製造例1)
金属製ボトルに、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル37部、マレイン酸モノn−ブチル6部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン57部を仕込んだ。金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、金属製ボトルを回転させながら16時間重合反応した。濃度10重量%のハイドドキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、アクリロニトリル単位34重量%、ブタジエン単位60重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位6重量%のアクリロニトリル−ブタジエン−マレイン酸モノn−ブチル共重合体ゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
該ラテックスに含有されるゴム重量に対してパラジウム含有量が1000ppmになるようにオートクレーブにパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムラテックスを得た。
得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴムラテックスに2倍容量のメタノールを加えて、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムを凝固した後、60℃で12時間真空乾燥して高飽和ニトリルゴム(a1)を得た。高飽和ニトリルゴム(a1)のヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は3.2×10−2ephr、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は60であった。
(実施例1)
バンバリーミキサを用いて高飽和ニトリルゴム(a1)100部に、軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「白艶華CC」、白石工業社製、特性は表1参照)80部、トリメリット酸エステル(商品名「ADK Cizer C−8」、ADEKA社製、可塑剤)5部、ステアリン酸(架橋促進助剤)1部、4,4’−ジ−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「Naugard 445」、Crompton社製、老化防止剤)1.5部、2−メルカプトベンズイミダゾール(商品名「ノクラック MB」、大内新興社製、老化防止剤)1.5部およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(製品名「フォスファノールRL―210」、東邦化学工業社製、加工助剤;モノエステル41.6重量%、ジエステル38.4重量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル約20重量%混入)1部を添加して混合し、次いで、混合物をロールに移して1,3−ジ−o−トリルグアニジン(商品名「ノクセラー DT」、大内新興社製、架橋促進剤)2部、および、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名「Diak#1」、デュポン・ダウ・エラストマー社製、ポリアミン系架橋剤)2.6部を添加して混練し、架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。
得られた架橋性ニトリルゴム組成物を用いてコンパウンドムーニー粘度、架橋特性、常態物性、O−リング圧縮永久ひずみおよび耐摩耗性を試験、評価した結果を表2に記す。なお、摩耗容積は、測定値の100倍の値を表2に示す。
Figure 2008179663
(実施例2)
実施例1において軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「白艶華CC」)に代えて軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「ACTIFORT 700」、白石工業社製、特性は表1参照)を等部数用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表2に記す。
(実施例3)
実施例1において軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「白艶華CC」)に代えて軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「白艶華O」、白石工業社製、特性は表1参照)を等部数用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表2に記す。
(比較例1)
実施例1において軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「白艶華CC」)に代えて軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「Silver W」、白石工業社製、特性は表1参照)を等部数用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表2に記す。
(比較例2)
実施例1において軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「白艶華CC」)80部に代えて沈降法シリカ(商品名「Carplex 1120」、塩野義製薬社製、特性は表1参照)を40部用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表2に記す。
Figure 2008179663
表1が示すように、本発明例の架橋性ニトリルゴム組成物は、tc(10)およびtc(90)が大きくてスコーチ安定性に優れるものだった。また、これらによるゴム架橋物は引張強さ、引張応力および伸びのいずれも大きくてバランスが取れており、その上O−リング圧縮永久ひずみが小さく、かつ、摩耗容積が小さかった(実施例1〜3)。
一方、BET比表面積が10m/g未満の炭酸カルシウムを使用すると、得られるゴム架橋物は引張り強さおよび引張り応力が低下し、摩耗容積が大きかった(比較例1)。BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウムに代えてBET比表面積が10m/g以上である沈降法シリカを用いると、得られるゴム架橋物は、耐摩耗性は悪化しなかったが、圧縮永久ひずみが著しく劣るものであった(比較例2)。

Claims (6)

  1. α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(a)、BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)およびポリアミン系架橋剤(c)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物。
  2. 前記BET比表面積が10m/g以上の炭酸カルシウム(b)が、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸塩および樹脂酸エステルよりなる群より選ばれる少なくとも1種の有機物で表面処理されたものである請求項1に記載の架橋性ニトリルゴム組成物。
  3. カーボンブラック含有量が2重量%以下である請求項1または2に記載の架橋性ニトリルゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
  5. JIS K6264−2のピコ摩耗試験による摩耗容積が10×10-2cm以下である請求項4に記載のゴム架橋物。
  6. シール用ゴム部材またはガスケットである請求項4又は5に記載のゴム架橋物。
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