以下、本発明による内燃機関の吸入空気量推定装置を含んだ燃料噴射量制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明すると、図1は、同燃料噴射量制御装置を適用した火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10を搭載した車両の動力伝達系についての概略構成を示している。
この車両は、内燃機関10と電動モータMの2種類の動力源を備え、走行状態に応じて2つの駆動力の何れか一方、又は同2つの駆動力を最適に組み合わせた駆動力にて前輪を駆動して走行する前輪駆動型の所謂ハイブリッド車両である(図1において、太い実線は動力伝達経路を示している。)。より具体的には、この車両は、図1に示したように、内燃機関10と、電動モータMと、車両の走行状態に応じて動力の伝達経路を切替可能な動力切替機構Pと、動力切替機構Pから伝達(入力)される動力を前輪側の動力伝達系に伝達するトランスミッションTMとを備えている。
電動モータMは、交流同期電動機であって、バッテリーBから供給される直流電力を所定の交流電力に変換するインバータIから供給される同交流電力により駆動制御されるようになっている。
動力切替機構Pは、動力伝達経路が電動モータMとトランスミッションTMとの間で接続されるとともに内燃機関10とトランスミッションTM(、及び電動モータM)との間で遮断されるモータ走行モード、動力伝達経路が内燃機関10とトランスミッションTMとの間で接続されるとともに電動モータMとトランスミッションTM(、及び内燃機関10)との間で遮断されるエンジン走行モード、及び、動力伝達経路が内燃機関10、電動モータM、及びトランスミッションTMとの間で互いに接続されるモータアシスト走行モードの3つの走行モードを有している。
従って、動力切替機構Pがエンジン走行モード、又はモータアシスト走行モードが選択されている状態にあるときであって機関10の燃料噴射(制御)が停止状態にあるとき、同機関10は、トランスミッションTM(或いは、電動モータM)から受ける動力により受動的に回転せしめられるようになっている(即ち、モータリングを実行されるようになっている)。よって、トランスミッションTM、電動モータM、及び動力切替機構Pはモータリング手段に相当している。
次に、本発明による内燃機関の吸入空気量推定装置を含んだ燃料噴射量制御装置を上記内燃機関10に適用したシステムの概略構成について、図2を参照しつつ説明する。
図2に示したように、上記内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース、及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38、及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し同吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、及び、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットルバルブ43を備えている。スロットルバルブ43は、DCモータからなるスロットルバルブアクチュエータ43aにより吸気管41内で回転駆動されるようになっている。
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続されたエキゾーストパイプ52、及びエキゾーストパイプ52に介装された触媒コンバータ(三元触媒装置)53を備えている。ここで、排気ポート34、エキゾーストマニホールド51、及びエキゾーストパイプ52は、排気通路を構成している。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、吸気温センサ62、大気圧センサ(スロットルバルブ上流圧力センサ)63、スロットルポジションセンサ64、カムポジションセンサ66、クランクポジションセンサ67、水温センサ68、空燃比センサ69、及びアクセル開度センサ81を備えている。
エアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気(新気)の質量流量を計測し、同質量流量に応じた電圧Vgを出力するようになっている。吸気温センサ62は、エアフローメータ61内に備えられていて、吸入空気の温度を検出し、吸気温度THAを表す信号を出力するようになっている。大気圧センサ63(大気圧取得手段)は、スロットルバルブ43の上流の圧力(即ち、大気圧)を検出し、スロットルバルブ上流圧力(大気圧)Paを表す信号を出力するようになっている。スロットルポジションセンサ64は、スロットルバルブ43の開度を検出し、スロットルバルブ開度TAを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ66は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。クランクポジションセンサ67は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度Neを表す。水温センサ68(冷却水温取得手段)は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。空燃比センサ69は、触媒コンバータ53に流入する排ガスの空燃比A/Fに応じた電流を出力し、この電流に応じた電圧vabyfsを出力するようになっている。アクセル開度センサ81は、運転者によって操作されるアクセルペダル82の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するプログラム、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、及びADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は、前記センサ61〜69,81、並びに図示しない各種センサと接続され、CPU71にセンサ61〜69,81等からの信号を供給するとともに、同CPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39、スロットルバルブアクチュエータ43a、図1に示したインバータI、及び動力切替機構Pに駆動・制御信号を送出するようになっている。
これにより、動力切替機構Pのモードは、CPU71の指示により車両の(走行)状態に応じて選択・変更されるようになっている。モータ走行モードが選択されている場合、内燃機関10は、燃料噴射制御の停止により駆動力を発生しないようになっている(即ち、回転が停止するようになっている)。この場合、電動モータMは、CPU71の指示に応じて作動するインバータIが発生する所定の交流電力の供給を受けて駆動(トルク)制御され、駆動力を発生するようになっている。
一方、動力切替機構Pのモードがモータ走行モードから、エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードに変更される場合(即ち、燃料噴射制御が停止状態から実行状態に移行する場合)、同変更時点から所定時間Tmortorに渡って機関10がトランスミッションTM(或いは、電動モータM)から受ける動力により機関10のモータリングが実行されるようになっている。
そして、所定時間Tmortorが経過することでエンジン回転速度NEが機関10が安定して連続的に作動し得る所定のアイドリング速度以上になっている状態で、燃料噴射制御が開始され、これにより、機関10が始動し、駆動力を発生開始するようになっている。換言すれば、機関10においては、モータリングが実行されている状態で、燃料噴射制御が停止状態から実行状態に移行する場合における初回の燃料噴射が実行されるようになっている。
次に、上記のように構成された吸入空気量推定装置を含んだ燃料噴射量制御装置(以下、「本装置」と云うこともある。)による物理モデルを用いた燃料噴射量の決定方法について説明する。以下に述べる処理は、CPU71がプログラムを実行することによりなされる。
(燃料噴射量Fiの決定方法の概要)
この本装置は、吸気行程にある気筒の吸気弁32が閉じる前に同気筒に対して燃料を噴射しなければならないので、吸気弁32が閉じた時点で(即ち、吸気弁閉弁時に)同気筒内に吸入されているであろう吸入空気量(筒内吸入空気量)を予測する必要がある。一方、吸気弁閉弁時の吸気管圧力PMFWDは、今回の吸気行程において吸気弁32を通過して燃焼室25に吸入されている空気量と略比例関係にあることが判っている。
従って、吸気弁閉弁時の吸気管圧力PMFWDを予測することができれば、今回の吸気行程において吸気弁32を通過して吸入された筒内吸入空気量を推定することができる。そこで、本装置は、燃料を噴射する必要があるモードである上記エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードが動力切替機構Pにおいて選択されている場合、吸気弁閉弁時の吸気管圧力PMFWDを予測・推定し、推定した吸気管圧力PMFWDに所定の比例計算を施すことで(今回の吸気行程において吸気弁32を通過して吸入された)一気筒当たりの筒内吸入空気量KLFWD(機関の運転状態に基づいて推定される筒内吸入空気量)を求めるとともに、下記(1)式に基づいて、機関作動中における通常の(即ち、後述する初期空気量Maを考慮しない)燃料噴射量Fiを決定する。下記(1)式において、Kは設定空燃比の逆数である。
Fi =K・KLFWD ・・・(1)
なお、エアフローメータ61の出力電圧Vgと筒内吸入空気量との関係を規定したテーブルと、エアフローメータ61の実際の出力電圧Vgとに基づいて現時点での筒内吸入空気量mtAFMを求め、下記(2)式により、機関作動中における通常の(即ち、後述する初期空気量Maを考慮しない)燃料噴射量Fiを簡易的に求めてもよい。
Fi =K・mtAFM ・・・(2)
本装置は、上記(1)式により燃料噴射量Fiを求めるため、上記吸気弁閉弁時の吸気管圧力PMFWDを予測・推定する必要がある。本装置は、図3に示したように、電子制御スロットルモデルM1、スロットルモデルM2、吸気弁モデルM3、及びインテークマニホールドモデルM4により吸気弁閉弁時の吸気管圧力PMFWDを推定する。以下、各モデルについて個別に説明する。
(1)電子制御スロットルモデルM1
電子制御スロットルモデルM1は、現時点までのアクセルペダル操作量Accpに基づいて吸気弁閉弁時のスロットルバルブ開度TASを推定するモデルである。本実施形態においては、スロットルバルブ電子制御ロジックA1にて、アクセル開度センサ81により検出されたアクセルペダル操作量Accpと、図4に示したアクセルペダル操作量Accpと目標スロットルバルブ開度θrとの関係を規定するテーブルとに基づいて暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1が求められ、この暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1を所定時間T(例えば、64msec)だけ遅延させた値が最終的な目標スロットルバルブ開度θrとして決定される。そして、スロットルバルブ電子制御ロジックA1(電気制御装置70)は、実際のスロットルバルブ開度TAが目標スロットルバルブ開度θrとなるようにスロットルバルブアクチュエータ43aに対して駆動信号を送出する。
このように、目標スロットルバルブ開度θrは、現時点から所定時間Tだけ前の時点におけるアクセルペダル操作量Accpに応じて決定されるから、現時点から吸気弁閉弁時までの時間をtとすると、吸気弁閉弁時の目標スロットルバルブ開度θrは、現時点から時間(T−t)前における暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1と等しい。また、目標スロットルバルブ開度θrは、スロットルバルブアクチュエータ43aの作動遅れ時間を無視すれば、スロットルバルブ開度TASと等しい。このような考えに基づき、電子制御スロットルモデルM1は、検出されるエンジン回転速度Neと、内燃機関10の運転状態に応じて別途定められる吸気弁の開閉タイミング(進角量)VT(上記信号Neと上記G2信号とにより求めた実際の開閉タイミングVTでも良い。)等に基づいて現時点から吸気弁閉弁時までの時間tを求め、同時間tと、現時点から所定時間Tだけ前の時点から現時点までのアクセルペダル操作量Accp(又は、暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1)の変化の経緯とに基づいて吸気弁閉弁時のスロットルバルブ開度TASを推定する。なお、スロットルバルブアクチュエータ43aの作動遅れ時間を考慮に加えて、吸気弁閉弁時のスロットルバルブ開度TASを推定してもよい。
(2)スロットルモデルM2
スロットルモデルM2は、スロットルバルブ43を通過する空気流量(スロットル通過空気流量)mtを、エネルギー保存則、運動量保存則、質量保存則、及び状態方程式に基づいて得られた下記(3)式及び下記(4)式に基づいて推定するモデルである。下記(3)式及び下記(4)式において、μは流量係数、Atはスロットル開口面積、νはスロットルバルブ43を通過する空気の流速、Paはスロットルバルブ上流圧力(大気圧)、Pmは吸気管圧力、Taは吸気温度、ρmは吸気密度、Rは気体定数、及びκは比熱比(以下、κを一定値として扱う。)である。
mt=μ・At・ν・ρm=μ・At・{Pa/(R・Ta)1/2}・Φ(Pm/Pa) ・・・(3)
ここで、上記(3)式は、k1を所定の係数(=μ・At・{Pa/(R・Ta)1/2})、mtsを吸気弁閉弁時のスロットル通過空気量とするとき下記(5)式に書き換えられる。また、(5)式において、内燃機関10が定常状態にある場合(スロットルバルブ開度が一定である場合)のスロットル通過空気量をmtsTA、及び吸気管圧力をPmTAとすると、下記(6)式が得られるので、(5)式及び(6)式から係数k1を消去して下記(7)式を得ることができる。
mts=k1・Φ(Pm/Pa) ・・・(5)
mtsTA=k1・Φ(PmTA/Pa) ・・・(6)
mts={mtsTA/Φ(PmTA/Pa)}・Φ(Pm/Pa) ・・・(7)
上記(7)式の右辺における値{mtsTA/Φ(PmTA/Pa)}は、スロットルバルブ開度TAが一定であるときの吸入空気流量(スロットル通過空気流量)に関する値であり、スロットルバルブ開度TA、エンジン回転速度Ne、吸気弁の開閉タイミングVT、及びスロットルバルブ上流圧力Paが決定されると、実質的に一意に定まる値である。スロットルモデルM2は、スロットルバルブ開度TA、エンジン回転速度Ne、吸気弁の開閉タイミングVT、及びスロットルバルブ上流圧力Paと、値{mtsTA/Φ(PmTA/Pa)}との関係を規定したテーブルをROM72内に記憶していて、このテーブルと吸気弁閉弁時の推定スロットルバルブ開度TAS、実際のエンジン回転速度Ne、実際の吸気弁の開閉タイミングVT、及び実際のスロットルバルブ上流圧力Paとに基づいて値{mtsTA/Φ(PmTA/Pa)}を求める。
また、(7)式の右辺における値Φ(Pm/Pa)は、上記数(4)式から理解されるように、比熱比κが一定であるとき、吸気管圧力Pmとスロットルバルブ上流圧力Paにより決定される値である。スロットルモデルM2は、吸気管圧力Pm及びスロットルバルブ上流圧力Paと、値Φ(Pm/Pa)との関係を規定したテーブルをROM72内に記憶していて、このテーブルと、後述するインテークマニホールドモデルM4が現時点で既に演算している最新の吸気管圧力Pm、及び実際のスロットルバルブ上流圧力Paとに基づいて値Φ(Pm/Pa)を求める。以上により、吸気弁閉弁時のスロットル通過空気流量mtsが求められる。
(3)吸気弁モデルM3
吸気弁モデルM3は、吸気管圧力Pm、吸気管内温度Tm、及び吸気温度THA等から筒内吸入空気流量mcを推定するモデルである。吸気弁閉弁時の気筒内圧力は吸気弁32の上流の圧力、即ち吸気弁閉弁時の吸気管圧力Pmとみなすことができるので、筒内吸入空気流量mcは吸気弁閉弁時の吸気管圧力Pmに比例する。そこで、吸気弁モデルM3は筒内吸入空気流量mcを、経験則に基づく下記(8)式にしたがって求める。
mc=(THA/Tm)・(c・Pm−d) ・・・(8)
上記(8)式において、値cは比例係数、値dは筒内に残存していた既燃ガス量である。吸気弁モデルM3は、エンジン回転速度Ne、及び吸気弁の開閉タイミングVTと、比例係数c、及び既燃ガス量dとの関係をそれぞれ規定するテーブルをROM72内に格納していて、実際のエンジン回転速度Neと、実際の吸気弁の開閉タイミングVTと前記格納しているテーブルとから比例係数c、及び既燃ガス量dを求める。また、吸気弁モデルM3は、演算時点において、後述するインテークマニホールドモデルM4により既に推定されている直前(最新)の吸気弁閉弁時の吸気管圧力Pmと直前の吸気管内空気温度Tmとを上記(8)式に適用し、吸気弁閉弁時の筒内吸入空気流量mcを推定する。
(4)インテークマニホールドモデルM4
インテークマニホールドモデルM4は、質量保存則とエネルギー保存則とにそれぞれ基づいた下記(9)式及び下記(10)式にしたがって、吸気弁閉弁時の吸気管圧力Pmと、吸気弁閉弁時の吸気管内温度Tmとを求める。なお、Vは吸気管(スロットルバルブ下流の吸気通路)の容積、Rは気体定数、mtはスロットル通過空気流量、Taはスロットルバルブ通過空気温度(即ち、吸気温度THA)、mcは筒内吸入空気流量である。
dPm/dt=κ・(R/V)・(mt・Ta−mc・Tm) ・・・(9)
d(Pm/Tm)/dt=(R/V)・(mt−mc) ・・・(10)
図3に示したように、インテークマニホールドモデルM4は、スロットルモデルM2により推定されたスロットル通過空気流量mtsを上記(9)式,(10)式におけるスロットル通過空気流量mtとして使用し、吸気弁モデルM3により推定された吸気弁閉弁時の筒内吸入空気流量mcを上記(9)式,(10)式の筒内吸入空気流量mcとして使用する。以上、本装置は、上記エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードが選択されている間において、このインテークマニホールドモデルM4により推定された吸気管圧力Pmを吸気弁閉弁時の吸気管圧力PMFWDとして使用し、この吸気管圧力PMFWDに基づいて今回の吸気行程において吸気弁32を通過して吸入された一気筒当たりの筒内吸入空気量KLFWDを気筒毎に求めるとともに、上記(1)式に基づいて、(後述する初期空気量Maを考慮しない)燃料噴射量Fiを気筒毎に決定する。
(初期空気量Maの考慮)
先に説明したように、機関10の作動中においても、通常、前回の燃焼サイクルにおける排気弁閉弁時において燃焼室25内を満たしている排ガス等は、今回の燃焼サイクルにおける吸気行程においてもそのまま燃焼室25内に残留する。換言すれば、今回の吸気弁閉弁時において燃焼室25内に吸入されている空気(新気)は、今回の吸気行程において吸気弁32を通過して吸入された空気(新気)のみである。
また、上述したように推定される筒内吸入空気量KLFWDは、今回の吸気行程において吸気弁32を通過して吸入された筒内吸入空気量である。従って、上記エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードが選択されている場合における通常の機関作動中においては、上記筒内吸入空気量KLFWDそのものが一気筒当たりの筒内吸入空気量を精度良く表す値となる。
一方、動力切替機構Pのモードがモータ走行モードから、エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードに変更される場合、先に述べたように、同変更時点から所定時間Tmortorに渡って機関10のモータリングが実行されるとともに(即ち、燃料噴射が実行されず)、所定時間Tmortorが経過した時点で初回の燃料噴射が実行される。
この場合、係るモータリングの実行により、上述した燃焼室内に残留していた排ガス等は総て掃気されて排気通路へと排出される。従って、上記初回の燃料噴射の直前の排気弁閉弁時における燃焼室内は空気(新気)のみで満たされていることになる。換言すれば、係る初回の燃料噴射時点での筒内吸入空気量は、上述したように推定される筒内吸入空気量KLFWDよりも、上記初回の燃料噴射の直前の排気弁閉弁時において燃焼室25内を満たしている空気(新気)量(即ち、前記初期空気量Ma)の分だけ多くなる。
以上のことから、上記モータリング終了後の(燃料噴射制御が停止状態から実行状態に移行する場合における)初回の燃料噴射時において燃焼室25内に吸入されている筒内吸入空気量を精度良く推定するためには、上記初期空気量Maを求めるとともに、上記筒内吸入空気量KLFWDに初期空気量Maを加えた値を最終的な筒内吸入空気量とする必要がある。
以下、初期空気量Maを求める方法について説明する。初期空気量Maは、上記初回の燃料噴射の直前の排気弁閉弁時において燃焼室25内を満たしている空気量であって、気体の状態方程式を利用して下記(11)式に従って求めることができる。下記(11)式において、Pcは上記初回の燃料噴射の直前の排気弁閉弁時における燃焼室内空気圧力、Vcは同排気弁閉弁時における燃焼室内容積、Rは気体定数、Tcは同排気弁閉弁時における燃焼室内空気温度である。
Ma=(Pc・Vc)/(R・Tc) ・・・(11)
ここで、上記排気弁閉弁時における燃焼室内容積は、既知である排気弁閉弁時におけるクランク角度と、機関10の設計諸元とに基づいて求めることができる。また、上記排気弁閉弁時における燃焼室内空気圧力Pcは、上述したごとく、同排気弁閉弁時における燃焼室容積の変化速度が遅いこと、及びモータリングが実行されていることから燃焼室内において燃焼エネルギーが発生しないことを考慮すると、排気通路内のガス(具体的には空気)の圧力(即ち、大気圧Pa)に略等しいと考えられる。
更には、上記排気弁閉弁時における燃焼室内空気温度Tcは、機関の冷却水の温度と略等しいと考えることができる。以上のことから、本装置は、上記モータリング終了時点において、下記(12)式に従って初期空気量Maを計算するとともに、下記(13)式に従って上記モータリング終了後の初回(のみについて)の燃料噴射量Fiを計算する。
Ma=(Pa0・Vc)/(R・THW0) ・・・(12)
Fi =K・(KLFWD+Ma) ・・・(13)
上記(12)式において、Pa0はモータリング終了時点において大気圧センサ63により検出される大気圧Paであり、THW0はモータリング終了時点において水温センサ68により検出される冷却水温THWである。以上のようにして、本装置は、動力切替機構Pのモードがモータ走行モードから、エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードに変更された場合、同変更時点以降実行されるモータリングが終了した後の各気筒についての初回の燃料噴射量Fiを上記(13)式に従って気筒毎に求め、噴射タイミングが到来した気筒のインジェクタ39から同求めた量の燃料を一回ずつ噴射する。
そして、総ての気筒についての初回の燃料噴射が終了した後は、総ての気筒について、排気弁閉弁時において燃焼により発生した排ガス等が燃焼室25内に残留するようになるから、本装置は、上記初期空気量Maを考慮しない上記(1)式に従って燃料噴射量Fiを気筒毎に求めるとともに、噴射タイミングが到来した気筒のインジェクタ39から同求めた量の燃料を噴射していく。以上が、本装置による燃料噴射量Fiの決定方法の概要である。
(実際の作動)
以下、上記内燃機関の吸入空気量推定装置を含んだ燃料噴射量制御装置の作動について、CPU71が実行するルーチン(プログラム)をフローチャートにより示した図5〜図7を参照しながら説明する。なお、CPU71は運転者がイグニッションスイッチの状態をOFF状態からON状態に変更した時点からこれらのルーチンの実行を開始する。
なお、後述する燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値、及び後述するモータリング実行中フラグXMの値は、イグニッションスイッチの状態がOFF状態からON状態に変更された時点で「0」に初期設定される。ここで、燃料噴射制御実行中フラグXPWRは、その値が「1」のとき動力切替機構Pのモードがエンジン走行モード又はモータアシスト走行モードに設定されていることを示し、その値が「0」のとき動力切替機構Pのモードがモータ走行モードに設定されていることを示す。また、モータリング実行中フラグXMは、その値が「1」のとき機関10のモータリングが実行されていることを示し、その値が「0」のとき同モータリングが実行されていないことを示す。
CPU71は、図5に示した燃料噴射制御の実行・停止の判定を行うルーチンを所定時間の経過毎に繰返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ500から処理を開始し、ステップ505に進んで燃料噴射制御開始条件が成立したか否かをモニタする。この燃料噴射制御開始条件は、本例では、動力切替機構Pのモードが、モータ走行モードから、エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードに変更された場合に成立する。
いま、動力切替機構Pのモードがモータ走行モードに維持されているもの(動力伝達経路が電動モータMとトランスミッションTMとの間で接続されるとともに内燃機関10とトランスミッションTM(、及び電動モータM)との間で遮断されているもの)とすると、燃料噴射制御開始条件が成立していないことから、CPU71はステップ505にて「No」と判定してステップ510に進み、燃料噴射制御停止条件が成立したか否かをモニタする。この燃料噴射制御停止条件は、本例では、動力切替機構Pのモードが、エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードから、モータ走行モードに変更された場合に成立する。
現時点では、動力切替機構Pのモードがモータ走行モードに維持されているから、CPU71はステップ510でも「No」と判定してステップ595に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。以降、CPU71は、上記燃料噴射制御開始条件が成立するまで、ステップ500、505、510の処理を繰り返し実行する。
また、CPU71は、図6に示したモータリングの実行、及び初期空気量の計算を行うルーチンを所定時間の経過毎に繰返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ600から処理を開始し、ステップ605に進んで燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値が「0」から「1」に変更されたか否かを判定する。
現時点では、動力切替機構Pのモードがモータ走行モードに維持されている(従って、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値が「0」に維持されている)から、CPU71はステップ605にて「No」と判定してステップ610に進んで、モータリング実行中フラグXMの値が「1」になっているか否かを判定する。
現時点では、モータリング実行中フラグXMの値が上述した初期設定値である「0」に維持されたままになっているから、CPU71はステップ610にて「No」と判定してステップ615に進み、モータリング実行中フラグXMの値が「1」から「0」に変更されたか否かを判定し、同ステップ615でも「No」と判定してステップ695に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。以降、CPU71は、上記燃料噴射制御開始条件が成立するまで(即ち、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値が「0」から「1」に変更されるまで)、ステップ600、605、610、615の処理を繰り返し実行する。
また、CPU71は、図7に示した燃料噴射制御を実行するルーチンを、吸気行程を迎える任意の気筒のクランク角がその気筒の吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)になる毎に、繰り返し実行するようになっている。従って、任意の気筒のクランク角が前記所定のクランク角度になると、CPU71はステップ700から処理を開始し、ステップ705に進んで、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値が「1」であって、且つ、モータリング実行中フラグXMの値が「0」であるか否かを判定する。しかしながら、現時点では、モータ走行モードが選択されていて機関10の回転が停止しているから本ルーチンは実行され得ない。従って、燃料の噴射も実行されない。
次に、この状態から、上記燃料噴射制御開始条件が成立した場合(即ち、動力切替機構Pのモードが、モータ走行モードから、エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードに変更された場合)について説明する。この場合、動力伝達経路が内燃機関10とトランスミッションTMとの間で接続され、この結果、機関10が少なくともトランスミッションTMからの動力を受けて回転可能となることから、燃料の噴射が実行されない限りにおいて機関10のモータリングが実行されるとともに、上述した図7のルーチンの処理が開始される。
この場合、CPU71は図5のステップ505に進んだとき「Yes」と判定してステップ515に進み、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値を「0」から「1」に変更する。以降、CPU71は上記燃料噴射制御停止条件が成立するまでの間、ステップ500、505、510の処理を繰り返し実行する。換言すれば、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値は「1」に維持される。
また、先のステップ515の実行により、CPU71は図6のステップ605に進んだとき「Yes」と判定してステップ620に進んでカウンタNの値を「0」に初期化し、続くステップ625にてモータリング実行中フラグXMの値を「0」から「1」に変更する。ここで、カウンタNの値は、上記燃料噴射制御開始条件が成立した時点(即ち、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値が「0」から「1」に変更された時点)からの経過時間を表す。
続いて、CPU71は上述したステップ610に進んで「Yes」と判定してステップ630に進み、機関10のモータリングを開始・実行する。現時点では、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値が先のステップ515の実行により「1」に維持されているものの、モータリング実行中フラグXMの値が「1」になっているから、CPU71は図7のステップ705に進んだとき「No」と判定して燃料の噴射が実行され得ないからである。
次に、CPU71はステップ635に進んでカウンタNの値がモータリング実行時間相当基準値Nref以上となっているか否かを判定する。モータリング実行時間相当基準値Nrefは、上述した所定時間Tmortorに相当する値である。
現時点では、カウンタNの値は「0」であるから、CPU71はステップ635にて「No」と判定してステップ640に進んで、カウンタNの値をインクリメントする。以降、ステップ640の繰り返し実行によりカウンタNの値がモータリング実行時間相当基準値Nrefに達するまでの間(即ち、モータリングの実行時間が上述した所定時間Tmortorに達するまでの間)、CPU71は、ステップ600、605、610、630、635、640の処理を繰り返し実行することで、機関10のモータリングを継続的に実行する。
そして、カウンタNの値がモータリング実行時間相当基準値Nrefに達すると、CPU71はステップ635に進んだとき「Yes」と判定してステップ645に進み、モータリング実行中フラグXMの値を「1」から「0」に変更した後、図6のルーチンを一旦終了する。
この結果、CPU71は、次の図6のルーチン実行時においてステップ610に進んだとき「No」と判定して前述のステップ615に進むようになる。この時点は、先のステップ645の実行によりモータリング実行中フラグXMの値が「1」から「0」に変更された直後であるから、CPU71はステップ615にて「Yes」と判定してステップ650に進んで、現時点(即ち、モータリング終了時点)で大気圧センサ63、及び水温センサ68によりそれぞれ検出される大気圧Pa、及び冷却水温THWを、大気圧Pa0、及び冷却水温THW0としてそれぞれ取得し、続くステップ655にて上記(12)式に基づいて初期空気量Maを計算した後、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以降、再び、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値が「0」から「1」に変更されない限りにおいて(即ち、上記燃料噴射制御開始条件が成立しない限りにおいて)、モータリング実行中フラグXMの値は「0」に維持されるから、CPU71はステップ600、605、610、615の処理を繰り返し実行し続ける。
更には、先のステップ645の処理が実行される場合、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値は「1」に維持されたまま、モータリング実行中フラグXMの値が「1」から「0」に変更されるから、CPU71は図7のステップ705に進んだとき「Yes」を判定してステップ710に進むようになる。
CPU71はステップ710に進むと、図3に示したモデルに従って別途計算されている上記吸気弁閉弁時の筒内吸入空気量KLFWDと、上記数1の右辺に基づくステップ710内に記載の式とに基づき今回の燃料噴射量Fiを算出する。
続いて、CPU71はステップ715に進んで、今回の燃料噴射が、今回の燃料噴射気筒について、モータリング実行中フラグXMの値が「1」から「0」に変更された後における初回の燃料噴射であるか否かを判定する。
現時点では、今回の燃料噴射は上記初回の燃料噴射であるから、CPU71はステップ715にて「Yes」と判定してステップ720に進み、先のステップ655の処理にて既に計算されている初期空気量Maと、ステップ710にて使用した吸気弁閉弁時の筒内吸入空気量KLFWDと、上記(13)式の右辺に基づくステップ720内に記載の式とに基づき今回の最終的な燃料噴射量Fiを求める(即ち、ステップ710にて求められた燃料噴射量Fiが初期空気量Maの分だけ補正される)。
次に、CPU71はステップ725に進んで、ステップ720にて決定した今回の燃料噴射量Fiだけ燃料を噴射するように前記燃料噴射気筒についてのインジェクタ39に駆動信号を送出し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
以上のようなステップ700、705、710、715、720、725の一連の処理(ステップ715にて「Yes」と判定される処理)は、各気筒について一回ずつ実行され、この結果、モータリング終了後における総ての気筒についての初回の燃料噴射量Fiが上記(13)式に従って計算されることになる。
これ以降、CPU71はステップ715に進んだとき「No」と判定してステップ720の処理を実行しないようになるから、ステップ710にて決定した今回の燃料噴射量Fiだけ燃料を噴射するように前記燃料噴射気筒についてのインジェクタ39に駆動信号を送出するようになる。この結果、燃料噴射量Fiが上記(1)式に従って計算されていくことになる。
次に、この状態から、上記燃料噴射制御停止条件が成立した場合(即ち、動力切替機構Pのモードが、エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードから、モータ走行モードに変更された場合)について説明する。この場合、動力伝達経路が内燃機関10とトランスミッションTM(、及び電動モータM)との間で解除される。
また、この場合、ステップ500、505、510の処理を繰り返し実行しているCPU71は図5のステップ510に進んだとき「Yes」と判定してステップ520に進み、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値を「1」から「0」に変更する。以降、CPU71は燃料噴射制御開始条件が再び成立するまでの間、ステップ500、505、510の処理を繰り返し実行する。換言すれば、燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値は「0」に維持される。
また、先のステップ520の実行により燃料噴射制御実行中フラグXPWRの値が「0」になるから、CPU71は図7のステップ705に進んだとき「No」と判定してステップ795に直ちに進むようになる。この結果、燃料噴射制御が停止せしめられる。そして、再び、燃料噴射制御開始条件が成立し、且つ、その後のモータリングが終了すると、燃料噴射制御が再び開始される。
以上説明したように、本発明による内燃機関の吸入空気量推定装置の実施形態は、燃料噴射制御が停止状態から実行状態に移行する場合(具体的には、動力切替機構Pのモードがモータ走行モードから、エンジン走行モード又はモータアシスト走行モードに変更される場合)において、同変更時点から所定時間だけモータリングが実行されている状態で初回の燃料噴射が実行される機関に適用される。本実施形態は、今回の吸気行程で吸気弁を通過して燃焼室内に吸入される筒内吸入空気量KLFWDを図3に示した各種モデルを用いて推定する。そして、燃料噴射制御が実行状態にある通常の場合、上記推定された筒内吸入空気量KLFWDそのものを今回の筒内吸入空気量とする。一方、本実施形態は、上記モータリングによる燃焼室内のガスの掃気作用により、上記初回の燃料噴射の直前の排気弁閉弁時における燃焼室内のガスが総て空気になっているとの仮定のもと同排気弁閉弁時における燃焼室内の空気量を初期空気量Maとして推定するとともに、上記筒内吸入空気量KLFWDに初期空気量Maを加えた値を上記初回の燃料噴射時において燃焼室内に吸入されている筒内吸入空気量とする。この結果、上記初回の燃料噴射時における筒内吸入空気量が精度良く計算され得、同筒内吸入空気量を使用して計算される初回の燃料噴射量が機関の空燃比を狙いの値とするための適正な量として計算され得るから、エミッションの排出量の増大を抑制することができた。
また、本実施形態は、上記排気弁閉弁時における燃焼室内のガス(空気)についての状態方程式を使用して上記初期空気量Maを推定する。また、上記状態方程式を使用するにあたり必要となる上記排気弁閉弁時における燃焼室内の空気の圧力として大気圧、同排気弁閉弁時における燃焼室内の空気の温度として機関の冷却水温を使用する。従って、高価な筒内ガス圧力センサ、及び筒内ガス温度センサを用いることなく、且つ精度良く上記初期空気量Maを推定することができた。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、上記(12)式に従って初期空気量Maを計算しているが、上記(11)式に従って初期空気量Maを計算するように構成してもよい。この場合、筒内ガス圧力センサ、及び筒内ガス温度センサを配設し、筒内ガス圧力センサ、及び筒内ガス温度センサによりそれぞれ検出される上記排気弁閉弁時における燃焼室内空気圧力Pc、及び燃焼室内空気温度Tcを上記(11)式に適用する必要がある。
また、上記実施形態においては、燃料噴射制御が停止状態から実行状態に移行する場合として、上記ハイブリッド車両において内燃機関以外の他の動力源が発生する駆動力のみで車両が駆動されている状態(モータ走行モード選択時)から同内燃機関の駆動力で車両が駆動される状態(エンジン走行モード又はモータアシスト走行モード)に移行する場合が適用されているが、消費エネルギー削減のため走行状態に応じて燃料噴射制御を一時的に停止する制御(所謂フューエルカット制御)が実行される車両においてフューエルカット制御が実行されている状態から同フューエルカット制御が解除された場合を適用してもよい。更には、機関の回転が停止している状態からスタータモータにより機関が始動せしめられる場合においては、機関の回転が停止している状態からスタータモータにより機関の回転が開始された場合を燃料噴射制御が停止状態から実行状態に移行する場合として適用してもよい。
10…火花点火式多気筒内燃機関、20…シリンダブロック部(エンジン本体部)、25…燃焼室、32…吸気弁、35…排気弁、39…インジェクタ、41…吸気管、43…スロットルバルブ、63…大気圧センサ、68…水温センサ、70…電気制御装置、71…CPU、M…電動モータ、P…動力切替機構