請求項1に記載の発明の冷蔵庫は、区画された貯蔵室を有する断熱箱体と、液体を噴霧する噴霧部とを有する水補給装置とを備え、水補給装置によって、貯蔵室の内部に収納された食品の内部に強制的に水分を補給するものである。食品の水分含有量を向上させることにより、冷蔵庫の貯蔵室に収納されている食品の水分含有量を向上させることができる。
請求項2に記載の発明の冷蔵庫は、請求項1に記載の発明の断熱箱体が液体を保持する貯留水保持部を備えるものである。水補給装置への安定供給と水量の確保が可能となり生成された水を貯留することにより、一定量の貯留水を予め貯めておくことができるので、ミスト噴霧装置に任意のタイミングで水を補給することが可能となる。これによって、貯蔵室内の内部に収納された野菜や果物に安定してミストを噴霧することができ、必要に応じて随時食品の内部に強制的に水分を補給することで食品の水分含有量を向上させることにより、冷蔵庫の貯蔵室に収納されている食品の水分含有量を向上させることができる。
請求項3に記載の発明の冷蔵庫は、請求項2に記載の発明の貯留水保持部が貯水槽を備え、貯水槽内に外部から供給された貯留水が保持されるものである。これによって貯蔵室内の内部に収納された食品が多数の場合でも十分な量の水分補給を行うことができ、冷蔵庫の貯蔵室に収納されている食品の水分含有量を向上させることができる。
請求項4に記載の発明の冷蔵庫は、請求項3に記載の発明の貯留水保持部が保水装置を備え、貯蔵室内の空気内に含まれている水分を抽出して保持された貯留水が、保水装置内に保持されるものである。これによって使用者が外部から水を補給しなくても貯蔵室内の内部に収納された食品に水分補給を行うことができ、冷蔵庫の貯蔵室に収納されている食品の水分含有量を向上させることができる。
請求項5に記載の発明の冷蔵庫は、請求項1に記載の発明の水分補給装置が有するミストを形成する噴霧部が、ミストが放出される部分である噴霧口を有し、少なくとも噴霧口は貯蔵室内に設けられるものである。野菜が収納されている貯蔵室に対して直接的にミスト粒子を噴霧することができ、噴霧口と野菜との距離をより縮めることができ、例えば貯蔵室外でミストを噴霧してから貯蔵室内へ送り込む場合と比較して、ミスト粒子の気化を防ぐとともに、浮遊状態における流速を高めることができるので、野菜表面へのミストの付着率をより高めることができる。
請求項6に記載の発明の冷蔵庫は、請求項1に記載の発明の貯蔵室内が光を照射する照射部を備え、貯蔵室内に収納された食品に、照射部によって光を照射した上で、水補給装置によって貯蔵室の内部に収納された食品の内部に強制的に水分を補給するものである。食品の水分含有量を向上させることにより、発生したミストは光照射によって開孔した野菜や果物等の食品の表面の気孔から、食品の内部に浸透することとなり、食品内に水を補給するための気孔の開孔面積をより大きくし、積極的に水分を補給することができる。
請求項7に記載の発明の冷蔵庫は、請求項1または6に記載の発明の噴霧部が粒子径0.003〜20μmのミストを発生するものである。これによって、発生したミストは食品表面組織の間隙や光を照射することによって拡大した野菜表面の気孔や間隙を通過することができるので、光照射を行わない場合と比較して、より大きい粒子径を用いても、食品の内部に円滑に浸透することができ、食品中の水分含有量を向上することができる。
請求項8に記載の発明の冷蔵庫は、請求項1または6に記載の発明の噴霧部から発生するミスト噴霧量が0.0007〜0.14g/h・lである。これによって、光照射を行わない場合と比べて野菜表面の気孔がより大きく開くことで、より多くの水分を野菜内部へ浸透させることが可能となり、光を照射した場合には、光照射を行わない場合と比べてより多くの噴霧量のミストを発生しても、野菜等が水腐れ等をおこさない適切な噴霧量のミストを供給することができ、食品中の水分含有量を向上することができる。
請求項9に記載の発明の冷蔵庫は、請求項1または6に記載の発明の貯蔵室の第1の区画内に収納された食品が青果物であることにより、発生したミストは光照射によって開孔した青果物表面の気孔から、青果物の内部に浸透することとなり、青果物内に水を補給するための開孔面積をより大きくし、より水分不足によって品質が劣化しやすい青果物内に積極的に水分を補給することができる。
請求項10に記載の発明の冷蔵庫は、請求項6に記載の発明の照射部が発光波長400〜500nmの青色光を含む光を照射するものである。これによって、野菜の気孔を開かせることができるので、青果物内に積極的に水分を補給することができる。
請求項11に記載の発明の冷蔵庫は、請求項6に記載の発明の照射部が、光量子束密度が0.1〜100μmol/m2/sの光を照射するものである。これによって、野菜の気孔を開かせることができるので、青果物内に積極的に水分を補給することができる。
請求項12に記載の発明の冷蔵庫は、請求項6に記載の発明の冷蔵庫が制御部を有し、前記制御部は、前記照射部による光照射時の雰囲気温度を5℃以上15℃以下に保持するものである。これによって、この温度帯で光を照射することにより、野菜の呼吸作用を効果的に働かせることができるので、青果物内に積極的に水分を補給することができる。
請求項13に記載の発明の冷蔵庫は、請求項1に記載の発明の機能性成分を、貯留水に溶解または分散させたものをミストにして噴霧することができる。機能成分の噴霧により、野菜等の栄養成分含有量を向上することができる。
請求項14に記載の発明の冷蔵庫は、請求項13に記載の発明の機能成分を抗酸化剤とすることで、酸化され栄養価や品質低下要因となる種々の栄養成分の酸化を防止することができる。また、オゾン水や酸性水あるいはアルカリ水などの機能水を噴霧しても良い。野菜や果物表面の微細な孔に機能水ミストが入り込むと、微細な孔の内部の汚れや農薬等の有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることができる。
請求項15に記載の発明の冷蔵庫は、請求項1または6または13に記載の発明の冷蔵庫のドア面の一部に水補給装置を動作させるためのスイッチを設け、スイッチの入力によって水補給装置が動作開始し、ミストを噴霧する。これによって、ミスト噴霧する必要がある場合のみ使用者のスイッチ操作により動作させることができ、また入れたい野菜に限定して使用することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の側断面図である。図2は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の水収集部近傍の正面図である。図3は本発明の実施の形態1における水補給装置の側断面図である。図4は本発明の実施の形態1における水補給装置の平面断面図である。図5Aは本発明の実施の形態1のミスト噴霧中、光を照射したものにおけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの粒子径に対する特性図である。図5Bは本発明の実施の形態1のミスト噴霧中、光を照射なしで実験したものにおけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミストの粒子径に対する特性図である。図6は本発明の実施の形態1におけるやや萎れかけた野菜の水分含有量復元効果のミスト噴霧量に対する特性及び、ミスト噴霧量に対する野菜の外観官能評価値を示した図である。図7は本発明の実施の形態1における野菜の気孔部の顕微鏡観察を示す図ある。図8は本発明の実施の形態1における青色光誘導性の気孔開孔の作用スペクトル図である。図9は本発明の実施の形態1における照射部の波長と気孔開度の特性図である。
実施の形態1において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られており、野菜室114は湿度約90%R.H以上(食品収納時)4〜6℃に冷却されている。
野菜室114には、野菜や果物を貯蔵するため野菜容器151が収納される。冷蔵庫外郭には野菜容器151を保持、または扉開閉時に容器も可動できるようにレール部材152が構成されている。また、これとは別に、野菜室114内には、野菜容器151とは仕切られた第1の区画に特定容器153が収納される。また、光透過性のある素材からなる透明で一部に孔の開いた蓋154は、その特定容器153を野菜室114の扉閉時にのみほぼ密閉している。
さらに仕切り板116には、特定波長を特定容器内に照射するための照射部130と、容器内を均一に照射し、かつ、光源をカバーするための拡散板131が備えられる。
照射部130は、特定容器153上方の投影面に設置され、容器内を透明な蓋154を通して照射している。奥側上方には噴霧部123である超音波装置が仕切り部116に取り付けられている。さらに、噴霧部123近辺の特定容器153の蓋154は噴霧部123の外形寸法より若干大きめの噴霧口157が設けられている。
冷蔵室112の背面には、製氷用貯水タンク119が備えられ、製氷用貯水タンク119からは給水経路120が、製氷室(図示せず)と野菜室114とに導かれて、水を供給している。野菜室114の上部天面には水補給装置121が備えられている。水補給装置121は、水を貯留する貯留水保持部である貯水槽122と、噴霧部123と、噴霧部123によって発生したミストを野菜室114内に送風する送風部129を有する。また、水補給装置121の外部一画には照射部130が備えられている。また、噴霧部123は、貯水槽122の内部に位置して水を超音波方式で霧化する超音波素子125と、所定粒径以下のミストのみを透過する金属メッシュ126を具備している。また、貯水槽122内の貯留水124は、給水経路120を介して供給され、貯水槽122内に貯留されている。また、野菜室114内の第1の区画の特定容器153の一角には、庫内の温度を検知する温度センサー133が備えられている。
尚、ミストとは、細かく***し超微粒子状態となった水のことを言い、その粒子径は目に見える数μmから目には見えない数nmまで含まれ、性質は液体の性質を持っている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト生成装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、製氷用貯水タンク119内に貯留された水が給水経路120を経由して、貯水槽122内に供給され,貯留水124として貯留される。次に温度センサー133が庫内温度を5℃以上であると検知した場合、照射部130が点灯し、野菜室114内に保存されている野菜や果物に光が照射される。照射部130は、たとえば青色LEDなどで、中心波長が470nmの青色光を含む光を照射する。この時照射される青色光の光量子は約1μmol/m2/sの微弱な光で十分である。微弱な青色光が野菜や果物に照射されると、表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、開孔する。
次に水補給装置121の運転が開始される。運転の開始には、使用者が冷蔵庫100の扉の一角に設けたミストを噴霧させるためのスイッチ139により操作を行う。例えば、収納食品によって動作に選択性を持たせることによって、使用者の意思で区画に液体を噴霧することができる。そして、動作実行信号が冷蔵庫100に組み込まれた制御基板(図示しない)での信号処理により、まず、貯留水124は噴霧部123に含まれる超音波素子125によってミスト噴霧を開始する。霧化されたミストのうち、野菜の気孔開孔部の直径よりも小さく設定された所定粒子径以下の微細ミストのみが金属メッシュ126から噴霧されると、貯水槽122内は、野菜の気孔開孔部の直径よりも小さい粒子径のミストが充満した状態となる。貯水槽122内の微細ミストは送風部129によって野菜室114内の第1の区画の特定容器153内にミストとなって噴霧される。噴霧された微細ミストは、野菜室114内の第1の区画の特定容器153で気孔が開孔した状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を介して組織内に浸透する。その結果、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、野菜や果物はシャキッとした状態に復帰する。
ここで、温度検知により光の照射制御を行っているのは、貯蔵されている野菜が0℃近辺の低温で気孔を開孔した場合には、野菜の低温障害を促進してしまい、野菜を傷めることになる。また、15℃以上だと呼吸による野菜表面からの蒸散が盛んになり、水分量が減少しやすくなるからである。そこで、野菜室114に設けた温度センサー133が、例えば2℃〜15℃の範囲を検知した時にのみ照射部をONするようにすれば、効率的に鮮度維持、水分量向上ができる。
また、例えば、野菜室144の温度センサー133が5℃以上、湿度センサー(図示しない)が95%以上であると検知した場合、照射部130が点灯する。照射部130は、例えば青色LEDや青色光のみを透過する材料で覆われたランプなどである。微弱な青色光が野菜や果物に照射されると、野菜や果物の表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、通常の状態に比べて、大きく気孔を開孔する。
つまり、照射される青色光は野菜の気孔開度を制御するものであり、その波長は図8の青色光誘導性の気孔開孔の作用スペクトル、に示すように400nm〜500nmが望ましい。中心波長が440nmもしくは470nmの照射光を使用したときその相対効果が特に高くなる。なかでも、青色LEDを用いれば安価でかつ低入力で光照射でき、貯蔵室内への熱影響を低減することができる。
また、光の強さを表す光量子束密度は、0.1μmol・m−2・s−1〜100μmol・m−2・s−1が望まれる。特に野菜は光刺激によりその気孔を開閉するが、光量子束密度は0.1μmol・m−2・s−1程度あれば光刺激に反応する。また、それ以上の光量子束密度であれば気孔は開孔するが、100μmol・m−2・s−1を超えると光合成が活発になるため、野菜表面からの蒸散が激しくなり保鮮性が損なわれる。実際には、容器内の照度分布と野菜の積み重ね等を考慮すれば、照射部130の光量子束密度は1μmol・m−2・s−1程度に設定されることが望ましい。
噴霧部123(超音波装置)より発生した微細ミストは、野菜室114内の第1の区画の特定容器153内に噴霧される。噴霧されたミストは青色光によって制御された気孔開孔状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔を経て組織内に浸透する。それにより、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキットした状態に復帰する。
なお、野菜の気孔は、波長が500nm〜700nmの赤色光を含んだ光でもその気孔を開閉することができる。ただし、図9に示すように、赤色光の場合には、500μmol・m−2・s−1の光量子束密度にしても、青色光1μmol・m−2・s−1の効果に劣る結果であった。
以上のように、本実施の形態1の冷蔵庫は、野菜室内に保存中の野菜に対し、照射部によって、特定の波長を選択した光を照射し、且つミスト噴霧装置にて気孔を通過できる微細ミストを適量噴霧する。これにより、開孔した野菜表面の気孔より、ミストが野菜内部に浸透することとなり、野菜の水分含有量を向上し、野菜のみずみずしさを保持することができる。
また、本実施の形態の仕切りに照射部と水補給装置を取り付けることにより、組み立て効率が向上し、また電源回路などの配線を簡易にできる。
また、本実施の形態では、0.1〜100μmol/m−2/s−1の青色光を照射することにより、微弱な光照射によって、光合成活動を低く、一方で、気孔開孔率を高くすることが出来る。その結果、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開孔した、気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することができる。また、青色光を含む400nm〜500nmの波長を選択することにより、光量子束密度を抑えることができ、またLEDなども適用可能となり省エネ効果や低価格化にも繋げることができる。
次に本実施の形態の検証方法について説明する。
図5A及び5Bは、やや萎れかけた野菜における、水分含有量の復元効果のミストの粒子径に対する特性を示した図である。萎れかけ野菜の再現方法としては以下の方法を用いた。
店頭での購入状態に対して、重量が約10%減少するまで所定時間放置したものを、萎れかけ野菜とした。野菜は収穫時から約15%重量減少すれば、見かけが悪くなり、また、細胞組織も元に戻らない。収穫時の野菜に対して、流通の段階での重量減少は5%程度である。5%程度の水分減少であれば、使用者は官能的に見て見かけ上の問題ないものと判断する。しかし、10%程度の重量減少が生じると、使用者は官能的に見て、外観上、萎れかけた野菜と感じるようになる。以上のことから、店頭での購入状態に対して、重量が約10%減少した状態を初期値と定めた。
以下、実験方法を説明する。
上記の処理をした野菜を70リットルの野菜室(約6℃)に保存し、種々の粒子径のミストを約24時間噴霧した。その後、取り出して重量測定を行い、重量が初期に対し、どれくらい復元したかを評価した。
図5Aは、ミスト噴霧中に光(青色LED)を1μmol/m2/sの強度で照射した実験の結果である。一方、図5Bは、光照射なしでミスト噴霧した実験の結果である。
この実験では、官能的な評価により水分含有量復元率が50%以上のものが「食べられる」と判定し、70%以上は「十分においしく食べられる」と判定した。
図5Aより、光照射をした場合、野菜の水分含有量の復元効果は噴霧するミスト粒子径に依存し、一定の最適粒子径範囲が観察された。最適粒子径は野菜の水分含有量の復元効果が50%以上となる0.005〜20μmの範囲であった。 噴霧する粒子径が20μm以上と大きい場合、水粒子が大きすぎて、ミストが均一に噴霧できなかった。これは、ミスト径が比較的大きいとその自重ですぐに容器の底面に落下してしまうためミストの拡散性が十分に得られないからだと考えられる。また、図7に示すように気孔径は最大20μm程度と考えられ、それ以上のミストでは、水粒子が大きすぎて、野菜の内部まで入り込みにくいものと考えられる。
一方、0.005μm以下の超微粒子では粒子が非常に小さいため、開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できない。以上の要因により、0.005μm以下の場合に復元効果が十分得られなかったものと考えられる。
また、野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる範囲は0.008〜10μmの範囲であった。このように、実験の結果によると1μm以上では、粒子径が細かいほうが噴霧の均一性が向上し、また噴霧距離、空気中の滞在時間が延びる。従って、1μm以上では、粒子径が細かいほど野菜表面に付着する確率が高くなり、水分含有量復元率が向上することがわかった。また、10μm以下では、より活発にミスト粒子の気孔から浸透がより活発に行われ、野菜の水分含有量復元効果が70%以上という大きな効果が得られた。また、ミスト径が小さく0.008μm程度でも野菜の水分含有量復元効果が70%以上となることから、この程度のミスト径を確保すれば、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が比較的保たれると考えられる。
さらに、野菜の水分含有量復元効果が80%以上とより高くなる最適粒子径は0.01〜1μmの範囲であった。ここで、粒子径が1μm以下であると粒子が気孔の内部に浸透するに十分の大きさとなる為、0.01〜1μmの範囲内では気孔径によって野菜の水分含有量復元効果が変わらなくなると考えられる。
一方、図5Bは光照射をしない場合の実験結果であり、水分含有量復元率の50%以上となる粒子径は、光照射時の粒子径よりも小さく、約0.005〜0.5μmであった。
粒子径の上限が0.5μmと小さくなった理由は、光照射による気孔の開孔がないことにより、野菜の表面組織の間隙や比較的閉じた状態の気孔などを介する以外に、水が野菜内部に浸透できないものと考えられる。すなわち、復元するに際し、微細な隙間からしか水粒子が浸透できないためであると考えられる。
なお、水分含有量復元率の50%以上となる範囲の下限の粒子径は0.005μmであり、光照射をした場合と同じであった。0.005μm以下の超微子では、粒子が非常に小さいため、開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できないためと考えられる。
また、野菜の水分含有量復元効果が80%と高くなるのは0.01μm付近のみであり、野菜の水分含有量復元効果が70%以上となる最適粒子径は0.008〜0.05μmの範囲であった。このように、実験の結果によると0.05μmより小さくなると気孔径が小さくなるにつれて、よりミスト粒子の気孔から浸透がより活発に行われる一方、0.01μmをピークとして、それより気孔径が小さくなるにつれて野菜の水分含有量復元効果はより小さくなることがわかった。よって水分含有量復元効果は光を照射した場合の方が幅広い粒子径で高い水分復元率を得られることが判明した。
ただし、本実施の形態のように噴霧部を超音波霧化方式とした場合には、ミストの粒子径を小さくするに従って、高周波数の振動エネルギーを用いて水滴を細粒化する必要があるので、高周波数になればなるほど、振動回数が多くなり超音波霧化方式の耐久年数が短くなる傾向がある。よって、図5Aの実験結果および図5Bの実験結果ともに、粒子径の下限値は0.005μm程度としたが、冷蔵庫に適用する場合には0.5μm以上の粒子径の範囲内で超音波霧化方式を用いることで、平均使用年数が10年程度といった家電製品の中でも特に長期間の耐久性を要求される冷蔵庫においても、十分な耐久性が得られるので、超音波霧化方式による水分含有量の向上の信頼性をより高めることが可能となる。
次に図6は本発明の実施の形態1で説明した萎れかけた野菜に対する水分含有量の復元効果とミスト噴霧量の関係及び、野菜の外観官能評価値とミスト噴霧量の関係を示した図である。萎れかけ野菜の再現方法及び実験方法は図5A、5Bの実験とほぼ同一である。但し、本実験では、1μmの粒子径の場合に、光照射あり、光照射なしの2パターンの実験を行い、光照射なしについては、さらに、0.01μmの粒子径のミストを用いた実験を行った。また、本実験は70リットルの野菜室において行った為、以下の噴霧量はすべて70リットル当たりの噴霧量を示す。
図6より、光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲は0.05〜10g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.14g/h・l)の範囲であった。
ミストの噴霧量が少なすぎると、野菜が気孔から外部へ放出する水分量を下回ってしまい、野菜内部への水分供給を行うことができなくなる。また、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸透できにくくなると考えられる。
実験では、このような噴霧量の下限値が0.05g/hであることがわかった。
一方、ミストの噴霧量が多すぎると、野菜内部の水分含有許容量を超えてしまい、野菜内部に取り込まれない水分は野菜の外部に付着してしまい、この水分によって野菜表面の一部から水腐れが生じてしまい、野菜が痛んでしまう現象が発生する。
このような野菜表面に余分な水分が付着し、野菜が水腐れ等の品質劣化を起こす範囲は10g/h以上であり、実験としては不適であった。よって、10g/h(1リットル当たり=0.15g/h・l)以上の実験結果については、野菜の品質劣化によって採用できない為、省略する。
光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は、0.1〜10g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.14g/h・l)であった。このようにミストの噴霧量の下限値が0.1g/h程度以上に多くなると、開孔状態の気孔との接触頻度が十分に多くなり、野菜内部へのミストの浸透が活発に行われると考えられる。
光照射なしの場合については、粒子径1μmの噴霧では、野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲はなく、すべての噴霧量で10%未満の水分含有量復元率である。粒子径が0.01μmの噴霧では、0.05〜7g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.1g/h・l)の範囲であり、さらに野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は0.1〜1g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.014g/h・l)の範囲であった。これは、上記のような光照射ありの場合と比較して、ミスト噴霧量の下限値についてはほぼ同等であるが、上限値が異なる結果となった。図のように、光照射なしの場合については、気孔が十分に開いていない為、粒子径が十分に小さくないと野菜の内部に水分が浸透しないと考えられる。
以上のように、本実施の形態では、野菜室内に保存中の野菜に対し、照射部を用いて光を照射し、且つ、ミスト噴霧装置にて気孔を通過できるミストを適量噴霧している。その結果、光照射により開孔した野菜表面の気孔から、適量かつ適当な粒子径のミストが野菜内部に浸透し、野菜の水分含有量を向上、野菜のみずみずしさを保持・向上させることができる。
また、野菜室に収納される食品は、近年多岐にわたっており、例えば、ペットボトルのような高湿を必要としない飲料品も収納され、野菜の中でも、ほうれん草などの葉野菜は、比較的低温高湿を好むが、しいたけなどは高湿度を好まず、また、ジャガイモなどの穀物は、10℃前後を好む等のように用途は千差万別である。よって、本実施の形態では、特定容器153を野菜容器151内に設けることで、保存野菜に応じた空間環境を提供することができる。
また、ミストを噴霧させるための操作スイッチを備えているので、上記効果を満足させるため、使用者の意思に基づいて任意にミスト噴霧装置の動作を開始することができる。よって、使用者は用途に応じて野菜室114の機能を使用することができるので、冷蔵庫100の使い勝手および保存性を大きく向上させることができる。
また、照射部130をミストが噴霧されることで高湿度となる特定容器153の外部に備えることによって、照射部130の周辺が高湿度になることを防ぎ、照射部130への結露による信頼性の低下を防ぐことができる。
また、野菜室を区画化することによって、ミスト噴霧量を野菜室全体と比較して、少量噴霧が可能となるので、ミスト発生デバイスの運転率を下げることができ、信頼性が向上する。さらに、特定容器153内での噴霧量を減らせることにより、容器153内に発生する結露量を低減することができる。
また、本実施の形態では、0.1〜100μmol/m2/sの青色光を照射した。微弱な光照射によって、光合成活動を低く抑えた上で、気孔開孔率を高くすることが可能となる。また、ある程度の生態活動を促し、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開孔した気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することができる。加えて、光量を抑えることにより消費電力を低減し、省エネ効果を得ることが出来る。
なお、本実施の形態では、水道水などの通常の水を噴霧したが、オゾン水や酸性水あるいはアルカリ水などの機能水を噴霧してよい。野菜や果物表面の微細な孔に機能水ミストが入り込むことにより、微細な孔の内部の汚れや農薬等の有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることができる。また、野菜表面に付着している農薬等の有害物質の酸・アルカリ分解効果を高めることができる。また、庫内に付着する汚れや庫内臭気の除去及び、酸・アルカリ分解効果も高めることができる。
また、本実施の形態では、超音波素子125に金属メッシュ126を用いていることでミストの粒子径を調整しているが、金属メッシュ126に対向して金属板127を設け、金属メッシュ126と金属板127に高電圧を印加する高電圧電源128と、金属メッシュ126と金属板127との間に高電圧を印加することによって、ミストの粒子径をより細粒化することで、ミストの粒子径を調整することも可能である。この場合には、ミストの細粒化と共にミスト粒子には静電付加させることも可能である。
また、本実施の形態では、貯水槽への水供給部としては、製氷用貯水タンクから水経路を利用して貯水槽へ水を送水するため、専用のタンクを備えなくても噴霧部に水を供給することができ、内容積に影響しないので、庫内の食品収納量を減少させることなくミストの噴霧装置を備えることができる。
なお、本実施の形態においては、貯留水保持部を貯水槽とし、外部から供給された貯留水が保持されるものとしたが、貯留水保持部は、保水装置としての吸湿剤(例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性炭等の多孔質材料等)を用いて、貯蔵室内の空気に含まれている水分を抽出して保持するものでもよい。また、冷蔵庫の除霜水や庫内の結露水等を用いて、使用者が外部から貯留水を供給することなく貯留水を確保できるものであれば、外部からの水分の補給の手間がかからず使い勝手をより向上させた冷蔵庫を提供することができる。さらに、野菜室114内の第1の区画の特定容器153内に専用の給水タンクを設置することも可能であり、特に、特定容器153の前面(ドア)側に備えることにより、水の補給、水の交換、追加、清掃が容易など使い勝手が向上する。
また、この特定容器153は、空間が特定容器153と蓋154でほぼ閉じられた空間になっている。この特定容器153の蓋154は、野菜室114の扉開閉で可動する。扉閉時には、特定容器をほぼ密閉している。また扉開時には、特定容器153から外れ、本体側に保持されるので、扉を開けた状態では特定容器153の上面は開口されている。
この特定容器153の内部空間の上部には、噴霧部123のひとつである超音波装置が設けられている。このように、特定容器153内に設けられた噴霧口157は、野菜が収納されている特定容器153に対して直接的にミスト粒子を噴霧することができ、噴霧口157と野菜との距離をより縮めることができる。例えば特定容器153外でミストを噴霧してから特定容器153内へ送り込む場合と比較して、ミスト粒子の気化を防ぐとともに、浮遊状態における流速を高めることができるので、野菜表面へのミストの付着率をより高めることができる。さらに、経路が短くなることにより、経路内での結露量を低減できるので、特定容器153に噴霧される実際の噴霧量が経路が長い場合と比較して増えることになるので、ミスト発生デバイスからの噴霧量を低減することができる。したがって、さらにミスト発生デバイスの運転率を下げることができ、信頼性が向上する。
また、本実施の形態では、照射部130を特定容器153の上部に備え、照射部130と特定容器153との間に位置する蓋154を透光性のある透明な材質で形成している。
なお、照射部130は特定容器153の側面部や底面部にあっても良い。その場合には、少なくとも照射部130に対して対面する位置にある特定容器153の素材を透光性のある透明な材質で形成することで、照射部130を特定容器153の上部に備えなくとも、特定容器153内の野菜に光照射を行うことができる。
例えば、照射部130を青色LEDにし、特定容器153内に保存された野菜に透明な蓋154を通して光照射すると、特定容器153内の野菜は、光刺激により生態活動が促され、気孔が開孔する。表面についたミストもしくは水滴を、開孔した気孔を通じて吸収することにより野菜の水分含有量および重量が増加し、野菜のみずみずしさを維持することができる。
なお、照射部130が紫外線領域を含む波長を有するLEDを設けた場合には、噴霧されるミストを殺菌するとともに食品表面も殺菌でき、食品の安全性を高めることができる。これは、特定容器153内の壁面や野菜表面に付着している微生物の増殖機能を不活性化することで、食品の微生物によって生じる変色や腐敗臭、貯蔵品表面のネト発生を遅らせることが可能となり、特定容器153内部の衛生性が保たれる為である。さらに、光源として、LEDを設けたことで発熱量が小さく、切替室内の温度上昇を防ぐことができ、食品の保存性を安定させることができる。
また、特定容器153内は噴霧部123を動作させずに、照射部130のみを動作させることも可能である。例えば、きのこ類や魚類には、骨や歯の成長に欠かせないビタミンとしてよく知られているビタミンDの前駆物質を多く含むものがある。それらの食品等を保存する場合には紫外線が照射されることで分子が励起され、ビタミンDへと変換される。よって、紫外光を含む光源を貯蔵室内に設けることで、貯蔵室内の特定の食品、例えば、しらすぼしは保存前と比較してビタミンD含有量を高めることが可能となる。つまり、保存される食品は野菜に限られず、上記のような熟成を目的として、食品を保存することで特定容器153を熟成機能を持つ空間として利用することも可能である。
また、特定容器153の上部の照射部130によって、特定の波長を選択した光を照射し、且つミスト噴霧装置にて気孔を通過できる微細ミストを適量噴霧することにより、さらに特定容器153内の保存環境の幅が広がり、使用者のニーズおよび保存野菜に応じた空間環境を提供することができる。
なお、本実施の形態では、貯蔵室内の収納物として野菜などの青果物について説明した。さらに、水分を供給することにより品質が向上する収納物として、例えば、果物や0℃近辺で保存している鮮魚や肉類でも本実施の形態の冷蔵庫を用いることで乾燥を防ぐことができる。
なお、本実施の形態のように振動エネルギーによってミストを生成するタイプの霧化装置は、水粒子に電気分解等の分解を行わないので、水の成分を変えずにミスト化できる場合がある。このように、振動エネルギーの与え方によって水の成分をそのままミスト化するような装置にした場合には、例えばアルカリイオン水やマイナスイオン水等の純粋な水と比較してなんらかの成分を付加した機能水を用いても、その成分をそのままミスト化することが可能となり、使用者のニーズに応じた任意の水をミストとして供給することができる。
なお、本実施の形態では、野菜室114内の野菜容器151とは仕切られた第1の区画に特定容器153を冷蔵庫正面から見て左右の縦割りで説明したが、上下の横割りにしてどちらかにミストを噴霧するレイアウトも可能である。この場合、野菜の重なりが少なくなるので、野菜の傷みを抑制することができる。
なお、本実施の形態では、ミスト噴霧動作を使用者の意思による操作スイッチで行ったが、常時噴霧させるモードとして、第1の区画内の温度、湿度、結露等の状態を検出してミスト噴霧量を制御することも可能である。これによって、いつでも自在に新鮮食品(野菜)として保存することができ、使い勝手が向上する。
(実施の形態2)
図10は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の側断面図である。
実施の形態2において、冷蔵庫100は仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に仕切られており、野菜室114は湿度約90%R.H以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。
野菜室114には、野菜や果物を貯蔵するため野菜容器151が収納される。冷蔵庫外郭には野菜容器151を保持、または扉開閉時に容器も可動できるようにレール部材152が構成されている。また、これとは別に、野菜室114内には、野菜容器151とは仕切られた第1の区画に特定容器153が収納される。また、光透過性のある素材からなる透明で一部に孔の開いた蓋154は、その特定容器153を野菜室114の扉閉時にのみほぼ密閉している。
さらに仕切り板116には、特定波長を特定容器内に照射するための照射部130と、容器内を均一に照射し、かつ、光源をカバーするための拡散板131が備えられる。
照射部130は、特定容器153上方の投影面に設置され、容器内を透明な蓋154を通して照射している。奥側上方には噴霧部123である超音波装置が仕切り部116に取り付けられている。さらに、噴霧部123近辺の特定容器153の蓋154は噴霧部123の外形寸法より若干大きめの噴霧口157が設けられている。
冷蔵室112の背面には、製氷用貯水タンク119が備えられ、製氷用貯水タンク119からは給水経路120が製氷室(図示せず)と野菜室114とに導かれ水を供給している。野菜室114の上部天面には水補給装置121が備えられている。水補給装置121は、野菜室114の天面に設けられ、水を貯留する貯水部である貯水槽122と、噴霧部123と、噴霧部123によって発生したミストを野菜室114内には、野菜容器151とは仕切られた第1の区画に特定容器153内に送風する送風部129を有する。そして、送風部129の吹出し側に機能成分を放出する機能成分補給部158が備えられる。そして、水補給装置121と機能成分補給部131とでミスト噴霧部が構成されている。
機能成分補給部158はセル状のフィルタ158aにマイクロカプセル化した機能成分顆粒(ビタミンC誘導体顆粒)158bを担持させたものである。また、ビタミンC誘導体顆粒131bは、ビタミンCを化学修飾し、安定性が高く、食品中でビタミンCに変化する。また、水補給装置121の外部一画には照射部130が備えられている。噴霧部123は貯水槽122の内部に設けられる。噴霧部123は、水を超音波方式で霧化する超音波素子125と、所定粒径以下のミストのみを透過する金属メッシュ126を具備している。また、貯水槽122内の貯留水124水は給水経路120から供給され、貯水槽122内に貯留されている。また、野菜室114の一角には、庫内の温度を検知する温度センサー133が備えられている。
以上のように構成された冷蔵庫のミスト噴霧装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、製氷用貯水タンク119内に貯留された水が、給水経路120を経由して、貯水槽122内に供給され,貯留水124として貯留される。次に温度センサー133が庫内温度を5℃以上であると検知した場合、照射部130が点灯し、野菜室114内には、野菜容器151とは仕切られた第1の区画に特定容器153内に保存されている野菜や果物に光が照射される。照射部130は、中心波長が470nmの青色光を含む光を照射する、たとえば青色LEDなどを用いることが出来る。この時、照射される青色光の光量子は約1μmol/m2/sの微弱な光で十分である。微弱な青色光を照射された野菜や果物は表皮表面に存在する気孔が、青色光の光刺激によって、開孔する。
一方、野菜室114内には、野菜容器151とは仕切られた第1の区画に特定容器153内に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれている。
また、野菜室114内には、野菜容器151とは仕切られた第1の区画に特定容器153内には青果物である野菜の中でも緑の菜っ葉ものや果物等も保存されており、これらの青果物は蒸散あるいは保存中の蒸散によってより萎れやすいものである。
次に水供給装置の運転が開始される。貯留水124が噴霧部123に含まれる超音波素子125によって霧化されたミストのうち、所定粒子径以下の微細ミストのみが金属メッシュ126から噴霧されて、貯水槽122内は水粒子径が所定粒子以下のミストが充満した状態となる。貯水槽122内の微細ミストは、送風部129によって野菜室114内にミストとなって噴霧される。同時に、ビタミンC誘導体顆粒158bがフィルタ158aより放出されミストに溶け込みビタミンC誘導体含有ミストとなる。ビタミンC誘導体含有微細ミストは、野菜室114内に気孔開孔状態の野菜や果物の表面に付着し、気孔より組織内に侵入し、水分が蒸散して、萎んだ細胞内に再び水分が供給され、細胞の膨圧によって萎れが解消され、シャキットした状態に復帰する。また、細胞内に供給されたビタミンC誘導体は細胞内でビタミンCに変化する。
尚、ミストとは、細かく***し超微粒子状態となった水のことを言い、その粒子径は目に見える数μmから目には見えない数nmのまで含まれ、性質は液体の性質を持っている。
図11A、図11Bは本発明の実施の形態2での光照射の有無におけるやや萎れかけたホウレンソウの水分含有量及びビタミンC量のミストの水粒子径に対する特性を示す図である。
萎れかけ野菜の再現方法としては以下の方法を用いた。
ホウレンソウを、購入店頭状態から約10%水分減少するまで、所定時間放置したものを、萎れかけ野菜とした。これは、野菜は収穫時から約15%重量が減少すれば、見かけ上も悪く、また、細胞組織も戻らない。野菜が収穫されてから、流通の段階で重量減少は5%程度とし、値を決めている。
実験方法としては、上記作成野菜を野菜室(約6℃)に保存後、各粒子径にてミストを24時間噴霧させたもので、評価した。尚、水分含有量の復元率は、取りだした野菜の重量測定を行い、重量が初期に対し、どれくらい復元したかを算出したものである。一方、ビタミンCの含有量は初期に対するビタミンC量の変化を算出したものである。図11Aは、ミスト噴霧中に光(青色LED)を1μmol/m2/sの強度で照射したもので、図11Bは、光照射なしで実験したものである。
図11Aは光照射下での実験である。野菜の水分含有量の復元効果は、噴霧するミストの水粒子径依存性があり、至適粒子径は0.005〜20μmの範囲であった。これは噴霧する水粒子径が20μm以上と大きい粒子の場合、野菜の気孔開口部の最大径は20〜25μm程度であるため、水粒子が大きすぎて、野菜の内部まで入り込みにくいためと思われる。また、粒子径が20μm以上では粒子が重すぎ、噴霧してもすぐに自重で落下し、空中に漂えないため、野菜にまでミストが到達しないと考えられる。一方、0.005μm以下の微細粒子では粒子が非常に小さいため、開口状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が浸入できない。また、0.005μm以下の水粒子では、電荷を帯びていないと気化しやすく、野菜表面に接触する確率は低くなる。
一方、光非照射の場合、光照射による気孔の開孔がない。従って、図11Bが示すように、野菜表面組織の間隙より水が野菜内部に進入することで、復元すると考えられる。そのため、水分含有量復元率の比較的高い水粒子径は光照射時のそれよりも小さく、約0.005〜0.5μmであった。以上の実験結果から、光照射した場合の方が水分含有量復元効果の高いことが判明した。
また、ミストに溶け込んだ状態のビタミンC誘導体も、水粒子径と密接な関係がある。水粒子径が0.005〜20μmではビタミンC量が初期より増加し、0.005μm以下及び20μm以上ではビタミンC量は減少していた。水粒子径が0.005μm以下の超微粒子では先に述べた理由で、野菜の気孔からの侵入が難しいことから、ビタミンC誘導体も野菜の内部には、ほとんど到達しておらず、ビタミンCの生成も促進されず、結果的にはビタミンC量が減少してしまった。また、水粒子径が20μm以上では、一般に、気孔の短径が10μm〜15μmである気孔からの進入が物理的に難しい。従って、ミストが野菜内部まで到達せず、ビタミンC誘導体も野菜の内部には、ほとんど到達しておらず、ビタミンCの生成も促進されず、結果的にはビタミンC量が減少してしまった。また、一部のミストは野菜の葉に到達するが、粒子径が大きいことから、野菜の内部にまで侵入できず、野菜表面に留まり、野菜の水腐れ要因となった。
ビタミンC量が増加したミスト粒子径1〜20μmでは、ビタミンC誘導体含有ミストが気孔より、葉の内部に侵入し、葉内部にて、ビタミンC誘導体がビタミンCとなり、結果的に、通常の状態よりビタミンC含有量が増加した。
図12は本発明の実施の形態2におけるやや萎れかけた野菜の水分含有量の復元効果のミストの噴霧量に対する特性、及び、噴霧量に対する野菜の外観官能評価値を示す図である。萎れかけ野菜の再現方法及び実験方法は図11A、11Bの実験と同一である。
本実験では、上記最適ミスト径を確認した実験と同様に、光照射ありの場合で、光照射なしの2パターン行い、いずれの場合も、最適粒子径の範囲に含まれている1μmの径のミストを用いた。また、本実験は70リットルの野菜室において行った為、以下の噴霧量はすべて70リットル当たりの噴霧量である。
図12より、光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲は0.05〜10g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.14g/h・l)の範囲であった。
ミストの噴霧量が少なすぎると、野菜が気孔から外部へ放出する水分量を下回ってしまい、野菜内部への水分供給を行うことができなくなる。また、ミストと開孔状態の気孔との接触頻度が低下し、野菜の内部に水が侵入できにくくなると考えられる。
実験では、このような噴霧量の下限値が0.05g/hであることがわかった。
ただし、ミストの噴霧量が多すぎると、野菜内部の水分含有許容量を超えてしまい、野菜内部に取り込まれない水分は野菜の外部に付着してしまい、この水分によって野菜表面からの水腐れが生じてしまい、野菜が痛んでしまう現象が発生する。
このような菜表面に余分な水分が付着し、野菜が水腐れ等の品質劣化を起こす範囲が10g/h以上であったため不適であった。よって、10g/h(1リットル当たり=0.15g/h・l)以上の実験結果については、野菜の品質劣化によって採用できない為、省略する。
また、光照射ありの場合で野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は、0.1〜10g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.14g/h・l)であった。このようにミストの噴霧量の下限値が0.1g/h程度まで多くなると開口状態の気孔との接触頻度が十分に多くなり、野菜内部へのミストの侵入が活発に行われると考えられる。
また、光照射なしの場合については、粒子径1μmの噴霧では、野菜の水分含有復元効果が50%以上となる範囲はなく、すべての噴霧量で10%未満の水分含有量復元率である。粒子径が0.01μmの噴霧では、0.05〜7g/h(1リットル当たり=0.0007〜0.1g/h・l)の範囲であり、さらに野菜の水分含有復元効果が70%以上となる範囲は0.1〜1g/h(1リットル当たり=0.0015〜0.014g/h・l)の範囲であった。これは、上記のような光照射ありの場合と比較して、ミスト噴霧量の下限値についてはほぼ同等であるが、上限値が異なる結果となった。図のように、光照射なしの場合については、気孔が十分に開いていない為、野菜の内部へ十分に水分がとりこめないと考えられる。
以上のように、本実施の形態では、野菜室114内には、野菜容器151とは仕切られた第1の区画に特定容器153内に保存中の野菜に対し、光照射部によって、光を照射し、且つミスト噴霧装置にて気孔を通過できる微細ミストを適量噴霧することにより、開口した野菜表面の気孔より、ミストが野菜内部に侵入することとなり、野菜の水分含有量を向上し、野菜のみずみずしさを保持することができる。
また、本実施の形態では、0.1〜100μmol/m2/sの青色光を照射している。このように微弱な光照射によって、光合成活動を低く、気孔開孔率を高くすることが出来る。その結果、野菜の光合成による水分消費を極力抑え、開口した、気孔から水分を野菜内部に効率よく供給することができるとともに、省エネ効果にも繋げることができる。
また、本実施の形態では、機能性成分を、マイクロカブセル化したビタミンC誘導体顆粒としたが、液状にし、貯留水に溶解または分散させたものをミストにして噴霧しても、同様の効果が得られる。
また、本実施の形態では、機能成分をビタミンC誘導体としたが、例えば、ビタミンA、ビタミンA前駆体、カロチン、ビタミンCなど、種々の栄養成分とすることで、ビタミンC以外の栄養成分含有量も向上することができる。また、種々の栄養成分を複数混合することで、複数の栄養成分含有量を同時に向上することができる。また、機能成分を抗酸化剤とすることで、酸化され栄養価や品質低下要因となる種々の栄養成分の酸化を防止することができる。
また、本実施の形態では、水道水などの通常の水を噴霧したが、噴霧する水をオゾン水や酸性水あるいはアルカリ水などの機能水を噴霧しても良い。野菜や果物表面の微細な孔に機能水ミストが入り込むと、微細な孔の内部の汚れや農薬等の有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることができる。さらに、野菜表面の農薬等の有害物質の酸・アルカリ分解効果を高めることができる。また、庫内に付着する汚れや庫内臭気の除去及び、酸・アルカリ分解効果も高めることができる。
なお、本実施の形態では、超音波素子125に金属メッシュ126を用いていることでミストの粒子径を調整しているが、金属メッシュ126に対向して金属板127を設け、金属メッシュ126と金属板127に高電圧を印加する高電圧電源128と、金属メッシュ126と金属板127との間に高電圧を印加することによって、ミストの粒子径をより細粒化することで、ミストの粒子径を調整することも可能である。この場合には、ミストの細粒化と共にミスト粒子には静電付加することも可能である。
また、静電霧化方式を用いて、ミストに静電付加してもよい。マイナスの電荷を負荷された微細ミストが、プラスに帯電した庫内壁面や野菜、果物表面等に付着し、庫内壁面や野菜や果物表面の微細な孔にミストが入り込むと、野菜の水分含有量復元効果を向上するとともに、微細な孔の内部の汚れや有害物質を浮き上がらせ除去効果を高めることができる。
また、本実施の形態では、貯水槽への水供給部が、製氷用貯水タンクから水経路を利用して貯水槽へ水を送水する。専用のタンクを備えなくても噴霧部に水を供給することができ、内容積に影響しないので食品収納量に影響しない。
なお、本実施の形態においては、貯留水保持部を貯水槽とし、外部から供給された貯留水が保持される。これに対し、貯留水保持部は保水装置としての吸湿剤(例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性炭等の多孔質材料等)を用いて、貯蔵室内の空気内に含まれている水分を抽出して保持するものでもよい。また、冷蔵庫の除霜水等を用いて、使用者が外部から貯留水を供給することなく貯留水を確保できるものであれば、外部からの水分の補給の手間がかからず使い勝手をより向上させた冷蔵庫を提供することができる。
なお、本実施の形態では、貯蔵室内の収納物として野菜などの青果物としたが、水分を供給することにより品質が向上する例えば、果物や0℃近辺で保存している鮮魚や肉類でも乾燥を防ぐことができる。
(実施の形態3)
図13は本発明の実施の形態3における冷蔵庫の側断面図である。図14は本発明の実施の形態3における冷蔵庫の超音波霧化装置近傍の縦断面図である。
図13において冷蔵庫100は、仕切り板116によって、上から冷蔵室112、切替室113、野菜室114、冷凍室115に区画されている。野菜室114には野菜容器151が設置される。野菜室114は、扉、仕切り板116及び庫内仕切り160で区画された空間であり、その中に食品が保存され、湿度約90%RH以上(食品収納時)、温度4〜6℃に保持されている。
野菜室114には、野菜や果物を貯蔵するため野菜容器151が収納される。冷蔵庫外郭には野菜容器151を保持、または扉開閉時に容器も可動できるようにレール部材が構成されている。また、これとは別に、野菜室114内には、野菜容器151とは仕切られた第1の区画に特定容器153が収納される。また、光透過性のある素材からなる透明で一部に孔の開いた蓋154は、その特定容器153を野菜室114の扉閉時にのみほぼ密閉している。
さらに仕切り板116には、特定波長を特定容器内に照射するための照射部130と、容器内を均一に照射し、かつ、光源をカバーするための拡散板131が備えられる。
照射部130は、特定容器153上方の投影面に設置され、容器内を透明な蓋154を通して照射している。奥側上方には噴霧部123である超音波装置125が仕切り部116に取り付けられている。さらに、霧化部123近辺の特定容器153の蓋154は霧化部123の外形寸法より若干大きめの噴霧口(図示せず)が設けられている。
野菜室114の背面には風路119と野菜室114を区画するための庫内仕切り160が備えられている。野菜室114の天面の仕切り板116には、噴霧部123を含む水補給装置121が備えられている。噴霧部123は、例えば、静電霧化装置やノズル式霧化装置、超音波霧化装置、遠心霧化装置などである。
また、冷蔵庫110は冷蔵庫を冷却するため、冷凍サイクルが、圧縮機161、凝縮器、膨張弁やキャピラリチューブなどの減圧装置(図示せず)、蒸発器162、それら構成部品を連結する配管、冷媒などを有する。
冷蔵庫100は機械室を有しており、機械室には圧縮機161と凝縮器などが備えられている。なお、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品を機械室内に配設することも出来る。
冷凍サイクルを構成するキャピラリは、パルスモーターで駆動する冷媒の流量を自由に制御できる電子膨張弁として機能する場合もある。
また、断熱箱体内には、蒸発器162が冷凍室115の背面に備えられ、減圧膨張で低温化した冷媒と庫内空気とを熱交換により冷却する役割を担っている。
ここで、仕切り板116は主に発泡スチロールなどの断熱材で構成されており、その壁厚は、30mm程度であるが、水収集板172の背面の壁厚は5mmから10mmで構成されている。
野菜室114天面の仕切り板116には、水補給装置121と、照射部130と、拡散板131が取り付けられている。水補給装置121は、超音波装置125と水収集板172と水収集板表面温度センサー170とヒータなどの加熱部171と水収集板172で生成された水を受け、噴霧部123に流水させるためのカバー部材173とを含む。照射部130は、特定の波長に絞った光を庫内に照射させるためのLEDやランプなどからなる。透光性材料からなる拡散板131は、照射部130からの光を庫内全体に拡散させる。また、野菜室114の中には温度センサー133と湿度センサー(図示しない)が備えられている。さらにここでは図示しないが、野菜室114の扉開閉を検知するための扉開閉検知部を備えている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下に、その動作・作用を説明する。水の供給方式が違うもので、その構成や効果については実施の形態1及び実施の形態2と同じなので違うところのみを説明する。
まず、野菜室114の温度センサー133と湿度センサー(図示しない)により野菜114の露点温度を予測することができる。そこで、水収集板表面の温度センサー170により表面温度を把握し、加熱部171などで水収集板表面温度を露点温度以下になるように調整する。例えば、表1のように水収集板表面温度を調整する。
例えば、庫内温度が5℃で庫内湿度が90%なら、露点温度は3.5℃であり、この温度以下なら水収集板172に庫内の水蒸気は結露する。結露した水は、水収集板172または、カバー部材173より超音波霧化装置内にある貯水槽122に給水される。貯水槽に保持された水は、圧電素子125の振動により、貯水槽122内の液面が振動・***し霧状のミストが発生する。発生したミストは金属メッシュ126によりさらに細粒径化され、送風部129により庫内に噴霧する。
以上のように、本実施の形態3においては、野菜室の天面の仕切りに取り付けられている水収集板と、切替室または製氷室で生成された低温冷気を冷却源とし、野菜室天面の仕切りの切替室または製氷室側からの熱伝導により水収集板を冷却し、加熱手段や送風手段により水収集板の表面温度が露点以下に温度調整することで、空気中の水分を水収集板に確実に結露させ、収集した水を貯留水保持手段に設けた貯水槽に集水し、超音波噴霧装置によりミストを野菜室容器に確実に噴霧することができ、野菜表面にミストを付着させることにより野菜に保湿性を高め、保鮮性を向上させることができる。
また、貯水槽は貯留水保持手段から着脱自在に設置されているので、野菜室内に収納されている野菜量が少ない場合や冷蔵庫の運転開始直後の比較的湿度の低い状態の時に、あらかじめ貯水槽で水を補給できるのでより安定して保湿性を向上することができる。
また、超音波霧化装置、貯水槽をドア側に設けることにより取り外しやすく、メンテナンスがしやすい。
また、本実施の形態3において、貯水槽と結露方式の組み合わせで説明したが、ミストを噴霧するのに十分な貯留水を確保できる場合、貯水槽がなくすことも可能である。これにより、貯蔵室の有効容積を増やすことができる。
また、本実施の形態3においては噴霧部123を超音波振動子125とすることにより比較的多量の霧化が可能となり、噴霧部のON・OFFにより霧化量を調整することが可能となる。
また、本実施の形態3においては、超音波霧化装置を用いているため発振周波数を可変させれば、粒子径を可変でき、また電圧を変えることで霧化量を調整できる。