JP2008111430A - 制御システムおよびそれを備えた車両 - Google Patents

制御システムおよびそれを備えた車両 Download PDF

Info

Publication number
JP2008111430A
JP2008111430A JP2007258011A JP2007258011A JP2008111430A JP 2008111430 A JP2008111430 A JP 2008111430A JP 2007258011 A JP2007258011 A JP 2007258011A JP 2007258011 A JP2007258011 A JP 2007258011A JP 2008111430 A JP2008111430 A JP 2008111430A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
speed
slip
engine
slip ratio
target
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007258011A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshinobu Nishiike
義延 西池
Hiroto Watanabe
博人 渡邊
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yamaha Motor Co Ltd
Original Assignee
Yamaha Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yamaha Motor Co Ltd filed Critical Yamaha Motor Co Ltd
Priority to JP2007258011A priority Critical patent/JP2008111430A/ja
Publication of JP2008111430A publication Critical patent/JP2008111430A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Control Of Throttle Valves Provided In The Intake System Or In The Exhaust System (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)

Abstract

【課題】車速に応じた適切なトラクション制御を行うことができる車両の制御システムおよびそれを備えた車両を提供する。
【解決手段】制御システム200は、ECU50、前輪速度センサSE1、後輪速度センサSE4およびエンジン107を含む。ECU50は、前輪速度センサSE1および後輪速度センサSE4の検出値に基づいて、後輪の実スリップ速度および実スリップ率を検出する。自動二輪車が低速時には、実スリップ速度がスリップ速度のしきい値を超えたときにスリップ速度対応トラクション制御が開始され、中高速時には、実スリップ率がスリップ率のしきい値を超えたときにスリップ率対応トラクション制御が開始される。スリップ速度対応トラクション制御においては、実スリップ速度に応じてエンジン107の出力が調整され、スリップ率対応トラクション制御においては、実スリップ率に応じてエンジン107の出力が調整される。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両のトラクション制御を行う制御システムおよびそれを備えた車両に関する。
従来より、自動四輪車のスリップを防止するためのシステムとして、トラクション制御システム(例えば、特許文献1および特許文献2参照)が開発されている。
例えば、特許文献1記載の車両用トラクション制御装置においては、駆動輪の空転量が許容スリップ量を超える場合に、駆動輪に制動力が付与される。それにより、駆動輪の空転が許容スリップ量以内に抑制される。
また、例えば、特許文献2記載の車両の駆動力制御装置においては、駆動輪の過剰スリップが検出された場合に、駆動輪のスリップ率が目標スリップ率に収束するように車両の駆動力が減少される。
車両の駆動輪の駆動力(トラクション)は、車両の走行状態に応じて制御されることが好ましい。そこで、上記特許文献1においては、副変速機が低速状態の場合に、許容スリップ量が小さく設定されている。また、上記特許文献2においては、自動変速機の変速段が強制的に2速に変速されたときに、目標スリップ率が低下されている。すなわち、特許文献1および特許文献2においては、変速機の状態に応じて駆動輪のトラクション制御が行われている。
特開2000−344083号公報 特開平9−249050号公報
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2の構成では、変速機の状態に基づいて駆動輪のトラクション制御が行われるので、車速に応じた適切なトラクション制御を行うことができない場合がある。
本発明の目的は、車速に応じた適切なトラクション制御を行うことができる車両の制御システムおよびそれを備えた車両を提供することである。
本発明者らは、車両の駆動輪と路面とのグリップ特性は、車速に大きく影響を受けると考えた。したがって、車速が高速域にある場合には、高速域における駆動輪と路面とのグリップ特性を考慮して駆動輪のトラクション制御を行うことが好ましいと考えた。また、車速が低速域にある場合には、低速域における駆動輪と路面とのグリップ特性を考慮して駆動輪のトラクション制御を行うことが好ましいと考えた。以下の制御システムおよび車両は上記の点を考慮して発明されたものである。
なお、以下の説明においてトラクション制御とは、後輪を積極的に滑らせるための制御を含む。
(1)第1の発明に係る制御システムは、駆動輪およびエンジンを備える車両において駆動輪のトラクション制御を行う制御システムであって、駆動輪の周速度と車両の車体速度との差から得られるスリップ速度を検出するスリップ速度検出部と、スリップ速度と駆動輪の周速度または車体速度との比から得られるスリップ率を検出するスリップ率検出部と、エンジンの出力を調整するエンジン出力調整部とを備え、エンジン出力調整部は、車体速度が所定速度以下である場合には、スリップ速度検出部により検出されるスリップ速度に応じてエンジンの出力を調整する第1のトラクション制御を行い、車体速度が所定速度より大きい場合には、スリップ率検出部により検出されるスリップ率に応じてエンジンの出力を調整する第2のトラクション制御を行うものである。
その制御システムにおいては、スリップ速度検出部により駆動輪のスリップ速度が検出される。また、スリップ率検出部により駆動輪のスリップ率が検出される。
そして、車体速度が所定速度以下の場合には、スリップ速度検出部により検出される駆動輪のスリップ速度に応じて、エンジン出力調整部によりエンジンの出力が調整される。また、車体速度が所定速度より大きい場合には、スリップ率検出部により検出される駆動輪のスリップ率に応じて、エンジン出力調整部によりエンジンの出力が調整される。
ここで、車体速度が低速時(例えば、車両の発進時)には、駆動輪の周速度は急激に上昇するが、従動輪の周速度はほとんど上昇しない。つまり、従動輪がほぼ停止した状態で駆動輪が回転する。
このような状態においては、駆動輪の周速度のわずかな変化によりスリップ率は大幅に変化する。また、駆動輪のスリップ率をスリップ速度と車体速度との比により求める場合、低速状態においては、スリップ速度が車体速度に比べて大きな値となるので、駆動輪のスリップ率はかなり大きな値で変動する。そのため、低速状態においては、駆動輪の最適なスリップ率を見出すことは困難である。
また、低速状態において、駆動輪のスリップ率に応じてエンジンの出力を調整した場合、駆動輪の周速度の変動幅が大きくなる。この場合、運転者が不快感を感じる。
また、上述したように、低速時には、駆動輪のスリップ率は駆動輪の周速度のわずかな変化により大幅に変化する。したがって、低速時に駆動輪のスリップ率に応じてエンジンの出力を調整した場合、運転者は、駆動輪のスリップ速度および駆動輪の周速度を容易に予想することができない。
本発明の制御システムによれば、以上のような問題点を解決することができる。すなわち、本発明の制御システムによれば、低速時には、駆動輪のスリップ速度に応じてエンジンの出力を調整することができる。この場合、駆動輪の最適なスリップ速度を容易に決定することができるので、車両の操作性が向上する。
また、低速時に駆動輪の周速度の変動を小さくすることができるので、車両の車体速度を安定させることができる。それにより、低速時に運転者が不快感を感じることを防止することができる。また、駆動輪の周速度の変動が小さくなるので、駆動輪のスリップ速度および駆動輪の周速度を容易に予想することができる。それにより、車両の操作性が向上する。
また、中高速時においては、駆動輪のスリップ率に応じてエンジンの出力が調整される。ここで、車体速度が中高速時には、駆動輪の最適なスリップ率は路面状況に応じて決まる。したがって、走行中の路面の状況に応じて駆動輪のスリップ率を最適な値にすることにより、車両を容易に加速させることができるとともに、駆動輪の横方向のグリップ力を十分に確保することができる。その結果、車両の操作性が向上する。
以上の結果、車両の速度に応じた適切なトラクション制御を行うことが可能となる。
(2)エンジン出力調整部は、第1のトラクション制御においてスリップ速度検出部により検出されるスリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジンの出力を調整し、第2のトラクション制御においてスリップ率検出部により検出されるスリップ率が目標スリップ率に追従するようにエンジンの出力を調整してもよい。
この場合、低速時には、第1のトラクション制御により、駆動輪のスリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジンの出力が調整される。それにより、運転者は、最適な目標スリップ速度を容易に決定することができる。
また、運転者は、低速時に、車体速度と目標スリップ速度とから、駆動輪の周速度を容易に予想することができる。したがって、運転者は、車体速度と目標スリップ速度とに基づいて、車両の挙動を容易に予想することができる。
また、中高速時には、第2のトラクション制御により、駆動輪のスリップ率が目標スリップ率に追従するようにエンジンの出力が調整される。この場合、走行中の路面の状況に応じて目標スリップ率を最適な値にすることにより、車両を容易に加速させることができるとともに、駆動輪の横方向のグリップ力を十分に確保することができる。
これらの結果、車両の操作性が十分に向上する。
(3)エンジン出力調整部は、そのエンジン出力調整部の作動後でかつ車体速度が所定速度以下である場合にスリップ速度検出部により検出されるスリップ速度が第1のしきい値を最初に超えた時点、およびエンジン出力調整部の作動後でかつ車体速度が所定速度より大きい場合にスリップ率検出部により検出されるスリップ率が第2のしきい値を最初に超えた時点のうち先行する時点で第1または第2のトラクション制御を開始してもよい。
この場合、車両の車体速度に関係なく、迅速かつ最適なトラクション制御を行うことができる。
(4)第1のしきい値は、車体速度が0のときに最大となるように車体速度に応じて変化してもよい。
ここで、車両の発進時には、従動輪の周速度に比べて駆動輪の周速度が急激に上昇する。そのため、車体速度が超低速時に、第1のしきい値を小さく設定した場合には、車両の発進とほぼ同時にトラクション制御が行われることになる。この場合、車両の発進とほぼ同時に、エンジンの出力を低減するための制御が行われるので、エンジンが停止する場合がある。
一方、本発明によれば、車体速度が超低速時には、第1のしきい値を十分な大きさの値にすることができる。この場合、駆動輪の周速度が十分な速度になるまでエンジンの出力を低下させるための制御は行われない。したがって、車両の発進とほぼ同時にエンジンの出力が低下されることを防止することができる。それにより、エンジンが停止することを防止することができる。
(5)第1のしきい値は、車体速度の増加に従って低下してもよい。この場合、車体速度に応じた適切なトラクション制御を行うことができる。それにより、車両の操作性を十分に向上させることができる。
(6)エンジン出力調整部は、第1のトラクション制御において、目標スリップ速度が第1のしきい値より大きい場合には、スリップ速度検出部により検出されるスリップ速度が第1のしきい値に追従するようにエンジンの出力を調整してもよい。
ここで、例えば、目標スリップ速度が大きく設定され、上記所定速度において、駆動輪のスリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジンの出力が調整された場合、駆動輪の周速度は大きくなる。また、目標スリップ率が小さく設定された場合、上記所定速度近傍においては、駆動輪の周速度が小さくなる。
この場合、上記所定速度において第1のトラクション制御から第2のトラクション制御へと切り替えられる際に、駆動輪の周速度が大きく変化する。それにより、運転者は不快感を感じる。
一方、本発明によれば、目標スリップ速度が第1のしきい値より大きい場合には、駆動輪のスリップ速度が第1のしきい値に追従するようにエンジンの出力が調整される。この場合、第1のしきい値は、車体速度の増加に従って低下するので、上記所定速度において、駆動輪の周速度が大きな値になることを防止することができる。それにより、目標スリップ率が小さく設定された場合にも、上記制御が切り替えられる際に、駆動輪の周速度が大きく変化することを防止することができる。その結果、車両の走行性が向上する。
また、この場合、車両が発進し駆動輪の周速度が急激に上昇した後、駆動輪の周速度と従動輪の周速度を徐々に近付けることができる。それにより、中低速時における車両の走行性を十分に向上させることができる。
(7)制御システムは、運転者のアクセル操作量に応じて決定されるスリップ速度およびスリップ率を目標スリップ速度および目標スリップ率として設定する目標スリップ量設定部とをさらに備えてもよい。
この場合、運転者は、アクセル操作量を調整することにより、自らの意思で駆動輪を滑らせつつ、スリップ速度またはスリップ率を任意に調整することができる。それにより、運転者は、快適な車両の走行を楽しむことができる。
例えば、舗装路面においては、目標スリップ率が5%〜10%になるようにアクセル操作量を調整することにより、車両を容易に加速させることができるとともに、駆動輪の横方向のグリップ力を十分に確保することができる。それにより、車両の操作性を十分に向上させることができる。
また、駆動輪のスリップ速度およびスリップ率が目標スリップ速度および目標スリップ率に追従するようにエンジンの出力が調整されるので、駆動輪の実際のスリップ速度およびスリップ率と、運転者が要求する目標スリップ速度および目標スリップ率との間に差が生じることを防止することができる。それにより、運転者はより快適な走行を楽しむことができる。
(8)制御システムは、目標スリップ量設定部により設定可能な目標スリップ速度および目標スリップ率の上限値を設定する上限値設定部をさらに備えてもよい。
この場合、運転者は、熟練度、路面状況、および気象条件等の様々な要素を考慮して目標スリップ速度および目標スリップ率の上限値を調整することができる。それにより、車両の操作性を十分に向上させることができる。
(9)制御システムは、エンジン内に供給される空気量を調整するスロットルバルブと、エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出部と、エンジンの回転速度、エンジンの出力およびスロットルバルブの開度の関係を示す情報を記憶する記憶部とをさらに備え、エンジン出力調整部は、エンジン回転速度検出部により検出される回転速度および記憶部に記憶される情報に基づいてスロットルバルブの開度を調整することによりエンジンの出力を調整してもよい。
この場合、エンジン出力調整部は、エンジン回転速度検出部により検出される回転速度および記憶部に記憶される情報に基づいて、エンジンから所望の出力を得るための最適なスロットル開度を容易に導き出すことができる。それにより、エンジン出力調整部の処理時間を短縮することができ、駆動輪のトラクション制御を迅速に行うことができる。
(10)制御システムは、エンジン出力調整部を作動させる作動スイッチをさらに備えてもよい。
この場合、運転者は、作動スイッチを操作することにより、トラクション制御を行うか否かを任意に選択することができる。したがって、運転者は、熟練度、路面状況、および気象条件等の様々な要素を考慮して作動スイッチを操作することにより、車両のより快適な走行を楽しむことができる。
(11)エンジン出力調整部は、第1および第2のトラクション制御においてエンジンの出力トルクを0以下にしなくてもよい。
この場合、トラクション制御時に駆動輪に制動力(エンジンブレーキ)が付与されることが防止されるので、車両の走行性が向上する。
(12)第2の発明に係る制御システムは、駆動輪およびエンジンを備える車両において駆動輪のトラクション制御を行う制御システムであって、駆動輪の周速度と車両の車体速度との差から得られるスリップ速度を検出するスリップ速度検出部と、スリップ速度と駆動輪の周速度または車体速度との比から得られるスリップ率を検出するスリップ率検出部と、駆動輪のスリップ速度またはスリップ率に応じてエンジンの出力を調整するエンジン出力調整部とを備え、エンジン出力調整部は、そのエンジン出力調整部の作動後でかつ車体速度が所定速度以下である場合にスリップ速度検出部により検出されるスリップ速度が第1のしきい値を最初に超えた時点、およびエンジン出力調整部の作動後でかつ車体速度が所定速度より大きい場合にスリップ率検出部により検出されるスリップ率が第2のしきい値を最初に超えた時点のうち先行する時点でトラクション制御を開始するものである。
その制御システムにおいては、スリップ速度検出部により駆動輪のスリップ速度が検出される。また、スリップ率検出部により駆動輪のスリップ率が検出される。そして、駆動輪のスリップ速度またはスリップ率に応じて、エンジン出力調整部によりエンジンの出力が調整される。
ここで、車体速度が低速時(例えば、車両の発進時)には、駆動輪の周速度は急激に上昇するが、従動輪の周速度はほとんど上昇しない。つまり、従動輪がほぼ停止した状態で駆動輪が回転する。
このような状態においては、駆動輪の周速度のわずかな変化によりスリップ率は大幅に変化する。また、駆動輪のスリップ率をスリップ速度と車体速度との比により求める場合、低速状態においては、スリップ速度が車体速度に比べて大きな値となるので、駆動輪のスリップ率はかなり大きな値で変動する。そのため、低速状態においては、駆動輪の最適なスリップ率を見出すことは困難である。
本発明の制御システムによれば、この問題点を解決することができる。本発明の制御システムにおいては、低速時には、駆動輪のスリップ速度が第1のしきい値を超えた場合にトラクション制御が開始される。すなわち、低速状態においては、スリップ速度のしきい値(第1のしきい値)に基づいてトラクション制御を行うか否かが決定される。ここで、車両の低速時には駆動輪の最適なスリップ速度を容易に決定することができる。したがって、上記最適なスリップ速度に基づいて第1のしきい値を決定することにより、適切な時点でトラクション制御を開始することが可能となる。
また、中高速時においては、駆動輪のスリップ率が第2のしきい値を超えた場合にトラクション制御が開始される。ここで、車体速度が中高速時には、駆動輪の最適なスリップ率は路面状況に応じて決まる。したがって、走行中の路面の状況に応じて第2のしきい値を最適な値にすることにより、適切な時点でトラクション制御を開始することが可能となる。
以上の結果、車両の速度に応じた適切なトラクション制御を行うことが可能となる。
(13)第3の発明に係る車両は、駆動輪と、駆動輪を回転させるための駆動力を発生するエンジンと、エンジンにより発生された駆動力を駆動輪へ伝達するための駆動力伝達手段と、第1または第2の発明に係る制御システムとを備えたものである。
その車両においては、エンジンにより発生された駆動力は駆動力伝達手段によって駆動輪へ伝達される。それにより、駆動輪が駆動される。また、第1または第2の発明に係る制御システムにより、車両の速度に応じた適切なトラクション制御が行われる。
本発明によれば、低速時には、駆動輪のスリップ速度に応じてエンジンの出力を調整することができる。この場合、駆動輪の最適なスリップ速度を容易に決定することができるので、車両の操作性が向上する。
また、低速時に駆動輪の周速度の変動を小さくすることができるので、車両の車体速度を安定させることができる。それにより、低速時に運転者が不快感を感じることを防止することができる。
また、中高速時においては、駆動輪のスリップ率に応じてエンジンの出力が調整される。ここで、車体速度が中高速時には、駆動輪の最適なスリップ率は路面状況に応じて決まる。したがって、走行中の路面の状況に応じて駆動輪のスリップ率を最適な値にすることにより、車両を容易に加速させることができるとともに、駆動輪の横方向のグリップ力を十分に確保することができる。その結果、車両の操作性が向上する。
また、低速時には、駆動輪のスリップ速度が第1のしきい値を超えた場合にトラクション制御が開始される。すなわち、低速状態においては、スリップ速度のしきい値(第1のしきい値)に基づいてトラクション制御を行うか否かが決定される。ここで、車両の低速時には駆動輪の最適なスリップ速度を容易に決定することができる。したがって、上記最適なスリップ速度に基づいて第1のしきい値を決定することにより、適切な時点でトラクション制御を開始することが可能となる。
また、中高速時においては、駆動輪のスリップ率が第2のしきい値を超えた場合にトラクション制御が開始される。ここで、車体速度が中高速時には、駆動輪の最適なスリップ率は路面状況に応じて決まる。したがって、走行中の路面の状況に応じて第2のしきい値を最適な値にすることにより、適切な時点でトラクション制御を開始することが可能となる。
以上の結果、車両の速度に応じた適切なトラクション制御を行うことが可能となる。
以下、本発明の実施の形態に係る制御システムおよびそれを備える車両について図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては、車両の一例として自動二輪車について説明する。
(1)自動二輪車の構成
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車を示す概略側面図である。
図1の自動二輪車100においては、本体フレーム101の前端にヘッドパイプ102が設けられる。ヘッドパイプ102にフロントフォーク103が左右方向に揺動可能に設けられる。フロントフォーク103の下端に前輪104が回転可能に支持される。また、フロントフォーク103の下端側には、前輪速度センサSE1が設けられる。前輪速度センサSE1は、前輪104の回転速度を検出し、検出値を後述するECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)50に与える。
ヘッドパイプ102の上端にはハンドル105が設けられる。ハンドル105には、アクセルグリップ106および切替スイッチSWが設けられる。切替スイッチSWは切替ボタン(図示せず)を有する。切替ボタンが押下されている場合には、切替スイッチSWは、そのことを示す信号をECU50に与える。
本体フレーム101の中央部には、エンジン107が設けられる。エンジン107の近傍(後述するETV82(図2)の近傍)には、アクセル開度センサSE2が設けられる。アクセル開度センサSE2は、運転者によるアクセルグリップ106の操作量(以下、アクセル開度と称する)を検出し、検出値をECU50に与える。
エンジン107には、エンジン回転速度センサSE3が設けられる。エンジン回転速度センサSE3は、エンジン107の回転速度を検出し、検出値をECU50に与える。エンジン107の上部には燃料タンク108が設けられ、燃料タンク108の後方にはシート109が設けられる。シート109の下部には、ECU50が設けられる。
エンジン107の後方に延びるように、本体フレーム101にリアアーム110が接続される。リアアーム110は、後輪111および後輪ドリブンスプロケット112を回転可能に保持する。
後輪ドリブンスプロケット112には、後輪速度センサSE4が設けられる。後輪速度センサSE4は、後輪111の回転速度を検出し、検出値をECU50に与える。エンジン107の排気ポートには、排気管113の一端側が取り付けられる。排気管113の他端側には、マフラー114が取り付けられる。
エンジン107にドライブシャフト115が取り付けられ、ドライブシャフト115には後輪ドライブスプロケット116が取り付けられる。後輪ドライブスプロケット116は、チェーン117を介して後輪111の後輪ドリブンスプロケット112に連結される。
(2)制御システムの構成
図2は、本実施の形態に係る制御システムの構成を示す模式図である。図2に示すように、制御システム200は、ECU50、前輪速度センサSE1、アクセル開度センサSE2、エンジン回転速度センサSE3、後輪速度センサSE4、切替スイッチSWおよびエンジン107を含む。
エンジン107はシリンダ71を有し、シリンダ71内には、ピストン72が上下動可能に設けられる。また、シリンダ71内の上部には燃焼室73が設けられる。燃焼室73は吸気ポート74および排気ポート75を介してエンジン107の外部に連通する。
吸気ポート74の下流側の開口端74aに吸気弁76が開閉自在に設けられ、排気ポート75の上流側の開口端75aに排気弁77が開閉自在に設けられる。吸気弁76および排気弁77は、通常のカム機構により駆動される。燃焼室73の上部には、燃焼室73内で火花点火を行うための点火プラグ78が設けられる。
エンジン107には、吸気ポート74と連通するように吸気管79が取り付けられ、排気ポート75と連通するように排気管80が取り付けられる。吸気管79には、シリンダ71内に燃料を供給するためのインジェクタ81が設けられる。また、吸気管79内には、電子制御式スロットルバルブ(ETV)82が設けられる。
エンジン107の作動時には、空気が吸気管79を通して吸気ポート74から燃焼室73内に吸入されるとともに、インジェクタ81により燃焼室73内に燃料が供給される。それにより、燃焼室73内で混合気が生成され、点火プラグ78により混合気に火花点火が行われる。燃焼室73内において混合気の燃焼により生じた既燃ガスは、排気ポート75から排気管80を通して排出される。
ECU50は、記憶部51およびPID(比例積分微分:Proportional Integral Derivative)コントローラ52を含む。図3は、記憶部51の記憶内容を示す概念図である。図3に示すように、記憶部51には、スリップ速度しきい値データ511、スリップ率しきい値データ512、目標スリップ速度データ513、目標スリップ率データ514および目標スロットル開度マップ515が記憶されている。これら4つのデータ511〜514および目標スロットル開度マップ515の詳細は後述する。また、PIDコントローラ52は、後述するスリップ速度対応トラクション制御およびスリップ率対応トラクション制御において目標トルクを算出する。
図2に示すように、ECU50には、前輪速度センサSE1、アクセル開度センサSE2、エンジン回転速度センサSE3および後輪速度センサSE4の検出値が与えられる。また、図示していないが、ECU50には、水温センサ、油温センサ、スロットルセンサ、酸素センサおよび吸気温センサ等の種々のセンサからも種々の検出値が与えられる。ECU50は、複数のセンサから与えられる複数の検出値に基づいて、吸気弁76、排気弁77、点火プラグ78、インジェクタ81およびETV82等の動作を制御する。それにより、シリンダ71内における混合気の点火時期が調整される。
(3)トラクション制御
(3−1)トラクション制御の概要
本実施の形態におけるトラクション制御では、スリップ速度対応トラクション制御およびスリップ率対応トラクション制御が選択的に行われる。スリップ速度対応トラクション制御では、ECU50は、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。また、スリップ率対応トラクション制御では、ECU50は、実スリップ率が目標スリップ率に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。スリップ速度対応トラクション制御およびスリップ率対応トラクション制御の詳細は後述する。
ECU50は、自動二輪車100の車速(車体速度)が所定速度(例えば、10km/h)以下で、かつ実スリップ速度がスリップ速度のしきい値以上である場合にスリップ速度対応トラクション制御を行う。また、ECU50は、自動二輪車100の車速が所定速度より大きく、かつ実スリップ率がスリップ率のしきい値以上である場合にスリップ率対応トラクション制御を行う。
なお、本実施の形態においては、下記式(1)で算出される前輪104の周速度(前輪速度)を車速(km/h)とする。
車速=前輪速度=前輪回転速度×前輪タイヤの周長・・・(1)
また、実スリップ速度(km/h)は下記式(2)により算出される。
実スリップ速度=後輪速度−前輪速度・・・(2)
なお、後輪111の周速度(後輪速度)は下記式(3)により算出される。
後輪速度=後輪回転速度×後輪タイヤの周長・・・(3)
スリップ速度のしきい値は、スリップ速度しきい値データ511(図3)に格納されている。図4に、スリップ速度しきい値データ511の一例を示す。図4において、縦軸はスリップ速度を示し、横軸は車速を示す。図4に示すように、スリップ速度しきい値データ511には、車速が0km/hから10km/hの領域における車速とスリップ速度のしきい値との関係が示されている。
図4のスリップ速度しきい値データ511においては、車速が0km/hのときのスリップ速度のしきい値は50km/hに設定され、車速が10km/hのときのスリップ速度のしきい値は3km/hに設定されている。また、スリップ速度のしきい値は、車速の増加に従って直線的に低下するように設定されている。
なお、車速が0km/hのときのスリップ速度のしきい値は、後述する設定パネルにより調整することができる。また、車速が10km/hのときのスリップ速度のしきい値は、後述するスリップ率のしきい値に応じて決定される。詳細は後述する。
実スリップ率は、下記式(4)により算出される。
実スリップ率=実スリップ速度÷前輪速度×100・・・(4)
スリップ率のしきい値は、スリップ率しきい値データ512(図3)に格納されている。図5に、スリップ率しきい値データ512の一例を示す。図5において、縦軸はスリップ率を示し、横軸は車速を示す。図5に示すように、スリップ率しきい値データ512には、車速が10km/h以上の領域における車速とスリップ率のしきい値との関係が示されている。図5のスリップ率しきい値データ512においては、しきい値が30%に設定されている。なお、スリップ率のしきい値は、後述する設定パネルにより調整することができる。詳細は後述する。
以下、図面を用いてECU50の制御動作について説明する。なお、以下の説明においては、自動二輪車100が通常の走行を行っている際のECU50の制御動作を通常の制御と称する。すなわち、通常の制御においては、ECU50は後輪111のトラクション制御を行わない。
(3−2)全体の制御フロー
図6および図7は、ECU50の制御動作の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、ECU50は、まず、切替スイッチSW(図1および図2)の出力信号に基づいて、切替ボタンが押下されているか否かを判別する(ステップS1)。切替ボタンが押下されている場合、ECU50は、アクセル開度センサSE2(図1および図2参照)の検出値に基づいてアクセルグリップ106(図1参照)が全閉されているか否かを判別する(ステップS2)。
アクセルグリップ106が全閉されていない場合、ECU50は、前輪速度センサSE1(図1および図2参照)の検出値に基づいて自動二輪車100の車速を算出する(ステップS3)。
次に、ECU50は、自動二輪車100の車速がしきい値(例えば、10km/h)以下であるか否かを判別する(ステップS4)。自動二輪車100の車速がしきい値以下の場合、図7に示すように、ECU50は、前輪速度センサSE1および後輪速度センサSE4の検出値に基づいて自動二輪車100の実スリップ速度を算出する(ステップS5)。
次に、ECU50は、ステップS3(図6)で算出された車速およびスリップ速度しきい値データ511(図4)に基づいて、実スリップ速度がしきい値以上であるか否かを判別する(ステップS6)。
実スリップ速度がしきい値以上である場合、ECU50は、PIDコントローラ52(図2参照)の積分器をリセットする(ステップS7)。次に、ECU50は、スリップ速度対応トラクション制御を行う(ステップS8)。スリップ速度対応トラクション制御の詳細は後述する。
次に、ECU50は、現在の自動二輪車100の状態が、トラクション制御終了条件を満たしているか否かを判別する(ステップS9)。なお、ステップS9におけるトラクション制御終了条件は、ステップS8のスリップ速度対応トラクション制御を終了するための条件と後述するステップS17のスリップ率対応トラクション制御を終了するための条件とを含む。
例えば、実スリップ速度が目標スリップ速度より小さくかつ目標スロットル開度(%)がアクセル開度センサSE2(図2)により検出されるアクセル開度(%)より大きい場合、またはエンジン回転速度センサSE3(図2)により検出されるエンジン107の回転速度が所定のしきい値(例えば、800rpm)より小さい場合、自動二輪車100の状態はステップS8のスリップ速度対応トラクション制御を終了するための条件を満たす。
また、例えば、実スリップ率が目標スリップ率より小さくかつ目標スロットル開度(%)がアクセル開度センサSE2により検出されるアクセル開度(%)より大きい場合、またはエンジン回転速度センサSE3により検出されるエンジン107の回転速度が所定のしきい値(例えば、800rpm)より小さい場合、自動二輪車100の状態はステップS17のスリップ率対応トラクション制御を終了するための条件を満たす。
自動二輪車100の状態がトラクション制御終了条件を満たしていない場合、ECU50は、切替スイッチSW(図1および図2)の出力信号に基づいて、切替ボタンが押下されているか否かを判別する(ステップS10)。
切替ボタンが押下されている場合、ECU50は、前輪速度センサSE1の検出値に基づいて自動二輪車100の車速を算出する(ステップS11)。
次に、ECU50は、自動二輪車100の車速がしきい値(例えば、時速10km)以下であるか否かを判別する(ステップS12)。自動二輪車100の車速がしきい値以下の場合、ECU50はステップS8に戻りスリップ速度対応トラクション制御を実行する。なお、ステップS12におけるしきい値およびステップS4(図6参照)におけるしきい値は同じ値である。
図6のステップS1において、切替ボタンが押下されていない場合、ECU50は、後輪111のトラクション制御を行わずに通常の制御を行う(ステップS13)。
また、ステップS2においてアクセルグリップ106が全閉されている場合、ECU50は、ステップS13へ進み、通常の制御を行う。なお、ステップS2においてアクセルグリップ106が全閉されている場合には、エンジン107においてほとんどトルクが発生されていないと考えられる。したがって、後輪111のトラクション制御を行わなくてもよい。
さらに、図7のステップS6において実スリップ速度がしきい値より小さい場合、ステップS9において自動二輪車100の状態がトラクション制御終了条件を満たしている場合、およびステップS10において切替ボタンが押下されていない場合、ECU50は、図6のステップS13へ進み、通常の制御を行う。
図6のステップS4において車速がしきい値より大きい場合、図7に示すように、ECU50は、前輪速度センサSE1および後輪速度センサSE4の検出値に基づいて自動二輪車100の実スリップ率を算出する(ステップS14)。
次に、ECU50は、ステップS3(図6)で算出された車速およびスリップ率しきい値データ512(図5)に基づいて、実スリップ率がしきい値以上であるか否かを判別する(ステップS15)。
実スリップ率がしきい値以上である場合、ECU50は、PIDコントローラ52(図2参照)の積分器をリセットする(ステップS16)。次に、ECU50は、スリップ率対応トラクション制御を行う(ステップS17)。スリップ率対応トラクション制御の詳細は後述する。その後、ECU50は、ステップS9へ進む。
ステップS15において実スリップ率がしきい値より小さい場合、ECU50は、図6のステップS13へ進み、通常の制御を行う。
ステップS12において車速がしきい値より大きい場合、ECU50は、ステップS17へ進み、スリップ率対応トラクション制御を実行する。
なお、図6および図7に示す制御動作の周期は、例えば4msである。
(3−3)スリップ速度対応トラクション制御
スリップ速度対応トラクション制御においては、ECU50は、目標スリップ速度データ513(図3)を用いて目標スリップ速度を決定する。そして、ECU50は、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するように、エンジン107の出力トルクを調整する。
図8に、目標スリップ速度データ513の一例を示す。図8において、縦軸はスリップ速度を示し、横軸はアクセル開度を示す。図8に示すように、目標スリップ速度データ513には、アクセル開度と目標スリップ速度との関係が示されている。なお、アクセル開度が0%とは、アクセルグリップ106が全閉されている状態を示し、アクセル開度が100%とは、アクセルグリップ106が全開されている状態を示す。
図8の目標スリップ速度データ513においては、目標スリップ速度は、アクセル開度の増加に従って直線的に増加している。したがって、スリップ速度対応トラクション制御においては、運転者は、アクセル開度を調整することにより、自動二輪車100の実スリップ速度を任意に調整することができる。
なお、図8の目標スリップ速度データ513においては、目標スリップ速度の上限値が50km/hに設定されているが、目標スリップ速度の上限値は、後述する設定パネルにより調整することができる。詳細は後述する。
以下、スリップ速度対応トラクション制御の制御フローを図面を用いて説明する。
図9および図10は、スリップ速度対応トラクション制御におけるECU50の制御動作の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、スリップ速度対応トラクション制御において、ECU50は、まず、ステップS5(図7)と同様に自動二輪車100の実スリップ速度を算出する(ステップS81)。
次に、ECU50は、アクセル開度センサSE2(図2)の検出値および目標スリップ速度データ513(図8)に基づいて、目標スリップ速度を決定する(ステップS82)。
次に、ECU50は、スリップ速度しきい値データ511(図4)に基づいて、目標スリップ速度がスリップ速度のしきい値以下であるか否かを判別する(ステップS83)。目標スリップ速度がスリップ速度のしきい値以下である場合、ECU50は、実スリップ速度と目標スリップ速度との差を算出する(ステップS84)。
次に、ECU50は、ステップS84において算出した差に基づいて、目標トルクを算出する(ステップS85)。なお、目標トルクとは、自動二輪車100(後輪111)を目標スリップ速度でスリップさせるために必要となるエンジン107(図2)の出力トルクのことである。目標トルクは、PIDコントローラ52(図2)によるPID演算により算出される。
次に、ECU50は、上記目標トルク、エンジン回転速度センサSE3(図2)の検出値、および目標スロットル開度マップ515(図3)に基づいて、目標スロットル開度を決定する(ステップS86)。
なお、目標スロットル開度とは、エンジン107が、現在のエンジン回転速度で上記目標トルクを出力するために必要となるETV82(図2)のスロットル開度のことである。また、目標スロットル開度マップ515とは、エンジン107(図2)の回転速度、ETV82のスロットル開度およびエンジン107の出力トルクの関係を示す3次元マップである。
次に、ECU50は、図10に示すように、ステップS81(図9)で算出した実スリップ速度と所定時間前(例えば、40ms)の実スリップ速度との差を算出する(ステップS87)。なお、実スリップ速度の履歴は記憶部51(図2)に記憶されている。
次に、ECU50は、ステップS87で算出された差がしきい値(例えば、120km/h)以下であるか否かを判別する(ステップS88)。差がしきい値以下の場合、ECU50は、ステップS86(図9)で決定された目標スロットル開度に基づいてETV82のスロットル開度を調整する(ステップS89)。それにより、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジン107(図2)の出力トルク(後輪111のトラクション)が調整される。その後、ECU50は、図7のステップS9へ進む。
図10のステップS88において、差がしきい値より大きい場合、ECU50は、ステップS86(図9)で決定された目標スロットル開度に基づいてETV82のスロットル開度を調整するとともに点火プラグ78(図2)による火花点火の時期を遅角(例えば、30度)させる(ステップS90)。その後、ECU50は、図7のステップS9へ進む。
なお、火花点火の時期を30度遅角させることにより、エンジン107(図2)の出力トルクを低下させることができる。したがって、ステップS90の処理を設けることにより、例えば、スリップ速度が短時間で大きく増加した場合には、エンジン107の出力トルクを低下させることができる。それにより、自動二輪車100の速度を容易に安定させることができ、自動二輪車100の操作性が向上する。
図9のステップS83において、目標スリップ速度がスリップ速度のしきい値より大きい場合、ECU50は、スリップ速度しきい値データ511(図4)に基づいて、実スリップ速度とスリップ速度のしきい値との差を算出する(ステップS91)。
次に、ECU50は、ステップS91において算出した差に基づいて、目標トルクを算出する(ステップS92)。その後、ECU50は、ステップS86へ進む。
なお、この場合の目標トルクとは、自動二輪車100(後輪111)をスリップ速度のしきい値(図4参照)でスリップさせるために必要となるエンジン107(図2)の出力トルクである。したがって、ステップS83において目標スリップ速度がしきい値より大きい場合には、実スリップ速度がスリップ速度のしきい値に追従するようにエンジン107(図2)の出力トルク(後輪111のトラクション)が調整される。
ステップS91およびステップS92の処理を行うことにより得られる効果については後述する。
(3−4)スリップ率対応トラクション制御
スリップ率対応トラクション制御においては、ECU50は、目標スリップ率データ514(図3)を用いて目標スリップ率を決定する。そして、ECU50は、実スリップ率が目標スリップ率に追従するように、エンジン107の出力トルクを調整する。
図11に、目標スリップ率データ514の一例を示す。図11において、縦軸はスリップ率を示し、横軸はアクセル開度を示す。図11に示すように、目標スリップ率データ514には、アクセル開度と目標スリップ率との関係が示されている。
図11の目標スリップ率データ514においては、アクセル開度の増加に従って直線的に目標スリップ率が増加している。したがって、スリップ率対応トラクション制御においては、運転者は、アクセル開度を調整することにより、自動二輪車100の実スリップ率を任意に調整することができる。
なお、図11の目標スリップ率データ514においては、目標スリップ率の上限値が30%に設定されているが、目標スリップ率の上限値は、後述する設定パネルにより調整することができる。詳細は後述する。
以下、スリップ率対応トラクション制御の制御フローを図面を用いて説明する。
図12は、スリップ率対応トラクション制御におけるECU50の制御動作の一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、スリップ率対応トラクション制御において、ECU50は、まず、ステップS81(図9)と同様に自動二輪車100の実スリップ速度を算出する(ステップS171)。次に、ECU50は、アクセル開度センサSE2(図2)の検出値および目標スリップ率データ514(図11)に基づいて、目標スリップ率を決定する(ステップS172)。
次に、ECU50は、上記目標スリップ率および前輪速度センサSE1(図2)の検出値に基づいて、目標スリップ速度を算出する(ステップS173)。なお、ステップS173において算出される目標スリップ速度は、自動二輪車100(後輪111)を目標スリップ率でスリップさせる場合のスリップ速度である。ステップS173においては、目標スリップ速度は、下記式(5)により算出される。
目標スリップ速度=目標スリップ率×前輪速度÷100・・・(5)
その後、ECU50は、図9および図10のステップS84〜ステップS90の処理を行う。それにより、実スリップ率(実スリップ速度)が目標スリップ率(目標スリップ速度)に追従するようにエンジン107(図2)の出力トルク(後輪111のトラクション)が調整される。その後、ECU50は、図7のステップS9へ進む。
(3−5)制御例
以下、例を挙げて、上記のトラクション制御を行った場合に後輪速度がどのような変化を示すかを説明する。
図13は、前輪速度(車速)、スリップ速度のしきい値、目標スリップ速度、スリップ率のしきい値、および目標スリップ率の関係を説明するための図である。図13において、縦軸は速度を示し、横軸は時間を示す。
なお、図13は、図4に示すスリップ速度しきい値データ511、図5に示すスリップ率しきい値データ512、図8に示す目標スリップ速度データ513および図11に示す目標スリップ率データ514を用いてトラクション制御を行う場合を示している。
また、図13の例においては、アクセル開度は50%に固定されているものとする。したがって、目標スリップ速度データ513(図8)から決定される目標スリップ速度は25km/hであり、目標スリップ率データ514(図11)から決定される目標スリップ率は15%である。なお、ステップ4(図6)における車速のしきい値は10km/hとする。
図13において、実線Aは前輪速度(車速)を示す。車速は一定の加速度で上昇し、時点t2において10km/hとなる。また、一点鎖線Bは、前輪速度にスリップ速度のしきい値(図4)を加算した値を示している。つまり、一点鎖線Bで示される値と実線Aで示される値との差がスリップ速度のしきい値となる。ここで、上述したように、実スリップ速度は、後輪速度から前輪速度を減算することにより算出される。したがって、後輪速度が一点鎖線Bで示される値より大きい値となる領域においては、自動二輪車100の実スリップ速度がスリップ速度のしきい値(図4)を超えていることになる。以下、一点鎖線Bで示される値を第1の後輪速度しきい値と称する。
また、二点鎖線Cは、前輪速度とスリップ率のしきい値(30%)との積を前輪速度に加算した値を示している。すなわち、二点鎖線Cで示される値は下記式(6)により算出される。
二点鎖線Cの値=前輪速度×スリップ率のしきい値+前輪速度・・・(6)
ここで、上述したように、実スリップ率は、実スリップ速度(後輪速度と前輪速度との差)を前輪速度で除算することにより算出される。この場合、後輪速度は、下記式(7)により示される。
後輪速度=前輪速度×実スリップ率+前輪速度・・・(7)
したがって、後輪速度(式(7)参照)が二点鎖線Cで示される値(式(6)参照)より大きい値となる領域においては、自動二輪車100の実スリップ率がスリップ率のしきい値(30%)を超えていることになる。以下、二点鎖線Cで示される値を第2の後輪速度しきい値と称する。
太い破線Dは、前輪速度に目標スリップ速度(25km/h)を加算した値を示している。つまり、破線Dで示される値と実線Aで示される値との差が目標スリップ速度となる。したがって、時点0と時点t1(実線Bと破線Dとが交差する時間)との間においては、目標スリップ速度がスリップ速度のしきい値より小さく、時点t1と時点t2(前輪速度が10km/hとなる時間)との間においては、目標スリップ速度がスリップ速度のしきい値より大きい。
ここで、図9および図10で説明したように、スリップ速度対応トラクション制御において目標スリップ速度がスリップ速度のしきい値以下である場合には、ECU50は、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。したがって、図13の例においては、時点0と時点t1との間においては、ECU50は、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。この場合、後輪速度は破線Dに追従するように変化する。以下、時点0と時点t1との間において破線Dが示す値を第1の後輪速度目標値E1と称する。なお、上述したように、実スリップ速度がスリップ速度のしきい値より大きくなる場合には、後輪速度が一点鎖線Bで示される値より大きくなる。
一方、目標スリップ速度がスリップ速度のしきい値より大きい場合には、ECU50は、実スリップ速度がスリップ速度のしきい値に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。したがって、図13の例においては、時点t1と時点t2との間においては、ECU50は、実スリップ速度がスリップ速度のしきい値に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。この場合、後輪速度は一点鎖線Bに追従するように変化する。以下、時点t1と時点t2との間において一点鎖線Bが示す値を第2の後輪速度目標値E2と称する。
細い破線E3は、前輪速度と目標スリップ率との積を前輪速度に加算した値を示している。つまり、破線E3は、自動二輪車100(後輪111)が目標スリップ率でスリップする場合の後輪速度を示している。したがって、時点t2以降においては、ECU50は、後輪速度が破線E3に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。以下、破線E3で示される値を第3の後輪速度目標値と称する。
図14は、前輪速度、スリップ速度のしきい値、目標スリップ速度、スリップ率のしきい値、および目標スリップ率が図13の関係を持つ場合の後輪速度の変化の一例を示す図である。なお、図14において、太い実線Fは、後輪速度を示す。したがって、実線Fで示される値と実線Aで示される値との差が実スリップ速度となる。
図14に示すように、後輪速度は、自動二輪車100が発進した直後に急激に上昇し、時点t0において後輪速度が第1の後輪速度しきい値Bより大きくなる。すなわち、時点t0において実スリップ速度がスリップ速度のしきい値より大きくなり、スリップ速度対応トラクション制御が開始される。
ここで、時点t0においては、実スリップ速度は急激に増加している。この場合、ステップS88(図10)において差がしきい値より大きいと判別される。したがって、時点t0において、ECU50はステップS90(図10)へ進み、ETV82のスロットル開度を調整するとともに、点火プラグ78による火花点火の時期を遅角させる。これにより、後輪速度は、第1の後輪速度目標値E1へ向かって速やかに低下する。
その後、ECU50は、時点t0と時点t1との間において、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。それにより、時点t0と時点t1との間において、後輪速度は、第1の後輪速度目標値E1に追従するように変化する。
また、ECU50は、時点t1と時点t2との間において、実スリップ速度がスリップ速度のしきい値に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。それにより、時点t1と時点t2との間において、後輪速度は、第2の後輪速度目標値E2に追従するように変化する。
また、時点t2において車速が10km/hとなり、スリップ率対応トラクション制御が開始される。それにより、ECU50は、時点t2以降において、実スリップ率が目標スリップ率(15%)に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する。それにより、時点t2以降において、後輪速度は、第3の後輪速度目標値E3に追従するように変化する。
ここで、スリップ速度対応トラクション制御において、目標スリップ速度がスリップ速度のしきい値を超える場合に、実スリップ速度が目標スリップ速度ではなくスリップ速度のしきい値に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する理由について説明する。
図13および図14に示すように、時点t2において破線Dが示す値は35km/hである。つまり、時点t1と時点t2との間において、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにECU50がエンジン107の出力トルクを調整した場合には、時点t2における後輪速度は約35km/hとなる。また、時点t2において第3の後輪速度目標値E3は、11.5km/hである。つまり、時点t2においては、後輪速度が11.5km/hになるようにエンジン107の出力が調整される。
したがって、時点t1と時点t2との間において、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにECU50がエンジン107の出力トルクを調整した場合には、時点t2において後輪速度が大きく低下する。それにより、運転者は不快感を感じる。
そこで、本実施の形態においては、目標スリップ速度がスリップ速度のしきい値を超える場合には、ECU50は、実スリップ速度がスリップ速度のしきい値に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する(図9のステップS91以降を参照)。それにより、後輪速度は、第2の後輪速度目標値E2を追従するように減速される。したがって、時点t2において、後輪速度が大きく低下することが防止される。その結果、自動二輪車100の走行性が向上する。
また、この場合、図14に示すように、実スリップ速度は徐々に小さくなる。つまり、前輪速度と後輪速度とを徐々に近付けることができるので、中低速時における自動二輪車100の走行性を十分に向上させることができる。
なお、図13および図14の例においては、アクセル開度が50%である場合について説明したが、破線Dが示す値および破線E3が示す値は、アクセル開度に応じて増減する。
図15は、アクセル開度を70%に固定した場合の前輪速度(車速)、スリップ速度のしきい値、目標スリップ速度、スリップ率のしきい値、および目標スリップ率の関係を示す図である。また、図16は、アクセル開度を20%に固定した場合の前輪速度(車速)、スリップ速度のしきい値、目標スリップ速度、スリップ率のしきい値、および目標スリップ率の関係を示す図である。
アクセル開度が70%に固定されている場合、目標スリップ速度データ513(図8)から決定される目標スリップ速度は35km/hとなり、図15に示すように、破線Dが示す値は、図13に比べて増加する。すなわち、第1の後輪速度目標値E1が増加する。
一方、アクセル開度が20%に固定されている場合、目標スリップ速度データ513(図8)から決定される目標スリップ速度は10km/hとなり、図16に示すように、破線Dが示す値は、図13に比べて減少する。すなわち、第1の後輪速度目標値E1が減少する。
このように、本実施の形態においては、運転者がアクセル開度を調整することにより、第1の後輪速度目標値E1を調整することができる。すなわち、スリップ速度対応トラクション制御において、運転者は、アクセル開度を調整することにより、実スリップ速度および後輪速度を任意に調整することができる。
また、アクセル開度が70%に固定されている場合、目標スリップ率データ514(図11)から決定される目標スリップ率は21%となり、図15に示すように、破線E3の傾きは図13に比べて大きくなる。すなわち、車速(前輪速度)の増加量に対する第3の後輪速度値E3の増加率が大きくなる。
一方、アクセル開度が20%に固定されている場合、目標スリップ率データ514(図11)から決定される目標スリップ率は6%となり、図16に示すように、破線E3の傾きは図13に比べて小さくなる。すなわち、車速(前輪速度)の増加量に対する第3の後輪速度E3の増加率が小さくなる。
このように、本実施の形態においては、運転者がアクセル開度を調整することにより、第3の後輪速度目標値E3の傾きを調整することができる。すなわち、スリップ率対応トラクション制御において、運転者は、アクセル開度を調整することにより、実スリップ率および後輪速度を任意に調整することができる。
なお、一点鎖線Bと破線Dとは、図15においては、時点0と時点t1との間の時点t3において交差し、図16においては、時点t1と時点t2との間の時点t4において交差している。
つまり、運転者がアクセル開度を大きくした場合には、スリップ速度対応トラクション制御において、ECU50が目標スリップ速度に基づいてエンジン107の出力トルクを調整する期間は短くなる。一方、運転者がアクセル開度を小さくした場合には、スリップ速度対応トラクション制御において、ECU50が目標スリップ速度に基づいてエンジン107の出力トルクを調整する期間は長くなる。
なお、スリップ速度対応トラクション制御およびスリップ率対応トラクション制御においてエンジン107の出力トルクは0以下に設定されないことが好ましい。この場合、トラクション制御時に後輪111に制動力(エンジンブレーキ)が付与されることが防止されるので、自動二輪車100の走行性が向上する。
(4)上限値の設定方法
上述したように、スリップ速度しきい値データ511(図4)のしきい値、スリップ率しきい値データ512(図5)のしきい値、目標スリップ速度データ513(図8)の目標スリップ速度の上限値、および目標スリップ率データ514(図11)の目標スリップ率の上限値は、設定パネルにより設定することができる。なお、設定パネルは、例えば、ハンドル105(図1)に設けることができる。
図17は、設定パネルの一例を示す図である。
図17の設定パネル600は、スリップ速度設定部700およびスリップ率設定部800を含む。スリップ速度設定部700は、調整つまみK1,K2を含み、スリップ率設定部800は、調整つまみK3,K4を含む。調整つまみK1〜K4にはそれぞれ矢印が付されており、運転者は矢印を所望の位置に合わせることにより以下に説明する調整を行う。
(4−1)スリップ速度のしきい値の調整
調整つまみK1は、スリップ速度設定部700に回動可能に設けられる。運転者は、調整つまみK1を回動させることにより、記憶部51(図3)に記憶されるスリップ速度しきい値データ511(図4)のしきい値を調整することができる。なお、調整つまみK1により調整される値は、車速が0km/hの時のスリップ速度のしきい値である。
図17においては、調整つまみK1の矢印は50を指している。この場合、図4に示すように、スリップ速度しきい値データ511において、車速が0km/hのときのスリップ速度のしきい値が50km/hに設定される。また、例えば、運転者が調整つまみK1の矢印が25を指すように調整つまみK1を回動させた場合には、スリップ速度しきい値データ511において、車速が0km/hのときのスリップ速度のしきい値が25km/hに設定される。
このように、本実施の形態においては、運転者は、調整つまみK1を回動させることにより、スリップ速度のしきい値を任意に調整することができる。したがって、運転者は、路面状況および気象条件等を考慮してスリップ速度のしきい値を調整することができる。それにより、運転者は快適な自動二輪車100の走行を楽しむことができる。
なお、車速が0km/hのときのスリップ速度のしきい値は、例えば、20km/h以上に設定することが好ましい。自動二輪車100の発進時には、図14で示したように、前輪速度に比べて後輪速度が急激に上昇する。そのため、超低速領域においてスリップ速度のしきい値を小さく設定した場合には、自動二輪車100の発進とほぼ同時にトラクション制御が行われることになる。この場合、自動二輪車100の発進とほぼ同時に、エンジン107の出力トルクを低減するための制御が行われるので、エンジン107が停止する場合がある。
一方、超低速領域におけるスリップ速度のしきい値を大きく設定した場合には、後輪速度が十分な速度になるまでエンジン107の出力トルクを低下させるための制御は行われない。したがって、自動二輪車100の発進とほぼ同時にエンジン107の出力トルクが低下されることを防止することができる。それにより、エンジン107が停止することを防止することができる。
なお、スリップ速度対応トラクション制御とスリップ率対応トラクション制御との切り替えが行われる車速(図6のステップS4参照)におけるスリップ速度のしきい値は、下記式(8)により決定される。
しきい値=車速×スリップ率のしきい値・・・(8)
図5の例では、上記切り替えが行われる車速が10km/hで、スリップ率のしきい値が30%である。この場合、図4に示すように、車速が10km/hのときのスリップ速度のしきい値は、3km/hとなる。
(4−2)目標スリップ速度の調整
図17に示すように、調整つまみK2は、スリップ速度設定部700に回動可能に設けられる。運転者は、調整つまみK2を回動させることにより、記憶部51(図3)に記憶される目標スリップ速度データ513(図8)の上限値を調整することができる。
図17においては、調整つまみK2の矢印は50を指している。この場合、目標スリップ速度の上限値は、図8に示すように、50km/hとなる。すなわち、図8の例では、運転者は、0km/hから50km/hの間で目標スリップ速度を調整することができる。
図18は、目標スリップ速度データ513の他の例を示す図である。なお、図18は、運転者が、調整つまみK2(図17)の矢印が25を指すように調整つまみK2を回動させた場合を示している。
図18に示すように、調整つまみK2の矢印が25を指している場合、目標スリップ速度は、図8に示した傾きを維持しつつ上限値が25km/hに制限される。したがって、アクセル開度が50%以上の領域においては、目標スリップ速度は25km/hに固定される。
すなわち、図18の例においては、運転者は、0km/hから25km/hの間で目標スリップ速度を任意に調整することができる。また、運転者がアクセル開度を誤って全開にした場合にも、目標スリップ速度が25km/h以上になることがないので、自動二輪車100(後輪111)が急激にスリップすることを防止することができる。
このように、本実施の形態においては、運転者は、調整つまみK2を回動させることにより、目標スリップ速度の上限値を任意に調整することができる。したがって、運転者は、路面状況および気象条件等を考慮して目標スリップ速度の上限値を調整することができる。それにより、運転者は快適な自動二輪車100の走行を楽しむことができる。
(4−3)スリップ率のしきい値の調整
図17に示すように、調整つまみK3は、スリップ率設定部800に回動可能に設けられる。運転者は、調整つまみK3を回動させることにより、記憶部51(図3)に記憶されるスリップ率しきい値データ512(図5)のしきい値を調整することができる。
図17においては、調整つまみK3の矢印は30を指している。この場合、図5に示すように、スリップ率しきい値データ512において、スリップ率のしきい値が30%に設定される。また、例えば、運転者が調整つまみK3の矢印が15を指すように調整つまみK3を回動させた場合には、スリップ率しきい値データ512においてスリップ率のしきい値が15%に設定される。
このように、本実施の形態においては、運転者は、調整つまみK3を回動させることにより、スリップ率のしきい値を任意に調整することができる。したがって、運転者は、路面状況および気象条件等を考慮してスリップ率のしきい値を調整することができる。それにより、運転者は快適な自動二輪車100の走行を楽しむことができる。
(4−4)目標スリップ率の調整
図17に示すように、調整つまみK4は、スリップ率設定部800に回動可能に設けられる。運転者は、調整つまみK4を回動させることにより、記憶部51(図3)に記憶される目標スリップ率データ514(図11)の上限値を調整することができる。
図17においては、調整つまみK4の矢印は30を指している。この場合、目標スリップ率の上限値は、図11に示すように、30%となる。すなわち、図11の例では、運転者は、アクセル開度を調整することにより、0%から30%の間で目標スリップ率を調整することができる。
図19は、目標スリップ率データ514の他の例を示す図である。なお、図19は、運転者が、調整つまみK4(図17)の矢印が15を指すように調整つまみK4を回動させた場合を示している。
図19に示すように、調整つまみK4の矢印が15を指している場合、目標スリップ率は、図11に示した傾きを維持しつつ上限値が15%に制限される。したがって、アクセル開度が50%以上の領域においては、目標スリップ率は15%に固定される。
すなわち、図19の例においては、運転者は、0%から15%の間で目標スリップ率を任意に調整することができる。また、運転者がアクセル開度を誤って全開にした場合にも、目標スリップ率が15%以上になることがないので、自動二輪車100(後輪111)が大きくスリップすることを防止することができる。
このように、本実施の形態においては、運転者は、調整つまみK4を回動させることにより、目標スリップ率の上限値を任意に調整することができる。したがって、運転者は、路面状況および気象条件等を考慮して目標スリップ率の上限値を調整することができる。それにより、運転者は快適な自動二輪車100の走行を楽しむことができる。
なお、例えば、舗装路面においては、目標スリップ率の上限値は、5〜10%に設定されることが好ましい。この場合、自動二輪車100を容易に加速させることができるとともに、後輪111のタイヤの横方向のグリップ力を十分に確保することができる。それにより、自動二輪車100の操作性が向上する。
(5)本実施の形態の効果
(a)以上のように、本実施の形態においては、低速時に、スリップ速度対応トラクション制御により、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジン107の出力トルクが調整される。
ここで、低速時に、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジン107の出力トルクを調整する理由について説明する。
自動二輪車100の発進時には、後輪速度は急激に上昇するが、前輪速度はほとんど上昇しない。つまり、自動二輪車100の発進時には、前輪104がほぼ停止した状態で後輪111が回転する。
このような状態においては、上記式(4)により算出される実スリップ率は、かなり大きな値で変動する。例えば、後輪速度を3km/hとし、前輪速度を0.1km/hとした場合には、実スリップ率は2900%となる。また、後輪速度を4km/hとし、前輪速度を0.1km/hとした場合には、実スリップ率は3900%となる。
このように、低速時には、後輪速度のわずかな変化により実スリップ率が大幅に変化する。そのため、低速状態において最適な目標スリップ率を決定することは困難である。
また、低速状態において、実スリップ率が目標スリップ率に追従するようにエンジン107を制御した場合、後輪速度の変動幅が大きくなり、運転者が不快感を感じる。
また、上述したように、低速時には、実スリップ率は後輪速度のわずかな変化により大幅に変化する。したがって、低速時に実スリップ率を目標スリップ率に追従させた場合、運転者は、実スリップ速度および後輪速度をアクセル開度の大きさから容易に予想することができない。したがって、自動二輪車100の操作性が低下する。
以上の問題点を解決するため、本実施の形態においては、低速時に、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにトラクション制御を行っている。この場合、運転者は、最適な目標スリップ速度を容易に決定することができるので、自動二輪車100の操作性が向上する。
また、低速時に後輪速度の変動を小さくすることができるので、自動二輪車100の車速を安定させることができる。それにより、低速時に運転者が不快感を感じることを防止することができる。
さらに、運転者は、アクセル開度の大きさに基づいて、後輪速度および実スリップ速度を容易に予想することができる。それにより、自動二輪車100の操作性を十分に向上させることができる。
(b)また、本実施の形態においては、中高速時に、スリップ率対応トラクション制御により実スリップ率が目標スリップ率に追従するようにエンジン107の出力トルクが調整される。ここで、車速が中高速時には、後輪111の最適な実スリップ率は路面状況に応じて決まる。したがって、走行中の路面の状況に応じて目標スリップ率を最適な値にすることにより、自動二輪車100を容易に加速させることができるとともに、後輪111の横方向のグリップ力を十分に確保することができる。その結果、自動二輪車100の操作性を向上させることができる。
(c)以上の結果、車両の速度に応じた適切なトラクション制御を行うことが可能となる。
(d)また、本実施の形態においては、低速時に、スリップ速度対応トラクション制御によりアクセル開度に応じて目標スリップ速度が調整される。したがって、運転者は、低速時には、アクセル開度を調整することにより実スリップ速度を調整することができる。
また、中高速時に、スリップ率対応トラクション制御によりアクセル開度に応じて目標スリップ率が調整される。したがって、運転者は、中高速時に、アクセル開度を調整することにより、実スリップ率を調整することができる。
このように、本実施の形態においては、運転者は、自らの意思で後輪111を滑らせつつ、実スリップ速度および実スリップ率を任意に調整することができる。それにより、運転者は、快適な自動二輪車100の走行を楽しむことができる。
また、運転者が後輪111を意図的に滑らせている場合(ドリフト走行時)に、運転者の意思に反して後輪111のグリップ力が回復することを防止することができる。それにより、自動二輪車100の操作性が向上する。
また、中高速時には、運転者は、アクセル開度を調整することにより、路面状況に応じた実スリップ率で後輪111を滑らせることができる。それにより、自動二輪車100を容易に加速させることができるとともに、後輪111のタイヤの横方向のグリップ力を十分に確保することができる。その結果、自動二輪車100の操作性を向上させることができる。
(e)また、本実施の形態においては、低速時には、実スリップ速度がスリップ速度のしきい値を超えた場合にトラクション制御が開始される。
ここで、上述したように、車速が低速時(例えば、自動二輪車100の発進時)には、後輪111の実スリップ率はかなり大きな値で変動する。また、後輪速度のわずかな変化により実スリップ率は大幅に変化する。そのため、低速状態においては、最適な実スリップ率を見出すことは困難である。
この問題点を本実施の形態に係る制御システム200は解決することができる。本実施の形態においては、低速状態ではスリップ速度のしきい値に基づいてトラクション制御を行うか否かが決定される。ここで、車両の低速時には、最適な実スリップ速度を容易に決定することができる。したがって、上記最適な実スリップ速度に基づいてスリップ速度のしきい値を決定することにより、適切な時点でスリップ速度対応トラクション制御を開始することが可能となる。
(f)また、中高速時には、実スリップ率がスリップ率のしきい値を超えた場合にトラクション制御が開始される。
ここで、中高速には、後輪111の最適な実スリップ率は路面状況に応じて決まる。したがって、走行中の路面の状況に応じてスリップ率のしきい値を最適な値にすることにより、適切な時点でスリップ率対応トラクション制御を開始することが可能となる。
(g)以上の結果、車速に応じた適切なトラクション制御を確実に行うことが可能となる。また、車速に関わらず、自動二輪車100が大きくスリップした場合には後輪111のトラクション制御が迅速に行われる。それにより、自動二輪車100を容易に安定させることができる。
(h)また、スリップ速度対応トラクション制御においては、PIDコントローラ52を用いたフィードバック制御により、実スリップ速度が目標スリップ速度に追従するようにエンジン107の出力トルクが調整される。また、スリップ率対応トラクション制御においては、PIDコントローラ52を用いたフィードバック制御により、実スリップ率が目標スリップ率に追従するようにエンジン107の出力トルクが調整される。
このように、本実施の形態においては、実スリップ速度または実スリップ率が、目標スリップ速度または目標スリップ率に追従するように、エンジン107の出力が調整される。それにより、自動二輪車100の実スリップ速度および実スリップ率と、運転者が要求する目標スリップ速度および目標スリップ率との間に差が生じることを防止することができる。例えば、後輪111が過度にグリップ力を回復した場合には、後輪111のグリップ力が低下するように、エンジン107の出力トルクが調整される。したがって、運転者はより快適な走行を楽しむことができる。
(i)また、本実施の形態においては、目標スリップ速度および目標スリップ率の上限値を調整することができる。したがって、運転者は、熟練度、路面状況、および気象条件等の様々な要素を考慮して目標スリップ速度および目標スリップ率を調整することができる。それにより、自動二輪車の操作性を十分に向上させることができる。
また、上限値を調整することにより、運転者は自動二輪車100のスリップ速度およびスリップ率を容易に予想することができる。それにより、自動二輪車100の操作性がさらに向上する。
(j)また、本実施の形態においては、切替スイッチSW(図1および図2参照)の切替ボタンが押下されていない場合(図4のステップS1参照)には、後輪111のトラクション制御が行われない。したがって、運転者は、切替スイッチSWを操作することにより、後輪111のトラクション制御を行うか否かを任意に選択することができる。この場合、運転者は、熟練度、路面状況、および気象条件等の様々な要素を考慮して切替スイッチSWを操作することができるので、自動二輪車100の操作性がさらに向上する。
(k)また、本実施の形態においては、自動二輪車100の状態がトラクション制御終了条件を満たす場合には、トラクション制御が停止される。
詳細には、トラクション制御中に実スリップ速度(実スリップ率)が目標スリップ速度(目標スリップ率)より小さくかつ目標スロットル開度がアクセル開度(%)より大きくなった場合には、トラクション制御が停止される。
ここで、実スリップ速度(実スリップ率)が目標スリップ速度(目標スリップ率)より小さい場合には、後輪111がある程度のグリップ力を有していると考えられる。その状態で、目標スロットル開度がアクセル開度より大きくなると、自動二輪車100の走行状態は通常の走行状態に近づくと考えられる。そこで、そのような場合には、ECU50によるトラクション制御が停止され、通常の制御が行われる。それにより、自動二輪車100の操作性をさらに向上させることができる。
また、トラクション制御中に、エンジン107の回転速度が所定のしきい値より小さくなった場合には、トラクション制御が停止される。ここで、坂道等において自動二輪車100が発進する際には、エンジン107に大きな負荷ががかかる。それにより、エンジン107の回転速度が低下する。このような状態においてトラクション制御によりスロットル開度が小さくされると、エンジン107の出力が低下し、エンジン107が停止する場合がある。そこで、そのような場合には、ECU50によるトラクション制御が停止され、通常の制御が行われる。それにより、自動二輪車100の操作性をさらに向上させることができる。
(l)また、本実施の形態においては、スリップ速度しきい値データ511、スリップ率しきい値データ512、目標スリップ速度データ513、目標スリップ率データ514および目標スロットル開度マップ515を用いてトラクション制御を行っている。この場合、目的の数値を容易に算出することができるので、ECU50の処理時間を短縮することができる。それにより、自動二輪車100のトラクション制御を迅速に行うことができ、走行性がさらに向上する。
(m)また、本実施の形態においては、スリップ速度のしきい値は、車速の増加に従って低下するように設定されている。それにより、車速に応じた適切なトラクション制御を行うことができる。その結果、自動二輪車100の操作性を確実に向上させることができる。
(6)他の実施の形態
(6−1)車速の検出
上記においては、前輪速度センサSE1の検出値に基づいて車速を検出しているが、GPS(Global Positioning System)を利用した速度検出センサを用いて自動二輪車100の車速を検出してもよい。また、自動二輪車100に加速度センサを設け、その加速度センサにより自動二輪車100の加速度を検出してもよい。この場合、その加速度センサにより検出された加速度をECU50において積分することにより、自動二輪車100の車速を算出することができる。
(6−2)エンジンの出力トルクの調整
図10のステップS89およびステップS90においては、ETV82のスロットル開度を調整することにより、エンジン107の出力トルクを調整しているが、混合気の点火停止または燃料供給停止等によりエンジン107の出力トルクを調整してもよい。
また、上記ステップS90においては、火花点火の時期を遅角させることにより、エンジン107の出力トルクを低下させているが、他の方法によりエンジン107の出力トルクを低下させてもよい。例えば、ピストン72(図2)が上死点に位置するときに火花点火を行うことにより、エンジン107の出力トルクを低下させてもよい。この場合、エンジン107の出力トルクを容易かつ確実に低下させることができる。
(6−3)実スリップ率の算出
実スリップ率は、下記式(9)により算出してもよい。
実スリップ率=実スリップ速度÷後輪速度×100・・・(9)
この場合、ステップS173(図12)における目標スリップ速度は、下記式(10)により算出される。
目標スリップ速度=目標スリップ率×後輪速度÷100・・・(10)
(6−4)しきい値、目標スリップ速度、目標スリップ率、および目標スロットル開度の算出
スリップ速度しきい値データ511の代わりにスリップ速度のしきい値と車速との関係を示す関数を用いてもよく、スリップ率しきい値データ512の代わりにスリップ率のしきい値と車速との関係を示す関数を用いてもよい。
また、目標スリップ速度データ513の代わりに目標スリップ速度と車速との関係を示す関数を用いてもよく、目標スリップ率データ514の代わりに目標スリップ率と車速との関係を示す関数を用いてもよい。
また、目標スロットル開度マップ515の代わりにエンジン107の回転速度、ETV82のスロットル開度およびエンジン107の出力トルクの関係を示す関数を用いてもよい。
(6−5)設定パネル
上記においては、4つの調整つまみK1〜K4を備える設定パネル600について説明したが、設定パネルが他の構成を有してもよい。
図20は、設定パネルの他の例を示す図である。
図20の設定パネル601が図17の設定パネル600と異なるのは以下の点である。
図20の設定パネル601は、スリップ速度設定部701およびスリップ率設定部801を含む。スリップ速度設定部701は、調整ボタンB1、しきい値表示部D1、調整ボタンB2、調整つまみK2、および最大値表示部D2を含む。また、スリップ率設定部801は、調整ボタンB3、しきい値表示部D3、調整ボタンB4、調整つまみK4、および最大値表示部D4を含む。
しきい値表示部D1には、スリップ速度のしきい値が表示される。運転者は、調整ボタンB1を操作することにより、しきい値表示部D1に表示されるスリップ速度のしきい値を調整することができる。
最大値表示部D2には、目標スリップ速度の上限値の最大値が表示される。運転者は、調整ボタンB2を操作することにより、目標スリップ速度の上限値の最大値を調整することができる。例えば、運転者が調整ボタンB2を操作して最大値表示部D2に表示される値を30にした場合には、図8の目標スリップ速度データ513の目標スリップ速度の最大値(アクセル開度が100%のときの目標スリップ速度)が30km/hになる。
すなわち、運転者は、調整ボタンB2を操作することにより、図8に示した目標スリップ速度の傾きを調整することができる。それにより、自動二輪車100の操作性をさらに向上させることができる。なお、スリップ速度の上限値の調整は、設定パネル600と同様に、調整つまみK2を用いて行われる。
しきい値表示部D3には、スリップ率のしきい値が表示される。運転者は、調整ボタンB3を操作することにより、しきい値表示D2に表示されるスリップ率のしきい値を調整することができる。
最大値表示部D4には、目標スリップ率の上限値の最大値が表示される。運転者は、調整ボタンB4を操作することにより、目標スリップ率の上限値の最大値を調整することができる。例えば、運転者が調整ボタンB4を操作して最大値表示部D4に表示される値を15にした場合には、図11の目標スリップ率データ514の目標スリップ率の最大値(アクセル開度が100%のときの目標スリップ率)が15%になる。
すなわち、運転者は、調整ボタンB4を操作することにより、図11に示した目標スリップ率の傾きを調整することができる。それにより、自動二輪車100の操作性をさらに向上させることができる。なお、スリップ率の上限値の調整は、設定パネル600と同様に、調整つまみK4を用いて行われる。
(6−6)他の車両への適用
上記の説明においては、制御システム200を備えた自動二輪車100について説明したが、制御システム200を自動三輪車および自動四輪車等の他の車両に設けてもよい。この場合、アクセルグリップ106の代わりにアクセルペダル等の他のアクセレレータにより目標スリップ速度および目標スリップ率を調整してもよい。
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記実施の形態では、後輪111が駆動輪の例であり、ECU50がスリップ速度検出部、スリップ率検出部、エンジン出力調整部の例であり、実スリップ速度がスリップ速度の例であり、実スリップ率がスリップ率の例であり、スリップ速度対応トラクション制御が第1のトラクション制御の例であり、スリップ率対応トラクション制御が第2のトラクション制御の例であり、スリップ速度のしきい値が第1のしきい値の例であり、スリップ率のしきい値が第2のしきい値の例であり、アクセルグリップ106がアクセレレータの例であり、ECU50が目標スリップ量設定部の例であり、設定パネル600,601が上限値設定部の例であり、ETV82がスロットルバルブの例であり、エンジン回転速度センサSE3がエンジン回転速度検出部の例であり、目標スロットル開度マップ515が情報の例であり、エンジン107の回転速度、ETV82のスロットル開度およびエンジン107の出力トルクの関係を示す関数が情報の例であり、切替スイッチSWが作動スイッチの例であり、後輪ドリブンスプロケット112、ドライブシャフト115、後輪ドライブスプロケット116およびチェーン117が駆動力伝達手段の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
本発明は種々の車両のトラクション制御に有効に用いることができる。
自動二輪車を示す概略側面図である。 制御システムの構成を示す模式図である。 記憶部の記憶内容を示す概念図である。 スリップ速度しきい値データの一例を示す図である。 スリップ率しきい値データの一例を示す図である。 ECUの制御動作の一例を示すフローチャートである。 ECUの制御動作の一例を示すフローチャートである。 目標スリップ速度データの一例を示す図である。 スリップ速度対応トラクション制御におけるECUの制御動作の一例を示すフローチャートである。 スリップ速度対応トラクション制御におけるECUの制御動作の一例を示すフローチャートである。 目標スリップ率データの一例を示す図である。 スリップ率対応トラクション制御におけるECUの制御動作の一例を示すフローチャートである。 前輪速度(車速)、スリップ速度のしきい値、目標スリップ速度、スリップ率のしきい値、および目標スリップ率の関係を説明するための図である。 後輪速度の変化の一例を示す図である。 アクセル開度を70%に固定した場合の前輪速度(車速)、スリップ速度のしきい値、目標スリップ速度、スリップ率のしきい値、および目標スリップ率の関係を示す図である。 アクセル開度を20%に固定した場合の前輪速度(車速)、スリップ速度のしきい値、目標スリップ速度、スリップ率のしきい値、および目標スリップ率の関係を示す図である。 設定パネルの一例を示す図である。 目標スリップ速度データの他の例を示す図である。 目標スリップ率データの他の例を示す図である。 設定パネルの他の例を示す図である。
符号の説明
50 ECU
51 記憶部
52 PIDコントローラ
82 ETV
100 自動二輪車
104 前輪
106 アクセルグリップ
107 エンジン
111 後輪
112 後輪ドリブンスプロケット
115 ドライブシャフト
116 後輪ドライブスプロケット
117 チェーン
511 スリップ速度しきい値データ
512 スリップ率しきい値データ
513 目標スリップ速度データ
514 目標スリップ率データ
515 目標スロットル開度マップ
600,601 設定パネル
SE1 前輪速度センサ
SE2 アクセル開度センサ
SE3 エンジン回転速度センサ
SE4 後輪速度センサ
SW 切替スイッチ

Claims (13)

  1. 駆動輪およびエンジンを備える車両において前記駆動輪のトラクション制御を行う制御システムであって、
    前記駆動輪の周速度と前記車両の車体速度との差から得られるスリップ速度を検出するスリップ速度検出部と、
    前記スリップ速度と前記駆動輪の周速度または前記車体速度との比から得られるスリップ率を検出するスリップ率検出部と、
    前記エンジンの出力を調整するエンジン出力調整部とを備え、
    前記エンジン出力調整部は、
    前記車体速度が所定速度以下である場合には、前記スリップ速度検出部により検出されるスリップ速度に応じて前記エンジンの出力を調整する第1のトラクション制御を行い、
    前記車体速度が所定速度より大きい場合には、前記スリップ率検出部により検出されるスリップ率に応じて前記エンジンの出力を調整する第2のトラクション制御を行うことを特徴とする制御システム。
  2. 前記エンジン出力調整部は、
    前記第1のトラクション制御において前記スリップ速度検出部により検出されるスリップ速度が目標スリップ速度に追従するように前記エンジンの出力を調整し、
    前記第2のトラクション制御において前記スリップ率検出部により検出されるスリップ率が目標スリップ率に追従するように前記エンジンの出力を調整することを特徴とする請求項1記載の制御システム。
  3. 前記エンジン出力調整部は、そのエンジン出力調整部の作動後でかつ前記車体速度が所定速度以下である場合に前記スリップ速度検出部により検出されるスリップ速度が第1のしきい値を最初に超えた時点、および前記エンジン出力調整部の作動後でかつ前記車体速度が前記所定速度より大きい場合に前記スリップ率検出部により検出されるスリップ率が第2のしきい値を最初に超えた時点のうち先行する時点で前記第1または第2のトラクション制御を開始することを特徴とする請求項2記載の制御システム。
  4. 前記第1のしきい値は、前記車体速度が0のときに最大となるように前記車体速度に応じて変化することを特徴とする請求項3記載の制御システム。
  5. 前記第1のしきい値は、前記車体速度の増加に従って低下することを特徴とする請求項4記載の制御システム。
  6. 前記エンジン出力調整部は、前記第1のトラクション制御において、前記目標スリップ速度が前記第1のしきい値より大きい場合には、前記スリップ速度検出部により検出されるスリップ速度が前記第1のしきい値に追従するように前記エンジンの出力を調整することを特徴とする請求項5記載の制御システム。
  7. 運転者のアクセル操作量に応じて決定されるスリップ速度およびスリップ率を前記目標スリップ速度および前記目標スリップ率として設定する目標スリップ量設定部とをさらに備えることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の制御システム。
  8. 前記目標スリップ量設定部により設定可能な前記目標スリップ速度および前記目標スリップ率の上限値を設定する上限値設定部をさらに備えることを特徴とする請求項7記載の制御システム。
  9. 前記エンジン内に供給される空気量を調整するスロットルバルブと、
    前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出部と、
    前記エンジンの回転速度、前記エンジンの出力および前記スロットルバルブの開度の関係を示す情報を記憶する記憶部とをさらに備え、
    前記エンジン出力調整部は、前記エンジン回転速度検出部により検出される回転速度および前記記憶部に記憶される前記情報に基づいて前記スロットルバルブの開度を調整することにより前記エンジンの出力を調整することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の制御システム。
  10. 前記エンジン出力調整部を作動させる作動スイッチをさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の制御システム。
  11. 前記エンジン出力調整部は、前記第1および第2のトラクション制御において前記エンジンの出力トルクを0以下にしないことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の制御システム。
  12. 駆動輪およびエンジンを備える車両において前記駆動輪のトラクション制御を行う制御システムであって、
    前記駆動輪の周速度と前記車両の車体速度との差から得られるスリップ速度を検出するスリップ速度検出部と、
    前記スリップ速度と前記駆動輪の周速度または前記車体速度との比から得られるスリップ率を検出するスリップ率検出部と、
    前記駆動輪の前記スリップ速度または前記スリップ率に応じて前記エンジンの出力を調整するエンジン出力調整部とを備え、
    前記エンジン出力調整部は、そのエンジン出力調整部の作動後でかつ前記車体速度が所定速度以下である場合に前記スリップ速度検出部により検出されるスリップ速度が第1のしきい値を最初に超えた時点、および前記エンジン出力調整部の作動後でかつ前記車体速度が前記所定速度より大きい場合に前記スリップ率検出部により検出されるスリップ率が第2のしきい値を最初に超えた時点のうち先行する時点で前記トラクション制御を開始することを特徴とする制御システム。
  13. 駆動輪と、
    前記駆動輪を回転させるための駆動力を発生するエンジンと、
    前記エンジンにより発生された駆動力を前記駆動輪へ伝達するための駆動力伝達手段と、
    請求項1〜12のいずれかに記載の制御システムとを備えたことを特徴とする車両。
JP2007258011A 2006-10-06 2007-10-01 制御システムおよびそれを備えた車両 Pending JP2008111430A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007258011A JP2008111430A (ja) 2006-10-06 2007-10-01 制御システムおよびそれを備えた車両

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006275622 2006-10-06
JP2007258011A JP2008111430A (ja) 2006-10-06 2007-10-01 制御システムおよびそれを備えた車両

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008111430A true JP2008111430A (ja) 2008-05-15

Family

ID=39444064

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007258011A Pending JP2008111430A (ja) 2006-10-06 2007-10-01 制御システムおよびそれを備えた車両

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2008111430A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010031850A (ja) * 2008-06-26 2010-02-12 Kawasaki Heavy Ind Ltd 車両用スリップ抑制制御装置
WO2011070941A1 (ja) * 2009-12-10 2011-06-16 ヤマハ発動機株式会社 自動二輪車
GB2486072A (en) * 2010-12-02 2012-06-06 Land Rover Uk Ltd A control method that allows for processing time delays
JP2013209047A (ja) * 2012-03-30 2013-10-10 Honda Motor Co Ltd 自動二輪車用トラクション制御装置
JP2015090118A (ja) * 2013-11-06 2015-05-11 スズキ株式会社 トラクション制御装置
US9233672B2 (en) 2009-12-28 2016-01-12 Kawasaki Jukogyo Kabushiki Kaisha Control system in vehicle and method of controlling vehicle
WO2016190201A1 (ja) * 2015-05-22 2016-12-01 株式会社アドヴィックス 車両用制御装置
JP2021094876A (ja) * 2019-12-13 2021-06-24 トヨタ自動車株式会社 車両

Cited By (19)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010031850A (ja) * 2008-06-26 2010-02-12 Kawasaki Heavy Ind Ltd 車両用スリップ抑制制御装置
JP5314767B2 (ja) * 2009-12-10 2013-10-16 ヤマハ発動機株式会社 自動二輪車
WO2011070941A1 (ja) * 2009-12-10 2011-06-16 ヤマハ発動機株式会社 自動二輪車
US8909451B2 (en) 2009-12-10 2014-12-09 Yamaha Hatsudoki Kabushiki Kaisha Motorcycle including traction control
US9233672B2 (en) 2009-12-28 2016-01-12 Kawasaki Jukogyo Kabushiki Kaisha Control system in vehicle and method of controlling vehicle
GB2486072B (en) * 2010-12-02 2013-12-04 Land Rover Uk Ltd Control method and apparatus for a vehicle
GB2486072A (en) * 2010-12-02 2012-06-06 Land Rover Uk Ltd A control method that allows for processing time delays
JP2013209047A (ja) * 2012-03-30 2013-10-10 Honda Motor Co Ltd 自動二輪車用トラクション制御装置
JP2015090118A (ja) * 2013-11-06 2015-05-11 スズキ株式会社 トラクション制御装置
CN107531237A (zh) * 2015-05-22 2018-01-02 株式会社爱德克斯 车辆控制设备
JP2016215902A (ja) * 2015-05-22 2016-12-22 株式会社アドヴィックス 車両用制御装置
WO2016190201A1 (ja) * 2015-05-22 2016-12-01 株式会社アドヴィックス 車両用制御装置
CN107531237B (zh) * 2015-05-22 2020-06-23 株式会社爱德克斯 车辆控制设备
US11091033B2 (en) 2015-05-22 2021-08-17 Advics Co., Ltd. Vehicle control apparatus
JP2021094876A (ja) * 2019-12-13 2021-06-24 トヨタ自動車株式会社 車両
CN113060128A (zh) * 2019-12-13 2021-07-02 丰田自动车株式会社 车辆
JP7264036B2 (ja) 2019-12-13 2023-04-25 トヨタ自動車株式会社 車両
US11667276B2 (en) 2019-12-13 2023-06-06 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Vehicle
CN113060128B (zh) * 2019-12-13 2024-05-17 丰田自动车株式会社 车辆

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7753156B2 (en) Control system and vehicle including the same
JP2008111430A (ja) 制御システムおよびそれを備えた車両
US10336329B2 (en) Saddled vehicle
JP6049772B2 (ja) 自動二輪車の変速機制御装置
JP5041974B2 (ja) 制御システムおよび車両
JP5779325B2 (ja) 車両用減速制御装置
JP5075021B2 (ja) 乗物
JP2008095635A (ja) 駆動力制御装置
JP2009154713A (ja) 鞍乗型車両用の制御装置および鞍乗型車両
JP2012026286A (ja) 車両の制御装置
US9487261B2 (en) Straddle type vehicle with liquid crystal display device
EP3800381B1 (en) Quickshifter-equipped vehicle control unit and quickshifter-equipped motorcycle
JP2008144756A (ja) 制御システムおよびそれを備えた車両
JP5386273B2 (ja) 鞍乗型乗物用エンジン制御装置
WO2013175680A1 (ja) 車両
JP6593734B2 (ja) 車両の制御装置
JP2010058560A (ja) 制御システムおよび車両
JP2008111426A (ja) 制御システムおよびそれを備えた鞍乗り型車両
WO2017029693A1 (ja) 車両走行制御方法及び車両走行制御装置
JP6398948B2 (ja) 四輪駆動車両の制御装置
JP5107184B2 (ja) 制御システムおよび車両
JP2009257270A (ja) 鞍乗型車両
JP2009150513A (ja) 動力伝達装置の制御装置
JP2009287480A (ja) 走行制御装置及び乗物
US20240182008A1 (en) Vehicle Wheel Slip Control Device and Method