JP2007196211A - 光学製品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】密着性および耐久性のより高い防汚層を有するプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】光学基材の表面に、少なくともハードコート層を挟んで形成された有機系の反射防止層の上に防汚層を形成するための組成物を塗布する防汚層塗布工程と、相対湿度40%〜95%の環境で温度80℃〜150℃に加熱するアニール工程とを有する、光学製品の製造方法を提供する。また、アニール工程の前に、相対湿度20%以下の環境で、温度80℃〜150℃に加熱するプレアニール工程を設けることが望ましい。反射防止層にクラックを生じさせることなく、高温で防汚層をアニールでき、耐久性の高い防汚層を備えたプラスチックレンズを製造できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、眼鏡レンズに用いられるプラスチックレンズなどの光学製品の製造方法に関するものである。
眼鏡レンズなどに用いられる光学製品は、反射を抑制するための反射防止層と、その表面に形成された防汚層とを備えている。防汚層は、ユーザが眼鏡レンズなどを使用する際に、手垢、指紋、汗、化粧品等が光学製品の表面に付着し難くしたり、汚れを取り易くするためのものである。
特許文献1には、十分な汚染防止作用を有し、耐候性を持った基材の表面処理組成物として、特定の式で表される含フッ素シラン化合物と、含フッ素有機化合物から成る溶剤と、含フッ素有機化合物から成る溶剤と相溶性を備え、含フッ素有機化合物から成る溶剤を除く有機化合物から成る溶剤とを含む表面処理組成物が開示されている。
特許文献2には、防汚剤として、手垢、指紋等の汚染物質が付着し難く、汚染物質が付着しても容易にふき取り除去することができ、しかも表面のすべり性が良好で傷つき難く、かつ、耐久性の良いレンズを提供できるものが開示されている。この防汚剤は、特定の式で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物を含んでいる。
特許文献3には、無機系の反射防止層を有する眼鏡用プラスチックレンズにプラズマ処理を施して、含フッ素シラン化合物を希釈してディッピングにより防汚層を形成することが開示されている。さらに、防汚層を備えたプラスチックレンズを、その後、60℃、相対湿度90%または60%の恒温恒湿槽に投入した例と、恒温恒湿槽に入れずに放置した例が示されているが、有意な差は観測されていない。
特開平9−263728号公報 特開2004−145283号公報 特開2005−115278号公報
眼鏡レンズの防汚層を形成するための組成物としても、上記のように、撥水性を備えたフッ素系の組成物を用いることができる。そして、加湿条件下でアニールすることにより、布による拭き耐久試験後の接触角の低下が少なく、試験後のインクの拭き取り性や外観も確保でき、また、耐久性の高い防汚層を形成できる。プラスチック製の眼鏡レンズにおいては、さらに拭き耐久性が良く、また、耐久性がさらに高い防汚層を備えたレンズが要望されている。
本発明の一形態は、少なくともハードコート層を有する光学基材上に形成された有機系の反射防止層と、前記反射防止層の表面に形成された防汚層とを有する光学製品の製造方法であり、有機系の反射防止層の表面に防汚層を形成するための組成物を塗布する防汚層塗布工程と、防汚層塗布工程の後、防汚層を形成するための組成物が塗布された光学基材を相対湿度40%〜95%の環境で温度80℃〜150℃で10分〜2時間加熱する第1のアニール工程とを有する。
含フッ素シラン系の化合物を含む組成物などにより形成された防汚層は、撥水性がある。このため、防汚層を形成するための組成物は、第1のアニール段階で加水分解させ、下層に存在する有機系の反射防止層の表面と反応させ、または防汚層自体の化合物同士の反応を十分に進行させることが好ましく、このようにすることで、層同士の密着性および耐久性が向上すると考えられる。したがって、第1のアニール段階では、十分な温度と、十分な水分とを供給することが望ましい。しかしながら、防汚層の下地層となる反射防止層は、通常、無機の多層で構成され、耐熱性がそれほど高くなく、高温、例えば80℃以上に加熱されると比較的容易にクラックが発生する。
これに対し、有機ケイ素化合物を含む組成物などにより形成された反射防止層は、耐熱性が高く、高温、例えば80℃以上であってもクラックは発生し難い。したがって、有機系の反射防止層に重ねて、防汚層の組成物を塗布することにより、その後のアニール温度(第1のアニール工程および後述する第2のアニール工程における温度)を80℃以上まで上げることができる。このため、第1のアニール工程においては、加水分解や、脱水縮合などの縮合を進行させることが可能となり、さらに耐久性の高い防汚層を形成できる。
第1のアニール工程における温度を上昇させることにより、相対湿度が一定でも蒸気圧が高くなるので、大量の水分のある環境で、第1のアニールを行うことができる。このため、さらに、加水分解、縮合を進行させることができる。あるいは、絶対湿度が同一であれば、温度の上昇と共に蒸気圧が高くなるので、防汚層の表面における結露の発生を未然に防止することができる。防汚層の表面に結露が発生すると、加水分解の進行にもばらつきが発生する。この場合、防汚層の状況あるいは強度が位置によって変動し、拭き耐久性および耐久性が低下する。この点でも、防汚層を有機系の反射防止層と組み合わせて、さらに、第1のアニール工程における温度を高くすることにより、いっそう耐久性の高い防汚層を形成でき、汚れ難く、汚れが取りやすく、また、その効果が長持ちする光学製品を製造できる。
第1のアニール工程における温度は、撥水剤の加水分解、縮合を促進させるために高い方が良い。しかしながら、第1のアニール工程における温度が150℃を超えると塗膜にクラックが入り、光学基材が黄変し易くなる。第1のアニール工程では、光学基材(防汚層を形成するための組成物が塗布された光学基材)を温度80℃〜120℃で加熱することがさらに望ましい。長時間の第1のアニールにより、ハードコート層や反射防止層などの塗膜にクラックが発生するのを抑制するには、アニール温度を120℃以下に収めることが望ましい。また、作業上、危険を回避する点からは、アニール温度はできる限り低温で行うことが望ましい。
さらに、第1のアニール工程における加熱時間は、10分〜2時間が好ましい。加熱時間は、選択された加熱温度により選択される。具体的には、撥水剤の加水分解、縮合を促進させるためにアニール時間は長い方が良い。しかしながら、第1のアニール時間が2時間を超えると、塗膜にクラックが入り、光学基材(レンズ基材)が黄変し易くなる。したがって、150℃のような比較的高温で第1のアニール処理をする場合には、10分程度の短時間でのアニールが好ましく、80℃のような比較的低温で第1のアニール処理をする場合には、2時間程度でのアニールが好ましい。
第1のアニール工程における結露を防止するためには、第1のアニール工程の前に、相対湿度20%以下の環境で、防汚層を形成するための組成物が塗布された光学基材を温度80℃〜150℃で加熱するプレアニール工程を設けることが望ましい。光学基材(例えば、レンズ)をプレアニールせずに、高温多湿な環境へ移動すると、光学基材表面(防汚層を形成するための組成物が塗布された光学基材の表面)が露点以下となることで結露が生じる。また、プレアニール工程において、防汚層を形成するための組成物に有機溶剤が
含まれる場合、この有機溶剤を蒸散させることができる。第1のアニール工程において、それらの有機溶剤(溶媒)が蒸発すると、気化熱で光学基材(基盤)が冷却され、結露が発生しやすくなり、加水分解の進行にばらつきが生ずるおそれがあるが、プレアニール工程を設けることにより、結露の発生を防止できる。溶剤を揮発させるためには、プレアニール工程の温度は、高温で処理することが好ましい。また、プレアニール工程の温度は、第1のアニール工程の温度に近い方が好ましい。プレアニール工程の設定温度は、第1のアニール工程の設定温度より若干高いことがさらに好ましい。
プレアニール工程では、相対湿度20%以下の環境で、温度80℃〜120℃で防汚層を形成するための組成物が塗布された光学基材を加熱することがさらに望ましい。長時間のプレアニールにより、ハードコート層や反射防止層などの塗膜にクラックが発生するのを抑制するには、アニール温度を120℃以下に収めることが望ましい。
第1のアニール工程の後に、第1のアニール工程においてアニール処理が施された光学基材を、第1のアニール工程よりも相対湿度が低く、相対湿度5%〜30%の環境で、温度90℃〜120℃で20分〜2時間加熱する第2のアニール工程を設けることが望ましい。拭き耐久性が向上する場合があることが本願の発明者らの実験により判明した。
第2のアニール工程における温度が90℃未満であると、耐擦傷性効果の向上は得られにくく、拭き耐久性の向上は期待しにくい。第2のアニール工程における温度が120℃を超えると、光学基材が黄変し易くなる。したがって、第2のアニール工程では、光学基材(第1のアニール工程においてアニール処理が施された光学基材)を温度90℃〜120℃で加熱することが望ましい。
防汚層を形成するための組成物の一例は、下記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物と、含フッ素有機化合物から成る溶剤とを含むものである。また、防汚層を形成するための組成物は、下記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物と、含フッ素有機化合物から成る溶剤と、含フッ素有機化合物から成る溶剤と相溶性を備え、含フッ素有機化合物から成る溶剤を除く有機化合物から成る溶剤とを含むものであってもよい。
Figure 2007196211
ただし、上記一般式(A)中のRfは、パーフルオロアルキル基を表す。Zは、フッ素またはトリフルオロメチル基を表す。a、b、c、d、eは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表し、a+b+c+d+eは、少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。Yは、水
素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは、水素、臭素またはヨウ素を表す。Rは、水酸基または加水分解可能な置換基を表す。Rは、水素または1価の炭化水素基を表す。uは、0、1または2を表す。vは1、2または3を表す。wは、1以上の整数を表す。
上記一般式(A)で表される式中のRfとしては、通常、有機含フッ素ポリマーを構成するパーフルオロアルキル基であれば、特に限定されず、例えば、炭素数1〜16の直鎖状または分岐状のものを挙げることができる。好ましくは、CF3−、C25−、C37−である。
上記一般式(A)中のa、b、c、d、eは、含フッ素シラン化合物の主骨格を構成するパーフルオロポリエーテル鎖の繰り返し単位数を表し、0または1以上の整数であり、a+b+c+d+eが1以上であれば特に限定されないが、それぞれ独立して、0〜200が好ましい。さらに、含フッ素シラン化合物の分子量を考慮すれば、より好ましくは、それぞれ独立して、0〜50である。a+b+c+d+eは、好ましくは、1〜100である。
また、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、一般式(A)中においてはこの順に記載したが、通常のパーフルオロポリエーテル鎖の構成によって、これらの各繰り返し単位の結合順序は、この順に限定されるものではない。
上記一般式(A)中のYは、上記炭素数1〜4のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができ、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Xが臭素またはヨウ素である場合には、上記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物は、ラジカル反応性が高くなるので、化学結合により他の化合物と結合させるのには好都合である。
上記一般式(A)中のuは、パーフルオロポリエーテル鎖を構成する炭素とこれに結合するケイ素との間に存在するアルキレン基の炭素数を表し、0、1または2であるが、より好ましくは、0である。
上記一般式(A)中のvは、ケイ素に結合する置換基Rの結合数を表し、1、2または3である。置換基R1 が結合していない部分には、当該ケイ素にはR2が結合する。
上記R1が加水分解可能な置換基である場合、加水分解可能な置換基としては特に限定
されず、好ましいものとしては、例えば、ハロゲン、−OR11、−OCOR11、−OC(R11)=C(R122、−ON=C(R112、−ON=CR13等を挙げることができる。ただし、R11は、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、R12は、水素または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R13は、炭素数3〜6の2価の脂肪族炭化水素基を表す。より好ましくは、塩素、−OCH3 、−OC2 5 である。
上記R2は、水素または1価の炭化水素基を表す。上記1価の炭化水素基としては特に
限定されず、好ましいものとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。上記1価の炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
上記一般式(A)中のwは、1以上の整数を表し、特に上限はないが、1〜10の整数であることが好ましい。上記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物の分子量は、5×102 〜1×105 が好ましい。5×102 未満では、防汚性能に関する効果を発揮
し難く、1×105 を超えると加工性に乏しくなる。より好ましくは、1×103 〜1×104 である。
さらに、含フッ素有機化合物から成る溶剤としては特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3―ジメチルシクロヘキサン、HCFC225(CF3 CF2 CHCl2 とCClF2 CF2 CHClFとの混合物)等。
また、含フッ素有機化合物から成る溶剤と相溶性を有する有機溶剤は、含フッ素有機化合物から成る溶剤と互いに相溶性があることが必要である。これらの間に相溶性がない場合、混合後に放置した際に相分離を起こす恐れがあるためである。
さらに、含フッ素有機化合物から成る溶剤と相溶性を有する有機溶剤は、特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、フッ素を除くハロゲン化炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類以外の炭化水素類等。また、アルコール類としては特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。炭素数1〜8の一価のアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等。なかでも、入手容易で含フッ素シラン化合物を溶解するのに好適であることから、炭素数1〜4の一価のアルコールが好ましく、より好ましくは、イソプロパノールである。また、ケトン類としては、特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等。エーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等を挙げることができる。エステル類としては、特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができる。フッ素を除くハロゲン化炭化水素類としては、特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエレン、ブロモベンゼン等。
ハロゲン化炭化水素類以外の炭化水素類等としては、特に限定されず、例えば、以下のようなものが挙げられる。ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等。
防汚層を形成する組成物の他の例は、下記一般式(B)で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物と、フッ素有機化合物から成る溶剤とを含んでいるものである。
Figure 2007196211
ただし、上記の一般式(B)中のRfは、式:−(C2k)O−(式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基であり、Rは独立に炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは独立に加水分解性基またはハロゲンであり、sは独立に0〜2の整数であり、tは独立に1〜5の整数であり、hおよびiは独立に2または3である。
ここで、Rf基は、上記のとおり、式:−(C2kO)−(式中、kは1〜6、好ましくは1〜4の整数である)で表わされる単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造からなる2価の基である。なお、一般式(B)中のsが各々0である場合、一般式(B)中の酸素原子に結合するRf基の末端は、酸素原
子ではない。
このRf基としては、例えば、下記一般式で示されるものが挙げられる。ただし、Rf基は、下記例示に限定されるものではない。
−CFCFO(CFCFCFO)CFCF−(式中、jは1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数である。)
−CF(OCp´−(OCFq´−(式中、p´およびq´は、それぞれ、1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数であり、かつp´+q´の和は、10〜100、好ましくは20〜90、より好ましくは40〜80の整数であり、この式中の繰り返し単位の(OC)、および(OCF)の配列はランダムである。)
上記の一般式(B)中のXが加水分解性基である場合としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基またはアリロキシ基、イソプロペノキシ等のアルケニルオキシ基またはアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基またはジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンノキシム基、シクロヘキサノキシム基等のケトオキシム基またはN−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基またはN−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基またはN,N−ジメチルアミノオキシ基、N,N−ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基。
また、Xがハロゲン原子である場合としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等。これらの中でも、Xとしては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基および塩素原子が好適である。
上記の一般式(B)中のRは、炭素原子数1〜8、好ましくは1〜3の一価の炭化水素基であり、例えば、以下のようなものが挙げられる。メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基またはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基またはフェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基またはベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基またはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基。これらの中でもメチル基が好適である。
上記の一般式(B)中のsは0〜2の整数であり、好ましくは1である。また、tは1〜5の整数であり、3であることが好ましい。hおよびiは各々2または3であり、加水分解及び縮合反応性および被膜の密着性の観点から、3であることが好ましい。また、上記のパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの分子量は、特に制限されないが、安定性、取扱い易さ等の点から、数平均分子量で500〜20000、好ましくは1000〜10000のものが適当である。
防汚層を形成するための組成物に含めることが可能な溶剤としては、含フッ素有機化合物から成る溶剤で、例えば、以下のようなものが挙げられる。パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン等のフッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤で、1,3−ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤でメチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のフッ素変性エーテル系溶剤でパーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチ
ルアミン等のフッ素変性アルキルアミン系溶剤で石油ベンジン。含フッ素有機化合物からなる溶剤は、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのなかでも、変性シランの溶解性、塗布対象面の濡れ性等の点で、フッ素変性された溶剤が好ましく、特に、1,3−ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、あるいはパーフルオロトリブチルアミンが好ましい。
また、防汚層を形成するための組成物(塗布剤)には、必要に応じて、加水分解性の官能基またはハロゲン原子の加水分解反応を促進するため、触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫等の有機錫化合物、テトラn−ブチルチタネート等のチタン含有有機化合物、酢酸、メタンスルホン酸等の有機酸、硫酸等の無機酸。触媒は、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中でも、特に、酢酸、テトラn−ブチルチタネート、あるいはジラウリン酸ジブチル錫が好ましい。触媒を添加する場合、その添加量は特に制限されず、触媒としての有効量であればよいが、通常、変性シラン100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部の範囲とされる。
有機系の反射防止層の一例は、(C)成分と、(D)成分とを含有する組成物から形成されるものである。
(C)一般式:R SiX 4−q−pで表される有機ケイ素化合物
(式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、Xは加水分解性基であり、pおよびqは、少なくとも一方は1であり、他方は0または1である。)
(D)シリカ系微粒子
この有機系の反射防止層の(C)成分(以降ではC成分)の有機ケイ素化合物のRは、重合可能な反応基を有する有機基であり、例えば、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、アミノ基等が挙げられる。C成分の有機ケイ素化合物のRは、炭素数1〜6の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。C成分の有機ケイ素化合物のXは、加水分解可能な官能基であり、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
C成分の有機ケイ素化合物の具体的な例は、例えば以下のようなものである。テトラメトキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトシキ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン。
この有機系の反射防止層の(D)成分(以降ではD成分)のシリカ系微粒子の具体的な例は、平均粒径1nm〜100nmの微粒子のシリカを、たとえば水、アルコール系溶剤、もしくはその他の有機溶剤にコロイド状に分散させたシリカゾルである。
このシリカ系微粒子は、内部空洞(隙間)を有するものが望ましい。内部空洞を有する
シリカ系微粒子を用いることによって、反射防止層の屈折率を低下させることができ、ハードコート層との屈折率の差を大きくして、反射防止効果を高めることができる。シリカ系微粒子の内部空洞内にシリカよりも屈折率が低い気体または溶剤が包含されることによって、空洞のないシリカ系微粒子よりも屈折率が低減し、被膜の低屈折率化が達成される。
なお、反射防止層を形成するための組成物は、C成分およびD成分の他に、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の各種樹脂や、これらの樹脂原料となるメタアクリレート類、アクリレート類、エポキシ類、ビニル類等の各種モノマーを含んでいても良い。屈折率を低減する機能を有するものとしては、フッ素含有の各種ポリマー、またはフッ素含有の各種モノマーが挙げられる。したがって、反射防止層を形成するための組成物は、フッ素含有の各種ポリマー、またはフッ素含有の各種モノマーを含んでいてもよい。フッ素含有ポリマーは、フッ素含有ビニルモノマーを重合して得られるポリマーが好ましく、さらに他の成分と共重合可能な官能基を有することが好ましい。
反射防止層を形成するための組成物は、溶剤を含んでいてもよい。すなわち、反射防止層を形成するための組成物は、塗布液とするために、必要に応じ、溶剤に希釈して用いることができる。溶剤としては、例えば、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が挙げられる。さらに、反射防止層を形成するための組成物は、必要に応じて、少量の硬化触媒、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ヒンダートアミン・ヒンダートフェノール等の光安定剤、分散染料・油溶染料・蛍光染料・顔料等を添加し、コーティング液としての塗布性の向上や、硬化後の被膜性能を改良することもできる。
以下では、眼鏡用のプラスチックレンズを製造する工程を示す。
(実施例1)
実施例1では、光学基材としてのレンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。
(プライマー層を形成する工程)
プライマー層を塗布により形成するためのコーティング液P1を調製した。まず、メタノール626.2gと、市販の水性エマルジョンポリウレタン(日華化学(株)製、商品名「ネオステッカー700」、固形分濃度37重量%)221.8gとを混合した。その後、メタノール分散二酸化チタン−五酸化アンチモン−二酸化ケイ素複合微粒子ゾル(触媒化成工業(株)製、固形分濃度20重量%)309.6gと、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.25gとを混合した。そして十分に攪拌して、プライマー層用の塗布液P1とした。
このコーティング液P1を、屈折率1.67のプラスチックレンズ基材(セイコーエプソン(株)製、商品名「セイコースーパーソブリン(SSV)」)上に、浸漬法(引き上げ速度15cm/分)にて塗布し、100℃で20分間、加熱・硬化処理して、レンズ基材上に膜厚1.0μm、屈折率1.67のプライマー層を形成した。
(ハードコート層を形成する工程)
ハードコート層を塗布により形成するためのコーティング液HC1を調製した。まず、メタノール78gと、ブチルセロソルブ100.3gと、メタノール分散ルチル型酸化チタン複合ゾル(触媒化成工業(株)製、固形分濃度20重量%、商品名「オプトレイク1
120Z」)1380.9gと、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン289.9gとを混合した。この混合液に、0.05N塩酸水溶液80.1gを攪拌しながら滴下し、さらに4時間攪拌後一昼夜熟成させた。この液に、過塩素酸マグネシウム4.4gと、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.6gと、ヒンダードアミン系光安定剤(三共(株)製、商品名「サノールLS−770」)2.3gとを添加した。さらに、4時間攪拌した後、一昼夜熟成させて、コーティング液HC1とした。
このコーティング液HC1を、浸漬法(引き上げ速度25cm/分)により、プライマー層が形成されたレンズ基材に塗布し、さらに、80℃で30分間、加熱・硬化処理し、さらに、120℃で180分間、加熱・硬化処理した。このようにしてプライマー層上に膜厚2.2μm、屈折率1.67のハードコート層を形成した。
(反射防止層を形成する工程)
有機系の反射防止層を塗布により形成するためのコーティング液AR1を調製した。まず、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGME)105.245gと、テトラメトキシシラン42.370gとを混合した。その後、0.1規定の塩酸水溶液24.104gを攪拌しながら滴下し、さらに2時間攪拌した。この液に、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L7604」)0.112gを混合し、攪拌した。その後、イソプロピルアルコール分散中空シリカゾル(触媒化成工業(株)製、固形分濃度20Wt%)83.625gと、PGME859.544gとを混合した。そして、十分に攪拌し、固形分濃度が3.0%のコーティング液AR1とした。
このコーティング液AR1を、ハードコート層が形成されたレンズ基材の両面にスピンナー法にて塗布(コーティング)した。レンズ基材を500rpmで5秒間、回転させながらコーティング液AR1を基材の凸面(表面)に塗布した。その後、回転数を1800rpmに上げて15秒間維持し、100℃で10分間、風乾した。次に、レンズ基材を800rpmで5秒間、回転させながらコーティング液AR1を、凹面(裏面)に塗布した。その後、回転数を1800rpmに上げて15秒間維持し、さらに、100℃で60分間、焼成し、レンズ基材の両面に、膜厚100nmの有機系の反射防止層を形成した。
(防汚層を形成する工程)
防汚層を塗布により形成するためのコーティング液(組成物)B1を調製した。含フッ素シラン化合物(信越化学工業(株)製、商品名「KY−130」)を、パーフルオロヘキサンに希釈して0.3%溶液を調製し、コーティング液B1とした。この含フッ素シラン化合物(信越化学工業(株)製、商品名「KY−130」)は、上述した一般式(B)で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物を含んでいるものである。
このコーティング液B1を、ディッピング法(浸漬法)にて反射防止層が形成されたレンズ基材に塗布した(防汚層塗布工程)。引き上げ速度150mm/分である。ディッピングに際しては、コーティング液B1にレンズ基材を1分間保持した。
その後、コーティング液B1が塗布されたレンズ基材を、相対湿度20%の加熱炉に投入し、130℃で10分間保持し、プレアニールした(プレアニール工程)。
さらに、120℃、相対湿度45%に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて1時間保持し、アニールした(第1のアニール工程)。なお、以降において、この第1のアニール工程におけるアニールを、第1のアニールと呼ぶ。
このようにして、レンズ基材上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造した。得られたプラスチックレンズに対し、以下で述べる試験を行い、各特性を評価した。それらの結果を纏めて図1に示した。評価方法およびその結果については以下に纏めて説明する。以下の実施例および比較例についても同様である。
(実施例2)
実施例2では、実施例1に準じて、レンズ基材の上に、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、プライマー層を形成する工程を除き、上記の実施例1の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B1が塗布されたレンズ基材を相対湿度20%の加熱炉に投入し、100℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、130℃、相対湿度70%に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて1時間保持し、第1のアニールを行った。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例1と同じである。
(実施例3)
実施例3では、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。
(プライマー層を形成する工程)
プライマー層を塗布により形成するためのコーティング液P2を調製した。まず、市販の水性ポリエステル(高松油脂(株)製、商品名「A−160P」、固形分濃度25%)572.0gと、メタノール854.1.6gと、水54.5gと、メタノール分散二酸化チタン−二酸化ジルコニウム−二酸化ケイ素複合微粒子ゾル(触媒化成工業(株)製、商品名「オプトレイク1120Z(S−7・A8)」、固形分濃度20重量%)715.1gとを混合した。この混合液に、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.44gを加えた。そして、3時間攪拌し、コーティング液P2とした。
このコーティング液P2を、屈折率1.60のレンズ基材(SSV)に、浸漬法(引き上げ速度15cm/分)にて塗布し、その後、60℃で20分間、加熱・硬化処理して、レンズ基材上に膜厚0.9μm、屈折率1.67のプライマー層を形成した。
(ハードコート層を形成する工程)
ハードコート層を塗布により形成するためのコーティング液HC2を調製した。まず、ブチルセロソルブ601.9gと、メタノール分散二酸化チタン−二酸化ジルコニウム−二酸化ケイ素複合微粒子ゾル(触媒化成工業(株)製、固形分濃度30重量%)399.7gとを混合した。さらに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン127.9gを混合した。この混合液に0.05N塩酸水溶液40gを攪拌しながら滴下し、さらに4時間攪拌後一昼夜熟成させた。この液に、グリセロールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコールEX−313」)29.5gを添加し、その後、鉄(III)アセチルアセトネート2.9gと、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー
(株)製、商品名「L−7001」)0.2gとを添加した。さらに、4時間攪拌後、一昼夜熟成させて、コーティング液HC2とした。
このコーティング液HC2を、プライマー層が形成されたレンズ基材に、浸漬法(引き上げ速度35cm/分)にて塗布し、その後、90℃で20分間加熱・硬化処理し、さらに、125℃で120分間、加熱・硬化処理した。このようにしてプライマー層上に、膜厚1.9μm、屈折率1.67のハードコート層を形成した。
(反射防止層を形成する工程)
有機系の反射防止層を塗布により形成するためのコーティング液(組成物)AR2を調製した。まず、1−プロパノール150.115gと、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン36.554gとを混合した。その後、0.1規定の塩酸水溶液10.045gを攪拌しながら滴下し、その後3時間攪拌した。この液に、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L7001」)0.215gを混合し、攪拌した。その後、イソプロピルアルコール分散中空シリカゾル(触媒化成工業(株)製、固形分濃度20Wt%)194.0gと、1−プロパノール1762.34gとを混合した。そして、十分に攪拌し、固形分濃度が2.5%のコーティング液AR2とした。
このコーティング液AR2を、レンズ基材の両面にスピンナー法にて塗布した。塗布の条件は、凹面(裏面)を塗布する際の回転速度を800rpmから500rpmに変更した以外は、実施例1におけるスピンナー法の塗布条件と同じである。
(防汚層を形成する工程)
防汚層を塗布により形成するためのコーティング液(組成物)B2を調製した。含フッ素シラン化合物(ダイキン工業(株)製、商品名「オプツールDSX」)を、パーフルオロヘキサンに希釈して0.35%溶液を調製し、コーティング液B2とした。この、含フッ素シラン化合物(ダイキン工業(株)製、商品名「オプツールDSX」)は、上述した一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物であり、含フッ素有機化合物から成る溶剤として、パーフルオロヘキサンを用いている。
このコーティング液B2を、ディッピング法(浸漬法)にて反射防止層が形成されたレンズ基材に塗布した。引き上げ速度200mm/分である。ディッピングに際しては、コーティング液B2にレンズ基材を1分間保持した。
その後、コーティング液B2が塗布されたレンズ基材を、相対湿度20%の加熱炉に投入し、120℃で10分間保持し、プレアニールした。
さらに、80℃、相対湿度40%に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて2時間保持し、第1のアニールを行った。
このようにして、レンズ基材上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造した。
(実施例4)
実施例4では、実施例3に準じて、レンズ基材の上に、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、プライマー層を形成する工程を除いて、上記の実施例3の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B2が塗布されたレンズ基材を相対湿度20%の加熱炉に投入し、120℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、80℃、相対湿度90%に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて2時間保持し、第1のアニールを行った。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例3と同じである。
(実施例5)
実施例5では、実施例3に準じて、レンズ基材の上に、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、プライマー層を形成する工程を除き、上記の実施例3の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B2が塗布されたレンズ基材を相対湿度20%の加熱炉に投入し、150℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、150℃、相対湿度70%
に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて10分間保持し、第1のアニールを行った。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例3と同じである。
(実施例6)
実施例6では、実施例1に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例1の各工程を行った。
ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B1が塗布されたレンズ基材を相対湿度20%の加熱炉に投入し、90℃で10分間保持し、プレアニールした。
さらに、90℃、相対湿度60%に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて1.5時間保持し、第1のアニールを行った(第1のアニール工程/本アニール工程)。
その後、90℃、相対湿度20%の加熱炉に第1のアニール後のレンズ基材を入れ、2時間保持し、アニールを行った(第2のアニール工程/乾燥アニール工程)。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例1と同じである。なお、以降において、第2のアニール工程におけるアニールを、第2のアニールと呼ぶ。
(実施例7)
実施例6に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例6の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、100℃、相対湿度20%の加熱炉に第1のアニール後のレンズ基材を入れ、2時間保持し、第2のアニールを行った。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例6と同じである。
(実施例8)
実施例6に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例6の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、110℃、相対湿度20%の加熱炉に第1のアニール後のレンズ基材を入れ、40分間保持し、第2のアニールを行った。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例6と同じである。
(実施例9)
実施例6に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例6の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B1が塗布されたレンズ基材を相対湿度20%の加熱炉に投入し、90℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、90℃、相対湿度90%に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて2時間保持し、第1のアニールを行った。その後、120℃、相対湿度20%の加熱炉に第1のアニール後のレンズ基材を入れ、30分間保持し、第2のアニールを行った。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例6と同じである。
(比較例1)
比較例1では、実施例1に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例1の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B1が塗布されたレンズ基材を相対湿度20%の加熱炉に投入し、90℃で10分間保持し、プレアニールした。
さらに、70℃、相対湿度95%に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて2時間保持し、第1のアニールを行った。なお、第2のアニールは行っていない。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例1と同じである。
(比較例2)
比較例2では、実施例1に準じて、レンズ基材の上に、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、プライマー層を形成する工程を除き、上記の実施例1の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B1が塗布されたレンズ基材を相対湿度20%の加熱炉に投入し、90℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、恒温恒湿槽を90℃、相対湿度30%に設定し、プレアニール後のレンズ基材に対し、2時間、第1のアニールを行った。なお、第2のアニールは行っていない。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例1と同じである。
(比較例3)
比較例3では、実施例3に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例3の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、防汚層を形成する工程では、コーティング液B2が塗布されたレンズ基材を、相対湿度20%の加熱炉に投入し、130℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、160℃、相対湿度40%に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて10分間保持し、第1のアニールを行った。なお、第2のアニールは行っていない。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例3と同じである。
(比較例4)
比較例4では、実施例3に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例3の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B2が塗布されたレンズ基材を、相対湿度20%の加熱炉に投入し、140℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、150℃、相対湿度40%に設定した恒温恒湿槽に、プレアニール後のレンズ基材を入れて2.5時間保持し、第1のアニールを行った。なお、第2のアニールは行っていない。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例3と同じである。
(比較例5)
比較例5では、実施例3に準じて、レンズ基材の上に、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、プライマー層を形成する工程を除き、上記の実施例3の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B2が塗布されたレンズ基材について、プレアニールは行わず、恒温恒湿槽を80℃、相対湿度90%に設定し、2時間、第1のアニールを行った。なお、第2のアニールは行っていない。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例3と同じである。
(比較例6)
比較例6では、実施例3に準じて、レンズ基材の上に、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、プライマー層を形成する工程を除き、上記の実施例3の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B2が塗布されたレンズ基材を、相対湿度40%の加熱炉に投入し、90℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、恒温恒湿槽を80℃、相対
湿度90%に設定し、プレアニール後のレンズ基材に対し、2時間、第1のアニールを行った。なお、第2のアニールは行っていない。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例3と同じである。
(比較例7)
比較例7では、実施例1に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例1の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B1を塗布したレンズ基材を、相対湿度40%の加熱炉に投入し、90℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、恒温恒湿槽を90℃、相対湿度60%に設定し、プレアニール後のレンズ基材に対し、1.5時間、第1のアニールを行った。なお、第2のアニールは行っていない。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例1と同じである。
(比較例8)
比較例8では、実施例6に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例6の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B1が塗布されたレンズ基材を、相対湿度40%の加熱炉に投入し、90℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、恒温恒湿槽を90℃、相対湿度60%に設定し、プレアニール後のレンズ基材に対し、1.5時間、第1のアニールを行った。その後、80℃、相対湿度20%の加熱炉に第1のアニール後のレンズ基材を入れ、1時間保持し、第2のアニールを行った。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例6と同じである。
(比較例9)
比較例9では、実施例6に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例6の各工程を行った。ただし、防汚層を形成する工程では、コーティング液B1が塗布されたレンズ基材を、相対湿度40%の加熱炉に投入し、90℃で10分間保持し、プレアニールした。さらに、恒温恒湿槽を90℃、相対湿度60%に設定し、1.5時間、第1のアニールを行った。その後、130℃、相対湿度20%の加熱炉に第1のアニール後のレンズ基材を入れ、1時間保持し、第2のアニールを行った。防汚層を形成する工程の他の条件は、実施例6と同じである。
(比較例10)
比較例10では、実施例1に準じて、レンズ基材の上に、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層が順番に形成されたプラスチックレンズを製造する。このため、上記の実施例1の各工程を行った。なお、防汚層を形成する工程では、プレアニール工程、第1のアニール工程、および第2のアニール工程を省略した。
(評価)
上記の実施例1〜9および比較例1〜10で得られたプラスチックレンズについて、防汚層形成直後の外観、耐擦傷性、接触角変化、インクの拭き取り性、拭き耐久性の試験後の外観、および耐アルカリ性に関する評価を行った。
外観は、防汚層を形成する工程におけるアニール直後の外観を目視で評価した。耐擦傷性は、ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kgの加重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷の付いた程度を目視により評価した。図1において、「◎」は、摩擦した範囲に全く傷が認められなかったことを示し、「○」は、上記範囲内に1〜10本傷がついたことを示し、「△」は、上記範囲内に11〜20本傷がついたことを示し、「×」は、無数の傷がついているが、平坦な面が残っていることを示して
いる。
防汚性能は、木綿による拭き耐久性試験を行った後、初期と耐久試験後の接触角変化、インクの拭き取り性(弾き性)、および外観について評価した。拭き耐久性試験は、木綿布を用い、レンズの凸面を200gの荷重をかけながら3000回往復させた。接触角変化は、接触角計(協和科学(株)製、型番「CA−D型」)を使用し、液滴法により、防汚層の初期および耐久試験後の水接触角をそれぞれ測定した。
インクの拭き取り性(弾き性)の評価のために、レンズの凸面に、黒色油性マーカー(ゼブラ(株)製、商品名「ハイマッキーケア」)により約4cmの直線を描き、その後5分放置した。放置後、該マーク部をワイプ紙((株)クレシア製、商品名「ケイドライ」)によって拭き取りを行い、その拭き取り易さを下記の基準にて拭き取り性を判定した。図1において、「○」は、10回以下の拭き取りで完全に除去できることを示し、「△」は、11回〜20回の拭き取りで完全に除去できることを示し、「×」は、20回の拭き取り後も除去されない部分が残ることを示している。
拭き耐久試験後の外観は、目視で変色(黄変)を確認する。さらに、暗箱での反射検査で評価した。暗箱の検査条件は、背景および机上を反射の少ない黒色の板とし、検査室内の照度を200〜250ルクス、試験位置による照度を350〜500ルクスとし、明視状態で検査する。暗箱内の蛍光灯は、3波長域発光型昼白(FL(R)−20S(S)/EX−N)を使用した。また、暗箱での反射検査は、暗箱にて検査対象物のレンズを、目から30cm前後の机上付近に保持し、レンズ表面に蛍光灯を反射させた状態で傾斜角を変えて評価する。45〜90°回転させ、傾斜角を変えて再度評価し、外観上の欠陥の発生状態を下記の3段階で判定した。図1において、「○」は、傷が無いことを示し、「△」は、傷の本数が1〜10本程度であることを示し、「×」は、傷の本数が11本以上であることを示している。
耐アルカリ性については、0.1Nに調整した水酸化ナトリウム水溶液中に、レンズ(試験片)を浸漬し、1時間後および2時間後の外観を下記の3段階で判定した。図1において、「○」は、2時間浸漬後も表面の外観に変化がないことを示し、「△」は、2時間浸漬後にハガレが発生したことを示し、「×」は、1時間浸漬後にハガレが発生したことを示している。ハガレの界面は、レンズ基材とプライマー層、プライマー層とハードコート層、またはレンズ基材とハードコート層、ハードコート層と有機系の反射防止層、が考えられるが、本評価では界面の区別はしない。
(評価結果)
図1に、実施例1〜9および比較例1〜10によりプラスチックレンズを製造したときの、防汚層を形成する工程の条件と、それぞれのプラスチックレンズにおける評価結果を纏めて示してある。
実施例1〜9において製造されたプラスチックレンズは、アニール直後の外観は良好であり、拭き耐久性試験前後の接触角変化は殆どなく、インクの拭き取り性も良好であり、試験後の外観および耐アルカリ性も良好であった。
特に、実施例6〜9において製造されたプラスチックレンズは、これらに加え、耐擦傷性にも優れていることがわかった。相対湿度40%〜95%という比較的高湿状態で行われる第1のアニール工程においては、水分がハードコート層にまで浸み込んでくる場合があると考えられる。この場合、浸み込んできた水分により、一旦硬化させたハードコート層が加水分解され、化学結合が切断されることがあるのに対し、第1のアニール工程よりも相対湿度が低い環境で、温度90℃〜120℃で20分〜2時間加熱する第2のアニー
ル工程を行うことにより、ハードコート層において、再び、化学結合(縮合反応・硬化反応)を生じさせることができると考えられる。したがって、第2のアニール工程を追加することにより、光学製品の硬度がさらに向上するという結果が得られたと考えられる。
比較例1および2により製造されたプラスチックレンズは、レンズの初期状態に問題は見当たらなかったが、接触角変化が大きく、また、拭き性の低下および外観の低下が見られた。また、耐アルカリ性も低いことが分かった。いずれの結果も、防汚層の耐久性が上述した実施例1〜9と比べて低いことを示している。その要因として、比較例1では、防汚層を形成する工程における第1のアニールの温度が不足し、比較例2では第1のアニールにおける水分(相対湿度)が不足していたことが考えられる。
比較例3により製造されたプラスチックレンズは、製造後の初期状態において、クラックの発生および黄変が見られた。この要因としては、防汚層を形成する工程における第1のアニールの温度が高すぎたことが考えられる。
比較例4により製造されたプラスチックレンズは、製造後の初期状態において、クラックの発生および黄変が見られた。この要因としては、防汚層を形成する工程における第1のアニールの時間が長過ぎたことが考えられる。
比較例5および6により製造されたプラスチックレンズは、製造後の初期段階で、点状の水滴跡が見られたこと以外、接触角変化は殆どなく、インクの拭き取り性も良好であり、その後の外観、および耐アルカリ性も、上述した実施例1〜9と同様に良好であった。これらの水滴跡は、高湿のアニール段階で発生したと考えられる。その要因としては、比較例5では、プレアニールを省いたこと、比較例6では、プレアニールの湿度が高かったことが考えられる。これらの水滴跡は、レンズの光学的な性質には殆ど影響を与えないが、外観上の製品価値の低下と、防汚層の品質のばらつきによる長時間耐久性の低下が心配される。したがって、水滴跡は見られないことが望ましい。
比較例7および8より製造されたプラスチックレンズは、アニール直後の外観は良好であり、拭き耐久性試験前後の接触角変化は殆どなく、インクの拭き取り性も良好であり、試験後の外観および耐アルカリ性も、上述した実施例1〜9と同様に良好であった。ただし、比較例7および8により製造されたプラスチックレンズは、実施例6〜9と比べると、耐擦傷性が若干劣ることがわかった。その要因としては、比較例7については、比較的低温高湿の条件で第1のアニール工程を実施しており、そのような第1のアニール工程の条件に対して第2のアニール工程を省略したためであると考えられる。比較例8については、第2のアニール工程は行ったが、第2のアニール工程における温度が低かったことが考えられる。
比較例9より製造されたプラスチックレンズは、耐擦傷性、拭き耐久性試験前後の接触角変化は殆どなく、インクの拭き取り性も良好であり、試験後の外観および耐アルカリ性も、上述した実施例1〜9と同様に良好であった。しかしながら、比較例9により製造されたプラスチックレンズは、黄変が生じることがわかった。その要因としては、第2のアニール工程における温度が高かったことが考えられる。これらの実験例および比較例の結果より、第1のアニール工程の条件によっては、第2のアニール工程を行なうことがさらに好ましく、また、第2のアニール工程における温度が高すぎる場合には、黄変が生じるなど、好ましくない場合もあることが分かる。すなわち、第2のアニール工程における温度が90℃未満であると、上述した硬化反応が進み難く、耐擦傷性効果の向上を期待できないことがある。また、第2のアニール工程における温度が120℃を超えると、光学基材が黄変し易くなる。したがって、第2のアニール工程では、光学基材(第1のアニール工程においてアニール処理が施された光学基材)を温度90℃〜120℃で加熱すること
が望ましい。
比較例10により製造されたプラスチックレンズは、アニール直後の外観および耐擦傷性は良好であったが、インクの拭き取り性、試験後の後の外観、および耐アルカリ性のいずれも、上述した実施例1〜9に対して劣ることがわかった。
上記の結果より、防汚層を形成する工程においては、相対湿度20%以下の適当な低湿度の環境で、150℃以下でプレアニールし、さらに、相対湿度40%〜95%の環境で、80℃〜150℃に加熱して第1のアニール処理をすることが望ましい。また、第1のアニールの後、第1のアニール工程よりも相対湿度が低い環境で、温度90℃〜120℃で20分〜2時間加熱して第2のアニール処理をすることが、さらに望ましい。
第1のアニール処理の際の温度は、150℃以下にすることが望ましく、例えば160℃ではクラックの発生がみられる。また、第1のアニールを行う際の温度が150℃であっても、比較例4のように2時間を越えてアニールを続けると、ハードコート層や反射防止層などの塗層にクラックが発生したり、黄変が生じたりするおそれがある。また、第1のアニールを行う温度は、80℃〜120℃の範囲がさらに好ましい。また、作業上の安全面からも、できる限り低温で行うことが望ましい。
さらに、プレアニールする際も、防汚層の高温性能は第1のアニールを行う際と同様なので、プレアニールする際の温度は、第1のアニールを行う際の温度と同様に、150℃以下にすることが望ましく、80℃〜120℃の範囲がさらに好ましい。プレアニールする際の温度と、その後に行われる、第1のアニールの温度との差は少ない方が好ましいと考えられる。さらに、プレアニールする際の温度は、その後に行われる、第1のアニールの温度より高いことが好ましい。この条件で、有機系の反射防止層に防汚層を形成することで、反射防止層にクラックなどを発生させずに、反射防止層と密着性が高く、耐久性の優れた防汚層を備えたプラスチックレンズを提供できる。
また、第2のアニール処理の際の温度は、90℃未満では、硬化反応が進まず、良好な耐擦傷性を得られ難い。一方、120℃を越えると、黄変が生じたりする。したがって、第2のアニール処理は、温度90℃〜120℃で20分〜2時間加熱することが望ましい。また、作業上の安全面からも、第2のアニールは、できる限り低温で行うことが望ましい。さらに、第2のアニール処理の際の湿度は、第1のアニール処理の湿度よりも低くすることが望ましく、これにより、硬化反応が促進され、良好な耐擦傷性が得られる。第2のアニールは、相対湿度5%〜30%の環境で行うことがさらに好ましい。
なお、上記では、基材にプラスチックレンズを用いて、眼鏡用のプラスチックレンズの製造方法を例に説明しているが、これに限らないことは上述した通りである。
実施例および比較例に係る防汚層の製造条件と評価結果を示す図。

Claims (8)

  1. 少なくともハードコート層を有する光学基材上に形成された有機系の反射防止層と、前記有機系の反射防止層の表面に形成された防汚層とを有する光学製品の製造方法であって、
    前記有機系の反射防止層の表面に前記防汚層を形成するための組成物を塗布する防汚層塗布工程と、
    前記防汚層塗布工程の後、前記防汚層を形成するための組成物が塗布された前記光学基材を、相対湿度40%〜95%の環境で、温度80℃〜150℃で10分〜2時間加熱する第1のアニール工程とを有する、光学製品の製造方法。
  2. 請求項1において、前記第1のアニール工程では、前記防汚層を形成するための組成物が塗布された前記光学基材を、相対湿度40%〜95%の環境で、温度80℃〜120℃で10分〜2時間加熱する、光学製品の製造方法。
  3. 請求項1または2において、前記防汚層塗布工程後で前記第1のアニール工程の前に、相対湿度20%以下の環境で、温度80℃〜150℃で前記防汚層を形成するための組成物が塗布された前記光学基材を加熱するプレアニール工程を有する、光学製品の製造方法。
  4. 請求項3において、前記プレアニール工程では、相対湿度20%以下の環境で、温度80℃〜120℃で前記防汚層を形成するための組成物が塗布された前記光学基材を加熱する、光学製品の製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記第1のアニール工程の後に、前記第1のアニール工程においてアニール処理が施された前記光学基材を、前記第1のアニール工程よりも相対湿度が低く、相対湿度5%〜30%の環境で、温度90℃〜120℃で20分〜2時間加熱する第2のアニール工程を有する、光学製品の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記防汚層を形成するための組成物は、下記一般式(A)で表される含フッ素シラン化合物と、含フッ素有機化合物から成る溶剤とを含む、光学製品の製造方法。
    Figure 2007196211
    ただし、式中、Rfは、パーフルオロアルキル基を表す。Zは、フッ素またはトリフルオロメチル基を表す。a、b、c、d、eは、それぞれ独立して、0または1以上の整
    数を表し、a+b+c+d+eは、少なくとも1以上であり、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、式中において限定されない。Yは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは、水素、臭素またはヨウ素を表す。Rは、水酸基または加水分解可能な置換基を表す。Rは、水素または1価の炭化水酸基を表す。uは、0、1または2を表す。vは1、2または3を表す。wは、1以上の整数を表す。
  7. 請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記防汚層を形成するための組成物は、下記一般式(B)で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物と、含フッ素有機化合物から成る溶剤とを含む、光学製品の製造方法。
    Figure 2007196211
    ただし、式中、Rfは、式:−(C2k)O−(前記式中、kは1〜6の整数である)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する2価の基であり、Rは独立に炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは独立に加水分解性基またはハロゲンであり、sは独立に0〜2の整数であり、tは独立に1〜5の整数であり、hおよびiは独立に2または3である。
  8. 請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記有機系の反射防止層は、下記一般式(C)で表される成分と、下記(D)の成分とを含有する組成物から形成される、光学製品の製造方法。
    (C)一般式:R SiX 4−q−pで表される有機ケイ素化合物
    ただし、式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、Xは加水分解性基であり、pおよびqは、少なくとも一方は1であり、他方は0または1である。
    (D)シリカ系微粒子
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