JP2008002330A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 エミッションを良好に維持しつつアクセル操作に対するすばやいレスポンスを確保することが可能な内燃機関の燃料噴射制御装置を提供すること。
【解決手段】 判定部94はアクセル速度vapから運転者の加速要求の強弱を判定し、選択部95は開度TAaccを、アクセル操作量Accpに応じた演算毎に、加速要求が強かった場合演算した第1時点の開度TAtに、弱かった場合その時点から遅延時間TD後の第2時点の開度TAtに設定する。アクチュエータ43aは第1時点又は第2時点にスロットル弁43を開度TAtになるよう制御する。第1時点の開度TAtの設定時には、ロジックA2はスロットル弁開度TAから燃料噴射気筒への燃料噴射量fiを決定する。第2時点の開度TAtの設定時には、ロジックM2は開度TAaccに応じた開度TAestから燃料噴射気筒の筒内吸入空気量MCを予測し、ロジックA2は空気量MCに基づきその燃料噴射量fiを決定する。
【選択図】 図4
【解決手段】 判定部94はアクセル速度vapから運転者の加速要求の強弱を判定し、選択部95は開度TAaccを、アクセル操作量Accpに応じた演算毎に、加速要求が強かった場合演算した第1時点の開度TAtに、弱かった場合その時点から遅延時間TD後の第2時点の開度TAtに設定する。アクチュエータ43aは第1時点又は第2時点にスロットル弁43を開度TAtになるよう制御する。第1時点の開度TAtの設定時には、ロジックA2はスロットル弁開度TAから燃料噴射気筒への燃料噴射量fiを決定する。第2時点の開度TAtの設定時には、ロジックM2は開度TAaccに応じた開度TAestから燃料噴射気筒の筒内吸入空気量MCを予測し、ロジックA2は空気量MCに基づきその燃料噴射量fiを決定する。
【選択図】 図4
Description
本発明は、車両に搭載された多気筒の内燃機関(以下、単に「機関」ということもある。)に適用される内燃機関の燃料噴射制御装置に係り、特に、アクセルペダルの操作量に応じて一の演算時点にて演算された暫定目標スロットル弁開度を、その演算時点から所定の遅延時間だけ経過した将来の時点における目標スロットル弁開度として設定するとともに、実際のスロットル弁の開度がこの設定された目標スロットル弁開度と等しくなるようにスロットル弁を駆動制御する内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
従来から知られたこの種の内燃機関の燃料噴射制御装置は、電子制御式のスロットル弁を用いるものであり、主としてエミッションを良好に保つために、スロットル弁のディレー制御(「スロットル・ディレー」という。)を行っている。
つまり、従来の燃料噴射制御装置は、例えば特許文献1に開示されているように、アクセルペダルの操作量に応じた暫定目標スロットル弁開度を、所定の遅延時間だけ遅延させて、目標スロットル弁開度として設定するとともに、その設定された目標スロットル弁開度に一致させるように、実際のスロットル弁の開度を駆動制御する。即ち、この目標スロットル弁開度の設定とこれに応じた実際のスロットル弁の開度の駆動制御とをスロットル・ディレーと呼んでいる。従来の装置は、このスロットル・ディレーによって、現時点から上記遅延時間だけ将来の時点までにおける目標スロットル弁開度を把握しており、これらの目標スロットル弁開度に基づいて、現時点から上記遅延時間だけ将来の時点までにおける実際のスロットル弁の開度を推定することが可能となっている。
ところで、燃料噴射気筒(多気筒のうちの何れかの燃料を噴射する気筒)において、所定の目標空燃比(通常は理論空燃比前後の値)を得るのに必要な燃料噴射量を精密に求めるためには、燃料噴射気筒の吸入行程の将来の終了時点である吸気弁閉弁時(吸気弁が開弁した状態から閉弁した状態に移行する時点)に、この燃料噴射気筒内に吸入されているであろう空気量を予測しなければならない。ここで、燃料噴射気筒の吸気行程における吸入空気量と、吸気弁閉弁時における実際のスロットル弁の開度との間には密接な関係があることが知られており、従来の装置は、この関係の下、スロットル・ディレーにより推定することが可能となった将来の実際のスロットル弁の開度に基づいて、将来の吸気弁閉弁時における吸入空気量を予測する。
更に、燃料噴射気筒では、所定のクランクアングルに対応した燃料噴射を開始する直前の時点(その燃料の噴射量を演算する必要がある燃料噴射量演算時点)にて、将来の吸気弁閉弁時における吸入空気量を予測しなければならないから、従来の装置では、この燃料噴射量演算時点から吸気弁閉弁時までの時間に基づいて、上記遅延時間が設定されている。
そして、従来の装置は、この予測された燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時における吸入空気量と、目標空燃比とに基づいて、燃料噴射量を求めており、この燃料噴射量の燃料をその吸気弁閉弁時までにインジェクタから燃料噴射気筒へと噴射する。目標空燃比を適切に設定すれば、その設定空燃比に応じて噴射量に過不足が略ない精密な燃料噴射が達成され、これによって、エミッションが良好に維持されることになる。
しかしながら、この従来のスロットル・ディレーにおいては、上述した遅延時間によって、アクセルペダルが踏み込まれてからこれに追従して実際のスロットル弁の開度が大きくなるまでの遅れが生じるから、この遅れによって、例えば急加速を欲する運転者が、アクセル操作に対する機関又は機関の搭載された車両のレスポンスが良くないと感ずる恐れがある。
特開平10−169469号公報
従って、本発明の目的の一つは、スロットル・ディレーにおいて、実際のスロットル弁の開度が大きくなるまでの上述の遅れを、運転者の加速要求の強さに応じて調節することによって、エミッションを良好に維持しつつアクセル操作に対するすばやいレスポンスを確保することが可能な内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置は、車両に搭載された多気筒の内燃機関に適用される。本装置は、アクセル操作量取得手段と、暫定目標スロットル弁開度演算手段と、加速要求取得手段と、加速要求判定手段と、目標スロットル弁開度設定手段と、スロットル弁制御手段と、吸入空気量予測手段と、燃料噴射量決定手段と、燃料噴射手段と、を備える。
アクセル操作量取得手段は、運転者により操作されたアクセルペダルの操作量を取得する。暫定目標スロットル弁開度演算手段は、所定周期の演算時点にて、取得されたアクセルペダルの操作量に応じ暫定目標スロットル弁開度を演算する。
加速要求取得手段は、車両の加速が開始したか否かを判定する。具体的には、アクセルペダルの開度(アクセルペダル操作量に応ずる)、暫定目標スロットル弁開度(アクセルペダル操作量に応じて暫定的に設定される目標スロットル弁開度)、目標スロットル弁開度(実際のスロットル弁を駆動制御するために用いる目標開度)、及び、実際のスロットル弁の開度の何れかの値が0から変化し始めた時点を検出して、その時点に、車両の加速が開始したものと判定してよい。更に、加速要求取得手段は、このように車両の加速が開始したか否かを判定するとともに、加速が開始したと判定された場合、運転者の加速要求の強さに応じた値を取得する。ここにいう加速要求の強さとは、運転者が要求した車両の加速の程度のことである。加速要求判定手段は、取得された加速要求の強さに応じた値と所定値との比較に基づいて、運転者の加速要求が強いか弱いかを判定する。
加速要求取得手段は、車両の加速が開始したか否かを判定する。具体的には、アクセルペダルの開度(アクセルペダル操作量に応ずる)、暫定目標スロットル弁開度(アクセルペダル操作量に応じて暫定的に設定される目標スロットル弁開度)、目標スロットル弁開度(実際のスロットル弁を駆動制御するために用いる目標開度)、及び、実際のスロットル弁の開度の何れかの値が0から変化し始めた時点を検出して、その時点に、車両の加速が開始したものと判定してよい。更に、加速要求取得手段は、このように車両の加速が開始したか否かを判定するとともに、加速が開始したと判定された場合、運転者の加速要求の強さに応じた値を取得する。ここにいう加速要求の強さとは、運転者が要求した車両の加速の程度のことである。加速要求判定手段は、取得された加速要求の強さに応じた値と所定値との比較に基づいて、運転者の加速要求が強いか弱いかを判定する。
目標スロットル弁開度設定手段は、加速要求についての判定以降において、暫定目標スロットル弁開度が演算時点にて演算される毎に、加速要求が強いと判定されていた場合、演算された暫定目標スロットル弁開度を、その演算時点から、0を含む所定の第1遅延時間だけ経過した第1時点における目標スロットル弁開度として設定する。一方、目標スロットル弁開度設定手段は、加速要求についての判定以降において、暫定目標スロットル弁開度が演算時点にて演算される毎に、加速要求が弱いと判定されていた場合、演算された暫定目標スロットル弁開度を、その演算時点から、第1遅延時間よりも長い第2遅延時間だけ経過した第2時点における目標スロットル弁開度として設定する。
スロットル弁制御手段は、暫定目標スロットル弁開度が第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、その暫定目標スロットル弁開度の演算時点から第1遅延時間の経過後に実際のスロットル弁の開度が第1時点の目標スロットル弁開度と等しくなるように、スロットル弁を駆動制御する。一方、スロットル弁制御手段は、暫定目標スロットル弁開度が第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、その演算時点から第2遅延時間の経過後に実際のスロットル弁の開度が第2時点の目標スロットル弁開度と等しくなるように、スロットル弁を駆動制御する。
吸入空気量予測手段は、暫定目標スロットル弁開度が第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、将来におけるスロットル弁の駆動制御に用いるために設定されている複数の第2時点の目標スロットル弁開度のうちの何れか(1又は複数)の目標スロットル弁開度を用いて、多気筒のうちの特定の気筒(燃料噴射気筒)の吸気行程において吸入される空気の量を予測する。
例えば、この吸入される空気の量を予測するために用いる目標スロットル弁開度は、上記複数の第2時点の目標スロットル弁開度のうち、燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時又はその近傍の時点までにおける目標スロットル弁開度である。より具体的に述べると、アクセルペダルが操作された当初から順次、そのアクセルペダルの操作量を元にして、燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時又はその近傍の時点までにおける目標スロットル弁開度が求められていき、この目標スロットル弁開度に基づいて実際のスロットル弁の開度が推定されていく。また、スロットル弁下流から吸気弁までの吸気管の近傍における吸入空気について、所定の物理モデル(空気の流量、圧力及び温度、実際のスロットル弁の開度等を用いた吸入空気モデル)を想定することができる。
この物理モデルの下、推定された実際のスロットル弁の開度を順次用いながら、将来の吸気弁閉弁時までの吸入空気の流量、圧力及び温度を順次演算していく。吸気弁閉弁時までに燃料噴射気筒に吸入される空気の量(吸入空気量)は、その吸気弁閉弁時における吸入空気の圧力及び温度と密接な関係を有するから、これら吸気弁閉弁時のものとして演算された吸入空気の圧力及び温度に基づいて、その吸気弁閉弁時までの吸入空気量を求めることができる。
燃料噴射量決定手段は、暫定目標スロットル弁開度が第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、アクセルペダルの操作量に応じて変化する値に基づいて多気筒のうちの何れかの気筒に噴射される燃料の第1噴射量を決定する。例えば、アクセルペダルの操作量に応じて変化する値は、実際のスロットル弁の開度である(これについては後述)。一方、燃料噴射量決定手段は、暫定目標スロットル弁開度が第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、予測された空気の量に基づいて上記特定の気筒に噴射される燃料の第2噴射量を決定する。
燃料噴射手段は、暫定目標スロットル弁開度が第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、決定された第1噴射量の燃料を上記何れかの気筒に対して噴射する。一方、燃料噴射手段は、暫定目標スロットル弁開度が第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、決定された第2噴射量の燃料を上記特定の気筒に対して噴射する。
本装置によれば、運転者により操作されたアクセルペダルの操作量が取得され、所定周期の演算時点にて、取得されたアクセルペダルの操作量に応じ暫定目標スロットル弁開度が演算される。車両の加速が開始したと判定された場合、運転者の加速要求の強さに応じた値が取得され、その加速要求が強いか弱いかが判定される。
そして、加速要求についての判定以降、暫定目標スロットル弁開度が演算時点にて演算される毎に、初期加速期間で加速要求が強いと判定されていた場合、演算された暫定目標スロットル弁開度が、その演算時点から第1遅延時間(0を含む。)だけ経過した第1時点における目標スロットル弁開度として設定される。一方、加速要求についての判定以降、暫定目標スロットル弁開度の演算時点毎に、初期加速期間で加速要求が弱いと判定されていた場合、演算された暫定目標スロットル弁開度が、その演算時点から第2遅延時間(第2遅延時間は第1遅延時間よりも長い。)だけ経過した第2時点における目標スロットル弁開度として設定される。
更に、暫定目標スロットル弁開度が第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、その暫定目標スロットル弁開度の演算時点から第1遅延時間の経過後に実際のスロットル弁の開度が第1時点の目標スロットル弁開度と等しくなるように、スロットル弁が駆動制御される。
この場合、このスロットル弁の駆動制御とともに、アクセルペダルの操作量に応じて変化する値に基づいて、多気筒のうちの何れかの気筒に噴射される燃料の第1噴射量が決定され、この決定された第1噴射量の燃料がその何れかの気筒に対して噴射される。先述したように、このアクセルペダルの操作量に応じて変化する値は、例えば、実際のスロットル弁の開度である。即ち、アクセルペダルの操作量に応じて目標とするスロットル弁の開度が設定され、この目標スロットル弁開度に応じてスロットル弁が駆動制御される。そして、その実際のスロットル弁の開度が検出され、この検出された実際のスロットル弁の開度と、機関の回転速度とに基づいて、上記第1噴射量が決定される。
これに対し、暫定目標スロットル弁開度が第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、その暫定目標スロットル弁開度の演算時点から第2遅延時間の経過後に実際のスロットル弁の開度が第2時点の目標スロットル弁開度と等しくなるように、スロットル弁が駆動制御される。
この場合、このスロットル弁の駆動制御とともに、将来におけるスロットル弁の駆動制御に用いるために設定されている複数の第2時点の目標スロットル弁開度のうちの何れかの目標スロットル弁開度が用いられて、多気筒のうちの特定の気筒の吸気行程において吸入される空気の量が予測される。この予測された空気の量に基づいてその特定の気筒に噴射される燃料の第2噴射量が決定され、決定された第2噴射量の燃料が特定の気筒に対して噴射される。
運転者の加速要求に応じて、上述した第1遅延時間又は第2遅延時間が設定されることによる効果について説明する。つまり、本装置においては、アクセルペダルの操作に応じて暫定目標スロットル弁開度が決定された後、この暫定目標スロットル弁開度に対応した目標スロットル弁開度に基づきスロットル弁が駆動制御されるまでの遅延時間は、加速要求が弱い場合よりも加速要求が強い場合のほうが短い。
例えば、加速要求が弱い場合の上記第2遅延時間として、所定のクランクアングルに対応した燃料噴射の開始直前の時点(その燃料の噴射量を演算する必要がある燃料噴射量演算時点)から吸気弁閉弁時までの時間を想定することによって、燃料噴射量演算時点において、将来の吸気弁閉弁時における目標スロットル弁開度が確定する。これによると、将来の吸気弁閉弁時における実際のスロットル弁の開度は、この予め設定された目標スロットル弁開度に追従するから、上記物理モデルを用いた吸入空気量の予測を適切に行うことができることになる。なお、より具体的に、第2遅延時間は、機関の回転速度に応じて可変に設定してもよいが、機関の回転速度の代表値に合わせた固定値を設定してよい。
そして、運転者の加速要求が弱い場合、このように予測された吸入空気量に基づき、更に別途設定された目標空燃比が用いられて、燃料噴射気筒(特定の気筒)に噴射される燃料の第2噴射量が決定され、決定された第2噴射量の燃料が燃料噴射気筒に対して噴射される。その結果、目標空燃比に対して燃料噴射量に過不足の略ない燃料噴射が達成され、これによってエミッションが良好に維持される。
これに対し、運転者の加速要求が強い場合、目標スロットル弁開度の遅延時間として設定される第1遅延時間は、第2遅延時間よりも短い。そのため、運転者がアクセルペダルを踏み込んだ後、そのアクセルペダルの操作量に応じたスロットル弁の駆動制御と、そのスロットル弁の開度に応じて吸入される空気の量に見合う噴射量の燃料噴射とが実行されて機関のトルクが増大するまでの時間間隔がより短い。その結果、運転者は、加速要求が弱い場合よりも良好な機関又は機関の搭載された車両のレスポンスを感ずることができる。特に、第1遅延時間に0を用いることによって機関のレスポンスを格段に向上させることができる。
なお、この加速要求が強い場合においては、より短い遅延時間が設定されるから、上述の加速要求が弱い場合とは異なり、燃料噴射量演算時点において、その将来の吸気弁閉弁時における目標スロットル弁開度(及びこれに追従する実際のスロットル弁の開度)を確定することはできないことがある。このとき、アクセル操作時に、燃料噴射気筒の吸気行程における吸入空気量を正確に予測することはできないので、目標空燃比に応じた的確な燃料噴射量を定めることは困難である。しかし、そのようなものでも、アクセルペダルの操作量に応じて目標スロットル弁開度を設定し(更にこれに基づいて実際のスロットル弁の開度を推定し、又は、実際のスロットル弁の開度を検出して)、上述した物理モデルの下で、その吸気行程における吸入空気量の推測、及び、これに基づいた第2噴射量の決定を行うことは可能である。
また、本発明の燃料噴射制御装置において、加速要求判定手段は、車両の加速が開始したと判定された時点から所定時間が経過する時点までの初期加速期間に、上述した加速要求についての判定を行うように構成されていることが好ましい。
ここにいう初期加速期間は、具体的には、アクセルペダルの開度のとり得る最大開度に対する現時点のアクセルペダルの開度の比率が、アクセルペダルの全閉に対応する0%から、10%に達するまでの期間としてよい。また、初期加速期間は、暫定目標スロットル弁開度や目標スロットル弁開度や実際のスロットル弁の開度が0°から5°に達するまでの期間、これらの値が0から変化し始めた後に所定時間が経過するまでの期間等としてもよい。
本装置によれば、初期加速期間において、運転者の加速要求の強さが判定される。通常、運転者の加速要求の強さは、加速を開始した初期において顕著に現れるであろうから、特にこの初期加速期間では、的確に、運転者の加速要求の強さを推定することができる。
更に、この燃料噴射制御装置において、目標スロットル弁開度設定手段は、初期加速期間では、加速要求が強いか弱いかに関わらず、暫定目標スロットル弁開度演算手段により演算された暫定目標スロットル弁開度を、第1時点の目標スロットル弁開度として設定するように構成されていることが好ましい。
これによれば、初期加速期間において、常に、第1遅延時間及び第2遅延時間と2つの長さの遅延のうち、第1遅延時間に対応する、より短い遅延が設定されることになる。いま運転者の加速要求が強かったものとして、もし初期加速期間中に長い遅延が設定されていると、アクセルペダルが踏み込まれてから加速要求が強いと判定されるまでの間に、運転者は、機関のレスポンスが悪いと感じ得る。これに対し、初期加速期間中に短い遅延が設定されていると、アクセルペダルが踏み込まれてから加速要求が強いと判定されるまでの間に、運転者は、機関のレスポンスが悪いと感じ難い。つまり、初期加速期間において、車両のレスポンス性を向上させることができる。
本燃料噴射制御装置において、運転者の加速要求の強さを表す指標に、(1)アクセルペダルの操作量の時間的変化率、(2)変速機の変速比、又は(3)車両の走行速度を用いることができる。
即ち、上述の装置において、その一態様として、(1)加速要求取得手段は、加速要求の強さに応じた値として、アクセル操作量取得手段により取得されたアクセルペダルの操作量の時間的変化率を取得するようになっていることが好ましい。このとき、加速要求判定手段は、取得された操作量の時間的変化率が所定の変化率閾値より大きい場合に加速要求が強いと判定し、取得された操作量の時間的変化率が変化率閾値より小さい場合に加速要求が弱いと判定するようになっている。
ここにいう「アクセルペダルの操作量の時間的変化率」として、初期加速期間での任意の2つの時点間におけるアクセルペダル操作量の時間変化率の値を用いることができる。例えば、初期加速期間の開始時点におけるアクセルペダル操作量と、初期加速期間の終了時点におけるアクセルペダル操作量との間の時間変化率(即ち、初期加速期間におけるアクセルペダルの平均踏み込み速度)を用いてよい。
更に、この「アクセルペダルの操作量の時間的変化率」として、先ず初期加速期間での任意の2つの時点間におけるアクセルペダル操作量の時間変化率を、別の異なる時点間につき複数個求め、その複数個の時間変化率から算出される平均の時間変化率の値を用いてもよい。
ここでは、運転者がアクセルペダルを急いで踏み込んだ場合に限って、その加速要求が強いと推定される。通常、アクセルペダルを踏み込む速度に、運転者の加速要求が直接的に反映されるものであるから、アクセルペダル踏み込み速度に基づく加速要求の強さの推定は適切である。
また、他の態様として、(2)加速要求取得手段は、加速要求の強さに応じた値として、車両の変速機の変速比に応じた値を取得するようになっていることが望ましい。このとき、加速要求判定手段は、取得された変速比に応じた値と、所定の変速比を示す値との比較によって、実際の変速比が所定の低速段側変速比にあることが検出された場合に加速要求が強いと判定するようになっている。一方、加速要求判定手段は、取得された変速比に応じた値と、上記所定の変速比を示す値との比較によって、実際の変速比が低速段側変速比よりも高速段側となる高速段側変速比にあることが検出された場合に加速要求が弱いと判定するようになっている。
ここでは、初期加速期間中に変速機の変速比が低速段側にある場合に限って、運転者の加速要求が強いと推定される。通常、変速機がローギア等の低速段に入っている間に、運転者がアクセルペダルを踏むことは、比較的低速で走行している車両の速度を上げようとするものであるため、運転者がアクセルペダルを操作し始めた初期加速期間中に、変速機がローギアに入っていることによって、その加速要求が強いと推定することは適切である。
更に、他の態様として、(3)加速要求取得手段は、加速要求の強さに応じた値として、車両が走行する速度を取得するようになっていてもよい。このとき、加速要求判定手段は、取得された車両の速度が所定の速度閾値より小さい場合に加速要求が強いと判定し、取得された車両の速度が速度閾値より大きい場合に加速要求が弱いと判定するようになっている。
ここでは、初期加速期間中に車両の走行速度が小さい場合に限って、加速要求が強いと推定される。上述のように、通常、比較的低速で走行している車両の速度が上げられるとき、加速要求が強いと推定することは妥当である。
これらの態様の何れもが、簡便な構成によって、的確に、運転者の加速要求の強さを推定し得る。この加速要求の強さについての推定に基づき上述の燃料噴射制御を実行することによって、可能な限り良好なエミッションを維持するとともに、アクセルペダルの加速操作に応じてすばやいレスポンスを確保するという上述の効果が達せられる。
以下、本発明による内燃機関の燃料噴射制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本燃料噴射制御装置を火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図1には、1つの気筒(シリンダ)の縦断面のみを示しているが、他の気筒も同様の構成を備えている。また、機関10は、変速機を備えた車両に搭載されている。
内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、火花放電を行うことにより混合気に点火する点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38、及び、燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ39を備えている。
吸気系統40は、各気筒の吸気ポート31に連通し吸気通路の一端側を形成する吸気管(インテークマニホールド)41、吸気通路の他端側に設けられたエアフィルタ42、吸気通路内にありこの吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43、スロットル弁43を駆動するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ43a、及び、各気筒に向けて枝分かれした吸気管41の集合部となるサージタンク44を備えている。
スロットル弁アクチュエータ43aは、後述する電気制御装置70が達成する電子制御スロットル弁(制御)ロジックA1(図4)により目標スロットル弁開度TAtが与えられると、実際のスロットル弁開度TAが目標スロットル弁開度TAtとなるようにスロットル弁43を駆動制御するようになっている。
排気系統50は、各気筒の排気ポート34に枝分かれして連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51(実際には、エキゾーストマニホールド51の各枝分かれ部分が集合した集合部)に接続されたエキゾーストパイプ52、及び、エキゾーストパイプ52に配設(介装)された三元触媒53を備えている。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、吸気温センサ62、大気圧センサ(スロットル弁上流圧力センサ)63、スロットルポジションセンサ64、カムポジションセンサ65、クランクポジションセンサ66、水温センサ67、空燃比センサ68及びアクセル開度センサ69を備えている。
エアフローメータ61は、吸気通路内を流れる吸入空気の単位時間当たりの質量流量を検出し、質量流量Gaを表す信号を出力するようになっている。吸気温センサ62は、エアフローメータ61内に備えられていて、吸入空気の温度(吸気温度)を検出し、吸気温度Taを表す信号を出力するようになっている。大気圧センサ63は、スロットル弁43の上流の圧力(即ち、大気圧)を検出し、スロットル弁上流圧力Paを表す信号を出力するようになっている。スロットルポジションセンサ64は、スロットル弁43の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ65は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。クランクポジションセンサ66は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。水温センサ67は、機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温を表す信号を出力するようになっている。空燃比センサ68は、三元触媒53に流入する排ガス中の酸素濃度を検出することで空燃比を表す信号を出力するようになっている。アクセル開度センサ69は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、このアクセルペダル操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバス接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともにこの格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びに、ADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は、上記センサ61〜69と接続され、CPU71にセンサ61〜69からの信号を供給するとともに、このCPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39、及び、スロットル弁アクチュエータ43aに駆動信号を送出するようになっている。
次に、上記のように構成された本燃料噴射制御装置が、アクセルペダル81の加速操作後にどのように燃料噴射量fiを決定して燃料噴射を実行するかについて、先ずその概要を説明する。以下に述べる処理は、CPU71がプログラムを実行することにより行われる。
(燃料噴射制御の概要)
(燃料噴射制御の概要)
本燃料噴射制御装置は、定常運転時においてスロットル・ディレーを行っている。更に、本装置は、運転者による加速操作が開始された時点から所定の期間(初期加速期間)においてスロットル・ディレーを停止するとともに、その初期加速期間において運転者の加速要求が強いか弱いかを判定する。そして、本装置は、運転者の加速要求が弱いと判定された場合、スロットル・ディレーを開始(再開)する。一方、本装置は、運転者の加速要求が強いと判定された場合、スロットル・ディレーを停止する。実際には、初期加速期間においてスロットル・ディレーは停止されているから、本装置は、運転者の加速要求が強いと判定された場合、スロットル・ディレーを継続する。
スロットル・ディレーは、ある時点にて検出されたアクセルペダル操作量Accpに応じて決定される暫定目標スロットル弁開度TAaccを、その時点の目標スロットル弁開度TAtに設定するのではなく、その時点から所定の遅延時間TDだけ将来の時点における目標スロットル弁開度TAtに設定するとともに、ある時点における実際のスロットル弁開度TAを、その時点におけるものとして設定されている目標スロットル弁開度TAtに一致させる制御である。
従って、スロットル・ディレーを行っている場合、本装置は、現時点から遅延時間TDだけ将来の時点までの目標スロットル弁開度TAtを、現時点において把握している。そして、本装置は、現時点において把握しているこれら将来の目標スロットル弁開度TAtに基づいて、現時点から遅延時間TDだけ将来の時点までの実際のスロットル弁開度TAを推定することが可能となる。この推定された実際のスロットル弁開度TAを推定スロットル弁開度TAestという。
ところで、吸気行程を迎えようとしている気筒又は吸気行程中の気筒(便宜上、「燃料噴射気筒」という。)に対して燃料を噴射する燃料噴射制御装置は、その燃料噴射気筒の吸気弁が閉弁する時点(吸気弁閉弁時)より前の時点(後述する燃料噴射量演算時点t0)までに、この燃料噴射気筒に対して燃料を噴射しなければならない。この燃料噴射を行うためには、その燃料噴射の開始前の時点までに同燃料噴射を行う燃料量(燃料噴射量fi)を決定しなければならない。更に、この燃料噴射量fiは、下記数1に示したように、機関に供給される混合気の空燃比が、通常は理論空燃比前後の値に設定される目標空燃比AbyFに一致するように、燃料噴射気筒に吸入されている空気量(筒内吸入空気量)MCに基づいて定められなくてはならない。従って、燃料噴射制御装置は、燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時における筒内吸入空気量MCを前もって予測する必要がある。
そこで、本燃料噴射制御装置は、先ず、上述したスロットル・ディレーにより推定することが可能となった将来の時点における推定スロットル弁開度TAestを用いることによって、燃料噴射気筒の吸気弁32の閉弁時に、この燃料噴射気筒に吸入されているであろう筒内吸入空気量MCを予測する。そして、本装置は、その予測した筒内吸入空気量MCを上記数1に適用することによって、燃料噴射量fiを決定する。
更に、この筒内吸入空気量MCの予測方法について、より具体的に述べると、筒内吸入空気量MCは、吸気管41内の空気の圧力(吸気管内空気圧力)Pm及び温度(吸気管内空気温度)Tmと密接な関係にある。また、吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmは、吸入空気についての物理モデル(図4に示した後述する空気モデルM2)の下で、微小時間(演算周期)ΔTt毎に推定される推定スロットル弁開度TAestを用いながら、燃料噴射気筒の吸気弁32の閉弁時まで順次推定していくことができる。なお、この微小時間ΔTtは、クランク軸が360°回転する時間に比べて十分に短いことが好ましい。
そこで、本装置は、スロットル・ディレーを行っている間、上述した物理モデルと、スロットル・ディレーの結果として得られる推定スロットル弁開度TAestとを用いて、吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを順次推定し、この順次推定された吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmから筒内吸入空気量MCを求め、この筒内吸入空気量MCと、上記数1とから燃料噴射量fiを決定する。
前述したように、本装置は、初期加速期間の経過後であって、加速要求が弱いと判定された場合、スロットル・ディレーを行う。従って、この場合、本装置は、機関10に供給される混合気の空燃比を目標空燃比AbyFに略一致させるのに過不足のない燃料噴射量fiの燃料を燃料噴射気筒に噴射することができ、これによってエミッションを良好にすることができる。
一方、本装置は、初期加速期間中に加速要求が強いと判定し、その後、この判定結果によりスロットル・ディレーを停止する場合、スロットル弁開度TAと、エンジン回転速度NEとに基づいて、燃料噴射量fiを決定する。
なお、このようなスロットル弁開度TAと、エンジン回転速度NEとに基づく燃料噴射量fiの決定に代えて、本装置が、スロットル・ディレーを停止する場合にも、上述のスロットル・ディレーを行う場合と同様に、推測した筒内吸入空気量MCに基づいて燃料噴射量fiを決定してもよい。つまり、アクセルペダル操作量Accpに応じた目標スロットル弁開度TAt(後述のように、更にこの目標スロットル弁開度TAtに応じた推定スロットル弁開度TAest)を用いて筒内吸入空気量MCを推測し、推測された筒内吸入空気量MCに基づいて燃料噴射量fiを決定することが可能である。この推測した筒内吸入空気量MCは、アクセルペダル操作量Accpに応じて変化する値となっている。
ただし、アクセルペダル81の操作に対して十分な遅延時間を確保せずにスロットル弁43の開度を制御するとき、アクセル操作時に筒内吸入空気量MCを正確に推測(予測)することは困難であるから、その燃料噴射気筒における燃料噴射量fiを目標空燃比AbyFに対して精密に求めることは通常難しい。
(目標スロットル弁開度TAtの設定の概要)
(目標スロットル弁開度TAtの設定の概要)
本装置の一つの特徴は、運転者の加速要求が強い場合と弱い場合とで異なる目標スロットル弁開度TAtを設定することにある。上述のように、本装置は、初期加速期間において加速要求が強いと判定した場合にスロットル・ディレーを停止し、また、加速要求が弱いと判定した場合にスロットル・ディレーを行うから、本装置は、それぞれの場合に応じて異なる目標スロットル弁開度TAtをスロットル弁43に対して設定する。
先ず、初期加速期間で運転者の加速要求が強かった場合に設定される目標スロットル弁開度TAt(図2(C))について説明する。本装置は、加速が開始される前の時刻ta以前では、スロットル・ディレーを行っている。
本装置は、時刻taにて、アクセルペダル81の操作量Accpに基づき車両の加速が開始したと判定すると、この時刻taを初期加速開始時点として設定する。本装置は、アクセルペダル操作量Accpの値が所定値に達した時点tbを、初期加速終了時点として設定する。ここにいう時刻taから時刻tbまでが初期加速期間である。本装置は、この初期加速期間でスロットル・ディレーを停止する。即ち、本装置は、初期加速期間中、暫定目標スロットル弁開度TAacc(同図2(B))に対して遅延のない目標スロットル弁開度TAt(同図2(C))を設定する。
時刻tbにて、初期加速期間が終了するとき、本装置は、運転者の加速要求が強かったか弱かったかを判定する。本例では、加速要求の強さに応じた値として、初期加速期間(時刻ta〜tb)におけるアクセルペダル81の踏み込み速度vapを用いる。このアクセルペダル81の踏み込み速度vapは、加速操作時におけるアクセルペダル操作量Accpの時間変化率であって、以下、アクセルペダル速度vapという。
初期加速期間において、アクセルペダル速度vapが所定のアクセルペダル速度閾値vthより大きく(即ち、運転者がアクセルペダル81を急いで踏み込んでおり)、これにより、本装置が、運転者の加速要求が強いと判定していた場合、本装置は、初期加速終了時点tb以降も、スロットル・ディレーの停止を継続する。即ち、本装置は、初期加速期間が経過した後も、暫定目標スロットル弁開度TAaccに対して遅延のない目標スロットル弁開度TAtを継続して設定していく。
これに対し、初期加速期間で運転者の加速要求が弱かった場合に設定される目標スロットル弁開度TAt(図3(C))について説明する。本装置は、初期加速期間(時刻ta〜時刻tb)では、上述した加速要求が強かった場合と同様、言い換えれば運転者の加速要求が強いか弱いかに関わらず、スロットル・ディレーを停止する。即ち、本装置は、初期加速期間では、暫定目標スロットル弁開度TAacc(同図3(B))に対して遅延のない目標スロットル弁開度TAt(同図3(C))を設定する。
初期加速期間において、アクセルペダル速度vapがアクセルペダル速度閾値vthより小さく(即ち、運転者がアクセルペダル81を緩やかに踏み込んでおり)、これにより、本装置が、運転者の加速要求が弱いと判定していた場合、本装置は、時刻tb〜tcにおける遅延時間TD分の切替期間を経た後、スロットル・ディレーを開始する。即ち、本装置は、時刻tc以降、暫定目標スロットル弁開度TAaccを、その演算された時点から遅延時間TDだけ遅延した時点の目標スロットル弁開度TAtとして設定していく。
本装置は、運転者の加速要求が強い場合にも弱い場合にも、スロットル弁開度TAが、以上説明してきた目標スロットル弁開度TAtと等しくなるように、スロットル弁43を駆動制御する。
以上のように、本装置においては、初期加速期間での運転者の加速要求が強いか弱いかの判定に応じて異なる目標スロットル弁開度TAtが初期加速期間経過後に設定される。そして、この設定された目標スロットル弁開度TAtに追従するように、スロットル弁43が駆動制御される。これらとともに、本装置においては、初期加速期間での運転者の加速要求が強いか弱いかの判定に合わせて異なる燃料噴射量の燃料噴射が実行される。
(各部の具体的構成、動作等)
(各部の具体的構成、動作等)
本燃料噴射制御装置の各部の構成、動作等についてより具体的に説明する。図4の機能ブロック図に示したように、本装置は、上述した燃料噴射制御及び目標スロットル弁開度TAtの設定を達するために、主として、電子制御スロットル弁ロジックA1、電子制御スロットル弁モデル(計算部)M1、吸入空気モデルM2、及び、噴射量決定ロジックA2を有している。
<電子制御スロットル弁ロジックA1>
<電子制御スロットル弁ロジックA1>
電子制御スロットル弁ロジックA1は、暫定目標スロットル弁開度演算部91と、第1仮想スロットル弁開度設定部92と、第2仮想スロットル弁開度設定部93と、加速要求判定部94と、目標スロットル弁開度選択部95とを含んでいる。
暫定目標スロットル弁開度演算部91は、演算周期ΔTt(本例では、8msec)の経過毎にアクセル開度センサ69の出力値に基づいてアクセルペダル操作量Accpを読み込む。そして、暫定目標スロットル弁開度演算部91は、読み込んだアクセルペダル操作量Accpと、テーブルMapTAとに基づいて暫定目標スロットル弁開度TAaccを求める(演算する)。このテーブルMapTAは、図5に示したようにアクセルペダル操作量Accpと暫定目標スロットル弁開度TAaccとの関係を規定したテーブルであって,ROM72内に記憶されている。
第1仮想スロットル弁開度設定部92は、暫定目標スロットル弁開度TAaccに基づいて第1仮想スロットル弁開度TAt1を設定する(図2(C)及び図6)。また、第2仮想スロットル弁開度設定部93は、暫定目標スロットル弁開度TAaccに基づいて第2仮想スロットル弁開度TAt2を設定する(図3(C)及び図6)。ここで、第1仮想スロットル弁開度TAt1は、暫定目標スロットル弁開度TAaccに対して遅延を有しない暫定の目標スロットル弁開度である。即ち、本例では、第1仮想スロットル弁開度TAt1は、暫定目標スロットル弁開度TAaccと同じ値である。また、第2仮想スロットル弁開度TAt2は、暫定目標スロットル弁開度TAaccを遅延時間TD(本例では、32ms)だけ遅延させた暫定の目標スロットル弁開度である。
加速要求判定部94は、初期加速期間において、アクセルペダル操作量Accpからアクセルペダル速度vapを求め、アクセルペダル速度vapが、アクセルペダル速度閾値vthより大きいか否かを判定する。加速要求判定部94は、アクセルペダル速度vapがアクセルペダル速度閾値vthより大きい場合に運転者の加速要求が強いと判定し、また、アクセルペダル速度vapがアクセルペダル速度閾値vthより小さい場合に運転者の加速要求が弱いと判定する。
目標スロットル弁開度選択部95は、初期加速期間において、第1仮想スロットル弁開度演算部92で得られた第1仮想スロットル弁開度TAt1の値を選択して目標スロットル弁開度TAtとして設定する。そして、目標スロットル弁開度選択部95は、加速要求判定部94が初期加速期間で加速要求は強いと判定していた場合、初期加速期間の終了後も引き続いて、第1仮想スロットル弁開度TAt1の値を目標スロットル弁開度TAtとして設定していく。
一方、目標スロットル弁開度選択部95は、加速要求判定部94が初期加速期間で加速要求は弱いと判定していた場合、初期加速期間の終了後に更に切替期間(図3(C)に示した時刻tb〜時刻tcの遅延時間TD分の期間)を経過した後から、第2仮想スロットル弁開度演算部93で得られた第2仮想スロットル弁開度TAt2の値を選択して目標スロットル弁開度TAtとして設定していく。
運転者の加速要求が弱いと判定されていた場合、上記切替期間によって、初期加速期間での第1仮想スロットル弁開度TAt1による目標スロットル弁開度TAtが、初期加速期間経過後の第2仮想スロットル弁開度TAt2による目標スロットル弁開度TAtに切り換えられる。この切替期間中には、目標スロットル弁開度TAtとして、初期加速終了時点tbの値TAeが維持されている。
このようにして目標スロットル弁開度選択部95において現時点に設定される目標スロットル弁開度TAtに基づいて、スロットル弁アクチュエータ43aはスロットル弁43を駆動制御する。
<電子制御スロットル弁モデルM1>
<電子制御スロットル弁モデルM1>
電子制御スロットル弁モデルM1は、スロットル・ディレーが行われる場合、暫定目標スロットル弁開度TAaccから、推定スロットル弁開度TAestを求めるようになっている。更に、この場合、吸入空気モデルM2がこの推定スロットル弁開度TAestを用いて演算を行う。本例では、下記数2が成り立つものとみなしている。
推定スロットル弁開度TAestを上記数2により求めてよい理由について説明する。いま、目標スロットル弁開度TAtが電子制御スロットル弁ロジックA1からスロットル弁アクチュエータ43aに出力されたとすると、このアクチュエータ43aの機械的な遅れや、スロットル弁43の慣性などにより、実際のスロットル弁開度TAは、ある遅れΔtをもって目標スロットル弁開度TAtに追従する(図2(D)又は図3(D))。
しかしながら、通常、スロットル弁アクチュエータ46aに対する駆動信号が、その送出された時点から殆ど遅れることなく実際のスロットル弁開度TAが目標スロットル弁開度TAtと一致するものとみなして、この遅れΔtを無視することができる。従って、実際のスロットル弁開度TAを推定した推定スロットル弁開度TAestは、目標スロットル弁開度TAtに等しいものとみなす。つまり、下記数3が成り立つものとみなす。
また、スロットル・ディレーによって、第2仮想スロットル弁開度TAt2による目標スロットル弁開度TAtが設定されるので、現演算時点から遅延時間TD後に、スロットル弁アクチュエータ46aに対して出力される目標スロットル弁開度TAtの値は、現演算時点における暫定目標スロットル弁開度TAaccの値に等しい(図6)。つまり、下記数4が成り立つものとみなす。
上記数3及び数4から数2が得られ、従って、電子制御スロットル弁モデルM1は、推定スロットル弁開度TAestとして、その推定スロットル弁開度TAestが設定される時点と略同一の時点に演算された暫定目標スロットル弁開度TAaccの値を用いてよいことがわかる。
上述の数2とは異なり、この電子制御スロットル弁モデルM1は、例えば下記数5に示す他の数式を用いて、暫定目標スロットル弁開度TAaccから推定スロットル弁開度TAestを算出するようになっていてもよい。
上記数5において、TAest(k)は今回の演算時点にて新たに推定される推定スロットル弁開度TAestである。TAest(k-1)は今回の演算時点にて既に推定されていた最新の推定スロットル弁開度TAest(即ち、前回の演算時点にて推定された推定スロットル弁開度TAest)である。また、TAacc(k)は今回の演算時点にて新たに設定された暫定目標スロットル弁開度TAaccである。更に、関数f(TAacc,TAest)は、図7に示したように、TAaccとTAestとの差ΔTA(=TAacc−TAest)が大きい程大きい値をとる関数(ΔTAに関して単調増加する関数)である。
ここでは、現演算時点から遅延時間TD後にスロットル弁アクチュエータ46aに出力される目標スロットル弁開度TAtの値を上記数5に適用することによって得られる推定スロットル弁開度TAest(図6の推定スロットル弁開度TAest2)の値は、現演算時点における暫定目標スロットル弁開度TAaccの値を同数5に適用することによって得られる推定スロットル弁開度TAest(同図6の推定スロットル弁開度TAest1)の値に等しい。
電子制御スロットル弁モデルM1は、本例では上記数2によって、暫定目標スロットル弁開度TAaccを演算した現時点で、その暫定目標スロットル弁開度TAaccの値から、推定スロットル弁開度TAestを求める。そして、電子制御スロットル弁モデルM1は、現時点から、将来の遅延時間TD後の時点までの暫定目標スロットル弁開度TAaccと、推定スロットル弁開度TAestとを、現時点からの時間経過に対応させた形でRAM73に格納している。ここでは、現時点から遅延時間TDを経過した後の実際のスロットル弁開度TAは、現時点に求めた推定スロットル弁開度TAestに等しい値とみなされている。
<吸入空気モデルM2>
<吸入空気モデルM2>
吸入空気モデルM2(図4)は、吸気系統40における空気の挙動をモデル化したものであって、電子制御スロットル弁モデルM1が得た推定スロットル弁開度TAestを用いて、燃料噴射気筒の吸気行程における吸気弁閉弁時の筒内吸入空気量MCを予測する。この吸気弁閉弁時の筒内吸入空気量MCの予測のために、吸入空気モデルM2は、スロットルモデルM21、吸気弁モデルM22、吸気管モデルM23及び吸気弁モデルM24を備えている。各部M21〜M24の構成の概略は次の通りである。
スロットルモデルM21は、アクセル操作に応じて演算周期ΔTt毎に順次演算される推定スロットル弁開度TAestと、後述の吸気弁モデルM22が推定した筒内吸入空気流量(吸気弁32の周囲を通過して燃焼室25内に流入する空気の流量)mcと、後述の吸気管モデルM23が推定した吸気管内空気圧力Pmとを用いて、スロットル通過空気流量(吸気通路内においてスロットル弁43の周囲を通過する空気の流量)mtを推定するようになっている。吸気弁モデルM22は、後述の吸気管モデルM23が推定した吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmから、筒内吸入空気流量mcを求めるようになっている。
吸気管モデルM23は、スロットル通過空気流量mtと、筒内吸入空気流量mcと、前回の演算で得た吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmとを用いて、吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを推定するようになっている。吸気弁モデルM24は、吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを用いて筒内吸入空気流量mcを求め、更にこの求めた筒内吸入空気流量mcから筒内吸入空気量MCを求めるようになっている。
これらの各モデルM21〜M24は、k=1とする機関10の運転開始時から演算周期ΔTt毎の演算時点に各演算を行う。以下、(k-1)が付された各変数は、前回(k-1)回目の演算時点で推定された各物理量を表し、(k)が付された各変数は、今回k回目の演算時点で推定された各物理量を表す。
また、吸気管モデルM23を表す一般化された数式(後述する数12及び数13)は、吸気管41内の空気の圧力及び温度等の時間微分に関わる。吸気管モデルM23では、この時間微分項を含む数式が、マイクロコンピュータによる計算が可能となるように離散化されている(後述の数14及び数15)。
本装置は、これらの離散化された数式と、今回の演算時点において推定されている吸気管41内の吸入空気についての物理量とに基づいて、この今回の演算時点より演算周期ΔTtの後の次回の演算時点における吸入空気についての物理量を推定する。具体的には、同図4に示すように、吸気管モデルM23におけるk回目の演算結果が、スロットルモデルM21及び吸気弁モデルM22において、次にkに1が加えられてkが更新された後のk回目の演算時点で、吸気管モデルM23の(k-1)回目の演算結果として用いられる。更に、このスロットルモデルM21及び吸気弁モデルM22の(k-1)回目の演算結果から、吸気管モデルM23におけるk回目の演算結果が導かれる。
各モデルM21〜M24は、演算時点k=1から各演算を繰り返す。そして、燃料噴射量演算時点t0(図6の時刻t0)に対応する演算時点k=k0となったとき、電子制御スロットル弁モデルM1は、この演算時点k=k0における暫定目標スロットル弁開度TAacc(k0)に基づいて、その時刻t0から遅延時刻TDだけ経過した後における推定スロットル弁開度TAest(k0)を求めている。従って、この演算時点k=k0おける筒内流入空気流量mc(k0)は、(遅延時間TDがエンジン回転速度NEに対して適切な値となっていれば)吸気弁閉弁時近傍の筒内流入空気流量mcを表すことになる。
以下では、これらの吸入空気モデルM2を構成する上記各モデルM21〜M24の動作について概説する。各モデルM21〜M24は周知である。例えば特開2001−41095号公報、特開2003−184613号公報等に、推定スロットル弁開度TAestを用いて筒内吸入空気量MCを推定するための各モデルM21〜M24におけるより具体的な制御手順、各モデルM21〜M24の基礎とする原理等のその詳細が開示されている。必要に応じて当該文献を参照されたい。
−スロットルモデルM21−
−スロットルモデルM21−
スロットルモデルM21は、推定スロットル弁開度TAest(k-1)、後述の吸気弁モデルM22が演算した筒内吸入空気流量mc(k-1)、後述の吸気管モデルM23が演算した吸気管内空気圧力Pm(k-1)等を下記数6及び下記数7に適用することによって、スロットル通過空気流量mt(k-1)を推定するモデルである。下記数6及び下記数7は、上述した参照文献にあるように、エネルギー保存則、運動量保存則、質量保存則、及び状態方程式等の物理法則に基づいて得られる。
なお、後述する吸気管モデルM23は、数14及び数15に示すように、スロットルモデルM21の前回の演算時点(k-1)における演算結果mt(k-1)を用いて、今回の演算時点kにおける演算結果Pm(k),Tm(k)を導いている。その吸気管モデルM23での説明に合わせて、下記数6は、演算時点(k-1)における値に関する数式とした。後述する吸気弁モデルM22における数11でも、下記数6と同様に演算時点(k-1)における演算結果mc(k-1)を導いている。より正確に言うと、上述した燃料噴射量演算時点t0(図6)における推定スロットル弁開度TAestとして、推定スロットル弁開度TAest(k0)を用いるべきところ、本装置は推定スロットル弁開度TAest(k0-1)を用いている。
上記数6の筒内吸入空気流量mc(k-1)は、後述する吸気弁モデルM22で求められている。吸気管内空気圧力Pm(k-1)は、後述する吸気管モデルM23で求められている。また、大気圧センサ63により検出されたスロットル弁上流圧力(即ち、大気圧)Paが用いられる。なお、運転開始時点k=1における吸気管内空気圧力の初期値Pm(0)には、スロットル弁上流圧力Paが代入される。
Φは、上記数7に示すように(Pm/Pa)についての関数であり、値(Pm/Pa)と値Φ(Pm/Pa)との関係を規定するテーブルMapΦがROM72内に記憶されている。κは比熱比であり、以下このκを一定値として扱う。上記テーブルMapΦと、吸気管内空気圧力Pm(k-1)をスロットル弁上流圧力Paで除した値Pm(k-1)/Paとから、値Φ(Pm(k-1)/Pa)(=MapΦ(Pm(k-1)/Pa))が求められる。
同様に、このテーブルMapΦが参照されて、吸気管内空気圧力PmTAをスロットル弁上流圧力Paで除した値PmTA/Paから、値Φ(PmTA/Pa)(=MapΦ(PmTA/Pa))が求められる。ここにいう吸気管内空気圧力PmTAは、電子制御スロットル弁モデルM1で得た推定スロットル弁開度TAest(k-1)、エンジン回転速度NE、及び、吸気弁32の開閉タイミングVTに基づいて求められる。即ち、ROM72内には、推定スロットル弁開度TAest(k-1)、エンジン回転速度NE及び吸気弁32の開閉タイミングVTと、吸気管内空気圧力PmTAとの関係を規定するテーブルMapPmが記憶されている。吸気管内空気圧力PmTAは、このテーブルMapPmに基づく値MapPm(TAest(k-1),NE,VT)として求められる。
上記数6について、より詳細を説明する。一般に、スロットル通過空気mtsと、Φ(Pm/Pa)の値及び所定の係数k(流量係数、スロットル弁43による吸気通路の開口面積、吸気温度Ta、スロットル弁上流圧力Paなどから定まる係数)との間には、下記数8に示す関係が成り立つ。
上記数8において、機関10が定常状態にある場合(スロットル弁43の開度が一定のまま推移して吸気弁32の閉弁に至る場合)、スロットル通過空気流量をmtsTA、吸気管内空気圧力をPmTAとする。この場合、上記係数kと同様の係数k1を用いて、スロットル通過空気流量mtsTAは、下記数9のように、値Φ(PmTA/Pa)に係数k1を掛けたものとして表される。また、スロットル通過空気流量mt(k-1)は、下記数10のように、値Φ(Pm(k-1)/Pa)に、係数k1と同様の所定の係数k2を掛けたものとして表される。ここで、係数k1が係数k2と等しいものとみなし、更に、スロットル通過空気流量mtsTAを筒内吸入空気流量mc(k-1)として、上記数6が得られる。
以上のように、スロットルモデルM21は、先ず、値Φ(Pm(k-1)/Pa)を求め、また、推定スロットル開度TAest(k-1)を用いて求められた吸気管内空気圧力PmTA等に基づいて、値Φ(PmTA/Pa)を求める。筒内吸入空気流量mc(k-1)は、次に示す吸気弁モデルM22で求められているから、上記数6の右辺の各因数が定まる。スロットルモデルM21は、各因数の積としてスロットル通過空気流量mt(k-1)を求める。
−吸気弁モデルM22−
−吸気弁モデルM22−
吸気弁モデルM22は、吸気管内空気圧力Pm(k-1)及び吸気管内空気温度Tm(k-1)から、筒内流入空気流量mc(k-1)を推定するモデルである。この吸気管内空気圧力Pm(k-1)及び吸気管内空気温度Tm(k-1)は、後述する吸気管モデルM23により求められている。いま、吸気行程(吸気弁閉弁時を含む。)における気筒内の圧力は、吸気弁32の上流の圧力、即ち、吸気管内空気圧力Pmとみなすことができるので、筒内流入空気流量mcは吸気弁閉弁時の吸気管内空気圧力Pmに比例すると考えることができる。そこで、この吸気弁モデルM22は、筒内流入空気流量mcを、経験則に基づく下記数11に従って求める。
上記数11において、値Cは比例係数、値Dは筒内に残存していた既燃ガス量に対応する量である。値Cは、エンジン回転速度NE及び吸気弁32の開閉タイミングVTと値Cとの関係を規定するテーブルMapC、現時点のエンジン回転速度NE、及び、現時点の吸気弁32の開閉タイミングVTから求めることができる(C=MapC(NE,VT))。同様に、値Dは、エンジン回転速度NE及び吸気弁32の開閉タイミングVTと値Dとの関係を規定するテーブルMapD、現時点のエンジン回転速度NE、及び、現時点の吸気弁32の開閉タイミングVTから求めることができる(D=MapD(NE,VT))。上記テーブルMapC及び上記テーブルMapDはROM72内に記憶されている。なお、上述のように、吸気管内空気圧力の初期値Pm(0)には、スロットル上流圧力Paが代入されるが、更に、吸気管内空気温度の初期値Tm(0)には、吸気温度Taが代入される。
以上のように、吸気弁モデルM22は、吸気管モデルM23により推定された吸気管内空気圧力Pm(k-1)及び吸気管内空気温度Tm(k-1)と、現時点のスロットル通過空気温度Taとを上記数11に適用することによって、筒内流入空気流量mc(k-1)を推定する。
−吸気管モデルM23−
−吸気管モデルM23−
吸気管モデルM23は、吸気管41内の空気に関する質量保存側とエネルギー保存則とに基づいた下記数12及び下記数13を、それぞれ差分法により離散化した下記数14及び下記数15によって、吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを求めるモデルである。即ち、数12及び数13のスロットル通過空気流量mt、筒内吸入空気流量(吸気管41から流出する空気の流量)mc、吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを、それぞれ離散化することによって、数14及び数15が得られている。
ここで、Rは気体定数であり、Vmはスロットル弁43から吸気弁32までの吸気通路の容積である。また、スロットル通過空気流量mt(k-1)がスロットルモデルM21により得られており、筒内流入空気流量mc(k-1)が吸気弁モデルM32により得られている。比熱比κ及び現時点の吸気温度Taも用いられる。
吸気管モデルM23は、スロットル通過空気流量mt(k-1)、筒内流入空気流量mc(k-1)、前回演算時に推定された吸気管内空気圧力Pm(k-1)及び吸気管内空気温度Tm(k-1)を、上記数14及び上記数15に適用することによって、今回の最新の吸気管内空気圧力Pm(k)及び吸気管内空気温度Tm(k)を演算する。
−吸気弁モデルM24−
−吸気弁モデルM24−
吸気弁モデルM24は上記吸気弁モデルM22と同様のモデルを含んでいる。即ち、吸気弁モデルM24は、吸気管内空気圧力Pm(k)及び吸気管内空気温度Tm(k)を上記数11に代入することによって、筒内流入空気流量mc(k)を求める。この吸気管内空気圧力Pm(k)及び吸気管内空気温度Tm(k)は、吸気管モデルM23が新たに求めたものである。更に、本例では数2を採用しているから、燃料噴射を開始する直前の演算時点k=k0における暫定目標スロットル弁開度TAacc(k0)は、その対応する時刻t0から遅延時刻TDだけ経過した後における実際のスロットル弁43の開度を推定した推定スロットル弁開度TAest(k0)を表す。
従って、この演算時点k=k0における筒内流入空気流量mc(k0)は、吸気弁閉弁時近傍の筒内流入空気流量を表すことになる。(上述のように、本例の吸気管モデルM23においては数14及び数15の離散化が行われているため、吸入空気モデルM2は、厳密には、演算時点k=k0-1における推定スロットル弁開度TAest(k0-1)を用いて、演算時点k=k0における筒内流入空気流量mc(k0)を求める。)
更に、吸気弁モデルM24は、燃料噴射の開始直前の演算時点に演算した筒内流入空気流量mc(k0)に吸気弁開弁時間Tintを乗じることにより、吸気弁開弁時における筒内吸入空気量MCを求める。吸気弁開弁時間Tintは、現時点のエンジン回転速度NE及び現時点の吸気弁32の開閉タイミングVTから算出されている。
<噴射量決定ロジックA2>
<噴射量決定ロジックA2>
噴射量決定ロジックA2は、筒内吸入空気量MC又はスロットル弁開度TAに基づいて燃料噴射量fiを決定するようになっている。目標スロットル弁開度選択部95が、目標スロットル弁開度TAtとして第2仮想スロットル弁開度TAt2(図3(C))を選択している場合(即ち、初期加速期間で加速要求が弱いと判定されていた場合であって初期加速期間が経過した後において)、噴射量決定ロジックA2は、吸入空気モデルM2で算出された筒内吸入空気量MCを上記数1に適用することにより燃料噴射量fiを決定する。インジェクタ39は、この燃料噴射量fiに応じた燃料噴射を実行する。
一方、目標スロットル弁開度選択部95が、目標スロットル弁開度TAtとして第1仮想スロットル弁開度TAt1(図2(C))を選択している場合(即ち、初期加速期間において、及び、初期加速期間で加速要求が強いと判定されていた場合であって初期加速期間が経過した後において)、噴射量決定ロジックA2は、スロットル弁開度TA、エンジン回転速度NE、及び、所定のテーブル(推定スロットル弁開度TAest及びエンジン回転速度NEと、燃料噴射量fiとの関係を規定したテーブル)を用いて燃料噴射量fiを決定する。噴射量決定ロジックA2は、更に切替期間中においても、同様にして燃料噴射量fiを決定するものとする。インジェクタ39は、燃料噴射量fiに応じた燃料噴射を実行する。
なお、詳細には、噴射量決定ロジックA2は、目標スロットル弁開度選択部95から目標選択データSを入力するようになっている。この目標選択データSは、目標スロットル弁開度選択部95が、目標スロットル弁開度TAtを設定するに当たって、第1仮想スロットル弁開度TAt1及び第2仮想スロットル弁開度TAt2の何れを選択しているかを示すデータである。噴射量決定ロジックA2は、この目標選択データSによって、目標スロットル弁開度TAtが、第1仮想スロットル弁開度TAt1による場合と、第2仮想スロットル弁開度TAt2による場合とに応じて、適切な燃料噴射量fiを求める。
(実際の作動)
(実際の作動)
上述のように、本燃料噴射制御装置の特徴の一つは、目標スロットル弁開度TAtの設定、及び、この目標スロットル弁開度TAtの設定に対応した燃料噴射制御にある。以下では、目標スロットル弁開度TAtの設定に関わる作動について説明する。先ずその作動についての概要を説明すると、本装置は、アクセルペダル操作量Accpに応じて暫定目標スロットル弁開度TAaccを演算しており(詳細には図8を参照。)、この暫定目標スロットル弁開度TAaccを、その演算時点から遅延時間TDだけ保持する。この暫定目標スロットル弁開度TAaccを演算するルーチンを実行することによって、暫定目標スロットル弁開度演算手段の機能が達成される。
また、本装置は、初期加速期間において、運転者の加速要求の強さを判定する(詳細には図10を参照。)。この運転者の加速要求を判定するルーチンを実行することによって、加速要求取得手段と加速要求判定手段との機能が達成される。
更に、本装置は、初期加速期間において、第1仮想スロットル弁開度TAt1による目標スロットル弁開度TAtを設定するが、初期加速期間中に加速要求が強いと判定されていた場合、本装置は、初期加速期間経過後も継続して、第1仮想スロットル弁開度TAt1による目標スロットル弁開度TAtを設定する。他方、初期加速期間中に加速要求が弱いと判定されていた場合、本装置は、初期加速期間経過後、更に遅延時間TD分の切替期間を経過した後に、第2仮想スロットル弁開度TAt2による目標スロットル弁開度TAtを設定する(詳細には図11を参照。)。この目標スロットル弁開度TAtを設定するルーチンを実行することによって、目標スロットル弁開度設定手段の機能が達成される。
<暫定目標スロットル弁開度演算>
<暫定目標スロットル弁開度演算>
電気制御装置70のCPU71は、図8にフローチャートにより示した暫定目標スロットル弁開度演算ルーチンを演算周期ΔTtの経過毎に実行する。これによって、CPU71は、アクセルペダル操作量Accpから暫定目標スロットル弁開度TAaccを演算し、更に、この暫定目標スロットル弁開度TAaccを、仮想スロットル弁開度TAt(0)〜TAt(ntdly)として遅延時間TD分だけ保持する。遅延回数ntdlyは、遅延時間TDを演算周期ΔTtで除した値である。ここでは、仮想スロットル弁開度TAt(ntdly)は第1仮想スロットル弁開度TAt1(図2(C))に相当し、仮想スロットル弁開度TAt(0)は第2仮想スロットル弁開度TAt2(図3(C))に相当する。
具体的に説明すると、所定のタイミングになったとき、CPU71はステップ800から処理を開始し、ステップ805に進んで変数iに「0」を設定し、ステップ810に進んで変数iが遅延回数ntdlyと等しいか否かを判定する。最初にこのループが実行される時点では、変数iは「0」であるから、CPU71はステップ810にて「No」と判定する。そして、CPU71は、続くステップ815で、仮想スロットル弁開度TAt(i)に仮想スロットル弁開度TAt(i+1)の値を格納する。即ち、最初に変数iによるループが実行される場合、仮想スロットル弁開度TAt(0)に仮想スロットル弁開度TAt(1)の値が格納される。
次いで、CPU71は、ステップ820にて変数iの値に「1」だけ加えてステップ810に戻る。そして、変数iの値が遅延回数ntdlyより小さければ、再びステップ815,820を実行する。即ち、ステップ815,820は、変数iの値が増加されて遅延回数ntdlyと等しくなるまで繰り返し実行される。これにより、仮想スロットル弁開度TAt(i+1)の値が仮想スロットル弁開度TAt(i)に順次シフトされる。
例えば、ntdly=4とすると、図9に示すように、ある演算時点t5における新たな仮想スロットル弁開度TAtt5(0)〜TAtt5(3)の各値は、その前回の演算時点t4における仮想スロットル弁開度TAtt4(1)〜TAtt4(4)の各値にそれぞれ等しい。ここでは、taが時刻を表すものとして、仮想スロットル弁開度TAtta(0)〜TAtta(ntdly)は、それぞれ、時刻taにおける仮想スロットル弁開度TAt(0)〜TAt(ntdly)を表している。
前述のステップ820が繰り返されることにより変数iの値が遅延回数ntdlyと等しくなると、CPU71はステップ810にて「Yes」と判定してステップ825に進み、このステップ825にて現時点のアクセルペダル操作量Accpを取得する。
次に、CPU71はステップ830にて、このアクセルペダル操作量Accpに基づいて、暫定目標スロットル弁開度TAaccを求める。本例では、下記数16に示すように、前回の演算時点における暫定目標スロットル弁開度TAacc(k-1)と、アクセルペダル操作量Accpに応じて図5のテーブルMapTAから得られる値MapTA(Acc)とから、今回の暫定目標スロットル弁開度TAacc(k)が演算される。ここで、値m及び値nは、実験又はシミュレーション等によって定められる所定値である。
このステップ830における処理によって、例えば図2(A)及び(B)に示すように、アクセルペダル操作量Accpに対しなまって遅延した暫定目標スロットル弁開度TAaccが得られることになる。このようなフィルタリングよる遅延は、アクセルペダル操作量Accpの変化に対して、スロットル弁開度TAの変化をより緩やかにするために行う。
そして、CPU71はステップ835にて、この暫定目標スロットル弁開度TAaccの値を仮想スロットル弁開度TAt(ntdly)に設定して、続くステップ895にて本ルーチンを一旦終了する。図9に示す例において、演算時点t5でのステップ835の処理によって、仮想スロットル弁開度TAtt5(4)が新たに設定されている。
本ルーチンにおいては、これらのようにして、暫定目標スロットル弁開度TAaccが設定され、この暫定目標スロットル弁開度TAaccが遅延時間TD分だけ保持されている。
<加速要求判定>
<加速要求判定>
次に、CPU71が、運転者の加速要求の強さを判定するために実行する加速要求判定ルーチンについて、このルーチンをフローチャートにより示した図10を参照して説明する。CPU71は、所定時間の経過毎に、このルーチンを繰り返し実行するようになっている。
所定のタイミングになったとき、CPU71は、ステップ1000から処理を開始する。CPU71は、続くステップ1005にて、現時点が初期加速開始時点であるか否かを判定する。本例では、アクセルペダル操作量Accpの値が0から大きくなり始めた時点を初期加速開始時点としている。いま、その初期加速開始時点であるとすると、CPU71はステップ1005にて「Yes」と判定してステップ1010に進み、現在時刻の値を初期加速開始時点taとして設定する(図2又は図3を参照)。次いで、CPU71はステップ1095に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップ1005の判定時において、現時点が初期加速開始時点でないとすると、CPU71は同ステップ1005にて「No」と判定し、更にステップ1015にて初期加速終了時点であるか否かを判定する。本例では、アクセルペダル操作量Accpの値が所定値に達した時点を初期加速終了時点としている。いま、初期加速終了時点であるとすると、CPU71は同ステップ1015にて「Yes」と判定してステップ1020に進み、現在時刻の値を初期加速終了時点tbとして設定する。
次いで、CPU71はステップ1025にて、図8の暫定目標スロットル弁開度演算ルーチンで新たに演算されていた仮想スロットル弁開度TAt(ntdly)を、値TAeとして格納する。この値TAeは、上述した図3(C)又は図9の切替期間(時刻tb〜時刻tc)における目標スロットル弁開度TAtに対応し、図11に示す目標スロットル弁開度設定ルーチンにおいて用いられる。
そして、CPU71はステップ1030に進んで、初期加速期間におけるアクセルペダル速度vapを求めて、このアクセルペダル速度vapがアクセルペダル速度閾値vth以上であるか否かを判定する。アクセルペダル速度vapは下記数17によるものであり、この数17においてAccpbは時刻tbでのアクセルペダル操作量Accpである。ここでは、アクセルペダル速度vapを、初期加速開始時点taのアクセルペダル操作量「0」と、初期加速終了時点tbのアクセルペダル操作量Accpbとに基づいて算出しているが、初期加速期間における任意の2つの時点のアクセルペダル操作量Accpを検出して、それら一の時点におけるアクセルペダル操作量Accpと、他の時点におけるアクセルペダル操作量Accpとの間の時間変化率を、アクセルペダル速度vapとして算出してもよい。
ステップ1030における判定に応じて、CPU71はステップ1035,1040にて、加速要求フラグXの値を、加速要求が強いことを示す「1」、又は、加速要求が弱いことを示す「0」に設定する。即ち、アクセルペダル速度vapがアクセルペダル速度閾値vth以上である場合、CPU71はステップ1030にて「Yes」と判定する。この場合、CPU71はステップ1035にて、加速要求フラグXの値を「1」に設定し、初期加速期間において運転者の加速要求が強かったことを示すデータを後の処理のために保存する。
また、アクセルペダル速度vapがアクセルペダル速度閾値vthより小さい場合、CPU71はステップ1030にて「No」と判定する。この場合、CPU71はステップ1040にて、加速要求フラグXの値を「0」に設定し、初期加速期間において運転者の加速要求が弱かったことを示すデータを保存する。CPU71は、これらの処理の後にステップ1095に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
他方、ステップ1005及びステップ1015の両ステップにて「No」と判定された場合、即ち、現時点が初期加速期間の開始時点でもその終了時点でもない場合、CPU71はステップ1045にて、直近の初期加速期間が開始された後、所定時間が経過したか否かを判定する。直近の初期加速期間開始後に所定時間が経過していなかった場合、CPU71は、ステップ1045にて「No」と判定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、直近の初期加速期間開始後に所定時間が経過していた場合、CPU71はステップ1045にて「Yes」と判定する。そして、CPU71は、続くステップ1040で、加速要求フラグXの値を「0」にリセットする。この加速要求フラグXのリセットによって、図11に示した目標スロットル弁開度設定ルーチンにおいて、スロットル・ディレーを行うための目標スロットル弁開度TAtが設定される。即ち、本装置は、アクセルペダル81の加速操作時における初期加速期間等を除いた期間、即ち、通常時(定常運転時、減速運転時等)に、スロットル・ディレーを行うようになっている。CPU71は、このステップ1040での処理の後、ステップ1095に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
以上のように、本ルーチンにおいては、初期加速終了時点tbで、その初期加速期間でのアクセルペダル速度vapが大きいか小さいかが判定される。これに応じて、運転者の加速要求が強いか弱いかが推定され、加速要求が強かった場合には加速要求フラグXの値として「1」が設定され、他方、加速要求が弱かった場合には加速要求フラグXの値として「0」が設定される。
<目標スロットル弁開度設定>
<目標スロットル弁開度設定>
続いて、CPU71が、目標スロットル弁開度TAtを設定するために実行する目標スロットル弁開度設定ルーチンについて、図11を参照して説明する。CPU71は、所定時間の経過毎に、このルーチンを繰り返し実行するようになっている。ここでは、図8の暫定目標スロットル弁開度演算ルーチンで求めた仮想スロットル弁開度TAt(0),TAt(ntdly)の値、図10の加速要求判定ルーチンで設定した加速要求フラグXの値等が用いられる。
CPU71は、所定のタイミングになったとき、ステップ1100から処理を開始する。続くステップ1105にて、CPU71は現時点が初期加速期間中であるか否かを判定する。いま、初期加速期間中であるとすると、CPU71はステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1110に進み、図8の暫定目標スロットル弁開度演算ルーチンで得た仮想スロットル弁開度TAt(ntdly)を目標スロットル弁開度TAtとして設定する。つまり、初期加速期間では、加速要求が強いか弱いかに関わらず、スロットル・ディレーが停止される。そして、CPU71はステップ1195に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップ1105の判定時において、現時点が初期加速期間中でないとすると、CPU71は、同ステップ1105にて「No」と判定してステップ1115に進み、加速要求フラグXが「1」であるか否かを判定する。加速要求フラグXが「1」に設定されており、これにより、過去の初期加速期間において、運転者の加速要求が強いと判定されていた場合、CPU71は、ステップ1115にて「Yes」と判定して、ステップ1110に進む。このステップ1110にて、CPU71は、上述同様にスロットル・ディレーを停止させ、続くステップ1195にて本ルーチンを一旦終了する。
他方、ステップ1105及びステップ1115の両ステップにて「No」と判定された場合、即ち、現時点が初期加速期間でなく、且つ、加速要求フラグXが「0」に設定されていることにより過去の初期加速期間において運転者の加速要求が弱いと判定されていた場合、CPU71はステップ1120に進んで、現時点が切替期間(図3(C)の時刻tb〜時刻tc)中であるか否かを判定する。切替期間中である場合、CPU71は、同ステップ1120にて「Yes」と判定し、続くステップ1125にて、加速要求判定ルーチンにより保存されている値TAe(初期加速終了時点tbに設定されていた目標スロットル弁開度TAtの値)を目標スロットル弁開度TAtとして設定する。そして、CPU71はステップ1195にて本ルーチンを一旦終了する。
これに対し、ステップ1120の判定時において、現時点が切替期間中でなくその経過後であるとすると、CPU71は同ステップ1120にて「No」と判定する。続くステップ1130にて、CPU71は、暫定目標スロットル弁開度設定ルーチンにより求められた仮想スロットル弁開度TAt(0)の値を目標スロットル弁開度TAtとして設定する。この仮想スロットル弁開度TAt(0)は、現演算時点から遅延時間TD分だけ過去の演算時点にて演算され記憶されていた目標スロットル弁開度TAtであるから、スロットル・ディレーが行われる。そして、CPU71はステップ1195にて本ルーチンを一旦終了する。
このように、本ルーチンでは、初期加速期間において、及び、初期加速期間で加速要求が強いと判定されていた場合であって初期加速期間が経過した後において、遅延時間TD分の遅延を有しない仮想スロットル弁開度TAt(ntdly)(第1仮想スロットル弁開度TAt1)が目標スロットル弁開度TAtとして設定される。他方、初期加速期間で加速要求が弱いと判定されていた場合であって初期加速期間が経過した後において、遅延時間TD分の遅延を有する仮想スロットル弁開度TAt(0)(第2仮想スロットル弁開度TAt2)が目標スロットル弁開度TAtとして設定される。
また、本ルーチンでは、仮想スロットル弁開度TA(ntdly)による遅延時間TD分の遅延がない状態から、仮想スロットル弁開度TA(0)による遅延時間TD分の遅延がある状態まで移行する切替期間において、初期加速終了時に目標スロットル弁開度TAtとして設定されていた値TAeが、そのまま継続して目標スロットル弁開度TAtに設定される。
ここでは、スロットル弁43が駆動制御される時点においてどのように目標スロットル弁開度TAtが設定されるかを説明した。これに対して、暫定目標スロットル弁開度TAaccが演算された時点から見ると、特に、初期加速期間が経過した後にスロットル・ディレーが行われている場合、その演算時点で得られた暫定目標スロットル弁開度TAaccが、その演算時点から遅延時間TD分だけ将来の時点におけるスロットル弁43の目標スロットル弁開度TAtとして設定されている。
以上説明したように、本発明による内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、アクセルペダル操作量Accpが取得され、演算周期ΔTtの演算時点にて、取得されたアクセルペダル操作量Accpに応じ暫定目標スロットル弁開度TAaccが演算される。初期加速期間(時刻ta〜時刻tb)において、アクセルペダル速度vapが取得され、運転者の加速要求が強いか弱いかが判定される。
そして、加速要求についての判定以降、暫定目標スロットル弁開度TAaccが上記演算時点にて演算される毎に、初期加速期間で加速要求が強いと判定されていた場合、演算された暫定目標スロットル弁開度TAaccが、その演算時点(第1時点)における目標スロットル弁開度TAt(図2(C)に示した第1仮想スロットル弁開度TAt1による目標スロットル弁開度TAt)として設定される。
この場合、その第1時点で、実際のスロットル弁開度TAが、上記第1時点の目標スロットル弁開度TAtと等しくなるように、スロットル弁43が駆動制御される。このスロットル弁43の駆動制御とともに、アクセルペダル81に応じて変化するスロットル弁開度TA(及びエンジン回転速度NE)に基づいて、燃料噴射気筒に噴射される燃料噴射量fiが決定される。この決定された燃料噴射量fiの燃料が燃料噴射気筒に対して噴射される。
このような燃料噴射によると、初期加速期間経過後に、運転者は、加速要求が弱い場合よりも良好な機関10(又は機関10の搭載された車両)のレスポンスを感ずることができる。つまり、この加速要求が強いと判定されていた場合、目標スロットル弁開度TAtについて遅延時間TDが設定されていないから、運転者がアクセルペダル81を踏み込んだ後、その踏み込みに応じた燃料噴射が実行されることにより(即ち、その踏み込みに応じた目標スロットル弁開度TAtが設定されるとともに、その設定に基づいた燃料噴射量fiが決定され、その燃料噴射量fiの燃料が噴射されることにより)機関10のトルクが増大するまでの間隔が、遅延時間TDが設定される場合よりも短い。そのため、急加速を欲した運転者が、アクセル操作に対して車両のレスポンスが良くないと感ずることを防ぐことができる。
一方、加速要求についての判定以降、暫定目標スロットル弁開度TAaccの演算時点毎に、初期加速期間で加速要求が弱いと判定されていた場合、演算された暫定目標スロットル弁開度TAaccが、その演算時点から遅延時間TDだけ経過した第2時点における目標スロットル弁開度TAt(図3(C)に示した第2仮想スロットル弁開度TAt2による目標スロットル弁開度TAt)として設定される。
この場合、その暫定目標スロットル弁開度TAaccの演算時点から遅延時間TDの経過後に、実際のスロットル弁開度TAが、上記第2時点の目標スロットル弁開度TAtと等しくなるように、スロットル弁43が駆動制御される。このスロットル弁43の駆動制御とともに、将来におけるスロットル弁43の駆動制御に用いるために設定されている複数の上記第2時点の目標スロットル弁開度TAtのうちの、燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時に対応するものが用いられて、その燃料噴射気筒の吸気行程における筒内吸入空気量MCが予測される。この予測された筒内吸入空気量MCに基づいて、その燃料噴射気筒に噴射される燃料の燃料噴射量fiが決定される。この決定された燃料噴射量fiの燃料が燃料噴射気筒に対して噴射される。
このような燃料噴射によると、初期加速期間において運転者の加速要求が弱いと判定されていた場合(即ち、運転者が車両の緩やかな加速を望む場合であって、更にこの判定結果に基づいて暫定目標スロットル弁開度TAaccが上記第2時点の目標スロットル弁開度TAtとして設定される場合)、初期加速期間を経過した後に、目標空燃比AbyFに対して燃料噴射量に過不足の略ない燃料噴射が達成され、これによってエミッションが良好に維持される。
なお、上記実施形態に係る内燃機関の燃料噴射制御装置は、「車両に搭載された多気筒の内燃機関」に適用される。上記実施形態中のアクセル開度センサ69は、「運転者により操作されたアクセルペダルの操作量を取得するアクセル操作量取得手段」に相当する。暫定目標スロットル弁開度設定部91が、「所定周期の演算時点にて、取得されたアクセルペダルの操作量に応じ暫定目標スロットル弁開度を演算する暫定目標スロットル弁開度演算手段」に相当する。
そして、加速要求判定部94が、「車両の加速が開始したか否かを判定するとともに、その車両の加速が開始したと判定された場合、運転者が要求した車両の加速の程度である運転者の加速要求の強さに応じた値を取得する加速要求取得手段」と、「取得された加速要求の強さに応じた値と所定値との比較に基づいて、運転者の加速要求が強いか弱いかを判定する加速要求判定手段」とに相当する。
また、第1仮想スロットル弁開度設定部92、第2仮想スロットル弁開度設定部93及び目標スロットル弁開度選択部95が、「加速要求についての判定以降において、暫定目標スロットル弁開度が上記演算時点にて演算される毎に、加速要求が強いと判定されていた場合には、演算された暫定目標スロットル弁開度を、この演算時点から、0を含む所定の第1遅延時間だけ経過した第1時点における目標スロットル弁開度として設定し、加速要求が弱いと判定された場合にはこの演算時点にて演算された暫定目標スロットル弁開度を、その演算時点から、上記第1遅延時間よりも長い第2遅延時間だけ経過した第2時点における目標スロットル弁開度として設定する目標スロットル弁開度設定手段」に相当する。
更に、スロットル弁アクチュエータ43aは、「暫定目標スロットル弁開度が第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には演算時点から第1遅延時間の経過後に実際のスロットル弁の開度が第1時点の目標スロットル弁開度と等しくなり、暫定目標スロットル弁開度が第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合にはその演算時点から第2遅延時間の経過後に実際のスロットル弁の開度が第2時点の目標スロットル弁開度と等しくなるように、スロットル弁を駆動制御するスロットル弁制御手段」に相当する。
また、電子制御スロットル弁モデルM1及び吸入空気モデルM2が、「暫定目標スロットル弁開度が第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、将来におけるスロットル弁の駆動制御に用いるために設定されている複数の第2時点の目標スロットル弁開度のうちの何れかの目標スロットル弁開度を用いて、多気筒のうちの特定の気筒の吸気行程において吸入される空気の量を予測する吸入空気量予測手段」に相当する。
噴射量決定ロジックA2は、「暫定目標スロットル弁開度が第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には、アクセルペダルの操作量に応じて変化する値に基づいて多気筒のうちの何れかの気筒に噴射される燃料の第1噴射量を決定し、暫定目標スロットル弁開度が第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には、予測された空気の量に基づいて上記特定の気筒に噴射される燃料の第2噴射量を決定する燃料噴射量決定手段」に相当する。
更に、インジェクタ39は、「暫定目標スロットル弁開度が第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には、決定された第1噴射量の燃料を上記何れかの気筒に対して噴射し、暫定目標スロットル弁開度が第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には、決定された第2噴射量の燃料を上記特定の気筒に対して噴射する燃料噴射手段」に相当する。
また、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。上記実施形態においては、第1仮想スロットル弁開度設定部92は、暫定目標スロットル弁開度TAaccと第1仮想スロットル弁開度TAt1との間に遅延時間を設けないようになっている。これと異なり、第1仮想スロットル弁開度設定部92が、暫定目標スロットル弁開度TAaccと第1仮想スロットル弁開度TAt1との間に、暫定目標スロットル弁開度TAaccと第2仮想スロットル弁開度TAt2との間の遅延時間TDよりも短い遅延時間TD'を設定するようになっていてもよい。
次のような変形例を採用することもできる。つまり、上記実施形態では、運転者の加速要求の強さを表す指標として、(1)アクセルペダル速度vapを用いた。これに代え、その指標として、(2)機関10と、車両が備えたマニュアル・トランスミッション(M/T)の変速段に応じた値(変速比に応じた値)を用いてよい。この変形例では、所定のシフト位置センサ(加速要求取得手段に相当。)が、運転者の操作したシフトレバーの位置(シフト位置)を検出することにより、そのシフト位置に対応する変速段に応じた値を検出(取得)するとともに、この変速段に応じた値を加速要求判定部94(図2)に出力するようになっている。
そして、加速要求判定部94は、その変速段に応じた値と、所定の変速段を示す値との比較によって、その実際の変速段が所定の低速段側変速段にあることが検出された場合に加速要求が強いと判定するようになっている。他方、加速要求判定部94は、その変速段に応じた値と、上記所定の変速段を示す値との比較によって、実際の変速段が低速段側変速段よりも高速段となる高速段側変速段にあることが検出された場合に加速要求が弱いと判定するようになっている。
なお、変速機としてオートマチック・トランスミッション(A/T)を用いてもよい。この場合、加速要求取得手段は、A/Tの入力軸の回転速度(エンジン回転速度NE又はスロットル開度TAに対応)と、A/Tの出力軸との回転速度(車速に対応)を検出して、検出された入力軸の回転速度と、検出された出力軸の回転速度との比により変速段を逆算すること等によって、変速段を検出する。更に、A/Tは、ギヤ比が予め定められたものでなく、無段変速機であってもよい。
また、運転者の加速要求の強さを表す指標として、(3)機関10の搭載された車両が走行する速度を用いてもよい。ここでは、所定の車速センサ(加速要求取得手段)が、その車両の走行速度を検出して、加速要求判定部94にその車速に応じた値を出力するようになっている。そして、加速要求判定部94は、その車速が所定の速度閾値より小さい場合に加速要求が強いと判定するようになっている。他方、加速要求判定部94は、車速がその速度閾値よりも大きい場合に加速要求が弱いと判定するようになっている。
更に、上記実施形態において、第2仮想スロットル弁開度設定部93は、暫定目標スロットル弁開度TAaccを十分長い遅延時間TD分遅延させた第2仮想スロットル弁開度TAt2を設定するようになっている。言い換えれば、筒内吸入空気量MCの予測について、燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時における目標スロットル弁開度TAtが設定され、これに対応する推定スロットル弁開度TAestが得られることを想定した。
これとは異なり、第2仮想スロットル弁開度設定部93が、固定した遅延時間を用いつつ、吸入空気モデルM2が、現演算時点から遅延時間経過後までのスロットル弁43の目標スロットル弁開度TAに対応する複数の推定スロットル弁開度TAestのうちの何れかの推定スロットル弁開度TAestを、エンジン回転速度NEに応じて選択し、この推定スロットル弁開度TAestに基づいて、筒内吸入空気量MCを予測するようになっていてもよい。
また、上述に代えて、第2仮想スロットル弁開度設定部93が、吸気弁閉弁期間に対応した遅延時間TDより短い遅延時間を設定し、吸入空気モデルM2が、既に設定されている複数の目標スロットル弁開度TAt(又は推定スロットル弁開度TAest)の推移に基づいて、吸気弁閉弁時の推定スロットル弁開度TAestを演算し、この推定スロットル弁開度TAestに基づいて、筒内吸入空気量MCを予測するようになっていてもよい。
上記実施形態においては、吸入空気モデルM2の各部M21〜M24が、推定スロットル弁開度TAestに基づいて、順次演算を行うことによって、筒内吸入空気量MCを求めるようになっている。これに代えて、吸入空気モデルM2は、燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時におけるエンジン回転速度NEを予測し、このエンジン回転速度NE、この吸気弁閉弁時における実際のスロットル弁開度TAを推定した推定スロットル弁開度TAest、及び、所定のテーブル(エンジン回転速度NE及び推定スロットル弁開度TAestと、筒内吸入空気量MCとの関係を規定したテーブル)を用いて、吸気弁閉弁時の筒内吸入空気量MCを求めるようになっていてもよい。
また、上記実施形態においては、アクセル開度センサ69がアクセルペダル操作量Accpを取得する周期と、暫定目標スロットル弁開度演算部91がアクセルペダル操作量Accpから暫定目標スロットル弁開度TAaccを演算する周期と、吸入空気モデルM2が暫定目標スロットル弁開度TAaccに応じた推定スロットル弁開度TAestから筒内吸入空気量MCを演算する周期とが、同じ周期であった。これと異なり、吸入空気モデルM2の演算周期が、暫定目標スロットル弁開度TAaccの演算周期よりも長くなっている等してもよい。
噴射量決定ロジックA2は、目標スロットル弁開度選択部95が、目標スロットル弁開度TAtとして第1仮想スロットル弁開度TAt1を選択している場合(初期加速期間中、及び、初期加速期間中に加速要求が強かったときにおける初期加速期間経過後)、実際のスロットル弁開度TA(アクセルペダル操作量Accpに応じて変化する値)に基づいて、燃料噴射量fiを決定するようになっている。これに代えて、噴射量決定ロジックA2は、エアフローメータ61により検出された実際の吸入空気の質量流量Gaに基づいて、燃料噴射量fiを決定するようになっていてもよい。即ち、ここでは、噴射量決定ロジックA2は、実際の吸入空気の質量流量Ga、エンジン回転速度NE、及び、所定のテーブル(吸入空気の質量流量Ga及びエンジン回転速度NEと、燃料噴射量fiとの関係を規定したテーブル)を用いて燃料噴射量fiを決定する。吸入空気の質量流量Gaは、スロットル弁開度TAと同様に、アクセルペダル操作量Accpに応じて変化する値である。
更に、上記実施形態において、アクセルペダルは、主に、運転者が足により操作することを想定した。ここにいうアクセルペダルは、運転者が手によって操作するレバー等を含むものとする。
また、本発明による他の態様に係る燃料噴射制御装置は、定常運転時においてスロットル・ディレーを停止するようになっていてもよい。
初期加速期間の開始時点は、運転者の加速操作があった時点に限らず、車両が実際の加速を開始した時点(車速が上昇を開始した時点)、又は、機関の回転速度が上昇を開始した時点であってもよい。即ち、本明細書において、初期加速期間の開始時点を定める「車両の加速が開始したか否か」の判定は、アクセルペダル操作量Accp(又は暫定目標スロットル弁開度TAacc)が0から0でない値となったか否かの判定に限らない。具体的には、この「車両の加速が開始したか否か」の判定は、車速の時間変化率が所定の閾値以上となったか否かの判定、又は、エンジン回転速度の時間変化率が所定の閾値以上となったか否かの判定であってもよい。
更に、上述した定常運転時においてスロットル・ディレーを停止するように構成された燃料噴射制御装置において、目標スロットル弁開度TAt及び実際のスロットル弁開度TAは、アクセルペダル操作量Accpの変化に実質的に遅れることなく変化する。従って、このような装置は、初期加速期間の開始時点を定める「車両の加速が開始したか否か」の判定を、目標スロットル弁開度TAtや実際のスロットル弁開度TAに基づいて行ってもよい。
加えて、定常運転時においてスロットル・ディレーを行うように構成された燃料噴射制御装置においても、同様に、この「車両の加速が開始したか否か」の判定を、目標スロット弁開度TAtや実際のスロットル弁開度TAに基づいて行うことができる。この場合、初期加速期間の開始時点は、実際の加速操作の開始から僅かに遅れるが、初期加速期間の開始時点以降においては、スロットル・ディレーが停止されるので、機関又は車両のレスポンスは従来の装置に比べ依然として改善されている。
10…火花点火式多気筒内燃機関、20…シリンダブロック部(エンジン本体部)、25…燃焼室、31…吸気ポート、32…吸気弁、39…インジェクタ、41…吸気管、43…スロットル弁、43a…スロットル弁アクチュエータ、70…電気制御装置、71…CPU、69…アクセル開度センサ、81…アクセルペダル。
Claims (6)
- 車両に搭載された多気筒の内燃機関に適用される内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
運転者により操作されたアクセルペダルの操作量を取得するアクセル操作量取得手段と、
所定周期の演算時点にて、前記取得されたアクセルペダルの操作量に応じ暫定目標スロットル弁開度を演算する暫定目標スロットル弁開度演算手段と、
前記車両の加速が開始したか否かを判定するとともに、同車両の加速が開始したと判定された場合、前記運転者が要求した同車両の加速の程度である同運転者の加速要求の強さに応じた値を取得する加速要求取得手段と、
前記取得された加速要求の強さに応じた値と所定値との比較に基づいて、前記運転者の加速要求が強いか弱いかを判定する加速要求判定手段と、
前記加速要求についての判定以降において、前記暫定目標スロットル弁開度が前記演算時点にて演算される毎に、前記加速要求が強いと判定されていた場合には同演算された暫定目標スロットル弁開度を、同演算時点から、0を含む所定の第1遅延時間だけ経過した第1時点における目標スロットル弁開度として設定し、同加速要求が弱いと判定されていた場合には同演算された暫定目標スロットル弁開度を、同演算時点から、同第1遅延時間よりも長い第2遅延時間だけ経過した第2時点における目標スロットル弁開度として設定する目標スロットル弁開度設定手段と、
前記暫定目標スロットル弁開度が前記第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には前記演算時点から前記第1遅延時間の経過後に実際のスロットル弁の開度が同第1時点の目標スロットル弁開度と等しくなり、同暫定目標スロットル弁開度が前記第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には同演算時点から前記第2遅延時間の経過後に同実際のスロットル弁の開度が同第2時点の目標スロットル弁開度と等しくなるように、同スロットル弁を駆動制御するスロットル弁制御手段と、
前記暫定目標スロットル弁開度が前記第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合、将来における前記スロットル弁の駆動制御に用いるために設定されている複数の前記第2時点の目標スロットル弁開度のうちの何れかの目標スロットル弁開度を用いて、前記多気筒のうちの特定の気筒の吸気行程において吸入される空気の量を予測する吸入空気量予測手段と、
前記暫定目標スロットル弁開度が前記第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には前記アクセルペダルの操作量に応じて変化する値に基づいて前記多気筒のうちの何れかの気筒に噴射される燃料の第1噴射量を決定し、同暫定目標スロットル弁開度が前記第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には前記予測された空気の量に基づいて前記特定の気筒に噴射される燃料の第2噴射量を決定する燃料噴射量決定手段と、
前記暫定目標スロットル弁開度が前記第1時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には前記決定された第1噴射量の燃料を前記何れかの気筒に対して噴射し、同暫定目標スロットル弁開度が前記第2時点の目標スロットル弁開度として設定された場合には前記決定された第2噴射量の燃料を前記特定の気筒に対して噴射する燃料噴射手段と、
を備えた燃料噴射制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記加速要求判定手段は、
前記車両の加速が開始したと判定された時点から所定時間が経過する時点までの初期加速期間において、前記加速要求についての判定を行うように構成された燃料噴射制御装置。 - 請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記目標スロットル弁開度設定手段は、
前記初期加速期間では、前記加速要求が強いか弱いかに関わらず、前記暫定目標スロットル弁開度演算手段により演算された前記暫定目標スロットル弁開度を、前記第1時点の目標スロットル弁開度として設定するように構成された燃料噴射制御装置。 - 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記加速要求取得手段は、
前記加速要求の強さに応じた値として、前記アクセル操作量取得手段により取得された前記アクセルペダルの操作量の時間的変化率を取得し、
前記加速要求判定手段は、
前記取得された操作量の時間的変化率が所定の変化率閾値より大きい場合に前記加速要求が強いと判定し、同取得された操作量の時間的変化率が同変化率閾値より小さい場合に同加速要求が弱いと判定するように構成された燃料噴射制御装置。 - 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記加速要求取得手段は、
前記加速要求の強さに応じた値として、前記車両の変速機の変速比に応じた値を取得し、
前記加速要求判定手段は、
前記取得された変速比に応じた値と所定の変速比を示す値との比較によって、実際の変速比が所定の低速段側変速比にあることが検出された場合に前記加速要求が強いと判定し、同取得された変速比に応じた値と同変速比を示す値との比較によって、同実際の変速比が同低速段側変速比よりも高速段側となる高速段側変速比にあることが検出された場合に同加速要求が弱いと判定するように構成された燃料噴射制御装置。 - 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記加速要求取得手段は、
前記加速要求の強さに応じた値として、前記車両が走行する速度を取得し、
前記加速要求判定手段は、
前記取得された車両の速度が所定の速度閾値より小さい場合に前記加速要求が強いと判定し、同取得された車両の速度が同速度閾値より大きい場合に同加速要求が弱いと判定するように構成された燃料噴射制御装置。
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