本発明は、フォーカスレンズをスキャン範囲で移動させてフォーカス評価値を取得し、該フォーカス評価値に基づいてフォーカス制御を行う光学機器に関する。
CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を備えたデジタルスチルカメラでは、オートフォーカス(AF)方式として、スキャンタイプのコントラストAF(TV−AFともいう)が採用されることが多い。このスキャンタイプのコントラストAFでは、フォーカスレンズを連続的又はステップ的にスキャン移動させながら、撮像素子を用いて生成された映像信号からAF評価値を取得し、該AF評価値が最大となる位置にフォーカスレンズを駆動することで合焦を得る。
また、このようなコントラストAFと、TTL位相差検出方式AF又は外部測距方式(三角測量方式)AFとを組み合わせたいわゆるハイブリッドAF機能を備えたデジタルカメラもある(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッドAFでは、TTL位相差検出方式AF又は外部測距方式AFによってフォーカスレンズを合焦位置近傍に移動させた後、そのフォーカスレンズ位置を基準に設定されたスキャン範囲でコントラストAFを行う。このときに設定されるスキャン範囲は、フォーカスレンズの可動範囲(無限遠端から至近端)に比べて大幅に狭い。これにより、フォーカスレンズを可動範囲全域でスキャン移動させてコントラストAFのみ行う場合に比べて、高速かつ高精度に合焦を得ることができる。
ところで、撮影光学系には、入射光に含まれる波長に応じて結像位置が光軸方向にずれる軸上色収差が存在する。コントラストAF自体は、軸上色収差が強く生じていても、該軸上色収差によってピント位置がずれた被写体像に対するAF評価値(コントラスト)を検出できる。したがって、軸上色収差の影響をほとんど受けずに、合焦を得ることができる。
これに対して、TTL位相差検出方式で位相差を検出するための光学系(撮影光学系および二次結像光学系)や外部測距方式で測距を行うための測距光学系の色収差は、被写体像からの光の分光特性によっても影響される。このため、被写体を照らす照明光の分光特性に応じて、TTL位相差検出方式や外部測距方式での検出結果が異なってくる。
特許文献2には、カメラに、異なる波長領域(色)の光を検出するセンサを設け、該センサからの情報に基づいて被写体を照らす光源を判定する技術が開示されている。
特開2003−279844号公報(段落0018〜0019、図2等)
特開平4−113339号公報(2頁左上欄16行〜3頁左上欄3行等)
前述したように、TTL位相差検出方式や外部測距方式では、光の分光特性による軸上色収差の変動に応じて検出結果が変動する。このため、この検出結果に基づいて算出されたフォーカスレンズの位置も変動する。したがって、ハイブリットAFにおいて位相差検出方式等で得られたフォーカスレンズ位置を基準に狭いスキャン範囲を設定する場合に、真にAF評価値が最大となる位置、つまりは撮影者が目視で合焦と感じる位置がスキャン範囲に含まれない可能性がある。
なお、このような問題を回避するために、スキャン範囲を広げると、コントラストAFに要する時間が長くなる。この結果、ハイブリッドAFの大きな特徴の1つである高速合焦性能が害される。
本発明は、光の分光特性による軸上色収差の変動があっても、適切にコントラストAFのスキャン範囲を設定できるようにした光学機器、撮影システムおよびフォーカス制御方法を提供することを目的の1つとしている。
本発明の一側面としての光学機器は、フォーカスレンズをスキャン範囲で移動させてフォーカス評価値を取得し、該フォーカス評価値に基づいてフォーカスレンズを移動させる制御手段を有する。また、被写体を照らす光源を判別する光源判別手段を有する。そして、制御手段は、光源の判別結果に応じてスキャン範囲を変更することを特徴とする。
また、本発明の他の側面としての光学機器は、フォーカスレンズをスキャン範囲で移動させてフォーカス評価値を取得し、該フォーカス評価値に基づいてフォーカスレンズを移動させる制御手段を有する。また、被写体の色情報を検出する色検出手段を有する。そして、制御手段は、色情報に応じてスキャン範囲を変更することを特徴とする。
なお、上記光学機器としての撮像装置と、該撮像装置に対して着脱可能な撮影レンズとを有する撮影システムや、該撮像装置に対して着脱可能な撮影レンズも本発明の他の側面を構成する。
また、本発明の他の側面としてのフォーカス制御方法は、フォーカスレンズをスキャン範囲で移動させてフォーカス評価値を取得し、該フォーカス評価値に基づいてフォーカスレンズを移動させるステップと、被写体を照らす光源を判別するステップとを有する。さらに、光源の判別結果に応じてスキャン範囲を変更するステップを有することを特徴とする。
さらに、本発明の他の側面としてのフォーカス制御方法は、フォーカスレンズをスキャン範囲で移動させてフォーカス評価値を取得し、該フォーカス評価値に基づいてフォーカスレンズを移動させるステップと、被写体の色情報を検出するステップとを有する。さらに、該色情報に応じてスキャン範囲を変更するステップとを有することを特徴とする。
本発明によれば、光の分光特性による軸上色収差の変動があっても、適切にスキャン範囲を設定することができる。したがって、スキャン範囲を広げなくても、正確な合焦を得ることができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の実施例1におけるレンズ交換式カメラシステム(光学機器)の全体構成を示す。本実施例のカメラシステムは、交換レンズ110と、該交換レンズ110が取り外し可能に装着される一眼レフデジタルカメラ(以下、単にカメラという)120とにより構成される。
交換レンズ110は、不図示の変倍のためのズームレンズ、光量を調節するための絞り115およびピント合わせを行うフォーカスレンズ111を含む撮影光学系110Aを有する。フォーカスレンズ111の位置は、エンコーダや可変抵抗器等のフォーカスレンズ位置検出部112により検出される。フォーカスレンズ駆動部112は、フォーカスレンズ111の駆動源となるモータ等のアクチュエータやこれを駆動する駆動回路を含む。
また、交換レンズ110は、フォーカスレンズ駆動部112を通じてフォーカスレンズ111の位置を制御するレンズ制御部114を有する。レンズ制御部114は、絞り制御部116を通じて絞り115の開口径も制御する。
さらに、レンズ制御部114は、レンズ側I/F117を介してカメラ120(カメラ制御部121)との通信を行う。交換レンズ110は、レンズ側電源供給I/F118を通じてカメラ120から電力供給を受ける。
一方、カメラ120において、カメラ制御部121は、カメラシステム全体の制御を司る。カメラ120は、撮影光学系110Aからの光線の光路(撮影光路)に対して出入りが可能なハーフミラー122を有する。撮影光路内に配置されたハーフミラー122を透過した光線は、CCDセンサやCMOSセンサ等で構成される撮像素子を含む撮像部126に導かれる。これにより、表示部133に設けられたLCD等のディスプレイに、電子ビューファインダ画像を表示することができる。また、このハーフミラー122で反射された光線は、後述するAFセンサ部123に導かれる。
AFセンサ部123は、ハーフミラー122(つまりは撮影光学系110A)からの光により形成された対(本実施例では二対)の光学像を光電変換して、該二対の光学像の位相差(位相差情報)を検出するための信号を出力する。AFセンサ部123の具体的な構成については後述する。焦点検出部124は、AFセンサ部123からの信号に基づいて、TTL位相差検出方式による焦点検出、すなわち上記対の光学像の位相差を演算する。そして、焦点検出部124は、該位相差に基づいて撮影光学系110Aのデフォーカス量を求める。さらに、該デフォーカス量に基づいて、TTL位相差検出方式でのフォーカスレンズ111の現在位置からの駆動量(方向を含む)、つまりはフォーカスレンズ111の合焦位置(第1の合焦位置)を求める。以下、このTTL位相差検出方式で求められたフォーカスレンズ111の合焦位置を、位相差合焦位置という。
カメラ制御部121は、カメラ側I/F125を通じてレンズ制御部114と通信を行う。カメラ120には、電源部131と、該電源部131から交換レンズ110に電源電力を供給するためのカメラ側電源供給接点132を有する。
さらに、カメラ120には、撮像部126において撮像素子の出力から生成された映像信号に対して所定の画像処理を施す画像処理部127を備える。画像処理部127からの映像信号は、符号化部128で圧縮符号化される。圧縮符号化された映像信号は、画像データとして記録部129にて不図示の記録媒体(半導体メモリ、光ディスク等)に記録されたり、表示部133にて電子ビューファインダ画像又は撮影レビュー画像として表示されたりする。
露出制御部130は、画像データの露出が適切となるように撮像素子の電荷蓄積時間を制御する。
カメラ操作部134は、絞り値を増減させたり、撮影モードを設定したりするためのスイッチ類を含む。第2操作部138は、不図示の撮影スイッチを備える。撮影スイッチは、2段ストロークタイプのスイッチである。この撮影スイッチを、1段押下操作すると、フォーカス動作や測光動作等の撮影準備動作が開始される。また、2段押下操作すると、ハーフミラー122が撮影光路外に移動し、記録媒体に記録するための記録用画像の撮影動作が開始される。
カメラ120は、被写体を照らす照明光の光源を検知する光源検知部135を有する。この光源検知部135については後述する。
また、カメラ120は、撮像部126から出力された映像信号を用いて所定画面領域内の映像コントラストを評価するコントラスト評価部136を有する。コントラスト評価部136は、映像信号から高周波成分を抽出して、映像コントラストを示すAF評価値を生成する。該コントラスト評価部136、焦点検出部124およびカメラ制御部121により、本発明にいう制御手段が構成される。
また、カメラ120は、カメラ120の動作に必要な各種パラメータやデータを記憶するメモリ137を有する。
図2には、図1に示したAFセンサ部123の具体的な構成を示す。AFセンサ部123は、ハーフミラー122からの反射光のうち位相差検出センサ201に入射しない光線を遮る視野マスク203を有する。フィールドレンズ204は、視野マスク203を通過した光の射出瞳を、絞り202の開口部に相当する大きさに調節する。2次結像レンズ205は、フィールドレンズ204からの光により二対の光学像を形成し、位相差検出センサ201に設けられた二対(4つ)のラインセンサ上に結像させる。絞り202は、位相差検出センサ201に設けられた4つのラインセンサのそれぞれに入射する光線の入射角を制限する。
レンズ側I/F117およびカメラ側I/F125はそれぞれ、レンズ制御部114およびカメラ制御部121からの制御により、図3Aに示すデータ構造を有する各種パラメータの送受信を行う。図3Bには、該データ構造のマーカー定義を示す。
図3Aに示すように、データ構造は、先頭から順に、1byteの情報識別マーカー、1byteのデータ長パケット、最大254bytesのパラメータパケット、および1byteの終端マーカーとから構成される。
情報識別マーカーは、図3Bに示すマーカー定義に基づき、どのような情報をやりとりするかを定める。例えば、データに含まれる情報識別マーカーの値が「0x01」であるとき、そのデータは、フォーカスレンズ111の位置情報をカメラ120へ送信するよう要求するデータであることを意味する。また、情報識別マーカーの値が「0x02」であるとき、そのデータは、フォーカスレンズ111の位置をパラメータパケットに収められた値に基づいて設定するようレンズ制御部114へ要求するデータであることを意味する。さらに、情報識別マーカーの値が「0x10」であるとき、そのデータは、レンズシステム110のレンズ種別をレンズ交換式カメラ120へ送信するようレンズ制御部114へ要求するデータであることを意味する。
本実施例では、この通信データは内容に応じて通信先から返信を行うように構成されている。返信時における情報識別マーカーは、対応する往信時の情報識別マーカーと同じものを格納し、情報の対応付けがなされる。これにより、1つのパラメータ要求に関する通信データを情報要求側から情報提供側に送信した後、情報提供側からの返信を待つことなく、他のパラメータ要求に関する通信データを情報要求側から情報提供側へ送信することができる。
一方、情報要求側から情報提供側へ通信した後、情報提供側からの返信を待つような通信の形態としてもよい。この場合は、情報提供側から情報要求側への通信における情報識別マーカーや終端マーカーは、省略してもよい。
データ長パケットは、パラメータパケットに格納されるパラメータ情報のデータ長を宣言する。ここで、本実施例でのデータ長パケットは1byteであり、また終端マーカーと同じ値をとらないようにする必要がある。このため、最大254bytesまでパラメータ情報のデータ長を宣言することができる。
終端マーカーは、データ構造の終端を表すマーカーであり、図3Bに示すように値「0xFF」が用いられる。なお、終端マーカーの値は、他のマーカーやパケットと重複せず、データ列の終端を混同することが無い値であれば、値「0xFF」でなくてもよい。
次に、上記データ構造を有するデータによるレンズ側I/F117−カメラ側I/F125間での各種パラメータの送受信について具体的に説明する。
カメラ制御部121から値「0x01」の情報識別マーカー、値「0x0」のデータ長パケット、値「0xFF」の終端マーカーからなる通信データが送信されることにより、フォーカスレンズ111における現在の位置の送信要求が行われる。
このフォーカス位置送信要求があったとき、レンズ制御部114は、以下のような処理を実行する。まず、フォーカスレンズ位置検出部113を通じて現在のフォーカスレンズ111の位置(以下、フォーカスレンズ位置という)を示すパラメータ値を取得する。
次に、値「0x01」の情報識別マーカー、現在のフォーカス位置を示すパラメータ値のデータ長、現在のフォーカスレンズ位置を示すパラメータ値および値「0xFF」の終端マーカーからなる通信データをカメラ制御部121に送信する。これにより、フォーカス位置送信要求に対する応答を行う。
次に、本実施例のカメラシステムの動作について説明する。図4および図5は、本実施例のカメラシステムにおいて実行されるフォーカス制御処理の手順を示すフローチャートである。本フォーカス制御処理は、カメラ制御部121およびレンズ制御部114内の不図示のメモリ等に格納されたコンピュータプログラムに従って実行される。このことは、後述する他の実施例でも同じである。なお、図4および図5における同じ丸囲み英字が付された部分は、互いに繋がっていることを示す。
まず、カメラ120の電源がONになると(ステップS401)、ステップS402に進む。このとき、電源のON後、カメラ操作部134を通じて入力された絞り値の最新設定値が送信される。
次に、カメラ制御部121は、レンズ制御部114と通信を開始する(ステップS402)。カメラ制御部121は、この通信に基づいて、交換レンズ110の装着の有無を判別する(ステップS403)。具体的には、ステップS402で、交換レンズ110からレンズ種別や焦点距離設定値等の情報が取得された場合に、交換レンズ110が装着されていると判断する。該情報が取得されていない場合は、交換レンズ110は装着されていないと判断する。
ここで、レンズ種別とは、交換レンズ110の最小および最大焦点距離や開放絞り値といった光学特性ごとに割り振られた番号のほか、フォーカスレンズ駆動部113の種類(アクチュエータや駆動方式等)ごとに割り振られた番号等を含む。
ステップS403での判別の結果、交換レンズ110がカメラ120に装着されているときは、ステップS404の処理に進み、装着されていないときは本処理を終了する。
ステップS404では、ステップS402で取得されたレンズ種別がカメラ120に対して適当なレンズか否かを判別する。本実施例では、カメラ120において、コントラストAFのスキャン範囲(コントラスト評価範囲)に関するオフセットベクトルが設定される。そして、交換レンズ110のレンズ種別が該オフセットベクトルに応じてフォーカスレンズ111の位置を制御できるときに該レンズ種別が適当であると判断される。
適当なレンズ種別であると判断したカメラ制御部121は、該レンズ種別(光学特性)に応じて、後述するステップS411でのオフセットベクトルの選択に用いられるレンズ種別番号を不図示の内部メモリに記憶する。そして、ステップS405に進む。レンズ種別が適当でないと判断した場合は、カメラ側からのフォーカス制御を行わないようにして本処理を終了し、無駄な電力消費を防止する。
ステップS405では、第2操作部138の撮影スイッチの1段目操作(以下、S1という)がなされたか否かを判断し、S1がなされていればステップS406へ進む。S1がなされていなければ、ステップS405の判断を繰り返す。
ステップS406では、カメラ制御部121は、通信を介してレンズ制御部114へ絞り開放命令を送信する。レンズ制御部114は該命令に応じて、絞り制御部116を通じて絞り115を開放に設定する。また、カメラ制御部121は、絞り開放命令をレンズ制御部114に送信した後、焦点検出部124にTTL位相差検出方式の焦点検出動作を行わせる。該焦点検出による位相差合焦位置の計算が行われた後、ステップS407へ進む。
ステップS407では、カメラ制御部121は、光源検知部135を用いて被写体を照らしている光源を判別する。
ここで、光源検知部135は、可視光領域と近赤外領域(赤外成分を含む領域)のそれぞれに感度を持つ複数の独立した受光センサ(受光素子)を備える。光源検知部135は、被写体像を形成する光線(つまりは被写体からの反射光線)の照度と近赤外領域の波長の分光強度とを比較して、被写体像を形成する光線が近赤外領域を含むか否かを検出する。そして、該検出結果に基づいて、光源の種類を判別する。
具体的には、被写体像を形成する光線が近赤外領域成分を含まない場合は、光源が「蛍光灯」であると判別する。また、被写体像を形成する光線が近赤外領域成分を含む場合は、光源が「蛍光灯以外の光源」と判別する。光源判別後、ステップS408へ進む。
ステップS408では、コントラスト評価部136は、ステップS407で判別(検知)した光源が蛍光灯であるか否かを判断する。蛍光灯である場合は、ステップS409へ進む。そうでなければ、ステップS410へ進む。
光源が蛍光灯である場合、後述のように、軸上色収差の影響によりTTL位相差検出方式で求めたフォーカスレンズ111の合焦位置が、撮影者が目視で合焦と感じる位置(一般にはAF評価値が最大又はその近傍となる位置)に対して大きくずれる傾向がある。
このため、ステップS409でコントラスト評価部136は、後述するコントラスト評価のためのスキャン移動の開始位置を設定するためのオフセットベクトルに、レンズ種別、現在の焦点距離設定や現在のフォーカスレンズ位置に応じたベクトル値を設定する。オフセットベクトルは、TTL位相差検出方式で得られた位相差合焦位置を中心とした所定のデフォーカス範囲として設定されるスキャン範囲であるコントラスト評価範囲にオフセットを与える値である。該オフセットベクトルは、オフセット方向とオフセット量とを含む。現在の焦点距離設定は、不図示のズームレンズ位置検出センサにより検出されたズームレンズの位置に基づいて算出される。
一般に、TTL位相差検出方式の焦点検出に係る光学系は、検出可能となる被写体輝度の下限を十分に確保するために、撮像部126に入射する光学系とは異なり、近赤外領域を抑圧することなく可視光領域とともにラインセンサに結像させる。このため、光源が太陽光や白熱灯を念頭において設計されたTTL位相差検出方式の焦点検出系では、近赤外領域成分を含まない蛍光灯下で焦点検出を行うと、光学系の色収差の影響によって焦点検出結果が大きくずれてしまう場合がある。
このため、本ステップでは、レンズ種別と光源の種類に応じて変化する色収差の量を推定し、該推定結果を上述のオフセットベクトルとしてコントラスト評価範囲の位置設定に反映させる。これにより、TTL位相差検出方式の焦点検出で得られた位相差合焦位置が、目視での合焦位置(以下、目視合焦位置という)とずれても、位相差合焦位置に基づいて設定されるコントラスト評価範囲から目視合焦位置が外れてしまうことを防止できる。上記オフセットベクトルは、後述するステップS411におけるフォーカス制御の際に用いられる。
図6には、コントラスト評価範囲を決めるオフセットベクトルの設定例を示す。この図には、n個(nは自然数)のレンズ種別に対して、光源が蛍光灯である場合の様々な焦点距離設定や位相差合焦位置に対応するオフセットベクトルデータを示している。該オフセットベクトルデータは、コントラスト評価部136内の不図示のメモリにテーブルデータとして記憶されている。オフセットベクトルの方向は、+が無限遠方向、−が至近方向である。
例えば、レンズ種別が“1”の交換レンズが装着された場合について説明する。交換レンズ“1”の焦点距離が55mmに設定され、被写体が蛍光灯下にあり、位相差合焦位置が至近端から130μmに位置していた場合は、至近方向へのデフォーカス量としての45μmに相当するオフセットベクトルが選択される。この場合、至近端から85μmの位置が、補正位相差合焦位置となる。そして、コントラスト評価範囲は、結果的に、この補正位相差合焦位置を中心とした所定のデフォーカス範囲に設定されることになる。
こうしてコントラスト評価範囲が設定された後、ステップS406へ進む。
一方、ステップS410では、コントラスト評価部136は、軸上色収差の影響による位相差合焦位置と目視合焦位置とのずれが少ないとして、オフセットベクトルに“0”を設定し、実質無効化する。この後、ステップS411へ進む。
ステップS411では、カメラ制御部121は、ステップS406で得られた位相差合焦位置とステップS408で得られたコントラスト評価範囲のオフセットベクトルとに応じて、コントラスト評価時のレンズ初期位置(スキャン移動の開始位置)を算出する。
コントラスト評価時のレンズ初期位置は、下記の式1により計算される。
P1=P2−P3+(→P4) …(式1)
但し、P1:コントラスト評価時のレンズ初期位置
P2:TTL位相差検出方式の焦点検出で得られた位相差合焦位置
P3:所定のコントラスト評価範囲の半分の区間長
(→P4):コントラスト評価範囲のオフセットベクトル
なお、2×P3が、P1を始点とするコントラスト評価範囲であり、このコントラスト評価範囲の中心が、前述した補正位相差合焦位置に相当する。
レンズ初期位置の算出後、ステップS412へ進む。
ステップS412では、カメラ制御部121は、コントラスト評価時のレンズ初期位置へフォーカスレンズ111を駆動させるよう、通信を介してレンズ制御部114へ命令する。レンズ制御部114は、該命令を受けてフォーカスレンズ駆動部113を通じてフォーカスレンズ111を該レンズ初期位置へ駆動させる。そして、ステップS413へ進む。
ステップS413では、コントラスト評価部136は、通信を介してレンズ制御部114へフォーカスレンズ111のスキャン移動命令を送信する。レンズ制御部114は、該スキャン移動命令に応じて、フォーカスレンズ駆動部113を通じてフォーカスレンズ111のスキャン移動を行わせる。このスキャン移動では、フォーカスレンズ111は停止することなく移動してもよいし、ステップ的に移動と停止を繰り返してもよい。
また、コントラスト評価部136は、フォーカスレンズ111のスキャン移動中に撮像部126から得られた映像信号における所定画面領域でのAF評価値を生成する。そして、該AF評価値が最大となるフォーカスレンズ位置(ピーク位置)を検出し、該ピーク位置にフォーカスレンズ111を駆動するようレンズ制御部114に命令を送信する。レンズ制御部114は、該命令を受けてフォーカスレンズ駆動部113を通じてフォーカスレンズ111をピーク位置に駆動する。こうしてコントラストAFによる合焦が得られる。その後、ステップS414へ進む。
ステップS414では、カメラ制御部121は、第2操作部138の撮影スイッチの2段目操作(以下、S2という)がなされたか否かを判断し、S2がなされていればステップS415へ進む。S2がなされていなければ、ステップS416へ進む。
ステップS415では、撮像部126で記録用画像の撮影を行い、撮影画像データを画像処理部127へ転送する。画像処理部127は、撮像画像データに対して所定の画像処理を行い、該処理データを圧縮符号化部128へ転送する。圧縮符号化部128は、画像データを所定の圧縮符号化方式で符号化し、記録部129へ転送する。記録部129は、得られた符号化データを記録媒体に記録する。記録後、ステップS405に再度進み、次の撮影に備える。
ステップS414では、第2操作部138にてS1がなされた状態が保持されているか否かを判断する。保持されているならば、ステップS414に戻る。S1が解消されていれば、ステップS402へ再度進む。
なお、本実施例では、光源検知として蛍光灯であるか否かの判別を行う場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、可視光領域〜近赤外領域の波長領域を複数に分割し、各波長領域に対して感度を持つセンサを光源検知部として備えることで、白熱灯、水銀灯、ナトリウム灯、昼光など複数の光源を判別してもよい。そして、これらの光源に応じたコントラスト評価範囲のオフセットベクトルを設定してもよい。
また、本実施例では、オフセットベクトルをレンズ種別、焦点距離および位相差合焦位置に応じてテーブルデータから選択する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、オフセットベクトルの設定式を、レンズ種別、焦点距離設定および位相差合焦位置を変数とする数式として記憶し、その数式を用いた演算によってオフセットベクトルを設定してもよい。
また、本実施例では、オフセットベクトルをデフォーカス量で示したが、本発明ではこれに限らず、フォーカスレンズの最小駆動単位で表された値としてもよい。
以上のように本実施例によれば、軸上色収差の影響により目視合焦位置と位相差合焦位置とが大幅に異なり得る光源条件下でも、コントラスト評価範囲(スキャン範囲)の区間幅を広げずに、目視合焦位置を含む適正なコントラスト評価範囲を設定できる。したがって、フォーカス制御に要する時間の増加を抑えつつ目視合焦位置に対して精度良くフォーカスレンズを移動させることができる。
また、本実施例では、レンズ種別が適当でないと判断した場合は、無駄な電力消費を防止するため、カメラ側からのフォーカス制御を行わない動作について説明したが、これに限るものではない。例えば、レンズ種別が適当でないと判断した場合は、色収差対策のオフセット設定を行わずにTVAF動作をスキャン範囲を広げて行っても良い。このような動作を行うことで、レンズ種別が適当でないレンズにおいて、一般的なTVAF動作を利用できるようになる。
実施例1では、光源検知部135にて光源検知を行った結果に応じてコントラスト評価範囲を変更した。本実施例では、撮像部126で得られた映像信号に含まれる色情報に基づいてコントラスト評価範囲の位置を変更する。なお、本実施例においても、コントラスト評価範囲の区間幅は広げない。
図7には、本発明の実施例2におけるカメラシステムの全体構成を示す。図7において、実施例1(図1)と同じ又は同様の機能を有する構成要素については、図1と同符号を付す。本実施例のカメラ710は、実施例1の光源検知部135の代わりに、撮像部126からの映像信号(ここでは、後述する仮撮影画像データ)から色情報を抽出する色評価部711を備えている。また、コントラスト評価部136は、レンズ種別と色評価部711からの色情報とに基づいて、コントラスト評価範囲のオフセットベクトルを設定する。
図8および図9は、本実施例のカメラシステムにおいて実行されるフォーカス制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、図8および図9における同じ丸囲み英字が付された部分は、互いに繋がっていることを示す。
本実施例でのフォーカス制御処理は、実施例1のフォーカス制御処理と基本的に同じ手順で行われる。このため、実施例1(図4および図5)のステップと同一内容のステップには同一符号を付して説明を省略する。以下では、実施例1と異なるステップについて説明する。
本実施例では、実施例1におけるステップS407〜S410の処理の代わりに、ステップS701〜S704の処理を行う。
図8において、ステップS701では、カメラ制御部121は、ステップS406で得られた位相差合焦位置へフォーカスレンズ111を移動させるようレンズ制御部114へ命令を送信する。レンズ制御部114は該命令に応じて、フォーカスレンズ駆動部113を通じてフォーカスレンズ111を位相差合焦位置へ移動させる。該移動後、ステップS702へ進む。
ステップS702では、色評価部711で被写体の色情報抽出に用いる画像データを得るために、撮像部126にて仮撮像を行い、得られた仮撮影画像データを画像処理部127へ転送する。画像処理部127は、転送された画像データに各種の画像処理を施す。画像処理を施された画像データは、色評価部711へ転送される。転送後、ステップS703へ進む。
ステップS703では、色評価部711は、画像処理部127から転送された画像データから、被写体に含まれる色情報のうち赤、緑、青の原色に近い色領域がどのくらいの広さ含まれているかを解析する。具体的には、色評価部711は、赤、緑、青の原色に対し所定の色差の範囲内に含まれる色領域を抽出し、抽出された色領域の面積、つまりは画素数を原色ごとにカウントし、各原色の含有割合を算出する。この色情報の抽出処理を、以下、測色処理又は単に測色という。
図10は、上記測色処理を説明するための模式図であり、ステップS702での仮撮像で得られる画像の例である。図10には、広い草原に敷かれた道の上に人が立っている様子を写した画像を示している。該画像には、被写体として、人物の頭901、顔902、口903、上半身の着衣904、左右の腕905a,905b、下半身の着衣906、左右の靴907a,907b、空908、雲909a,909b、山並みを含む草原910および道911が写っている。
この画像における各被写体の主だった色は、人物の頭901が黒色、顔902が肌色、口903がピンク色、上半身着衣904が赤色、左右の腕905a,905bが肌色である。また、下半身着衣906が青色、左右の靴907a,907bが茶色、空908が水色、雲909a,909bが白色、草原910が緑色、道911が灰色である。
図10中に示された破線の矩形枠912は、カメラ710で焦点検出を行う際の焦点検出対象エリアを示している。つまり、TTL位相差検出方式AFやコントラストAFを行うおおよその対象領域である。
ステップS703では、上記焦点検出対象エリア912に対して、上述した測色処理を行う。
焦点検出対象エリア912では、赤色の上半身着衣904が約4割含まれている。一方、緑色や青色の原色を帯びた色領域は、焦点検出対象エリア912内に含まれていない。このため、測色結果としては、赤原色:緑原色:青原色:全色=4:0:0:10という赤緑青の各原色の含有比で表された色含有情報が得られる。このように測色処理を行った後、ステップS704へ進む。
ステップS704では、前のステップで得られた色含有情報(測色結果)と、カメラ710に装着されている交換レンズ110のレンズ種別、焦点距離および位相差合焦位置とに応じて、コントラスト評価範囲のオフセットベクトルを設定する。
本実施例におけるオフセットベクトルは、下記の式2により計算される。
(→P4)=RL×(→RV)+GL×(→GV)+BL×(→BV) …(式1)
但し、(→P4):コントラスト評価範囲のオフセットベクトル
RL:測色で得られた赤原色の含有率(=赤原色含有比/他色含有比)
GL:測色で得られた緑原色の含有率(=緑原色含有比/他色含有比)
BL:測色で得られた青原色の含有率(=青原色含有比/他色含有比)
(→RV):現在の焦点検出条件での赤原色に対する色補正ベクトルの向きと値
(→GV):現在の焦点検出条件での緑原色に対する色補正ベクトルの向きと値
(→BV):現在の焦点検出条件での青原色に対する色補正ベクトルの向きと値
ここで、各原色の色補正ベクトルとは、焦点検出対象エリアに各原色の被写体のみが存在する場合にTTL位相差検出方式で焦点検出を行ったときの目視合焦位置に対する位相差合焦位置のずれ量と向きを求め、これを向きだけ反転させてデータ化したものである。
また、焦点検出条件とは、レンズ種別、焦点距離設定および現在のフォーカスレンズ位置(位相差合焦位置)を意味する。
図11には、レンズ種別に応じて選択される各原色の色補正ベクトルの例を示している。レンズ種別、焦点距離設定およびフォーカスレンズ位置に応じた各原色の色補正ベクトルが、色評価部711内の不図示のメモリにテーブルデータとして記憶されている。
例えば、カメラ710に装着されている交換レンズ110のレンズ種別が“1”で、現在の焦点距離が65mmで、位相差合焦位置が至近端から140μmの位置である場合、各色補正ベクトル(向きと値)はそれぞれ以下のように設定される。
(→RV)=+110(μm)
(→GV)=−80
(→BV)=+30
但し、色補正ベクトルの方向は、+が無限遠方向、−が至近方向である。
オフセットベクトルの算出後、ステップS411へ進み、ステップS406で得られた位相差合焦位置とステップS704で得られたコントラスト評価範囲のオフセットベクトルとに応じて、コントラスト評価時のレンズ初期位置を算出する。レンズ初期位置は、実施例1で示した式1を用いて算出される。そして、ステップS412で、フォーカスレンズ111をレンズ初期位置に移動させた後、実施例1と同様に、コントラストAF(ステップS413)および撮影動作(ステップS415)等を行う。
なお、本実施例では、オフセットベクトルを算出するための色補正ベクトルを、レンズ種別、焦点距離および位相差合焦位置に応じてテーブルデータから選択する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、色補正ベクトルの設定式を、レンズ種別、焦点距離設定および位相差合焦位置を変数とする数式として記憶し、その数式を用いた演算によって色補正ベクトルを算出してもよい。また、本実施例では、オフセットベクトルを各原色の含有率や色補正ベクトルに基づいて算出する場合について説明したが、テーブルデータから選択するようにしてもよい。
また、本実施例では、色補正ベクトルやオフセットベクトルをデフォーカス量で示したが、本発明ではこれに限らず、フォーカスレンズの最小駆動単位で表された値としてもよい。
以上のように本実施例によれば、軸上色収差の影響により目視合焦位置と位相差合焦位置とが大幅に異なり得る光源条件下でも、コントラスト評価範囲(スキャン範囲)の区間幅を広げずに、目視合焦位置を含む適正なコントラスト評価範囲を設定できる。したがって、フォーカス制御に要する時間の増加を抑えつつ目視合焦位置に対して精度良くフォーカスレンズを移動させることができる。
しかも、本実施例によれば、被写体(画像データ)の測色を行い、レンズ種別、焦点距離設定、位相差合焦位置および測色結果に応じてコントラスト評価範囲を変更する。したがって、カメラに光源検知部を設けなくてもよいというメリットがある。
実施例1,2では、交換レンズのレンズ種別と光源判別結果又は被写体色情報に応じて、コントラスト評価範囲をオフセットさせるベクトル情報を求めた。
これに対し、レンズ種別と光源判別結果又は被写体色情報に応じて、位相差合焦位置をオフセットさせるベクトル情報を求めてもよい。この場合、該オフセットされた位相差合焦位置、つまりは実施例1でも触れた補正位相差合焦位置を中心に、所定区間幅のコントラスト評価範囲を設定すればよい。これにより、結果的にコントラスト評価の区間幅を広げることなく、光源判別結果や色情報に応じてコントラスト評価範囲の位置を変更することができる。
以下、本発明の実施例3として、実施例1のように光源判別結果に応じて位相差合焦位置をオフセットさせるベクトル情報を求める例について説明する。
図12には、本実施例のカメラシステムの全体構成を示す。図12に示すカメラ1200は、実施例1の図1に示したカメラに対して、検出結果補正部1201を有する点で異なる。
検出結果補正部1201は、レンズ種別、焦点距離設定、位相差合焦位置および光源検知部135による光源判別結果に基づいて、焦点検出部124で求められた位相差合焦位置をオフセットさせる(補正する)。
これ以外の構成は図1に示す構成と基本的に同じである。図1と同じ又は同様の機能を有する構成要素については、図1と同符号を付す。
図13および図14は、本実施例のカメラシステムにおいて実行されるフォーカス制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、図13および図14における同じ丸囲み英字が付された部分は、互いに繋がっていることを示す。
本実施例でのフォーカス制御処理は、実施例1のフォーカス制御処理と基本的に同じ手順で行われる。このため、実施例1(図4および図5)のステップと同一内容のステップには同一符号を付して説明を省略する。以下では、実施例1と異なるステップについて説明する。
本実施例では、実施例1におけるステップS411の処理の代わりに、ステップS1201〜S1204の処理を行う。
ステップS406で焦点検出部124が位相差合焦位置を求められ、ステップS407で光源検知が行われた後、ステップS408で、光源が「蛍光灯」であればステップS1201へ進む。光源が「蛍光灯以外の光源」であればステップS1202へ進む。
ステップS1201では、検出結果補正部1201は、焦点検出部124で得られた位相差合焦位置に対して、交換レンズ110のレンズ種別、焦点距離設定、位相差合焦位置および光源判別結果に応じて、プレディクション値オフセットベクトルを求める。プレディクション値オフセットベクトルは、位相差合焦位置の軸上色収差による誤差を補正するための補正量と補正の向きを含む。
プレディクション値オフセットベクトルは、レンズ種別、焦点距離設定、位相差焦点位置および光源判別結果ごとに用意され、テーブルデータとして検出結果補正部1201内の不図示のメモリに予め記憶されている。プレディクション値オフセットベクトルを求めた後、ステップS1203へ進む。
ステップS1202では、プレディクション値オフセットベクトルに値“0”を設定し、実質無効化する。この後、ステップS1203へ進む。
ステップS1203では、検出結果補正部1201は、位相差合焦位置に対してプレディクション値オフセットベクトルを付与する。これにより、位相差合焦位置におけるレンズ種別などに応じた軸上色収差の影響を補正する。プレディクション値オフセットベクトルで補正された位相差合焦位置(補正位相差合焦位置)の情報は、コントラスト評価部136へと転送される。該転送後、ステップS1204へ進む。
ステップS1204では、コントラスト評価部136は、検出結果補正部1201から得られた補正位相差合焦位置に基づいて、コントラスト評価時のレンズ初期位置を下記の3式を用いて算出する。
P1=P2−P3 …(式2)
但し、P1:コントラスト評価時のレンズ初期位置
P2:プレディクション値オフセットベクトル付与後の補正位相差合焦位置
P3:所定のコントラスト評価範囲の半分の区間長
レンズ初期位置を算出した後、ステップS412へ進み、以後は実施例1と同様に、コントラストAF(ステップS413)および撮影動作(ステップS415)等を行う。
なお、本実施例では、プレディクション値オフセットベクトルを、レンズ種別、焦点距離、位相差合焦位置および光源判別結果に応じてテーブルデータから選択する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、プレディクション値オフセットベクトルの設定式を、レンズ種別、焦点距離設定、位相差合焦位置および光源判別結果を変数とする数式として記憶し、その数式を用いた演算によって算出してもよい。
さらに、位相差合焦位置とコントラストAFによる合焦位置との差を求め、該差に基づいてプレディクション値オフセットベクトルを補正し、補正後のプレディクション値オフセットベクトルを検出結果補正部1201内のメモリに更新記憶させてもよい。これにより、プレディクション値オフセットベクトルのデータを最新かつ適正なデータとすることができる。
以上のように本実施例によれば、軸上色収差の影響により目視合焦位置と位相差合焦位置とが大幅に異なり得る光源条件下でも、コントラスト評価範囲(スキャン範囲)の区間幅を広げずに、目視合焦位置を含む適正なコントラスト評価範囲を設定できる。したがって、フォーカス制御に要する時間の増加を抑えつつ目視合焦位置に対して精度良くフォーカスレンズを移動させることができる。
しかも、本実施例では、TTL位相差検出方式で得られた位相差合焦位置に対する補正値(プレディクション値オフセットベクトル)を持つ。このため、被写体が低コントラストである等のためにコントラストAFを行えない状況においてTTL位相差検出方式の焦点検出のみ用いて合焦を得ようとする状況においても、軸上色収差の影響を少なくした精度の良い合焦を行うことも可能となる。
なお、本実施例では、光源の判別結果に応じて位相差合焦位置を補正する場合について説明したが、実施例2のように、被写体の色情報に応じて位相差合焦位置を補正することもできる。
以上説明した各実施例では、TTL位相差検出方式AFとコントラストAFとを組み合わせたハイブリッドAF機能を有するカメラシステムについて説明した。しかし、本発明は、外部測距方式AFとコントラストAFとを組み合わせたハイブリッドAF機能を有するカメラシステムにも適用できる。
図15には、外部測距方式AFとコントラストAFとを組み合わせたハイブリッドAF機能を有するカメラ1500を含むカメラシステムの全体構成を示す。この図に示すカメラ1500は、実施例1の変形例である。
カメラ1500は、実施例1のカメラのようにハーフミラー122、AFセンサ123および焦点検出部124を持たず、代わりに、外部測距センサ150と、測距部151とを有する。
外部測距センサ150は、撮影光学系(交換レンズ110)を通ってきた光を使用せずに被写体までの距離を計測し、距離に応じた信号を出力するタイプのセンサである。外部測距センサ150は、被写体からの光束を2分割し、これら2分割した光束を一組のラインセンサにそれぞれ受光させる。そして、その受光量に応じて出力される信号のずれ量、すなわち光束の分割方向の相対的位置ずれ量を検出することで、三角測量方法によって被写体までの距離を求めることができる。
また、このようなパッシブ方式の測距方式のほか、アクティブ方式の測距方式として、超音波センサを用いて測定した超音波の伝搬速度から距離を求める方式や、被写体に投光した赤外線を用いた三角測距方式などを用いてもよい。
測距部151は、外部測距センサ150により得られた距離情報と交換レンズ110のレンズ種別、焦点距離設定等に基づいて、外部測距方式でのフォーカスレンズ111の合焦位置を算出する。
これ以外の構成は、実施例1に示す構成と基本的に同じであり、共通する構成要素については、各実施例と同符号を付す。
また、本実施例におけるフォーカス制御処理については、実施例1にて説明したフローチャートにおいて、TTL位相差検出方式での焦点検出および位相差合焦位置を、外部測距方式での距離検出および合焦位置と読み替えればよい。
すなわち、外部測距方式で得られた合焦位置と、レンズ種別、焦点距離および光源判別結果に応じてコントラスト評価範囲のオフセット(変更)し、コントラストAFを行う。
また、図示しないが、実施例2,3の変形例として、外部測距方式AFとコントラストAFとを組み合わせたハイブリッドAF機能を有するカメラを用いることもできる。実施例2の変形例では、測距合焦位置、レンズ種別、焦点距離および被写体色情報に応じてコントラスト評価範囲をオフセット(変更)し、コントラストAFを行う。また、実施例3の変形例では、測距合焦位置、レンズ種別、焦点距離および光源判別結果又は色情報に応じて測距合焦位置を補正し、補正後の測距合焦位置を中心とするコントラスト評価範囲でコントラストAFを行う。
なお、上記各実施例では、レンズ交換タイプの一眼レフデジタルカメラシステムについて説明したが、本発明は、レンズ一体型のデジタルカメラにも適用することができる。さらに、本発明は、交換レンズにも適用できる。すなわち、カメラ側から位相差合焦位置又は測距合焦位置の情報と映像信号とを取り込んだ交換レンズ内で各実施例で説明したフォーカス制御処理を行うように構成することもできる。
本発明の実施例1であるカメラシステムの構成を示すブロック図。
図1におけるAFセンサ部の詳細構成を示す斜視図。
図1のカメラシステムで送受信される通信データの構造を示す図。
図1のカメラシステムで送受信される通信データのマーカー定義を示す図。
実施例1のカメラシステムにおけるフォーカス制御処理の手順を示すフローチャート。
実施例1のカメラシステムにおけるフォーカス制御処理の手順を示すフローチャート。
実施例1におけるコントラスト評価範囲のオフセットベクトルの設定例を示す図。
本発明の実施例2であるカメラシステムの全体構成を示すブロック図。
実施例2のカメラシステムにおけるフォーカス制御処理の手順を示すフローチャート。
実施例2のカメラシステムにおけるフォーカス制御処理の手順を示すフローチャート。
実施例2のカメラシステムで撮像した画像を示す図。
実施例2における色補正ベクトルの設定例を示す図。
本発明の実施例3であるカメラシステムの全体構成を示すブロック図。
実施例3のカメラシステムにおけるフォーカス制御処理の手順を示すフローチャート。
実施例3のカメラシステムにおけるフォーカス制御処理の手順を示すフローチャート。
本発明の実施例4であるカメラシステムの全体構成を示すブロック図。
符号の説明
110 交換レンズ
120,710,1200,1500 カメラ
123 AFセンサ
136 コントラスト評価部
150 外部測距センサ