JP2008159510A - 鉛合金格子及びそれを用いた鉛蓄電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛又は鉛合金を基材とする鉛合金格子を用いた鉛蓄電池について、メンテナンスフリー特性を維持しつつ、サイクル寿命を向上させる。
【解決手段】鉛又は鉛合金からなる基材層に表面層を設けた鉛合金格子において、前記表面層が、少なくともゲルマニウムを0.0001〜1.0質量%含む鉛合金層であることを特徴とする。前記表面層が、さらにアンチモン、スズを含む鉛合金層であることが好ましい。また、前記鉛合金格子を正極格子に用いたことを特徴とする鉛蓄電池である。
【選択図】図1(d)
【解決手段】鉛又は鉛合金からなる基材層に表面層を設けた鉛合金格子において、前記表面層が、少なくともゲルマニウムを0.0001〜1.0質量%含む鉛合金層であることを特徴とする。前記表面層が、さらにアンチモン、スズを含む鉛合金層であることが好ましい。また、前記鉛合金格子を正極格子に用いたことを特徴とする鉛蓄電池である。
【選択図】図1(d)
Description
本発明は、鉛又は鉛合金からなる基材層に表面層を設けた鉛合金格子及びそれを用いた鉛蓄電池に関するものである。
鉛蓄電池に用いられている格子合金は、鉛−アンチモン系合金と実質的にアンチモンを含まない鉛合金に大別でき、アンチモンを含まない鉛合金としては、鉛−カルシウム系合金があるが、特に、近年はメンテナンスフリー特性が重要視されてきており、アンチモンを含まない鉛−カルシウム系合金がメンテナンスフリー化に適した特性を有していることからよく使用されるようになってきた。さらに、セパレータに液を含浸・保持させ流動液のない無漏液タイプの密閉式鉛蓄電池が大形据置用や小型コンシューマー用を中心に増加しているが、これらの格子にも通常、鉛−カルシウム系合金が使用されている。
しかしながら、アンチモンを含まない鉛―カルシウム系合金を正極格子に使用した場合、放電の深度が深く、頻度の多い充・放電サイクルを繰り返すと寿命が短くなることがあった。これは、正極格子と正極活物質との間に放電生成物であり、かつ絶縁体でもある硫酸鉛の層が優先的に形成され、そのため、未反応の活物質が残っているにもかかわらず、放電反応が停止してしまうためと考えられている。
一方、正極に鉛−アンチモン系合金を使用すると、上記のような硫酸鉛の層が形成されにくくなり、その結果、安定した寿命が得られる。しかし、この合金格子をメンテナンスフリーあるいは無漏液タイプの蓄電池に適用すると使用中に正極格子の腐食に伴って、アンチモンが溶出し、その後、負極に析出し、一部はスチビンとなって放出されるものの、残りは負極板に残存し、水素過電圧を低下させ、減液量や自己放電の増加の原因となりメンテナンスフリーあるいは無漏液タイプの機能を失ってしまう欠点がある。
そこで、メンテナンスフリー機能を有しながら、充・放電サイクル性能の安定した鉛蓄電池を得るために、アンチモンを含まない鉛―カルシウム系合金からなる基材層の表面にアンチモンを含む鉛合金層を形成することが提案されている(特許文献1及び2参照)が、サイクル寿命の向上は十分ではなかった。
特開昭63−148556号公報
特開2003−163007号公報
また、鉛―カルシウム系合金を正極格子に用いた鉛蓄電池の寿命性能を向上させるために、正極活物質にゲルマニウム、ゲルマニウム化合物を添加することも公知である(特許文献3及び4参照)。
特許文献3には、「寿命性能については、酸化ゲルマニウムを0.01%以上2%以下添加した場合、従来の酸化ゲルマニウムを添加していない電池よりもかなり向上していた。この理由はよくはわからないが、ゲルマニウムが正極活物質の劣化の一つである軟化(活物質の結合の破壊)を抑える役目をしているものと思われる。なお、本実施例ではゲルマニウム化合物として酸化ゲルマニウムを用いたが、金属ゲルマニウムを用いても効果には大差はなかった。」(段落[0010]〜[0011])と記載され、特許文献4には、「寿命性能が大幅に向上した理由は明らかではないが、格子中及び活物質中の両者に錫を含有させることによる不働態層生成の抑制、ゲルマニウムによる不働態層生成の抑制、活物質中のゲルマニウムによる活物質同士の結合力増大による軟化、脱落の抑制など、それぞれの作用効果が、本発明の構成によって複合的な相乗効果をもたらし、比表面積の増大、利用率の向上へとつながったものと考えられる。」(段落[0021])と記載されているが、活物質中のゲルマニウムの作用を問題にしているだけであり、寿命性能を向上させるために、正極格子にゲルマニウムを添加することを示唆するものではない。
特開平10−106575号公報
特開平10−144318号公報
特許文献3には、「寿命性能については、酸化ゲルマニウムを0.01%以上2%以下添加した場合、従来の酸化ゲルマニウムを添加していない電池よりもかなり向上していた。この理由はよくはわからないが、ゲルマニウムが正極活物質の劣化の一つである軟化(活物質の結合の破壊)を抑える役目をしているものと思われる。なお、本実施例ではゲルマニウム化合物として酸化ゲルマニウムを用いたが、金属ゲルマニウムを用いても効果には大差はなかった。」(段落[0010]〜[0011])と記載され、特許文献4には、「寿命性能が大幅に向上した理由は明らかではないが、格子中及び活物質中の両者に錫を含有させることによる不働態層生成の抑制、ゲルマニウムによる不働態層生成の抑制、活物質中のゲルマニウムによる活物質同士の結合力増大による軟化、脱落の抑制など、それぞれの作用効果が、本発明の構成によって複合的な相乗効果をもたらし、比表面積の増大、利用率の向上へとつながったものと考えられる。」(段落[0021])と記載されているが、活物質中のゲルマニウムの作用を問題にしているだけであり、寿命性能を向上させるために、正極格子にゲルマニウムを添加することを示唆するものではない。
さらに、特許文献5には、「アンチモンを含まない鉛合金であって、スズを0.05から3.0重量%、ゲルマニウムを0.001から0.2重量%含有させた鉛−カルシウム系合金を正極格子に用いたことを特徴とする鉛蓄電池。」(特許請求の範囲)の発明が記載されている。しかしながら、特許文献5には、「鉛合金組成を調整することにより、早期容量低下を防ぐことを特徴とし、その方法としてアンチモンを含まない鉛合金においてスズ含有量が0.05から3.0
重量%、ゲルマニウム含有量が0.001から 0.2重量%である鉛合金を正極格子に用いるものである。」(第3欄第5行〜第10行)と記載され、第1表、第2表によれば、スズを含有させないでゲルマニウムのみを含有させた鉛合金格子を用いた鉛蓄電池では、サイクル寿命は向上しないことが示されている(電池No.6)から、特許文献5に記載された発明は、鉛蓄電池の寿命性能を向上させるために、「鉛合金組成を調整すること」以外の方法の採用を示唆するものではなく、また、正極格子にゲルマニウムを含有させることによる寿命性能向上の効果を示唆するものでもない。
特公平6−27295号公報
重量%、ゲルマニウム含有量が0.001から 0.2重量%である鉛合金を正極格子に用いるものである。」(第3欄第5行〜第10行)と記載され、第1表、第2表によれば、スズを含有させないでゲルマニウムのみを含有させた鉛合金格子を用いた鉛蓄電池では、サイクル寿命は向上しないことが示されている(電池No.6)から、特許文献5に記載された発明は、鉛蓄電池の寿命性能を向上させるために、「鉛合金組成を調整すること」以外の方法の採用を示唆するものではなく、また、正極格子にゲルマニウムを含有させることによる寿命性能向上の効果を示唆するものでもない。
さらに、特許文献6には、実質的にアンチモンを含まない鉛又は鉛合金からなる基材に、基材の組成とは異なる組成の鉛合金の表面層を設けた正極格子が記載され、表面層の鉛合金に、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、ゲルマニウム、インジウム、タリウム、ガリウム、スズ、ヒ素、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、クロム、モリブデン、ニッケル及びコバルトよりなる群から選ばれた一種以上の金属を3〜95質量%含有させることも示されているが、電圧を向上させるために、表面層の鉛合金に上記の金属を含有させることが記載されているだけで、サイクル寿命を向上させることについては記載がなく、また、上記の金属を3質量%より少ない量で含有させることについても記載がない。したがって、特許文献6に記載された発明は、サイクル寿命を向上させるために、実質的にアンチモンを含まない鉛又は鉛合金からなる基材に、少量のゲルマニウムを含む鉛合金の表面層を設けることを示唆するものではない。
米国特許第4,107,407号明細書
本発明は、鉛又は鉛合金を基材とする鉛合金格子を用いた鉛蓄電池について、メンテナンスフリー特性を維持しつつ、サイクル寿命を向上させることを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)鉛又は鉛合金からなる基材層に表面層を設けた鉛合金格子において、前記表面層が、少なくともゲルマニウムを0.0001〜1.0質量%含む鉛合金層であることを特徴とする鉛合金格子。
(2)前記表面層が、さらにアンチモンを含む鉛合金層であることを特徴とする前記(1)の鉛合金格子。前記表面層が、アンチモンを1.0〜10質量%含む鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金層であることが好ましい。
(3)前記表面層が、さらにスズを含む鉛合金層であることを特徴とする前記(2)の鉛合金格子。前記表面層が、スズを1.0〜10質量%含む鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金層であることが好ましい。
(4)前記基材層が、実質的にアンチモンを含まない鉛−カルシウム系合金からなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項の鉛合金格子。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一項の鉛合金格子を正極格子に用いたことを特徴とする鉛蓄電池。
(1)鉛又は鉛合金からなる基材層に表面層を設けた鉛合金格子において、前記表面層が、少なくともゲルマニウムを0.0001〜1.0質量%含む鉛合金層であることを特徴とする鉛合金格子。
(2)前記表面層が、さらにアンチモンを含む鉛合金層であることを特徴とする前記(1)の鉛合金格子。前記表面層が、アンチモンを1.0〜10質量%含む鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金層であることが好ましい。
(3)前記表面層が、さらにスズを含む鉛合金層であることを特徴とする前記(2)の鉛合金格子。前記表面層が、スズを1.0〜10質量%含む鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金層であることが好ましい。
(4)前記基材層が、実質的にアンチモンを含まない鉛−カルシウム系合金からなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項の鉛合金格子。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一項の鉛合金格子を正極格子に用いたことを特徴とする鉛蓄電池。
本発明の鉛合金格子を正極格子又は負極格子として用いることにより、放電の深度が深く、頻度の多い場合でも、メンテナンスフリー特性が維持され、サイクル寿命が優れた鉛蓄電池が得られるという効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明者らは、実質的にアンチモンを含まない鉛又は鉛合金を基材層とし、これに表面層を設けた鉛合金格子において、この表面層をゲルマニウムを含む鉛合金層にすると、ゲルマニウム以外の他の成分を含まなくても、この鉛合金格子を用いた鉛蓄電池のサイクル寿命が顕著に向上することを見出した。「アンチモンを含まない鉛合金」を正極格子に用いた鉛蓄電池では、特許文献5に示されているように、鉛合金にゲルマニウムのみを含む場合にはサイクル寿命が向上しないから、本発明の鉛合金格子は、上記従来の正極格子(鉛合金格子)のサイクル寿命向上とは作用効果が異なり、予測し得ない作用効果を有するものである。
なお、寿命性能が向上した理由としては、基材層にゲルマニウムを含む鉛合金の表面層を設けたことで、伸びに対する格子の耐久性が向上し、格子の伸びによる集電機能の低下が抑制できたことが考えられる。
本発明者らは、実質的にアンチモンを含まない鉛又は鉛合金を基材層とし、これに表面層を設けた鉛合金格子において、この表面層をゲルマニウムを含む鉛合金層にすると、ゲルマニウム以外の他の成分を含まなくても、この鉛合金格子を用いた鉛蓄電池のサイクル寿命が顕著に向上することを見出した。「アンチモンを含まない鉛合金」を正極格子に用いた鉛蓄電池では、特許文献5に示されているように、鉛合金にゲルマニウムのみを含む場合にはサイクル寿命が向上しないから、本発明の鉛合金格子は、上記従来の正極格子(鉛合金格子)のサイクル寿命向上とは作用効果が異なり、予測し得ない作用効果を有するものである。
なお、寿命性能が向上した理由としては、基材層にゲルマニウムを含む鉛合金の表面層を設けたことで、伸びに対する格子の耐久性が向上し、格子の伸びによる集電機能の低下が抑制できたことが考えられる。
本発明の鉛合金格子における表面層のゲルマニウムの含有量は、0.0001〜1.0質量%が好ましい。ゲルマニウムの含有量が0.0001質量%より少ないと、寿命性能向上の効果は十分ではなく、1.0質量%より多くても効果は飽和するので、上記の範囲が好ましい。
上記の表面層には、ゲルマニウムと共にアンチモンを含ませることにより、さらに寿命性能を向上させることができる。表面層のアンチモンの含有量は、特に、限定はされないが、この鉛合金格子を正極格子に用いる場合、硫酸鉛の層の形成を抑制し、安定した寿命を得るために、1.0〜10質量%とすることが好ましい。アンチモンの含有量が1.0質量%より少ないと、硫酸鉛の層の形成が抑制されない場合があり、10質量%より多いと、正極格子の腐食に伴って溶出したアンチモンが負極に析出し、悪影響を及ぼす虞があるので、上記の範囲が好ましい。
上記の表面層には、ゲルマニウム、アンチモンと共に、スズを含ませることにより、サイクル使用で深放電あるいは放電放置された場合でも、充電受け入れ特性を改善し、充電により十分な容量の回復を図ることができる。表面層のスズの含有量は、特に、限定はされないが、1.0〜10質量%とすることが好ましい。
本発明の鉛合金格子における基材層は、鉛又は鉛合金であれば良く、特に、限定はされないが、実質的にアンチモンを含まない鉛又は鉛合金が好ましく、鉛−カルシウム系合金を採用することができる。鉛−カルシウム系合金には、スズ、アルミニウム、ビスマス、銀等を含んでいてもよい。
本発明の鉛合金格子は、以下の方法で作製する。
まず、基材層となる任意の厚さのスラブ(鉛帯)を、実質的にアンチモンを含まない鉛又は鉛合金を鋳造することにより作製する。
次に、表面層となる箔を鉛−ゲルマニウム合金、鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金、又は鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金からなる平板を鋳造した後、圧延することにより作製する。
上記のようにして作製した基材層の両面もしくは片面に、表面層となる上述の鉛−ゲルマニウム合金、鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金、又は鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金からなる箔を積層し、多段圧延機を用いて圧延することによって一体化させて圧延シートとし、さらに、この圧延シートをエキスパンド機又は打抜き機にて格子状に加工することにより鉛合金格子を作製する。
なお、表面層(箔)を圧着、溶射、溶融鉛合金への浸漬、電気メッキといった方法で設ける場合には、鋳造格子に適用して、本発明の鉛合金格子とすることもできる。
また、表面層(箔)は、必ずしも基材層の両面又は片面の全面に設ける必要はない。すなわち、図1(a)にエキスパンド機によって加工した格子の模式図を示すが、該図1(a)の耳部1と枠骨部2になる部分には表面層(箔)は設けないようにしてもよい。また、図1(a)の網状部3になる部分については、図1(b)(図1(a)のA部の拡大図)、及び図1(c)、図1(d)(図1(b)の破線部の断面図)に示したように、その結節部32間を繋ぐ骨部31は、基材層の片面に表面層を設けた場合は図1(c)のようになり、基材層の両面に表面層を設けた場合は図1(d)のようになって、表面層は骨部31の一面又は二面のみにしか現れないので、格子状に加工した後で、さらに表面層(箔)となる鉛合金の溶射、電気メッキあるいは鉛合金槽への浸漬等によって、骨部31の全表面に表面層が形成されるようにしてもよい。
上記のようにして作製した鉛合金格子を用いて、以降、常法によって、鉛蓄電池を作製する。
以下、詳細を実施例によって説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
まず、基材層となる任意の厚さのスラブ(鉛帯)を、実質的にアンチモンを含まない鉛又は鉛合金を鋳造することにより作製する。
次に、表面層となる箔を鉛−ゲルマニウム合金、鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金、又は鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金からなる平板を鋳造した後、圧延することにより作製する。
上記のようにして作製した基材層の両面もしくは片面に、表面層となる上述の鉛−ゲルマニウム合金、鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金、又は鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金からなる箔を積層し、多段圧延機を用いて圧延することによって一体化させて圧延シートとし、さらに、この圧延シートをエキスパンド機又は打抜き機にて格子状に加工することにより鉛合金格子を作製する。
なお、表面層(箔)を圧着、溶射、溶融鉛合金への浸漬、電気メッキといった方法で設ける場合には、鋳造格子に適用して、本発明の鉛合金格子とすることもできる。
また、表面層(箔)は、必ずしも基材層の両面又は片面の全面に設ける必要はない。すなわち、図1(a)にエキスパンド機によって加工した格子の模式図を示すが、該図1(a)の耳部1と枠骨部2になる部分には表面層(箔)は設けないようにしてもよい。また、図1(a)の網状部3になる部分については、図1(b)(図1(a)のA部の拡大図)、及び図1(c)、図1(d)(図1(b)の破線部の断面図)に示したように、その結節部32間を繋ぐ骨部31は、基材層の片面に表面層を設けた場合は図1(c)のようになり、基材層の両面に表面層を設けた場合は図1(d)のようになって、表面層は骨部31の一面又は二面のみにしか現れないので、格子状に加工した後で、さらに表面層(箔)となる鉛合金の溶射、電気メッキあるいは鉛合金槽への浸漬等によって、骨部31の全表面に表面層が形成されるようにしてもよい。
上記のようにして作製した鉛合金格子を用いて、以降、常法によって、鉛蓄電池を作製する。
以下、詳細を実施例によって説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
(正極板の作製)
電解精錬によって製造された原料鉛に、カルシウムを0.06質量%、スズを1.5質量%添加した鉛−カルシウム系の鉛合金を厚さが9.5mmのスラブに鋳造し、基材層とした。
ゲルマニウムの添加量を0.0001から1.5質量%の間で量を変化させた7種類の鉛−ゲルマニウム合金(Pb−Ge)、ゲルマニウムの添加量を0.5質量%とし、アンチモンの添加量を0.5から15質量%の間で量を変化させた5種類の鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Ge)、さらに、ゲルマニウムの添加量を0.5質量%、アンチモン添加量を5質量%とし、スズの添加量を0.5から15質量%の間で量を変化させた5種類の鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Sn−Ge)からなる17種類の鉛合金を調製した。それぞれの鉛合金を厚さが2mmの平板に鋳造した後、圧延して、厚さが0.25mmの箔(表面層)を作製した。このようにして作製した箔を上記の基材層の両面に積層し、多段圧延機を用いて圧延することにより一体化させて、厚さが1.0mmの圧延シートとした。この圧延シートをロータリーエキスパンド機で展開することにより、実施例の鉛合金格子(正極格子)を作製した。
また、比較例の鉛合金格子として、アンチモンを5質量%含有する鉛−アンチモン合金(Pb−Sb)からなる箔、アンチモンを5質量%、スズを5質量%含有する鉛−アンチモン−スズ合金(Pb−Sb−Sn)からなる箔を上記した方法で作製し、上記の基材層に積層し、同様に鉛合金格子(正極格子)を作製した。さらに、箔を積層しない正極格子も作製した。
作製された正極格子に、正極板用ペーストを充填した。正極板用ペーストには、酸化鉛を主成分とする鉛粉と所定量の希硫酸を混合して得られたものを用いた。正極板用ペーストが充填された正極格子を、50℃で3日間熟成することによって、未化成正極板を得た。
電解精錬によって製造された原料鉛に、カルシウムを0.06質量%、スズを1.5質量%添加した鉛−カルシウム系の鉛合金を厚さが9.5mmのスラブに鋳造し、基材層とした。
ゲルマニウムの添加量を0.0001から1.5質量%の間で量を変化させた7種類の鉛−ゲルマニウム合金(Pb−Ge)、ゲルマニウムの添加量を0.5質量%とし、アンチモンの添加量を0.5から15質量%の間で量を変化させた5種類の鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Ge)、さらに、ゲルマニウムの添加量を0.5質量%、アンチモン添加量を5質量%とし、スズの添加量を0.5から15質量%の間で量を変化させた5種類の鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Sn−Ge)からなる17種類の鉛合金を調製した。それぞれの鉛合金を厚さが2mmの平板に鋳造した後、圧延して、厚さが0.25mmの箔(表面層)を作製した。このようにして作製した箔を上記の基材層の両面に積層し、多段圧延機を用いて圧延することにより一体化させて、厚さが1.0mmの圧延シートとした。この圧延シートをロータリーエキスパンド機で展開することにより、実施例の鉛合金格子(正極格子)を作製した。
また、比較例の鉛合金格子として、アンチモンを5質量%含有する鉛−アンチモン合金(Pb−Sb)からなる箔、アンチモンを5質量%、スズを5質量%含有する鉛−アンチモン−スズ合金(Pb−Sb−Sn)からなる箔を上記した方法で作製し、上記の基材層に積層し、同様に鉛合金格子(正極格子)を作製した。さらに、箔を積層しない正極格子も作製した。
作製された正極格子に、正極板用ペーストを充填した。正極板用ペーストには、酸化鉛を主成分とする鉛粉と所定量の希硫酸を混合して得られたものを用いた。正極板用ペーストが充填された正極格子を、50℃で3日間熟成することによって、未化成正極板を得た。
(負極板の作製)
電解精錬によって製造された原料鉛に、カルシウムを0.05質量%、スズを0.5質量%添加した鉛−カルシウム系の鉛合金を鋳造し、負極格子を作製した。作製された負極格子に、負極板用ペーストを充填した。負極板用ペーストには、酸化鉛を主成分とする鉛粉にリグニン、カーボン及び所定量の希硫酸を添加し混合したものを用いた。負極板用ペーストが充填された負極格子を、50℃で3日間熟成することによって未化成負極板を得た。
電解精錬によって製造された原料鉛に、カルシウムを0.05質量%、スズを0.5質量%添加した鉛−カルシウム系の鉛合金を鋳造し、負極格子を作製した。作製された負極格子に、負極板用ペーストを充填した。負極板用ペーストには、酸化鉛を主成分とする鉛粉にリグニン、カーボン及び所定量の希硫酸を添加し混合したものを用いた。負極板用ペーストが充填された負極格子を、50℃で3日間熟成することによって未化成負極板を得た。
(鉛蓄電池の作製)
上記のようにして作製した未化成正極板5枚と未化成負極板6枚とを押出成型法により作製されたポリエチレン樹脂製セパレータを介して積層することによって、未化成極板群を構成した。未化成極板群を電槽に挿入し、蓋を溶着し、電槽に比重1.23(20℃)の希硫酸を注入した。その後、35℃の水槽中で電槽化成(電気量:正極活物質の理論容量の300%、化成時間:18時間)を行い、JIS D 5301に規定される46B24サイズの鉛蓄電池(公称電圧:12V、定格容量:36Ah)を作製した。
上記のようにして作製した未化成正極板5枚と未化成負極板6枚とを押出成型法により作製されたポリエチレン樹脂製セパレータを介して積層することによって、未化成極板群を構成した。未化成極板群を電槽に挿入し、蓋を溶着し、電槽に比重1.23(20℃)の希硫酸を注入した。その後、35℃の水槽中で電槽化成(電気量:正極活物質の理論容量の300%、化成時間:18時間)を行い、JIS D 5301に規定される46B24サイズの鉛蓄電池(公称電圧:12V、定格容量:36Ah)を作製した。
(鉛蓄電池の寿命試験)
上記のようにして作製した鉛蓄電池について、以下の条件で寿命試験を行った。
・放電 : 3.6A × 1h
・充電 : 1.8A × 3h
・温度 : 40℃
なお、放電中の電圧が9.0Vを下回った時点を寿命と判断した。
試験結果を表1に示す。表中の寿命サイクル数は、蓄電池No.1の寿命サイクル数を1.0としたときの相対値で示している。
上記のようにして作製した鉛蓄電池について、以下の条件で寿命試験を行った。
・放電 : 3.6A × 1h
・充電 : 1.8A × 3h
・温度 : 40℃
なお、放電中の電圧が9.0Vを下回った時点を寿命と判断した。
試験結果を表1に示す。表中の寿命サイクル数は、蓄電池No.1の寿命サイクル数を1.0としたときの相対値で示している。
表1より、表面層(箔)としてGeを0.0001〜1.0質量%含む鉛−ゲルマニウム合金(Pb−Ge)を設けた鉛合金格子(正極格子)を用いた鉛蓄電池(No.2〜No.7)は、表面層(箔)を設けない比較例の正極格子を用いた鉛蓄電池(No.1)と比較して、サイクル寿命が顕著に向上していることが分かる。また、Geを1.5質量%含むPb−Ge箔を設けた鉛合金格子を用いた鉛蓄電池(No.8)は、Geを1.0質量%含むPb−Ge箔を設けたもの(No.7)と比較すると、サイクル寿命が短くなるから、Pb−Ge箔へのGeの含有量は1.0質量%までが好ましい。
表面層(箔)として、さらにアンチモンを加え、鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Ge)とした鉛合金格子(正極格子)を用いた鉛蓄電池(No.10〜No.14)にすると、鉛−ゲルマニウム合金(Pb−Ge)の場合の鉛蓄電池(No.2〜No.8)よりもサイクル寿命がさらに向上する。
さらに、スズを加えた鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Sn−Ge)とした鉛合金格子(正極格子)を用いた鉛蓄電池(No.16〜No.20)の場合は、鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Ge)の場合の鉛蓄電池(No.10〜No.14)と比較して、サイクル寿命は若干向上する程度であるが、深放電あるいは放電放置された場合に、充電受け入れ特性が改善されるという効果がある。この理由としては、従来の鉛蓄電池の格子表面にSnを付着させた場合と同様に、格子表面に、Geと共にSnを含有させる層を設けることにより、Geを含有させる効果に加えて、格子と活物質との界面に形成される高抵抗層の性質が変化することによる効果が推定される。
表面層(箔)として、さらにアンチモンを加え、鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Ge)とした鉛合金格子(正極格子)を用いた鉛蓄電池(No.10〜No.14)にすると、鉛−ゲルマニウム合金(Pb−Ge)の場合の鉛蓄電池(No.2〜No.8)よりもサイクル寿命がさらに向上する。
さらに、スズを加えた鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Sn−Ge)とした鉛合金格子(正極格子)を用いた鉛蓄電池(No.16〜No.20)の場合は、鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Ge)の場合の鉛蓄電池(No.10〜No.14)と比較して、サイクル寿命は若干向上する程度であるが、深放電あるいは放電放置された場合に、充電受け入れ特性が改善されるという効果がある。この理由としては、従来の鉛蓄電池の格子表面にSnを付着させた場合と同様に、格子表面に、Geと共にSnを含有させる層を設けることにより、Geを含有させる効果に加えて、格子と活物質との界面に形成される高抵抗層の性質が変化することによる効果が推定される。
また、表面層(箔)として鉛−アンチモン−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Ge)を設けた正極格子と、表面層(箔)として鉛−アンチモン合金(Pb−Sb)を設けた正極格子とを比較した場合、表面層(箔)として鉛−アンチモン−スズ−ゲルマニウム合金(Pb−Sb−Sn−Ge)を設けた正極格子と、表面層(箔)として鉛−アンチモン−スズ合金(Pb−Sb−Sn)を設けた正極格子とを比較した場合に、前者の方が、サイクル寿命が顕著に向上しているといえるから、表面層にアンチモンとゲルマニウムを併用することによる効果は明らかである。
1 :耳部
2 :枠骨部
3 :網状部
31:骨部
32:結節部
2 :枠骨部
3 :網状部
31:骨部
32:結節部
Claims (5)
- 鉛又は鉛合金からなる基材層に表面層を設けた鉛合金格子において、前記表面層が、少なくともゲルマニウムを0.0001〜1.0質量%含む鉛合金層であることを特徴とする鉛合金格子。
- 前記表面層が、さらにアンチモンを含む鉛合金層であることを特徴とする請求項1に記載の鉛合金格子。
- 前記表面層が、さらにスズを含む鉛合金層であることを特徴とする請求項2に記載の鉛合金格子。
- 前記基材層が、実質的にアンチモンを含まない鉛−カルシウム系合金からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉛合金格子。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉛合金格子を正極格子に用いたことを特徴とする鉛蓄電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006349132A JP2008159510A (ja) | 2006-12-26 | 2006-12-26 | 鉛合金格子及びそれを用いた鉛蓄電池 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006349132A JP2008159510A (ja) | 2006-12-26 | 2006-12-26 | 鉛合金格子及びそれを用いた鉛蓄電池 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2008159510A true JP2008159510A (ja) | 2008-07-10 |
Family
ID=39660176
Family Applications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2012172754A1 (ja) * | 2011-06-17 | 2015-02-23 | パナソニック株式会社 | 鉛蓄電池用極板、鉛蓄電池および鉛蓄電池用極板の製造方法 |
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2006
- 2006-12-26 JP JP2006349132A patent/JP2008159510A/ja active Pending
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JPWO2012172754A1 (ja) * | 2011-06-17 | 2015-02-23 | パナソニック株式会社 | 鉛蓄電池用極板、鉛蓄電池および鉛蓄電池用極板の製造方法 |
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