JP2008018450A - 重ねレーザ溶接方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の板材を相互に重ね合わせ、この重ね合わせた板材の端部近傍に重ね合わせ方向からレーザ光を照射しつつ、レーザ光を前記端部に沿って移動させて、重ね合わせた板材どうしをレーザ溶接する際に、前記板材のレーザ照射部より端部側に位置する部位の膨出を抑制しながら溶接する。
【選択図】図5
Description
上記重ね合わせ部の接合に、レーザ溶接を採用した場合には、連続溶接により接合強度が高く、片側からのアクセスで溶接できることから、従来用いられていたスポット溶接やアーク溶接に比べて接合部の設計自由度が大きく、フランジ部の幅を狭くし、構造部材を小型化、軽量化することが可能となるなどの利点がある。
例えば、レーザ照射側から重ね合せ部にローラを押し付け、ローラをレーザ光とともに移動させ、一方の板材を他方の板材に押し付けて両者の間隔を調整しながら溶接を行うことや、互いに重ね合わせた板材のフランジ部相互を、1対のローラで両側から挟みこみ同様に溶接することが、特許文献1に示されている。
また、図3のように、溶接開始点をフランジ2の長手方向端部としないで、該端部から所定距離隔てた点を溶接開始点とした場合でも、溶接後に溶接部の中央部分が膨出し、割れが発生する場合がある。なお、図において、8はレーザ溶接ヘッドである。
特許文献3には、高炭素鋼よりなる部材とステンレス鋼などよりなる部材の重ね継ぎ手をレーザ溶接する際、溶融凝固時に発生する収縮応力などにより収縮割れが発生すること、および、その割れを、継ぎ手部の位置を工夫して引張応力が溶融部に多くかからないようにして防止することが記載されている。
しかし、これらの文献では、上記のような凝固割れや、それに対する解決手段については何ら触れられていない。
請求項1の重ねレーザ溶接方法の発明は、複数の板材を重ね合わせ、この重ね合わせた板材の端部近傍に、重ね合わせた下側の板材まで溶融するように重ね合わせ方向からレーザ光を照射しつつ、レーザ光を前記端部に沿って移動させて、重ね合わせた板材を互いに溶接するレーザ溶接方法において、前記板材のレーザ照射部より端部側に位置する部位の膨出を抑制しながら溶接するようにしたことを特徴とする。
請求項3の重ねレーザ溶接方法の発明は、該請求項に記載されているように、前記膨出の抑制を、少なくとも溶接範囲をカバーするように、あらかじめ重ね合わせた板材の端面に沿って配置されている膨出抑制プレートを用いて行うことを特徴とする。
請求項4の重ねレーザ溶接方法の発明は、該請求項に記載されているように、前記膨出の抑制を、少なくとも溶接範囲をカバーするように、あらかじめ重ね合わせた板材の端面に沿って間隔を置いて複数配置されている膨出抑制ピンを用いて行うことを特徴とする。
請求項8の重ねレーザ溶接装置の発明は、該請求項に記載されているように、前記膨出抑制部材は、前記端面に接触して配置されたローラであることを特徴とする。
請求項10の重ねレーザ溶接装置の発明は、該請求項に記載されているように、前記膨出抑制部材は、少なくとも溶接範囲をカバーするように、あらかじめ前記端面に沿って配置されている膨出抑制プレートであることを特徴とする。
請求項11の重ねレーザ溶接装置の発明は、該請求項に記載されているように、前記膨出抑制部材は、少なくとも溶接範囲をカバーするように、あらかじめ端面に沿って間隔を置いて複数配置されている膨出抑制ピンであることを特徴とする。
請求項2および請求項6〜請求項9に係る発明によれば、レーザ溶接の進行とともに割れの防止を自動的に行うことができる。また、請求項7に係る発明によれば、溶接の進行に伴う凝固割れの防止をより効果的に行うことができる。
請求項3、請求項4、請求項10および請求項11に係る発明によれば、あらかじめ固定された冶具を用いることにより、凝固割れの防止をより簡単、確実に実施することができ、さらに、図3に示されるような、端部から溶接をスタートする場合でも、凝固割れを確実に防止することができる。
図1で示される断面形状がハット型の構造部材のような端部にフランジを有する板状部材を、同様のフランジや板材と重ね、両者の間をレーザ溶接してフレーム部材を製造する際、例えば8mm以内というようなよりフランジ幅の狭い構造部材を用いて、フレーム部材全体をより軽量化しようとすると、溶接ビードからフランジ端部までの距離は1.5mm〜3.5mmの範囲のより短い距離にならざるを得ず、このような条件では、図3に示されるように、フランジ長手方向端部から離れた位置で溶接を開始したとしても、前記したように、溶接部からの熱伝導により変形した部位が凝固途中の溶接ビードを引っ張り、凝固割れが発生しやすい。
上記の構造部材には、引張強度が270MPa以上の鋼板が用いられるが、重ね合わせる板材の少なくとも1枚の板材に440MPa以上の鋼板を使用した場合により凝固割れが発生する。
図4は、薄板の重ねレーザ溶接における凝固過程の温度と溶接部周辺で発生する歪の関係を示す。図は、質量%で、炭素量が0.06%、珪素量が0.5%、マンガン量が1.5%よりなる板厚1.2mmの引張強さ590MPaの鋼板を用い、レーザ加工点出力2kW、溶接速度2m/minの条件で重ねレーザ溶接して得た試料を用いて得られたものである。
そして、膨出を抑制するためには、溶接ビードの凝固過程において、(2)の領域にある間、12kgf程度の力を部材に付与すれば、膨出を抑制できることがわかった。
より具体的には、膨出抑制部材を用いて前記膨出を抑制する。膨出抑制部材には、レーザ光の照射位置の移動とともに移動する移動冶具を用いる場合と、予め板材の端部に配置された固定冶具を用いる場合とがある。
(1)移動冶具を用いる場合
図5、6にレーザ溶接ヘッドとともに移動する冶具を用いる場合の実施の態様を示す。図5、6では、溶接ロボットのアーム先端部にレーザ溶接ヘッドとともに膨出抑制部材が取り付けられた例を示すが、移動装置としては溶接ロボットに限られるものではない。
なお、ローラ支持部材7を、ブラッケット6に位置調整可能なように取り付けて、レーザ溶接ヘッド8とローラ5の間の溶接方向およびそれと直角方向の距離をそれぞれ調節できるようにするのが好ましい。その際、ローラ支持部材7を、駆動装置を用いて外部の指令で自動的に移動できるようにすることもできる。
さらに、ローラは、図のように1個に限定されるものではなく、2個あるいはそれ以上であってもよいことはもちろんであり、その場合は、膨出を抑制する範囲がより広くなる点で好ましい。
溶接の開始点は、図3に示されるようにフランジの長手方向端部からフランジ長手方向に距離を置いた位置とし、ローラ5がフランジの長手方向端面に確実に接触できる位置とする。
ローラ5は、溶接ロボットのアームによって、溶接による変形力に対抗する反力を与えられるように支持されているから、レーザ光の照射部が溶融して、溶接の進行とともに、溶融部より端部側のフランジ部位がフランジ本体から切り離された状態になり、該部位が溶接部からの熱伝導により熱膨張して変形しようとしても、ローラによりそれを抑制できる。
図7に、少なくとも溶接範囲15をカバーする固定冶具によって、膨出を抑制する場合の例を示す。図7aは、あらかじめ端面に沿って配置されている連続状の膨出抑制プレート13を用いる例であり、図7bは、あらかじめ端面に沿って間隔を置いて複数配置されている膨出抑制ピン14を用いる例である。なお、16は、溶接開始点を示す。
なお、図7bでは、円柱状のピンを例示したが、ピンの形状は、角柱状のものでも、フランジ長手方向に幅を持ったものでもよいことはもちろんである。
固定冶具、特に連続状の膨出抑制プレートを用いる場合には、図3に示されるような、端部から溶接をスタートする場合でも、端部の膨出を抑制して凝固割れを確実に防止することができる。
2 構造部材のフランジ部
3 構造部材の折り曲げ部
4 板材
5 ローラ膨出抑制部材
6 プラケット
7 ローラ支持部材
8 レーザ溶接ヘッド
9 光ファイバ
10 へら状膨出抑制部材
13 膨出抑制プレート
14 膨出抑制ピン
15 溶接範囲
16 溶接開始点
Claims (11)
- 複数の板材を重ね合わせ、この重ね合わせた板材の端部近傍に、重ね合わせた下側の板材まで溶融するように重ね合わせ方向からレーザ光を照射しつつ、レーザ光を前記端部に沿って移動させ、重ね合わせた板材を互いに溶接するレーザ溶接方法において、前記板材のレーザ照射部より端部側に位置する部位の膨出を抑制しながら溶接することを特徴とする重ねレーザ溶接方法。
- 前記膨出の抑制を、レーザ光とともに移動する膨出抑制部材を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の重ねレーザ溶接方法。
- 前記膨出の抑制を、少なくとも溶接範囲をカバーするように、あらかじめ重ね合わせた板材の端面に沿って配置されている膨出抑制プレートを用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の重ねレーザ溶接方法。
- 前記膨出の抑制を、少なくとも溶接範囲をカバーするように、あらかじめ重ね合わせた板材の端面に沿って間隔を置いて複数配置されている膨出抑制ピンを用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の重ねレーザ溶接方法。
- レーザ光を照射するレーザ溶接ヘッドを有し、重ね合わせられた複数の板材の端部近傍に、重ね合わせた下側の板材まで溶融するように重ね合わせ方向からレーザ光を照射しつつ、レーザ溶接ヘッドを前記端部に沿って移動させて、重ね合わせた板材を互いに溶接するレーザ溶接装置において、前記板材のレーザ照射部より端部側に位置する部位の膨出を抑制する膨出抑制部材を少なくともレーザ光が照射される近傍の板材端面に配置したことを特徴とする重ねレーザ溶接装置。
- 前記膨出抑制部材は、レーザ溶接ヘッドと共通の部材に取り付けられ、レーザ光とともに移動するものであることを特徴とする請求項5に記載の重ねレーザ溶接装置。
- 前記膨出抑制部材は、レーザ溶接ヘッドより溶接進行方向に対して後方に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の重ねレーザ溶接装置。
- 前記膨出抑制部材は、前記端面に接触して配置されたローラであることを特徴とする請求項6または7に記載の重ねレーザ溶接装置。
- 前記膨出抑制部材は、前記端面に接触して配置されたへら状部材であることを特徴とする請求項6または7に記載の重ねレーザ溶接装置。
- 前記膨出抑制部材は、少なくとも溶接範囲をカバーするように、あらかじめ端面に沿って配置されている膨出抑制プレートであることを特徴とする請求項5に記載の重ねレーザ溶接装置。
- 前記膨出抑制部材は、少なくとも溶接範囲をカバーするように、あらかじめ端面に沿って間隔を置いて複数配置されている膨出抑制ピンであることを特徴とする請求項5に記載の重ねレーザ溶接装置。
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