JP2008024996A - ダイヤモンドライクカーボン積層皮膜部材及びその製造方法 - Google Patents

ダイヤモンドライクカーボン積層皮膜部材及びその製造方法 Download PDF

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Tsutomu Saruta
強 猿田
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Abstract

【課題】比較的低温度によりダイヤモンドライクカーボン(DLC)皮膜を形成することで、基材強度の低下を抑制することができ、更に、基材へのDLC皮膜の成膜法を工夫することにより、疲労強度を高め、かつ皮膜密着性、摩擦摩耗特性を良好にする。
【解決手段】アルミニウム、マグネシウム又はチタンの各合金等から成る基材1の表面に中間層2と、中間層2の表面に積層3を成膜形成したDLC積層皮膜部材であって、積層3は、DLC皮膜4と、金属を含有した金属含有DLC皮膜5とを交互に重ねた構造にする。
【選択図】図1

Description

本発明は、Al、Mg、Tiの各合金の基材表面にダイヤモンドライクカーボンDLC(Diamond Like Carbon)の皮膜を形成してなる表面処理技術に係り、特に疲労強度、耐摩耗性、摩擦係数低下などのトライボロジー特性を一層向上させたDLC積層皮膜部材及びその製造方法に関するものである。
現在、様々な分野において、環境負荷低減への積極的な取り組みが行われ、自動車分野においては、低燃費化による地球環境問題への取り組みが必須となっている。自動車の低燃費化のためには、エンジンの燃焼効率の向上だけでなく、構成部材・部品の軽量化と摺動部の摩擦の低減なども最も有効な手段の一つである。この摩擦を低下させる手段として、摩擦係数が非常に小さいDLCが注目され、自動車部品への応用が検討されているが、技術的困難が多く、量産市販車に実用化されている事例はまだ極めて少ない。軽量化のための素材として、アルミニウムは軽量であることは勿論、リサイクル性、耐食性に優れた材料として注目されている。Al合金に表面改質技術を応用して積極的に利用されているが、鋼材と比べて強度が低く、耐磨耗性に乏しく、かつ疲労強度も低いなどの問題点もある。これらの問題点を補うものが開発されれば、用途は一層拡大することは十分予想されることである。
このDLCの皮膜構造は、ダイヤモンドのSP結合とグラファイトのSP結合の両者を含むため、決まった結晶構造を持たないアモルフアス構造となっている。DLCは各種硬質薄膜のなかでも高硬度であるため、優れた耐摩耗性と極めて低い摩擦係数を有したトライポロジー特性に優れた硬質膜である。
そこで、従来より、基材表面にDLCの皮膜を形成する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1の特開2004−339564「摺動部材および皮膜形成方法」には、基材の表面に、スパッタリング法によりDLCの皮膜を形成してなる摺動部材において、前記DLCの皮膜が、直径0.5〜1.0μm、深さ10〜30nmの微小な凹部を集合させた表面形状を有していることを特徴とする摺動部材が提案されている。また、この特許文献1には、固体炭素をターゲットとして、スパッタリング法により基材表面にDLC の皮膜を成膜する際、基材に印加する負のバイアス電圧を150〜600Vに設定する皮膜形成方法が開示されている。
特開2004−339564公報
また、産業用もしくは一般家庭用の機械部材・摺動部材や、カードやチケットの自動読み取り機やプリンターなどの磁気ヘッド等の保護膜に係り、特に耐摩耗性と高い摺動特性を備えたコーティング膜および同特性に優れた部材に関する技術が提案されている。例えば、特許文献2の特開2001−261318「ダイヤモンドライクカーボン硬質多層膜および耐摩耗性、耐摺動性に優れた部材」には、炭素を主成分としたアモルファス構造体であって、平均径2nm以上からなるグラファイトクラスターを含む低硬度硬質炭素層と平均径1nm以下からなるグラファイトクラスターを含む高硬度硬質炭素層が交互に積層されたDLC硬質多層膜が開示されている。
特開2001−261318公報 更に、耐摩耗性部品、摺動部品、赤外線光学部品などに用いられるものとして、例えば特許文献3の特許第3246513号「ダイヤモンドライクカーボン積層膜」には、DLC層と引張応力を有するSiCなどのバッファ層を交互に積層したDLC積層膜が開示されている。 特許第3246513号公報
また、工具、金型、自動車部品、家電部品などの、特に高い磨耗性と高い摺動性が要求される用途の部材に用いられる技術が提案されている。例えば、特許文献4の特開2002−322555「ダイヤモンドライクカーボン多層膜」には、低密度DLC層と高密度DLC層を交互に積層した多層膜が開示されている。
特開2002−322555公報
低摩擦係数と低摩耗を実現する上で、DLC積層膜が有効であることは、非特許文献1の「事例で学ぶDLC成膜技術」によっても明らかである。これには積層皮膜が高硬度皮膜と低硬度皮膜を交互にナノオーダーで積層したものが開示されている。
日刊工業新聞社発行「事例で学ぶDLC成膜技術」(49〜50頁)
また、DLC皮膜をコーティングした部材には圧縮の残留応力が負荷されるが、皮膜が薄いため、非特許文献2の「金属材料の組織変化と疲労強度の見方」に示すように、疲労強度の向上は期待できないことを示している。
日刊工業新聞社発行「金属材料の組織変化と疲労強度の見方」(142頁)
しかし、上述したような軟質なAl、Mg、Tiの各合金基材に、高硬度なDLC皮膜を被覆したDLCの皮膜部材は、基材と皮膜の密着性が低下するという問題と、疲労強度が低下するという問題点を有していた。
また、特許文献1、特許文献2、特許文献3又は特許文献4は、何れもコーティング処理する際に、その成膜時の高い処理温度により母材強度が低下し、それに伴い部材全体の疲労強度が低下するという問題を指摘している。
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、比較的低温度によりDLC皮膜を形成することで、基材強度の低下を抑制することができ、更に、基材へのDLC皮膜の成膜法を工夫することにより、疲労強度が高くなることのみならず、皮膜密着性、摩擦摩耗特性の良いDLC積層皮膜部材及びその製造方法を提供することにある。
本発明の皮膜部材によれば、アルミニウム、マグネシウム又はチタンの各合金等から成る基材(1)の表面に中間層(2)と、該中間層(2)の表面に積層(3)を成膜形成したダイヤモンドライクカーボン(DLC)積層皮膜部材であって、前記積層(3)は、DLC皮膜(4)と、金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)とを交互に重ねた構造である、ことを特徴とするDLC積層皮膜部材が提供される。
例えば、前記中間層(2)は、金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)から成り、該金属含有DLC皮膜(5)は、前記基材(1)側に金属の含有率を高く、前記積層(3)側に金属の含有率を低くした傾斜構造であることが好ましい。
前記金属含有DLC皮膜(5)は、タングステン、モリブデン、クロム又はチタンの各金属を5〜15重量%含有することが好ましい。
前記中間層(2)は、0.05〜3.00μmの厚さを有し、かつ、金属含有DLC皮膜(5)と同じ成分のタングステン、モリブデン、クロム又はチタンの各金属を含有することが好ましい。
前記DLC皮膜(4)は、高硬度でダイヤモンドと似た物性を有するアモルファスなカーボン皮膜であり、水素を含有するものである。
前記積層(3)を構成する、前記金属含有DLC皮膜(5)、又はDLC皮膜(4)の一層の厚さが、0.01〜0.5μmであり、積層(3)全体の厚さが1μm以上にすることが好ましい。
残留応力の低減、製造し易さを考慮すると、前記積層(3)を構成する金属含有DLC皮膜(5)の厚さと、該積層(3)を構成するDLC皮膜(4)の厚さが略同等であることが好ましい。しかし、金属ターゲット源と炭化水素ターゲット源の構成数によって多少変動することもある。
本発明の製造方法によれば、アンバランスド・マグネトロン・スパッタリング法(UBMS法)により、基材(1)の表面に、中間層(2)、及びDLC皮膜(4)と金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)とから成る積層(3)を成膜する際に、中間層(2)とDLC積層(3)のコーティング処理温度を100〜200℃の雰囲気に設定する、ことを特徴とするDLC積層皮膜部材の製造方法が提供される。
前記アンバランスド・マグネトロン・スパッタリング法(UBMS法)により、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と金属を含有したDLC皮膜(5)とを交互に重ねた積層(3)を形成することが必要である。
前記基材表面(1)に、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と金属を含有したDLC皮膜(5)とを交互に重ねた積層(3)を形成する際に、プラズマCVD法を利用することができる。
前記プラズマCVD法により、基材(1)の表面に、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)とを成膜する際に、そのコーティング処理温度を100〜200℃の雰囲気に設定することが必要である。
前記基材表面(1)に、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と、金属を含有したDLC皮膜(5)とを交互に重ねた積層(3)を形成する際に、イオン化蒸着法を利用することができる。
前記イオン化蒸着法により、基材(1)の表面に、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)とを成膜する際に、
そのコーティング処理温度を100〜200℃の雰囲気に設定することが必要である。
上述したように、本発明のDLC積層皮膜部材では、基材(1)に成膜形成した積層(3)が、DLC皮膜(4)と、金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)とを交互に重ねた構造であるために、この積層(3)により、アルミニウム又はマグネシウム等の非鉄金属の基材(1)の疲労強度を高めることができる。また、この積層(3)により、各種部材としての摩擦係数を低下させ、摩耗量を低減させることができる。更に、この積層(3)により基材(1)又は中間層(2)への密着性を向上させることができる。
本発明品は、後述する表1に示すように、コーティング皮膜の厚さを厚くしても、コーティング皮膜密着力が低下することなく、むしろ増加している。一般的には、DLC皮膜は残留応力が大きく、超硬質で延性が殆どないため、コーティング厚さを厚くすると、皮膜の密着力は低下し、皮膜が剥がれ易くなる。このため、DLC皮膜を厚くしたくても厚くできず、実用上の皮膜厚さはせいぜい3μmが限界であった。しかるに本発明によるDLC皮膜は厚膜化によっても密着力が低下することなく、むしろ密着力が増加するので、厚いコーティング皮膜が可能となる。
また、本発明の製造方法では、比較的低温度においてDLC皮膜(2、3、4)を形成することができるので、その基材強度の低下を抑制することができ、高い疲労強度を有し、皮膜密着性、摩擦摩耗特性の良いDLC積層皮膜部材を製造することができる。
本発明のDLC積層皮膜部材は、基材の表面に中間層と、中間層の表面に積層を成膜形成したDLC積層皮膜部材であり、積層は、ダイヤモンドライクカーボン皮膜と、金属を含有した金属含有DLC皮膜とを交互に重ねた構造である。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例1のDLC積層皮膜部材の断面図である。図2は積層部分の拡大断面図である。
本発明のDLC積層皮膜部材は、アルミニウム、マグネシウム又はチタン等の各合金から成る基材1の表面に中間層2と、この中間層2の表面に積層3を成膜形成した部材である。積層3は、DLC皮膜4と、金属を含有した金属含有DLC皮膜5とを交互に重ねた構造である。DLC皮膜4は、高硬度でダイヤモンドと似た物性を有するアモルファスなカーボン皮膜であり、水素を含有するものである。ここで、本発明が、水素を含有するDLCと規定した理由は、本発明のDLC積層が低コストで、極めて平滑な表面が得られるためである。水素を含有しないDLCは摩擦係数は小さなものが得られるが、固体炭素源を利用することによって、ドロップレットといわれる微小表面析出物が生成し、平滑な表面が得られない。これは摩擦に特に有害な物質であり、これを取除く工程が必要不可欠であるためである。これを取除かない場合、摩擦係数は増加し、摩耗も大きくなり、潤滑皮膜としての機能を全く果さなくなる。本発明の金属含有DLC皮膜5は、タングステン(W)、クロム(Cr)又はチタン(Ti)等の5〜15重量%の金属を含有する。
中間層2は、金属を含有した金属含有ダイヤモンドライクカーボン皮膜5から成り、この金属含有DLC皮膜5は、基材1側に金属の含有率を高く、積層3側に金属の含有率を低くした傾斜構造である。この金属含有DLC皮膜5から成る中間層2は、0.05〜3.00μmの厚さを有する。この中間層2の厚さは基材の種類、部材の用途などに応じて決定される。
積層3を構成する、金属含有DLC皮膜5、又はDLC皮膜4の一層の厚さは、0.01〜0.5μmである。この積層3の厚さは、基材の種類、部材の用途などに応じて決定される。例えば、この積層3を構成する、金属含有DLC皮膜5の厚さは、DLC積層皮膜3)の厚さの1/4以下であることが好ましい。
積層3のDLC皮膜4と金属含有DLC皮膜5との積層数は、図示例の10層に限定されず、基材の種類、積層皮膜部材の用途、仕様などに応じて決定される。ナノ積層構造を採用することによって、積層皮膜内に発生する残留応力が低下し、従来のDLCにない高性能な厚膜の皮膜がコーティング可能である。本発明は厚さ3μm以上、好ましくは5μm以上であり、従来の方法では得られないような高性能な10μmもの厚膜のコーティングも可能である。
また、中間層の構造を変えることによって、様々な基材にも対応可能である。表層DLC皮膜の構造を積層化することによって、摩擦係数の低減を図ることも可能であり、疲労強度の向上も図ることができる。
図3は基材と金属を含まないDLCとの断面図である。
更に、図3に示すように、基材1に金属含有DLC皮膜5を直接成膜形成することも可能である。即ち、中間層2を省略することも可能である。
図4は実施例2のDLC積層皮膜部材の製造方法を説明する装置概略図である。
実施例2のDLC積層皮膜部材は、図4に示すような製造装置で成膜する。この真空チャンバ11に角型UBMスパッタ蒸発源4式が搭載され、中央に配置された自公転式ワークテーブル12上の基材1、即ちワーク13に外周からコーティングを行う。スパッタ源14には皮膜材料となる平板状ターゲット(127mm×508mm)が取り付けられ、装置としてはΦ450×H400mmの推奨処理空間を有する。スパッタ源14にはグロー放電を発生させるための電力を供給するスパッタ電源が接続され、ワークテーブル12には負のバイアス電圧を印加するバイアス電源が接続されている。
図4に示す製造装置を用いたUBMスパッタ法による皮膜形成は以下のようにして製造する。
先ず、表面を十分に洗浄したワーク13を真空チャンバ11内にセットし、通常2×10−3Pa程度以下の高真空まで排気する。その後、ワーク13や真空チャンバ11内表面からの脱ガスを目的として、ワーク13をヒータ15で予備加熱する。加熱時間は形成する皮膜やワーク材質(耐熱虚度)、ワーク重量(熱容量)等に応じて適宜調整するが、ワーク温度が通常150〜200℃になるまで行う。
次に、ワーク13に−300、−600V程度の高い負のバイアス電圧を印加するとともに、圧力1〜2Pa程度のArガス雰囲気中で、熱フィラメント型プラズマ源16を動作させ、生成したArイオンをワーク13に衝突させるボンバード工程を行う。この工程は高エネルギーイオンによりワーク表面をエッチングしてクリーニングするとともに、ワーク温度を上昇させることで、この後に形成される皮膜の密着をより強固にする役割を持つ。この工程は通常10〜30分程度行う。
ボンバード工程が終了すると、皮膜をコーティングする工程に入る。後に説明するDLC膜形成の場合は、ターゲットとして炭化水素ガス及び中間層用の金属ターゲットがスパッタ源14に取り付けられる。Arガス圧力をスバッタに適した圧力に変更し、また必要に応じてその他のプロセスガスを導入した後、ワーク13にバイアス電圧を印如しながら、スパッタ源に電力を供給して、グロー放電を発生させるとコーティングが開始する。コーティング時の標準的な条件は、Ar圧力0.1〜1Pa程度、バイアス電圧−20〜−200V、スパッタ電力1〜10kWである。皮膜の膜厚のコントロールはスパッタ電力とコーティング時間の調節で行われる。
所定の膜厚に達したら、スパッタ源への電力供給を止めて・コーティングを終了し、ワーク13の冷却を待って真空チャンバ11から取り出す。
[コーティング例1]
図5はタングステンを含有させる際のスパッタリング電力と時間との関係を示すグラフである。図6はタングステン含有のDLC傾斜構造を有する積層皮膜部材の断面図である。
上述した図4に示すようなUBMスパッタ装置を用いたDLC積層皮膜部材の製造方法によるコーティング例1を示す。
基材1は直径15mm、高さ10mmのSCM415の浸炭処理材を用い、これを脱脂してコーティングを行った。この基材1をUBMS装置(アンバランスド・マグネトロン・スパッタリング装置)の真空チャンバ11内に取付け、5×10―3Pa程度以下の真空にまで排気する。ヒータ15にて基材1をベーキングし、Arプラズマにて基材1表面をエッチングする。その後、2.6×10―3Paで、UBMS法により表1に示すような各種層構成のDLC多層膜を形成した。
Figure 2008024996
ここで中間層2はWを10%含むDLCであり、表層DLC積層は層厚さ0.1μmのDLC層とW含有DLC層を交互に積層し、表面DLC積層皮膜をそれぞれ1μmと3μm厚さに仕上げたものである。最表層は硬質のDLC層である。表1におけるNo.2のコーティング後の断面の状況は図6に示す。
図4の真空チャンバ11において、中央のワークテーブル12にワーク13を設置する。本発明のコーティングを行うために、1箇所の蒸発源にタングステン(W)を設置し、残りの蒸発源にはベンゼンなどの炭化水素ガスを用いてコーティングを行う。
タングステンを含有させる方法は図5に示すように、基材1に接する中間層2は基材1側のW含有量を約100%と高くし、表面の積層3側は約10%に低下させた傾斜材とする。
積層部はW蒸発源のスパッタ電力の付加の有無で行い、電力付加をしているときにWが含有され、付加しないときにはWを含有しない。W付加電力は0.09kWである。DLCは所定の電力でコーティングし、処理温度は120℃である。
[コーティング例2]
UBMスパッタ装置を用いたコーティング例2を示す。基材1は直径15mm、高さ10mmのアルミニウム合金A6061(T6処理品)を用い、コーティング例1と同様にして、表2に示すようなDLC多層積層膜を形成した。
Figure 2008024996
ここで中間層はWを10%含むDLCであり、表層DLC積層は層厚さ0.1μmのDLC層とW含有DLC層を交互に積層し、表面DLC積層皮膜をそれぞれ1μmと3μm厚さに仕上げたものである。最表層は硬質のDLC層である。
図7は疲労強度試験を測定する際に用いた疲労試験片の一例を示す正面図と側面図である。図8はアルミ材の疲労強度へのDLCの効果を示すグラフである。グラフの縦軸は強度振幅(単位MPa)、横軸は繰り返し回数を示す。
ここで、「Virgin」:コーティングしてない部材
「L−DLC」:中間層2μm+積層1μm
「Thick−DLC」:中間層2μm+積層1μm をそれぞれあらわしている。
図9は疲労破壊のメカニズムを示す説明図であり、(a)はコーティングしていない部材、(b)はDLCをコーティングした部材である。
Al材の疲労破壊は材料表面のボイド、即ち粒子(Mg−Si−O Particles)が起点となって、疲労破壊(Fatiguue crack)が部材表面から発生している(図9(a)の状態)。しかし、DLCをコーティングすることによって、このボイドが塞がれ、疲労破壊は部材内部から発生する(図9(b)の状態)。このため、疲労強度を向上させることができる。マグネシウムとチタンにおいても同様な疲労破壊のメカニズムがあり、本発明のようなDLCコーティングが疲労強度の向上に有効である。
図10はDLC被膜なし部材、DLC単層皮膜部材と本発明のDLC積層皮膜部材との摩擦係数と滑動距離との関係を示すグラフである。
このグラフでは、その上段から順番にDLC被膜なし部材、DLC単層皮膜部材、3μmのDLC積層皮膜部材、5μmのDLC積層皮膜部材を示している。本発明のDLC積層皮膜部材は、このグラフに示すように、例えば3μmのDLC積層皮膜部材は、3μmのDLC単層皮膜部材より摩擦係数が小さい。5μm程度のDLC積層皮膜部材は更に摩擦係数が小くなる。
本発明は、比較的低温度により中間層2及びDLCの積層3を形成することで、基材強度の低下を抑制することができ、更に基材1へのDLC皮膜の成膜法を工夫することにより、疲労強度が高くなることのみならず、皮膜密着性、摩擦摩耗特性を向上させることができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
本発明のダイヤモンドライクカーボン積層皮膜部材及びその製造方法は、優れた摩擦・磨耗特性のみならず、疲労強度の向上を果たすことから、自動車部品などに利用することができる。
本発明の実施例1のDLC積層皮膜部材の断面図である。 積層部分の拡大断面図である。 基材と金属を含まないDLCとの断面図である。 実施例2のDLC積層皮膜部材の製造方法を説明する装置概略図である。 タングステンを含有させる際のスパッタリング電力と時間との関係を示すグラフである。 タングステン含有のDLC傾斜構造を有する積層皮膜部材の断面図である。 疲労強度試験を測定する際に用いた疲労試験片の一例を示す正面図と側面図である。 アルミ材の疲労強度へのDLCの効果を示すグラフである。 疲労破壊のメカニズムを示す説明図であり、(a)はコーティングしていない部材、(b)はDLCをコーティングした部材である。 DLC被膜なし部材、DLC単層皮膜部材と本発明のDLC積層皮膜部材との摩擦係数と滑動距離との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 基材
2 中間層
3 積層
4 DLC皮膜
5 金属含有DLC皮膜

Claims (13)

  1. アルミニウム、マグネシウム又はチタンの各合金等から成る基材(1)の表面に中間層(2)と、該中間層(2)の表面に積層(3)を成膜形成したダイヤモンドライクカーボン(DLC)積層皮膜部材であって、
    前記積層(3)は、DLC皮膜(4)と、金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)とを交互に重ねた構造である、ことを特徴とするDLC積層皮膜部材。
  2. 前記中間層(2)は、金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)から成り、該金属含有DLC皮膜(5)は、前記基材(1)側に金属の含有率を高く、前記積層(3)側に金属の含有率を低くした傾斜構造である、ことを特徴とする請求項1のDLC積層皮膜部材。
  3. 前記金属含有DLC皮膜(5)は、タングステン、モリブデン、クロム又はチタンの各金属を5〜15重量%含有する、ことを特徴とする請求項1又は2のDLC積層皮膜部材。
  4. 前記中間層(2)は、0.05〜3.00μmの厚さを有し、かつ、金属含有DLC皮膜(5)と同じ成分のタングステン、モリブデン、クロム又はチタンの各金属を含有する、ことを特徴とする請求項1又は2のDLC積層皮膜部材。
  5. 前記DLC皮膜(4)は、高硬度でダイヤモンドと似た物性を有するアモルファスなカーボン皮膜であり、水素を含有するものである、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4のDLC積層皮膜部材。
  6. 前記積層(3)を構成する、前記金属含有DLC皮膜(5)、又はDLC皮膜(4)の一層の厚さが、0.01〜0.5μmであり、積層(3)全体の厚さが1μm以上であることを特徴とする請求項1のDLC積層皮膜部材。
  7. 前記積層(3)を構成する金属含有DLC皮膜(5)の厚さと、該積層(3)を構成するDLC皮膜(4)の厚さが略同等である、ことを特徴とする請求項1のDLC積層皮膜部材。
  8. アンバランスド・マグネトロン・スパッタリング法(UBMS法)により、基材(1)の表面に、中間層(2)、及びDLC皮膜(4)と金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)とから成る積層(3)を成膜する際に、
    中間層(2)とDLC積層(3)のコーティング処理温度を100〜200℃の雰囲気に設定する、ことを特徴とするDLC積層皮膜部材の製造方法。
  9. 前記アンバランスド・マグネトロン・スパッタリング法(UBMS法)により、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と金属を含有したDLC皮膜(5)とを交互に重ねた積層(3)を形成する、ことを特徴とする請求項8のDLC積層皮膜部材の製造方法。
  10. 前記基材表面(1)に、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と金属を含有したDLC皮膜(5)とを交互に重ねた積層(3)を形成する際に、プラズマCVD法を利用する、ことを特徴とする請求項8のDLC積層皮膜部材の製造方法。
  11. 前記プラズマCVD法により、基材(1)の表面に、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)とを成膜する際に、
    そのコーティング処理温度を100〜200℃の雰囲気に設定する、ことを特徴とする請求項10のDLC積層皮膜部材の製造方法。
  12. 前記基材表面(1)に、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と、金属を含有したDLC皮膜(5)とを交互に重ねた積層(3)を形成する際に、イオン化蒸着法を利用する、ことを特徴とする請求項8のDLC積層皮膜部材の製造方法。
  13. 前記イオン化蒸着法により、基材(1)の表面に、中間層(2)及び、DLC皮膜(4)と金属を含有した金属含有DLC皮膜(5)とを成膜する際に、
    そのコーティング処理温度を100〜200℃の雰囲気に設定する、ことを特徴とする請求項12のDLC積層皮膜部材の製造方法。
JP2006199802A 2006-07-21 2006-07-21 ダイヤモンドライクカーボン積層皮膜部材及びその製造方法 Pending JP2008024996A (ja)

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