JP2008120670A - Iii族窒化物半導体基板の製造方法およびiii族窒化物半導体基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本実施形態の自立基板の製造方法は、以下の工程を含むものである。(i)下地基板10上に、炭化アルミニウム層11を形成する工程、(ii)上記炭化アルミニウム層11を窒化する工程、(iii)窒化された上記炭化アルミニウム層12の上部にIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程、(iv)上記III族窒化物半導体層から、上記下地基板10を除去し、上記III族窒化物半導体層を含むIII族窒化物半導体基板を得る工程。
【選択図】図3
Description
特許文献1には、HVPE法を用いたGaN半導体基板の製造方法が開示されている。この製造方法では、サファイア(Al2O3)基板上に、ストライプ状に配置された断面矩形形状の被覆部および被覆部間に形成された開口部を有するマスクを形成する。このマスクの被覆部は、サファイア基板の<11−20>、GaN半導体の<1−100>方向に延在する。
マスク形成後、その開口部からGaN半導体層を成長させ、前記マスクの被覆部上面を、完全には覆わない状態で成長を止める。次に、マスクをドライエッチングにより除去し、GaN半導体層上にさらにGaN半導体層を成長させる。その後、サファイア基板をそのまま剥離し、GaN半導体基板を得る。
ところが、従来のGaN半導体基板の製造方法では、GaN半導体層からサファイア基板を剥離する際、GaN半導体層が損傷を受けることが多く、ひどい場合にはGaN半導体層が粉々に割れてしまうことがあった。
サファイア基板を剥離する従来の方法としては、たとえば、特許文献2に記載の方法が挙げられる。この方法では、GaN半導体層を加熱しながらサファイア基板側からレーザ光を照射する。レーザ光としては、波長が355nmのYAGレーザを用いる。レーザ光はGaN半導体層で吸収され、これによってサファイア基板とGaN半導体層との界面近傍のGaNは熱分解され、剥離が起こる。
この方法では、サファイア基板上に、金属膜(たとえば、アルミニウム膜)を堆積させ、この金属膜上にGaNを成長させ、GaN半導体層を形成する。そして、金属膜をエッチングすることにより、GaN半導体層からサファイア基板を剥離する。
同様に、特許文献3に記載された技術においても剥離のためのエッチング設備が必要であり、エッチング液がサファイア基板とGaN膜の界面に浸透しにくく、特に大きな面積の金属膜を完全にエッチングで除去するには長時間を必要とする。
なお、図2の原子間距離を算出するための格子定数は、joint committee on powder diffraction standards(JCPDS− International Centre for Diffraction Data 1998)および金属データブック(1974)、p275を参照した。
2MC+2NH3+H2→2MN+2CH4・・・(2)式
(2)式において、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Ta
III族窒化物半導体をエピタキシャル成長する間にAlN、TiN、ZrN、HfN、VNまたはTaNはIII族窒化物半導体と混晶を形成し、最終的に下地基板との境界面にCが濃縮したIII族窒化物半導体層が形成される。
MC+N→MN+C・・・・・・・・・・・・・・・・(4)式
(4)式において、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Ta
従って、本発明によれば、従来のように手間をかけることなくIII族窒化物半導体層から、下地基板を容易に除去することができ、III族窒化物半導体基板の製造方法が簡便なものとなる。
なお、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルは、一般的に不定比組成であることが知られており、C/Mモル比(Mは、Al、Ti、Zr、Hf、V、Ta)が3/4あるいは1/1などに限定されるものではない。
その役割としては主として2点が考えられる。その一つは、バッファ層としての作用で、窒化された炭化物層上にIII族窒化物半導体膜を300℃以上1000℃以下の成長温度で成長させることで、このIII族窒化物半導体膜上に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を高めることができる。もう一つは、保護膜としての作用である。窒化された炭化物層は、Al4C3とAlN、あるいは、MCとMN(Mは、Ti、Zr、Hf、V、Ta)から構成されているが、MCや、Al4C3は水分と接触すると酸化分解が急速に進むことがある。窒化された炭化物層上にIII族窒化物半導体膜を形成することで、MC,Al4C3は水分との接触が断たれ、窒化された炭化物層上へのIII族窒化物半導体層のエピタキシャル成長を良好なものとさせることができる。
ファセット構造を形成させながらIII族窒化物半導体層を成長させるので、上部のIII族窒化物半導体層中に結晶欠陥が伝達されることが抑制される。これにより、結晶品質のよいIII族窒化物半導体層を得ることができる。
この方法によれば、下地基板の熱膨張係数とIII族窒化物半導体層の熱膨張係数の違いにより発生する応力を利用して、下地基板とIII族窒化物半導体層とを容易に分離することができる。
さらに、炭化物層を形成する前記工程は、トリメチルアルミニウムを原料ガスとしたMOVPE法を用いるのが好ましい。有機アルミニウムの中でトリメチルアルミニウムは、加熱した下地基板上で容易に分解しAl4C3を形成するので最適である。MOVPE法を用いることで、膜厚制御された良質なAl4C3を形成することが可能となるだけでなく、その後に行う炭化物層の窒化工程、好ましくはIII族窒化物半導体膜を300℃以上1000℃以下の成長温度で成長させる工程までを一つの装置内で連続して行うことが可能である。
炭化物層を窒化する温度を300℃以上、900℃以下とすることで、III族窒化物半導体層から、下地基板をより容易に除去することができる。
下地基板との格子不整合率が11%以下である金属の炭化物層を形成することで、格子不整合に起因して発生する欠陥を低減でき、さらに、下地基板の結晶情報を引き継ぐことができる。これにより、結晶性の良好な炭化物層を形成することができ、さらには、炭化物層上に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を良好なものとすることができる。
ここで、金属の炭化物層は、遷移金属V族炭化物または遷移金属IV族炭化物であることが好ましい。
立方晶の炭化物層は、窒化した際に、格子定数の変化が小さい。従って、窒化された炭化物層の上部に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を良好なものとすることができる。
炭化チタンは、酸化されにくいという特性を有するため、炭化チタンの炭化物層上に、炭化チタンの炭化物層を保護するようなIII族窒化物半導体膜をしなくてもよい。従って、III族窒化物半導体基板の製造に手間を要しない。
(i)下地基板上に、炭化物層を形成する工程、
(ii)上記炭化物層を窒化する工程、
(iii)窒化された上記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程
(iv)上記III族窒化物半導体層から、上記下地基板を除去し、上記III族窒化物半導体層を含むIII族窒化物半導体基板を得る工程
(炭化アルミニウム層の形成工程)
まず、下地基板として、たとえば、厚さ550μmの3インチφのサファイア(Al2O3)基板10を用意する。次に、このサファイア基板10上に、炭化アルミニウム層11を形成する(図3(A))。炭化アルミニウム層11は、有機アルミニウムガス(例えば、トリメチルアルミニウム)を原料ガスとして形成される。
炭化アルミニウム層11の成膜条件は、例えば以下のようにする。
原料ガス:トリメチルアルミニウム(TMAl)、水素(H2)ガス、窒素(N2)ガス
成膜温度:300℃〜1000℃
成膜時間:5分〜60分
膜厚:20nm〜140nm
キャリアガスとして窒素ガスを使用する場合、窒素ガスのモル分圧をTMAlのモル分圧に対して一定以上にすると、炭化アルミニウムでなく、窒化アルミニウム(AlN)が形成されてしまうことがある。そのため、窒素ガスのモル分圧をTMAlのモル分圧に対して所定値以下にする必要がある。本実施形態では、TMAlのモル分圧に対する窒素ガスのモル分圧比を1.8×105以下としている(TMAl、18℃)。好ましくはキャリアガスとして水素ガスのみを使用すればAlNの形成は起こらない。
また、炭化アルミニウム層11の成膜温度は、300℃〜1000℃であればよいが、400℃以上であることが好ましく、600℃以下であることが好ましい。
次に、図3(B)に示すように、炭化アルミニウム層11を300℃〜900℃の雰囲気下で窒化し、窒化した炭化アルミニウム層12を形成する。
炭化アルミニウム層11の窒化条件は、例えば以下のようにする。
窒化温度:300℃〜900℃
窒化時間:5分〜60分
なお、窒化温度は500℃以上700℃以下であることがより好ましく、特に好ましくは550℃以下である。550℃より高温にすると、(5)式に示すとおりCH4が分解してCが析出し、CがAlNに混入することでIII族窒化物半導体層の結晶性が低下する場合がある。Cの析出を抑制するには、水素の導入やアンモニア分圧を高めるのが有効である。
CH4→C+2H2・・・・・・・・・・・・・・・・(5)式
また、窒化時間は、30分以下であることがより好ましい。窒化時間を30分程度とすることで、炭化アルミニウム層11を適度に窒化することができる。
Al4C3+2N2→4AlN+3C・・・・・・・・・・・(6)式
炭化アルミニウム層11の窒化は、MOVPE装置内で炭化アルミニウム層の形成工程から連続で行うことができる。
なお、図3(B)に示す符号122は、炭化アルミニウムを示し、符号121は、窒化アルミニウムを示している。すなわち、サファイア基板10と接する部分にはAl4C3が残り、その上にはAl4C3の結晶情報を引き継いだAlN層が形成されていることを示している。
次に、図3(C)に示すように、窒化した炭化アルミニウム層12上にIII族窒化物半導体膜(本実施形態では、GaN膜)であるバッファ層14を形成する。
バッファ層14の成膜条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
成膜温度:300℃〜1000℃
成膜ガス:トリメチルガリウム(TMG)ガス、H2ガス、N2ガス、NH3ガス
膜厚:20nm〜140nm
なお、バッファ層14の形成は、MOVPE装置内で炭化アルミニウム層を窒化する工程から連続で行うことができる。
次に、図4(A)に示すように、バッファ層14上に、III族窒化物半導体層16をエピタキシャル成長させる。本実施形態では、III族窒化物半導体層16は、GaN半導体層16である。
GaN半導体層16の成長条件は、たとえば、以下のようにすることができる。
成膜温度:1000℃〜1050℃
成膜時間:30分〜270分
膜厚:100μm〜900μm
HVPE装置(図示略)中には、Gaソースが配置され、このGaソースに対し、HClガスを供給する。HClガスと、Gaソースを反応させ、GaClをバッファ層14近傍の領域に輸送する。バッファ層14近傍の領域には、NH3ガスも供給されているので、NH3ガスと、GaClが反応してGaNが成長し、GaN半導体層16が形成されることとなる。GaN半導体層16の膜厚が増加していく過程で窒化された炭化アルミニウム層12の窒化アルミニウム121はGaNと混晶を形成する。炭化アルミニウム122はGaNから供給される窒素原子で窒化され、窒化アルミニウムとカーボンを生成する。窒化アルミニウムはGaNと混晶を形成するため、最終的に図4(B)に示すように、サファイア基板10との境界面にCが濃縮したGaN半導体層17が生成する。なお、図4(B)において、符号171は、Cの濃縮部を示している。
次に、図4(C)に示すように、サファイア基板10との境界面にCが濃縮したGaN半導体層17から、サファイア基板10を剥離して除去する。
具体的には、GaN半導体層17を形成したHVPE装置の温度を降温し、前記GaN半導体層17を常温まで、冷却する。
この冷却中に、前記GaN半導体層17とサファイア基板10の熱膨張係数の違いからこれらの積層体に歪みが生じ、前記GaN半導体層17とサファイア基板10とが分離されることとなる。
その後、剥離したGaN半導体層17の表面および裏面を研磨することで、平坦化した自立基板であるGaN基板を作製することができる。
サファイア基板10上に炭化アルミニウム層11を形成し、この炭化アルミニウム層11を窒化している。このようにすることで、サファイア基板10との境界面にCが濃縮したGaN半導体層17から、サファイア基板10を容易に除去することができる。従って、従来のように、レーザ光を使用してGaN膜を熱分解したり、金属膜をエッチングしたりする必要がなく、GaN半導体層17の製造に手間を要しない。
特に、本実施形態では、サファイア基板、サファイア基板10との境界面にCが濃縮したGaN半導体層17を冷却する際に、サファイア基板10の熱膨張係数とGaN半導体層17の熱膨張係数の違いにより発生する応力を利用してサファイア基板10を剥離しているので、サファイア基板10とGaN半導体層17とを容易に分離することができる。
さらに、炭化アルミニウム層12上にバッファ層14を形成することで、Al4C3と、水分との接触が断たれ、窒化された炭化アルミニウム層12上へのGaN半導体層16のエピタキシャル成長を良好なものとさせることができる。
このようにして炭化アルミニウム層11を形成することで、AlN層が形成されてしまうことを防止でき、GaN半導体層17から、サファイア基板10をより容易に除去することができる。
特に、500℃以上700℃以下で、反応ガスとしてアンモニアを使用し炭化アルミニウム層11を窒化することで、炭化アルミニウム層11を適度に窒化することができ、サファイア基板10との境界面にCが濃縮したGaN半導体層17から、サファイア基板10をより容易に除去することができる。
さらに、本実施形態では、バッファ層14の厚みを20nm以上としているため、窒化した炭化アルミニウム層12を保護し、Al4C3と水分との接触を防止することができる。また、バッファ層14の厚みを140nm以下としているため、窒化した炭化アルミニウム層12の結晶情報を引き継ぐことができる。さらには、GaN半導体層16をエピタキシャル成長させる間の成長層上に割れが発生することを防止できる。
例えば、前記実施形態と同様の方法で形成したバッファ層14上にマスクとなるSiO2膜を作製し、サファイア基板10の<1−100>方向((GaNの<11−20>方向))に沿った方向でストライプ状の開口部を設け、開口部内で{1−101}を側壁とするファセット構造を形成させながらGaN半導体層16を成長させると、最終的に生成するGaN半導体層17中に結晶欠陥が伝達されることが抑制される。このため、得られるGaN半導体基板の品質を向上させることができる。
ただし、前記実施形態のように、冷却することにより、ほとんど外力を加えずに、サファイア基板10が分離除去されれば、前記GaN半導体層17に加わるダメージを確実に抑制することができる。このため、損傷の少ない高品質のGaN半導体基板が安定的に得られる。
さらには、炭化物層を形成する工程では、下地基板との格子不整合率が11%以下である金属炭化物層を形成してもよい。金属炭化物層は、遷移金属V族炭化物または遷移金属IV族炭化物であることが好ましい。
ここで、格子不整合率は、下地基板の面方向原子間距離と、炭化物層の面内方向原子間距離との差を下地基板の面方向原子間距離で割った値の百分率として算出される。
具体的には、下地基板をサファイア基板とした場合には、以下のようになる。
(1)サファイア基板の単位格子のa軸長×cos30°×2÷3
(2)六方晶の炭化物層:単位格子のa軸長
(3)面心立方晶の炭化物層:下記の数式
格子不整合率=(1)と、(2)または(3)との差を(1)で割った値の百分率
立方晶の炭化物層は、窒化した際に、格子定数の変化が小さい。従って、窒化された炭化物層の上部に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を良好なものとすることができる。
また、炭化チタンは、酸化されにくいという特性を有するため、炭化チタンの炭化物層上に、炭化チタンの炭化物層を保護するようなバッファ層を形成する必要がない。従って、III族窒化物半導体基板の製造に手間を要しない。
なお、炭化物層として、炭化アルミニウム以外の炭化物層を形成する場合においても、バッファ層の厚み、バッファ層の成膜温度、炭化物層の厚み、炭化物層の窒化温度等の製造条件を前記実施形態と同様とし、III族窒化物半導体層を製造することができる。
(実施例1)
前記実施形態(図3〜4)で説明したのと同様のプロセスを行い、膜厚約300μmのGaN結晶を得た。各工程で採用した条件は以下のとおりである。
(炭化アルミニウム層の形成工程)
成膜方法:MOVPE法
成膜温度:500℃
成膜時間:5分
成膜ガス:TMAl20cc/min(18℃)、H2ガス6L/min、N2ガス10.5L/min
膜厚 :70nm
窒化温度:500℃
窒化時間:30分
窒化ガス:NH3ガス5L/min、H2ガス6L/min、N2ガス4.5L/min
成膜方法:MOVPE法
成膜温度:500℃
成膜ガス:TMG 4cc/min(10℃)、NH3ガス5L/min、H2ガス6L/min、N2ガス4.5L/min
膜厚 : 70 nm
成膜方法:HVPE法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:HClガス 0.15L/min、NH3ガス1.5L/min
ソース :Gaソース(850℃)
膜厚 :310μm
温度プロファイル:図5
なお、図5において、GaClの下側の矢印は、50分〜80分、90〜180分の間でGaClが発生していることを示し、NH3の上側の矢印は、矢印で示す間中、NH3ガスを供給している時間を示している。
GaN半導体層を形成したHVPE装置中の温度を降温し、常温まで、冷却した。
炭化アルミニウム層の形成工程および炭化アルミニウム層を窒化する工程を実施しなかったこと以外は、実施形態(図3〜4)で説明したのと同様のプロセスを行い、膜厚310μmのGaN自立基板を得た。
GaN半導体層の剥離状況に関して、実施例1の結果を図6に、また比較例の結果を図7に示す。
実施例1では、サファイア基板、サファイア基板との境界面にCが濃縮したGaN半導体層を冷却する工程で、サファイア基板が剥離された。そして、実施例1では、クラックのないGaN結晶を得ることができた。また、実施例1では、サファイア基板と、前記サファイア基板との境界面にCが濃縮したGaN半導体層との界面からサファイア基板が剥離された。
これに対し、比較例1では、サファイア基板、サファイア基板との境界面にCが濃縮したGaN半導体層を冷却する工程でGaN半導体層に割れが生じ、粉々になってしまった。
図8に、実施例1で得られたGaN半導体層の剥離界断面部分のエネルギー分散型X線分析結果を示す。剥離界面にはCと炭化アルミニウム層の窒化によって形成されたCの濃縮が確認された。また、AlはGaN半導体層に向かって拡散が認められた。図9に、実施例1で得られたGaN半導体層の剥離面のX線回折パターンを示した。剥離面には、GaNの(002)と(004)ピークのみが観察されることから、AlNはGaNと混晶を形成している予想される。また、Cはアモルファスであると考えられる。
実施例1において、炭化アルミニウム層を窒化する工程における窒化温度を、550℃、600℃、700℃と変更した。他の点は実施例1と同じである。
実施例1において、炭化アルミニウム層を窒化する工程における窒化温度を、400℃、800℃、900℃と変更した。他の点は実施例1と同じである。
実施例2,3では、各窒化温度でGaN結晶を7枚作製し、GaN半導体層の剥離状況について評価した。また、窒化温度が500℃、700℃および900℃について剥離面のエネルギー分散型X線分析を実施し、組成の違いを測定した。
GaN半導体層の剥離状況に関しては、以下の結果が得られた。
400℃ 作製したGaN結晶7枚中、1枚でクラックが発生せず剥離した。
550℃ 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
600℃ 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
700℃ 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
800℃ 作製したGaN結晶7枚中、1枚でクラックが発生せず剥離した。
900℃ 作製したGaN結晶7枚中、3枚でクラックが発生せず剥離した。
以上の実施例2および実施例3の結果より、炭化アルミニウム層の窒化温度は500℃以上700℃以下とすることが好ましい。
さらに、図10に窒化温度が500℃(実施例1)、700℃および900℃について剥離面のエネルギー分散型X線分析結果を示した。窒化温度が高くなると共にCが低下し、Nが増加していることから、炭化アルミニウム層の窒化が進み過ぎて、剥離界面部分に形成したAlNが下地基板と強固に結合していると考えられる。
なお、窒化温度500℃、550℃、700℃で作製したGaN基板のX線ロッキングカーブ半値幅を測定したところ、
500℃ 作製したGaN結晶・・・600arcsec
550℃ 作製したGaN結晶・・・600arcsec
700℃ 作製したGaN結晶・・・1800arcsec
となり、550℃以下がより好ましいことがわかった。
実施例1において、炭化アルミニウム層の形成工程における原料ガスとして、トリエチルアルミニウムに変更した。他の点は実施例1と同じである。
作製したGaN結晶は、クラックが生じたものの、粉々にはならなかった。
実施例1に比べ、サファイア基板とGaN半導体層との密着性が高いと考えられる。
実施例1において、炭化アルミニウム層の形成工程における膜厚を20nm、100nm、140nmに変更した。他の点は実施例1と同じである。
実施例1において、炭化アルミニウム層の形成工程における膜厚を15nm、200nmに変更した。他の点は実施例1と同じである。
GaN半導体層の剥離状況に関しては、以下の結果が得られた。
15nm 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生したものの、粉々にはならなかった。
20nm 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
100nm 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
140nm 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
200nm 作製したGaN結晶7枚中、3枚でクラックが発生せず剥離した。
以上の実施例5および実施例6の結果より、炭化アルミニウム層の膜厚は20nmから140nmとすることが好ましい。
実施例1において、バッファ層の形成工程における膜厚を20nm、50nm、100nm、140nmに変更した。他の点は実施例1と同じである。
実施例1において、バッファ層の形成工程における膜厚を15nm、200nmに変更した。他の点は実施例1と同じである。
GaN半導体層の剥離状況に関しては、以下の結果が得られた。
15nm 作製したGaN結晶7枚中、6枚が剥離したが、結晶のへき開面に沿った小さなクラックが多数生じた。
20nm 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
50nm 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
100nm 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
140nm 作製したGaN結晶7枚中、7枚でクラックが発生せず剥離した。
200nm 作製したGaN結晶7枚中、7枚がGaN成長中にクラックを生じたものの、粉々にはならなかった。
以上の実施例7および実施例8の結果より、バッファ層の膜厚は20nm以上、140nm以下とすることが好ましい。
本実施例では、炭化物層として、炭化チタン層を形成した。下地基板としては、85mmφサファイア基板を使用している。
(炭化チタン層の形成工程)
成膜方法:スパッタリング
成膜温度:730〜760℃
成膜時間:14分14秒
Ar圧力:0.4Pa
ターゲット:TiC
ターゲット出力:150W
膜厚 :70nm
窒化温度:600℃〜900℃
窒化時間:17分
窒化ガス:NH3ガス3.3L/min
この工程では、600℃から900℃までの昇温過程で炭化チタン層を窒化した。
(GaNのファセット構造の形成)
成膜方法:HVPE法
ファセット形成温度:900℃
時間:5分
ファセット形成ガス:HClガス 0.09l/min、NH3ガス3.3L/min
ファセットを形成した後に連続して、GaN半導体層の成膜を行ない膜厚300μmとした。成膜温度の1040℃まで昇温する間もNH3ガスは供給した。
(GaN半導体層の成長)
成膜方法:HVPE法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:HClガス 0.15L/min、NH3ガス1.5L/min
ソース :Gaソース(850℃)
膜厚 :300 μm
300μmのGaN半導体層の成膜中には、ジクロロシラン(SiH2Cl2)を用いてSiのドーピングを行ない、キャリヤ濃度1×1018cm−3に制御した。
炭化チタン層を窒化する工程と、GaN半導体層をエピタキシャル成長させる工程の温度プロファイルを図12に示す。なお、図12において、GaClの下側の矢印は、50分〜55分、70〜160分の間でGaClが発生していることを示し、NH3の下側の矢印は、矢印で示す間中、NH3ガスを供給していることを示している。
GaN半導体層を形成したHVPE装置の反応管の温度を降温し、常温まで、冷却した。
炭化アルミニウム層の形成工程、炭化アルミニウム層を窒化する工程、バッファ層の形成工程は実施例1と同じである。GaN半導体層をエピタキシャル成長させる工程は、以下の通りである。
(GaN半導体層をエピタキシャル成長させる工程)
(GaNのファセット構造の形成)
成膜方法:HVPE法
ファセット形成温度:1000℃
時間:30分
ファセット形成ガス:HClガス 0.06l/min、NH3ガス0.9L/min
ファセットを形成した後に連続して、GaN半導体層の成膜を行ない膜厚310μmとした。成膜温度の1040℃まで昇温する間もNH3ガスは供給した。
(GaN半導体層の成長)
成膜方法:HVPE法
成膜温度:1040℃
成膜ガス:HClガス 0.15L/min、NH3ガス1.5L/min
ソース :Gaソース(850℃)
膜厚 :310μm
実施例9で得られたGaN半導体層表面は、上記参考実験で得られたGaN半導体層表面に比べ平坦であり、ピットが少ないことがわかる。GaN半導体層の断面像からは、80μmの成長段階でGaN半導体層が略平坦になっていることがわかる。
さらに、図14(A)、(B)には、実施例9のGaN半導体層と、上記参考実験のGaN半導体層のXRD測定によるロッキングカーブプロファイルを示す。これらのプロファイルからは、上記参考実験のGaN半導体層に比べ実施例9のGaN半導体層の結晶性が改善されていることがわかる。
また、図15に、実施例9のGaN半導体層のカソードルミネッセンスによる像を示す(バンド端365nm発光)。上記参考実験のGaN半導体層では、ネットワーク状の暗線(転位集合部)が観察され、明確な暗点観察はできなかったが、実施例9のGaN半導体層では、暗点のみが観察され、暗点密度は、2×107/cm2であった。
以上より、炭化チタン層のように、下地基板との格子不整合率が11%以下である炭化物層を形成することで、GaN半導体層の結晶性を向上させることができることがわかった。
なお、本実施例では、SiH2Cl2ガスを用いてSiのドーピングを行なったが、O2の導入により酸素(O)、またFeCl2の供給により鉄(Fe)等の不純物をドーピングすることも可能である。
本実施例では、炭化物層として、炭化ジルコニウム層を形成した。下地基板としては、85mmφサファイア基板を使用している。
(炭化ジルコニウム層の形成工程)
成膜方法:スパッタリング
成膜温度:730〜760℃
成膜時間:13分
Ar圧力:0.4Pa
ターゲット:ZrC
ターゲット出力:150W
膜厚 :70nm
窒化温度:600℃〜900℃
窒化時間:17分
窒化ガス:NH3ガス3.3L/min
この工程では、600℃から900℃までの昇温過程で炭化ジルコニウム層を窒化した。
本実施例では、炭化物層として、炭化ハフニウム層を形成した。下地基板としては、85mmφサファイア基板を使用している。
(炭化ハフニウム層の形成工程)
成膜方法:スパッタリング
成膜温度:730〜760℃
成膜時間:12分
Ar圧力:0.4Pa
ターゲット:HfC
ターゲット出力:150W
膜厚 :70nm
窒化温度:600℃〜900℃
窒化時間:17分
窒化ガス:NH3ガス3.3L/min
この工程では、600℃から900℃までの昇温過程で炭化ハフニウム層を窒化した。
また、GaN半導体層の断面を蛍光顕微鏡で観察したところ、ピットが多いGaN半導体層であることがわかった。
本実施例では、炭化物層として、炭化バナジウム層を形成した。下地基板としては、85mmφサファイア基板を使用している。
(炭化バナジウム層の形成工程)
成膜方法:スパッタリング
成膜温度:730〜760℃
成膜時間:13分
Ar圧力:0.4Pa
ターゲット:VC
ターゲット出力:150W
膜厚 :70nm
窒化温度:600℃〜900℃
窒化時間:17分
窒化ガス:NH3ガス3.3L/min
この工程では、600℃から900℃までの昇温過程で炭化バナジウム層を窒化した。
本実施例では、炭化物層として、炭化タンタル層を形成した。下地基板としては、85mmφサファイア基板を使用している。
(炭化タンタル層の形成工程)
成膜方法:スパッタリング
成膜温度:730〜760℃
成膜時間:15分
Ar圧力:0.4Pa
ターゲット:TaC
ターゲット出力:150W
膜厚 :70nm
窒化温度:600℃〜900℃
窒化時間:17分
窒化ガス:NH3ガス3.3L/min
この工程では、600℃から900℃までの昇温過程で炭化タンタル層を窒化した。
また、GaN半導体層の断面を蛍光顕微鏡で観察したところ、ピットが多いGaN半導体層であることがわかった。
11 炭化アルミニウム層
12 窒化された炭化アルミニウム層
121 窒化アルミニウム
122 炭化アルミニウム
14 バッファ層(III族窒化物半導体膜)
16 GaN半導体層(III族窒化物半導体層)
17 サファイア基板10との境界面にCが濃縮したGaN半導体層
171 Cの濃縮部
Claims (13)
- 下地基板上に、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウムまたは炭化タンタルから選択されるいずれかの炭化物層を形成する工程と、
前記炭化物層を窒化する工程と、
窒化された前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記III族窒化物半導体層から、前記下地基板を除去し、前記III族窒化物半導体層を含むIII族窒化物半導体基板を得る工程と、
を含むことを特徴とするIII族窒化物半導体基板の製造方法。 - 前記炭化物層を窒化した後、その上にIII族窒化物半導体膜を300℃以上1000℃以下の成長温度で成長させ、その後、III族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる前記工程を実施することを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
- III族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる前記工程は、窒化された前記炭化物層の上部にファセット構造を形成させながら前記III族窒化物半導体層を成長させる工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
- III族窒化物半導体基板を得る前記工程では、前記下地基板、前記窒化された炭化物層、前記III族窒化物半導体層を冷却し、この冷却過程で、前記III族窒化物半導体層から、前記下地基板が分離除去されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
- 前記炭化物層は、炭化アルミニウムであり、
前記炭化アルミニウムの炭化物層を形成する手段として、トリメチルアルミニウムを原料ガスとしたMOVPE法を用いることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。 - 前記炭化物層の厚さが20nm以上、140nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
- 前記炭化物層を窒化する前記工程では、300℃以上900℃以下で前記炭化物層を窒化することを特徴とする請求項1乃至6に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
- 300℃以上1000℃以下の成長温度で成長した前記III族窒化物半導体膜の厚さを20nm以上、140nm以下に制御することを特徴とする請求項2に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
- 請求項1乃至8いずれかに記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法により得られることを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
- 下地基板上に、金属の炭化物層を形成する工程と、
前記炭化物層を窒化する工程と、
窒化された前記炭化物層の上部にIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記III族窒化物半導体層から、前記下地基板を除去し、前記III族窒化物半導体層を含むIII族窒化物半導体基板を得る工程と、
を含み、
炭化物層を形成する前記工程では、前記下地基板との格子不整合率が11%以下である炭化物層を形成することを特徴とするIII族窒化物半導体基板の製造方法。 - 炭化物層を形成する前記工程では、立方晶の前記炭化物層を形成することを特徴とする請求項10に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
- 炭化物層を形成する前記工程では、炭化チタンの前記炭化物層を形成することを特徴とする請求項10または11に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法。
- 請求項10乃至12いずれかに記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法により得られることを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
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