JP2007256852A - 多段型回折光学素子及び多段型回折光学素子の製造方法 - Google Patents

多段型回折光学素子及び多段型回折光学素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多段型回折光学素子の光学基板に多段に形成した回折格子部上に反射防止膜を成膜する際に、回折格子部の回折効率の低下を防止する。
【解決手段】多段型回折光学素子10Bの光学基板11に多段に形成した回折格子部11d上に反射防止膜13を成膜する際に、光学基板11は、反射防止膜13を成膜する前に、回折格子部11d中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部のステップ幅wb1が、この段部に隣接する左右の段部の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚相当分だけ幅広く形成される一方、左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部のステップ幅wb8が、この段部の左右の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚相当分だけ幅狭く形成されたことを特徴とする多段型回折光学素子10Bを提供する。
【選択図】図2

Description

本発明は、光学基板上に多段に形成した回折格子部の回折効率を向上させるために、入射光に対して反射を防止するための反射防止膜を成膜した多段型回折光学素子及び多段型回折光学素子の製造方法に関するものである。
最近、多段型回折光学素子は、非球面レンズと組み合わせることにより、光学的な収差を小さな値に設定できる等の理由から、光ディスク装置の光ピックアップや、光通信装置の光学系に多用されている。
図7(a),(b)は一般的な多段型回折光学素子を示した平面図,縦断面図である。
図7(a),(b)に示した如く、一般的な多段型回折光学素子10は、例えば、多段型フレネルレンズとして適用可能に構成されており、光透過性を有するガラス基板や石英基板などを用いて光学基板11が形成されている。
上記した光学基板11は、一方の面となる下面11aが平坦面に形成されているものの、一方の面と対向する他方の面となる上面11b側は複数の輪帯領域RZ(RZ,RZ,RZ,RZ,……,RZ)が中心点0を中心にしてリング状の同心円を描き、且つ、輪帯領域RZ(RZ,RZ,RZ,RZ,……,RZ)の輪帯ピッチp(p,p,p,p,……,p)が中心点0から外周側に向かって徐々に狭めて設定されていると共に、上面11b側の各輪帯領域RZ内に複数の段部を有する回折格子部11cが各段部を外周側に向けて多段に形成されているので、この光学基板11を径方向に沿って断面した時に回折格子部11cが光学基板11の一つの方向となる径方向に複数連接されていることになる。
また、光学基板11上に多段に形成した回折格子部11cは、各段部の幅を示すステップ幅をそれぞれ有する複数の段部が一定の位相差を持って段階的に変化するように高さ(深さ)を違えて形成されている。
この際、光学基板11の中心近傍の輪帯領域RZ内で輪帯ピッチpが例えば200μm,100μm,50μmと大きい場合には、多段に形成された回折格子部11cに対してレンズ機能を高めるために、回折格子部11c中で一定の位相差を持って段階的に形成された各段部のステップ幅が仮想の円弧状曲線CLに沿って設定されているので、回折格子部11cの各段部のステップ幅が均一に形成されていない。
一方、光学基板11の外周側の輪帯領域RZ内で輪帯ピッチpが例えば10μm,4μm,3.5μm,3.0μmと小さい場合には、多段に形成された回折格子部11cに対して回折効率を高めるために、回折格子部11c中で一定の位相差を持って段階的に形成された各段部のステップ幅が所定の角度傾斜した仮想の傾斜線KLに沿って設定されているので、回折格子部11cの各段部のステップ幅が均一に形成されている。
そして、各輪帯領域RZ内にそれぞれ形成した回折格子部11cの多段形状は、多段部分の傾きは一方向に傾斜し、最も深い部分の側壁は垂直に切り立つ形状となっている。
この回折格子部11cの回折構造は特定次数の回折光を、集光位置に集中的に回折するために作られる。例えば、図7の回折構造は8段1次回折構造の例を示したものであり、階段一段あたりの深さは使用波長の1/8の光学的長さに対応している。階段最深部は7段分の深さで形成されており、深さは使用波長の7/8の光学的長さに対応している。
また、この多段の回折格子部11cから回折される回折光強度は、回折格子部11cの回折構造の位相分布をフーリエ変換することで求められることが一般に知られている。前記した8段1次回折においては、入射光の95.3%が1次回折光に集中し、すなわち回折効率が95.3%となる。
しかしながら、上記した95.3%の回折効率は、光学基板11に対する反射率を考慮していない時、言い換えると、光学基板11の表面で入射光に対して反射が全く生じないと仮定した時の各輪帯領域RZごとの理想値であり、実際には光学基板11の入射面、出射面の両面において空気層と光学基板11との屈折率差によって、反射が生じるために、光学基板11の入射面、出射面での合計の回折効率ロス分が例えば8%程度生じると仮定すると、回折格子部11cの回折効率が95.3%×0.92=87.6%程度まで低下してしまう。
この反射を抑えるために、光学基板の上下の面に反射防止膜を成膜した回折光学素子及びその製造方法がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−4817号公報。
図8は従来の回折光学素子において、光学基板の上下の面に反射防止膜を成膜した状態を示した縦断面図である。
図8に示した従来の回折光学素子20は、上記した特許文献1(特開2001−4817号公報)に開示されているものであり、ここでは特許文献1を参照して簡略に説明する。
図8に示した如く、従来の回折光学素子20では、光学基板21の断面形状が所謂鋸歯状のブレードタイプに形成されており、光学基板21の下面21aに反射防止膜22が成膜されていると共に、光学基板21の上面21b側に形成された8層構造の回折格子部21cは反射防止膜が成膜されない領域と、反射防止膜23が成膜された領域とが存在している。
この際、特許文献1によれば、前記した反射防止膜22,23は、一般的にMgF等の単層フッ化膜、あるいはSiO/Al等からなる多層酸化物膜などが、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの従来技術によって成膜されている。
また、反射防止膜22,23の膜厚は、光学部品の使用波長により異なるが、一般的に単層膜では0.1μm以下、多層膜においては0.1μm以上である。
上記構成により、従来の回折光学素子20では、光学基板21に多段に形成した回折格子部21c上に、入射光の反射率を低減する反射防止膜23を成膜した領域を設けたり、あるいは、反射防止膜を成膜しない領域を設けることにより回折効率を向上させることができる旨が開示されている。
ところで、特許文献1に記載された従来の回折光学素子20によれば、光学基板21の上面21bに形成した多段の回折格子部21c上に反射防止膜23を成膜する場合、本来、光学基板21に対して反射防止膜23により反射が減少し、透過率が増大するはずであるのに、回折効率の減少を防止するために、回折構造の狭いピッチに対応して、異なる種類のより薄い反射防止膜を成膜、あるいはより回折構造の狭いピッチに対しては、反射防止膜を成膜しない、という方法を採用している。
しかしながら、従来の回折光学素子20において、光学基板21に形成した多段の回折格子部21cに対して、反射防止膜の種類を変えて成膜する方法、および、選択的に一部の回折構造に反射防止膜を成膜しない、といった方法は、回折光学素子20の製造プロセスが煩雑であり、回折光学素子20の製造コストを増大するといった問題が生じてしまう。
そこで、多段型回折光学素子の光学基板に多段に形成した回折格子部上に反射防止膜を成膜する際に、簡単な方法により、回折格子部の回折効率の低下がない多段型回折光学素子及び多段型回折光学素子の製造方法が望まれている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明は、複数の段部にそれぞれステップ幅を有して回折格子部が多段に形成され、且つ、前記回折格子部が一つの方向に沿って複数連接された光学基板と、
前記回折格子部上に、入射光に対して反射を防止するために所定の膜厚で成膜された反射防止膜と、
を備えた多段型回折光学素子において、
前記光学基板は、前記反射防止膜を成膜する前に、前記回折格子部中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部のステップ幅が、この段部に隣接する前記左右の段部の各壁面に成膜される前記反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅広く形成される一方、前記左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部のステップ幅が、この段部の左右の各壁面に成膜される前記反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅狭く形成されたことを特徴とする多段型回折光学素子である。
また、請求項2記載の発明は、前記回折格子部の各段部を、一定の位相差を有して所定の角度傾斜した仮想の直線に沿って段階的に形成した時に、前記反射防止膜を成膜した後の各段部の前記ステップ幅を同じ幅に均一化したことを特徴とする請求項1記載の多段型回折光学素子である。
更に、請求項3記載の発明は、複数の段部にそれぞれステップ幅を有して回折格子部を多段に形成し、且つ、前記回折格子部を一つの方向に沿って複数連接して光学基板を形成する工程と、
前記回折格子部上に、入射光に対して反射を防止するために所定の膜厚で反射防止膜を成膜する工程と、
を有する多段型回折光学素子の製造方法において、
前記光学基板は、前記反射防止膜を成膜する前に、前記回折格子部中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部のステップ幅を、この段部に隣接する前記左右の段部の各壁面に成膜される前記反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅広く設定する一方、前記左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部のステップ幅を、この段部の左右の各壁面に成膜される前記反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅狭く設定することを特徴とする多段型回折光学素子の製造方法である。
請求項1記載の多段型回折光学素子によると、多段型回折光学素子の光学基板に多段に形成した回折格子部上に反射防止膜を成膜する際に、光学基板は、反射防止膜を成膜する前に、回折格子部中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部のステップ幅が、この段部に隣接する左右の段部の各壁面に成膜される反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅広く形成される一方、左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部のステップ幅が、この段部の左右の各壁面に成膜される反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅狭く形成されているため、回折格子部に反射防止膜を成膜した後に、回折格子部は最適な回折構造となり、回折効率の低下、設計値からのズレを防止することができる。
また、請求項2記載の多段型回折光学素子によると、回折格子部の各段部を、一定の位相差を有して所定の角度傾斜した仮想の直線に沿って段階的に形成した時に、前記反射防止膜を成膜した後の各段部の前記ステップ幅を同じ幅に均一化したので、請求項1記載と同様に、回折格子部は最適な回折構造となり、回折効率の低下、設計値からのズレを防止することができる。
また、請求項3記載の多段型回折光学素子の製造方法によると、多段型回折光学素子の光学基板に多段に形成した回折格子部上に反射防止膜を成膜する際に、光学基板は、反射防止膜を成膜する前に、回折格子部中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部のステップ幅を、この段部に隣接する左右の段部の各壁面に成膜される反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅広く設定する一方、左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部のステップ幅を、この段部の左右の各壁面に成膜される反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅狭く設定しているので、回折格子部に反射防止膜を成膜した後に、回折格子部は最適な回折構造となり、回折効率の低下、設計値からのズレを防止することができる。
以下に本発明に係る多段型回折光学素子及び多段型回折光学素子の製造方法の一実施例を図1〜図6を参照して、実施例1,実施例2の順に詳細に説明する。
本発明に係る多段型回折光学素子では、光学基板に多段に形成した回折格子部上に反射防止膜を成膜する際、多段の回折格子部の回折構造を反射防止膜の膜厚に合わせて調整して、反射防止膜を成膜した後に回折格子部の各段部のステップ幅を同じ幅に均一化することで、多段の回折格子部が最適な回折構造となり、回折効率の設計値からのズレ(シフト)を防止することを特徴とするものである。
尚、以下の実施例1,2の多段型回折光学素子を例えば多段型フレネルレンズとして適用可能に構成した際、先に図7を用いて従来技術で説明したように、光学基板の中心近傍の輪帯領域内で輪帯ピッチが例えば200μm,100μm,50μmと大きい場合には、多段に形成された回折格子部中で一定の位相差を持って段階的に形成された各段部のステップ幅が仮想の円弧状曲線に沿って設定されているので、回折格子部の各段部のステップ幅が均一に形成されず、この場合には輪帯ピッチに比較して反射防止膜の厚みが相対的に十分小さく、反射防止膜形成によるステップ幅変化起因の回折効率低下が非常に小さく、影響が殆ど無視できる水準であるので、実施例1,2の対象から除外する。
一方、光学基板中の外周側の輪帯領域内で輪帯ピッチが例えば10μm,4μm,3.5μm,3.0μmと小さい場合には、多段に形成された回折格子部中で一定の位相差を持って段階的に形成された各段部のステップ幅が所定の角度傾斜した仮想の傾斜線に沿って設定されているので、回折格子部の各段部のステップ幅が均一に形成されており、この場合には輪帯ピッチに比較して反射防止膜の厚みが相対的に十分大きく、反射防止膜形成によるステップ幅変化起因の回折効率低下が顕著に現れ、多段の回折格子部の回折構造を反射防止膜の膜厚に合わせて調整する必要があるので、以下、この場合について説明する。
尚また、以下の実施例1,2の多段型回折光学素子において、説明の便宜上、先に図7を用いて説明した一般的な多段型回折光学素子と同じ構成部材に対して同一の符号を付して説明する。
図1は本発明の実施例1に係る多段型回折光学素子に対する比較例1の多段型回折光学素子を説明するために光学基板の外周側の一つの輪帯領域内を断面して示した縦断面図であり、(a)は反射防止膜を成膜する前の状態を示し、(b)は反射防止膜を成膜した後の状態を示した図、
図2は本発明の実施例1に係る多段型回折光学素子を説明するために光学基板の外周側の一つの輪帯領域内を断面して示した縦断面図であり、(a)は反射防止膜を成膜する前の状態を示し、(b)は反射防止膜を成膜した後の状態を示した図、
図3(a)〜(o)は本発明の実施例1に係る多段型回折光学素子において、光学基板の製造方法を示した工程図である。
図1(a),(b)に示した実施例1に対する比較例1の多段型回折光学素子10Aと、図2(a),(b)に示した実施例1の多段型回折光学素子10Bは、外観形状が共に、先に図7を用いて説明した一般的な多段型回折光学素子10と同様に、光透過性を有するガラス基板や石英基板などを用いて光学基板11が形成されており、この光学基板11の一方の面となる下面11aは平坦面に形成されているものの、一方の面と対向する他方の面となる上面11b側は複数の輪帯領域RZ(RZ,RZ,RZ,RZ,……,RZ)が中心点0を中心にしてリング状の同心円を描き、且つ、輪帯領域RZ(RZ,RZ,RZ,RZ,……,RZ)の輪帯ピッチp(p,p,p,p,……,p)が中心点0から外周側に向かって徐々に狭めて設定されていると共に、上面11b側の各輪帯領域RZ内に複数の段部を有する回折格子部11c(図1)又は回折格子部11d(図2)が各段部を外周側に向けて多段に形成されているので、この光学基板11を径方向に沿って断面した時に回折格子部11c(図1)又は回折格子部11d(図2)が光学基板11の一つの方向となる径方向に複数連接されていることになる。
また、光学基板11上に多段に形成した回折格子部11cは、ステップ幅をそれぞれ有する複数の段部が一定の位相差(例えばλ/8)を持って段階的に変化するように高さ(深さ)hを違えて形成されている。
ここで、本発明の実施例1に係る多段型回折光学素子10Bを説明する前に、この実施例1に対する比較例1の多段型回折光学素子10Aについて、図1(a),(b)を用いて説明する。
まず、図1(a)に示した如く、実施例1に対する比較例1の多段型回折光学素子10Aにおいて、反射防止膜を成膜する前の状態では、光学基板11の上面11b上で外周側の一つの輪帯領域RZは、輪帯ピッチpに設定されており、この一つの輪帯領域RZ内に一つの回折格子部11cが多段に形成されている。
この際、多段に形成された一つの回折格子部11cは、各段部が一定の位相差を持って所定の角度傾斜した仮想の傾斜線KLに沿って例えば8段の階段状に形成されており、1段目s1〜8段目s8まで各段部のステップ幅wと各段部の高さ(深さ)hとがそれぞれ均一に形成されているので、位相分布が8段の階段状構造となり、1段当たりの高さ(深さ)hは入射光の波長λの位相差、λ/8に対応している。
従って、一つの回折格子部11cは、1段目s1〜8段目s8に向かって、回折構造の位相差が0,λ/8,2λ/8,3λ/8,4λ/8,5λ/8,6λ/8,7λ/8として得られている。
この際、多段に形成された一つの回折格子部11cの1段あたりの高さ(深さ)hは、一般的に下記の(式1)より求めることができる。
Figure 2007256852
ここで、hは多段構造の1段あたりの高さ(深さ)、λは光源の波長、dは回折次数で1以上の整数、nは光学基板の屈折率、vは段数である。
この実施例1において、一つの回折格子部11cは、1次回折構造8段の回折格子を使用しているので、回折次数dを1、段数vを8、光源の波長λを0.40μm、光学基板の屈折率nを1.46とすると、上記した(式1)から1段あたりの高さ(深さ)hは、0.109μmとなる。
また、多段に形成された一つの回折格子部11cの1段あたりのステップ幅wは、一般的に下記の(式2)より求めることができる。
Figure 2007256852
ここで、wは多段構造の1段当たりのステップ幅、vは段数、pは輪帯ピッチである。
例えば、輪帯ピッチpを4.00μmとすると、段数vは8なので1段当たりのステップ幅wは0.50μmとなる。
そして、一つの回折格子部11cの階段形状は、階段が水平、垂直から構成された理想的な形状例であり、この場合の1次回折光の回折効率は、先に従来技術で述べたように、一つの回折格子部11cの回折構造の位相分布をフーリエ変換することで求められ、各輪帯領域RZごとに理想値が同じ値で95.3%である。
ところで、前述したように、上記した95.3%の回折効率は、光学基板11に対する反射率を考慮していない時に各輪帯領域RZごとの理想値であり、実際には光学基板11の入射面、出射面の両面において空気層と光学基板11との屈折率差によって、反射が生じるために、光学基板11の入射面、出射面での合計の透過率ロス分が例えば8%程度生じると仮定すると、一つの回折格子部11cの回折効率が95.3%×0.92=87.6%程度まで低下してしまう。
この反射を抑えるために、先に図8を用いて説明した従来の回折光学素子20と同様に、実施例1に対する比較例1の多段型回折光学素子10Aでも、図1(b)に示したように、光学基板11の下面11aに反射防止膜12を成膜すると共に、光学基板11の上面11bに多段に形成した一つの回折格子部11c上に反射防止膜13を成膜している。
ここで、図1(b)に示した如く、比較例1の多段型回折光学素子10Aにおいて、上記した図1(a)と同じ一つの輪帯領域RZ内で多段に形成した一つの回折格子部11c上に反射防止膜13を成膜した際に、膜厚tの反射防止膜13が階段形状に水平、垂直方向に均一に成膜されている。
この場合、一つの回折格子部11cの垂直方向に関しては、反射防止膜13が成膜されても、各段部の高さ(深さ)はそのまま保たれるために、元の回折構造の位相差0,λ/8,2λ/8,3λ/8,4λ/8,5λ/8,6λ/8,7λ/8が維持される。
しかしながら、一つの回折格子部11cの水平方向に関しては、反射防止膜13が成膜されると、光学基板11上で形成した一つの回折格子部11cの各段部のステップ幅wに対して、反射防止膜13の膜厚tによって最下部となる1段目s1のステップ幅wa1が幅狭くなり、且つ、最上部となる8段目s8のステップ幅wa8が幅広くなるものの、2段目s2〜7段目s7のステップ幅wは変化しない。
上記の状態を言い換えると、隣り合う輪帯領域RZの各回折格子部を含めて一つの回折格子部11c中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部(1段目s1)は、この段部に隣接する左右の段部の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚によってステップ幅(wa1)が狭くなってしまい、一方、左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部(8段目s8)は、この段部の左右の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚によってステップ幅(wa8)が広くなってしまう。
この時に、反射防止膜13を成膜する前の段部の通常のステップ幅をwとして、膜厚tで反射防止膜13を成膜した後の一つの回折格子部11c中で、最下部となる1段目s1のステップ幅wa1は、下記の(式3)より求めることができる。
Figure 2007256852
一方、最上部となる8段目s8のステップ幅wa8は、下記の(式4)より求めることができる。
Figure 2007256852
上記したように、一つの回折格子部11c上に反射防止膜13を成膜すると、1段目s1のステップ幅wa1及び8段目のステップ幅wa8が反射防止膜13を成膜する前のステップ幅wに対して変化する。
この際、入射光の回折現象は、回折構造の最上面である反射防止膜13上で発生するので、ステップ幅の変化により回折構造が変化し、結果として回折効率を劣化させる。
そして輪帯ピッチpが小さくなるほど、先に示した式2より各段部のステップ幅が小さくなり、ステップ幅が小さくなるほど、先に示した式3より最下部となる1段目s1のステップ幅wa1に対する反射防止膜13の膜厚tの割合、及び、先に示した式4より最上部となる8段目s8のステップ幅wa8に対する反射防止膜13の膜厚tの割合、が大きくなる。このために、輪帯ピッチpが小さいほど、一つの回折格子部11cの回折効率の劣化が大きくなる。
ここで、具体的に、比較例1の多段型回折光学素子10Aに対して、一つの回折格子部11c上に反射防止膜13を膜厚t=0.15μmで成膜し、且つ、輪帯ピッチpを変化させた際の1次8段回折構造回折構造の1次光回折効率計算例を下記の表1に示す。
Figure 2007256852
一つの回折格子部11cの回折効率に関しては前述の通り、回折構造の位相分布をフーリエ変換することで求められる。そして、膜厚t=0.15μmで反射防止膜13を成膜した後にこの計算で使用される各段部のステップ幅は、1段目s1をwa1,2段目s2〜7段目s7をw,8段目s8をwa8とし、且つ、階段構造段差の位相差はλ/8とした上で1次光回折効率が計算されている。
上記した表1より、輪帯ピッチpを10.0μm,4.0μm,3.5μm,3.0μmと小さくしていくと、一つの回折格子部11cの回折効率は、各輪帯領域RZ内での理想値となる95.3%に対して95.0%,92.4%,91.6%,90.5%とそれぞれ減少し、輪帯ピッチpが小さいほど、一つの回折格子部11cの回折効率の劣化が大きくなることがわかる。
ここでは、反射防止膜13そのものの透過率に関しては便宜上100%として計算した例であり、実際に反射防止膜13の透過率を考慮した一つの回折格子部11cの回折効率は、回折構造の回折効率と反射防止膜13の透過率とを掛け合わせた数字となる。
次に、本発明の実施例1の多段型回折光学素子10Bについて、図2(a),(b)を用いて説明する。
図2(a),(b)に示した本発明の実施例1の多段型回折光学素子10Bでは、先に説明した比較例1の多段型回折光学素子10Aにおいて、光学基板11の外周側の一つの輪帯領域RZ内に形成した一つの回折格子部11c上に反射防止膜13を成膜した時の回折効率劣化の問題を解決するために、後述する一つの回折格子部11d上に反射防止膜13を成膜した後の各段部のステップ幅が全て同じステップ幅となるように改善を図っている。
尚、実施例1の多段型回折光学素子10Bにおいて、光学基板11に多段の回折格子部11dを形成する方法については後述する。
即ち、図2(a)に示した如く、実施例1の多段型回折光学素子10Bにおいて、反射防止膜を成膜する前の状態では、先に説明した比較例1と同様に、光学基板11の上面11b上で外周側の一つの輪帯領域RZは、輪帯ピッチpに設定されており、この一つの輪帯領域RZ内に一つの回折格子部11dが多段に形成されており、各段部は外周側を向いている。
この際、多段に形成された一つの回折格子部11dは、各段部が一定の位相差を持って所定の角度傾斜した仮想の傾斜線KLに沿って例えば8段の階段状に形成されて、位相分布が8段の階段状構造となり、1段当たりの高さ(深さ)hは入射光の波長λの位相差、λ/8に対応しているものの、先に図1を用いて説明した比較例1における一つの回折格子部11cに対して形状が一部異なっている。
具体的に説明すると、一つの回折格子部11dは反射防止膜を成膜する前の状態であり、最下部となる1段目s1のステップ幅wb1は後述する反射防止膜13の膜厚tを考慮して通常のステップ幅wよりも幅広く形成され、且つ、2段目s2〜7段目s7までのステップ幅は通常のステップ幅wで形成されていると共に、最上部となる8段目s8のステップ幅wb8は後述する反射防止膜13の膜厚tを考慮して通常のステップ幅wよりも幅狭く形成されている。
上記の状態を言い換えると、隣り合う輪帯領域RZの各回折格子部を含めて一つの回折格子部11d中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部(1段目s1)のステップ幅(wb1)を、この段部に隣接する左右の段部の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚相当分だけ通常のステップ幅(w)よりも幅広く設定する一方、左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部(8段目s8)のステップ幅(wb8)を、この段部の左右の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚相当分だけ通常のステップ幅wよりも幅狭く設定している。
この際、一つの回折格子部11d上に成膜される反射防止膜13の膜厚tとし、且つ、通常のステップ幅wとし、更に、反射防止膜13を成膜する時のプロセス係数kとすると、最下部となる1段目s1のステップ幅wb1は、下記の(式5)より求めることができる。
Figure 2007256852
一方、最上部となる8段目s8のステップ幅wb8は、下記の(式6)より求めることができる。
Figure 2007256852
尚、上記した(式5)及び(式6)中に記載した反射防止膜13を成膜する時のプロセス係数kは、0.6から1.0といった値を取り、このプロセス係数kは反射防止膜13の回折構造垂直方向と水平方向の膜厚tの差に起因した値であり、膜厚tの差は、反射防止膜13の成膜方法、光学基板11の各階段の高さ(深さ)hなどによって異なるものである。
この後、図2(b)に示した如く、実施例1の多段型回折光学素子10Bにおいて、光学基板11の下面11aに反射防止膜12を成膜すると共に、光学基板11の上面11bに上記のように多段に形成した一つの回折格子部11d上に反射防止膜13を成膜している。
この際、光学基板11の下面11aに成膜する反射防止膜12及び上面11bに成膜する反射防止膜13は、SiO及びTaの材料を用いて蒸着によって成膜しており、且つ、上面11bに形成した回折格子部11dに対しては膜厚tを例えば0.15μm程度に設定している。
尚、上記では、反射防止膜13をSiO及びTaの材料を蒸着によって成膜しているが、これに限定されるものでもなく、反射防止膜13の材料はTa単体,TiO,ZrO,NbOなどその他の材料が使用可能であり、膜厚及び、成膜方法、も限定されるものではない。
上記により、反射防止膜13を一つの回折格子部11d上に成膜した後の各段部のステップ幅は、光学基板11上で2段目s2〜7段目s7までに形成した通常のステップ幅wと同じになり、各段部のステップ幅が均一化されるので、比較例1よりも回折効率を向上させることができる。
ここで、具体的に、実施例1の多段型回折光学素子10Bに対して、一つの回折格子部11d上に反射防止膜13を膜厚t=0.15μmで成膜し、且つ、輪帯ピッチpを変化させた際の1次8段回折構造回折構造の1次光回折効率計算例を下記の表2に示す。
Figure 2007256852
一つの回折格子部11dの回折効率に関しては前述の通り、回折構造の位相分布をフーリエ変換することで求められる。そして、膜厚t=0.15μmで反射防止膜13を成膜した後にこの計算で使用される各段部のステップ幅は、1段目s1〜8段目s8まで全てwとして計算され、且つ、階段構造段差の位相差はλ/8とし上で1次光回折効率が計算されている。
上記した表2より、輪帯ピッチpを10.0μm,4.0μm,3.5μm,3.0μmと小さくしても、一つの回折格子部11dの回折効率は各輪帯領域RZ内での理想値となる95.3%にそれぞれ近づき、一つの回折格子部11dの回折効率の低下が防止されることがわかる。
この際、反射防止膜13の膜厚tとステップ幅wとの間に、調整できる制限があり、下記の(式7)によってその制限が求まる。
Figure 2007256852
上記した(式7)のように、反射防止膜13を成膜した後の各段部のステップ幅wが反射防止膜13の膜厚tの2倍にプロセス係数kを掛けた値より大きい場合に前記のステップ幅wの調整が可能である。
次に、本発明の実施例1に係る多段型回折光学素子10Bにおいて、光学基板11の製造製方法について、図3(a)〜(o)を用いて説明する。
図3(a)〜(o)に示したように、光学基板11上に8段構造の回折格子部を形成する場合に、図3(a)に示したような2段用のマスクパターンM1を用いて、図3(b)〜(e)に示したようにレジストの塗布・マスクアライメント・露光・現像・エッチング・レジスト除去のプロセスを行って、2段段構造の回折格子部をまず作製する。
この際、図3中で(a)は上記したように2段用のマスクパターンM1であり、(b)は光学基板11に対するレジスト塗布、(c)はマスクパターンマスクM1による露光及び現像後のレジストパターン、(d)はレジスト保護による基板エッチング、(e)はレジスト除去後の基板形状を示している。
この後、図3(f)に示したような4段用のマスクパターンM2を用いて、上記と略同じ工程で図3(g)〜(j)に示したように、再度、レジストの塗布・マスクアライメント・露光・現像・エッチング・レジスト除去のプロセスを行って、4段構造の回折格子部を作製する。
更に、図3(k)に示したような8段用のマスクパターンM3を用いて、上記と略同じ工程で図3(l)〜(o)に示したように、再度、レジストの塗布・マスクアライメント・露光・現像・エッチング・レジスト除去のプロセスを行って、8段構造の回折格子部11dを作製する。
この際、8段用のマスクパターンM3は、8段構造の回折格子部11d上に成膜される反射防止膜13{図2(b)}の膜厚を考慮して、先に図2(a)を用いて説明したように、(式5)から求めた1段目s1のステップ幅wb1、(式2)から求めた2段目s2〜7段目s7のステップ幅w、(式6)から求めた8段目s8のステップ幅wb8がそれぞれ得られるような、マスクパターン部mdが予め形成されている。
そして、図3(o)で光学基板11上に8段構造の回折格子部11dを形成した後に、光学基板11の両面に反射防止膜12,13{図2(b)}を成膜することで、実施例1に係る多段型回折光学素子10Bが完成する。
尚、この実施例1では、8段の段差をエッチングする際、3枚のマスクパターンM1〜M3を使用して、3回の露光、エッチング工程を行っているが、これに限定されるものでなく、例えばマスクを7枚用意して、7回エッチングを行って、8段の段部を得ることもできる。
図4は本発明の実施例2に係る多段型回折光学素子に対する比較例2の多段型回折光学素子を説明するために光学基板の外周側の一つの輪帯領域内を断面して示した縦断面図であり、(a)は反射防止膜を成膜する前の状態を示し、(b)は反射防止膜を成膜した後の状態を示した図、
図5は本発明の実施例2に係る多段型回折光学素子を説明するために光学基板の外周側の一つの輪帯領域内を断面して示した縦断面図であり、(a)は反射防止膜を成膜する前の状態を示し、(b)は反射防止膜を成膜した後の状態を示した図、
図6(a)〜(e)は本発明の実施例2に係る多段型回折光学素子において、光学基板の製造方法を示した工程図である。
図4(a),(b)に示した実施例2に対する比較例2の多段型回折光学素子10Cと、図5(a),(b)に示した実施例2の多段型回折光学素子10Dは、先に説明した実施例1に対する比較例1の多段型回折光学素子10A(図1)と、実施例1の多段型回折光学素子10B(図2)とに対して各回折格子部の形状が一部異なるだけであり、ここでは説明の便宜上、先に示した構成部材に対しては同一の符号を付して必要に応じて適宜説明し、異なる点を中心にして説明する。
ここで、本発明の実施例2に係る多段型回折光学素子10Bを説明する前に、この実施例2に対する比較例2の多段型回折光学素子10Cについて、図4(a),(b)を用いて説明する。
まず、図4(a)に示した如く、比較例2の多段型回折光学素子10Cにおいて、反射防止膜を成膜する前の状態では、光学基板11の下面11aは平坦に形成され、且つ、光学基板11の上面11b上で外周側の一つの輪帯領域RZは、輪帯ピッチpに設定されており、この一つの輪帯領域RZ内に一つの回折格子部11eが多段に形成されて各段が外周側を向いている。
この際、一つの回折格子部11eは、所定の角度傾斜した仮想の傾斜線KLに沿って例えば8段の多段状に形成されており、1段目s1から8段目s8まで各段部のステップ幅wは均一に形成され、且つ、各段部の高さ(深さ)は4段目s4を除いて1段当たりの高さ(深さ)hが入射光の波長λの位相差、λ/8に対応している。
一方、一つの回折格子部11e中で4段目s4の高さ(深さ)が実施例1に対して異なっており、通常の位相差3λ/8を点線で示しているが、それよりも小さいλ/8に設定されている。この目的は、1次回折光の回折効率を小さく調整するためである。
従って、一つの回折格子部11eは、1段目s1〜8段目s8に向かって、回折構造の位相差が0,λ/8,2λ/8,λ/8,4λ/8,5λ/8,6λ/8,7λ/8として得られている。
この際、一つの回折格子部11e中で4段目s4以外は1段当たりの高さ(深さ)hを、先に説明した(式1)を用いて実施例1と同様に求めることができ、回折次数d=1、段数v=8、光源の波長λ=0.40μm、光学基板の屈折率n=1.46とすると、(式1)から1段あたりの高さ(深さ)hは、0.109μmとなる。
また、多段に形成された一つの回折格子部11eの1段あたりのステップ幅wは、先に説明した(式2)を用いて実施例1と同様に求めることができる。この際、一つの輪帯領域RZの輪帯ピッチpを例えば4.0μmとすると、段数vは8段であるので、一つの回折格子部11eの1段あたりのステップ幅wは、(式2)から0.50μmとなる。
そして、一つの輪帯領域RZの輪帯ピッチpを例えば4.0μmとした時に、1次回折光の回折効率を小さく調整するために4段目s4の位相差をλ/8に設定した一つの回折格子部11eの回折効率設計値は、74.2%である。
ところで、上記した74.2%の回折効率設計値は、光学基板11に対する反射率を考慮せずに輪帯ピッチpが例えば4.0μmである時の理想値であり、実際には光学基板11の入射面、出射面の両面において空気層と光学基板11との屈折率差によって、反射が生じるために、光学基板11の入射面、出射面での合計の透過率ロス分が例えば8%程度生じると仮定すると、一つの回折格子部11eの回折効率が74.2%×0.92=68.3%程度まで低下してしまう。
この反射を抑えるために、比較例2の多段型回折光学素子10Cでは、図4(b)に示したように、光学基板11の下面11aに反射防止膜12を成膜すると共に、光学基板11の上面11b上に多段に形成した一つの回折格子部11eに反射防止膜13を成膜している。
ここで、図4(b)に示した如く、比較例2の多段型回折光学素子10Cにおいて、上記した図4(a)と同じ一つの輪帯領域RZ内で多段に形成した一つの回折格子部11eに反射防止膜13を成膜した際に、膜厚tの反射防止膜13が階段形状に水平、垂直方向に均一に成膜されている。
この場合、一つの回折格子部11eの垂直方向に関しては、反射防止膜13が成膜されても、各段部の高さ(深さ)はそのまま保たれるために、元の回折構造の位相差0,λ/8,2λ/8,λ/8,4λ/8,5λ/8,6λ/8,7λ/8が維持される。
しかしながら、一つの回折格子部11eの水平方向に関しては、反射防止膜13が成膜されると、反射防止膜13の膜厚tによって最下部となる1段目s1のステップ幅wa1及び4段目s4のステップ幅wa4が共に幅狭くなり、且つ、3段目s3のステップ幅wa3及び最上部となる8段目s8のステップ幅wa8が共に幅広くなるものの、2段目s2及び5段目s5〜7段目s7のステップ幅wは変化しない。
上記の状態を言い換えると、隣り合う輪帯領域RZの各回折格子部を含めて一つの回折格子部11e中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部(1段目s1及び4段目s4)は、この段部に隣接する左右の段部の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚によってステップ幅(wa1及びwa4)が狭くなってしまい、一方、左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部(3段目s3及び8段目s8)は、この段部の左右の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚によってステップ幅(wa3及びwa8)が広くなってしまう。
この時に、反射防止膜13を成膜する前の段部の通常のステップ幅をwとして、膜厚tで反射防止膜13を成膜した後の一つの回折格子部11e中で、1段目s1のステップ幅wa1及び4段目s4のステップ幅wa4は、先に説明した(式3)より求めることができ、また、3段目s3のステップ幅wa3及び8段目s8のステップ幅wa8は、先に説明した(式4)より求めることができる。
そして、一つの輪帯領域RZの輪帯ピッチpを例えば4.0μmとした時に、膜厚t=0.15μmで反射防止膜13を成膜した後に一つの回折格子部11eの回折効率は、回折効率設計値74.2%に対して2.4%降下してしまい、71.8%となる。
ここでも、反射防止膜13そのものの透過率に関しては便宜上100%として計算した例であり、実際に反射防止膜13の透過率を考慮した多段型回折光学素子の回折効率は、回折構造の回折効率と反射防止膜13の透過率とを掛け合わせた数字となる。
次に、本発明の実施例2の多段型回折光学素子10Dについて、図5(a),(b)を用いて説明する。
図5(a),(b)に示した本発明の実施例2の多段型回折光学素子10Dでは、先に説明した比較例2の多段型回折光学素子10Cにおいて、光学基板11の外周側の一つの輪帯領域RZ内に形成した一つの回折格子部11e上に反射防止膜13を成膜した時の回折効率劣化の問題を解決するために、後述する一つの回折格子部11f上に反射防止膜13を成膜した後の各段部のステップ幅が全て同じステップ幅となるように改善を図っている。
尚、実施例2の多段型回折光学素子10Dにおいて、光学基板11に多段の回折格子部11fを形成する方法については後述する。
即ち、図5(a)に示した如く、実施例2の多段型回折光学素子10Dにおいて、反射防止膜を成膜する前の状態では、光学基板11の上面11b上で外周側の一つの輪帯領域RZは、輪帯ピッチpに設定されており、この一つの輪帯領域RZ内に一つの回折格子部11fが多段に形成されており、各段部は外周側を向いている。
この際、一つの回折格子部11fは、所定の角度傾斜した仮想の傾斜線KLに沿って例えば8段の多段状に形成されている。
具体的に説明すると、一つの回折格子部11f中において、最下部となる1段目s1のステップ幅wb1及び4段目s1のステップ幅wb4は、後述する反射防止膜13の膜厚tを考慮して先に説明した(式5)を用いて通常のステップ幅wよりも幅広く形成され、且つ、3段目s3のステップ幅wb3及び最上部となる8段目s8のステップ幅wb8は後述する反射防止膜13の膜厚tを考慮して先に説明した(式6)を用いて通常のステップ幅wよりも幅狭く形成されていると共に、2段目s2及び5段目s5〜7段目s7のステップ幅は通常のステップ幅wで形成されている。
上記の状態を言い換えると、隣り合う輪帯領域RZの各回折格子部を含めて一つの回折格子部11f中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部(1段目s1及び4段目s4)のステップ幅(wb1及びwb4)を、この段部に隣接する左右の段部の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚相当分だけ通常のステップ幅wよりも幅広く設定する一方、左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部(3段目s3及び8段目s8)のステップ幅(wb3及びwb8)を、この段部の左右の各壁面に成膜される反射防止膜13の各膜厚相当分だけ通常のステップ幅wよりも幅狭く設定している。
この後、図5(b)に示した如く、光学基板11の下面11aに反射防止膜12を成膜すると共に、光学基板11の上面11bに上記のように多段に形成した一つの回折格子部11f上に反射防止膜13を成膜している。
この際、光学基板11の下面11aに成膜する反射防止膜12及び上面11bに成膜する反射防止膜13は、SiO及びTaの材料を用いて蒸着によって成膜しており、且つ、上面11bに形成した回折格子部11fに対しては膜厚tを例えば0.15μm程度に設定している。
上記により、反射防止膜13を一つの回折格子部11fに成膜した後の各段部のステップ幅は、光学基板11上で2段目s2及び5段目s5〜7段目s7に形成した通常のステップ幅wと同じになり、各段部のステップ幅が均一化されるので、比較例2よりも回折効率を向上させることができる。
そして、一つの輪帯領域RZの輪帯ピッチpを例えば4.0μmとした時に、一つの回折格子部11f上に膜厚t=0.15μmで反射防止膜13を成膜した後の回折効率は、上記した回折効率設計値74.2%に近づき、回折効率の低下が防止されることがわかる。
次に、本発明の実施例2に係る多段型回折光学素子10Dにおいて、光学基板11の製造製方法について、図6(a)〜(e)を用いて説明する。
本発明の実施例2に係る多段型回折光学素子10Dにおいて、光学基板11を製造する場合に、先に実施例1で図3(a)〜(o)を用いて8段の回折格子部11dを形成した光学基板11を用い、この光学基板11に対して4段目の段部がλ/8の位相差となるように加工すれば良いものである。
即ち、図6(a)に示したマスクパターンM4は、4段目の段部だけに対してエッチング可能に対応したマスクパターン部mfが予め形成されており、このマスクパターン部mfのパターン幅は下記の4段目s4に対応している。
また、図6(b)は図3(a)〜(o)を用いて8段の回折格子部11dを形成した光学基板11と同様な作製手段を用いており、回折格子部11d中で1段目s1のステップ幅wb1及び4段目s4のステップ幅wb4、2段目s2及び5段目s5〜7段目s7のステップ幅w、3段目s3のステップ幅wb3及び8段目s8のステップ幅wb8がそれぞれ得られており、この回折格子部11dにレジスト塗布したものであり、レジスト塗布基板に対してマスクパターンM4による露光を行い、レジストを現像する。
また、図6(c)は図6(b)に対して現像後に残ったレジスト形状を示す。このレジストをマスクとして、4段目の段部に対してエッチングを行い、図6(d)に示したようにエッチング後の形状を得る。
更に、図6(e)に示したように、レジストを剥離して、回折格子部11fを得る。この回折格子部11fは、先に先に図5(a)を用いて説明したように、(式5)から求めた1段目s1のステップ幅wb1及び4段目s4のステップ幅wb4、(式6)から求めた3段目s3のステップ幅wb3及び8段目s8のステップ幅wb8、(式2)から求めた2段目s2及び5段目s5〜7段目s7のステップ幅wがそれぞれ得られている。
そして、図6(e)で光学基板11上に多段の回折格子部11fを形成した後に、光学基板11の両面に反射防止膜12,13{図5(b)}を成膜することで、実施例2に係る多段型回折光学素子10Dが完成する。
尚、以上説明した実施例1,2において、多段型回折光学素子10B,10Dを、例えば、多段型フレネルレンズとして構成したために、光学基板11の中心部近傍は輪帯ピッチに比較して反射防止膜13の厚みが相対的に十分小さく、反射防止膜形成によるステップ幅変化起因の回折効率低下が非常に小さいのでこの部分を除外した場合について説明したが、これに限ることなく、先に図7を用いて説明した一般的な多段型回折光学素子10Aように、光学基板11の中心部近傍の輪帯領域RZ内で回折格子部11cの各段部のステップ幅が各段部ごとに異なっているものの、光学基板11の中心部近傍の輪帯領域RZ内の各回折格子部11c中では、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部、及び/又は、左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部が存在するので、各段部のステップ幅が各段部ごとに異なっていても前記した実施例1,2の技術的思想を適用しても何等の支障も生じない。
尚また、光学基板11に多段に形成した回折格子部の各段部の向きは外周側又は内周側のどちらでもかまわないものである。
本発明の実施例1に係る多段型回折光学素子に対する比較例1の多段型回折光学素子を説明するために光学基板の外周側の一つの輪帯領域内を断面して示した縦断面図であり、(a)は反射防止膜を成膜する前の状態を示し、(b)は反射防止膜を成膜した後の状態を示した図である。 本発明の実施例1に係る多段型回折光学素子を説明するために光学基板の外周側の一つの輪帯領域内を断面して示した縦断面図であり、(a)は反射防止膜を成膜する前の状態を示し、(b)は反射防止膜を成膜した後の状態を示した図である。 (a)〜(o)は本発明の実施例1に係る多段型回折光学素子において、光学基板の製造方法を示した工程図である。 本発明の実施例2に係る多段型回折光学素子に対する比較例2の多段型回折光学素子を説明するために光学基板の外周側の一つの輪帯領域内を断面して示した縦断面図であり、(a)は反射防止膜を成膜する前の状態を示し、(b)は反射防止膜を成膜した後の状態を示した図である。 本発明の実施例2に係る多段型回折光学素子を説明するために光学基板の外周側の一つの輪帯領域内を断面して示した縦断面図であり、(a)は反射防止膜を成膜する前の状態を示し、(b)は反射防止膜を成膜した後の状態を示した図である。 (a)〜(e)は本発明の実施例2に係る多段型回折光学素子において、光学基板の製造方法を示した工程図である。 (a),(b)は一般的な多段型回折光学素子を示した平面図,縦断面図である。 従来の回折光学素子において、光学基板の上下の面に反射防止膜を成膜した状態を示した縦断面図である。
符号の説明
10A…実施例1の多段型回折光学素子に対する比較例1の多段型回折光学素子、
10B…実施例1の多段型回折光学素子、
10C…実施例2の多段型回折光学素子に対する比較例2の多段型回折光学素子、
10D…実施例2の多段型回折光学素子、
11…光学基板、11a…下面、11b…上面、
11c…回折格子部(比較例1)、11d…回折格子部(実施例1)、
11e…回折格子部(比較例2)、11f…回折格子部(実施例2)、
12…反射防止膜、13…反射防止膜、
KL…仮想の傾斜線、RZ…輪帯領域、p…輪帯ピッチ、t…反射防止膜の膜厚。

Claims (3)

  1. 複数の段部にそれぞれステップ幅を有して回折格子部が多段に形成され、且つ、前記回折格子部が一つの方向に沿って複数連接された光学基板と、
    前記回折格子部上に、入射光に対して反射を防止するために所定の膜厚で成膜された反射防止膜と、
    を備えた多段型回折光学素子において、
    前記光学基板は、前記反射防止膜を成膜する前に、前記回折格子部中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部のステップ幅が、この段部に隣接する前記左右の段部の各壁面に成膜される前記反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅広く形成される一方、前記左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部のステップ幅が、この段部の左右の各壁面に成膜される前記反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅狭く形成されたことを特徴とする多段型回折光学素子。
  2. 前記回折格子部の各段部を、一定の位相差を有して所定の角度傾斜した仮想の直線に沿って段階的に形成した時に、前記反射防止膜を成膜した後の各段部の前記ステップ幅を同じ幅に均一化したことを特徴とする請求項1記載の多段型回折光学素子。
  3. 複数の段部にそれぞれステップ幅を有して回折格子部を多段に形成し、且つ、前記回折格子部を一つの方向に沿って複数連接して光学基板を形成する工程と、
    前記回折格子部上に、入射光に対して反射を防止するために所定の膜厚で反射防止膜を成膜する工程と、
    を有する多段型回折光学素子の製造方法において、
    前記光学基板は、前記反射防止膜を成膜する前に、前記回折格子部中で、左右に隣接する段部よりも凹状に凹んだ段部のステップ幅を、この段部に隣接する前記左右の段部の各壁面に成膜される前記反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅広く設定する一方、前記左右に隣接する段部よりも凸状に突出した段部のステップ幅を、この段部の左右の各壁面に成膜される前記反射防止膜の各膜厚相当分だけ幅狭く設定することを特徴とする多段型回折光学素子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10989953B2 (en) * 2017-01-13 2021-04-27 Boe Technology Group Co., Ltd. Display panel, manufacturing method thereof, and display device

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