JP2008057389A - 気体圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】気体圧縮機において、低速時における油分離効率を高くするとともに、高速時における油分離効率を低くする。
【解決手段】内周壁面61a,65aおよび底壁面61e,65e(底面)によって囲まれた略円柱状空間63,67(旋回空間)に、中空筒部62,66を有し、冷媒ガスG(気体)に含有された冷凍機油R(油分)を遠心分離するサイクロンブロック60(油分離器)は、直列接続された2つの油分離部64,68を有するとともに、サイクロンブロック60に流入する冷媒ガスGの流速が相対的に速いときは、冷媒ガスGが第1油分離部64のみを通過し、冷媒ガスGの流速が相対的に遅いときは、冷媒ガスGが両油分離部64,68を順次通過するように設定されている。
【選択図】図3
【解決手段】内周壁面61a,65aおよび底壁面61e,65e(底面)によって囲まれた略円柱状空間63,67(旋回空間)に、中空筒部62,66を有し、冷媒ガスG(気体)に含有された冷凍機油R(油分)を遠心分離するサイクロンブロック60(油分離器)は、直列接続された2つの油分離部64,68を有するとともに、サイクロンブロック60に流入する冷媒ガスGの流速が相対的に速いときは、冷媒ガスGが第1油分離部64のみを通過し、冷媒ガスGの流速が相対的に遅いときは、冷媒ガスGが両油分離部64,68を順次通過するように設定されている。
【選択図】図3
Description
本発明は気体圧縮機に関し、詳細には、圧縮機本体から吐出された圧縮気体から油分を遠心分離する油分離器の改良に関する。
従来より、空気調和システム(以下、空調システムという。)には、冷媒ガスなどの気体を圧縮して、空調システムに気体を循環させるための気体圧縮機(コンプレッサ)が用いられている。
ここで、一般的なコンプレッサの1つとして例えばベーンロータリ形式のコンプレッサが知られている。このベーンロータリ形式のコンプレッサは、ハウジングの内部に、圧縮機本体が収容された構成となっている。
圧縮機本体は、回転軸と一体的に回転する略円柱状のロータと、ロータの外方を取り囲むシリンダと、ロータに埋設されて、突出側の先端が、断面輪郭形状が略楕円形のシリンダの内周面に追従するように該ロータの外周面からの突出量が可変とされた板状のベーンと、ロータやベーンを、ロータの両端面側から覆う2つのサイドブロックとを備えている。
そして、ロータの回転方向について相前後する2つのベーン、シリンダの内周面、ロータの外周面および両サイドブロックの端面により、ロータの回転に伴ってその容積が変化し、吸入された気体を圧縮して吐出する複数の圧縮室が画成されている。
また、ハウジングの内面と圧縮機本体の外面とにより、圧縮機本体を挟んで一方の側に、圧縮機本体に吸入される気体が通過する低圧雰囲気の吸入室が形成されているとともに、圧縮機本体を挟んで他方の側に、圧縮機本体から吐出された気体が通過する高圧雰囲気の吐出室(油分が分離された気体の通過する空間)が形成されている。
ここで、吐出室を画成するサイドブロックには、圧縮室で圧縮された高圧の気体を、吐出室に導くための吐出路が形成されているとともに、吐出された気体に混じった冷凍機油等の油分を遠心分離するための油分離器が取り付けられている。
この油分離器は、圧縮機本体から吐出された気体を、所定の内周壁面に沿って旋回させつつ降下させることで、油分を遠心分離して底部から排油するとともに、油分が分離された後の気体を、中空筒部から上方に排気するものである(特許文献1)。
特開2003−090286号公報
ところで、例えば、車載の空調機用気体圧縮機では、車両のエンジンを駆動力としているため、気体圧縮機の回転速度はエンジンの回転速度に依存する。
しかし、エンジンの低速回転時であっても、冷房性能はある程度維持する必要があり、このことは、気体圧縮機の低速回転時における油分離効率を高める要求が高い。
一方、冷房性能が過多となり易い高速回転時は、圧縮機本体を、空調システムを循環する油分によって冷却するのが効果的であり、そのためには、空調システムを循環する油分をある程度確保することが必要であり、したがって、気体圧縮機での油分離効率を低くすることが求められる。
これに対して、実際の遠心分離形式の油分離器は、圧縮機本体から吐出する圧縮気体の流速を利用して油分を分離しているため、油分離効率は、低速時において低く、高速時において高くなり、上述した求められる油分離特性とは反対の特性を示す。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、低速時における油分離効率を高くするとともに、高速時における油分離効率を低くすることができる気体圧縮機を提供することを目的とする。
本発明に係る気体圧縮機は、圧縮気体を、その高速時には単一の油分離部だけを通し、低速時には2つの油分離部を直列的に順次通すことで、高速時における油分離効率を低くするとともに、低速時における油分離性能を高めたものである。
すなわち、本発明に係る気体圧縮機は、ハウジングの内部に、気体を圧縮する圧縮機本体と、内周壁面および底面によって囲まれた旋回空間に前記内周壁面と略同軸に延びた中空筒部を有し、前記圧縮気体が前記内周壁面に沿って降下しつつ旋回することにより、該圧縮気体に含有された油分を遠心分離し、降下後の圧縮気体が前記中空筒部を通る油分離器と、を備えた気体圧縮機において、前記油分離器は、直列接続された2つの油分離部を有するとともに、該油分離器に流入する前記圧縮気体の流速が相対的に速いときは、該圧縮気体が前記2つの油分離部のうち一方の油分離部のみを通過し、該油分離器に流入する前記圧縮気体の流速が相対的に遅いときは、該圧縮気体が前記2つの油分離部を順次通過するように設定されていることを特徴とする。
このように構成された本発明に係る気体圧縮機によれば、油分離器に流入する圧縮気体の流速が相対的に速いときは、圧縮気体は2つの油分離部のうち一方の油分離部のみを通過するため、高速時の油分離効率を低くすることができ、一方、油分離器に流入する圧縮気体の流速が相対的に遅いときは、圧縮気体が2つの油分離部を順次通過するため、低速時の油分離効率を高くすることができる。
なお、本発明に係る気体圧縮機においては、2つの油分離部を互いに略同一の構成としてもよいし、互いに異なる構成としてもよい。
互いに異なる構成としては、例えば、中空筒部の長さを異なるものとしてもよい。ここで、中空筒部の長さが長い物は短いものよりも油分離効率を高くすることができる。
本発明に係る気体圧縮機によれば、高速時の油分離効率を低くするとともに、低速時の油分離効率を高くすることができる。
以下、本発明の気体圧縮機に係る最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ式コンプレッサ100(気体圧縮機)を示す縦断面図、図2は図1に示したコンプレッサ100におけるA−A線に沿った断面を示す図、図3は図1に示したコンプレッサ100におけるB−B線に沿った断面を示す図、図4は図3に示した遠心分離方式のサイクロンブロック60の中空筒部62,66を抽出した断面図である。
図示のコンプレッサ100は、例えば、冷却媒体の気化熱を利用して冷却を行なう空気調和システム(以下、単に空調システムという。)の一部として構成され、この空調システムの他の構成要素である凝縮器、膨張弁、蒸発器等(いずれも図示を省略する。)とともに、冷却媒体の循環経路上に設けられている。
そして、コンプレッサ100は、空調システムの蒸発器から取り入れた気体状の冷却媒体としての冷媒ガスGを圧縮し、この圧縮された冷媒ガスGを空調システムの凝縮器に供給する。凝縮器は、圧縮された冷媒ガスGを液化させ、高圧で液状の冷媒として膨張弁に送出する。
高圧で液状の冷媒は、膨張弁で低圧化され、蒸発器に送出される。低圧の液状冷媒は、蒸発器において周囲の空気から吸熱して気化し、この気化熱との熱交換により蒸発器周囲の空気を冷却する。
また、コンプレッサ100は、ケース11とフロントヘッド12とからなるハウジングの内部に収容された圧縮機本体と、フロントヘッド12に取り付けられ、図示しない動力源からの駆動力を圧縮機本体に伝える伝達機構13とを備える。そして、圧縮機本体は、複数のボルトによってフロントヘッド12に固定され、伝達機構13は、ラジアルボールベアリング14を介して、フロントヘッド12に回転自在に支持されている。
ケース11は、一端開放の筒状体を呈し、フロントヘッド12は、このケース11の開放された部分を覆うように組み付けられている。
フロントヘッド12には、蒸発器から低圧の冷媒ガスGが吸入される吸入ポート12aが形成され、この吸入ポート12aには、冷媒ガスGの逆流を防ぐ逆止弁12bが設けられている。一方、ケース11には、圧縮機本体で圧縮された高圧の冷媒ガスGを凝縮器に吐出する吐出ポート11aが形成されている。
ハウジング内に収容された圧縮機本体は、伝達機構13を介して供給された駆動力によって軸回りに回転する回転軸51と、この回転軸51とともに回転する円柱状のロータ50と、ロータ50の外周面の外方を取り囲む断面輪郭略楕円形状の内周面49aを有するとともに、両端が開放されたシリンダ40と、図2に示すように、ロータ50の外方に向けて突出可能にロータ50に埋設され、その突出側の先端がシリンダ40の内周面49aに追従するように突出量が可変とされ、回転軸51回りに等角度間隔で配置された5枚の板状のベーン58と、シリンダ40の両側開放端面の外側からそれぞれ開放端面を覆うように固定されたフロントサイドブロック30およびリヤサイドブロック20とからなる。
そして、2つのサイドブロック20,30、ロータ50、シリンダ40、および回転軸51の回転方向(図2において時計回りの矢印方向)に相前後する2つのベーン58,58によって画成された各圧縮室48の容積が、回転軸51の回転にしたがって増減を繰り返すことにより、各圧縮室48に吸入された冷媒ガスGを圧縮して吐出するように構成されている。
なお、ロータ50の両端面50a,50bからそれぞれ突出した回転軸51の部分のうち一方の部分は、フロントサイドブロック30の軸受部32に軸支されるとともに、フロントヘッド12を貫通して外方まで延び、この貫通部分がフロントヘッド12により軸支され、外方に延びた部分が伝達機構13に連結されている。同様に回転軸51の突出部分のうち他方の側は、リヤサイドブロック20の軸受部22により軸支されており、これらによって、回転軸51は、リヤサイドブロック20およびフロントサイドブロック30に対して回転自在とされている。
また、回転軸51のうち、フロントサイドブロック30の軸受部32よりも外側部分であってフロントヘッド12よりも内側の部分には、リップシール15が配置されて、冷凍機油Rが、回転軸51とフロントヘッド12との隙間からフロントヘッド12の外部に漏れるのを阻止している。
そして、フロントヘッド12による回転軸51の支持と、ボルトによるフロントヘッド12へのフロントサイドブロック30の固定と、両サイドブロック20,30の外周部がOリングによりケース11,フロントヘッド12の内周面に保持されることとによって、圧縮機本体はハウジング内の所定位置に保持されている。
また、圧縮機本体がケース11の内部に収容された状態で、リヤサイドブロック20とケース11とにより、圧縮機本体から高圧の冷媒ガスGが吐出される高圧雰囲気の吐出室21(冷凍機油Rが分離された冷媒ガスGの通過する空間)が形成され、一方、フロントサイドブロック30とフロントヘッド12とにより、圧縮機本体に低圧の冷媒ガスGを供給する低圧雰囲気の吸入室34が形成され、吐出室21は吐出ポート11aに連通し、吸入室34は吸入ポート12aに連通している。そして、吸入室34と吐出室21とは、前述したOリング等によって気密に隔絶されている。
また、リヤサイドブロック20には、冷凍機油Rを冷媒ガスGから遠心分離するサイクロンブロック60(油分離器)が取り付けられており、このサイクロンブロック60は吐出室21内に、その外面が露出して配置されている。なお、リヤサイドブロック20とサイクロンブロック60との間には、短円柱状の軸背圧空間68が形成されている。
吐出室21の下部には、このコンプレッサ100の摺動部等を潤滑、冷却、清浄するとともに、ベーン58をシリンダ40の内周面49aに向けて突出させて、その先端を内周面49aに当接させた状態に付勢するように、ベーン58に背圧を作用させる冷凍機油Rが溜められている。
すなわち、ロータ50には、図2に示すように、スリット状のベーン溝56が放射状に、かつロータ50の回転中心回りに等角度間隔で5つ形成され、これらのベーン溝56に、前述のベーン58が挿入され、各ベーン58は、ロータ50の回転によって生じる遠心力と、ベーン溝56およびベーン58の底面によって画成された背圧室59(背圧空間の一部)に加えられる冷凍機油Rの油圧(背圧)とにより、シリンダ40の内周面49aに向けて突出し、このベーン58の突出した先端がシリンダ40の内周面49aに当接した状態に付勢され、回転軸51の回転に伴って、この先端は内周面49aに追従する。
これにより、シリンダ40と、ロータ50と、回転軸51の回転方向について相前後する2つのベーン58,58と、フロントサイドブロック30と、リヤサイドブロック20とにより画成された各圧縮室48は、ロータ50の回転にしたがって容積の変化を繰り返す。
また、フロントサイドブロック30には、吸入室34と圧縮室48とを連通させるフロント側吸入口31が開口しており、吸入ポート12aから吸入室34に導入された冷媒ガスGは、このフロント側吸入口31を介して圧縮室48に吸入される。
一方、シリンダ40の外周の一部には凹部が形成され、この凹部は、両サイドブロック20,30の各内側端面とケース11の内周面とによって囲まれた吐出チャンバ45を形成している。
そして、この吐出チャンバ45が形成されて薄肉化されたシリンダ40のうち、冷媒ガスGの圧縮行程に対応した圧縮室48に臨む部分に、圧縮室48内の冷媒ガスGを圧縮室48の外部、すなわち吐出チャンバ45に吐出させる吐出口42が設けられているとともに、圧縮室48の内部圧力に応じて吐出口42を開閉するリードバルブ43が配設されている。
リードバルブ43は板ばね状であって、圧縮室48の冷媒ガスGから吐出口42を通じて作用する圧力(詳細には、この圧力と吐出チャンバ45の内部の圧力(さらに、リードバルブ43を吐出口42に付勢している場合には、その付勢力に応じた初期負荷圧力も加算した圧力)との差)に応じて吐出チャンバ45の側に撓むように弾性変形し、この弾性変形によって、閉止していた吐出口42を開放する。
また、このリードバルブ43が、過大な撓みにより破損したり、大きな撓みの持続によって永久変形が生じるのを防止するために、リードバルブ43の変形量を規制するバルブサポート44が、リードバルブ43に重ね合わされて、シリンダ40に共締め固定されている。
そして、圧縮室48から吐出口42、リードバルブ43を通って吐出チャンバ45に吐出された高圧の冷媒ガスGは、リヤサイドブロック20を介して、サイクロンブロック60の内部に導入される。
サイクロンブロック60は、吐出チャンバ45から吐出した高圧の冷媒ガスGを旋回させる内周壁面61aおよびこの内周壁面61aに連続する底壁面61e(底面)で囲まれた略円柱状空間63(旋回空間)を有し、冷媒ガスGが内周壁面61aに沿って降下しつつ旋回することにより、冷媒ガスGに含有された冷凍機油Rを遠心分離する遠心分離本体部61と、略円柱状空間63内に内周壁面61aと略同軸に延び、旋回した冷媒ガスGを底壁面61eとは反対側の端面(図1において上面)側から遠心分離本体部61の外部に導く中空筒状の中空筒部62とを備えた第1油分離部64と、この第1油分離部64と同様の構成の第2油分離部68とが、図3に示すように、図1の紙面奥行き方向に直列接続されている。
すなわち、第1油分離部64は、遠心分離本体部61と中空筒部62とを備え、第2油分離部68も、冷媒ガスGを旋回させる内周壁面65aおよびこの内周壁面65aに連続する底壁面65e(底面)で囲まれた略円柱状空間67(旋回空間)を有し、冷媒ガスGが内周壁面65aに沿って降下しつつ旋回することにより、冷媒ガスGに含有された冷凍機油Rを遠心分離する遠心分離本体部65と、略円柱状空間67内に内周壁面65aと略同軸に延び、旋回した冷媒ガスGを底壁面65eとは反対側の端面(図1において上面)側から遠心分離本体部65の外部に導く中空筒状の中空筒部66とを備えている。
なお、本実施形態のコンプレッサ100においては、2つの遠心分離本体部61,65は一体的に構成されており、2つの油分離部64,68は一体を為しているが、この形態に限定されるものではなく、両油分離部64,68は別体であってもよい。
また、各油分離部64,68の底壁面61e,65eと同一面上において、内周壁面61a,65aが形成された周壁には、遠心分離されて底壁面61e,65eに流れ落ちた冷凍機油Rを、吐出室21の底部に排出する排油孔61c,65cが形成されている。
一方、冷凍機油Rが分離した後の圧縮冷媒ガスGは、底壁面61e,65eから、略円柱状空間63,67の中心部分、中空筒部62,66の内部62a,66aを通って上昇し、中空筒部62,66の上端開口62c,66cから排気され、吐出室21、吐出ポート11aを通って、コンプレッサ100の外部に供給される。
ここで、第1油分離部64の中空筒部62の上端開口62cには、中空筒部62の内部62aを通過する冷媒ガスGの流量が多くなるにしたがって開度が大きくなる弁69が設けられている。
この弁69は、例えば吐出チャンバ65に配設された吐出弁と同様の構成であり、板ばね状のリードバルブ69a(板状弾性体の板ばね)と、リードバルブ69aの過大な弾性変形を防止するバルブサポート69bとを備え、これらリードバルブ69aおよびバルブサポート69bは、中空筒部62とともに、ネジ69cによって、遠心分離本体部61に共締め固定されている。
なお、弁69としては、上述した板ばね状のリードバルブ69aに代えて、他の形式の弾性部材等を適用することもできる。
また、本実施形態のコンプレッサ100における弁69は、冷媒ガスGの流量と弁69の開度とが連続的に変化する対応関係を有するアナログ的なものであるが、冷媒ガスGの流量が、予め設定された所定の閾値を超えるまでは開度がゼロで(閉じている)、当該閾値を超えると開度がゼロ以外(開いている)となる離散的な対応関係を有するデジタル的なものであってもよい。
中空筒部62の、弁69よりも上流側の部分には、第1油分離部64の中空筒部62の内部62aと第2油分離部68の略円柱状空間67とを連通させている連通孔61dに連なる孔62bが形成されている。
これにより、リードバルブ69aの開度が大きいときは、第1油分離部64に導入された冷媒ガスGは冷凍機油Rの分離後、中空筒部62から外部に排出され、第2油分離部68に回り込みにくく、実質的には、第1油分離部64のみで冷凍機油Rの分離が行われる。
一方、リードバルブ69aの開度がゼロであるか、または開度が小さいときは、第1油分離部64に導入された冷媒ガスGは冷凍機油Rの分離後、中空筒部62から外部に排出されにくくなり、中空筒部62に形成された孔62bおよび連通孔61dを通って、略円柱状空間67に臨む開口65bから第2油分離部68に導入され、冷媒ガスGは2つの油分離部64,68を通過し、2つの油分離部64,66でそれぞれ冷凍機油Rの分離が行われる。
なお、本実施形態に係るコンプレッサ100には、回転軸51と軸受部22,32との間の潤滑、ロータ50の各端面50a,50bと各サイドブロック20,30の内側端面29,39との間を潤滑等する目的と、ベーン58をシリンダ40の内周面49aに付勢すべく背圧空間(背圧室59、後述するサライ溝25および軸背圧空間68)に油圧(背圧)を供給等する目的とにより、吐出室21の下部に貯留した冷凍機油Rを各部位に導く構造を備えている。
すなわち、リヤサイドブロック20に、軸受部22に至る油路23が形成され、また、リヤサイドブロック20の内側端面(ロータ50の端面50aに向いた面)29には、軸受部22における油路23の開口から、軸受部22と回転軸51との間の微小隙間(絞り)を通って、ロータ50の背圧室59に連通する凹部であるサライ溝25が形成されている。
また、軸受部22まで延びた油路23は、軸受部22と回転軸51との間の微小隙間(絞り)を介して、リヤサイドブロック20とサイクロンブロック60との間に形成された空間である軸背圧空間68にも連通し、この軸背圧空間68は背圧連通路28を介してサライ溝25に、圧力損失なく連通している。
これにより、背圧室59、サライ溝25、背圧連通路28および軸背圧空間68は、略同一の圧力Pvとなり、ベーン58の背圧空間を構成している。
この背圧空間に作用する圧力Pvは、具体的には、低圧雰囲気の吸入室34の圧力Psよりも高い圧力であって、軸受部22と回転軸51の周面部分との間の微小隙間(絞り)を通過した分だけ、高圧雰囲気の吐出室21の圧力Pdよりも低い中間圧(Ps<Pv<Pd)となる。
サライ溝25は、軸受部22の中心回りの所定角度範囲に亘って、略扇形状の輪郭(図2において破線で示す)を有する凹部であり、上述した微小隙間を通過して中間圧Pvまで低下した冷凍機油Rが供給される。
そして、ロータ50の回転に伴って、ロータ50の端面50aに露呈しているベーン溝56の背圧室59がリヤサイドブロック20のサライ溝25を通過している間だけ、ベーン溝56の背圧空間59とサライ溝25とが連通して、ベーン溝56の背圧空間59にサライ溝25の中間圧Pvの冷凍機油Rが供給され、ベーン58はこの供給された冷凍機油Rの中間圧Pvを受けて、シリンダ40の内周面49aに向かって突出する。
また、シリンダ40の底部側には、リヤサイドブロック20の油路23に接続する貫通孔46が設けられ、フロントサイドブロック30に、この貫通孔46のフロントサイドブロック30側の開口と軸受部32とを連通させる油路33が形成され、冷凍機油Rは、軸受部32と回転軸51との間の微小隙間を通過して中間圧Pvまで降圧され、フロントサイドブロック30の内側端面(ロータ50の端面50bに向いた面)39に形成された凹部であるサライ溝35等に導かれる。
なお、フロントサイドブロック30のサライ溝35も、リヤサイドブロック20のサライ溝25と同様、ロータ50の背圧室59に連通して、ベーン溝56の背圧空間59にサライ溝25の中間圧Pvの冷凍機油Rを供給し、ベーン58はこの供給された冷凍機油Rの中間圧Pvを受けて、シリンダ40の内周面49aに向かって突出する。
また、リヤサイドブロック20には、圧縮行程の終期(圧縮室48内の圧力が最も高圧の状態)において圧縮室48内の高圧により、ベーン58がシリンダ40の内周面49aから離れるのを防止する目的で、一層高圧(≒Pd)の冷凍機油Rを背圧室59に供給するため、油路23から分岐して、絞りを通過しないまま直接リヤサイドブロック20の内側端面29まで延びる高圧油路27が形成されている。フロントサイドブロック30にも同様の高圧油路37が形成されている。
サライ溝25,35に供給された冷凍機油Rは、ロータ50のベーン溝58の背圧室59が連通したときに、この背圧室59にベーン58の突出力を作用させるが、背圧室59が連通しない角度範囲も含めて、ロータ50の端面50a,50bと各サイドブロック20,30の端面29,39との間などにそれぞれ浸透して、これらの端面50a,29間、端面50b,39間や、サイドブロック20,30の端面29,39とベーン58の側面との間、ベーン58の先端とシリンダ40の内周面49aとの間など、摺動部分における摺動摩擦力を低減させている。
そして、各摺動部分に浸透した冷凍機油Rは、圧縮室48内の冷媒ガスGに混入し、冷媒ガスGとともに圧縮室48から吐出され、サイクロンブロック60を介して吐出室21に吐出される。
このように構成された本実施形態に係るコンプレッサ100によれば、サイクロンブロック60の導入孔61aから第1油分離部64の略円柱状空間63に導入された、高圧の冷媒ガスGの流量が相対的に多いとき、すなわち圧縮機本体の回転速度が速いとき(単位時間当たりの回転数が多いとき)は、リードバルブ69aの開度が大きいため、第1油分離部64に導入された冷媒ガスGは冷凍機油Rの分離後、中空筒部62から外部に排出され、第2油分離部68に回り込みにくく、実質的には、第1油分離部64のみで冷凍機油Rの分離が行われる。
一方、導入孔61aから第1油分離部64の略円柱状空間63に導入された、高圧の冷媒ガスGの流量が相対的に少ないとき、すなわち圧縮機本体の回転速度が遅いとき(単位時間当たりの回転数が少ないとき)は、リードバルブ69aの開度がゼロであるか、または開度が小さいため、第1油分離部64に導入された冷媒ガスGは冷凍機油Rの分離後、中空筒部62から外部に排出されにくくなり、中空筒部62に形成された孔62bおよび連通孔61dを通って、略円柱状空間67に臨む開口65bから第2油分離部68に導入され、冷媒ガスGは2つの油分離部64,68を通過し、2つの油分離部64,66でそれぞれ冷凍機油Rの分離が行われる。
そして、第1油分離部64のみを通過して、この第1油分離部64のみにより冷凍機油Rの分離を行う場合には、2つの油分離部64,68を順次通過して、両油分離部64,68により冷凍機油Rの分離を行う場合よりも、冷媒ガスGからの冷凍機油Rの分離効率は低く、一方、2つの油分離部64,68を順次通過して、両油分離部64,68により冷凍機油Rの分離を行う場合は、第1油分離部64のみを通過して、この第1油分離部64のみにより冷凍機油Rの分離を行う場合よりも、冷媒ガスGからの冷凍機油Rの分離効率は高い。
したがって、圧縮機本体の回転速度が低速のときは、冷媒ガスGからの冷凍機油Rの分離効率を高くすることができる。この結果、特に車両のエンジンを、伝達機構13に伝達される回転駆動力の動力源とするものでは、そのエンジンの低速回転時であっても、油分離効率が向上するため、冷房性能を従来よりも向上させることができる。
また、圧縮機本体の回転速度が高速のときは、冷媒ガスGからの冷凍機油Rの分離効率を低くくすることができる。この結果、冷房性能が過多となり易い高速回転時における空調システムへの冷凍機油Rの過度の流出防止が緩和されて、空調システムから圧縮機本体に還流した冷凍機油Rによる圧縮機本体の冷却作用が促進されて、コンプレッサ100の体積効率を向上させることができる。
なお、回転速度が高速であるか低速であるかは、例えば略4000rpm程度を基準として判定すればよく、略4000rpmよりも高い回転数のときは高速、略4000rpmよりも低い回転数のときは低速、と判定することができる。
また、本実施形態のコンプレッサ100は、弁69の開度が冷媒ガスGの流量に応じて連続的に変化するものであるため、圧縮機本体の運転が低速から高速までの間の範囲のときは、冷媒ガスGは両油分離部64,68を通過するが、回転速度がより高速に近付くにしたがって、弁69の開度は大きくなり、第2油分離部68に回り込む冷媒ガスGの量が減少して油分離効率は低下し、一方、回転速度がより低速に近付くにしたがって、弁69の開度は小さくなり、第2油分離部68に回り込む冷媒ガスGの量が増大して油分離効率は向上する。
なお、前述したように、弁69として、その開度が冷媒ガスGの流量に応じて離散的に変化するものを適用した気体圧縮機においては、圧縮機本体の回転速度が例えば略4000rpmを超えたときに、弁69の開度が100%となり、圧縮機本体の回転速度が略4000rpmを下回ったときに、弁69の開度が0%となるように設定することもできる。
本実施形態のコンプレッサ100は、第2油分離部68の中空筒部66(長さL66)が、第1油分離部64の中空筒部62(長さL62)よりも長く形成されている(L66>L62)が、両中空筒部62,66の長さは同一(L62=L66)であってもよいし、第1油分離部64の中空筒部62が、第2油分離部68の中空筒部66よりも長く(L62>L66)形成されていてもよい。
中空筒部62,66の長さが長くなるにしたがって、遠心分離作用が行われる行程の物理的長さが長くなるため、中空筒部62,66の長さが長いほど、油分離効率を高めることができるところ、本実施形態のように、第2油分離部68の中空筒部66を、第1油分離部64の中空筒部62よりも長く形成することで、低速時における油分離効率の向上と、高速時における油分離効率の抑制という本発明の効果を、より顕著なものとすることができる。
なお、上述した実施形態のコンプレッサ100は、ベーンロータリ形式の気体圧縮機であるが、本発明に係る気体圧縮機は、実施形態のベーンロータリ形式のものに限定されるものではなく、他の形式の気体圧縮機、例えば、斜板往復動形式やスクロール形式の気体圧縮機にも適用することができる。
60 サイクロンブロック(油分離器)
61,65 遠心分離本体部
61a,65a 内周壁面
61c,65c 排油孔
61e,65e 底壁面(底面)
62,66 中空筒部
63,67 略円柱状空間(旋回空間)
64 第1油分離部
68 第2油分離部
69 弁
69a リードバルブ
100 コンプレッサ(気体圧縮機)
G 冷媒ガス
R 冷凍機油
61,65 遠心分離本体部
61a,65a 内周壁面
61c,65c 排油孔
61e,65e 底壁面(底面)
62,66 中空筒部
63,67 略円柱状空間(旋回空間)
64 第1油分離部
68 第2油分離部
69 弁
69a リードバルブ
100 コンプレッサ(気体圧縮機)
G 冷媒ガス
R 冷凍機油
Claims (6)
- ハウジングの内部に、気体を圧縮する圧縮機本体と、内周壁面および底面によって囲まれた旋回空間に前記内周壁面と略同軸に延びた中空筒部を有し、前記圧縮気体が前記内周壁面に沿って降下しつつ旋回することにより、該圧縮気体に含有された油分を遠心分離し、降下後の圧縮気体が前記中空筒部を通る油分離器と、を備えた気体圧縮機において、
前記油分離器は、直列接続された2つの油分離部を有するとともに、該油分離器に流入する前記圧縮気体の流速が相対的に速いときは、該圧縮気体が前記2つの油分離部のうち一方の油分離部のみを通過し、該油分離器に流入する前記圧縮気体の流速が相対的に遅いときは、該圧縮気体が前記2つの油分離部を順次通過するように設定されていることを特徴とする気体圧縮機。 - 前記油分離部は、前記旋回空間と前記中空筒部とをそれぞれ有し、一方の油分離部の中空筒部と他方の油分離部の旋回空間とが連通しているとともに、前記一方の油分離部の中空筒部の、前記他方の旋回空間に連通する部分よりも下流側に、該中空筒部を通過する前記圧縮気体の流量が多くなるにしたがって開度が大きくなる弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。
- 前記他方の油分離部の前記中空筒部は、前記一方の油分離部の前記中空筒部よりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載の気体圧縮機。
- 前記弁は、板状弾性体の板ばねであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の気体圧縮機。
- 前記弁は、前記板ばねの過度の変形を阻止するバルブサポートを有することを特徴とする請求項4に記載の気体圧縮機。
- 車載のエンジンを、前記圧縮機本体を回転駆動させる駆動力の動力源としたことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載の気体圧縮機。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2006-08-30 JP JP2006233858A patent/JP2008057389A/ja active Pending
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