以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す断面図である。画像形成装置100は、原稿用紙から読取られた画像データを取得したり、或いは、外部から受信した画像データを取得し、この画像データによって示されるモノクロ画像を記録用紙に形成するものであり、その構成を大別すると、原稿用紙搬送部(ADF)101、画像読取り部102、印字部103、記録用紙搬送部104、及び給紙部105からなる。
原稿用紙搬送部101では、少なくとも1枚の原稿用紙が原稿セットトレイ11にセットされると、原稿用紙を1枚ずつ原稿セットトレイ11から引き出して搬送し、この原稿用紙を画像読取り部102の原稿読取り窓102aに導いて通過させ、この原稿用紙を排紙トレイ12に排出する。
原稿読取り窓102aの上方には、CIS(Contact Image Sensor)13を配設している。このCIS13は、原稿読取り窓102aを原稿用紙が通過する際に、原稿用紙裏面の画像を主走査方向に繰り返し読取り、原稿用紙裏面の画像を示す画像データを出力する。
また、画像読取り部102は、原稿用紙が原稿読取り窓102aを通過する際に、第1走査ユニット15のランプによって原稿用紙表面を露光し、第1及び第2走査ユニット15、16のミラーによって原稿用紙表面からの反射光を結像レンズ17へと導き、結像レンズ17によって原稿用紙表面の画像をCCD(Charge Coupled Device)18上に結像する。CCD18は、原稿用紙表面の画像を主走査方向に繰り返し読取り、原稿用紙表面の画像を示す画像データを出力する。
更に、原稿用紙が画像読取り部102上面のプラテンガラス上に置かれた場合は、第1及び第2走査ユニット15、16を相互に所定の速度関係を維持しつつ移動させ、第1走査ユニット15によってプラテンガラス上の原稿用紙表面を露光し、第1及び第2走査ユニット15、16によって原稿用紙表面からの反射光を結像レンズ17へと導き、結像レンズ17によって原稿用紙表面の画像をCCD18上に結像する。
CIS13もしくはCCD18から出力された画像データは、マイクロコンピュータ等の制御回路により各種の画像処理を施されてから、印刷部103に出力される。
印刷部103は、画像データによって示される原稿を用紙に記録するものであって、感光体ドラム21、帯電器22、光書込みユニット23、現像器24、転写ユニット25、クリーニングユニット26、及び定着装置27等を備えている。
感光体ドラム21は、表層が有機光導電性材料からなる有機感光体であり、一方向に回転して、その表面をクリーニングユニット26によりクリーニングされてから、その表面を帯電器22により均一に帯電される。帯電器22は、チャージャー型のものであっても、感光体ドラム21に接触するローラ型やブラシ型のものであっても良い。
光書込みユニット23は、2つのレーザ照射部28a、28b、及び2つのミラー群29a、29bを備えるレーザスキャニングユニット(LSU)である。この光書込みユニット23では、画像データを入力して、この画像データに応じたレーザ光を各レーザ照射部28a、28bからそれぞれ出射し、これらのレーザ光を各ミラー群29a、29b介して感光体ドラム21に照射して、均一に帯電された感光体ドラム21表面を露光し、感光体ドラム21表面に静電潜像を形成する。
この光書込みユニット23は、高速印字処理に対応するために2つのレーザ照射部28a、28bを備えた2ビーム方式を採用して、照射タイミングの高速化に伴う負担を軽減している。
尚、光書込ユニット23として、レーザスキャニングユニットの代わりに、発光素子をアレイ状に並べたEL書き込みヘッドやLED書き込みヘッドを用いることもできる。
現像器24は、トナーを感光体ドラム21表面に供給して、静電潜像を現像し、トナー像(可視像とも称する)を感光体ドラム21表面に形成する。転写ユニット25は、感光体ドラム21表面のトナー像を用紙搬送部104により搬送されてきた記録用紙に転写する。定着装置27は、記録用紙を加熱及び加圧して、記録用紙上のトナー像を定着させる。この後、記録用紙は、用紙搬送部104により排紙トレイ47へと更に搬送されて排出される。また、クリーニングユニット26は、現像、転写後に感光体ドラム21の表面に残留したトナーを除去して回収する。
ここで、転写ユニット25は、転写ベルト31、駆動ローラ32、従動ローラ33、及び弾性導電性ローラ34等を備えており、転写ベルト31を該各ローラ32〜34と他のローラに張架して回転させている。転写ベルト31は、所定の抵抗値(例えば、1×109〜1×1013Ω/cm)を有しており、その表面に載せられた記録用紙を搬送する。弾性導電性ローラ34は、転写ベルト31を介して感光体ドラム21表面に押し付けられており、転写ベルト31上の記録用紙を感光体ドラム21表面に押し付ける。この弾性導電性ローラ34には、感光体ドラム21表面のトナー像の電荷とは逆極性の転写電界が印加されており、この逆極性の転写電界により感光体ドラム21表面のトナー像が転写ベルト31上の記録用紙に転写される。例えば、トナー像が(−)極性の電荷を有している場合は、弾性導電性ローラ34に印加されている転写電界の極性が(+)極性にされる。
クリーニングユニット26は、クリーニングブレード26Aを感光体ドラム21表面に圧接して、感光体ドラム21表面の残留トナーや紙粉を除去する。感光ドラム21表面のトナー像の全てが記録用紙上に転写されることはなく、一般的には、転写効率が、その転写機構によっても異なるが、概ね85〜95%であると言われている。他方、記録用紙が転写電界を受けると、記録用紙表面の浮遊物(短繊維のセルロース、増量剤、漂白剤等々)が転写電界とは逆極性に帯電し、この帯電した浮遊物が感光体ドラム21表面に吸着して紙粉と呼ばれる付着物となる。
仮に、感光体ドラム21表面の残留トナーや紙粉を除去しなかったならば、印字品位が低下する。このため、クリーニングユニット26による感光体ドラム21表面のクリーニングが必要となる。
定着装置27は、加熱ローラ35及び加圧ローラ36を備えている。加熱ローラ35に対して加圧ローラ36が所定圧で圧接されるように、加圧ローラ36の両端に図示しない加圧部材を配置している。加熱ローラ35と加圧ローラ36間の圧接域(ニップ域と称される)に記録用紙が搬送されて来ると、各ローラ35、36により記録用紙が搬送されつつ、記録用紙上の未定着トナー像が加熱溶融され加圧されて、トナー像が記録用紙上に定着される。
用紙搬送部104は、記録用紙を搬送するための複数対の搬送ローラ41、一対のレジストローラ42、搬送経路43、反転搬送経路44a、44b、複数の分岐爪45、及び一対の排紙ローラ46等を備えている。
搬送経路43では、記録用紙を給紙部105から受け取り、記録用紙の先端がレジストローラ42に達するまで該記録用紙を搬送する。このときレジストローラ42を一時的に停止させているので、記録用紙の先端がレジストローラ42に達して当接し、記録用紙が撓む。この撓んだ記録用紙の弾性力により該記録用紙の先端をレジストローラ42と平行に揃える。この後、レジストローラ42の回転を開始して、レジストローラ42により記録用紙を印字部103の転写ユニット25へと搬送し、更に排紙ローラ46により記録用紙を排紙トレイ47へと搬送する。
レジストローラ42の停止及び回転は、レジストローラ42と駆動軸間のクラッチをオンオフに切り替えたり、レジストローラ42の駆動源であるモータをオンオフに切り替えてなされる。
また、記録用紙の裏面にも画像を記録する場合は、各分岐爪45を選択的に切替え、記録用紙を搬送経路43から反転搬送経路44bへと導き入れて、記録用紙の搬送を一旦停止させ、更に各分岐爪45を選択的に再度切替え、記録用紙を反転搬送経路44bから反転搬送経路44aへと導き入れて、記録用紙の表裏を反転させてから、記録用紙を反転搬送経路44aを通じて搬送経路43のレジストローラ42へと戻す。
この様な記録用紙の搬送をスイッチバック搬送と称し、このスイッチバック搬送により記録用紙の表裏を反転させることができ、同時に記録用紙の先端及び後端も入れ替わる。従って、記録用紙が反転されて戻されると、記録用紙の後端がレジストローラ42に当接して、記録用紙の後端がレジストローラ42と平行に揃えられ、レジストローラ42により記録用紙がその後端から印字部103の転写ユニット25へと搬送されて、記録用紙の裏面に印字がなされ、定着装置27の各ローラ35、36間のニップ域により記録用紙裏面の未定着トナー像が加熱溶融され加圧されて、トナー像が記録用紙の裏面に定着され、この後に排紙ローラ46により記録用紙が排紙トレイ47へと搬送される。
搬送経路43及び反転搬送経路44a、44bにおいては、記録用紙の位置等を検出するセンサーを各所に配置し、各センサーにより検出された記録用紙の位置に基づいて搬送ローラやレジストローラを駆動制御して、記録用紙の搬送及び位置決めを行っている。
給紙部105は、複数の給紙トレイ51を備えている。各給紙トレイ51は、記録用紙を蓄積しておくためのトレイであり、画像形成装置100の下方に設けられている。また、各給紙トレイ51は、記録用紙を一枚ずつ引き出すためのピックアップローラ等を備えており、引き出した記録用紙を用紙搬送部104の搬送経路43へと送り出す。
画像形成装置100は、高速印字処理を目的としているため、各給紙トレイ51には、定型サイズの記録用紙を500〜1500枚収納可能な容積を確保している。
また、画像形成装置100の側面には、複数種の記録用紙を多量に収納可能な大容量給紙カセット(LCC)52、及び主として不定型サイズの記録用紙を供給するための手差しトレイ53を設けている。
排紙トレイ47は、手差しトレイ53とは反対側の側面に配置されている。この排紙トレイ47に代えて、排紙用紙の後処理装置(ステープル、パンチ処理等々)や、複数段の排紙トレイをオプションとして配置することも可能な構成となっている。
この様な画像形成装置100においては、印字処理速度を高速化して、使い勝手を向上させている。例えば、A4定型の記録用紙を用いる場合は、記録用紙の搬送速度を120枚/分(プロセス速度600mm/sec)に設定している。
ところで、図2に拡大して示す様に感光体ドラム21の周囲には、帯電器22、現像器24、転写ユニット25、及びクリーニングユニット26が該感光体ドラム21の回転方向に順次並べられて配置されており、更に転写ユニット25とクリーニング26間に剥離爪61が配置されている。
転写ユニット25は、転写電界を生成しており、この転写電界中で感光体ドラム21表面のトナー像に記録用紙が重ね合わせられて、このトナー像が感光体ドラム21表面から記録用紙に転写される。このとき、記録用紙が帯電して感光体ドラム21表面に静電吸着されるので、転写の後で、記録用紙を感光体ドラム21表面から剥がす必要があり、このために剥離爪61が設けられている。
図3は、複数の剥離爪61を有する剥離ユニット62を示す平面図である。図3に示す様に剥離ユニット62は、感光体ドラム21と平行な支軸63を回転可能に支持し、この支軸63に複数の剥離爪61を間隔を開けて固定支持し、また支軸63の一端に揺動片64を固定し、揺動片64をソレノイド65のプランジャーに連結したものである。
各剥離爪61の先端は、感光体ドラム21表面に向けられており、ソレノイド65のプランジャーの位置に応じて感光体ドラム21表面に接触したり該表面から僅かに離間したりする。
通常は、各剥離爪61の先端が感光体ドラム21表面から離間されており、記録用紙の先端部が転写ユニット25を通り過ぎるタイミングで、各剥離爪61の先端が感光体ドラム21表面に接触して記録用紙の先端部を剥がし、記録用紙の先端部が十分に剥がれたタイミングで、各剥離爪61の先端が感光体ドラム21表面から僅かに離間される。
従って、記録用紙が転写ユニット25を通り過ぎる度に、各剥離爪61が感光体ドラム21表面に接触して記録用紙の先端部を剥がすことになる。
各剥離爪61は、感光体ドラム21表面との摺接により発熱するため、耐熱性に優れる材質が好ましく、また記録用紙の帯電電荷を逃がすために、導電性を有する材質が好ましい。例えば、POM(ポリアセタール樹脂)、ポリイミド、ジュラコン(登録商標)等が好ましい。
しかしながら、剥離爪61により記録用紙を感光体ドラム21表面から剥がす度に、剥離爪61が感光体ドラム21表面に当接したり記録用紙の先端に衝突することから、多数の記録用紙を繰り返して剥離しているうちに、剥離爪61の先端が欠けて行き、剥離爪61の先端に多くの傷が生じる。そして、剥離爪61の先端の傷が感光体ドラム21表面に接触して傷をつけ、この感光体ドラム21表面の傷が原因となって、記録用紙上に黒スジや白スジ等の印字不良が発生する。
感光体ドラム21が有機感光体である場合は、その表層に傷が発生し易く、剥離爪61の先端の傷を原因とする感光体ドラム21表面の傷が必ず発生する。
また、画像形成装置内の温度上昇や、現像器24、クリーニングブレード26A、帯電器22等の感光体ドラム21周囲に配置される各部材に擦られることによって、感光体ドラム21表面が履歴を受けると、感光体ドラム21表面に付着した残留トナーが軟化してフィルム状となるフィルミング現象が発生し、これが印字品位の低下を招来する。
そこで、本実施形態では、感光体ドラム21表面に圧接されるクリーニングユニット26のクリーニングブレード26Aに着眼し、このクリーニングブレード26Aを利用して、感光体ドラム21表面の傷を平滑化し、かつトナーフィルミングを除去している。
発明者等は、クリーニングブレード26Aの反発弾性率、ゴム硬度、及びヤング率を適宜に設定すれば、感光体ドラム21表面の傷を平滑化すると同時に、クリーニングブレード26Aにより感光体ドラム21表面のトナーフィルミングを解消するとことが可能であることを発見した。
フィルミングトナーの除去は、これと同時に感光体ドラム21の表層を削り取ることとなるため、感光体ドラム21の感度低下やライフの短縮を生じない程度の削り取りが必要となる。
感光体ドラム21の感度低下は、感光体ドラム21の表層の厚み(20〜30μm)に対して、その概ね20〜30%を削り取ったときに生じる。このため、感光体ドラム21の表層の最大削り量を4〜9μm程度とし、感光体ドラム21のライフを1,000,000枚印字(A4横搬送)とすると、100,000枚毎の削り量を0.4〜0.9μmとするべきであり、この削り量に合致するクリーニングブレード26Aの材質の選択や、感光体ドラム21表面に対するクリーニングブレード26Aの加圧力の設定が必要となる。
例えば、クリーニングブレード26Aの硬度を従来のクリーニングブレードの硬度よりも高くすれば、クリーニングブレード26Aによる感光体ドラム21の表層(フィルミングトナーを含む)の適宜な削り取りを可能にする。
従来のクリーニングブレードは、十分な弾性を与えられ、その先端を感光体ドラム表面に圧接されている。このため、図4(a)、(b)に示す様に感光体ドラム21の回転移動に伴い、従来のクリーニングブレード201の先端が弾性変形したり元の形状に戻ったりすることを繰り返して振動し、この振動しているクリーニングブレード201の先端により感光体ドラム21表面の残留トナーや紙粉を弾き飛ばしていた。このクリーニングブレード201の先端の振動をスティックスリップ現象と称している。
本実施形態では、その様なスティックスリップ現象に頼らず、この現象を排除している。クリーニングブレード26Aの材質の選択によりクリーニングブレード26Aの反発弾性率、ゴム硬度、及びヤング率を適宜に設定した上で、感光体ドラム21表面に対するクリーニングブレード26Aの加圧力を適宜に設定すると、スティックスリップ現象が発生せず、図5に示す様にクリーニングブレード26Aが感光体ドラム21表面に略常時摺接して、クリーニングブレード26Aが感光体ドラム21の表層(フィルミングトナーを含む)を適宜に削り取り、感光体ドラム21表面の傷が平滑化されて修復される。同時に、クリーニングブレード26Aにより感光体ドラム21表面の残留トナーや紙粉を除去することができる。また、クリーニングブレード26Aを感光体ドラム21表面に摺接させるだけであるから、トナーが飛散せず、トナーの飛散による汚れが発生しない。
次に、クリーニングブレードの反発弾性率、ゴム硬度、及びヤング率に関する実験を行ったので、この実験結果を説明する。
実験に先立ち、剥離爪61の先端の傷を原因とする感光体ドラム21表面の傷の深さ(傷として形成された凹凸の高さ)が1〜3μmであることを予め測定で確認している。
また、クリーニングブレードを所定圧力で感光体ドラム21表面に圧接して、表層を適宜に削り取り、クリーニングブレードにより感光体ドラム21表面の傷を平滑化するものとする。
更に、感光体ドラム21が有機感光体である。また、従来のクリーニングブレード201、本実施形態のクリーニングブレード26Aとして2種類のもの(一方を符号26A1で表し、他方を符号26A2で表す)を用いている。これらのクリーニングブレードの反発弾性率、ゴム硬度、及びヤング率は、次の表1に示す通りである。
尚、クリーニングブレードのゴム特性の測定に用いた測定器は、以下に示す通りである。また、測定方法は、図6(a)、(b)に例示する様にJIS規格に準じている。
反発弾性 上島製作所製 リュプケ反発弾性試験機
硬度 Tecock製 TYPE−A測定器
ヤング率 島津製作所製 オートグラフ試験機
この実験においては、感光体ドラム21の径を120mmとし、感光体ドラム21表面に対するクリーニングブレードの圧接圧力を1.25Nとしている。
そして、プロセス速度として350mm/sec(中速機)を設定し、かつ従来のクリーニングブレード201を用いるという条件で、印字処理を行いつつ、所定印字枚数毎(10,000枚)に、印字不良の判定、感光体ドラム21表面の汚れの判定、感光体ドラム21表層の削れ具合の判定、及び総合的な判定を行った。また、プロセス速度として600mm/sec(高速機)を設定し、かつ従来のクリーニングブレード201、及び本実施形態の2種類のクリーニングブレード26A1、26A2をそれぞれ用いるという3つの条件で、同様の判定を行った。
印字不良の判定は、剥離爪61の先端の傷を原因とする記録用紙上に黒スジや白スジ等の目視判定である。感光体ドラム21表面の汚れの判定は、汚れ程度の目視判定である。感光体ドラム21表層の削れ具合の判定は、測定による削れ量に基づく判定であり、削れ量が小さい程、良好と判定した。この様な判定の結果は、次の表2に示す通りである。
上記表2から明らかな様に、プロセス速度として350mm/sec(中速機)を設定し、かつ従来のクリーニングブレード201を用いるという条件では、プロセス速度が低いため、従来のクリーニングブレード201であっても、印字不良が目立たず、感光体ドラム21表面の汚れ程度も小さく、感光体ドラム21表層の削れ具合も良好である。
しかしながら、プロセス速度として600mm/sec(高速機)を設定し、かつ従来のクリーニングブレード201を用いるという条件では、印字不良が際立って目立ち、感光体ドラム21表面の汚れ程度が大きかった。これは、プロセス速度が高いことから、従来のクリーニングブレード201のゴム硬度が不足し、ブレード先端の反転(ねじれ)やブレード先端と感光体ドラム21表面間の摩擦熱によりブレード先端の欠けが発生するためと考えられる。
そこで、従来のクリーニングブレード201と比較して、反発弾性率が低く、ゴム硬度が高く、ヤング率が高い2種類のクリーニングブレード26A1、26A2を適用した。
クリーニングブレード26A1では、印字不良が殆どなく、感光体ドラム21表面の汚れ程度も概ね小さく、感光体ドラム21表層の削れ具合も概ね良好であった。
クリーニングブレード26A2では、印字不良がなく、感光体ドラム21表面の汚れ程度も小さく、感光体ドラム21表層の削れ具合も良好であった。
剥離爪61の先端の傷を原因とする記録用紙上に黒スジや白スジ等の印字不良に関しては、最も良好なのがブレード26A2であり、次がブレード26A1であり、不良なのが従来のブレード201であった。
また、感光体ドラム21表面の汚れに関しても、最も良好なのがブレード26A2であり、次がブレード26A1であり、不良なのが従来のブレード201であった。
更に、感光体ドラム21表層の削れ具合に関しては、最も良好なの(最も削れ量が小さい)が従来のブレード201であり、次がブレード26A2であり、その次がブレード26A1であった。より具体的には、最も削れ量が小さかった従来のブレード201にあっては、その削れ量が0.4μm(10,000枚毎)であり、最も削れ量が大きかったブレード26A1にあっては、その削れ量が0.8〜1.0μm(10,000枚毎)であった。
ただし、先に述べた様に100,000枚毎の削り量を0.4〜0.9μmにせねばならないので、従来のブレード201による削れ量は、その下限値の0.4μmとなる。
この様な削れ具合の結果と上記表1のブレードの特性との比較により、感光体ドラム21表層の削れ具合がゴム硬度に大きく依存することが判明した。
従って、高速機を前提として、印字不良(剥離爪61の先端の傷)、感光体ドラム21表面の汚れ、及び感光体ドラム21表層の削れ具合を総合的に評価すると、最も良好なのがブレード26A2であり、次に良好なのがブレード26A1であり、不良なのが従来のブレード201となる。
また、この様な総合的な評価と上記表1のブレードの特性との比較により、総合的に良好な結果を得るには、クリーニングブレードの反発弾性率をXとすると、反発弾性率を25<X<35の範囲で設定し、クリーニングブレードのヤング率をYとすると、ヤング率Yを800gf/mm2以上に設定し、クリーニングブレードの硬度をZとすると、硬度Zを70°<Z<80°の範囲で設定するのが好ましいということが判明した。
一方、図7(a)は、従来のクリーニングブレード201を用いたときの感光体ドラム21表面の傷の深さを測定して示す図である。
図7(a)に示す様に各剥離爪61に接触する感光体ドラム21表面のそれぞれの箇所で傷が深くなっている。図7(b)は、図7(a)における剥離爪61に接触する感光体ドラム21表面の箇所の傷を拡大して示し、図7(c)は、図7(b)の傷を拡大して模式的に示している。
従来のクリーニングブレード201を用いた場合は、感光体ドラム21表層の削れ量が小さ過ぎるため、図7(c)に示す様に感光体ドラム21表面の傷が凹凸状に生じたまま残っている。この凹凸状の凸部での電界集中が著しく、凸部の表面電位が異常に高くなり、放電現象が発生して、この部位で表面電位の低下を招き、この部位にトナーが過剰に付着することから、黒スジや白スジ等が発生し易くなる。
また、図8(a)は、本実施形態のクリーニングブレード26A2を用いたときの感光体ドラム21表面の傷の深さを測定して示す図である。図8(a)に示す様に各剥離爪61に接触する感光体ドラム21表面のそれぞれの箇所で傷が僅かに深くなっている。図8(b)は、図8(a)における剥離爪61に接触する感光体ドラム21表面の箇所の傷を拡大して示し、図8(c)は、図8(b)の傷を拡大して模式的に示している。
図8(c)に示す様に感光体ドラム21表面の傷は、図7(c)の凹凸状の凸部を削り取ったように形成されている。これは、クリーニングブレード26A2により凹凸状の凸部が削り取られたためである。従って、電界集中が生じ易い凸部がなく、このために黒スジや白スジ等が発生しない。
この様な実験から明らかな様に、クリーニングブレードの反発弾性率、ヤング率、及び硬度を適宜に設定すれば、感光体ドラム21表面の傷を平滑化して略解消することができ、また同時に感光体ドラム21表面のトナーフィルミングを解消するとことができ、高速機のクリーニング性能の確保、印字品位の確保が可能である。
図9は、本発明の画像形成装置の第2実施形態における剥離ユニット62Aを示す平面図である。尚、図9において、図3と同様の機能を果たす部位には同じ符号を付す。
本実施形態の画像形成装置は、図1の画像形成装置100と略同様の構成であり、感光体ドラム21周囲に剥離ユニット62の代わりとなる剥離ユニット62Aを配置した点が異なる。
この剥離ユニット62Aは、図3の剥離ユニット62と同様に、複数の剥離爪61、支軸63、揺動片64、及びソレノイド65を有するだけではなく、支軸63の右端(図9上の右端)に当接する偏芯カム66、支軸63の左端(図9上の左端)に圧接して、支軸63を右方向に付勢するバネ67、偏芯カム66を回転駆動する回転駆動源68、及び回転駆動源68を駆動制御する制御部69を備えている。
支軸63は、回転可能に支持されるだけではなく、該支軸63の長手方向(感光体ドラム21の軸方向)にスライド可能に支持されている。バネ67により支軸63が右方向に付勢されて、支軸63の右端が偏芯カム66の周面に当接されている。回転駆動源68により偏芯カム66が回転されて、支軸63の右端に当接する偏芯カム66の周面位置が変わると、支軸63が該支軸63の長手方向に移動し、これに伴って支軸63に固定された各剥離爪61の位置も長手方向に移動し、感光体ドラム21表面に対する各剥離爪61の接触位置が変更される。
図10に示す様に偏芯カム66は、3つの周面位置P1、P2、P3のいずれかに支軸63の右端を当接される。周面位置P1が偏芯カム66の軸66aに最も近く、周面位置P2が偏芯カム66の軸66aからやや離れ、周面位置P3が偏芯カム66の軸66aから最も離れている。このため、支軸63の右端が偏芯カム66の周面位置P1に当接した状態では、支軸63が最も右寄りの位置に位置決めれ、また支軸63の右端が偏芯カム66の周面位置P2に当接した状態では、支軸63がやや左寄りに移動されて位置決めされ、更に支軸63の右端が偏芯カム66の周面位置P3に当接した状態では、支軸63が最も左寄りの位置に位置決めされる。このような支軸63の移動に伴って、各剥離爪61も、図9に示す様な最も右寄りの位置P11、やや左寄りの位置P12、及び最も左寄りの位置P13にそれぞれ移動され、感光体ドラム21表面に対する各剥離爪61の接触位置が変更される。
これにより、感光体ドラム21表面の特定箇所に傷が深く形成されることを未然に防止することができ、感光体ドラム21表面を平滑化するために削り取られる光導電性層の量を最小限度に抑えて、光導電性層の性能を維持することができる。
本実施形態では、制御部69により回転駆動源68が駆動制御されて、回転駆動源68により偏芯カム66が回転駆動され、感光体ドラム21表面に対する各剥離爪61の接触位置が変更される。制御部69は、画像形成装置による印字処理枚数に応じて、感光体ドラム21表面に対する各剥離爪61の接触位置を変更する。また、制御部69は、回転駆動源68の制御だけではなく、画像形成装置100全体を統括的に制御するという役目も果たす。
次に、図11のフローチャートを参照しつつ、印字処理枚数に応じた各剥離爪61の接触位置の変更処理手順を説明する。
まず、画像形成装置100の操作パネル(図示せず)の操作により印字要求がなされると(ステップS101)、この印字要求が制御部69へと通知される。制御部69は、この印字要求を受けると、印字倍率、印字要求部数、及び印字濃度等の印字条件の全てが入力されるまで待機し(ステップS102で「No」)、印字条件の全てが入力されると(ステップS102で「Yes」)、偏芯カム66の各周面位置P1、P2、P3のいずれが支軸63の右端に当接しているかを、つまり感光体ドラム21表面に対する各剥離爪61の接触位置を確認し、また印字処理枚数積算値Aをメモリ69aから読出して確認する(ステップS103)。
支軸63の右端に当接している偏芯カム66の周面位置の確認は、偏芯カム66の回転角度を検出すればよく、回転駆動源68のモータの回転角度を検出したり制御することにより偏芯カム66の回転角度を検出することができる。また、印字処理枚数積算値Aは、後で述べる規定枚数Bに到達するまで積算され、規定枚数Bに到達すると0にリセットされる。
引き続いて、制御部69は、メモリ69aから読出した印字処理枚数積算値Aを規定枚数Bと比較し(ステップS104)、印字処理枚数積算値Aが規定枚数B未満であるか否か、つまり印字処理枚数積算値Aが規定枚数Bに到達したか否かを判定する(ステップS105)。
例えば、印字処理枚数積算値Aが規定枚数B未満であれば(ステップS105で「Yes」)、つまり印字処理枚数積算値Aが規定枚数Bに到達していなければ、制御部69は、ステップS101、102の印字要求及び印字条件に応じた印字処理を実行し(ステップS106)、少なくとも1枚の記録用紙に画像を印刷形成する。そして、制御部69は、要求された印字処理の全てが終了したか否かを確認し(ステップS107)、終了していなければ(ステップS107で「Yes」)、ステップS106の印字処理を継続する。
また、制御部69は、要求された印字処理の全てが終了すると(ステップS107で「No」)、ステップS106で印字処理された印字処理枚数を求め、この印字処理枚数を印字処理枚数積算値Aに加算して、印字処理枚数積算値Aを更新し、メモリ69a内の印字処理枚数積算値Aも書き換えて更新する(ステップS108)。
この後、制御部69は、更新した印字処理枚数積算値Aが規定枚数B未満であるか否か、つまり更新した印字処理枚数積算値Aが規定枚数Bに到達したか否かを判定する(ステップS109)。
そして、印字処理枚数積算値Aが規定枚数B未満であれば(ステップS109で「Yes」)、つまり印字処理枚数積算値Aが規定枚数Bに到達していなければ、制御部69は、画像形成装置100を待機状態とし、次の新たな印字要求があると、ステップS101からの処理を繰り返す。
一方、制御部69は、ステップS106の印字処理を実行する前に、印字処理枚数積算値Aが規定枚数Bに到達していると判定すると(ステップS105で「No」)、感光体ドラム21表面に対する各剥離爪61の接触位置を変更するタイミングになったとみなして(ステップS110)、回転駆動源68を駆動制御して、偏芯カム66を回転させ、感光体ドラム21表面に対する各剥離爪61の接触位置を変更する(ステップS111)。このとき、各剥離爪61が最も右よりの位置P11にあったならばやや左寄りの位置P12まで移動され、各剥離爪61がやや左寄りの位置P12にあったならば最も左寄りの位置P13まで移動され、各剥離爪61が最も左寄りの位置P13にあったならば最も右よりの位置P11まで移動される。従って、各剥離爪61は、各位置P11、P12、P13に順次サイクリックに移動されることになる。
制御部69は、各剥離爪61の接触位置が変更されると(ステップS112で「Yes」)、メモリ69a内の印字処理枚数積算値Aを0にリセットして初期化する(ステップS113)。そして、ステップS106に以降して、印字処理を実行する。
また、ステップS106の印字処理が実行され、印字処理枚数積算値Aが更新された後で、印字処理枚数積算値Aが規定枚数Bに到達していると判定されたときにも(ステップS109で「No」)、各剥離爪61の接触位置を変更するタイミングになったとみなされて(ステップS114)、回転駆動源68が駆動制御され、偏芯カム66が回転され、各剥離爪61の接触位置が変更される(ステップS115)。このときも、各剥離爪61が位置P11→位置P12、位置P12→位置P13、位置P13→位置P11のいずれかで移動される。そして、各剥離爪61の接触位置が変更されると(ステップS116で「Yes」)、メモリ69a内の印字処理枚数積算値Aが0にリセットされて初期化される(ステップS117)。そして、待機状態となる。
このように印字処理の前後で、印字処理枚数積算値Aが規定枚数Bに到達しているか否かを確認し、規定枚数Bに到達していれば、各剥離爪61の接触位置の変更を直ちに行っているので、印字処理枚数積算値Aが規定枚数Bに到達したタイミングから大幅にずれることなく、各剥離爪61の接触位置の変更を実施することができる。
ここで、各剥離爪61の接触による感光体ドラム21表層の傷の深さを考慮すると、5,000枚〜10,000枚毎に、各剥離爪61が各位置P11、P12、P13を一巡するようにするのが好ましい。このためには、規定枚数Bを2,000枚〜5,000枚に設定すれば良く、これにより印字処理枚数積算値Aが2,000枚〜5,000枚に達する度に、各剥離爪61の接触位置が順次変更され、印字処理枚数の総計が約5,000枚〜10,000枚増加する度に、各剥離爪61が各位置P11、P12、P13を一巡する。この結果、感光体ドラム21の各位置P11、P12、P13のいずれにおいても、剥離爪61が感光体ドラム21表面に接触する期間が短くなり、剥離爪61の接触による感光体ドラム21表面の傷の深さが浅くなり、感光体ドラム21表面全体を均一に平滑化するためのクリにーングブレード26Aによる感光体ドラム21の光導電性層の削れ量を抑えることができ、光導電性層のクラックの発生等を未然に防止し、印字品位を高く維持することができる。
感光体ドラム21の特定箇所に剥離爪が接触し続ける場合は、感光体ドラム21の特定箇所に深い傷が形成される。この深い傷を急激に削り取ると、感光体ドラム21の光導電性層にクラック等が発生し易く、印字品位を著しく損なうことがある。
本実施形態では、各剥離爪61を各位置P11、P12、P13に順次サイクリックに移動させているので、該各位置での傷の深さが浅く、各剥離爪61が各位置P11、P12、P13を一巡する間に、クリにーングブレード26Aにより感光体ドラム21の光導電性層を僅かに削り取るだけで、感光体ドラム21表面全体を均一に平滑化することができる。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、多様に変形することができる。例えば、上記クリーニングブレードの反発弾性率X、ヤング率Y、及び硬度Zの設定範囲は、感光体ドラム21の径、クリーニングブレードの圧接圧力、及びプロセス速度等を規定した上で求められたものであるから、これらの規定値が変わったときには変更されるべきものである。要するに、クリーニングブレードの反発弾性率Xを従来よりも低くし、ヤング率Yを高くし、硬度Zを高くして、クリーニングブレードの先端が感光体ドラム表面に常時摺接するようにし、クリーニングブレードの先端により感光体表面に形成された傷が平滑化されるようにすれば良い。
また、本発明は、有機感光体だけでなく、アモルファスシリコンの感光体等にも適用することができる。