JP2007197813A - 曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.30%、Ti:0.1〜1.2%を含有し、かつ、固溶C量が0.03%以下である組成とする。また、マトリクスをフェライト相とし、マトリクス中に硬質相が分散した組織とする。なおさらに、Nb、Vの1種または2種、Mo、Wの1種または2種、Si、Mn、Cuの1種または2種以上、Ni、Bの1種または2種、Crを含有してもよい。これにより、硬さの顕著な上昇を伴うことなく、特に、土砂などによる摩耗に対する耐摩耗性と曲げ加工性とをともに飛躍的に向上することができる。
【選択図】図1
Description
例えば、特許文献1には、C:0.10〜0.19%を含み、Si、Mnを適正量含有し、Ceqを0.35〜0.44に限定した鋼を、熱間圧延後直接焼入れし、あるいは900〜950℃に再加熱したのち焼入れし、300〜500℃で焼戻し、鋼板表面硬さを300HV以上とする耐摩耗用鋼板の製造方法が提案されている。
また、特許文献3には、C:0.07〜0.17%を含み、Si、Mn、V、B、Alを適正量含有し、あるいはさらにCu、Ni、Cr、Moのうちの1種以上を含有した鋼に、熱間圧延後直ちに焼入れ、あるいは一旦空冷した後に、再加熱して焼入れし、表面硬さを321HB以上で、曲げ加工性に優れた鋼板とする耐摩耗性鋼板の製造方法が提案されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献4には、C:0.10〜0.45%を含み、Si、Mn、P、S、Nを適正量に調整し、さらにTi:0.10〜1.0%含有し、0.5μm以上の大きさのTiC析出物あるいはTiCとTiN,TiSとの複合析出物を400個/mm2以上を含み、Ti*が0.05%以上0.4%未満とする表面性状に優れた耐摩耗鋼が提案されている。特許文献4に記載された技術によれば、凝固時に粗大なTiCを主体とする析出物を生成させ、過度に高硬度化させることなく安価に耐摩耗性を向上させることができるとしている。
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであって、耐摩耗性を向上させ、かつ、曲げ加工性を飛躍的に向上させることが可能な、曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼板を提供することを目的とする。
(1)質量%で、C:0.05〜0.30%、Ti:0.1〜1.2%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、固溶C量が0.03%以下である組成を有することを特徴とする曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼板。
(3)(2)において、前記硬質相の分散密度が、400個/mm2以上であることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜1.0%、V:0.005〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cu:0.1〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(8)(1)ないし(7)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.1〜1.0%を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板。
C:0.05〜0.30%、
Cは、硬質な第二相(以下、硬質相ともいう)としての炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させるために、有効な元素であり、このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.30%を超える含有は、硬質相としての炭化物が粗大になり、曲げ加工時に炭化物を起点として割れが発生する。このため、Cは0.05〜0.30%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.05〜0.20%である。
固溶C量は、本発明では0.03%以下に規定する。これにより、硬さが低下し、基地(マトリクス)が軟質のフェライト主体の組織となり、さらに基地相中に硬質な第二相(硬質相:Ti炭化物)が多量分散した組織となる。これにより、図1、図2に示すように、硬さは低下するが、耐摩耗性が飛躍的に向上する。これは、硬質な第二相を分散させることによる耐摩耗性向上効果と、基地相(マトリクス)を軟質のフェライトにすることによる塑性変形能向上による耐摩耗性向上効果とが、相乗した結果であると考えられる。なお、固溶C量は、鋼板から採取した試験片について、電解抽出法により炭化物を抽出して炭化物となっているC量を測定し、totalC量から炭化物となっているC量を差し引き、算出するものとする。
Tiは、Cとともに本発明における重要な元素であり、耐摩耗性向上に寄与する硬質な第二相(Ti炭化物)を形成する必須の元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.2%を超える含有は、硬質な第二相(Ti炭化物)が粗大化し、曲げ加工時に粗大な第二相を起点として割れが発生する。このため、Tiは0.1〜1.2%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.1〜0.5%である。
Nb、Vは、いずれも硬質な第二相を形成し、耐摩耗性向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Nbは、Tiと複合して添加することにより、Ti、Nbの複合炭化物((NbTi)C)を形成し、硬質な第二相として分散し、耐摩耗性向上に有効に寄与する元素である。このような耐摩耗性向上効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、硬質な第二相(炭化物)が粗大化し、曲げ加工時に硬質な第二相(炭化物)を起点として割れが発生する。このため、Nbは0.005〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.5%である。
Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種
Mo、Wはいずれも、Ti炭化物(TiC)に固溶し、耐摩耗性向上に寄与する硬質な第二相の量を増加させる効果を有する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Si、Mn、Cuはいずれも、鋼の高硬度化に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Siは、脱酸元素として有効な元素であり、このような効果を得るためには0.05%以上の含有を必要とする。また、Siは、鋼に固溶して固溶強化により高硬度化に寄与する有効な元素であるが、1.0%を超える含有は、延性、靭性を低下させ、さらに介在物量が増加する等の問題を生じる。このため、Siは0.05〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.40%である。また、不可避的不純物である場合には、Siは、0.05%未満である。
Cuは、時効析出硬化を介して高硬度化に寄与する有効な元素であり、この効果を得るためには0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、Cuは0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.5%である。
Ni、Bはいずれも、靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Niは、靭性を向上させる元素であり、このような効果は0.1%以上の含有で顕著となる。一方、2.0%を超える含有は、材料コストを著しく上昇させる。このため、Niは0.1〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜1.0%である。
Cr:0.1〜1.0%
Crは、フェライトに固溶し、フェライトを軟化させる作用を有し、塑性変形能を向上させ、耐摩耗性をさらに向上させる。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とするが、1.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Crは0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.40%である。
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nと結合して結晶粒微細化に寄与する元素であり、必要に応じ含有できる。このような効果は、0.0020%以上の含有で認められるが、0.1%を超える多量の含有は、鋼の清浄度を低下させる。このため、Alは0.1%以下に限定することが好ましい。とくに含有しない場合は、Alは不可避的不純物として、0.0020%未満が許容できる。
つぎに、本発明の耐摩耗鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明の耐摩耗鋼板は、上記した組成の溶鋼を、公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法により、所望寸法のスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、硬質相を、所望の大きさおよび個数に調整するためには、例えば、連続鋳造法を用いた場合、厚み200〜400mmの鋳片の1500〜1200℃温度域における冷却速度0.2〜10℃/sの範囲となるように冷却を調整することが好ましい。なお、造塊法を用いる場合にも、インゴットの大きさおよび冷却条件を、硬質相を所望の大きさおよび個数になるように、調整する必要があることはいうまでもない。
(1)組織観察
得られた鋼板から組織観察用試験片を採取し、研磨し、ナイタール腐食して、表層下1mmの位置について、光学顕微鏡(倍率:400倍)を用いて、組織の種類および硬質相の大きさ、個数を測定した。なお、硬質相の大きさは、各硬質相の面積を測定し、同面積から円相当直径を算出し、得られた円相当直径を算術平均し、得られた平均値をその鋼板における硬質相の大きさ(平均粒径)とした。
得られた鋼板について、JIS Z 2243の規定に準拠して、ブリネル硬さ試験機(試験力:29.42kN)を用いて、鋼板表面の硬さHB10/3000を測定した。なお、測定位置は、ランダムに選んだ5点とし、5点の平均値を求め、その鋼板の表面硬さとした。
(3)曲げ試験
得られた鋼板から試験片を採取し、JIS Z 2248の規定に準拠して曲げ試験を実施した。なお、曲げ半径は2.0tおよび1.0tの2水準とした。試験終了後、試験片表面を目視で観察し、割れ発生のない場合を○、割れが発生した場合を×として曲げ加工性を評価した。
得られた鋼板から試験片(大きさ:t×20×75mm)を採取し、ASTM G 65の規定に準拠して、ラバーホイール摩耗試験を実施した。なお、摩耗砂を使用した。試験後、試験片の摩耗量を測定した。なお、軟鋼(SS400)板についても同様に試験した。各鋼板の耐摩耗性は、軟鋼(SS400)板の摩耗量を基準(1.0)として、耐摩耗比=(軟鋼板の摩耗量)/(各鋼板の摩耗量)、で評価した。耐摩耗比が大きいほど,耐摩耗性に優れていることを意味する。ここでは、耐摩耗比が5.0以上を耐摩耗性に優れているとしている。
Claims (9)
- 質量%で、C:0.05〜0.30%、Ti:0.1〜1.2%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、固溶C量が0.03%以下である組成を有することを特徴とする曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼板。
- フェライト相を基地相とし、該基地相中に硬質相が分散した組織を有することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗鋼板。
- 前記硬質相の分散密度が、400個/mm2以上であることを特徴とする請求項2に記載の耐摩耗鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜1.0%、V:0.005〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cu:0.1〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.1〜2.0%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.1〜1.0%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
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