JP2007146265A - 蒸着装置 - Google Patents

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登志子 細田
Tadayoshi Ikehara
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Abstract

【課題】蒸着法により薄膜を形成するに際し、均一かつ緻密な薄膜を形成することができるとともに、例えば、膜形成材料の有効利用が可能な蒸着装置を提供すること。
【解決手段】蒸着装置10は、チャンバ11と、チャンバ11内に設けられ、膜材料13を収納するルツボ14と、基板2を保持する基板ホルダー12と、いずれもルツボ14を覆って膜材料13の気化物が基板2側に向かうのを阻止する阻止位置と、気化物が基板2側に向かうのを許容する許容位置とに変位可能に設けられた第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22と、各シャッター部材21、22の作動を制御する制御手段32を有している。この制御手段32は、第1のシャッター部材21と、第2のシャッター部材22とを異なる時間に前記阻止位置に変位させるよう構成されていることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、蒸着装置に関するものである。
少なくとも一層の発光性有機層(有機エレクトロルミネッセンス層)が陰極と陽極に挟まれている構造を特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する。)は、無機EL素子に比べて印加電圧を大幅に低下させることができ、多彩な発光色の素子が作製可能である。
現在、より高性能な有機EL素子を得るため、材料の開発・改良をはじめ、様々なデバイス構造が提案されており、活発な研究が行われている。
また、この有機EL素子については既に様々な発光色の素子、また高輝度、高効率の素子が開発されており、表示装置の画素としての利用や光源としての利用など多種多様な実用化用途が検討されている。
このような有機EL素子としては、基板上に、陽極、有機EL層(正孔輸送層、発光層、電子輸送層)および陰極がこの順に積層形成されたものが提案されている。
この有機EL素子では、陽極と陰極との間に通電すると、陽極からの正孔が正孔輸送層を介して発光層に移動し、また、陰極からの電子が電子輸送層を介して発光層に移動し、発光層において正孔と電子とが再結合する。この再結合に際して放出されたエネルギーによって発光層の有機材料が励起状態となり、この励起状態から基底状態に戻る際に蛍光やりん光を放出する。
ところで、このような構成の有機EL素子において、有機EL層は、一般的に、真空蒸着法を用いて成膜されている(例えば、特許文献1参照。)。
この真空蒸着法では、チャンバ内に陽極が形成された基板と、有機EL層の構成材料(膜材料)とを対向させて設置し、膜材料を加熱して気化させることにより、この膜材料の気化物を陽極上に被着させて有機EL層を形成する。
このような真空蒸着法を用いて、より均一かつ緻密な有機EL層(薄膜)を形成するには、陽極上に、所定の速度以上となった膜材料の気化物を到達させることが重要となる。すなわち、膜材料の気化速度が所定の速度以上になるまで、気化物が陽極上に到達するのを阻止することが重要となる。
そこで、有機EL層の製造には、一般に、陽極と膜材料との間に、前記所定の速度になるまで、陽極に気化物が到達するのを阻止するシャッター部材が設けられる。
このような真空蒸着装置では、気化物が前記所定の速度になるまで、膜材料がシャッター部材に付着することとなる。
ここで、有機EL材料(膜材料)は、一般的に高価であることから、製造コスト削減の観点からは、シャッター部材に付着した膜材料を回収して再利用したい。ところが、シャッター部材には、膜材料より低沸点を有する低分子系の不純物が膜材料よりも先に被着している。そのため、シャッター部材に被着した膜材料を回収したとしても、前記不純物が高濃度で混入することとなり、この回収した膜材料を再利用できないという問題がある。
特開2000−306666号公報
本発明の目的は、蒸着法により薄膜を形成するに際し、均一かつ緻密な薄膜を形成することができるとともに、例えば、膜材料の有効利用が可能な蒸着装置を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の蒸着装置は、成膜対象物の表面に、膜材料の気化物を所定の速度で被着させて薄膜を形成する蒸着装置であって、
チャンバと、
該チャンバ内に設けられ、前記膜材料を収納する材料収納部と、
前記膜材料を加熱して気化させる加熱手段と、
前記チャンバ内に設けられ、前記成膜対象物を保持する保持部と、
前記チャンバ内に設けられ、いずれも、前記材料収納部を覆って前記気化物が前記保持部側に向かうのを阻止する阻止位置と、前記気化物が前記保持部側に向かうのを許容する許容位置とに変位可能に設けられた第1のシャッター部材および第2のシャッター部材と、
前記第1のシャッター部材および前記第2のシャッター部材の作動を制御する機能を備える制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記第1のシャッター部材と、前記第2のシャッター部材とを異なる時間に前記阻止位置に変位させるよう構成されていることを特徴とする。
これにより、蒸着法により薄膜を形成するに際し、均一かつ緻密な薄膜を形成することができるとともに、例えば、膜材料の有効利用が可能な蒸着装置とすることができる。
本発明の蒸着装置では、前記第1のシャッター部材は、前記材料収納部に対して回動可能に設けられていることが好ましい。
第1のシャッター部材を、かかる構成とすることにより、簡単な構成で阻止位置と許容位置との間での変位を容易に行うことができる。
本発明の蒸着装置では、前記第1のシャッター部材は、主として金属材料で構成されることが好ましい。
これにより、第1のシャッター部材に、優れた熱伝導性を付与することができる。その結果、第1のシャッター部材は、効率よく熱を放出(放熱)することができるようになり、膜材料の気化物の被着に伴う急激な温度上昇を防止することができる。これにより、第1のシャッター部材は、その被着(捕捉)対象物を確実に被着させることができる。
本発明の蒸着装置では、前記第2のシャッター部材は、前記材料収納部に対して回動可能に設けられていることが好ましい。
第2のシャッター部材を、かかる構成とすることにより、簡単な構成で阻止位置と許容位置との間での変位を容易に行うことができる。
本発明の蒸着装置では、前記第2のシャッター部材に被着した膜材料を回収して再利用することが好ましい。
これにより、無駄に使用される膜材料の量を低減することができ、製造コストの削減を図ることができる。
本発明の蒸着装置では、前記第2のシャッター部材は、その材料収納部側の面が湾曲凹面を構成することが好ましい。
第2のシャッター部材をかかる構成とすることにより、表面積を広げ、堆積する膜が厚膜化して剥がれ落ちることを防止できる他、湾曲凹面に付着する膜材料をより無駄なくかつ容易に回収することができるという利点もある。
本発明の蒸着装置では、前記第2のシャッター部材は、主として金属材料で構成されることが好ましい。
これにより、第2のシャッター部材に、優れた熱伝導性を付与することができる。その結果、第2のシャッター部材は、効率よく熱を放出(放熱)することができるようになり、膜材料の気化物の被着に伴う急激な温度上昇を防止することができる。これにより、第2のシャッター部材は、その被着(捕捉)対象物を確実に被着させることができる。
本発明の蒸着装置では、前記制御手段は、前記第1のシャッター部材を前記阻止位置とした状態で、前記加熱手段により前記膜材料の加熱を開始させ、当該膜材料が気化する温度となったとき、前記第1のシャッター部材を前記許容位置に変位させ、
次いで、前記阻止位置の前記第2のシャッター部材に前記気化物を被着させ、前記膜材料の気化速度が前記所定の速度となったとき、前記第2のシャッター部材を前記許容位置に変位させるよう構成されていることが好ましい。
これにより、蒸着法により薄膜を形成するに際し、均一かつ緻密な薄膜を形成することができるとともに、膜材料の有効利用が可能な蒸着装置とすることができる。
本発明の蒸着装置では、前記第2のシャッター部材は、前記第1のシャッター部材より前記保持部側に設けられていることが好ましい。
本発明の蒸着装置では、前記材料収納部は、前記膜材料の温度を測定する温度測定手段を有し、
前記制御手段は、前記温度測定手段による測定値に基づいて、前記第1のシャッター部材を前記阻止位置から前記許容位置に変位させるよう構成されていることが好ましい。
かかる構成とすることにより、膜材料に含まれる不純物のうち、膜材料より低い沸点または昇華点を有するものは、膜材料に先立って気化して第1のシャッター部材に被着することとなる。これにより、第2のシャッター部材や成膜対象物に不純物が被着するのを確実に防止することができる。
本発明の蒸着装置では、前記材料収納部と前記第2のシャッター部材との間に、前記膜材料の前記気化速度を測定する第1のレートセンサを備え、
前記制御手段は、前記第1のレートセンサによる測定値に基づいて、前記第2のシャッター部材を前記阻止位置から前記許容位置に変位させるよう構成されていることが好ましい。
かかる構成とすることにより、所定の速度に満たない膜材料の気化物が、成膜対象物に被着するのを防止することができる。換言すれば、薄膜の成膜に適する速度(蒸着レート)で前記気化物を成膜対象物に被着させることができる。その結果、均一、均質かつ緻密な薄膜を確実に形成することができ、得られる薄膜は、優れた特性を発揮するものとなる。
本発明の蒸着装置では、前記第1のレートセンサは、前記第2のシャッター部材に設けられていることが好ましい。
これにより、第2のシャッター部材を許容位置に変位させた際には、第1のレートセンサを材料収納部からズレて位置させることができ、第1のレートセンサへの膜材料の付着量を低減させることができる。
本発明の蒸着装置では、前記第2のシャッター部材と前記保持部との間に、前記膜材料の前記気化速度を測定する第2のレートセンサを備え、
前記制御手段は、前記第2のレートセンサによる測定値に基づいて、前記気化速度が前記所定の速度を保たれるよう、前記加熱手段の作動の制御を行うことが好ましい。
これにより、得られる薄膜は、より均一、均質かつ緻密なものとなり、その特性がより向上する。
本発明の蒸着装置では、前記チャンバ内の空間を、前記材料収納部を収納する第1の空間と、前記保持部を収納する第2の空間とに区画し、前記第1の空間と第2の空間とを連通する開口部を備える隔壁部を有し、
前記第2のレートセンサは、前記隔壁部に設けられていることが好ましい。
本発明の蒸着装置では、前記材料収納部は、前記保持部に対面して設置されていることが好ましい。
これにより、成膜対象物へ到達する膜材料の気化物の分布にバラつきが生じるのを防止または低減することができ、その結果、均質かつ均一な膜厚の薄膜を得ることができる。
まず、本発明の蒸着装置について説明する前に、本発明の蒸着装置を用いて製造される有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)の一例について説明する。
図1は、有機EL素子の一例を示した縦断面図である。
図1に示す有機EL素子1は、基板2と、基板2上に設けられた陽極3と、陽極3上に設けられた有機EL層4と、有機EL層4上に設けられた陰極5と、各前記層3、4、5を覆うように設けられた保護層6とを備えている。
また、有機EL層4は、陽極3側から、正孔輸送層45、発光層46および電子輸送層47の順で積層された複数の層で構成される積層体となっている。
この有機EL素子1では、陽極3と陰極5とに通電することにより、発光層46において、電子輸送層47を介して輸送された電子と、正孔輸送層45を介して輸送された正孔とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)が放出される。すなわち、有機EL素子1(発光層46)が発光する。
本実施形態では、この有機EL素子1は、発光層46からの光を陽極3側に取り出して視認するボトムエミッション構造の素子となっている。
以下、この有機EL素子1の各部の構成について説明する。
基板2は、有機EL素子1の支持体となるものであり、この基板2上に各前記層が形成されている。
前述したように、本実施形態の有機EL素子1は、陽極3側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2は、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
陽極3は、有機EL層4(後述する正孔輸送層45)に正孔を注入する電極である。また、この陽極3は、有機EL層4(後述する発光層46)からの発光を視認し得るように、実質的に透明(無色透明、有色透明、半透明)とされている。
かかる観点から、陽極3の構成材料(陽極材料)としては、仕事関数が大きく、導電性に優れ、また、透光性を有する材料を用いるのが好ましい。
このような陽極材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
陽極3の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極3の厚さが薄すぎると、陽極3としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極3が厚過ぎると、陽極材料の種類等によっては、光の透過率が著しく低下し、実用に適さなくなるおそれがある。
なお、陽極材料には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂材料を用いることもできる。
一方、陰極5は、有機EL層4(後述する電子輸送層47)に電子を注入する電極である。
陰極5の構成材料(陰極材料)としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
このような陰極材料としては、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
特に、陰極材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極材料として用いることにより、陰極5の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
陰極5の厚さ(平均)は、1nm〜1μm程度であるのが好ましく、100〜400nm程度であるのがより好ましい。陰極5の厚さが薄すぎると、陰極5としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陰極5が厚過ぎると、有機EL素子1の発光効率が低下するおそれがある。
なお、陰極5は、単層構造のものに限定されず、複数層の積層体で構成することができる。例えば、陰極5を2層構造とする場合には、有機EL層4側の層を前記の低仕事関数金属で構成し、有機EL層4と反対側の層を前記の透明導電性酸化物で構成することができる。これにより、電子輸送層47への電子の注入効率をより向上させることができる。
陽極3と陰極5との間には、有機EL層4が設けられている。有機EL層4は、前述したように、正孔輸送層45と、発光層46と、電子輸送層47とを備え、これらがこの順で陽極3上に形成されている。
正孔輸送層45は、陽極3から注入された正孔を発光層46まで輸送する機能を有するものである。
正孔輸送層45の構成材料(正孔輸送材料)は、正孔輸送能力を有するものであれば、いかなるものであってもよいが、共役系の化合物であるのが好ましい。共役系の化合物は、その特有な電子雲の広がりによる性質上、極めて円滑に正孔を輸送できるため、正孔輸送能力に特に優れる。
このような正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミンのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミンのようなフェニレンジアミン系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、フタロシアニンのようなフタロシアニン系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの化合物の低分子(モノマーやオリゴマー)は、いずれも、高い正孔輸送能力を有しており、後述する本発明の蒸着装置を用いて正孔輸送層45を形成する際に、膜材料13として好適に用いられる。
正孔輸送層45の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。正孔輸送層45の厚さが薄すぎると、ピンホールが生じるおそれがあり、一方、正孔輸送層45が厚過ぎると、正孔輸送層45の透過率が悪くなる原因となり、有機EL素子1の発光色の色度(色相)が変化してしまうおそれがある。
電子輸送層47は、陰極5から注入された電子を発光層46まで輸送する機能を有するものである。
電子輸送層47の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)のようなベンゼン系化合物(スターバースト系化合物)、ナフタレンのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセンのようなクリセン系化合物、ペリレンのようなペリレン系化合物、アントラセンのようなアントラセン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq)のような各種金属錯体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの化合物は、いずれも、低分子系の化合物であり、かつ、高い電子輸送能力を有していることから、後述する本発明の蒸着装置を用いて電子輸送層47を形成する際に、膜材料13として好適に用いられる。
電子輸送層47の厚さ(平均)は、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。電子輸送層47の厚さが薄すぎると、ピンホールが生じショートするおそれがあり、一方、電子輸送層47が厚過ぎると、電子輸送材料の種類等によっては、抵抗値が高くなるおそれがある。
また、発光層46としては、電圧印加時に陽極3側から正孔を、また、陰極5側から電子を注入することができ、正孔と電子が再結合する場を提供できる構成材料により構成されるものであれば、いかなるものであってもよい。
このような発光層46の構成材料(発光材料)としては、例えば、ジスチリルベンゼン(DSB)のようなベンゼン系化合物、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリノレート)亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))のような各種金属錯体等が挙げられ、これらのうちの1種または任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの化合物は、いずれも、低分子系の化合物であり、かつ、優れた発光特性を有することから、後述する本発明の蒸着装置を用いて発光層46を形成する際に、膜材料13として好適に用いられる。
発光層46の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。発光層の厚さを前記範囲とすることにより、正孔と電子との再結合が効率よくなされ、発光層46の発光効率をより向上させることができる。
なお、本実施形態では、発光層46は、正孔輸送層45および電子輸送層47と別個に設けられているが、正孔輸送層45と発光層46とを兼ねた正孔輸送性発光層や、電子輸送層47と発光層46とを兼ねた電子輸送性発光層とすることもできる。この場合、正孔輸送性発光層の電子輸送層47との界面付近が、また、電子輸送性発光層の正孔輸送層45との界面付近が、それぞれ、発光層46として機能する。
また、正孔輸送性発光層を用いた場合には、陽極3から正孔輸送性発光層に注入された正孔が電子輸送層47によって閉じこめられ、また、電子輸送性発光層を用いた場合には、陰極5から電子輸送性発光層に注入された電子が正孔輸送層45によって閉じこめられるため、いずれも、正孔と電子との再結合効率を向上させることができるという利点がある。
また、各層3、4、5同士の間には、任意の目的の層が設けられていてもよい。例えば、正孔輸送層45と陽極3との間には正孔注入層を、また、発光層46と電子輸送層47との間には電子注入層等を設けることができる。
保護層6は、有機EL素子1を構成する各層3、4、5を覆うように設けられている。この保護層6は、有機EL素子1を構成する各層3、4、5を気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。保護層6を設けることにより、有機EL素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止等の効果が得られる。
また、保護層6の内部には、例えば、窒素ガス、各種希ガス等の不活性ガスを充填するようにしてもよい。これにより、有機EL素子1の変質・劣化等をより確実に防止することができる。
保護層6の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、保護層6の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、保護層6と各層3、4、5との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
この有機EL素子1は、例えばディスプレイ用として用いることができるが、その他にも光源等としても使用可能であり、種々の光学的用途等に用いることが可能である。
また、有機EL素子1をディスプレイに適用する場合、その駆動方式としては、特に限定されず、この実施形態ではアクティブマトリックス方式を採用しているが、パッシブマトリックス方式であってもよい。
以上のような構成の有機EL素子1において、有機EL層4を構成する各層、すなわち正孔輸送層45、電子輸送層47および発光層46を、以下に説明する本発明の蒸着装置を用いて形成することができる。
以下、図1に示す有機EL素子1を製造する場合を代表にして、本発明の蒸着装置について説明する。
図2は、本発明の蒸着装置の実施形態の構成を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2中の上側を「上」、下側を「下」または「底」という。
図2に示す蒸着装置10は、チャンバ11内において、陽極3上に膜材料13の気化物13’を所定の速度で被着させることにより、正孔輸送層45、電子輸送層47および発光層46(薄膜)を順次形成する装置である。
この蒸着装置10は、チャンバ11を有し、このチャンバ11内には、膜材料13を収納するルツボ(材料収納部)14と、膜材料13を加熱して気化させる加熱手段31と、陽極3が形成された基板2(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(保持部)12と、ルツボ14を覆う位置と覆わない位置とに変位可能な第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22と、基板ホルダー12を覆う位置と覆わない位置とに変位可能な第3のシャッター部材23と、それぞれ膜材料13の気化速度を測定する第1のレートセンサ41および第2のレートセンサ42とが設けられている。
また、蒸着装置10は、各部の作動を制御する制御手段32と、チャンバ11内を減圧する減圧手段18と、チャンバ11内にガスを供給するガス供給手段(図示せず)とを備えている。
以下、各部の構成について、順次説明する。
チャンバ11は、その内部の空間111を気密的に封止可能な容器である。
このチャンバ11の内壁には、その鉛直方向の途中に、隔壁部120が設けられており、この隔壁部120により、空間111は、隔壁部120より下側の第1の空間112と、上側の第2の空間113とに区画されている。
そして、第1の空間112には、ルツボ14が収納され、一方、第2の空間113には、基板ホルダー12が収納されている。
また、隔壁部120の中央部には、開口部121が形成されており、開口部121を介して第1の空間112と第2の空間113とが連通し、後述するように、膜材料13の気化物13’の通過が可能となっている。
このような隔壁部120をチャンバ11内に設けることにより、陽極3上に到達しない気化物13’のうち、第2の空間113側のチャンバ11の内壁に付着するものの量を低減することができる。すなわち、陽極3上に到達しない気化物13’の多くを、第1の空間112側のチャンバ11の内壁に付着させることができる。そのため、チャンバ11内の洗浄を行う際には、その作業を限られた領域で行えばよく、作業の効率化を図ることができる。
基板ホルダー12は、チャンバ11の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー12は、その中心部が回転駆動手段60”の回転軸66に固定された状態で設置されている。回転駆動手段60”の本体部67は、チャンバ11の外部に設置されており、回転軸66は、チャンバ11の天井部を貫通した状態になっている。回転軸66が挿通する貫通孔には、シール部材15が設置されることにより、チャンバ11の気密性が確保されている。
回転駆動手段60”の本体部67は、モータ、変速機等を内蔵しており、回転軸66を介して、基板ホルダー12を回転駆動する。これにより、有機EL層4を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、ルツボ14は、基板ホルダー12に対面する位置、すなわち、チャンバ11の底部に設置されている。これにより、基板ホルダー12(陽極3)へ到達する膜材料13の気化物13’の分布にバラつきが生じるのを防止または低減することができ、その結果、均質かつ均一な膜厚の有機EL層4を得ることができる。
このルツボ14またはその近傍には、ルツボ14内に収納された膜材料13を、直接または間接的に加熱して、気化(蒸発または昇華)させる加熱手段31が設けられている。
加熱手段31の加熱方式は、特に限定されず、例えば、抵抗加熱(ヒータ)、電子ビーム加熱等いずれであってもよい。
また、ルツボ14には、膜材料13の温度を測定(検知)する温度センサや温度計のような温度測定手段(図示せず)が設けられている。
チャンバ11内には、いずれも、ルツボ14を覆って膜材料13の気化物13’が基板ホルダー12側に向かうのを阻止する阻止位置(図2に示す位置)と、ルツボ14を覆わず気化物13’が基板ホルダー12側に向かうのを許容する許容位置(図3、図4に示す位置)とに変位可能に、第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22が設けられている。
第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金、銅または銅系合金のような各種金属材料、シリコンのような各種半導体材料、石英ガラスのような各種ガラス材料等が挙げられる。
中でも、各シャッター部材21、22は、それぞれ、金属材料を主材料として構成されているのが好ましい。これにより、各シャッター部材21、22に、優れた熱伝導性を付与することができる。その結果、各シャッター部材21、22は、効率よく熱を放出(放熱)することができるようになり、気化物13’の被着に伴う急激な温度上昇を防止することができる。これにより、各シャッター部材21、22は、その被着(捕捉)対象物を確実に被着させることができる。
これらの第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22は、それぞれ、その端部が回転駆動手段60の回転軸61および回転軸62に固定されている。
回転軸61は、中空部(内腔)を有する円筒状の筒体であり、その長さが回転軸62よりも短く、かつ、中空部の直径が回転軸62の直径よりも大きく設定されている。
そして、回転軸61および回転軸62は、回転軸62が回転軸61中空部を貫通した状態で、それぞれ回転駆動手段60の本体部63に接続されている。
また、本体部63は、チャンバ11の外部に設置されており、回転軸61および回転軸62は、チャンバ11の底部を貫通した状態になっている。回転軸62が挿通する貫通孔には、シール部材15が設置され、回転軸61と回転軸62との間には、図示しないシール部材が設置され、これにより、チャンバ11の気密性が確保されている。
回転駆動手段60の本体部63は、モータ、変速機等を内蔵しており、回転軸61および回転軸62を介して、第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22を、それぞれ独立して、回転駆動する。これにより、第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22は、それぞれ独立して、ルツボ14に対して回動(回転)可能となっている。
第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22を、回動により変位する構成とすることにより、簡単な構成で阻止位置(図2に示す位置)と許容位置(図3および図4に示す位置)との間での変位を容易に行うことができる。
図2に示すように、第1のシャッター部材21は、平板状をなし、一方、第2のシャッター部材22は、お椀状をなしている。
第2のシャッター部材22は、お椀状をなすことにより、そのルツボ14側(下側)の面が湾曲凹面となっている。かかる構成とすることにより、第2のシャッター部材22の表面積を広げ、堆積する膜(膜材料13)が厚膜化して剥がれ落ちることを防止する効果が得られる他、後述するように有機EL層(薄膜)4を形成した後、湾曲凹面に付着する膜材料13をより無駄なくかつ容易に回収することができるという利点もある。
また、チャンバ11内には、基板ホルダー12を覆って気化物13’が基板ホルダー12側に向かうのを阻止する阻止位置と、基板ホルダー12を覆わず気化物13’が基板ホルダー12側に向かうのを許容する許容位置とに変位可能に、第3のシャッター部材23が設けられている。
第3のシャッター部材23の構成材料としては、前述した第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22で説明したのと同様のものを用いることができる。
この第3のシャッター部材23は、平板状をなし、その端部が回転駆動手段60’の回転軸64に固定されている。
回転駆動手段60’は、前述した回転駆動手段60”と同様の構成となっており、本体部65は、回転軸64を介して、第3のシャッター部材23を回転駆動する。これにより、第3のシャッター部材23は、基板ホルダー12に対して回動(回転)可能となっている。
第3のシャッター部材23を、回動により変位する構成とすることにより、簡単な構成で阻止位置(図2に示す位置)と許容位置(図4に示す位置)との間での変位を容易に行うことができる。
ここで、第3のシャッター部材23を阻止位置とすると、基板ホルダー12は、この第3のシャッター部材23により覆われることとなる。そのため、後述するように、有機EL層(薄膜)4を形成する際に、仮に、膜材料13の気化物13’が第2のシャッター部材22の縁部から基板ホルダー12側に回り込んだとしても、この第3のシャッター部材23により捕捉して、陽極3へ到達するのを確実に阻止することができる。
なお、この第3のシャッター部材23は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
これらのシャッター部材21、22、23が備える、それぞれの機能については、後述する有機EL素子1の製造方法において詳述する。
第2のシャッター部材22の下側の面および隔壁部120の開口部121縁部には、それぞれ、膜材料13の気化速度を測定する機能を有する第1のレートセンサ41および第2のレートセンサ42が設けられている。
各レートセンサ41、42は、それぞれ、例えば、水晶振動子、光学膜厚モニター等で構成することができる。例えば水晶振動子で構成されるレートセンサによれば、水晶振動子に気化物13’が被着することによる共振周波数の変化から、比較的容易に気化速度を算出することができる。
第1のレートセンサ41を第2のシャッター部材22に設けることにより、第2のシャッター部材22を許容位置に変位させた際には、第1のレートセンサ41をルツボ14からズレて位置させることができ、第1のレートセンサ41への膜材料13の付着量を低減させることができる。
また、第1のレートセンサ41を第2のシャッター部材22に、また第2のレートセンサ42を隔壁部120にそれぞれ固定することにより、これらのレートセンサ41、42をチャンバ11内に固定するための新たな部材を設ける必要がなく、部品点数の削減に寄与する。
なお、第1のレートセンサ41および第2のレートセンサ42の設置位置は、それぞれ、第2のシャッター部材22とルツボ14との間、および第2のシャッター部材22と基板ホルダー12との間であればよく、図示の位置に限定されるものでない。また、その設置個数もそれぞれの位置に1つに限定されるものでなく、2つまたは3つ以上であってもよい。
また、チャンバ11には、その空間111の気体を排出して圧力を制御する減圧手段18(例えばポンプ)と、空間111に雰囲気ガス(例えば不活性ガス、反応ガス等)を導入するためのガス供給手段とがそれぞれ接続されている。
前述したような回動駆動手段60、60’、60”、加熱手段31、減圧手段18、ガス供給手段等が制御手段32に接続され、制御手段32は、これらの作動を制御する。例えば、回動駆動手段60、60’、60”の作動(停止/運転、回転速度、回転角度等)を制御する。
また、制御手段32には、各レートセンサ41、42、温度測定手段等が接続され、これらの測定結果(検出結果)が随時入力されている。
制御手段32は、例えば、マイクロコンピュータ(CPU)、温度測定手段および各レートセンサ41、42の測定値を一時的に記録(記憶)するメモリ、および、時間を示す時間信号を生成するタイムクロック等で構成されている。
このような制御手段32は、第1のレートセンサ41および温度測定手段で測定された測定値(出力信号)に基づいて、回動駆動手段60を作動させることにより、各シャッター部材21、22の作動を制御して、これらを異なる時間に阻止位置に変位させる。例えば、後述するように、第1のシャッター部材21を阻止位置とした状態で、加熱手段31により膜材料13の加熱を開始させ、膜材料13が気化する温度となったとき、第1のシャッター部材21を許容位置に変位させ、次いで、阻止位置の第2のシャッター部材22に気化物を被着させ、膜材料13の気化速度が所定の速度となったとき、第2のシャッター部材22を許容位置に変位させるよう制御することにより、膜材料13の有効利用を図りつつ、均一かつ緻密な有機EL層(薄膜)4を形成することができる。
その他、蒸着装置10には、蒸着の開始等の指示を入力するための操作パネル(図示せず)が設けられている。
なお、膜材料13としては、前述したような正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料が使用され、それぞれ、ルツボ14に収容される。
以上のような構成の蒸着装置10を有機EL層4の形成に用い、以下のようにして有機EL素子1を製造することができる。
図3は、図2に示す蒸着装置が備える第1のシャッター部材を許容位置に変位させた際の構成を示す縦断面図であり、図4は、図2に示す蒸着装置が備える第2のシャッター部材を許容位置に変位させた際の構成を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2〜4中の上側を「上」、下側を「下」または「底」という。
[1]陽極形成工程
まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
なお、陽極3を形成する方法として、真空蒸着法を用いる場合には、次工程[2]で説明する本発明の蒸着装置を用いて陽極3を形成することもできる。
[2]有機EL層形成工程
次に、蒸着装置10を用いて、陽極3上に、有機EL層4、すなわち、正孔輸送層45、発光層46および電子輸送層47をこの順で積層して形成する。
[2−1] まず、操作者は、陽極3が形成された基板2を、蒸着装置10のチャンバ11内に搬入し、基板ホルダー12に装着(セット)するとともに、膜材料13として、正孔輸送材料をルツボ14内に設置する。
次いで、操作者は、チャンバ11を密閉した後、操作パネルに所定の情報を入力して、蒸着装置10を作動させる。所定の情報としては、例えば、膜材料13の到達速度(所定の速度)、チャンバ11内の圧力等が挙げられる。
蒸着装置10が作動を開始すると、制御手段32は、まず、各回転駆動手段60、60’を作動させて、図2に示すように、各シャッター部材21、22、23を、それぞれ、阻止位置に変位させる。
その後、制御手段32は、減圧手段18およびガス供給手段を作動させることにより、チャンバ11内を減圧するとともに、雰囲気ガスを導入して、雰囲気と圧力とを所定の状態とする。
具体的には、チャンバ11内の圧力(減圧の程度)は、1×10−3Pa以下であるのが好ましい。これにより、膜材料13から気化した気化物13’の気化速度が、ルツボ14付近と基板2付近とにおいて変化(低下)するのを防止して、陽極3にまで気化物13’を確実に到達させることができる。
[2−2] 次に、制御手段32は、加熱手段を作動させることにより、ルツボ14に設置された膜材料(正孔輸送材料)13の加熱を開始する。
このとき、膜材料13の温度は、ルツボ14に設けられた温度測定手段(図示せず)により測定されており、この測定値が随時、制御手段32に入力されている。
[2−3] 次に、膜材料13の温度が、膜材料13が気化(蒸発または昇華)する温度に達すると、制御手段32は、回転駆動手段60を作動させることにより、第1のシャッター部材21を、図2に示す阻止位置から、図3に示す許容位置に回動(変位)させる。
このように、膜材料13が気化する温度に達するまでの間、第1のシャッター部材21を阻止位置としておくことにより、膜材料13に含まれる不純物のうち、膜材料13より低い沸点または昇華点を有するものは、膜材料13に先立って気化して第1のシャッター部材21に被着する。これにより、第2のシャッター部材22や第3のシャッター部材23、さらには、陽極3に不純物が被着するのを確実に防止することができる。
[2−4] 次に、制御手段32は、加熱手段31による膜材料13の加熱を継続させる。これにより、図3に示す阻止位置の第2のシャッター部材22に、気化物13’を被着させる。
このとき、第1のレートセンサ41により膜材料13の気化速度が測定されており、この測定値が随時、制御手段32に入力されている。
また、このとき、前記工程[2−3]において、不純物は、第1のシャッター部材21に被着して(捕捉されて)除去されているので、この第2シャッター部材22には、純度の高い膜材料13が被着することとなる。そのため、成膜終了後、チャンバ11内から第2のシャッター部材22を取り出して、この部材22に被着している膜材料13を回収することにより、再利用可能となる。これにより、無駄に使用される膜材料13の量を低減することができ、製造コストの削減を図ることができる。
この膜材料13を回収する方法としては、特に限定されず、例えば、I:第2のシャッター部材22に被着した膜材料13を溶解し得る溶媒に溶解した後、乾燥する方法、II:第2のシャッター部材22に被着した膜材料13をスパチュラ、ブラシ、研削板またはヤスリのような除去手段を用いて削り取る方法、III:第2のシャッター部材22に被着した膜材料13を加熱して溶融する方法等が挙げられる。
これらの中でも、膜材料13を回収する方法としては、特に、IIの方法を用いるのが好ましい。かかる方法によれば、膜材料13の変質・劣化を好適に防止して、比較的容易に膜材料13を回収することができる。
[2−5] 次に、膜材料13の気化速度が所定の速度に達すると、制御手段32は、回転駆動手段60を作動さることにより、第2のシャッター部材22を、図2に示す阻止位置から、図4に示す許容位置に回動(変位)させる。
また、これとほぼ同時に、制御手段32は、回転駆動手段60’を作動さることにより、第3のシャッター部材23を、図2に示す阻止位置から、図4に示す許容位置に回動(変位)させる。
これにより、膜材料13の気化物13’が、陽極3上に到着して被着することにより正孔輸送層45が形成される。
このように、膜材料13の気化速度が所定の速度に達するまでの間、第2のシャッター部材22を阻止位置としておくことにより、気化物13’は、第2のシャッター部材22に被着する。これにより、所定の速度に満たない気化物13’が、基板ホルダー12(陽極3)に被着するのを防止することができる。換言すれば、正孔輸送層45(薄膜)の成膜に適する速度(蒸着レート)で気化物13’を陽極3に被着させることができる。その結果、均一、均質かつ緻密な正孔輸送層45(薄膜)を確実に形成することができ、得られる正孔輸送層45は、優れた正孔輸送能を発揮するものとなる。
また、正孔輸送層45を形成している間、膜材料13の気化速度は、第2のレートセンサ42で測定(検出)されており、この測定値が随時、制御手段32に入力されている。
そして、制御手段32は、第2のレートセンサ42の測定値に基づいて、加熱手段31の作動(ON/OFF)を制御することにより、膜材料13の気化速度を、ほぼ一定の速度(所定の速度)となるように維持する。これにより、得られる正孔輸送層45は、より均一、均質かつ緻密なものとなり、その正孔輸送能がより向上する。
なお、本実施形態では、加熱手段31の作動(ON/OFF)を制御することにより、膜材料13の気化速度をほぼ一定の速度に保つ構成であるが、ルツボ14に、例えば、ペルチェ素子等で構成される冷却手段を設け、加熱手段31と冷却手段との双方を用いて、膜材料13の加熱および強制冷却を行うことにより、膜材料13の気化速度をほぼ一定の速度に保つよう構成してもよい。
次に、膜材料13としてルツボ14に発光材料および電子輸送材料を順次設置する以外は、以上と同様にして、発光層46および電子輸送層47をそれぞれ形成する。これにより、有機EL層4が形成される。
なお、各層の形成(成膜)に適した膜材料13の気化速度(蒸着レート)や、加熱手段31により供給するエネルギー量と各膜材料13の気化速度との関係等は、それぞれ、予め実験的に求めておくことができる。
また、蒸着装置10において、第1のシャッター部材21および第2のシャッター部材22は、本実施形態の使用方法に限定されず、例えば、次のように使用することもできる。
すなわち、A:チャンバ11の底部に、異なる膜材料をそれぞれ収納したルツボを2つ配置し、一方のルツボに収納された膜材料による成膜を行っている間、他方のルツボを第1のシャッター部材21で覆っておき、他方のルツボに収納された膜材料による成膜を行っている間は、一方のルツボを第2のシャッター部材22で覆っておくようにする。これにより、チャンバ11を大気圧に復帰させることなく異なる膜材料で成膜を行うことができる。
また、B:成膜対象物をチャンバ11内に連続的に搬送する場合、一つの成膜対象物への成膜終了後、次の成膜対象物がチャンバ11内に搬送されるまでの間、ルツボを加熱した状態で、第2のシャッター部材22で覆っておくようにする。これにより、複数の成膜対象物に対して、連続的に成膜を行うことができる。
また、各シャッター部材21、22、23の少なくとも1つは、回動(回転)により変位する構成に代えて、スライドにより変位する構成としてもよい。
[3]陰極形成工程
次に、有機EL層4(電子輸送層47)上に陰極5を形成する。
陰極5は、例えば、上述したような真空蒸着法の他、スパッタリング法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
なお、真空蒸着法により陽極3を形成する場合には、本発明の蒸着装置10を用いて、前工程[2]と同様にして行うこともできる。
[4]保護層形成工程
次に、陽極3、有機EL層4および陰極5を覆うように、保護層6を形成する。
保護層6は、例えば、前述したような材料で構成される箱状の保護カバーを、各種硬化性樹脂(接着剤)で接合すること等により形成する(設ける)ことができる。
硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、反応性硬化樹脂、嫌気性硬化樹脂のいずれも使用可能である。
以上のような工程を経て有機EL素子1を製造することができる。
以上、本発明の蒸着装置について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
また、本発明の蒸着装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
また、前記実施形態では、陽極上に正孔輸送層、発光層および電子輸送層をこの順で形成(積層)する場合について説明したが、本発明は、陰極上に、電子輸送層、発光層および正孔輸送層をこの順に形成する場合に適用することもできる。
さらに、前記実施形態では、本発明の蒸着装置を、有機EL素子の有機EL層の形成に適用した場合を代表に説明したが、本発明の蒸着装置は、例えば、有機薄膜トランジスタが備える有機半導体層の形成および液晶表示装置が備える有機材料で構成されるカラーフィルターの形成等に適用することができる。
有機EL素子の一例を示した縦断面図である。 本発明の蒸着装置の実施形態の構成を示す縦断面図である。 図2に示す蒸着装置が備える第1のシャッター部材を許容位置に変位させた際の構成を示す縦断面図である。 図2に示す蒸着装置が備える第2のシャッター部材を許容位置に変位させた際の構成を示す縦断面図である。
符号の説明
1‥‥有機EL素子 2‥‥基板 3‥‥陽極 4‥‥有機EL層 45‥‥正孔輸送層 46‥‥発光層 47‥‥電子輸送層 5‥‥陰極 6‥‥保護層 10‥‥蒸着装置 11‥‥チャンバ 111‥‥空間 112‥‥第1の空間 113‥‥第2の空間 12‥‥基板ホルダー 120‥‥隔壁部 121‥‥開口部 13‥‥膜材料 13’‥‥気化物 14‥‥ルツボ 15‥‥シール部材 18‥‥減圧手段 21‥‥第1のシャッター部材、22‥‥第2のシャッター部材 23‥‥第3のシャッター部材 31‥‥加熱手段 32‥‥制御手段 41‥‥第1のレートセンサ 42‥‥第2のレートセンサ 60、60’、60”‥‥回転駆動手段 61、62、64、66‥‥回転軸 63、65、67‥‥本体部

Claims (15)

  1. 成膜対象物の表面に、膜材料の気化物を所定の速度で被着させて薄膜を形成する蒸着装置であって、
    チャンバと、
    該チャンバ内に設けられ、前記膜材料を収納する材料収納部と、
    前記膜材料を加熱して気化させる加熱手段と、
    前記チャンバ内に設けられ、前記成膜対象物を保持する保持部と、
    前記チャンバ内に設けられ、いずれも、前記材料収納部を覆って前記気化物が前記保持部側に向かうのを阻止する阻止位置と、前記気化物が前記保持部側に向かうのを許容する許容位置とに変位可能に設けられた第1のシャッター部材および第2のシャッター部材と、
    前記第1のシャッター部材および前記第2のシャッター部材の作動を制御する機能を備える制御手段とを有し、
    前記制御手段は、前記第1のシャッター部材と、前記第2のシャッター部材とを異なる時間に前記阻止位置に変位させるよう構成されていることを特徴とする蒸着装置。
  2. 前記第1のシャッター部材は、前記材料収納部に対して回動可能に設けられている請求項1に記載の蒸着装置。
  3. 前記第1のシャッター部材は、主として金属材料で構成される請求項1または2に記載の蒸着装置。
  4. 前記第2のシャッター部材は、前記材料収納部に対して回動可能に設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の蒸着装置。
  5. 前記第2のシャッター部材に被着した膜材料を回収して再利用する請求項1ないし4のいずれかに記載の蒸着装置。
  6. 前記第2のシャッター部材は、その材料収納部側の面が湾曲凹面を構成する請求項1ないし5のいずれかに記載の蒸着装置。
  7. 前記第2のシャッター部材は、主として金属材料で構成される請求項1ないし6のいずれかに記載の蒸着装置。
  8. 前記制御手段は、前記第1のシャッター部材を前記阻止位置とした状態で、前記加熱手段により前記膜材料の加熱を開始させ、当該膜材料が気化する温度となったとき、前記第1のシャッター部材を前記許容位置に変位させ、
    次いで、前記阻止位置の前記第2のシャッター部材に前記気化物を被着させ、前記膜材料の気化速度が前記所定の速度となったとき、前記第2のシャッター部材を前記許容位置に変位させるよう構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の蒸着装置。
  9. 前記第2のシャッター部材は、前記第1のシャッター部材より前記保持部側に設けられている請求項8に記載の蒸着装置。
  10. 前記材料収納部は、前記膜材料の温度を測定する温度測定手段を有し、
    前記制御手段は、前記温度測定手段による測定値に基づいて、前記第1のシャッター部材を前記阻止位置から前記許容位置に変位させるよう構成されている請求項8または9に記載の蒸着装置。
  11. 前記材料収納部と前記第2のシャッター部材との間に、前記膜材料の前記気化速度を測定する第1のレートセンサを備え、
    前記制御手段は、前記第1のレートセンサによる測定値に基づいて、前記第2のシャッター部材を前記阻止位置から前記許容位置に変位させるよう構成されている請求項8ないし10のいずれかに記載の蒸着装置。
  12. 前記第1のレートセンサは、前記第2のシャッター部材に設けられている請求項11に記載の蒸着装置。
  13. 前記第2のシャッター部材と前記保持部との間に、前記膜材料の前記気化速度を測定する第2のレートセンサを備え、
    前記制御手段は、前記第2のレートセンサによる測定値に基づいて、前記気化速度が前記所定の速度を保たれるよう、前記加熱手段の作動の制御を行う請求項8ないし12のいずれかに記載の蒸着装置。
  14. 前記チャンバ内の空間を、前記材料収納部を収納する第1の空間と、前記保持部を収納する第2の空間とに区画し、前記第1の空間と第2の空間とを連通する開口部を備える隔壁部を有し、
    前記第2のレートセンサは、前記隔壁部に設けられている請求項13に記載の蒸着装置。
  15. 前記材料収納部は、前記保持部に対面して設置されている請求項1ないし14のいずれかに記載の蒸着装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012041615A (ja) * 2010-08-20 2012-03-01 Hamamatsu Photonics Kk レーザアブレーション装置
WO2012090772A1 (ja) * 2010-12-27 2012-07-05 シャープ株式会社 蒸着装置、削具および蒸着材料の回収方法

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JP2012041615A (ja) * 2010-08-20 2012-03-01 Hamamatsu Photonics Kk レーザアブレーション装置
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