JP2007129165A - 面発光型半導体素子とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い光出力を出すために注入電流密度を上げた場合にも、活性層面内の発光領域の中央付近での光出力が高く横モードの安定な面発光型半導体素子を提供すること。
【解決手段】組成の均一な発光層4c1,4c2と、発光層4c1,4c2の上下から挟むように設けられるキャリア閉じ込め層4b1〜4b2と、を含む活性層4と、活性層4を挟持し、基板1の主面に対して垂直方向の共振器を形成する一対の半導体多層膜反射鏡層2,6と、活性層4の上下両面から電流を注入するための一対の電極11,13と、電極11と活性層4との間に活性層4に近接して形成され、電極11からの電流を活性層4の所定の領域に流す電流狭窄構造を有するAlGaAs層5と、を備える面発光型半導体素子であって、キャリア閉じ込め層4b1〜4b3は、その面内方向中央部分でバンドギャップが小さく、外周部分に向かってバンドギャップが大きくなる構造を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、面発光型半導体素子とその製造方法に関し、より詳細には電流狭窄構造を有する垂直共振器型の面発光型半導体素子とその製造方法に関するものである。
近年、III−V族化合物半導体を利用した光半導体素子を光源とした光データ伝送が幅広く利用されるようになってきている。この伝送路としては石英やポリマを利用したファイバのほかに、空間伝送も実施されている。光源にはファイバとの光結合や低コスト化の点で有利な面発光レーザや共振器型の発光ダイオードのような面発光型半導体素子が用いられている。
このような面発光型半導体素子では、その構造上発光層に電流を注入するように横方向にキャリアを閉じ込めるために、酸化によるものやイオン注入による電流狭窄構造を有している。たとえば、イオン注入型の面発光型半導体素子では、電流狭窄領域となる領域の外側に結晶の表面からプロトン注入して高抵抗領域を形成することで、高抵抗化した領域の内側に電流が狭窄されるように電流狭窄領域を形成している。また、酸化型面発光型半導体素子も、電流狭窄領域となる領域の外側を酸化させて高抵抗領域を形成し、高抵抗化した領域の内側に電流が狭窄されるようにしている。
なお、従来、基板上に直線状に形成した活性層の領域によってその組成や膜厚などの特性を変える方法として、活性層を選択成長させる方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1では、活性領域と受動領域でマスク幅が異なるように、所定の幅の成長領域を挟んでパターン化した半導体基板上に、InGaAsPの光閉じ込め層を選択成長させ、InGaAsPウェル/InGaAsPバリアの7重多重量子井戸層を、成長時間または減量ガスを変調させて選択成長させ、さらに、i−InGaAsP光閉じ込め層、p−InPクラッド層を選択成長させる。このようにして、活性領域で1.55μm、受動領域で1.48μmのフォトルミネッセンスピーク波長となる分布帰還型半導体レーザ/光変調器集積化光源が作製される。なお、特許文献1の実施の形態では、InGaAsPを選択成長させているが、このほかにGaInNAsでも同様に選択成長可能なことが開示されている。
特開平9−331106号公報
しかし、従来の面発光型半導体素子では、電流狭窄構造のために光出力が低いことが問題であった。この問題は、伝送速度が増大すると光出力を高くする必要があるため、近年特に顕著になってきている。
たとえば、面発光型半導体素子では、径の大きな電極から注入された電流が径の小さな電流狭窄領域に集中するために、注入電流密度が高くなると、電流狭窄領域の外周部分でのゲインが大きくなり外周部分で光密度の高いモードでの発振が起こり易くなり、横モードが不安定になってしまう。そのため、面発光レーザでは光の横モードの安定を図るために電流狭窄径を小さくする必要がある。その結果、これが光出力を大きくする上での制約要因となっている。また、光出力を大きくするためには、注入電流密度を高くする必要があるが、この場合には狭い領域で熱が発生するので温度が上昇し易く、発熱により素子特性が低下してしまう。これらの問題を解決するためには、電流狭窄領域に均一に電流を流し、実効的な素子抵抗を下げる必要がある。
また、従来のイオン注入型の面発光型半導体素子では、プロトン注入した先端が活性層の光を発する層に届くと、光を発する層の結晶性が低下して発光効率が低下してしまう。このため、プロトン注入の深さをコントロールして、注入したプロトンの先端が活性層の光を発する層に届かないようにする必要があり、活性層の光を発する層の近傍には電流狭窄構造は形成されない。このため、注入電流密度を上げるために印加電圧を上げると、その部分で電流が横方向にも広がって、横モードの安定性を低下させる一因となっていた。その結果、光出力を上げるために注入電流密度を上げると横モードが不安定となり、単一横モードでの高光出力動作を実現することが難しいという問題点があった。
酸化狭窄型の面発光型半導体素子の場合にも、電流狭窄層は活性層の光を発する層から離れた場所に設けられており、イオン注入型の面発光型半導体素子同様に、注入電流密度を上げると、活性層の光を発する層近傍での電流広がりを抑制することは難しく、横モードの不安定化を防ぐことは難しかった。
一方、端面型のレーザでは横方向の閉じ込めを行うために量子井戸活性層を作製して、側面にイオン注入または不純物拡散により井戸層の拡散を起こして横方向の閉じ込めを行うことも行われている。しかし、この方法では側面部分での吸収係数が増大したり抵抗が低下したりして電流リークが大きくなる問題がある。また、拡散の制御が難しく実際には十分な素子特性が得られない。このため、素子サイズが小さく高電界のかかる面発光型半導体素子にこのような技術を適用することは困難である。また、特許文献1には、直線状の構造のInGaAsPについての選択成長については開示されているが、面発光型半導体素子に適用する場合の詳細については開示されていない。
以上のように、面発光レーザを高い光出力で動作させる場合、大きな電流を狭い領域に注入する必要がある。また、変調をかける場合、ノイズの発生を防ぐためには横モードの動作が安定であることが不可欠である。特に、高周波で動作させる場合は、単一横モードで高い光出力を得る必要がある。
光出力を大きくするために、電流狭窄径を大きくすると、電流狭窄領域内に均一に電流を注入することは難しく、単一横モードで高い光出力を得ることは難しい。より詳細には注入電流密度が大きくなると電流狭窄の効果が低下して発光領域の外周部分でレーザ発振し易くなり光のモードが不安定になり、光出力を高くできないという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高い光出力を出すために注入電流密度を上げた場合にも、活性層面内の発光領域の中央付近での光出力が高く単一横モードの安定な面発光型半導体素子とその製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、基板と、電子と正孔の結合によって発光する一層以上の発光層と、該発光層に電子または正孔を閉じ込め、前記発光層の前記基板側または前記基板と反対側に設けられるキャリア閉じ込め層と、を含む前記基板上に設けられる活性層と、前記活性層を挟持し、前記基板の主面に対して垂直方向の共振器を形成する、前記活性層と前記基板との間に形成される基板側反射鏡層および前記活性層に対して前記基板と反対側に形成される表面側反射鏡層と、前記活性層に電流を注入するための一対の電極と、前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極と前記活性層との間に前記活性層に近接して形成され、前記電極からの電流を前記活性層の所定の領域に流す電流狭窄構造を有する電流狭窄部と、を備える面発光型半導体素子であって、前記キャリア閉じ込め層は、その面内方向中央部分でバンドギャップが小さく、外周部分に向かってバンドギャップが大きくなる構造を有することを特徴とする。なお、該発光層に電子と正孔を閉じ込め、前記発光層の上下から挟むように設けられるキャリア閉じ込め層と、を含む前記基板上に設けられる活性層と、前記活性層を挟持し、前記基板の主面に対して垂直方向の共振器を形成する、前記活性層と前記基板との間に形成される基板側反射鏡層および前記活性層に対して前記基板と反対側に形成される表面側反射鏡層と、前記活性層に電流を注入するための一対の電極と、前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極と前記活性層との間に前記活性層に近接して形成され、前記電極からの電流を前記活性層の所定の領域に流す電流狭窄構造を有する電流狭窄部と、を備える面発光型半導体素子であって、前記キャリア閉じ込め層は、その面内方向中央部分でバンドギャップが小さく、外周部分に向かってバンドギャップが大きくなる構造を有してもよい。
また、本発明は、基板と、一層以上の井戸層と該井戸層に接して形成される障壁層とからなる量子井戸構造を有する前記基板上に設けられる活性層と、前記活性層を挟持し、前記基板の主面に対して垂直方向の共振器を形成する、前記活性層と前記基板との間に形成される基板側反射鏡層および前記活性層に対して前記基板と反対側に形成される表面側反射鏡層と、前記活性層に電流を注入するための一対の電極と、前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極と前記活性層との間に前記活性層に近接して形成され、前記電極からの電流を前記活性層の所定の領域に流す電流狭窄構造を有する電流狭窄部と、を備える面発光型半導体素子であって、少なくとも前記障壁層の一層は、その面内方向中央部分でバンドギャップが小さく、外周部分に向かってバンドギャップが大きくなる構造を有することを特徴とする。
さらに、本発明は、電子と正孔の結合によって発光する発光層、および該発光層に電子または正孔を閉じ込め、前記発光層の前記基板側または前記基板と反対側に設けられる、その面内方向中央部分でバンドギャップが小さく、外周部分に向かってバンドギャップが大きくなる構造を有するキャリア閉じ込め層を含む活性層を挟持し、基板の主面に対して垂直方向の共振器を形成するように前記活性層と前記基板との間および前記活性層に対して前記基板と反対側に形成される一対の反射鏡層を備える面発光型半導体素子の製造方法であって、前記一対の反射鏡層のうち一方の反射鏡層が形成された基板上の所定の位置が覆われない選択成長マスクを形成する第1の工程と、前記選択成長マスクを用いて、1/6atmよりも大きい第1の圧力下でMOCVD法で前記キャリア閉じ込め層を形成する第2の工程と、前記選択成長マスクを用いて、前記第1の圧力の1/3より小さい第2の圧力下でMOCVD法で前記発光層を形成する第3の工程と、を含み、前記第2と前記第3の工程を繰り返して、前記活性層を作製することを特徴とする。
本発明によれば、電流狭窄領域に対応する活性層内の中央部分への電流注入効率を高めることができるので、単一横モード発振の条件を広く取ることができ、閾値電流を従来に比べて低くすることができ、高出力の面発光型半導体素子を実現することができる。また、電流注入領域のサイズが大きくても電流狭窄領域の中央部分での注入電流密度を高くすることができ、ビーム径が大きく光ビームの広がり角の小さな面発光型半導体素子を実現することができる。その結果、素子の信頼性の向上、長寿命化を図ることが可能な面発光型半導体発光素子を提供することができるという効果を奏する。
また、本発明によれば、発光層の面内方向の組成を均一に保ちながら、キャリア閉じ込め層について面内方向の組成に分布を持たせたので、活性層面内方向の中央付近の電流密度を高めた面発光型半導体素子の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる面発光型半導体素子とその製造方法の最良な実施の形態と実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態および実施例で用いられる面発光型半導体素子の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる。また、以下の説明では、本発明にかかる面発光型半導体素子を面発光レーザに適用した場合を例示する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明にかかる面発光型半導体素子の第1の実施の形態の構造を模式的に示す断面図である。この面発光型半導体素子は、GaAs基板(以下、単に基板ともいう)1上に半導体多層膜反射鏡層2が設けられ、この半導体多層膜反射鏡層2上に下部クラッド層3a、活性層4、上部クラッド層3bが順に設けられる。上部クラッド層3b上には、AlGaAs層5が設けられる。このAlGaAs層5は、その面内中央付近の領域に電流狭窄領域9が設けられ、この電流狭窄領域9の外周部分に酸化アルミニウム層5sが設けられた電流狭窄構造が形成される。このAlGaAs層5上には、半導体多層膜反射鏡層6が積層される。この電流狭窄領域9を有するAlGaAs層5は活性層4に近接して配置されることを特徴とする。ここで、半導体多層膜反射鏡層2,6によって基板面に対して垂直方向に光共振器を形成している。なお、半導体多層膜反射鏡層2は、特許請求の範囲の基板側反射鏡層に対応し、半導体多層膜反射鏡層6は、同じく表面側反射鏡層に対応し、AlGaAs層5は、同じく電流狭窄部に対応している。
半導体多層膜反射鏡層6上には電流狭窄領域9に対応する領域に設けたコンタクト層開口部7aを取り囲むようにコンタクト層7が設けられる。コンタクト層7およびコンタクト層開口部7aはパッシベーション膜10により覆われており、パッシベーション膜10内の所定の位置にはコンタクト層7が露出するように開口10aが設けられ、この開口10aが埋め込まれるようにたとえば金属からなる表面側電極11が設けられる。したがって、表面側電極11の開口10aに埋め込まれた部分であるコンタクト領域11aを介して表面側電極11とコンタクト層7が電気的に接続される。表面側電極11には、コンタクト層7が電流狭窄領域9を取り囲んでいる領域に対応して電極開口部11bが設けられている。また、基板1の半導体多層膜反射鏡層2が設けられた側と反対側には基板側電極13が設けられている。
活性層4は、電子と正孔の結合によって発光する一層以上の発光層4cと、発光層4cに電子と正孔を閉じ込め、発光層4cの上下から挟むように設けられるキャリア閉じ込め層4bと、の積層体の上下両面を光ガイド層4aで挟む構造を有する。たとえば、図1に示される例では、活性層4は、光ガイド層4a1、GaInNAsからなるキャリア閉じ込め層4b1、発光層4c1、GaInNAsからなるキャリア閉じ込め層4b2、発光層4c2、GaInNAsからなるキャリア閉じ込め層4b3、光ガイド層4a2が順次積層されている。ここで、発光層4c1,4c2は厚さ数nm〜数十nmの間にあることが望ましい。GaInNAsからなるキャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3は面内方向中央の領域で、In(インジウム)の組成が小さく、N(窒素)の濃度が高く、バンドギャップが小さい構造を有している。なお、一般的に、キャリア閉じ込め層4bは、障壁層に対応するものであり、発光層4cは井戸層に対応するものである。また、ここでは、発光層4c1,4c2が2層構造の場合を示したが、発光層4cが少なくとも1層あればよく、また少なくともキャリア閉じ込め層4bを発光層4cの片側に設けた活性層4であればよい。さらに、発光層4cの上下をキャリア閉じ込め層4bが挟む構造を有する活性層4であれば、キャリアの閉じ込め効果が電子と正孔の両者に対して働くのでなおよい。たとえば、活性層4が多重量子井戸構造を有するものでもよい。さらに、キャリア閉じ込め層4b1,4b2は、GaInNAsからなる場合を示しているが、一般的に、Al1-x-yGaxInyAs1-r-sSbsr(0≦1−x−y<1、0≦x<1、0<y<1、0<1−r−s<1、0<r<1、0≦s<1)で示される組成を有し、電流狭窄領域9に対応する領域内の中央付近でバンドギャップが小さく、その外周付近でバンドギャップが大きい構造を有するものならばよい。
このように構成された面発光型半導体素子において、表面側電極11と基板側電極13との間にキャリアを流すと、活性層4に近接して配置された電流狭窄領域9を介して、活性層4にキャリアが注入される。注入されたキャリアによって活性層4で発光された光は、半導体多層膜反射鏡層2,6からなる共振器によって共振され、コンタクト層開口部7aと電極開口部11bが重なる領域からレーザ光が外部に放射される。
さらに、本実施の形態の面発光型半導体素子におけるレーザ発振の状態を詳しく説明する。本実施の形態の面発光型半導体素子においては、活性層4に近接して電流狭窄領域9が設けられているため、表面側電極11からのキャリアは、電流狭窄領域9を介して活性層4の発光層4c1,4c2に注入される。つまり、活性層4の中で光ガイド層4a2を通過したキャリアはキャリア閉じ込め層4b3を介して発光層4c2に一部注入され、一部はキャリア閉じ込め層4b2に流れ込み、さらに、発光層4c1に流れ込んで発光に寄与する。一方、基板1側からのキャリアも同様に、クラッド層3aを介して活性層4に注入される。
GaInNAsからなるキャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3は、外周部分でN組成が低いのでバンドギャップが大きく、電流狭窄領域9の中央に相当する部分でN組成が高いのでバンドギャップが小さい。そのため、キャリアがキャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3の中央部分に集中され、結果的に発光層4c1,4c2の中央の部分に注入される。また、発光層4c1,4c2の厚さを数nmの厚さまで薄くしてキャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3との間に量子化準位を形成すると、キャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3のバンドギャップが中央部分で小さいことから発光層4c1,4c2中に形成される準位も中央部分で遷移エネルギが小さくなり、キャリアが中央に集中される効果がある。
ここで、このような面発光型半導体素子の製造方法について説明する。図2−1〜図2−9は、本発明にかかる面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。まず、GaAs基板1上にMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により半導体多層膜反射鏡層2と下部クラッド層3aを順次形成する(図2−1)。ついで、通常の選択成長マスク層14を堆積し、リソグラフィとエッチングを用いて活性層4を形成する領域に相当する領域に穴14aを開けた選択成長マスク14bを形成する(図2−2)。この選択成長マスク層14に開ける穴14aは、たとえば円形形状を有する。
引き続き、選択成長マスク14bを使用して、活性層4を形成する。具体的には、活性層4の光ガイド層4a1を形成した後、キャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3を1/6atm以上の第1の圧力下で常圧MOCVD法により選択成長して形成し、一方の活性層4の発光層4c1,4c2を第1の圧力の1/3よりも低い第2の圧力下(第1の圧力よりも低くかつ1/100〜1/3atmの範囲の第2の圧力下)で減圧MOCVD法により形成する。この工程を、作製するキャリア閉じ込め層4bと発光層4cの層数だけ繰り返して行い、最後に光ガイド層4a2を形成する(図2−3)。たとえば、キャリア閉じ込め層4b1は常圧環境下、発光層4c1は0.1気圧の減圧環境下、キャリア閉じ込め層4b2は常圧環境下、発光層4c2は0.1気圧の減圧環境下、キャリア閉じ込め層4b3は常圧環境下、というように、逐次成長圧力を変えながら結晶成長を実施する。
このようにキャリア閉じ込め層4bを第1の圧力(常圧を含む)で成長させることで選択成長部分に大きな組成分布を設けることができ、発光層4cを第2の圧力で成長させることで均一な組成にすることができる。ここで、第1の圧力(常圧)と第2の圧力(減圧)の圧力比を数倍以上、好ましくは10倍以上取ることが望ましい。後述するように、キャリア閉じ込め層4bでは選択成長領域でInの組成比を3倍以上取ることで、中央部分でバンドギャップが小さい構造の面発光型半導体素子の作製が容易に可能となる。一方成長圧力を下げて均一性のある成長ができるようにすると、拡散係数は圧力に反比例するので空間での組成分布が小さくなり、また、円形の選択成長における対向する両側から原料が供給され、選択成長領域の中央部分で原料が重なることにより、均一性が改善される。
たとえば第1の圧力(常圧)と第2の圧力(減圧)の圧力比を3倍にすると均一性が概略6倍改善される。その結果、第2の圧力下(減圧環境下)で形成された発光層4cの不均一性は10%程度となる(選択成長で組成比が1/3に変わる場合、組成の変化量は2/3となり、この1/6は11%で約10%となる)。このため、GaAs基板上に発光波長1.3μm帯を実現するために必要なIn組成40%程度のGaInNAsの組成に関しては、発光層4cにおける組成の不均一性を4%程度にすることができる。In組成が40%のGaInAs/GaAs量子井戸において4%程度のIn組成の揺らぎ(すなわち、4%程度の不均一性)がある場合、発光エネルギの揺らぎは、
(1)Inの変化に伴うバンドギャプのエネルギ変化
In組成1%当たりのGaInAsのバンドギャップ変化が〜12meV。
(2)In組成が40%程度の時にGaAsに対する臨界膜厚以下の厚さの量子井戸では発光エネルギが1.08eV(波長1.15μm)の程度であり、この値は、GaAsのバンドギャップエネルギ1.427eVから、GaAsとGaInAsのバンドギャップエネルギ1.427eV、0.89eVの差の約65%下げた値となる。
の2点を考慮することで、
不均一性(10%)×In組成(40%)×12meV((1)より)×65%((2)より)〜30meV
程度となる。
量子井戸のGaAs中の不純物はn型不純物の深さが〜5meVであり、p型不純物が20〜30meVの程度であり、また、室温のエネルギは26meVであることから、上記量子井戸の遷移エネルギの揺らぎは、不純物の深さエネルギの和や室温のエネルギと同程度となる。このため、キャリアを高濃度に注入して動作させるレーザにおいては、この程度の組成揺らぎの影響は限定的なものとなる。
さらに、第1の圧力(常圧)と第2の圧力(減圧)の圧力比を10倍にすると均一性は概略20倍改善される。その結果、不均一性は3%程度となる。このため、GaAs基板上に発光波長1.3μm帯を実現するために必要なIn組成40%程度のGaInNAsの組成に関して、不均一性を組成で1%強にすることができる。この場合、GaInAsのバンドギャップの揺らぎ量自体が温度エネルギの半分以下であり、発光特性にほとんど影響を与えなくなる。
具体的な圧力値について、第1の圧力に関しては1/6atm以上であればよいが、実際には1/6atm以上で大気圧+0.3atm以下の圧力であることが望ましい。これは、通常の真空装置の耐圧がプラス側に関しては0.3atm程度で設計されているために、実質的にプロセス装置の設計が容易にできるからである。また、第2の圧力に関しては、MOCVD法の原料ガスの分解が十分に進む1/100atm以上がよいが、高周波加熱などを用いてもプラズマの発生が起こりにくい1/20atm以上を用いることが望ましい。なお、第1の圧力の下限の1/6atmは、この3倍の値から求められる。
成長温度は600〜650℃の間であることが望ましい。これは、MOCVD法の成長で良質なGaAs系結晶を成長するためには600℃以上の成長温度を用いることが望ましいからである。また、後述するように、In組成が15%以下でN組成が1.5%以下のGaInNAsの結晶成長が望ましいが、成長温度が650℃以下であれば、In組成が15%以下のGaInNAsに対して、比較的容易に1%程度のNの添加が可能となるからである。
ついで、基板1上の選択成長マスク14bを取り除く。また、図2−3に示されるように、活性層4の外周部分4eは膜厚が厚くなっているので、形成した活性層4の外周部分4eをリソグラフィとエッチングを用いて除去して、選択成長の端部を取り除いてもよい(図2−4)。なお、このとき行われるエッチングは、活性層4だけではなくその下のクラッド層3aや半導体多層膜反射鏡層2に達するように行ってもよい。
ついで、活性層4を作製した基板1上に、上部クラッド層3b、AlGaAs層5、半導体多層膜反射鏡層6、コンタクト層7を順に成長させる(図2−5)。さらに、マスクとしてSiO2を堆積して、リソグラフィとエッチングによりコンタクト層7の中央部分にコンタクト層開口部7aを形成する(図2−6)。その後、再度マスクとしてのSiO2を堆積し、リソグラフィとエッチングによってコンタクト層7から半導体多層膜反射鏡層2に至るまでメサ構造15を形成する(図2−7)。ついで、AlGaAs層5を外周から酸化して、AlGaAs層5の外周部内のAl(アルミニウム)を酸化させた酸化アルミニウム領域5sを形成する。このとき、AlGaAs層5の中央部分ではAlは酸化されず、電流狭窄領域9が形成される(図2−8)。
ついで、パッシベーション膜10を形成した後に、リソグラフィとエッチングを用いてコンタクト層7の一部を露出させ、レジストを用いたリフトオフ法を用いて、コンタクト領域11aでコンタクト層7と接触し、電極開口部11bが開口した状態の表面側電極11を形成する(図2−9)。以上により、面発光型半導体素子が製造される。
以上で説明したように、選択成長マスク14bを形成してGaInNAsの選択成長を行うと、選択成長マスク14b端部の近くではIn組成が高くなるにつれてGa(ガリウム)組成が大きくなる。このため、Nの添加効率は、III族元素(すなわち、InとGa)の組成に応じて選択成長マスク14b端部では低くなり、選択成長マスク14b端部から離れると高くなる。
ところで、従来技術のGaInAsの場合には、マスク端部ではIn組成が高くバンドギャップが小さく、マスク端部から離れるとIn組成が低くバンドギャップが大きくなっていた。このため、閉じた領域内で選択成長を行うと、マスク端部の傍での領域の外周部分ではバンドギャップが小さくマスクから離れた領域の中心部分ではバンドギャップが大きくなる。その結果、このGaInAsをキャリア閉じ込め層3bとする面発光レーザに用いると、キャリアがバンドギャップの小さい活性層4の外周部分に流れてしまうために、横モードが不安定になる傾向があった。
これに対して、GaInNAsを選択成長する場合には、ある特殊な条件を考慮すると、キャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3の外周部分でIn組成が高く、N組成が低くなるバンドギャップの大きな構造となり、電流狭窄領域9の中央に相当する部分でIn組成が低く、N組成が高くなるバンドギャップの小さな構造とすることができる。そこで、以下に、このような構造を有するGaInNAsからなるキャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3に必要な条件の詳細を示す。
GaInNAsからなるキャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3には、つぎの(p−1)〜(p−4)に示す条件が必要である。
(p−1)N組成の高い領域ではN組成が十分高く、N組成の減少で十分なバンドギャップ変化が生じる。
(p−2)In組成が十分に低く、Nの高濃度添加が可能である。
(p−3)電流狭窄領域9に該当するキャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3内の位置でNの組成分布によるバンドギャップの縮小量がInの組成差によるバンドギャップの増大量よりも大きい。
(p−4)選択成長によりInの組成変化が実現できる。
さらに、実際に面発光型半導体素子に適用することを考えると、以下に示す(s−1)〜(s−3)の3つの付加的な条件を満たすことが望ましい。
(s−1)キャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3の電流狭窄領域9の中央部分に相当する部分と電流狭窄領域9の外周部分に相当する領域とで、バンドギャップ差が60meV以上あること。この構造により、キャリアの熱拡散を十分に抑制できる(概略10%以下)。
(s−2)発光層4c1,4c2からキャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3への電流オーバフローを抑制するために、両者の間に十分なバンドギャップ差があること。発光層4c1,4c2の遷移が1.3μmである場合には、キャリア閉じ込め層4b1,4b2,4b3のバンドギャップは200meV以上大きな1.15eV以上であること(より好ましくは、1.3μm帯といわれる1.26〜1.34μmの波長域の最も波長の短い1.26μmに対応する0.98evよりも200meV以上大きな1.18eV以上であること)。
(s−3)Nの濃度は発光強度の低下の小さい1.5%以下、望むべくは1%以下であること。
これらの条件から具体的な構造とするために以下の考慮を行う。GaInNAsのバンドギャップは、N組成の変化に対して概略180(meV/%)×Ga組成×N[組成変化](%)減少し、In組成の変化に対して概略14(meV/%)×In[組成変化](%)減少することを組み合わせて求めることができる。これらから、条件(s−1)を満たすためには、In組成の変化を無視して考えた場合に、上式よりN組成が1%変化するとバンドギャップは180meV変化するから、60meVのバンドギャップの変化を得るためには、最低でもN組成は、0.33%(=1%×60meV/180meV)以上変化する必要がある。そのため、N組成は0.33%以上であることが必要である。
つぎに、条件(p−3)の下で条件(s−1)を満たすための条件を検討する。図3は、成長温度が620℃でトリエチルガリウム(TEG)、トリメチルインジウム(TMI)、アルシン(AsH3)、ディメチルヒドラジン(DMH)を用いてGaInNAsを成長したときのGaInNAs中のIn組成に対するNの添加効率の変化を示す図である。この図3において、横軸にはGaInNAsのIn組成(%)を示しており、縦軸はNの添加効率を示している。図3に示されるように、たとえばIn組成が5%の状態から3%増加させると、Nの添加効率は1/4になることが実験的に確認できる。そのため、マスク端部でのIn組成がIn[端部組成](%)であり、マスク端部から中央部分にかけてInの組成がIn[組成変化](%)だけ減少するとし、中央部分でのN組成をN[中央組成](%)とすると、中央部分から端部にかけてN組成は、N[中央組成](%)から、N[中央組成]%×(1/4)^(In[組成変化]%/3%)へと変化(減少)する。このマスク端部でのN組成は、Inの組成を3%増加させたときにNの添加効率は1/4になり、また、図3でIn組成とNの添加効率との間の関係は指数関数で表されることから、Inの組成がIn[組成変化](%)だけ変化した場合のNの添加効率は(1/4)^(In[組成変化]%/3%)と表されることにより求められる。また、N組成の変化に対するGaInNAsのバンドギャップの変化が、−180(meV/%)×Ga組成×N[組成変化](%)であることを再度考慮すると、マスク端部でのGaInNAsのバンドギャップは、N組成=0の場合(:GaInAs)に対して、180(meV/%)×(1−In[端部組成]%/100)×{N[中央組成]%×(1/4)^(In[組成変化]%/3%)}だけ小さい。一方、マスク中央でのGaInNAsのバンドギャップは、N組成=0の場合(:GaInAs)に対して、180(meV/%)×(1−In[中央組成]%/100)×N[中央組成]%だけ小さい。このため素子中央から端部にかけてN添加の効果によるバンドギャップの増大は、[−180(meV/%)×(1−In[中央組成]%/100)×{N[中央組成]%×(1/4)^(In[組成変化]%/3%)}]−{−180(meV/%)×(1−In[中央組成]%/100)×N[中央組成]%}となる。なお、ここでは、Inの組成が低いことから、(1−In[端部組成])〜(1−In[中央組成])の関係を用いている。また、この式の第1項における(1/4)^(In[組成変化]%/3%)が、バンドギャップの変化に対して大きく寄与している。さらに、キャリア閉じ込め層の素子中央から素子端部にかけてのInの組成変化によって、バンドギャップは14meV×In[組成変化](%)だけ減少する。そして、キャリア閉じ込め層の素子中央から素子端部にかけてバンドギャップが60meV以上増大することが必要であるので、次式(1)の関係を満たす必要がある。
180(meV/%)×(1−In[中央組成]%/100)×[N[中央組成]%×{1−(1/4)^(In[組成変化]%/3%)}]−14meV×In[組成変化]%≧60meV ・・・(1)
図4は、常圧MOCVD法を用いて620℃でGaInAsを成長させた場合のマスク端部からの距離に対するIn組成の関係を示す図である。この図4において、横軸はマスク端部からの距離を示しており、縦軸はIn組成を示している。MOCVD法で選択成長を行うと、図4に示されるようにIn組成はマスク端部から20μm程度の間に急激に変化し、マスク端部と中央部での濃度差は、3倍程度変化する。なお、マスク端部から最低20μm離れていれば、In組成の濃度差として3倍程度の変化をもたせることができる。ただし、中央部付近でのIn組成を均一化させないようにするために、マスク端部からの距離の上限は50μm程度となる。条件(p−4)に該当するこの関係を(1)式に組み込むと、In[組成変化]≒2/3×In[端部組成]、In[中央組成]=In[端部組成]/3となることから、選択成長した端部のGaInNAsと中央部分のGaInNAsのバンドギャップ差は、次式(1)’の条件を満たすことが必要となる。
180(meV/%)×{1−(In[端部組成]/3)%/100}×[N[中央組成]%×{1−(1/4)^((In[端部組成]×2/3)%/3%)}]−14(meV/%)×{In[端部組成]×2/3}(%)≧60meV ・・・(1)’
図5は、GaInNAsキャリア閉じ込め層の素子端部と素子中央部でのバンドギャップの差を60meV以上とするための素子端部のIn組成と素子中央のN組成の関係を示している。この図5は、(1)’式の関係をグラフに表したものであり、横軸は、キャリア閉じ込め層の素子端部でのIn組成を表しており、縦軸は、素子中央でのN組成を表している。上述したように、キャリア閉じ込め層を構成するGaInNAs中のIn組成は素子端部で最も高く、N組成は素子中央部で最も高いことから、図5は、GaInNAsキャリア閉じ込め層中の最大In組成と最大N組成の関係を示す図でもある(なお、以下では、端部のIn組成および中央のN組成をそれぞれIn組成、N組成と記述し、端部組成または中央組成を簡単のために組成と記述する)。
この(1)’式の範囲は、図5中の曲線の上側に相当する。図5に示されるように、N組成は極小点となる0.8%以上とすることが必要となる。また、条件(s−2)に示すように、電流のオーバフローを抑制するためには、キャリア閉じ込め層のバンドギャップはバンドギャップの最も小さな素子中央においても発光エネルギに対して200meV以上大きいことが必要である。特に、1.3μm帯の波長のシングルモード光通信用ファイバを利用するためには、ファイバの零分散エネルギの0.95eV(1.3μmの波長に相当)に対して素子中央でのキャリア閉じ込め層のバンドギャップを200meV以上大きくする必要がある。このため、キャリア閉じ込め層の素子中央でのバンドギャップを1.15eV以上にする必要がある。さらに、条件(s−1)に示すように、キャリア閉じ込め層によって横方向のキャリア閉じ込めを実現するためには素子端部でのキャリア閉じ込め層のバンドギャップを素子中央に対して60meV以上大きくする必要がある。以上の二点を考慮すると、キャリア閉じ込め層の素子端部でのバンドギャップを発光エネルギに対して260meV以上大きくする必要がある。つまり、発光エネルギが0.95eVの場合、GaInNAsキャリア閉じ込め層のバンドギャップを、In組成が高くN組成が低い素子端部領域において、1.21eV以上にする必要がある。ところで、Ga1-xInxAsのバンドギャップは、0.324+0.7×(1−x)+0.4×(1−x)×(1−x)(eV)である(赤崎勇編著、「III−V族化合物半導体」、p.187、培風館(1994)より)。この式より、バンドギャップが1.21eV以上となるIn組成xを求めると、In組成は0.15以下となる。すなわち、GaInNAsキャリア閉じ込め層の素子端部(N組成の低い領域)で十分大きなバンドギャップを得るためには、In組成は15%以下とする必要がある。ただし、ここでは、マスク端部では、N組成が低いので、Nのバンドギャップの変化に与える影響は軽微であるとして、N組成が0の場合に近似してバンドギャップを求めている。なお、1.3μm帯シングルモードファイバ用の標準的な波長域(1.26〜1.34μm)全域に本実施の形態を適用するために、キャリア閉じ込め層のバンドギャップがこの中で最大の発光エネルギ0.98eV(1.26μm)よりも260meV以上大きな1.24eV以上であることがより望ましい。そして、GaInAsの組成とバンドギャップの関係を考慮すると、この条件を満たすためには、In組成を0.12以下とする必要がある。以上のような理由でGaInNAsキャリア閉じ込め層の素子端部でのIn組成を12%以下とすることがより望ましい。
条件(s−3)であるN組成が1.5%以下の制約の下で(1)’式を満たすためには、図5に示されるように、In組成は1%以上20%以下の範囲で添加されている必要がある。さらに、In組成が2%以上11%以下添加されているとN組成を1%以下にできるのでより望ましい。
条件(p−1)を具体的に述べたものが条件(s−1)であり、(1)式または(1)’式を満たすことで、条件(p−1)は満たされる。ここで、固相中(膜中)のNの比率を1%程度(Nの量は非常に少ないので、N/As〜0.01と近似できる)にしたい場合について考える。まず、図3からIn組成が1%のときには、図3より、窒素の添加効率(N/As)s/(DMH/AsH3)vは、0.01である。これらから、0.01/(DMH/AsH3)=0.01となり、DMH/AsH3=1となる。つまり、In組成が1%のとき、固相中のNの比率を1%程度にする場合には、As原料に対してN原料を1倍程度とすればよい。同様に、In組成が15%のときには、図3より、窒素の添加効率は1/30,000である。これより、0.01/(DMH/AsH3)=1/30,000となり、DMH/AsH3=300となる。つまり、In組成が15%のとき、固相中のNの比率を1%程度にする場合には、As原料に対してN原料を300倍程度とすればよい。以上より、条件(p−2)は、In組成が1〜15%の間にあれば、As(砒素)原料に対してN原料を1〜300倍程度供給すれば膜中のN組成を1%程度まであげることが容易に可能であることが分かる。さらに、条件(p−3)は(1)式または(1)’式を満たすことで満たされる。また、条件(p−4)は(1)’式により考慮した。
これらの条件(p−1)〜(p−4)と条件(s−1)〜(s−3)を考慮することにより、In組成の大きな領域のInの組成が1〜15%の間にあり、N組成の大きな領域ではN組成が0.8〜1.5%の間にあることが必要であることになる。また、In組成の大きな領域のIn組成が2〜11%の間にあり、N組成の大きな領域ではN組成が0.8〜1%の間にあればより望ましい。
上述したように、MOCVD法によりGaInNAsの選択成長を常圧で行った場合、選択成長マスク14bの端部から20μm程度の範囲に渡り組成に勾配を設けることができる。このため、直径Φ40μm程度まで組成の分布を設けることができる。上述したようにこの方法で活性層4を形成した場合には、活性層4の形成後に電流狭窄領域9の外側にコンタクト領域11aを設けることが必要となる。また、選択成長領域9の端部はエッチングにより除去することまたはイオン注入により高抵抗化することが望ましい。端部の除去または高抵抗化する領域と電極生成領域を合わせると、プロセスマージンを考慮した場合、5μm以上の幅が必要になる。このため、電流狭窄領域9は直径の最大径をΦ30μm以下とすることが望ましい。
図6は、キャリア閉じ込め層を均一な材料で形成した場合における電流狭窄領域の径に対する中央の電流密度/外周部の電流密度の関係の従来例を示す図である。この図6では、キャリア閉じ込め層としてGaAsを用いた場合を示している。この図6に示されるように、電流狭窄領域9の直径が約4μmよりも大きくなると、電流は活性層4の中で端部に集中的に流れるようになる。そのため、たとえばレーザ動作させた場合、基本横モードでの動作が難しくなる。そこで、電流狭窄領域9の直径を小さくして4μm以下とすると周りから電流が集中する効果により、電流狭窄領域9の中央に対応する活性層4での電流密度が最も高くなる。
図7は、本実施の形態で形成したキャリア閉じ込め層に組成の傾斜を持たせた場合における平均電流密度に対する中央の電流密度/外周部の電流密度の関係を示す図である。この図7に示されるように、本実施の形態では、電流狭窄領域9が小さい場合には中央部分に対応する活性層4での電流密度が周囲よりもずっと大きくなり、この状態は注入電流密度が高くなっても維持される。また、電流狭窄領域9の直径が大きくなっても電流密度は電流狭窄領域9の中央部分で大きくなり、基本横モードの安定な素子動作が可能となる。このため、本実施の形態による面発光型半導体素子は、特に電流狭窄領域9の直径が5μm以上の素子で有効であり、また高出力な単一横モードで動作する素子に対して有効である。さらに、変調をかけると電流密度分布に変化が生じるが、本実施の形態によれば、電流狭窄領域9の中央部部分と外周部分での電流密度差が注入電流密度の高い場合まで維持され、高速、高出力な動作が可能となる。
この第1の実施の形態によれば、活性層4中のキャリア閉じ込め層3bを、中央領域でIn組成を小さくしN組成を高くし、外周領域でIn組成を大きくしN組成を低くするように選択成長させて形成したので、中央領域でバンドギャップを小さく、外周領域でバンドギャップを大きくすることができ、中央部分での電流注入効率を高めることができる。その結果、単一横モード発振の条件を広く取ることができ、高出力の面発光型半導体素子を実現することができる。さらに、電流狭窄領域9を活性層4に近接して設けたので、電流注入領域のサイズを大きくしても、電流狭窄領域9の中央部分での注入電流密度を高くすることができ、ビーム径が大きく光ビームの広がり角の小さな面発光型半導体素子を実現することができる。
(第2の実施の形態)
図8は、本発明にかかる面発光型半導体素子の第2の実施の形態の構造を模式的に示す断面図である。この面発光型半導体素子は、第1の実施の形態の活性層4の上の半導体多層膜反射鏡層6に代えて、誘電体多層膜反射鏡層17を形成した構造となっている。具体的には、活性層4上に第1の上部クラッド層3b1、電流狭窄領域9を有するAlGaAs層5、第2の上部クラッド層3b2が順に形成され、第2の上部クラッド層3b2上の電極形成位置に対応する位置にコンタクト層18を形成し、その上にSiN層17aを第1層とする誘電体多層膜反射鏡層17、パッシベーション膜10を形成する。パッシベーション膜10、誘電体多層膜反射鏡層17を貫通してコンタクト層18に達する貫通孔に電極を構成する導電性材料を埋め込んだコンタクト領域18aが形成され、このコンタクト領域18aの上端部に表面側電極11が形成される。なお、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。また、誘電体多層膜反射鏡層17は、特許請求の範囲の表面側反射鏡層に対応している。
ここで、この面発光型半導体素子の製造方法について説明する。図9−1〜図9−3は、この第2の実施の形態の面発光型半導体素子の製造方法の手順の一例を示す断面図である。この第2の実施の形態の面発光型半導体素子でも、第1の実施の形態の図2−1〜図2−2と同様に、半導体多層膜反射鏡層2と下部クラッド層3aを形成したGaAs基板1上に、選択成長マスク14bを形成する。
ついで選択成長マスク14bで覆われていない領域に、活性層4、第1の上部クラッド層3b1、AlGaAs層5、第2の上部クラッド層3b2およびコンタクト層18を選択成長させて、選択成長マスク14bを取り除く(図9−1)。
ついで、コンタクト層18の電流狭窄領域9に対応する部分を除去した後、必要に応じて選択成長した結晶の中央部分を残して、エッチングによりコンタクト層18、第2の上部クラッド層3b2、AlGaAs層5、第1の上部クラッド層3b1を除去する。このとき、活性層4、その下の下部クラッド層3aや半導体多層膜反射鏡層2を除去してもよい。そして、水蒸気酸化法によりAlGaAs層5を端部より酸化して電流狭窄領域9を形成する(図9−2)。
ついで、パターン形成したコンタクト層18を有する第2の上部クラッド層3b2上に誘電体多層膜反射鏡層17の第1層としてSiN層17aを形成し、誘電体多層膜反射鏡層17を蒸着し、パターニングした後に、さらにパッシベーション膜10を形成する(図9−3)。その後、コンタクト層18の形成位置に合わせて、パッシベーション膜10、誘電体多層膜反射鏡層17を貫通するように貫通孔を開けてコンタクト層18の一部を露出させ、この貫通孔に導電性材料膜を埋め込みコンタクト領域18aを形成する。そして、このコンタクト領域18a上に導電性材料膜で電極11を形成することによって、図8に示される面発光型半導体素子が形成される。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、高反射率層の形成が容易な誘電体膜を基板と反対側の多層膜反射鏡として選択成長領域の上部に形成しているので、選択成長領域に伴う凸凹の影響を受けても半導体多層膜反射鏡の場合と異なり結晶欠陥に伴う吸収の発生や電流のリーク、反射率の低下が起こりにくい。このため、面発光型半導体素子の信頼性が高くなるという効果を有する。また、誘電体膜を用いることで、反射鏡の厚さを薄くすることができ、選択成長領域に過大な歪を加えることがないという効果も有する。さらに、誘電体膜は低温の蒸着形成が可能であることから、高温での結晶成長が必要な半導体多層膜反射鏡のように、成長温度と室温との温度差による結晶の熱歪の影響を受けにくいという効果も有する。
(第3の実施の形態)
図10は、本発明にかかる面発光型半導体素子の第3の実施の形態の構造を模式的に示す断面図である。この面発光型半導体素子は、第1の実施の形態において、半導体多層膜反射鏡層2と下部クラッド層3aとの間に、外周部分が酸化されて、中央に電流狭窄領域9bが形成された基板側AlGaAs層5bが形成される構造を有する。なお、その他の部分は第1の実施の形態と同一であるので、その説明を省略する。
この第3の実施の形態の面発光型半導体素子の製造方法は、半導体多層膜反射鏡層2と下部クラッド層3aとの間に基板側AlGaAs層5bを設け、その中に電流狭窄領域9bを設けたこと以外は第1の実施の形態と同様の方法で製造することができる。ただし、基板側AlGaAs層5bの電流狭窄領域9bは、AlGaAs層5の電流狭窄領域9と同時に形成される。すなわち、メサ構造を形成した後に、AlGaAs層5,5bを外周から酸化し酸化アルミニウム層5sを形成して、中央部分にそれぞれ電流狭窄領域9,9bを形成する。なお、図10では、活性層4の上下に電流狭窄領域9,9bを設けた場合を示しているが、活性層4の下側にのみ電流狭窄領域9,9bを設けてもよい。
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、活性層4の下側の平坦部分に基板側AlGaAs層5bを設け、酸化する直前に基板側AlGaAs層5bをメサ構造状にすることによって、電流狭窄領域9bがプロセスの途中で端面から想定外の酸化を受けることがない。また、基板側AlGaAs層5bを平坦部に形成できるので、酸化プロセスの再現性が高くなる。これらの理由により、信頼性の高い素子形成が可能になるという効果を有する。さらに、活性層4の上下に電流狭窄領域9,9bを設けた場合には、横方向への電流拡がりが小さくなり、より一層の低電流動作が可能になるという効果も有する。
(第4の実施の形態)
図11は、本発明にかかる面発光型半導体素子の第4の実施の形態の構造を模式的に示す断面図である。この面発光型半導体素子は、第1の実施の形態の面発光型半導体素子において、上部クラッド層3b上に、AlGaAs層5を酸化した電流狭窄領域9を設けずに、半導体多層膜反射鏡層6とコンタクト層7を形成し、これらの半導体多層膜反射鏡層6とコンタクト層7の外周部分に対してイオン注入を行って高抵抗領域91を形成して、電流狭窄領域92を設けた構造を有している。なお、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。また、半導体多層膜反射鏡層6とコンタクト層7の高抵抗領域91および電流狭窄領域92は、特許請求の範囲における電流狭窄部に対応している。
この第4の実施の形態の面発光型半導体素子の製造方法は、半導体多層膜反射鏡層2と下部クラッド層3aを形成したGaAs基板1上に、選択成長マスク14bを形成して活性層4を選択成長させ、さらに上部クラッド層3bと半導体多層膜反射鏡層6を形成し、所定の形状(メサ型)に加工する。そして、半導体多層膜反射鏡層6の電流狭窄領域92とする部分にマスクを形成し、プロトンのイオン注入を行う。これによって、マスクされた部分ではイオン注入は行われず、マスクされない半導体多層膜反射鏡層6の外周部分にプロトンがイオン注入され、高抵抗化される。イオン注入の際には、半導体多層膜反射鏡層6の下面よりも下の層に、イオン注入した不純物原子(プロトン)がドープされないように、イオン注入時のエネルギを調整する。これによって、半導体多層膜反射鏡層6の外周部分に高抵抗領域91が形成され、中央付近に電流狭窄領域92が形成される。ついで、コンタクト層7の中央部を除去する。その後、パッシベーション膜10を形成し、コンタクト層7が露出するようにパッシベーション膜10の所定の部分を除去する。この除去した部分に導電性材料を埋込み、表面側電極11を形成して、図11に示される面発光型半導体素子が形成される。
なお、上述した説明では、イオン注入による電流狭窄構造を、第1の実施の形態の面発光型半導体素子に適用した場合を示したが、第3の実施の形態の面発光型半導体素子に適用してもよい。
この第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、電流狭窄領域92をイオン注入で半導体多層膜反射鏡層6に形成するようにしたので、イオン注入する領域を結晶表面に設けたイオン注入マスクのパターニングにより正確に定めることができる。特に、選択成長領域の側面からAlGaAs層を酸化する必要がないので、選択成長領域端部またはこの領域をエッチングしたメサ構造端部に半導体多層膜反射鏡層6を形成したときに生じる異常成長などによって電流狭窄領域92が大きな影響を受けることがない。また、選択成長領域92の端部またはエッチングしたメサ構造端部の上に成長した結晶に欠陥が発生しても、選択成長した結晶の電極側をイオン注入により高抵抗化するので、欠陥の電気的な特性に与える影響も低減することができる。
以下に、上述した各実施の形態に対応する実施例について説明する。
実施例1では、第1の実施の形態で説明した面発光型半導体素子を面発光レーザとして用いる場合を例に挙げて説明する。図12は、本発明の面発光レーザの実施例1の構造を模式的に示す断面図である。この図12の面発光レーザは、図1において、活性層4上に第1の上部クラッド層3b1、AlGaAs層5、第2の上部クラッド層3b2が形成され、活性層4上の上部クラッド層3bが2層構造となっており、また、半導体多層膜反射鏡層6上に半導体電流拡散層72を有する構造となっている。
この面発光レーザは、基板1としてn型のGaAs基板を用い、半導体多層膜反射鏡層2は、AlqGa1-qAs(q=0.95)からなる層とAlsGa1-sAs(s=0.5)からなる層を交互に60層ずつ積層した積層体からなり、下部クラッド層3aは、n型の導電型のGaAsからなる。また、活性層4は、図12に示されるように、上下の光ガイド層4a,4b間に、2層の発光層4c1,4c2が3層のキャリア閉じ込め層4b1〜4b3で挟まれる構造の三重量子井戸構造を有し、1,300nmの発光波長を有する。光ガイド層4a,4bは、GaAsからなり、キャリア閉じ込め層4b1〜4b3は、GaInNAsからなり、発光層4c1,4c2は、均一な組成のGaInNAsからなる。
ここで、キャリア閉じ込め層4c1〜4c3は、電流狭窄領域9に対応する中心部分でGa0.98In0.020.01As0.99の組成を有し、外周部分ではGa0.93In0.070.001As0.999の組成を有するように形成される。
さらに、第1の上部クラッド層3b1は、p型の導電型のGaAsからなり、AlGaAs層5は、Al0.9Ga0.1As(45nm)とAl0.98Ga0.02As(15nm)とAl0.9Ga0.1As(45nm)の3層構造からなり、第2の上部クラッド層3b2は、p型の導電型のGaAsからなり、半導体多層膜反射鏡層6は、AlsGa1-sAs(s=0.05)層とAlqGa1-qAs(q=0.95)層を交互に50層積層した積層体からなる。AlGaAs層5は、Al0.98Ga0.02As(15nm)で、電流狭窄領域9が中央から直径7.5μmの範囲となるように外側から酸化される。
また、半導体多層膜反射鏡6上には、AlaGa1-aAs(a=0.6)からなる厚さ1.5μmの半導体電流拡散層72が形成される。その上の一部分に形成されるコンタクト層7は、GaAsからなる。ここで、半導体電流拡散層72のキャリア濃度は1×1018cm-3とし、コンタクト層7のキャリア濃度は2×1019cm-3とする。
コンタクト層7の表面の一部分とコンタクト層7を除去した部分の半導体電流拡散層72の表面には、SiO2からなるパッシベーション膜10が形成されている。表面側電極11は、Ti/Pt/Auからなる。本実施例1では、コンタクト領域11aの幅は2μmとする。また、基板1の裏面の基板側電極13は、AuGaNi/Auからなる。
このような構造の面発光レーザにおいて、表面側電極11から注入されたキャリアはコンタクト層7、半導体電流拡散層72、半導体多層膜反射鏡層6、第2の上部クラッド層3b2を介して、電流狭窄領域9で狭窄されて活性層4に注入される。表面側電極11には電流狭窄領域9に対応する部分を含む電極開口部11bが設けられており、電極開口部11bの電流狭窄領域9に対応する部分からレーザ光が取り出される。また、基板側電極13からのキャリアは、半導体多層膜反射鏡2を介して、活性層4に注入される。
ここで、この実施例1の面発光レーザの製造方法について説明する。なお、面発光型半導体素子の製造手順は、第1の実施の形態の図2−1〜図2−9に示したので、ここでは、詳細な説明は省略し、概略のみ述べる。GaAs基板1上にトリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム、アルシンを原料として、減圧MOCVD法により半導体多層膜反射鏡層2と下部クラッド層3aを650℃で順次形成する。また、選択成長マスク14bとしてSiO2を用いる。選択成長において、キャリア閉じ込め層4b1は常圧環境下、発光層4c1は0.1気圧の減圧環境下、キャリア閉じ込め層4b2は常圧環境下、発光層4c2は0.1気圧の減圧環境下、キャリア閉じ込め層4b3は常圧環境下というように、逐次成長圧力を変えながら結晶成長を実施する。なお、このときの成長温度は600℃から650℃の間とする。選択成長マスク14bを弗酸とアンモニアの混液で取り除く。この活性層4の外周部分4eに対して通常のリソグラフィ法で選択エッチングマスクを形成し、塩素系のドライエッチングにより除去して、選択成長の端部を取り除いてもよい。その後、第1の実施の形態で説明した手順によって面発光レーザが製造される。
上述したように、GaInNAsの選択成長を行うと、選択成長マスク14bの端部近くではIn組成が高くなるにつれてGa組成が大きくなる。このため、Nの添加効率はIII族元素の組成に応じてマスク端部では低くなり、離れると高くなる。実際に、本実施例1では、GaInNAsからなるキャリア閉じ込め層4b1〜4b3は電流狭窄領域9に対応する中心部分でGa0.98In0.020.01As0.99の組成であり、外周部分ではGa0.93In0.070.001As0.999の組成となっている。このため、本実施例1の面発光レーザでは、電流狭窄領域9の中央に対応する部分から周辺に対応する部分に向かい活性層4のバンドギャップが大きくなっている。
図13は、本実施例1の面発光レーザにおける電流狭窄領域の中央に対応する領域から選択成長マスクの端部に向かう動径方向のバンドギャップ、N組成分布およびInとGaの相対取り込み効率の変化の様子を示す図である。なお、この図で、InとGaの相対取り込み効率は、選択成長マスク内の各位置での中央に対する組成の比を示している。また、各位置におけるGaとInの比は、その位置における組成比を示しているが、縦軸は任意単位であって組成そのものを示すものではない。この図に示されるように、InとNの組成の変化に応じてGaInNAsのバンドギャップは1.19eVから1.3eVまで増大する。このため、電流はバンドギャップの小さい素子の中央部分に狭窄される。面発光レーザでは注入電流密度が高くなると素子中央だけではなく外周部分でも電流密度が閾値電流に達してレーザ発振が可能となり横モードが不安定になるが、本実施例1の素子構造を用いることでこの効果を抑制できる。
図14は、本発明のGaInNAsキャリア閉じ込め層を用いた場合と従来のGaAsの均一なキャリア閉じ込め層を用いた場合の素子中央部分での電流密度と外周部分での電流密度の比の注入電流依存性を示す図である。この図14において、横軸は、注入電流(mA)を示し、縦軸は、素子中央部分と外周部分の電流密度の比を示している。従来のGaAsキャリア閉じ込め層を用いた場合には、注入電流が低い場合でも素子中央と外周での注入電流密度の比がほとんど1であり、注入電流を20mA以上に上げると素子外周部分での注入電流密度が中央部分よりも高くなる。これに対して本実施例1のようにキャリア閉じ込め層の組成を面内で変化させた場合、注入電流が小さい場合には素子中央での注入電流密度が素子外周部分での値と比べて大きくなる。このため、閾値電流が下がる。従来のGaAsキャリア閉じ込め層を用いた面発光レーザでしきい電流が4mAである場合、本発明の面発光レーザでは以下のような理由でしきい電流が約3.5mAとなる。本実施例の場合、図13に示すように素子中央の組成がほぼ均一な領域の直径が〜4μmであり波長の数倍あることから素子中央でのレーザ動作が可能である。レーザ発振が起こるためには一定の注入電流密度が必要であるが、図14から読み取れるように、本発明の面発光型半導体素子では注入電流が3.5mAの時に電流密度の比は素子中央と素子外周部分で1.225:1となる。これに対して従来技術の面発光レーザの場合、4mAの電流を注入した時、注入電流密度の素子中央部分と素子外周部分の電流密度の比は1.03:1である。電流密度の高い領域の面積をs1、電流狭窄領域全体の面積をs2、本発明の面発光レーザの外周部分での注入電流密度をI1、従来技術の面発光レーザの外周部分での注入電流密度をI2、本発明でのしきい電流をPmAとすると、本発明の場合PmA={s1×1.225+(s2−s1)×1}×I1、従来技術の場合4mA={s1×1.03+(s2−s1)×1}×I2となり、しきい電流密度が一致することから、1.225×I1=1.03×I2となる。このため、
PmA/(s2+0.225s1)=(1.03/1.225)×{4mA/(s2+0.03s1)}・・・(2)
となる。さらに、本実施例の素子の場合電流狭窄領域の直径が7.5μmで素子中央部分の均一な領域の直径〜4μmに対して十分大きいので、PmA≒1.03/1.225×4mAの関係が成り立つ。また(2)式から明らかなように、本実施例に限らず、素子中央部分の電流密度が周辺部分よりも高ければしきい電流密度が低減できる。
また、注入電流を大きくした時にも、素子の中央での注入電流密度が外周部分よりも大きな状態が維持されるため、注入電流を大きくしても単一横モード動作が維持される。従来のGaAsキャリア閉じ込め層を用いた場合、単一横モード動作の可能な光出力は1.5mWであると、本実施例の場合には、図14から明らかなように、従来の2倍の電流値である20mAでも単一横モード動作が可能となり、この時の光出力として3mWが得られる。
本実施例1によれば、中央部付近でバンドギャップが小さくなるようにGaInNAsの組成を面内方向で選択成長により変化させたキャリア閉じ込め層を面発光レーザに用いるので、注入電流密度を上げても単一横モード動作を安定して維持させることができ、出力の高い面発光レーザを作製することができる。
実施例2では、第2の実施の形態で説明した面発光型半導体素子を面発光レーザに適用した場合の具体例について図8を参照して説明する。本実施例2の面発光型半導体素子は、第2の実施の形態の図8の面発光型半導体素子において、活性層4が、GaAsからなる光ガイド層4a1、GaInNAsからなる5層のキャリア閉じ込め層4b、およびGaInAsで埋め込んだInAs量子ドット層よりなる4層の発光層4cと、GaAsよりなる光ガイド層4a2によって形成されている。なお、キャリア閉じ込め層4bは中央部分の直径5μmの範囲ではバンドギャップが均一であり、その外側で直径Φ30μmの範囲までバンドギャップが1.2eVから1.27eVに増大するように形成している。
また、第1の上部クラッド層3b1は、1×1018cm-3のC(炭素)をドープしたGaAsからなり、AlGaAs層5は、1×1018cm-3以上のCをドープしたAl0.95Ga0.05As(45nm)層、Al0.98Ga0.02As(20nm)層、およびAl0.95Ga0.05As(45nm)層の三層で構成され、第2の上部クラッド層3b2は、1×1018cm-3のCをドープしたGaAsからなり、コンタクト層18は、Cを1×1019cm-3以上添加したGaAsからなる。ここで、AlGaAs層5は、電流狭窄領域9が中央から直径6μmとなるように外側から酸化される。
誘電体多層膜反射鏡層17は、第1層が50nmのSiN層17aからなり、その上に12ペアのTa25/SiO2からなる。誘電体多層膜反射鏡層17の第1層としてSiN層17aを設けることによって、Ta25の第2の上部クラッド層3b2に与える影響を低減している。また、コンタクト領域18aと表面側電極11は、p型のPt/Auからなり、基板1の裏面の基板側電極13は、n型のAuGeNiとAuの積層体からなる。
ここで、本実施例2の面発光型半導体素子の製造方法について説明する。まず、実施例1と同様にGaAs基板1上にMOCVD法により半導体多層膜反射鏡層2と下部クラッド層3aを順次形成する。ついで、通常の選択成長マスク層14を堆積しリソグラフィとエッチングを用いて直径30μmの穴14aをあけて選択成長マスク14bを形成する。引き続いて、この選択成長マスク14bを利用して、活性層4、第1の上部クラッド層3b1、AlGaAs層5、第2の上部クラッド層3b2、コンタクト層18をMOCVD法により選択成長して形成する。
ついで、選択成長した領域の外周部分3μmの幅でリソグラフィとエッチングを用いて除去して、選択成長の端部を取り除く。このエッチングでは選択成長した層だけではなくその下の下部クラッド層3aや半導体多層膜反射鏡層2に達してもよい。ついで、リソグラフィとエッチング法を用いて、コンタクト層18の電流狭窄領域9に対応する部分を直径8μmの円形に除去する。この後、電流狭窄領域9に対応する領域の中央から直径20μmの外側をエッチングして誘電体多層膜反射鏡層17、コンタクト層18、第2の上部クラッド層3b2、AlGaAs層5、第1の上部クラッド層3b1を除去する。このとき、活性層4、その下の下部クラッド層3aや半導体多層膜反射鏡層2の一部も除去してもよい。ここで水蒸気酸化法によりAlGaAs層5を端部より450℃で所定の時間、酸化して電流狭窄領域9を形成する。
なお、誘電体多層膜反射鏡層17の蒸着においては、誘電体多層膜反射鏡層17は第1層としてSiN層17aをプラズマCVD法により蒸着し、引き続いて、Ta25とSiO2の多層膜を電子線蒸着で形成する。ついで、誘電体多層膜反射鏡層17に内径12μm、外径18μmのドーナッツ状の貫通孔を開けてコンタクト層18の一部を露出させて、その上からPt、Auの順に蒸着してコンタクト領域18aと表面側電極11を形成する。この際、電流狭窄領域9に対応する部分に関してはリフトオフ法などの通常の方法でメタルを除去して、光の通過する電極開口部11bを形成する。そして、基板1の裏面にn型の基板側電極13をAuGeNiとAuを積層して形成する。
この実施例2においてもGaInNAsからなるキャリア閉じ込め層4bのバンドギャップが外側で大きく内側で小さいために、電流が素子の中央に狭窄されて、実施例1と同様に低閾値で高出力の単一横モード動作が可能となる。また、本実施例2においては、誘電体多層膜反射鏡層17の厚さは4μm以下であるにもかかわらず、99.7%以上の反射率を有する反射鏡を設計可能である。このような反射率は半導体多層膜反射鏡を用いた場合には、6μm以上の結晶成長が必要であり、スループットが低いために本実施例2と比べた場合の製造コストは数倍に上る。
また本実施例2では、p側の電流が半導体のヘテロ接合を積層した半導体多層膜反射鏡2を通過しない構造を用いているので、素子全体の抵抗が小さく、コンタクト層を用いて電極抵抗を下げると素子全体に対する抵抗低減の効果が大きい。また、本実施例2のような面発光型半導体素子では、電極を電流狭窄領域9の周辺に対応する表面に設けているため、半導体多層膜反射鏡を用いる場合と比べて、電流狭窄領域9の直径に対して電流を横方向に広げる役割を果たす第2の上部クラッド層3b2の厚さが薄く、電流が電流狭窄領域9の周辺に集中し易くなってしまうが、本実施例2では、従来の技術と比べて素子の中央への電流集中の効果が大きいので、素子の中で均一に電流を注入することができる。
さらに、本実施例2の面発光型半導体素子では本発明による素子中央への電流狭窄効果が大きいために、誘電体ミラーによる反射鏡の反射率が高い利点を生かすことができ、従来技術であるGaAsキャリア閉じ込め層を用いたときに閾値電流は5mAとなるが、本実施例2では略1/2に下げることができる。また、注入電流を大きくした時にも、素子の中央での注入電流密度が外周部分よりも大きな状態が維持されるため、注入電流を大きくしても単一横モード動作が維持される。そのため、従来のGaAsキャリア閉じ込め層を用いた場合、単一横モード動作の可能な光出力は1mWであるが、本実施例2の構造を用いることで、注入電流密度を高くしても素子中央での電流密度が外周よりも高い状態が保たれ、従来の2倍の電流値である15mAでも単一横モード動作が可能であり、この時、光出力として2mWが得られる。
実施例3では、第3の実施の形態で説明した面発光型半導体素子を面発光レーザとして用いる場合を例に挙げて、第3の実施の形態で用いた図10を参照して説明する。
この面発光レーザは、光ガイド層4a1,4a2は、GaAsからなり、キャリア閉じ込め層4b1〜4b3は、GaInNAsからなり、発光層4c1,4c2は、Ga0.54In0.46Asからなる活性層4を有する。ここで、キャリア閉じ込め層4b1〜4b3は、中央の領域では、In組成が0.02で、N組成が0.014でバンドギャップが1.14eVであり、外側の領域では、In組成が0.06で、N組成が0.0022でバンドギャップが1.3eVである。
AlGaAs層5,5bの外周部分は酸化されて、中央部分に直径が6μmの電流狭窄領域9,9bが設けられている。表面側電極11は、Au/Zn/Auからなり、基板側電極13にはn型の電極が設けられている。
このような面発光レーザは、第1と第3の実施の形態で説明した手順によって製造されるので、ここでは、具体的な製造方法の説明については省略する。
本実施例3では電流狭窄領域9,9bの直径を6μmとしたが、電流狭窄領域9,9bの半径が上側の半導体多層膜反射鏡層6と基板側の半導体多層膜反射鏡層2の薄い方よりも大きいと、電流が電流狭窄領域9,9bの外周部分から外側に集中するようになり結果的に光が電流狭窄領域9,9bの外周部分から外側に集中するようになり、横モードが不安定な原因となる。しかし、本実施例3によれば、内周部分に電流を集中させることができるので、横モードを安定にすることが可能である。
この実施例3によれば、面発光レーザの活性層4の上下に電流狭窄領域9,9bを設けたことにより、低閾値電流動作が可能となる。しかし、上下に電流狭窄領域9,9bを設けることで、電流が発光層3c1,3c2の中では広がりにくくなり電流狭窄領域9,9bの外縁部分に対応する領域での電流密度が高くなりやすい。このため、従来技術の場合、電流狭窄領域9,9bの直径を5μm以上とすると素子中央より外側での電流密度が高くなる。しかし、本実施例3を用いると素子中央を流れる電流が大幅に増大し、直径7.5μmでも中央の電流密度を外側よりも高くすることができる。この結果、本実施例3の面発光レーザでは、1mAの閾値電流で動作し、光出力が2mW以上の単一横モード動作が可能となる。
実施例4では、第4の実施の形態で説明した面発光型半導体素子を面発光レーザに適用した場合の具体例について図11を参照して説明する。実施例4の面発光型半導体素子は、実施例1の素子と同様の構造であるが、活性層4は、光ガイド層4a1,4a2は、Ga0.98In0.02Asからなり、キャリア閉じ込め層4b1〜4b3は、GaInNAsからなり、発光層4c1,4c2は、Ga0.6In0.40.006As0.994からなる量子井戸構造を有する。キャリア閉じ込め層4b1〜4b3は、中央部分の直径5μmの範囲では組成がGa0.99In0.010.014As0.986でバンドギャップは1.15eVで均一であり、その外側では直径Φ50μmの範囲までIn組成が増大し、N組成が減少し、組成がGa0.92In0.080.0009As0.9991となり、バンドギャップは1.15eVから1.3eVまで増大する構造を有する。
また、半導体多層膜反射鏡層2,6として、AlsGa1-sAs(s=0.1)とAlqGa1-qAs(q=0.95)を交互に30層ずつ積層した積層膜を用いた。半導体多層膜反射鏡層6は、発光波長を1.3μmとすると全体の厚さが5.8μmであり、イオン注入によりこのうち2μm以上を高抵抗化する。この実施例4の面発光型半導体素子では、イオン注入する領域を結晶表面に設けたイオン注入マスクのパターニングにより正確に定めることができる。特に選択成長領域の側面からAlGaAs層を酸化する必要がないので、選択成長領域端部またはこの領域をエッチングしたメサ構造端部に半導体多層膜反射鏡層6を形成した時に生じる異常成長などにより電流狭窄領域92のサイズが影響を受けることがない。また、選択成長領域の端部またはエッチングしたメサ構造端部の上に成長した結晶に欠陥が発生しても、イオン注入により電極側を高抵抗化するので欠陥の影響が低減できる。
ここで、実施例4の面発光型半導体素子の製造方法について説明する。まず、GaAs基板1上に、たとえばMOCVD法によって、半導体多層膜反射鏡層2、n型の導電型の下部クラッド層3aを成長する。ついで、直径50μmの穴のあいたSiO2の選択成長マスク14bを形成し、この穴の部分に、活性層4、p型の導電型の上部クラッド層3b、半導体多層膜反射鏡層6、厚さ10nmでキャリア濃度1×1019cm-3のGaAsコンタクト層7を順次形成する。MOCVD法による成長では、In原料としてトリメチルインジウム、Ga原料としてトリメチルガリウムまたはトリエチルガリウム、Al原料としてトリメチルアルミニウム、砒素原料としてアルシンまたはターシャリーブチルアルシン、燐原料としてフォスフィンまたはターシャリーブチルフォスフィンを使用する。また、n型ドーパント原料にはシラン、p型ドーパント原料にはジメチル亜鉛または四臭化炭素を用いることが可能である。特に、AlxGa1-xAs(x=0.1)とAlyGa1-yAs(y=0.95)を交互に30層ずつ積層してなる半導体多層膜反射鏡6に関してはドーパントとしてカーボンを用いることが望ましい。これは、p型不純物としてカーボンを用いると高濃度にドープできかつ活性層4へのp型不純物の拡散はほとんど起こらないからである。
ここで、半導体多層膜反射鏡層2,6の厚さはレーザ発振させる波長1,300nmの光に対して光学距離が波長/4となるようにAlGaAs(Al組成0.1)層とAlGaAs(Al組成0.95)層の厚さを89nmと104nmにそれぞれ設定する。また、n型の導電型の下部クラッド層3a、活性層4、p型の導電型の上部クラッド層3bのトータルの光学距離はレーザの発振波長に対してm×波長(mは整数)となるように設定する。
ついで、SiO2を堆積して通常のリソグラフィ法によりイオン注入のマスクを形成する。プロトン注入により高抵抗領域91を形成し、イオン注入を行わない部分に電流狭窄領域92を形成する。ここで、電流狭窄領域92の径は、横モードの設計事項ではあるが一般的には4〜10μmが適正な値となる。プロトンの注入は、注入によるダメージが活性層4に与える影響を低減する上で半導体多層膜反射鏡層6の中だけにとどめることが望ましいが、上部クラッド層3bの中まで達してもよい。本実施例4ではプロトンを濃度ピークの位置が表面から4.8μmの位置となる条件で打ち込んだ。この場合、注入の先端は5.8μmとなるが、プロトンの注入はプロセス誤差が3%程度あることから、実際のプロトン打ち込みの先端は半導体多層膜反射鏡層6の最も活性層4に近い低屈折率AlyGa1-yAs(y=0.95)層の中に形成されているかまたは表面側クラッド層3bの中に達している可能性がある。ここで、イオン注入のピークの先端との距離とは、ピークと比べ平均濃度が一桁以上小さくなり、イオン注入の効果が小さくなる距離を意味するものとする。このように、イオン注入の先端をAl組成が高いAlGaAs層の内部に設けることで、低抵抗でバンドギャップが小さいAlGaAsからの電流の漏洩をより効率よく抑制できる。
なお、イオン注入の前に、電流狭窄領域91の中央部分を残してコンタクト層7を除去してもよい。コンタクト層7を除去した領域ではコンタクト層7での光吸収の影響を取り除くことができる。このようにコンタクト層7を形成した後に、Ti/Pt/Auの表面側電極11を、レーザ光に対する電極開口部11bを残して蒸着して、コンタクト領域11aにオーミック接合を持つp側電極を形成する。ここで、電極開口部11bを形成する際のプロセスマージンを0.75μmとした。さらに、その後、AuGeNi/Auの基板側電極13を蒸着してn型電極を形成する。
イオン注入型の電流狭窄領域91ではイオン注入の先端が発光層4c1,4c2に達して発光効率を低下させる影響を低減するためにイオン注入先端の深さを発光層4c1,4c2との間にイオン注入深さの数%以上のマージンを設定する必要がある。このため、この領域での電流広がりをふせぐことができない。本実施例4の面発光型半導体素子では本発明による素子中央への電流狭窄効果が大きいために、高抵抗領域92と発光層4c1,4c2との間で電流が広がる効果を抑制することができ、閾値電流を10〜25%低減することができる。イオン注入型の場合、電流狭窄領域91とその外側で屈折率差が小さく、電流径を一定の大きさに広げることが望ましい。本実施例4では選択成長領域のサイズを30〜200μmの範囲で変えることでキャリア閉じ込め層4b1〜4b3のバンドギャップ傾斜を制御することができ、素子の適正な設計が可能となる。
また、本実施例4では、小口径の、しきい値が低く、光モードの安定性が高い面発光レーザを、酸化型の面発光レーザと比べて信頼性の高いイオン注入型の面発光レーザで再現性および均一性良く得られる点で優れている。
上述した第1〜第4の実施の形態と実施例1〜4では、面発光型半導体素子を面発光レーザに適用した場合を示したが、本発明は面発光レーザに限られるものではない。半導体多層膜構造を有する共鳴型光発光素子にも適用可能である。また、活性層4の中に2〜5層のキャリア閉じ込め層4bを設けた場合を示したが、この数は一つ以上あれば、適当な数を選ぶことができる。さらに、活性層4の中に2〜4層の発光層4cを設けたが、これも適当な数を選ぶことができる。また、発光波長として1.3μmの素子を挙げたが、様々な組成を選択することができる。たとえば、1.4〜1.7μm帯の(Ga)InAs量子ドットやGaInNAsの量子井戸または量子ドットの発光層を選ぶことができる。また、0.98〜1.2μm帯の量子井戸や量子ドットを発光層に選ぶこともできる。この場合発光波長は1.06μmよりも長波長であれば、第1の実施の形態で説明した条件(s−2)を満たすのでなお望ましい。この他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の半導体多層膜反射鏡を有する面発光型半導体素子に適用可能である。
また、材料系としてもAlGaAs/GaAs系の半導体多層膜に限られるものではなく、GaAlInP/GaIn(Al)P系材料、In(Al)GaAs/AlGaInAs系材料、InP/AlInAs系材料、InP/GaInAsP系材料、AlGaAs/GaAs系材料を用いた半導体多層膜を用いた面発光型半導体素子、またはこれらの材料に、NやSbなどを添加した半導体の組み合わせ、GaSbとInAsまたはGaSbとGaAlSbの組み合わせまたはこれらの材料をベースとして、各種III族元素またはV族元素を加えた半導体多層膜反射鏡を用いる面発光型半導体素子に対して本発明の適用が可能である。また、MOCVD法の原料は各実施例中に記載の原料に限られるものではなく、各種原料及びその組み合わせが可能である。例えば各実施例の中で示した各原料については組み合わせを変えて用いることができる。また、窒素の原料としてはアンモニア、モノメチルヒドラジンを用いることも可能である。
さらに、上述した第1〜第4の実施の形態と実施例1〜4では、発行層の上下にキャリア閉じ込め層を設ける場合を示しているが、発光層のいずれか一方の側にキャリア閉じ込め層を設けるようにした構造であってもよい。
以上のように、本発明にかかる面発光型半導体素子は、面発光レーザに有用である。
本発明による面発光型半導体素子の第1の実施の形態の構造を模式的に示す断面図である。 面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その1)。 面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その2)。 面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その3)。 面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その4)。 面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その5)。 面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その6)。 面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その7)。 面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その8)。 面発光型半導体素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その9)。 成長温度が620℃のときのGaInNAs中のIn組成に対するNの添加効率の変化を示す図である。 常圧MOCVD法を用いて620℃でGaInAsを成長させた場合のマスク端部からの距離に対するIn組成の関係を示す図である。 GaInNAsのIn組成に対する60meVのエネルギギャップを生じるN組成の関係を示す図である。 キャリア閉じ込め層を均一な材料で形成した場合における電流狭窄領域の径に対する中央の電流密度/外周部の電流密度の関係の従来例を示す図である。 第1の実施の形態で形成したキャリア閉じ込め層に組成の傾斜を持たせた場合における平均電流密度に対する中央の電流密度/外周部の電流密度の関係を示す図である。 本発明による面発光型半導体素子の第2の実施の形態の構造を模式的に示す断面図である。 この第2の実施の形態の面発光型半導体素子の製造方法の手順の一例を示す断面図である(その1)。 この第2の実施の形態の面発光型半導体素子の製造方法の手順の一例を示す断面図である(その2)。 この第2の実施の形態の面発光型半導体素子の製造方法の手順の一例を示す断面図である(その3)。 本発明による面発光型半導体素子の第3の実施の形態の構造を模式的に示す断面図である。 本発明による面発光型半導体素子の第4の実施の形態の構造を模式的に示す断面図である。 本発明の面発光レーザの実施例1の構造を模式的に示す断面図である。 実施例1の面発光レーザにおける電流狭窄領域の中央に対応する領域から選択成長マスクの端部に向かう動径方向のIn組成分布、N組成分布およびバンドギャップの変化の様子を示す図である。 本実施例1のキャリア閉じ込め層を用いた場合と従来のGaAsの均一なキャリア閉じ込め層を用いた場合の素子中央部分での電流密度と外周部分での電流密度の比の注入電流依存性を示す図である。
符号の説明
1 基板
2,6 半導体多層膜反射鏡層
3a 下部クラッド層
3b,3b1,3b2 上部クラッド層
4 活性層
4a1,4a2 光ガイド層
4b,4b1〜4b3 キャリア閉じ込め層
4c,4c1,4c2 発光層
4e 外周部分
5,5b AlGaAs層
5s 酸化アルミニウム領域
7,18 コンタクト層
7a コンタクト層開口部
9,9b 電流狭窄領域
10 パッシベーション膜
11 表面側電極
11a,18a コンタクト領域
11b 電極開口部
13 基板側電極
14 選択成長マスク
14a 穴
14b 選択成長マスク
17 誘電体多層膜反射鏡層
17a SiN層
91 高抵抗領域
92 電流狭窄領域

Claims (6)

  1. 基板と、
    電子と正孔の結合によって発光する一層以上の発光層と、該発光層に電子または正孔を閉じ込め、前記発光層の前記基板側または前記基板と反対側に設けられるキャリア閉じ込め層と、を含む前記基板上に設けられる活性層と、
    前記活性層を挟持し、前記基板の主面に対して垂直方向の共振器を形成する、前記活性層と前記基板との間に形成される基板側反射鏡層および前記活性層に対して前記基板と反対側に形成される表面側反射鏡層と、
    前記活性層に電流を注入するための一対の電極と、
    前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極と前記活性層との間に前記活性層に近接して形成され、前記電極からの電流を前記活性層の所定の領域に流す電流狭窄構造を有する電流狭窄部と、
    を備える面発光型半導体素子であって、
    前記キャリア閉じ込め層は、その面内方向中央部分でバンドギャップが小さく、外周部分に向かってバンドギャップが大きくなる構造を有することを特徴とする面発光型半導体素子。
  2. 基板と、
    一層以上の井戸層と該井戸層に接して形成される障壁層とからなる量子井戸構造を有する前記基板上に設けられる活性層と、
    前記活性層を挟持し、前記基板の主面に対して垂直方向の共振器を形成する、前記活性層と前記基板との間に形成される基板側反射鏡層および前記活性層に対して前記基板と反対側に形成される表面側反射鏡層と、
    前記活性層に電流を注入するための一対の電極と、
    前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極と前記活性層との間に前記活性層に近接して形成され、前記電極からの電流を前記活性層の所定の領域に流す電流狭窄構造を有する電流狭窄部と、
    を備える面発光型半導体素子であって、
    少なくとも前記障壁層の一層は、その面内方向中央部分でバンドギャップが小さく、外周部分に向かってバンドギャップが大きくなる構造を有することを特徴とする面発光型半導体素子。
  3. 前記キャリア閉じ込め層または前記障壁層は、Al1-x-yGaxInyAs1-r-sSbsr(0≦1−x−y<1、0≦x<1、0<y<1、0<1−r−s<1、0<r<1、0≦s<1)であり、その中央部分でNの組成がその外周部分よりも高く、その外周部分でInの組成がその中央部分よりも高い組成分布を層内に有することを特徴とする請求項1または2に記載の面発光型半導体素子。
  4. 前記In組成yは、前記外周部分で0.01〜0.15であり、前記N組成rは、前記中央部分で0.008〜0.015であることを特徴とする請求項3に記載の面発光型半導体素子。
  5. 前記表面側反射鏡層は、誘電体多層膜反射鏡層で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の面発光型半導体素子。
  6. 電子と正孔の結合によって発光する発光層、および該発光層に電子または正孔を閉じ込め、前記発光層の前記基板側または前記基板と反対側に設けられる、その面内方向中央部分でバンドギャップが小さく、外周部分に向かってバンドギャップが大きくなる構造を有するキャリア閉じ込め層を含む活性層を挟持し、基板の主面に対して垂直方向の共振器を形成するように前記活性層と前記基板との間および前記活性層に対して前記基板と反対側に形成される一対の反射鏡層を備える面発光型半導体素子の製造方法であって、
    前記一対の反射鏡層のうち一方の反射鏡層が形成された基板上の所定の位置が覆われない選択成長マスクを形成する第1の工程と、
    前記選択成長マスクを用いて、1/6atmよりも大きい第1の圧力下でMOCVD法で前記キャリア閉じ込め層を形成する第2の工程と、
    前記選択成長マスクを用いて、前記第1の圧力の1/3より小さい第2の圧力下でMOCVD法で前記発光層を形成する第3の工程と、
    を含み、前記第2と前記第3の工程を繰り返して、前記活性層を作製することを特徴とする面発光型半導体素子の製造方法。
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