以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の防眩性反射防止フィルムは、支持体上にハードコート層と凸部状に形成された低屈折率層とを有することを特徴とする。
本発明は、支持体上にハードコート層と凸部状に形成された低屈折率層を有し、凸部状の低屈折率層がハードコート層表面の85%以上の面積を被覆し、防眩性反射防止フィルムの表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm以下であり、かつ平均山谷間隔(Sm)が5〜200μm以下である防眩性反射防止フィルムにより、高精細でコントラスト低下を防止できる防眩性反射防止フィルムを安定的に提供するものである。
従来の、微粒子を含有させて防眩性を付与したハードコート層全体を低屈折率層で覆い防眩性反射防止フィルムを形成する方法やエンボス加工により防眩性を付与する方法では、微細凹凸構造の均一性を保つことが難しい為に、防眩効果、ぎらつき、白濁、画像表示時の黒のしまりについて不十分なレベルにあった。
本発明において上記低屈折率層を凸部状に形成するには、印刷法であるグラビア法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、若しくはインクジェット法、スプレイ加工等のパターン作製方法により、凸部(ドットとも言う)を作製し、該凸部を活性光線もしくは加熱により硬化固定することで得ることが出来る。この際、凸部は、面内ではFMスクリーニング等の手段により一定のランダム配置を取り、高さは一定の範囲内で均一に作製されることで、表面粗さ(Ra)は全面において安定し、かつ凹凸の形成は一律の間隔とならないことで、ディスプレイの画素との間でモアレを発生することがない。凸部の高さと間隔を適切に設定することで、防眩性反射防止フィルムの表面には適度で安定した表面粗さを持つ凹凸が形成され、防眩効果を維持しつつ、光散乱によるヘーズの増加が抑えられ、散乱光による白濁が押えられるため、コントラストの高い画像を見ることができる。
上記方法によれば、印刷速度を10m/毎分以上、500m/毎分という速度でも防眩性反射防止フィルムを作製することが出来、高精細な画像の鮮明性を低下させることなく、外光の写り込みや、コントラストの低下を有効に防止出来、所望の微細凹凸構造を生産性よく効果的・安定的に形成した防眩性反射防止フィルム、それを用いた偏光板及び表示装置が得られることを見出したものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
《凸部状低屈折率層の形成》
本発明の凸部状の低屈折率層は、印刷法であるグラビア法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、若しくはインクジェット法、スプレイ加工等のパターン作製方法により得られることが好ましい。
以下に、凸部状の低屈折率層の形成方法の一例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
〈フレキソ印刷による凸部の形成の例〉
一般にフレキソ印刷とは、フレキシブルなゴム又は樹脂からなる凸版と、水又はアルコールを主とする溶剤系の蒸発乾燥型のインキを用いた印刷方法である。本発明の場合、該インキが低屈折率層形成素材であることが特徴である。
本発明に好ましく用いられるフレキソ印刷について図をもって説明する。
図1、図2は本発明に係るフレキソ印刷の一例を示す模式図である。
連続走行する支持体10は圧胴5と樹脂版ロール2と転移印刷後に支持体上に微細凹凸構造を形成するシームレス樹脂版1によって構成される版胴3に挟まれ、ドクターブレード6によって転移インキ量が調整されたアニロックスロール4によってインキ8を版胴3に供給し支持体上に転移印刷される。
フレキソ印刷における、版胴3に対するインキ供給は、アニロックスロール4により行われ、アニロックスロール面のインキ量の制御は、図1に示すドクターブレード方式、又は図2に示すツーロール方式によるものなどが一般的に知られている。図2に示すツーロール方式は、インキパンからインキ8をファウンテンロール7でアニロックスロール4に、更に版胴3にインキを供給し、支持体10にインキを転移印刷するものである。図2の方式によればインキ8は、アニロックスロール4の彫刻線数、セルの深さ及び形状で調整する他に、ファウンテンロール7とアニロックスロール4間の(変動し易い)ニップ圧の強弱でインキ供給量を制御するものでありインキの転移量が安定しないという問題がある為、本発明では図1の方法が好ましい。
また別の方式として、図3にインキの供給を押出しコーターにより行うフレキソ印刷の模式図を示す。
インキ8は押出しコーター9により樹脂版ロール2に装着されたシームレス樹脂版1上に直接押し出され、版胴3と圧胴5に挟まれ連続走行している支持体10に転移印刷される。この装置の場合はアニロックスロールが無いため、インキの供給量は押出しコーターの精度に左右される。
図1に示すドクターブレード方式における、版胴3へのインキ転移量は、アニロックスロール4の彫刻線数とセルの形状で決まりインキ転移量としては安定出来るものである。そして、アニロックスロールのセルに充填するインキは、アニロックスロール表面の過剰インキをドクターブレードで掻きとるため、転移するインキは彫刻線数とセルの形状、容積で決められるものである。そして、アニロックスロールのセルは、例えば鉄シリンダー表面に必要に応じて銅メッキを施して、その面に彫刻でセルを形成し、ニッケル或いはクロムメッキで硬度のある表面加工を行う。アニロックスロールの材質は、鉄シリンダー表面に銅メッキ等を行ったタイプ、またはセラミックコーテイングしたタイプがあるが、本発明では耐摩耗性及び、彫刻線数の細線化が容易な点からセラミックコーテイングしたタイプが好ましい。
図4はアニロックスロールの斜視図である。
図5はアニロックスのセルを説明するための斜視図である。
アニロックスロール4は、図4に示すようにセラミックス面を、銅面に設けるグラビア版と同様に化学腐食によっても形成出来るが、腐食液の処理や深さのばらつきを生じ易い点から、機械もしくはレーザー彫刻によりセルbを設けることが望ましい。そして、アニロックスロールの表面は、通常ミルによる押圧加工の後クロムメッキ加工して作られるが耐摩耗性、耐食性及びインキ転移性の点から酸化クローム、タングステンカーバイドなどの無機酸化物を熔射形成したものが好ましい。
アニロックスロール4の彫刻形状は、格子型のセルの他に、図示はしないが、ヘリカル型、ピラミッド型、斜線型、六角形状のハニカムパターンなどの形状があり、特に限定されるものではないが、高速印刷時におけるインキ転移の再現性の点からハニカムパターンであることが好ましい。そして、図4及び図5に示す彫刻線数やセルbの深さdは、インキの転移量に大きな影響を与えるもので、本発明に係る防眩性反射防止フィルム表面上の微細凹凸構造を形成するには、600線/2.54cm以上、セルの深さdが5〜30μmであることが好ましい。彫刻形状と線数の選択は被印刷体の種類や印刷スクリーン線数に合せて考慮されるが、被吸収性が少ないプラスチックフィルムには線数の細かいものが好ましく使用される。そして、セルの土手a(非凹部)は、耐摩耗性に支障がない程度に小さく設けた方がインキチャージ量を多く出来る点から好ましく、具体的には土手幅wをセル幅の0.1〜0.5倍に設けることが好ましい。アニロックスロールは、フレキソ印刷において版面にインキ量の供給量をドクタリングで制御するものである。そして、ドクタリングの過程で摩耗・損傷が起こり、セルが浅くなりインキ転移量が減少する原因となる。したがって、従来の金属(鉄、又は銅に彫刻、クロームメッキ仕上げ)と比較して、セラミックスのアニロックスロールは、ドクタリングによる摩耗量が少なく凹凸パターンの繰り返し安定性に大きく貢献出来るものである。
本発明は、好ましくは図1に示すようなフレキソ印刷装置により、50〜1000mm径のシームレス樹脂版1を樹脂版ロール2に装着した版胴3と、好ましくはセラミックスコーティングしたアニロックスロール4とを用いて、支持体10にインキを転移印刷し、活性光線を照射するかまたは加熱して、支持体上に凸部を形成するものである。
上記樹脂版ロール2の材質は特に限定されるものではなく、強度を維持出来るものであればよく、鉄、ステンレス、アルミ等の金属、または合成または天然ゴムであることが好ましく、金属とゴムの複合部材でもよい。本発明では樹脂版ロール2の径はシームレス樹脂版1が樹脂版ロール2に装着された時の径(ロールの直径)が50〜1000mmの範囲になるように選択されればよい。シームレス樹脂版1の径が50mm未満では回転速度が速過ぎて強度を維持出来ないこと、また凸部のパターンの繰り返しの周期が短くて防眩効果が低下することがあり好ましくない。径が1000mmを超えると、装置が大きくなり過ぎて運転費用がかかりコスト的に不利であり、また回転むらが生じやすくパターン形成の精度が低下する。
本発明においてシームレス樹脂版1に用いる樹脂版は、光反応物質であるポリマーとモノマーとの光重合を応用した感光性樹脂版を用いることが好ましい。この感光性樹脂版は、フォトポリマー、紫外線の露光により光重合するモノマー、ポリマーとモノマー間とで光重合を開始する増感剤、及び版材の物理的性状を調整する可塑剤等の組成物から構成され、感光性樹脂版上に従来のマスク製版により上記パターンを刻印するか、または、シリンダー(軸芯)の全面に塗布等により設けた感光性樹脂層にレーザー光を照射することにより直接該パターンを彫刻することも出来る。
本発明において用いられる感光性樹脂組成物は、フレキソ印刷版用として公知のものが使用出来る。一般的にはバインダーポリマーと少なくとも一種のエチレン性不飽和モノマーと光開始剤を主成分とする組成物が用いられる。さらに、この感光性樹脂層に要求される特性に応じて増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤などの添加剤を含むことが出来る。
バインダーポリマーとしては、例えばモノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーを重合して得られる熱可塑性エラストマーが用いられる。モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等が、また共役ジエンモノマーとしてはブタジエン、イソプレン等が挙げられる。具体例としてはスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体や、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などを挙げることが出来る。
少なくとも一種のエチレン性不飽和モノマーとしては、バインダーポリマーと相溶性のあるもので、例えばt−ブチルアルコールやラウリルアルコールなどのアルコールとアクリル酸、メタクリル酸とのエステル、或いはラウリルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ベンジルマレイミドなどのマレイミド誘導体、又はジオクチルフマレートなどのアルコールとフマール酸のエステル、さらにはヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールとアクリル酸、メタクリル酸とのエステルなどを挙げることが出来る。
光開始剤としては、ベンゾフェノンのような芳香族ケトン類やベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、2,2−ジエトキシフェニルアセトフェノン等のベンゾインエーテル類などの公知の光重合開始剤の中から選択し、また組み合わせて使用される。
感光性樹脂層は種々の方法で調製することが出来る。例えば配合される原料を適当な溶媒、例えばクロロホルム、テトラクロルエチレン、メチルエチルケトン、トルエン等の溶剤に溶解させて混合し、コーターにより適当な支持体上に塗布して設けることも出来るし、型枠の中に流延して溶剤を蒸発させ、そのまま板とすることが出来る。また溶剤を用いず、ニーダー或いはロールミルで混練し、押し出し機、射出成形機、プレスなどにより所望の厚さの板に成形することが出来る。
感光性樹脂シートを樹脂版ロールに巻き付けるにあたっては、シームレス樹脂版を形成する為に感光性樹脂の端部同士に隙間が出来ないよう、正確にシートを切断して用いることが必要である。通常感光性樹脂版を樹脂版ロールに巻き付けた後、感光性樹脂の軟化点以上に加温して感光性樹脂の端部同士を溶融接着させる。加温時間は通常20分から1時間で、温度と樹脂の軟化点に応じて端部同士が融着することを目安に決められる。次いでグラインダーで感光性樹脂表面を研磨してつなぎ目を完全に無くすと同時に精度を出した後、感光性樹脂の軟化点以上に再度加温処理を行うことがシームレス化において好ましい。その時間は温度によるが10から40分程度で、感光性樹脂表面全体に光沢が見られるようになるまで行う。長時間加温し続けると印刷版としての精度が損なわれるので一時間以内で処理することが望ましい。またベース材であるゴム、ポリエステルフィルム、アルミニウム板、スチール板或いは、シリンダーに装着出来るアルミニウム製樹脂版ロールに直接継ぎ目がないように感光性樹脂層を塗設しシームレス化することも出来る。
本発明ではシームレス樹脂版のゴム硬度は30〜80度の範囲であることが好ましく、精度よく安定した微細凹凸形状の転移印刷を行う上で樹脂版のゴム硬度がこの範囲にあることが好ましい。ロール状シームレス樹脂版1のゴム硬度は、樹脂版の厚みによっても影響される為、厚みが0.5〜10mmの範囲の樹脂版において30〜80度の範囲であることが好ましい。より好ましくは40〜80度の範囲である。
樹脂版のゴム硬度が30度未満であると、版が柔らか過ぎて所望の微細凹凸形状を形成するのに難があり、また版自体も摩耗し易くなる為好ましくない。樹脂版のゴム硬度が80度を超えると、版胴が高速回転して印刷する際の柔軟性に欠けインキ転移量の再現性に乏しくなる。ゴム硬度はJIS K 6253に記載の方法に準じてデュロメータ等で測定した値で示される。
シームレス樹脂版上に微細凹凸形状のパターンを刻印する方法としてマスク製版が利用される。マスク製版では、感光性樹脂材料の層を設けた樹脂版に原版マスクであるネガフィルムでカバーして露光する。感光性樹脂層は光、特に波長350〜450nmの紫外線エネルギーで硬化、或いは不溶化するものである。未露光部の未硬化樹脂は水、アルカリ水溶液、或いはアルコールなどの有機溶剤に可溶性の状態で維持される。したがって、未露光部をそれに応じた溶剤で洗い出す(現像工程)ことにより、露光された部分のみが残って凸版(フレキソ版)を形成するものである。
また、最近の刷版方法としては、修正画像信号に基づいて硬化済の樹脂版に直接レーザー光或いは彫刻機で彫刻することにより完全なエンドレス版を作製することが出来る。或いは、未露光の感光性樹脂版に円筒状のまま修正済画像信号で変調されたレーザー光で走査しパターニングした後通常の方法で現像する方法がエンドレスの版を形成する上からも好ましい。
フレキソ印刷に用いる低屈折率層形成インキの粘度は測定温度40℃において、0.1〜10Pa・sであることが好ましく、0.5〜8Pa・sの範囲が更に好ましい。粘度が0.1Pa・s未満の場合は粘度が低過ぎて所望の形状の微細凹凸構造が得られなくなり、10Pa・sを超えるとインキの流動性が悪くインキの転移性も低下する為好ましくない。インキの粘度の測定は、JIS Z 8809に規定されている粘度計校正用標準液で検定されたものであれば特に制限はなく、回転式、振動式や細管式の粘度計を用いることが出来る。粘度計としては、Saybolt粘度計、Redwood粘度計等で測定出来、例えば、トキメック社製、円錐平板型E型粘度計、東機産業社製のE Type Viscometer(回転粘度計)、東京計器社製のB型粘度計BL、山一電機社製のFVM−80A、Nametore工業社製のViscoliner、山一電気社製のVISCO MATE MODEL VM−1A等を挙げることが出来る。
いずれも、下記の低屈折率層形成組成物の構成を調整することにより、上記粘度範囲内の組成物を得ることが出来る。
〈スクリーン印刷による凸部の形成の例〉
本発明においては、凸部をスクリーン印刷法で形成することも好ましい。スクリーン印刷により凸部の高さと凸部同士の配列を任意に加工することが出来、平面内、厚さ方向いずれも所望の防眩層を得ることができる。
スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを支持体上に被せ、スクリーン上に印刷材料(凸部形成のための組成物、本発明の場合は低屈折率層形成素材など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該支持体上に転写される。次に、転写された材料を加熱、硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で凸部を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
〈インクジェット方式による凸部の形成の例〉
インクジェット印刷により凸部の高さと凸部同士の配列を任意に加工することが出来、平面内、厚さ方向いずれも所望の防眩層を得ることができる。インクジェット印刷でもモアレの問題が生じうる。この問題は、射出中のインクジェットヘッドに振動を与え、着弾位置の規則性を無くすことで解決できる。
本発明に好ましく用いられるインクジェット方式よる凸部の形成の例について説明する。
図6は、本発明に用いられるインクジェット方法に用いることのできるインクジェットヘッドの一例を示す断面図である。
図6(a)はインクジェットヘッドの断面図であり、図6(b)は図6(a)のA−A線矢視拡大図である。図中、11は基板、12は圧電素子、13は流路板、13aはインク流路、13bは壁部、14は共通液室構成部材、14aは共通液室、15はインク供給パイプ、16はノズルプレート、16aはノズル、17は駆動用回路プリント板(PCB)、18はリード部、19は駆動電極、20は溝、21は保護板、22は流体抵抗、23、24は電極、25は上部隔壁、26はヒータ、27はヒータ電源、28は伝熱部材、30はインクジェットヘッドである。
集積化されたインクジェットヘッド30において、電極23、24を有する積層された圧電素子12は、流路13aに対応して、該流路13a方向に溝加工が施され、溝20と駆動圧電素子12bと非駆動圧電素子12aに区分される。溝20には充填剤が封入されている。溝加工が施された圧電素子12には、上部隔壁25を介して流路板13が接合される。すなわち、前記上部隔壁25は、非駆動圧電素子12aと隣接する流路を隔てる壁部13bとで支持される。駆動圧電素子12bの幅は流路13aの幅よりも僅かに狭く、駆動用回路プリント板(PCB)上の駆動回路により選択された駆動圧電素子12bはパルス状信号電圧を印加すると、該駆動圧電素子12bは厚み方向に変化し、上部隔壁25を介して流路13aの容積が変化し、その結果ノズルプレート16のノズル16aよりインク液滴を吐出する。
流路板13上には、伝熱部材28を介してヒータ26がそれぞれ接着されている。伝熱部材28はノズル面にまわり込んで設けられている。伝熱部材28は、ヒータ26からの熱を効率良く流路板13に伝え、かつ、ヒータ26からの熱をノズル面近傍に運びノズル面近傍の空気を温めることを目的としており、したがって、熱伝導率の良い材料が用いられる。例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス等の金属、あるいは、SiC、BeO、AlN等のセラミックス等が好ましい材料として挙げられる。
圧電素子を駆動すると、流路の長手方向に垂直な方向に変位し、流路の容積が変化し、その容積変化によりノズルからインク液滴となって噴射する。圧電素子には常時流路容積が縮小するように保持する信号を与え、選択された流路に対して流路容積を増大する向きに変位させた後、再び流路の容積が縮小する変位を与えるパルス信号を印加することにより、流路と対応するノズルよりインクがインク液滴となって噴射する。
図7は、本発明で用いることのできるインクジェットヘッド部、ノズルプレートの一例を示す概略図である。
図7において、図7の(a)はヘッド部の断面図、図7の(b)はノズルプレートの平面図である。図中、10は支持体、31はインク液滴、32はノズル、29は活性光線照射部である。ノズル32より噴射したインク液滴31は支持体10方向に飛翔して付着する。支持体10上に着弾したインク液滴は、その上流部に配置されている活性光線照射部より、活性光線を直ちに照射され、硬化する。なお、35は支持体10を保持するバックロールである。
本発明においては、図7の(b)に記載のように、インクジェットヘッド部のノズルは、千鳥状に配置することが好ましく、また、支持体10の搬送方向に並列に多段に設けることが好ましい。また、インク吐出の際にインクジェットヘッド部に微細な振動を与え、インク滴がランダムに支持体上に着弾するようにすることが好ましい。これによって、干渉縞の発生を抑制することができる。微細な振動は、高周波電圧、音波、超音波などによって与えることができるが、特にこれらに限定されない。
本発明に係る凸部の形成方法は、多ノズルからインク小液滴を吐出して形成するインクジェット方式を用いることが好ましい。図8に、本発明で好ましく用いることのできるインクジェット方式の一例を示す。
図8において、図8の(a)は、インクジェットヘッド30を支持体10の幅手方向に配置し、支持体10を搬送しながらその表面に凸部を形成する方法(ラインヘッド方式)であり、図8の(b)はインクジェットヘッド30が副走査方向に移動しながらその表面に凸部を形成する方法(フラットヘッド方式)であり、図8の(c)はインクジェットヘッド30が、支持体10上の幅手方向を走査しながらその表面に凸部を形成する方法(キャプスタン方式)であり、いずれの方式も用いることができるが、本発明においては、生産性の観点からラインヘッド方式が好ましい。なお、図8の(a)〜(c)に記載の29は、インクとして後述の低屈折率層形成素材を用いる場合に使用する活性光線照射部である。
また、本発明においては、図8の(a)、(b)、(c)の支持体の搬送方向の下流側に、別の活性光線照射部を設けてもよい。
本発明において、微細な凸部を形成するため、低屈折率層形成インク液滴としては0.1〜100plが好ましく、0.1〜50plがより好ましく、0.1〜10plが特に好ましい。
また、上記インク液滴の粘度は、25℃において0.1〜100mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは0.1〜50mPa・sである。
〈スプレイ加工による凸部の形成の例〉
本発明の凸部形成に好ましく用いられるスプレイ加工は、特に限定されるものではないが、スロットノズルスプレイ装置を用いることが好ましい。スロットノズルスプレイ装置とは、塗布液を吐出する塗布液ノズル孔を塗布幅方向に複数有する。各塗布液ノズル孔は、塗布幅方向に一列に並んでいても、千鳥に並んでいてもよい。そして、前記塗布液ノズル孔に近接してガスを噴出するガスノズル孔を有し、ここから噴出されるガスを前記塗布液ノズル孔から吐出された塗布液に衝突させて液滴を形成する機構を有する。
本発明に好ましく用いることのできるスロットノズルスプレイ装置としては、例えば、特開平6−170308号公報に記載されているものを適用することが可能である。
また、特開平5−309310号公報に開示されるスロットノズルスプレイ塗布装置も、本発明に好ましく用いることができる。更に、本発明においては、特に、塗布均一性、塗布容易性等の観点から、特開2004−906号公報に記載のスロットノズルスプレイ塗布装置を好ましく用いることができる。
このようなスロットノズルスプレイ装置を用いて、塗布幅にわたって噴霧状態の均一性を高める方法としては、塗布液の粘度を比較的低くすること、ガスノズルから噴出するガス圧を高くすることにより可能である。また、スロットノズルスプレイ装置の塗布液ノズル開口端の面積を小さくすること、該開口端のピッチを狭くすることなどにより、噴霧の均一性を高めることができる。
塗布液の粘度としては、好ましくは0.1〜250mPa・s、より好ましくは0.1〜50mPa・s、更に好ましくは0.1〜20mPa・sであり、このような低粘度の塗布液をスロットノズルスプレイ装置に適用することで、塗布幅にわたって均一な液滴の噴霧が可能である。
また、塗布幅にわたって均一な液滴の噴霧を行うには、塗布液の静的表面張力を20〜70mN/mに調整すること、好ましくは20〜50mN/m、更に好ましくは20〜40mN/mとすることである。
また、スロットノズルスプレイ装置等を用いて、ガスを塗布液に衝突させて液滴を形成するときのガス内圧は、10kPa以上、好ましくは20kPa以上、更に好ましくは50kPa以上とすると均一な噴霧が行い易い。ガスの流量としては、3.5CMM/m以上、好ましくは7CMM/m以上、更に好ましくは10CMM/m以上である。
上記手段を用いて、塗布幅にわたり、連続ファイバー状ではなく、不連続な液滴状に飛散させることにより、塗布液が少量であっても、均一に、塗布液を支持体上に供給できる。結果として、凸部形成を均一にすることができる。また、不連続な液滴の支持体上への供給であって、塗布液量が少なくなるので、乾燥負荷もかからない。
次いで、凸部形成に用いるスロットノズルスプレイ塗布装置の具体的な形態について、説明する。
図9は、スロットノズルスプレイ部を含むスロットノズルスプレイ装置の一例を示す概略断面図である。
スロットノズルスプレイ部41は、一対の内部ダイブロック43a、43bと、該一対の内部ダイブロック43a、43bの各々の外側に外部ダイブロック42a、42bを有し、一対の内部ダイブロック43a、43b間に塗布液ノズルCが形成され、内部ダイブロック43aと外部ダイブロック42a間、及び内部ダイブロック43bと外部ダイブロック42b間にそれぞれガスノズルDが構成されている。
図9において、スロットノズルスプレイ部41には、ガスポケットAを有する1対のガスノズルDと塗布液ポケットBを有する塗布液ノズルCを有している。塗布液は、ファイバー状にならず液滴を形成できる粘度(0.1〜250mPa・sが好ましい)を有する例えば機能賦与化合物含有溶液などの塗布液を調製釜44に入れ、ポンプ45、流量計46を経て、塗布液ポケットBに供給されて塗布液ノズル43に導かれる。一方、ガスノズル42へは、加圧空気源47より、弁48を介して、ガスポケットAに加圧空気が供給される。塗布に際しては、塗布液ノズルCより規定の塗布量となるように調製釜44より塗布液を供給すると同時に、一対のガスノズルDより加圧空気を吹き付け、塗布液を液滴状にして、支持体10上に噴霧、吐着させるものである。本発明の製造方法においては、塗布液を、ファイバー状ではなく、微細な液滴として噴霧することができることが大きな特徴である。塗布液を微細な液滴として、支持体10表面に供給することにより、極めて均一性の高い凸部形成を、乾燥負荷なく、高速で形成することができる。
次に、図10を用いて、スロットノズルスプレイ部とそこで形成される液滴の形成及び飛翔状態を説明する。
図10において、塗布液ノズルCより吐出された塗布液Eは、塗布液ノズルCの両サイドに近接して設けられたガスノズルDより供給される圧縮空気Gにより、細分化、液滴化され球形に近い液滴粒子50となり、飛翔し、ギャップL5を隔てた支持体10表面に均一に着弾する。支持体10上に着地する塗布液の液滴粒子50の面積範囲は、常に均一であることが好ましいが、特に、搬送方向における長さ(図中、落下長さL5と記載)が塗布幅にわたって均一であることが好ましい。また、塗布液ノズルCの開口端を基点として被塗布体に対し、噴霧される液滴群の広がり角度θは、塗布幅にわたって均一であることが好ましい。
〈FMスクリーニング法〉
本発明において、凸部の配置は、FMスクリーニング等の方法により、ランダムは配置とされることが好ましい。
FMスクリーニング法とはドットとドットの間隔すなわち周期性(frequency)を変調する(modulate)すること、基本ドットを打つ頻度(ドットの密度)で濃淡を表現する方法である。FMスクリーニング法は、ランダム・スクリーニング法またストカスティック・スクリニーング法と呼ばれることもある。FMスクリーニング法とは、ドットとドットの間隔すなわち周期性を変調する方法を指す。具体的には、クリスタル・ラスター・スクリーニング法(アグファ・ゲバルト社)、ダイヤモンド・スクリーン法(ライノタイプ・ヘル社)、クラス・スクリーニング法およびフルトーン・スクリーニング法(サイテックス社)、ベルベット・スクリーニング法(ウグラ・コーハン社)、アキュトーン・スクリーニング法(ダネリー社)、メガドット・スクリーニング法(アメリカン・カラー社)、クリア・スクリーニング法(シーカラー社)、モネット・スクリーニング法(バルコ社)等が知られている。これら方法はいずれもドット発生のアルゴリズムは異なっているが、ドット密度の変化により濃淡を表現する方法であり、FMスクリーニング法の種々の態様であるということができる。
FMスクリーニングでは、インクが乗るドットのサイズは一定とし、画像の濃度に応じてドットの出現頻度が変化する。FMスクリーニングにおける各ドットのサイズはいわゆる網点に比べて小さいので、必要とするパターンを高分解能で再現することが可能である。FMスクリーニングにおけるドットは、いわゆる網点とは異なり、ドットの配列が周期的ではない。FMスクリーニングでは、ドットの配列が周期的でないので、モアレは生じないという特徴を持っている。
凸部形成方法は、前述のフレキソ法、スクリーン印刷、インクジェット法、スプレイ加工に限定されるものではなく、グラビア印刷法、平版印刷法等、所望のパターンを形成できる方法であれば何れでも良いが、フレキソ印刷法は生産速度が速いこと、微小な凸部を形成できることから、またインクジェット法は凸部の存在パターンをフレキシブルに変更できること、凸部の断面形状をお椀状に形成でき、透明樹脂層を設けたあとの表面形状をなだらかな凹凸にしやすいこと等で優れている。
本発明の凸部状の低屈折率層は、離散的で支持体表面全体を覆わない凸部により形成されることが好ましい。該凸部は、結合していない独立した凸部が50%以上、望ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上存在し、該凸部が支持体表面に設けるハードコート層全体の面積に対し50%以上被覆することが好ましく、85%以上被覆することがより好ましく、90%以上の面積を被覆することが特に好ましい。また、凸部状に形成される低屈折率層が複数回の印刷、インクジェットまたはスプレイ加工により形成されることが好ましい。
図11は、ハードコート層上に形成される本発明に好ましい凸部状の低屈折率層の模式図である。基材フィルム10表面に設けられたハードコート層11上に凸部状の低屈折率層12が塗設されている様子を示している。
図11(a)は凸部の斜視図であり、図11(b)は凸部の断面図である。凸部の高さは図中eで示されるものであり凸部頂点と隣接する凹部底との高低差をいい、その高さは好ましくは0.5〜5μmである。0.5μm未満では防眩性の効果が得られ難く、5μmを超えると視認性においてざらつき感が増すため好ましくない。凸部の高さは市販の触針式表面粗さ測定機或いは市販の光学干渉式表面粗さ測定機等によって測定することが出来る。例えば、光学干渉式表面粗さ測定機によって、一定の範囲内について凹凸を2次元的に測定し、凹凸を底部側より等高線のごとく色分けして表示する。ここで各凸部の隣接する凹部底を基準としたその高さを求め平均値とする。
凸部の大きさとは図中fで示されるものであり、上記市販の光学干渉式表面粗さ測定機等を用いて、凹凸を底部側より等高線のごとく色分けした時に凹部底を基準として凸部の高さが5%高くなった時の凸部長辺を凸部の大きさと定義しその平均値で示す。この時に、本発明の凸部の大きさは1〜30μmであることが好ましく、1μm未満では防眩性の効果が得られ難く、30μmを超えると視認性においてざらつき感が増すため好ましくない。
更に形成された凸部状の低屈折率層有する防眩性反射防止フィルム表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm以下であり、かつ平均山谷間隔(Sm)が5〜200μm以下であるように凸部形成を制御することが好ましい。
凸部の平均山谷間隔(Sm)は5〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30〜150μmである。5μm未満でも、200μmを超えても防眩性の効果が小さくなり好ましくない。凸部間の平均距離は触針式表面粗さ測定機などにより測定出来、例えばダイヤモンドからなる先端部を頂角55度の円錐形とした直径1mmの測定針を介して凹凸構造面上を一定方向に3mmの長さで走査し、その場合の測定針の上下方向の移動変化を測定してそれを記録した表面粗さ曲線として知見を得ることが出来、その結果より凸部間の距離を測定し平均値を求めることが出来る。或いは前述のごとく光学干渉式表面粗さ測定機によっても測定することが出来る。
上記、凸部の高さ、大きさ、平均山谷間隔(Sm)はいずれも凸部100個を測定したものの平均を求めればよい。
本発明に係る凸部状の低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム表面は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さRaが0.01〜0.5μmであることが好ましく、好ましくはRaが0.07〜0.5μm、最も好ましくはRaが0.1〜0.5μmである。例えば、防眩性を強くする部分はRaを大きくし、逆は小さくする。例えばRaで0.05μm以上異ならせることも出来る。
本発明で規定する中心線平均粗さ(Ra)は、JIS B0601により定義され、下式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
中心線平均粗さ(Ra)の測定方法としては、25℃、65%RH環境下で測定試料同士が重なり合わない条件で24時間調湿したのち、上記環境下で測定して求めることが出来る。ここでいう重なり合わない条件とは、例えば、試料のエッジ部分を高くした状態で巻き取る方法や試料と試料の間に紙を挟んで重ねる方法、厚紙等で枠を作製しその四隅を固定する方法のいずれかである。用いることの出来る測定装置としては、例えば、WYKO社製 RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることが出来る。
図12は、本発明に係る凸部形成の一例を示した断面図と平面図の模式図である。支持体上にまずハードコート層を設け、その表面上に第1低屈折率層をパターン状に凸部状に形成し、半硬化または硬化固定後、更に第2低屈折率層を所望のパターン状に凸部状に形成し硬化固定するフローを示している。第1低屈折率層をパターン状に凸部状に形成することで、本発明の効果を得ることが出来るが、第1低屈折率層上に更に第2低屈折率層を凸部状に形成することで、ぎらつきやモアレの発生を抑えることが出来好ましい。
図13は基材フィルム上にフレキソ印刷により(a)一回、及び(b)複数回のフレキソ印刷で凸部形成を行う製造方法の一例である。詳しくは、基材フィルム上にハードコート層を塗布方式で塗設した後、フレキソ印刷で凸部状の低屈折率層を形成する製造工程の一例を示してある。
図13(a)において、ロール501より繰り出された基材フィルム502は、搬送されて、第1コータステーションAで、押出し方式の第1コータ503によりハードコート層を塗設する。このとき、ハードコート層は単層構成でも、複数から構成されている層でもよい。また、幅手方向で膜厚を変更して塗設してもよい。ハードコート層を塗設した基材フィルム502は、次いで乾燥ゾーン505Aで乾燥が行われる。乾燥は、基材フィルム502の両面より、温湿度が制御された温風により乾燥が施される。ハードコート層にバインダーとして活性エネルギー線硬化型樹脂を用いた場合には、乾燥後、活性エネルギー線照射部506Aで、活性エネルギー線、例えば紫外線等を照射して硬化させたり、或いは照射量や照射条件を制御してハーフキュア状態とすることも出来る。活性エネルギー線照射部506Aで基材フィルム502は、20〜120℃に温度制御されたバックロールに巻いた状態で照射することも出来る。
次いで、フレキソ印刷を用いた低屈折率層を設けるフレキソ印刷部Bに搬送されるが、ハードコート層は、ハーフキュア状態であることが好ましい。インキ供給タンク508から低屈折率層形成インキ液がアニロックスロール510へ供給され、フレキソ印刷部である微細凹凸構造を有する樹脂版509にインキが転移される。
また、転移印刷による衝撃によって凸部の形状が大きく変形したり、つぶれないようにゆるやかに転移印刷させることも好ましく、例えばインキ粘度、樹脂版のゴム硬度、印刷速度等を調整することも好ましい。
転移印刷したインキは、活性エネルギー線硬化型樹脂を用いている場合には、フレキソ印刷部である樹脂版509の後に配置されている活性光線照射部506Bで、活性光線、例えば紫外線等を照射して硬化させる。また、インキが熱硬化性樹脂を用いている場合には、乾燥ゾーン505B、例えば、ヒートプレートにより加熱、硬化される。また、バックロール504Bをヒートロールとして加熱する方法も好ましい。
フレキソ印刷部Bにおいて、活性エネルギー線照射部506Bの照射光が、樹脂版509のインキに直接影響を与えないように、活性エネルギー線照射部506Bと樹脂版509とを適度な間隔で配置する、或いは活性エネルギー線照射部506Bと樹脂版509との間に、遮光壁等を設置することが好ましい。また、乾燥ゾーン505Bの熱が、樹脂版509のインキに直接影響を与えないように、樹脂版509を断熱カバーで被覆する、或いは図で示すように、乾燥ゾーン505Bの乾燥風が遮断されるような仕切りを設置することが好ましい。
転移印刷したインキにより形成された微細凹凸構造が維持出来る程度に硬化処理を行った基材フィルム502は、乾燥ゾーン505Bで不要な有機溶媒等を蒸発させた後、更に活性エネルギー線照射部506Cで、活性エネルギー線を照射して、硬化を完了させる。
活性エネルギー線照射部506Cの部分では、20〜120℃に温度制御されたバックロール504C上の基材フィルム502に活性エネルギー線を照射することが好ましい。
図13(b)は、複数回のフレキソ印刷で凸部形成を行う方法の一例であり、図13(a)のフレキソ印刷部Bの後に樹脂版の径を変えたフレキソ印刷部Cを設置し、2回の印刷を行う製造フローを示している。
本発明のフレキソ印刷による凸部形成方法は、基材フィルムを1〜500m/min、好ましくは10〜300m/minで移送しながら形成することが好ましい。
インキを転移印刷させる際の基材フィルムは帯電に斑がないことが好ましく、直前で徐電することが好ましく、或いは均一に帯電させてもよい。
また、インキを転移印刷させて形成した微細凹凸構造をヘイズ、透過鮮明度などの防眩性を測定し、所定の値であることを確認し、ずれや変動が確認された場合、その結果をフィードバックしてインキの調整や樹脂版の交換を行うことが好ましい。測定は、全ての凹凸を形成し樹脂を硬化させた後に行うことが好ましく、凹凸形成の途中で行ってもよい。例えば、比較的大きな凹凸を形成した後とその後のより微細な凹凸を形成した後の測定を行うことで、さらに適切なフィードバック制御を行うことが出来る。
(低屈折率層)
本発明は、支持体上にハードコート層と凸部状に形成された低屈折率層とを有することが特徴であり、該凸部は前記印刷法、インクジェット法またはスプレイ加工等により形成されるものである。以下、低屈折率層形成組成物である低屈折率層形成インキについて説明する。
本発明の低屈折率層は凸部がパターン状に形成されており、特に本発明においては、低屈折率層の屈折率は1.5以下であり、凸部状に形成された低屈折率層が少なくとも活性エネルギー線硬化型材料と低屈折率微粒子とを含有するか、または少なくともゾルゲル素材と低屈折率微粒子とを含有することが好ましい態様である。
中でも、本発明に用いる低屈折率微粒子は外殻層を有し内部が多孔質または空洞となっている中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
本発明の低屈折率層としては、活性エネルギー線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう)の架橋からなる低屈折率層、ゾルゲル法による低屈折率層、及び低屈折率微粒子とバインダーポリマーを用い、粒子間または粒子内部に空隙を有する低屈折率層等を用いることが好ましい。低屈折率層の屈折率は、低ければ反射防止性能が良化するため好ましいが、低屈折率層の強度付与の観点では困難となる。このバランスから、低屈折率層の屈折率は1.3〜1.5であることが好ましく、1.35〜1.49であることがさらに好ましい。
架橋前の含フッ素樹脂として、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることができる。含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入できることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、もしくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤もしくはエポキシ基と熱酸発生剤等の相み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤もしくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、活性エネルギー線(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、活性エネルギー線硬化型である。本発明では活性エネルギー線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
また上記モノマー加えて、含フッ素ビニルモノマー及び架橋性基付与のためのモノマー以外のモノマーを併用して形成された含フッ素共重合体を架橋前の含フッ素樹脂として用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。また、含フッ素共重合体中に、滑り性、防汚性付与のため、ポリオルガノシロキサン骨格や、パーフルオロポリエーテル骨格を導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと上記のモノマーとの重合、末端にラジカル発生基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルによる上記モノマーの重合、官能基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと、含フッ素共重合体との反応等によって得られる。
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
含フッ素共重合体は、これらモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合法等の手段により重合することにより得ることができる。
架橋前の含フッ素樹脂は、市販されており使用することができる。市販されている架橋前の含フッ素樹脂の例としては、サイトップ(旭硝子製)、テフロン(登録商標)AF(デュポン製)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子製)、オプスター(JSR製)等が挙げられる。
また、低屈折率層形成インキとして、各種ゾルゲル素材を用いることも好ましい。このようなゾルゲル素材としては、金属アルコレート(シラン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等のアルコレート)、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることができる。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。また、各種の官能基を有するオルガノアルコキシシラン(ビニルトリアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキジシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン等)、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等)を用いることも好ましい。特にフッ素含有のシラン化合物を用いることは、層の低屈折率化及び撥水・撥油性付与の点で好ましい。
低屈折率層として、無機もしくは有機の微粒子を用い、微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして形成した層を用いることも好ましい。微粒子の平均粒径は、0.5〜200nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、3〜70nmであることがさらに好ましく、5〜40nmの範囲であることが最も好ましい。微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。
無機微粒子としては、非晶質であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、Pb及びNiが好ましく、Mg、Ca、B及びSiがさらに好ましい。二種類の金属を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。
無機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することができる。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。ミクロボイドを有する(多孔質)無機微粒子は、ゾル−ゲル法(特開昭53−112732号、特公昭57−9051号に記載)または析出法(APPLIED OPTICS,27巻,3356頁(1988)記載)により、分散物として直接合成することができる。また、乾燥・沈澱法で得られた粉体を、機械的に粉砕して分散物を得ることもできる。市販の多孔質無機微粒子(例えば、二酸化ケイ素ゾル)を用いてもよい。ミクロボイドを有する無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が好ましい。
有機微粒子も非晶質であることが好ましい。有機微粒子は、モノマーの重合反応(例えば乳化重合法)により合成されるポリマー微粒子であることが好ましい。有機微粒子のポリマーはフッ素原子を含むことが好ましい。ポリマー中のフッ素原子の割合は、35〜80質量%であることが好ましく、45〜75質量%であることがさらに好ましい。また、有機微粒子内に、例えば、粒子を形成するポリマーを架橋させ、体積を縮小させることによりミクロボイドを形成させることも好ましい。粒子を形成するポリマーを架橋させるためには、ポリマーを合成するためのモノマーの20モル%以上を多官能モノマーとすることが好ましい。多官能モノマーの割合は、30〜80モル%であることがさらに好ましく、35〜50モル%であることが最も好ましい。上記有機微粒子の合成に用いられるモノマーとしては、含フッ素ポリマーを合成するために用いるフッ素原子を含むモノマーの例として、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アクリル酸またはメタクリル酸のフッ素化アルキルエステル類及びフッ素化ビニルエーテル類が挙げられる。フッ素原子を含むモノマーとフッ素原子を含まないモノマーとのコポリマーを用いてもよい。フッ素原子を含まないモノマーの例としては、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル)、スチレン類(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル)、アクリルアミド類(例えば、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド類及びアクリルニトリル類が挙げられる。多官能モノマーの例としては、ジエン類(例えば、ブタジエン、ペンタジエン)、多価アルコールとアクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、多価アルコールとメタクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート)、ジビニル化合物(例えば、ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルベンゼン)、ジビニルスルホン、ビスアクリルアミド類(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びビスメタクリルアミド類が挙げられる。
粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することができる。なお、粒径が等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填すると、26体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。粒径が等しい球状微粒子を単純立方充填すると、48体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。実際の低屈折率層では、微粒子の粒径の分布や粒子内ミクロボイドが存在するため、空隙率は上記の理論値からかなり変動する。
本発明の低屈折率層の空隙率は3〜50%であることが好ましく、粒子の形状、粒径を選ぶことによりこの範囲の空隙率を得ることが出来る。
空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーター、例えば、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより測定することができる。
空隙率を増加させると、低屈折率層の屈折率が低下する。微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成と、微粒子の粒径を調整することで、粒子間ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節できる。さらに、微粒子の粒径を均一にすることで、粒子間ミクロボイドの大きさも均一である光学的に均一な低屈折率層を得ることができる。これにより、低屈折率層は微視的にはミクロボイド含有多孔質膜であるが、光学的あるいは巨視的には均一な膜にすることができる。粒子間ミクロボイドは、微粒子及びポリマーによって低屈折率層内で閉じていることが好ましい。閉じている空隙には、低屈折率層表面に開かれた開口と比較して、低屈折率層表面での光の散乱が少ないとの利点もある。
ミクロボイドを形成することにより、低屈折率層の巨視的屈折率は、低屈折率層を構成する成分の屈折率の和よりも低い値になる。層の屈折率は、層の構成要素の体積当りの屈折率の和になる。微粒子やポリマーのような低屈折率層の構成成分の屈折率は1よりも大きな値であるのに対して、空気の屈折率は1.00である。そのため、ミクロボイドを形成することによって、屈折率が非常に低い低屈折率層を得ることができる。
低屈折率層形成インキは、5〜50質量%の量のポリマーを含むことが好ましい。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層形成インキの全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、あるいは(3)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。(1)の表面処理剤に結合させるポリマーは、(2)のシェルポリマーまたは(3)のバインダーポリマーであることが好ましい。(2)のポリマーは、低屈折率層形成インキの調製前に、微粒子の周囲に重合反応により形成することが好ましい。(3)のポリマーは、低屈折率層形成インキにモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に、重合反応により形成することが好ましい。上記(1)〜(3)のうちの二つまたは全てを組み合わせて実施することが好ましく、(1)と(3)の組み合わせ、または(1)〜(3)全てを組み合わせで実施することが特に好ましい。(1)表面処理、(2)シェル及び(3)バインダーについて順次説明する。
(1)表面処理
微粒子(特に無機微粒子)には、表面処理を実施して、ポリマーとの親和性を改善することが好ましい。表面処理は、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類できる。化学的表面処理のみ、または物理的表面処理と化学的表面処理の組み合わせで実施することが好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。微粒子が二酸化ケイ素からなる場合は、シランカップリング剤による表面処理が特に有効に実施できる。具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
また、ケイ素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ケイ素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
2種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリングを用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例えば、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)及びその加水分解物が挙げられる。カップリング剤による表面処理は、微粒子の分散物に、カップリング剤を加え、室温から60℃までの温度で、数時間から10日間分散物を放置することにより実施できる。表面処理反応を促進するため、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、オルトケイ酸、リン酸、炭酸)、有機酸(例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、フェノール、ポリグルタミン酸)、またはこれらの塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩)を、分散物に添加してもよい。
(2)シェル
シェルを形成するポリマーは、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが好ましい。フッ素原子を主鎖または側鎖に含むポリマーが好ましく、フッ素原子を側鎖に含むポリマーがさらに好ましい。ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルが好ましく、フッ素置換アルコールとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸とのエステルが最も好ましい。シェルポリマーの屈折率は、ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い低下する。低屈折率層の屈折率を低下させるため、シェルポリマーは35〜80質量%のフッ素原子を含むことが好ましく、45〜75質量%のフッ素原子を含むことがさらに好ましい。フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成することが好ましい。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例としては、フルオロオレフィン(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、フッ素化ビニルエーテル及びフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが挙げられる。
シェルを形成するポリマーは、フッ素原子を含む繰り返し単位とフッ素原子を含まない繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。フッ素原子を含まない繰り返し単位は、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの例としては、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート)、スチレン及びその誘導体(例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル)、アクリルアミド(例えば、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド及びアクリロニトリルが挙げられる。
後述する(3)のバインダーポリマーを併用する場合は、シェルポリマーに架橋性官能基を導入して、シェルポリマーとバインダーポリマーとを架橋により化学的に結合させてもよい。シェルポリマーは、結晶性を有していてもよい。シェルポリマーのガラス転移温度(Tg)が低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、低屈折率層内のミクロボイドの維持が容易である。ただし、Tgが低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、微粒子が融着せず、低屈折率層が連続層として形成されない(その結果、強度が低下する)場合がある。その場合は、後述する(3)のバインダーポリマーを併用し、バインダーポリマーにより低屈折率層を連続層として形成することが望ましい。微粒子の周囲にポリマーシェルを形成して、コアシェル微粒子が得られる。コアシェル微粒子中に無機微粒子からなるコアが5〜90体積%含まれていることが好ましく、15〜80体積%含まれていることがさらに好ましい。二種類以上のコアシェル微粒子を併用してもよい。また、シェルのない無機微粒子とコアシェル粒子とを併用してもよい。
(3)バインダー
バインダーポリマーは、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例としては、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が挙げられる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、架橋基は、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。バインダーポリマーの重合反応及び架橋反応に使用する重合開始剤は、熱重合開始剤や、光重合開始剤が用いられるが、光重合開始剤の方がより好ましい。光重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例としては、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが挙げられる。ベンゾイン類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが挙げられる。ベンゾフェノン類の例としては、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが挙げられる。ホスフィンオキシド類の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。
バインダーポリマーは、低屈折率層形成インキにモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に重合反応(必要ならばさらに架橋反応)により形成することが好ましい。低屈折率層形成インキに、少量のポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂)を添加してもよい。
更に、本発明の低屈折率層形成インキには微粒子として、低屈折率化の為に下記中空シリカ系微粒子を含有することも好ましい。
中空シリカ系微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層形成インキには(I)複合粒子または(II)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
尚、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される中空微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの中空微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、後述するインキ液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマー等が容易に複合粒子の内部に内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることが出来る。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表したときのモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、さらに屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
尚、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例表した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような中空微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。
低屈折率層形成インキには、前述した成分(無機微粒子、ポリマー、分散媒体、重合開始剤、重合促進剤)以外に、重合禁止剤、レベリング剤、増粘剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、帯電防止剤や接着付与剤を添加してもよい。
本発明に係る低屈折率層形成インキは有機溶媒を含有することが好ましい。具体的な有機溶媒の例としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
有機溶媒の含有量は、低屈折率層形成インキ中の固形分濃度の1〜4質量%であることが好ましい。有機溶媒は印刷やインクジェットによる塗布ムラを防止して均一膜厚とするために1質量%以上が好ましく、4質量%を超えると乾燥負荷が大きくなり、乾燥装置の大型化、長時間化となり好ましくない。
本発明に係る低屈折率層形成インキの粘度は、前記各印刷法、インクジェット法、スプレイ加工等の塗布方法により、上記材料を用いて各方法に適宜最適な粘度に調整することが好ましい。特に有機溶媒の含有量により調整することが有効である。
本発明に使用する活性エネルギー線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性させるエネルギー源であれば制限なく使用出来るが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2〜10000mJ/cm2が好ましく、更に好ましくは、100mJ/cm2〜2000mJ/cm2であり、特に好ましくは、400mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。
《ハードコート層》
本発明の防眩性反射防止フィルムは支持体上にハードコート層を設ける。ハードコート層の塗設方法としては、グラビアコーター、ダイコーター等後述のものを用いることができる。ハードコート層の膜厚は、ドライ膜厚として3〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜15μmである。3μm未満では、耐擦傷性が不十分であり、20μmを超えると平面性が劣化する。
本発明に係るハードコート層は活性エネルギー線硬化樹脂層であることが好ましい。
活性エネルギー線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
これら紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
こうして得た硬化樹脂層には耐擦傷性、滑り性や屈折率を調整するために無機化合物または有機化合物の微粒子を含んでもよい。
ハードコート層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.001〜0.1μmのハードコート層であることが好ましい。
これらのハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することができる。塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理を行う。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜150mJ/cm2であるが、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
ハードコート層は塗布乾燥後に、紫外線を照射するのがよく、必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜1分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、さらに好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによってさらに平面性に優れたフィルムを得ることができる。
ハードコート層塗布液には溶媒が含まれていてもよく、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであってもよい。塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中でもから適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
さらにハードコート層に後述するフッ素系またはシリコーン系界面活性剤を含有させることも好ましい。これらは下層への塗布性を高める。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
シリコン系界面活性剤としては、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤が好ましい。
非イオン面活性剤は、水溶液中でイオンに解離する基を有しない系界面活性剤を総称していうが、疎水基のほか親水性基として多価アルコール類の水酸基、また、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン)等を親水基として有するものである。親水性はアルコール性水酸基の数が多くなるに従って、またポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖)が長くなるに従って強くなる。本発明に係わる非イオン界面活性剤は疎水基としてジメチルポリシロキサンを有することに特徴がある。
疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤を用いると、紫外線硬化樹脂層や低屈折率層のムラや膜表面の防汚性が向上する。ポリメチルシロキサンからなる疎水基が表面に配向し汚れにくい膜表面を形成するものと考えられる。他の界面活性剤を用いることでは得られない効果である。
これらの非イオン活性剤の具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 SILWET L−77、L−720、L−7001、L−7002、L−7604、Y−7006、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2105、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2120、FZ−2122、FZ−2123、FZ−2130、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164、FZ−2166、FZ−2191等が挙げられる。
また、SUPERSILWET SS−2801、SS−2802、SS−2803、SS−2804、SS−2805等が挙げられる。
また、これら、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン系の界面活性剤の好ましい構造としては、ジメチルポリシロキサン構造部分とポリオキシアルキレン鎖が交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマーであることが好ましい。主鎖骨格の鎖長が長く、直鎖状の構造であることから、優れている。親水基と疎水基が交互に繰り返したブロックコポリマーであることにより、シリカ微粒子の表面を1つの活性剤分子が、複数の箇所で、これを覆うように吸着することが出来るためと考えられる。
これらの具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 ABN SILWET FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、疎水基がパーフルオロカーボンチェインをもつ界面活性剤を用いることが出来る。種類としては、フルオロアルキルカルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(ω−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−(3−パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)等が挙げられる。本発明では非イオン界面活性剤が好ましい。
これらのフッ素系界面活性剤はメガファック、エフトップ、サーフロン、フタージェント、ユニダイン、フローラード、ゾニール等の商品名で市販されている。
好ましい添加量は紫外線硬化樹脂層の塗布液に含まれる固形分当たり0.01〜3.0%であり、より好ましくは0.02〜1.0%である。
しかしながら、他の界面活性剤も併用して用いてもよく、適宜、例えばスルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、リン酸エステル塩系等のアニオン界面活性剤、また、ポリオキシエチレン鎖親水基として有するエーテル型、エーテルエステル型等の非イオン界面活性剤等を併用してもよい。
また、ハードコート層は、2層以上の重層構造を有し、その中の1層は例えば導電性微粒子、または、イオン性ポリマーを含有する所謂帯電防止層としてもよいし、また、種々の表示素子に対する色補正用フィルタとして色調調整機能を有する色調調整剤を含有させてもよいし、また電磁波遮断剤または赤外線吸収剤等を含有させそれぞれの機能を有するようにすることは好ましい。
《支持体》
本発明に用いられる支持体は透明フィルムであることが好ましく、更に製造が容易であること、活性エネルギー線硬化型樹脂層との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。
本発明でいう透明とは、可視光の透過率60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはガラス板等を挙げることが出来る。中でも、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、及びセルロースエステル系フィルムが好ましい。
本発明で好ましく用いられるポリカーボネート系フィルムを構成するポリカーボネートは、種々のものを用いることが出来るが、化学的性質及び物性の点から芳香族ポリカーボネートが好ましく、特にビスフェノールA系が好ましい。更に好ましくはビスフェノールAにベンゼン環、シクロヘキサン環、脂肪族炭化水素基などを導入したビスフェノールA誘導体中でも中央炭素に対して非対称に導入された誘導体を用いて得られた単位分子内の異方性を減少させた構造のポリカーボネートが好ましい。例えば、ビスフェノールAの中央炭素の2個のメチル基をベンゼン環に置換したもの、ビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環の一つの水素をメチル基、フェニル基などで中央炭素に対し非対称に置換したものを用いて得られるポリカーボネートが挙げられる。
具体的には4,4′−ジヒドロキシジフェニルアルカン又はこれらのハロゲン置換体からホスゲン法又はエステル交換法によって得られるものであり、例えば4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルブタン等を挙げることが出来る。
本発明において使用するポリカーボネート系フィルムの作製方法は特に限定されるものではない。即ち押出し法、溶媒キャスト法及びカレンダー法等いずれによってもよい。本発明においては1軸延伸フィルム或いは2軸延伸フィルムを使用してもよいが、表面精度が優れるという点では溶媒キャスト法で作製したフィルムが、光学的等方性、異方性が小さいという点では押出し法で作製したフィルムが更に好ましい。
本発明において使用されるポリカーボネートはガラス転移点(Tg)が110℃以上であって、吸水率(23℃水中、24時間の条件で測定した値)が0.3%以下のものを使用するのが良い。より好ましくはTgが120℃以上であって、吸水率が0.2%以下のものが良い。
本発明に好ましく用いることの出来るポリエステル系フィルムを構成するポリエステルとしては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルである。
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることが出来る。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることが出来る。
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸及び/または2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコール及び/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
本発明に用いられるポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、さらに他の共重合成分が共重合されていても良いし、他のポリエステルが混合されていても良い。これらの例としては、先に挙げたジカルボン酸成分やジオール成分、またはそれらから成るポリエステルを挙げることが出来る。
またフィルムの耐熱性を向上する目的では、ビスフェノール系化合物、ナフタレン環またはシクロヘキサン環を有する化合物を共重合することが出来る。これらの共重合割合としては、ポリエステルを構成する二官能性ジカルボン酸を基準として、1〜20モル%が好ましい。
また本発明で好ましく用いられるノルボルネン系樹脂フィルムとは、ノルボルネン構造を有する非晶性ポリオレフィンフィルムで、例えば三井石油化学(株)製のAPOや日本ゼオン(株)製のゼオネックス、JSR(株)製のARTON等がある。
本発明においては、中でも特にセルロースエステル系フィルムを用いることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。市販のセルロースエステルフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタック、製品名KC8UX2MW、KC4UX2MW、KC8UY、KC4UY、KC5UN、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5(コニカミノルタオプト(株)製)が、製造上、コスト面、透明性、接着性等の観点から好ましく用いられる。これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
以下、本発明に特に好ましく用いられるセルロースエステルフィルムについて更に詳細に説明する。
(セルロースエステルフィルム)
本発明に用いられるセルロースエステルは、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同08−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることが出来る。
セルロースエステルの分子量が小さ過ぎると引裂強度が低下するが、分子量が大き過ぎるとセルロースエステルの溶解液の粘度が高くなり過ぎるため生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で70000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものが更に好ましい。
セルローストリアセテートの場合には、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。平均酢化度が小さいと寸法変化が大きく、また偏光板の偏光度が低下する。平均酢化度が大きいと溶剤に対する溶解度が低下し生産性が下がる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
この内特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているのものである。これらは公知の方法で合成することが出来る。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロ−スエステルを単独或いは混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンタ−とすることがある)から合成されたセルロ−スエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
本発明にセルロースエステルフィルムを用いる場合、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来る。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることが出来る。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる。好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトール、であることが好ましい。多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることが出来る。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上もつ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸であることが好ましい。多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。また、多価アルコール中のOH基はカルボン酸で全てエステル化しても良いし、一部をOH基のままで残しても良い。
これらの可塑剤は単独または併用するのが好ましい。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
以下に本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ製)
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる上記の紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
また、特願平11−295209号に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、基材フィルムに用いた時、フィルムの面品質に優れ、塗布性にも優れ好ましい。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
また、特開平6−148430号の一般式(1)または一般式(2)、特願2000−156039の一般式(3)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等が市販されている。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは微粒子を含有しているのが好ましく、微粒子としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子には有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類(特にメチル基を有するアルコキシシラン類)、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜16nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル社製のAEROSIL(アエロジル)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはAEROSIL(アエロジル)200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばAEROSIL(アエロジル)200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。本発明において、微粒子はドープ調製時、セルロースエステル、他の添加剤及び有機溶媒とともに含有させて分散してもよいが、セルロースエステル溶液とは、別に微粒子分散液のような十分に分散させた状態でドープを調製するのが好ましい。微粒子を分散させるために、前もって有機溶媒にひたしてから高剪断力を有する分散機(高圧分散装置)で細分散させておくのが好ましい。その後により多量の有機溶媒に分散して、セルロースエステル溶液と合流させ、インラインミキサーで混合してドープとすることが好ましい。この場合、微粒子分散液に紫外線吸収剤を加え紫外線吸収剤液としてもよい。
上記の劣化防止剤、紫外線吸収剤及び/または微粒子は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムのドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。特に酢酸メチルが好ましい。
次に、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
セルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻きとる工程により行われる。
ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃すぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独でも併用でもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルがあげられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来る。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高すぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムをおき、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察したときに反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下である事が好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。又、0.01mm以下の輝点も少ないほうが好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
セルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向に延伸し、さらにウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが特に好ましい。縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍が更に好ましい。縦方向及び横方向延伸により面積が1.12倍〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15倍〜1.32倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることが出来る。縦方向と横方向の延伸倍率のいずれかが1.05倍未満ではハードコート層を形成する際の紫外線照射による平面性の劣化が大きく、又、延伸倍率が1.3倍を超えても平面性が劣化し、ヘイズも増加する。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことが出来るが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜150℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため更に好ましい。
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。より好ましくは10〜70μmであり、さらに好ましくは20〜60μmである。最も好ましくは35〜60μmである。
セルロースエステルフィルムは、幅1〜4mのものが好ましく用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.4〜2mである。4mを超えると搬送が困難となる。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、光透過率が90%以上、より好ましくは93%以上の透明フィルムであることが好ましい。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、その厚さが10〜100μmのものが好ましく、透湿性は、25℃、90±2%RHにおいて、200g/m2・24時間以下であることが好ましく、更に好ましくは、10〜180g/m2・24時間以下であり、特に好ましくは、160g/m2・24時間以下である。特には、膜厚10〜60μmで透湿性が上記範囲内であることが好ましい。ここで、フィルムの透湿性は、JIS Z 0208に記載の方法に従い測定する。
本発明の防眩性反射防止フィルムは、支持体上にに前記低屈折率層を設けた後、ロール状に巻き取った状態で50〜150℃、1〜30日の範囲で加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の期間は、設定される温度によって適宜決定すればよく、例えば、50℃であれば、好ましくは3日間以上30日未満の期間、150℃であれば1〜3日の範囲が好ましい。通常は、巻外部、巻中央部、巻き芯部の加熱処理効果が偏らないように、比較的低温に設定することが好ましく、50〜80℃付近で3〜7日間程度行うことが好ましい。加熱処理を安定して行うためには、温湿度が調整可能な場所で行うことが必要であり、塵のないクリーンルーム等の加熱処理室で行うことが好ましい。
上記防眩性反射防止フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、どのような材質のものであってもよいが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度に耐える耐熱性プラスチックであればどのようなものであっても良く、例えばフェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。またガラス繊維などの充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることが更に好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましい。
(偏光板)
偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の防眩性反射防止フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には該フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。本発明の防眩性反射防止フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、30〜300nm、Rtが70〜400nmの位相差を有していることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957、特願2002−155395記載の方法で作製することが出来る。或いは更にディスコチック液晶などの液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348記載の方法で光学異方性層を形成することが出来る。本発明の防眩性反射防止フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることが出来る。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明の光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
(表示装置)
本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の表示装置を作製することが出来る。本発明の防眩性反射防止フィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明の防眩性反射防止フィルムは平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜けなどもなく、その効果が長期間維持され、MVA型液晶表示装置では顕著な効果が認められる。特に、色むら、ぎらつきや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
〔セルロースエステルフィルム1の作製〕
以下のセルロースエステル、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子及び溶媒を用いてセルロースエステル溶液(ドープ)を調製し、溶液流延製膜法にてセルロースエステルフィルム1を作製した。
セルロースエステル(セルローストリアセテート、アセチル基置換度2.9、Mn=160000、Mw/Mn=1.8) 100kg
可塑剤(トリメチロールプロパントリベンゾエート) 5kg
可塑剤(エチルフタリルエチルグリコレート) 5kg
紫外線吸収剤(チヌビン109、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)
1.0kg
紫外線吸収剤(チヌビン171、チバスペシャルティーケミカルズ(株)製)
1.0kg
微粒子(アエロジルR972V、日本アエロジル(株)製) 0.3kg
溶媒(酢酸メチル) 440kg
溶媒(エタノール) 110kg
上記のセルロースエステル、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子及び溶媒を用いてセルロースエステル溶液(ドープ)を調製した。
次に、33℃に温度調整したセルロースエステル溶液を、ダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブという)に44℃の温風をあてて乾燥させ、剥離の残留溶媒量が120質量%で剥離し、剥離の際の張力をかけて1.1倍の縦延伸倍率となるように延伸し、次いで、残留溶媒量が35質量%から10質量%となる間にテンターでウェブ端部を把持し、幅手方向に1.1倍の延伸倍率となるように延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持した後、幅方向の張力を緩和させた後、幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで20分間搬送させて、乾燥を行い、幅1.5m、膜厚80μm、長さ3000mのセルロースエステルフィルム1を作製した。
〔微粒子添加による防眩性フィルム1の作製〕
上記セルロースエステルフィルム1の表面(B面側;流延製膜法において用いられるステンレスバンド等の支持体鏡面に接した面;支持体側)上に、下記のハードコート層用塗布液1を孔径20μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液を調製し、これをマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が0.1W/cm2で、照射量を0.1J/cm2として塗布層を硬化させ、厚さ5μmの防眩性ハードコート層を形成し防眩性フィルム1を作製した。下記凸部径、凸部高さ、Ra、Smの測定法により、WYKO社製光学干渉式表面粗さ測定機を用いて形成した凹凸について測定した結果、凸部の大きさは25μm、凸部の高さは0.8μm、平均表面粗さ(Ra)は0.55μmであった。また、凸部の平均山谷間隔(Sm)は77μmであった。
(ハードコート層塗布液1)
下記材料を攪拌、混合し、ハードコート層塗布液1とした。
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 200質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製))
25質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 110質量部
酢酸エチル 110質量部
合成シリカ微粒子 平均粒子径 1.8μm 40質量部
界面活性剤(シリコーン系界面活性剤;FZ2207(日本ユニカー製)10質量%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 固形分で0.6質量部
〔エンボス加工による防眩フィルム2の作製〕
上記セルロースエステルフィルム1の作製において、テンターによる延伸処理後、鋳型を設けたロール(凹凸形成後、凸部高さ1μm、凸部大きさ(長辺)10μm、凸部間距離50μmになるような微細凹凸構造を刻印したもの)とバックロールから構成される凹凸形成部で溶媒を含むフィルムを挟んでフィルムのB面(ステンレスバンド支持体に接していた側をB面とし、その反対側をA面とする。)側に鋳型を設けた熱ロールを押し当てて、A面側にはバックロールを配置し、両ロール間を通すことによってB面側に凹凸を形成した以外は同様にして、エンボス加工したセルロースエステルフィルム2を作製した。尚、凹凸形成部近傍には、除電ワイヤーを設置してフィルムの帯電を抑制した。
上記エンボス加工したセルロースエステルフィルム2の表面(B面側;流延製膜法において用いられるステンレスバンド等の支持体鏡面に接した面;支持体側)上に、下記のハードコート層用塗布液2を孔径20μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液を調製し、これをマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が0.1W/cm2で、照射量を0.1J/cm2として塗布層を硬化させ、厚さ5μmの防眩性ハードコート層を形成し防眩性フィルム2を作製した。
WYKO社製光学干渉式表面粗さ測定機を用いて形成した凹凸について測定した結果、凸部の大きさは20μm、凸部の高さは0.9μm、平均表面粗さ(Ra)は0.75μmであった。また、凸部の平均山谷間隔(Sm)は65μmであった。
(ハードコート層塗布液2)
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 60質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 40質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製))
4質量部
酢酸エチル 50質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 50質量部
シリコン化合物 0.5質量部
(BYK−307(ビックケミージャパン社製))
〔防眩性反射防止フィルムの作製〕
次いで、防眩フィルム1、2のハードコート層上に下記低屈折率層を塗設した。
(反射防止層の作製:低屈折率層)
下記の低屈折率層塗布組成物1を押出しコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させた後、紫外線を0.1J/cm2照射して硬化させ、更に120℃で5分間熱硬化させ、厚さ95nmとなるように低屈折率層を設け、防眩性反射防止フィルム1、2を作製した。尚、この低屈折率層の屈折率は1.37であった。
また作製した防眩性反射防止フィルムについて、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。反射防止性能は広い波長領域において反射率が小さいほど良好であるため、測定結果から450〜650nmにおける最低反射率を求めた。測定は、観察側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行い、フィルム裏面での光の反射を防止して、反射率の測定を行った。測定の結果、上記防眩性反射防止フィルムはいずれも反射率で0.7〜1.2の間に反射率を有し良好な結果を示した。
(低屈折率層塗布組成物1の調製)
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン289gとエタノール553gを混和し、これに0.15%酢酸水溶液157gを添加し、25℃のウォーターバス中で30時間攪拌することで加水分解物Aを調製した。
〈低屈折率層塗布組成物1〉
テトラエトキシシラン加水分解物A 110質量部
中空シリカ系微粒子(下記P−2)分散液 30質量部
KBM503(シランカップリング剤、信越化学(株)製) 4質量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 3質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 400質量部
イソプロピルアルコール 400質量部
〈中空シリカ系微粒子P−2分散液の調製〉
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ系微粒子(P−2)分散液を調製した。
この中空シリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
〔フレキソ印刷法による凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム3の作製〕
図13(a)の装置を用いて、上記作製したセルロースエステルフィルム1の表面(A面側;流延製膜法において用いられるステンレスバンド等の支持体鏡面に接した面;支持体側)上に、ハードコート層塗布液2をマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が0.1W/cm2で、照射量を0.1J/cm2として塗布層を硬化させ、厚さ5μmのハードコート層を形成した。次いで下記凸部状低屈折率層形成インキ1を孔径20μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して調製し、下記シームレス樹脂版1を装着してフレキソ印刷で凸部状低屈折率層を形成した。フレキソ印刷の印刷パターンはアグファゲバルト社のクリスタル・ラスター・スクリーニング法を用い、2400〜4000dpi、1〜10%濃度のパターンを用いた。
凸部形成後、乾燥ゾーン505Bにて90℃で乾燥の後、紫外線ランプ506Cを用い、紫外線の照度が0.1W/cm2で、照射量が0.1J/cm2で硬化させて、凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム3を作製した。
得られた凸部状低屈折率層はハードコート層表面の85%の面積を被覆していた。凸部の大きさは30μm、凸部の高さが1.0μmであり、かつ凸部状低屈折率層の平均表面粗さ(Ra)の測定を行った結果、0.45μmであり、凸部の平均山谷間隔(Sm)は75μmであった。
(シームレス樹脂版1の仕様)
感光性樹脂版:2−ヒドロキシエチルアクリレート98部とブタンジオールジアクリレート1部を反応して得られたコアとメタアクリル酸20部とN−ブチルアクリレート80部を反応させて得られたコアシェル型ミクロゲル(コア/シェル=2/1)71g、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート25g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン4gを混合して得られた感光性樹脂組成物を厚み2mmのポリエステルフィルムの上に塗布したのち、波長360nmの紫外線により、1000mJ/cmの露光を行いレーザー彫刻用印刷原版を得た。次いで下記レーザー彫刻条件で微細凹凸構造を彫刻し、樹脂版ロールに真空引きしながら装着し、全体を120℃20分間加熱を行ったところ継ぎ目が見えなくなりシームレス樹脂版になった。
樹脂版径は500mm、樹脂版のゴム硬度は50とした。ゴム硬度はJIS K 6253に記載の方法に準じてデュロメータで測定した。
(レーザー彫刻条件)
炭酸ガスレーザー出力:300W、50%出力
彫刻画像:印刷後として、凸部高さ1.0μm、凸部大きさ(長辺)30μm、凸部間距離80μmになるように、上記FMスクリーンパターンを用いて樹脂版上に微細凹凸構造を彫刻した。
アニロックスロール:800線/2.54cm、セル容積4ml/m2(ニューロング(株)製、ハニカムパターン)
インキ供給:鋼製ドクターブレード方式(図1参照)
(凸部状低屈折率層形成インキ1)
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 100質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 30質量部
中空シリカ系微粒子(前記P−2)分散液 70質量部
光重合開始剤(イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製))
10質量部
シリコン化合物(BYK−307(ビックケミージャパン社製)) 0.2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 100質量部
酢酸エチル 100質量部
〔フレキソ印刷法による凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム4の作製〕
下記凸状低屈折率層形成インキ2を用いた以外は防眩性反射防止フィルム3と同様にして、防眩性反射防止フィルム4を作製した。
得られた凸部状低屈折率層はハードコート層表面の86%の面積を被覆していた。また
凸部の大きさは29μm、凸部の高さが1.0μmであり、かつ凸部状低屈折率層の平均表面粗さ(Ra)の測定を行った結果、0.40μmであり、凸部の平均山谷間隔(Sm)は78μmであった。
(凸部状低屈折率層形成インキ2)
前記テトラエトキシシラン加水分解物A 100質量部
KBM503(シランカップリング剤、信越化学(株)製) 4質量部
中空シリカ系微粒子(前記P−2)分散液 70質量部
酢酸エチル 150質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 150質量部
シリコン化合物(BYK−307(ビックケミージャパン社製)) 0.2質量部
〔フレキソ印刷法による凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム5の作製〕
シームレス樹脂版の彫刻画像を印刷後として、凸部高さ0.8μm、凸部大きさ(長辺)25μm、凸部間距離70μmになるようにして作製したシームレス樹脂版2を用いた以外は防眩性反射防止フィルム4と同様にして、防眩性反射防止フィルム5を作製した。
得られた凸部状低屈折率層はハードコート層表面の92%の面積を被覆していた。また
凸部の大きさは23μm、凸部の高さが0.8μmであり、かつ凸部状低屈折率層の平均表面粗さ(Ra)の測定を行った結果、0.35μmであり、凸部の平均山谷間隔(Sm)は71μmであった。
〔フレキソ印刷法による凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム6の作製〕
図13(b)の装置を用いて、シームレス樹脂版1と、シームレス樹脂版の彫刻画像を印刷後として、凸部高さ0.3μm、凸部大きさ(長辺)15μm、凸部間距離100μmになるようにして作製したシームレス樹脂版3とを用いた以外は、防眩性反射防止フィルム4と同様にして、防眩性反射防止フィルム6を作製した。
得られた凸部状低屈折率層はハードコート層表面の95%の面積を被覆していた。また
凸部の大きさは28μm、凸部の高さが1.1μmであり、かつ凸部状低屈折率層の平均表面粗さ(Ra)の測定を行った結果、0.35μmであり、凸部の平均山谷間隔(Sm)は77μmであった。
〔インクジェット法による凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム7の作製
〕
上記作製したセルロースエステルフィルム1の表面(A面側;流延製膜法において用いられるステンレスバンド等の支持体鏡面に接した面;支持体側)上に、ハードコート層塗布液2をマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が0.1W/cm2で、照射量を0.1J/cm2として塗布層を硬化させ、厚さ5μmのハードコート層を形成した。次いで、凸部状低屈折率層形成インキ1を用いてインクジェット方式によりインク液滴として2〜16plで出射し、乾燥後0.2秒後に活性線照射部より紫外線の照度が0.1W/cm2で、照射量が0.1J/cm2で硬化させ、凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム7を作製した。
インクジェット出射装置は、ラインヘッド方式(図8の(a))を使用し、ノズル径が3.5μmのノズルを256個有するインクジェットヘッドを10基を準備した。インクジェットヘッドは図7に記載の構成のものを使用した。インク供給系は、インク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッド及び配管から構成されており、インク供給タンクからインクジェットヘッド部までは、断熱及び加温(40℃)し、出射温度は40℃、駆動周波数は20kHzで行った。
得られた凸部状低屈折率層はハードコート層表面の95%の面積を被覆していた。また
凸部の大きさは35μm、凸部の高さが0.9μmであり、かつ凸部状低屈折率層の平均表面粗さ(Ra)の測定を行った結果、0.30μmであり、凸部の平均山谷間隔(Sm)は85μmであった。
〔スクリーン印刷による凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム8の作製〕
上記作製したセルロースエステルフィルム1の表面(A面側;流延製膜法において用いられるステンレスバンド等の支持体鏡面に接した面;支持体側)上に、ハードコート層塗布液2をマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が0.1W/cm2で、照射量を0.1J/cm2として塗布層を硬化させ、厚さ5μmのハードコート層を形成した。次いで、凸部状低屈折率層形成インキ1を用いて、下記スクリーン版により、スクリーン印刷で凸部を形成した後、乾燥ゾーンにて90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い、紫外線の照度が0.1W/cm2で、照射量が0.1J/cm2で硬化させ凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム8を作製した。
(スクリーン版の作製)
ステンレスメッシュの織物をエアーストレッチャーによりスクリーン張力機で引っ張りスクリーンフレームに接着剤した後、感光乳剤をスクリーンメッシュにムラなく均一に塗布した。次に、フォトマスク(パターン原板)を感光乳剤面に密着させ、平行露光機でパターンを焼き付けた。これを自動現像装置により現像し、スクリーン版を得た。
このように得られた印刷版の枠にインクを入れ、スキージと呼ばれるヘラでスクリーンの上面を押し付けながら移動させインクを膜のない部分のスクリーン目を透過させ、被印刷物上面に押し出して印刷物を得た。
得られた凸部状低屈折率層はハードコート層表面の88%の面積を被覆していた。また凸部の大きさは31μm、凸部の高さが1.1μmであり、かつ凸部状低屈折率層の平均表面粗さ(Ra)の測定を行った結果、0.50μmであり、凸部の平均山谷間隔(Sm)は100μmであった。
〔スプレイ加工による凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム9の作製〕
上記作製したセルロースエステルフィルム1の表面(A面側;流延製膜法において用いられるステンレスバンド等の支持体鏡面に接した面;支持体側)上に、ハードコート層塗布液2をマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が0.1W/cm2で、照射量を0.1J/cm2として塗布層を硬化させ、厚さ5μmのハードコート層を形成した。次いで、凸部状低屈折率層形成インキ1を用いて、図9のスロットノズルスプレイ装置により凸部を形成した後、印刷部の下流に設けられた乾燥部で90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い、紫外線の照度が0.1W/cm2で、照射量が0.1J/cm2で硬化させ、防眩性反射防止フィルム9を作製した。
得られた凸部状低屈折率層はハードコート層表面の94%の面積を被覆していた。また
凸部の大きさは30μm、凸部の高さが1.0μmであり、かつ凸部状低屈折率層の平均表面粗さ(Ra)の測定を行った結果、0.45μmであり、凸部の平均山谷間隔(Sm)は90μmであった。
《測定、評価》
(凸部径、凸部高さ、Ra、Smの測定)
凸部径、凸部高さは上記作製したフィルム試料を用いて、WYKO社製光学干渉式表面粗さ測定機を用いて、約4000μm2の範囲(55μm×75μm)について2次元的に測定し、凸部を底部側より等高線のごとく色分けして表示し、フィルム面を基準とした凸部高さ及び凸部の大きさである凸部径を測定した。
表面粗さ(Ra)、平均中心間距離(Sm)は、WYKO社製光学干渉式表面粗さ測定機を用いて、JIS B0601の測定方法により測定した。
(防眩効果)
窓のあるオフィスにて、各フィルムを机の上に広げ、天井の蛍光灯照明及び外光のフィルムへの写り込みを下記のように評価した。
5:蛍光灯の輪郭、及び外光がぼけて写り込みが全く気にならない
4:5と3の中間
3:蛍光灯の輪郭、及び外光の写り込みが僅かに認められる
2:3と1の中間
1:蛍光灯の輪郭、及び外光が分かり写り込みが気になる
(ぎらつき)
作製したフィルムについて、目視にてぎらつきを判定した。
5:ぎらつきが全く分からない
4:ぎらつきが極僅かに分かる
3:ややぎらつきが分かる
2:3と1の中間
1:ぎらつきがかなり気になる
(白濁)
作製したフィルムについて、目視にて白濁を判定した。
5:白濁が全く気にならない
4:5と3の中間
3:白濁がやや気になる
2:3と1の中間
1:白濁がかなり気になる
以上の測定、評価結果を下記表1に示す。
表1より、微粒子添加による微細凹凸構造を付与した防眩性反射防止フィルム1は、微粒子の分散性のばらつきの為か、ぎらつきが劣り、白濁も見られた。エンボス加工により微細凹凸構造を付与した防眩性反射防止フィルム2は防眩効果、ぎらつきがやや劣っており白濁も見られた。また、防眩性反射防止フィルム2の先頭と後尾で微細凹凸構造の高さ、大きさが異なっており、鋳型を観察すると鋳型の一部に溶けたフィルムによる目詰まりを起こしていた。
それに対し、本発明の防眩性反射防止フィルム3〜9は、防眩効果、ぎらつきに優れ、白濁も気にならないレベルであった。また、防眩性反射防止フィルムの先頭と後尾の微細凹凸構造の高さ、大きさが揃っており、高い均一性、生産安定性を有していることが分かった。
実施例2
〔偏光板の作製〕
次いで、実施例1で作製した各防眩性反射防止フィルム1〜9を用いて下記工程により偏光板を作製した。
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光膜と前記防眩性反射防止フィルム1〜9、裏面側のセルロースエステルフィルムKC8UCR−5(コニカミノルタオプト(株)製)を貼り合わせて偏光板を作製した。裏面側の偏光板保護フィルムは位相差を有するセルロースエステルフィルムであり、リターデーション値はRo=43nm、Rt=132nmであった。
工程1:50℃の1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に60秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光膜と貼合する側を鹸化したセルロースエステルフィルムを得た。
工程2:前記偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースエステルフィルムの上にのせて、更に反射防止層が外側になるように積層し、配置した。
工程4:工程3で積層した防眩性反射防止フィルムと偏光膜とセルロースエステルフィルム試料を圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜とセルロースエステルフィルムと防眩性反射防止フィルム1〜9とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板1〜9を作製した。
《液晶表示装置の作製》
液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
市販の32型液晶テレビ(MVA型セル)の予め貼合されていた表面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板1〜9をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、位相差を有するセルロースエステルフィルムの面が、液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置1〜9を各々作製した。
《評価》
得られた液晶表示装置1〜9を用いて、図14で示した様な環境で観察し、前記防眩効果、ぎらつき、及び下記視認性及び動画を表示したときの黒のしまりを各々下記の基準に従い目視にて評価した。尚、照明は40W蛍光灯(松下電器製FLR40S−EX−D/M)10本を天井に設置した。また窓から外光が差し込む状態で評価した。
(視認性及び動画を表示したときの黒のしまり)
前述の様に天井からは蛍光灯による人工照明と窓からの外光が差し込んでいる環境下でTV番組の動画像を同ディスプレイに表示し、比較実験を行った。ディスプレイ正面から1m離れた位置で動画像を観察し官能評価を行った。
5:画面上部の蛍光灯の写り込みが気にならず、画面中央部は外光があっても黒がしまって見え、観察中、観察直後においても疲れず違和感がない
4:5と3の中間
3:画面上部の蛍光灯の写り込みが僅かに認められ、画面中央部は外光があると黒がややしまりに欠け、観察後やや疲れる
2:3と1の中間
1:画面上部の蛍光灯の写り込みが認められ、画面中央部は外光の影響で黒のしまりに欠け、見ていると目が疲れる
防眩性反射防止フィルム/液晶表示装置の構成及び上記評価結果を下記表2に示す。
表2より、微粒子添加による微細凹凸構造を付与した液晶表示装置1は、微粒子の分散性のばらつきの為か防眩効果、ぎらつきの改善が中途であり黒のしまりに劣っていた。エンボス加工により微細凹凸構造を付与した液晶表示装置2は均一な凹凸構造の形成に難があり、ぎらつき、黒のしまりに劣っていた。
それに対して、本発明の防眩性反射防止フィルムを用いた液晶表示装置3〜9は、防眩効果、ぎらつき、黒のしまりに優れていることが明らかである。
実施例3
〈ポリカーボネート系フィルムの作製〉
下記のドープ組成物を調製した。
〈ドープ組成物〉
ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万、ビスフェノールA型) 100部
2−(2′ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール 1.0部
メチレンクロライド 430部
メタノール 90部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹拌しながら完全に溶解して、ドープ組成物Aを得た。
次にこのドープ組成物Aを濾過し、冷却して33℃に保ち、ステンレスバンド上に均一に流延し、33℃で5分間乾燥した。次に65℃でレタデーション5nmになるように乾燥時間を調整し、ステンレスバンド上から剥離後、多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚80μmのポリカーボネート系フィルムを得た。
〈ノルボルネン系樹脂フィルムの作製〉
窒素で置換した内容量1000mlの反応容器に、Pd(CH3CN)4(BF4)21.5gをニトロメタン100mlに溶かした溶液を仕込み、これを室温下で撹拌しながら、8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]−3−ドデセン150gをニトロメタン150mlに溶解した溶液を加え、1時間反応させた後、500mlのメタノールを加え、析出した樹脂を濾過して回収した。得られた樹脂をメタノール300mlと濃塩酸40mlの混合液で洗浄した。さらにメタノールで洗浄した後、60℃で真空乾燥し、ノルボルネン系樹脂を得た。
下記のドープ組成物を調製した。
〈ドープ組成物〉
ノルボルネン系樹脂 100部
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール 1.0部
メチレンクロライド 430部
メタノール 90部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹拌しながら完全に溶解した。
次にこのドープ組成物を濾過し、冷却して33℃に保ち、ステンレスバンド上に均一に流延し、33℃で5分間乾燥させ、次に65℃でレタデーション5nmになるように乾燥時間を調整し、ステンレスバンド上から剥離後、多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚80μmのノルボルネン系樹脂フィルムを得た。
〈ポリエステル系フィルムの作製〉
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール60部の混合物にチタンテトラブトキサイド(TBT)0.0111部を添加し、150℃から240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応率が98%となった時点で、反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温290℃)にて重合反応を行ってポリエチレン−2,6−ナフタレートを得た。
このポリエチレン−2,6−ナフタレート100部にフェニルホスホン酸0.0104部を添加し、V型ブレンダーにて混合した後、170℃にて5時間乾燥処理を行った。その後常法に従ってダイより溶融押出し、急冷して厚さ800μmの未延伸フィルムを作製し、次いで未延伸フィルムを縦方向に140℃で4.0倍、横方向に155℃で5.0倍の逐次二軸延伸を行い、更に220℃で10秒間熱固定を行って厚さ80μmの二軸配向フィルムを作製した。
上記作製したポリカーボネート系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリエステル系フィルムを、実施例1のセルロースエステルフィルム1の代わりに各々用いて、実施例1の微粒子添加による防眩性反射防止フィルム1、フレキソ印刷法による凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム6、インクジェット法による凸部状低屈折率層を有する防眩性反射防止フィルム7の作製方法と同様にして表3に記載の防眩性反射防止フィルム11〜19を作製し、次いで得られた防眩性反射防止フィルム11〜19を用いて実施例1と同様にして偏光板11〜19、液晶表示装置11〜19を作製し、実施例1と同様な評価を行い下記表3に結果を記載した。
上表から、支持体を変更しても実施例1の結果を再現し、微粒子添加による防眩性反射防止フィルムに比較して、本発明の防眩性反射防止フィルムは、防眩効果、ぎらつき、コントラストに優れていることが確認された。