JP2008002659A - 高速回転用単列円筒ころ軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】内輪案内方式のかご形保持器を備えた単列円筒ころ軸受において、内輪とかご形保持器の円環部との間から軸受外に流出する潤滑剤を減少させながら、安定した高速運転を図る。
【解決手段】前記円環部１１の内径面は、軸方向の中央側が大径となる断面テーパ部１１ａとこのテーパ部１１ａよりも軸方向外側で前記内輪１の保持器案内面に対向する円筒案内面１１ｂとを有しており、前記円筒ころ４のころ長さＬｗ（単位：ｍｍ）と軸受幅Ｂとの比Ｌｗ／Ｂが０．３≦Ｌｗ／Ｂ＜０．４であり、前記円環部１１の幅Ｌ（単位：ｍｍ）が（Ｂ−Ｌｗ−１）／２であり、円筒案内面１１ｂの幅Ｌ１（単位：ｍｍ）がＬ１≧Ｌ×０．２であり、円筒案内面１１ｂに対するテーパ部１１ａの傾斜角θ（単位：度）がθ≦１０である構成を採用した。
【選択図】図１

Description

この発明は、かご形保持器を備えた単列円筒ころ軸受に関し、特に工作機械、ジェットエンジン、ガスタービン等に設けられた高速回転軸を支持するのに好適なものに関する。
例えば、マシニングセンタ、ＣＮＣ旋盤、フライス盤等の工作機械の主軸装置は、ワークの加工効率や精度を高める等の理由から高速回転で運転される場合が多く、特に最近は主軸回転速度のより高速化の傾向が顕著である。
一般に、工作機械の主軸装置において、主軸は、フロント側（工具側）及びリア側（反工具側）にそれぞれ配置された転がり軸受でハウジングに対して回転自在に支持される。
主軸装置のリア側には、単列円筒ころ軸受が多用されている。これは、主軸の軸方向変位を円筒ころと軌道面との間のスライド変位で吸収し又は逃がすことができ、また、円筒ころ軸受のラジアル荷重の負荷能力が玉軸受よりも高く、主軸剛性を確保する上でも有利だからである。
従来から、特に高速回転する軸を内輪案内方式の単列円筒ころ軸受で支持する場合には、アンダーレース潤滑方式が採用されている。ここで、アンダーレース潤滑方式とは、内輪の内径面から外径面まで貫通する油穴を通して遠心力により軸受内部に潤滑油を供給する潤滑方式のことである。このアンダーレース潤滑方式では、遠心力によって内輪の内径面から外径面まで貫通する油穴で潤滑剤を供給するため、Ｄｍｎ＝100万以上の高速回転する軸受内に比較的効率よく潤滑剤を供給することができる（例えば、特許文献１）。
ここで、Ｄｍｎは、転動体ＰＣＤ〔ｍｍ〕×回転数〔ｍｉｎ−１〕により算出される。
前掲の特許文献１のようなアンダーレース潤滑方式を採用した単列円筒ころ軸受の中には、図７に示すように、内輪１０１に形成されたラジアル方向の油穴１０２が、ころの軌道１０３よりもアキシアル方向で軸方向外側に位置する部分を通って内径面１０４から鍔外径面１０５まで貫通しており、内輪１０１の鍔外径面１０５に開口する油穴１０２の油出口がかご形保持器の円環部１０６の内方に位置している構成のものがある。
特開２００２−６６８７４号公報
しかしながら、図７の単列円筒ころ軸受の場合、油穴１０２の油出口から内輪１０１と円環部１０６との間に供給された潤滑剤が円環部１０６の内径面にあたって軸受内外に分離するため、軸受内に要求される量よりも多い潤滑剤を油穴１０２に供給する必要がある。
そこで、本出願人は、本願出願時で未公開ながら、係る欠点を解決に貢献する先行技術として、前記円環部の内径面を軸方向の中央側が大径となるテーパ部に形成した転がり軸受を提案している（特願２００５−１３８３３０号）。この構成のかご形保持器によれば、内輪と保持器の円環部との間にある潤滑剤は、円環部のテーパ部から軸受内に向けて流れ易くなり、効率よく潤滑剤を供給することができる。
ここで、軸受幅が同一の単列玉軸受と単列円筒ころ軸受を比較して考えると、円筒ころのころ長さは玉径に比して長いため、かご形保持器の円環部幅は玉保持器の円環部幅よりも狭い。したがって、内輪案内方式のかご形保持器を備えた単列円筒ころ軸受に上記先行技術を採用する場合、円環部の内径面にテーパ部の幅を大きく形成すると、内輪の保持器案内面に対向する円環部側の案内面を確保することができず、安定した回転が得られず、かご形保持器の高速回転を妨げる原因になる。また、円環部側の案内面に対するテーパ部の傾斜角を大きくすると、円環部の肉落ち量が多くなり、遠心力に対する円環部の強度が低下し、かご形保持器の高速回転を妨げる原因になる。
そこで、この発明の課題は、内輪案内方式のかご形保持器を備えた単列円筒ころ軸受において、内輪とかご形保持器の円環部との間から軸受外に流出する潤滑剤を減少させながら、安定した高速運転を図ることにある。
上記の課題を達成するため、この発明は、内輪と、外輪と、一対の円環部と柱部とからなるかご形保持器とを備え、前記かご形保持器は、単列の円筒ころを保持する高速回転用単列円筒ころ軸受において、前記円環部の内径面は、軸方向の中央側が大径となるテーパ部とこのテーパ部よりも軸方向外側で前記内輪の保持器案内面に対向する案内面とを有しており、前記円筒ころのころ長さＬｗ（単位：ｍｍ）と軸受幅Ｂとの比Ｌｗ／Ｂが０．３≦Ｌｗ／Ｂ＜０．４であり、前記円環部の幅Ｌ（単位：ｍｍ）が（Ｂ−Ｌｗ−１）／２であり、前記案内面の幅Ｌ１（単位：ｍｍ）がＬ１≧Ｌ×０．２であり、前記案内面に対する前記テーパ部の傾斜角θ（単位：度）がθ≦１０である構成を採用したものである。
具体的には、かご形保持器の幅寸法の限界は軸受幅Ｂにより決まるため、円環部の幅寸法を得るべく、円筒ころのころ長さＬｗを小さくした。ここで、軸受幅Ｂは内輪と外輪の幅寸法が異なる場合、いずれか大きい方の寸法とする。前記円筒ころのころ長さＬｗ（単位：ｍｍ）と軸受幅Ｂとの比Ｌｗ／Ｂが０．３≦Ｌｗ／Ｂ＜０．４であり、前記円環部の幅Ｌ（単位：ｍｍ）が（Ｂ−Ｌｗ−１）／２である構成の採用により、単列円筒ころのころ長さを可及的に小さくしつつ、円筒ころの基本動定格荷重が単列玉軸受よりも比較的に小さくなることを防止し、円環部の幅を軸受幅Ｂに対し最大限に得られるようにした。ここで、軸受幅Ｂから１ｍｍを減算したのは、かご形保持器がその軸方向動により軸受幅から突出しないようにするための安全値である。
さらに、前記円環部の幅Ｌ（単位：ｍｍ）が（Ｂ−Ｌｗ−１）／２であり、前記案内面の幅Ｌ１（単位：ｍｍ）がＬ１≧Ｌ×０．２であり、前記案内面に対する前記テーパ部の傾斜角θ（単位：度）がθ≦１０である構成の採用により、内輪とかご形保持器の円環部との間から軸受外に流出する潤滑剤をテーパ部で減少させながら、内輪案内方式に十分な保持器側の案内面を得、加えて、円環部の肉落ちを最低限として遠心力に対する保持器強度を可及的に高めた。
したがって、この発明は、内輪案内方式のかご形保持器を備えた単列円筒ころ軸受において、内輪と保持器の円環部との間から軸受外に流出する潤滑剤を減少させながら、安定した高速運転を図ることができる。
以下、この発明の一実施例を添付図面に基づいて説明する。
この実施形態に係る高速回転用単列円筒ころ軸受は、図１、図２に示すように、内輪１と、外輪２と、一対の円環部１１、１１と柱部１２とからなるかご形保持器３とを備えている。かご形保持器３には、一対の円環部１１、１１と柱部１２とで単列の円筒ころ４を保持するポケット１３が形成されている。内輪１には単列の軌道５が形成されており、その両側に円筒ころ４の端面を案内する鍔が一体に形成されている。
円環部１１の内径面は、軸方向の中央側が大径となる断面テーパ部１１ａとこのテーパ部１１ａよりも軸方向外側で前記内輪１の鍔外径面（保持器案内面）に対向する円筒案内面１１ｂとを有する。なお、内輪１の鍔外径面には、従来例と同様の油穴が適宜に穿たれている。
一対の円環部１１の外径面と各柱部１２の外径面との間には、周方向の凹溝１４が形成されている。この凹溝１４は、ポケット１３内に流入した潤滑剤が遠心力によりかご形保持器３の外径面に排出され易くするために形成されている。
各ポケット１３は、円筒ころ４の端面を案内する一対の軸方向側面１３ａと、一対の軸方向側面１３ａのラジアル方向辺と周方向に連続するぬすみ部１３ｂと、ぬすみ部１３ｂ間に連続し、円筒ころ４を周方向に等配する一対の周方向側面１３ｃとで形成されている。
実施例に係る高速回転用単列円筒ころ軸受の各寸法を以下に述べる。
軸受幅Ｂは、２４（ｍｍ）であり、内輪１、外輪２とも同一幅である。
軸受外径は１５０（ｍｍ）、軸受内径は１００（ｍｍ）である。
軸受断面高さＣ：（軸受外径−軸受内径）／２は２５（ｍｍ）である。
円筒ころの直径Ｄａは９（ｍｍ）であり、円筒ころのころ長さＬｗは９（ｍｍ）である。
比Ｄａ／Ｃは０．３６、比Ｌｗ／Ｂは０．３７５となっている。この数値の採用により、軸受の高速運転化、かつ軸受の低温度上昇化を図ることができる。なお、この技術は、特開２００３−２７８７４６号公報に詳しく開示されている。
円環部１１の内外径間の長さである保持器高さＨは５．９（ｍｍ）である。
ポケット１３の軸方向側面１３ａと、この側面１３ａの軸方向外側に位置する円環部１１の幅面との間の長さである円環部の幅Ｌは７．５（ｍｍ）である。
上記テーパ部１１ａの軸方向外側辺に連続する円筒案内面１１ｂの幅Ｌ１は、円環部の幅Ｌ×０．２の値：１．５（ｍｍ）となっている。円筒案内面１１ｂに対するテーパ部１１ａの傾斜角θは５度である。
上記かご形保持器３は、全体がポリエーテルエーテルケトン（ＰＥＥＫ）製の一体成形保持器となっており、射出成形または、旋削加工となっている。
図３に示す比較例１は、円環部の幅Ｌが４．０５（ｍｍ）となっている点で上記実施例と相違するものである。
図３と図１を対比すれば明らかなように、比較例１では、円筒案内面３１ｂが大き過ぎてテーパ部３１ａを十分に形成することができない。
図４に示す比較例２は、円筒案内面４１ｂの幅Ｌ１が５．８（ｍｍ）、円筒ころの直径Ｄａが１１（ｍｍ）、円筒ころのころ長さＬｗが１１（ｍｍ）である点で上記実施例と相違し、この相違点に伴う軸受の各寸法の変更により、比Ｄａ／Ｃが０．４４、比Ｌｗ／Ｂが０．４６となっているものである。この比較例２では、比Ｌｗ／Ｂが０．４を超えるため、高速回転かつ低温度上昇を十分に達成することができない。
図５に示す比較例３は、円筒案内面５１ｂの幅Ｌ１がＬ×０．５の値：３．７５（ｍｍ）になっており、円筒案内面５１ｂに対するテーパ部５１ａの傾斜角θが２０度である点で上記実施例と相違するものである。
図５と図１（ｂ）を対比すれば明らかなように、比較例３は、円環部５１の肉落ち量が多くなり、保持器強度が低い。
図６に示す比較例４は、円筒案内面６１ｂの幅Ｌ１がＬ×０．１の値：０．７５（ｍｍ）になっている点で上記実施例と相違するものである。
図６と図１（ｂ）を対比すれば明らかなように、比較例４は、円筒案内面６１ｂが殆どなくなり、安定した案内を得ることができない。
（ａ）実施例に係る単列円筒ころ軸受の要部断面図、（ｂ）実施例に係るかご形保持器の部分拡大断面図 図１のかご形保持器の全体斜視図 比較例１の要部断面図 比較例２の要部断面図 比較例３のかご形保持器の部分拡大断面図 比較例４のかご形保持器の部分拡大断面図 従来例の要部断面図
符号の説明
１ 内輪
２ 外輪
３ かご形保持器
４ 円筒ころ
５ 軌道
１１ 円環部
１１ａ テーパ部
１１ｂ 円筒案内面
１２ 柱部
１３ ポケット

Claims (1)

  1. 内輪と、外輪と、一対の円環部と柱部とからなるかご形保持器とを備え、前記かご形保持器は、単列の円筒ころを保持する高速回転用単列円筒ころ軸受において、
    前記円環部の内径面は、軸方向の中央側が大径となる断面テーパ部とこのテーパ部よりも軸方向外側で前記内輪の保持器案内面に対向する案内面とを有しており、前記円筒ころのころ長さＬｗ（単位：ｍｍ）と軸受幅Ｂとの比Ｌｗ／Ｂが０．３≦Ｌｗ／Ｂ＜０．４であり、前記円環部の幅Ｌ（単位：ｍｍ）が（Ｂ−Ｌｗ−１）／２であり、前記案内面の幅Ｌ１（単位：ｍｍ）がＬ１≧Ｌ×０．２であり、前記案内面に対する前記テーパ部の傾斜角θ（単位：度）がθ≦１０であることを特徴とする高速回転用単列円筒ころ軸受。
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