図1は、本発明が適用された車両用自動変速機(以下、自動変速機という)10の構成を説明する骨子図である。また、図2は、自動変速機10の複数のギヤ段(変速段)を成立させる際の係合装置(係合要素)の作動の組み合わせを説明する作動図表(係合作動表)である。この自動変速機10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース32内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心C上に備え、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は入力回転部材に相当するものであり、本実施例では走行用の動力源であるエンジン26と第1変速部14との間で自動変速機10に備えられる流体式伝動装置としてのトルクコンバータ28のタービン軸である。出力軸24は出力回転部材に相当するものであり、例えば図示しない差動歯車装置(終減速機)や一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪を回転駆動する。トルクコンバータ28は、エンジン26によって回転駆動されてそのエンジン26の動力を流体を介して入力軸22に伝達すると共に、エンジン26の動力を流体を介することなく入力軸22に直接伝達するロックアップ機構としてのロックアップクラッチ30を備えている。なお、この自動変速機10は中心線(軸心)Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心Cの下半分が省略されている。
第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備え、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1によって3つの回転要素が構成されている。キャリヤCA1は入力軸22に連結されて回転駆動され、サンギヤS1は回転不能にトランスミッションケース32に一体的に固定されている。リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸22に対して減速回転させられて、回転を第2変速部20へ伝達する。本実施例では、入力軸22の回転をそのままの速度で第2変速部20へ伝達する経路が、予め定められた一定の変速比(=1.0)で回転を伝達する第1中間出力経路PA1であり、第1中間出力経路PA1には、入力軸22から第1遊星歯車装置12を経ることなく第2変速部20へ回転を伝達する第1経路PA1aと、入力軸22から第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1を経て第2変速部20へ回転を伝達する第2経路PA1bとがある。また、入力軸22からキャリヤCA1、そのキャリヤCA1に配設されたピニオンギヤP1、およびリングギヤR1を経て第2変速部20へ伝達する経路が、第1中間出力経路PA1よりも大きい変速比(>1.0)で入力軸22の回転を変速(減速)して伝達する第2中間出力経路PA2である。
第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2およびP3、そのピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2およびP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18では、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。具体的には、第2遊星歯車装置16のサンギヤS2によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置16のキャリヤCA2および第3遊星歯車装置のキャリヤCA3が互いに一体的に連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置16のリングギヤR2および第3遊星歯車装置18のリングギヤR3が互いに一体的に連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置18のサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。この第2遊星歯車装置16および第3遊星歯車装置18は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置16のピニオンギヤP2が第3遊星歯車装置18の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース32に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の第2経路PA1b)に選択的に連結されている。第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース32に選択的に連結されて回転停止させられるとともに、第2クラッチC2を介して入力軸22(すなわち第1中間出力経路PA1の第1経路PA1a)に選択的に連結されている。第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されている。なお、第2回転要素RM2とトランスミッションケース32との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
図2に戻り、この係合作動表は、自動変速機10の各ギヤ段を成立させる際のクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。このように、自動変速機10においては、3組の遊星歯車装置12、16、18を備え、クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2を選択的に係合することにより変速比が異なる複数のギヤ段例えば前進8段の多段変速が達成される。特に、第2ブレーキB2と並列に一方向クラッチF1が設けられていることから、第1ギヤ段(1st)を成立させる際に、第2ブレーキB2はエンジンブレーキ時には係合させられる一方、駆動時には解放させられる。
また、各ギヤ段毎に異なる変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。また、クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBと表す)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置(以下、係合装置という)である。
図3は、クラッチCおよびブレーキBの各油圧アクチュエータやロックアップクラッチ30の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUに関する回路図であって、油圧制御装置の一部を構成する油圧制御回路50を示す図である。
図3において、クラッチC1、C2、およびブレーキB1の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)34、36、42には、油圧供給装置46から出力されたDレンジ圧(前進レンジ圧、前進油圧)PDがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1、SL2、SL5により調圧されて直接的に供給され、クラッチC3およびC4の各油圧アクチュエータ38、40には、油圧供給装置46から出力されたライン油圧PL1がそれぞれリニアソレノイドバルブSL3、SL4により調圧されて直接的に供給されるようになっている。
また、第2ブレーキB2の油圧アクチュエータ44には、油圧供給装置46から出力されたDレンジ圧PD或いはリバース圧(後進油圧)PRが第2ブレーキ制御回路90を介して供給されるようになっている。この第2ブレーキ制御回路90には、油圧供給装置46から出力されたモジュレータ油圧PMを元圧とするリニアソレノイドバルブSLUの出力油圧である制御圧PSLUが切換回路100を介して供給されるようになっている。また、切換回路100を介して第2ブレーキ制御回路90に供給される制御圧PSLUが第2ブレーキB2の係合トルクを発生させるための所定圧以上となった場合に所定の信号例えばON信号SWONを電子制御装置160(図5参照)に出力する油圧スイッチ48が第2ブレーキ制御回路90の入力側に設けられている。
油圧供給装置46は、エンジン26によって回転駆動される機械式のオイルポンプ52(図1参照)から発生する油圧を元圧としてライン油圧PL1(第1ライン油圧PL1)を調圧するプライマリレギュレータバルブ(第1調圧弁)82、レギュレータバルブ82によるライン油圧PL1の調圧のためにレギュレータバルブ82から排出される油圧を元圧としてライン油圧PL2(第2ライン油圧PL2、セカンダリ圧PL2)を調圧するセカンダリレギュレータバルブ(第2調圧弁)84、エンジン負荷等に応じたライン油圧PL1、PL2に調圧されるために第1調圧弁82および第2調圧弁84へ信号圧PSLTを供給するリニアソレノイドバルブSLT、ライン油圧PL1を元圧としてモジュレータ油圧PMを一定値に調圧するモジュレータバルブ86、およびケーブルやリンクなどを介して機械的に連結されるシフトレバー72の操作に伴い機械的に作動させられて油路が切り換えられることにより入力されたライン油圧PL1をシフトレバー72が「D」ポジション或いは「S」ポジションへ操作されたときにはDレンジ圧PDとして出力し或いは「R」ポジションへ操作されたときにはリバース圧PRとして出力するマニュアルバルブ88等を備えており、ライン油圧PL1、PL2、モジュレータ油圧PM、Dレンジ圧PD、およびリバース圧PRを供給する。
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUは、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置160により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータ34〜44の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の係合圧が制御される。そして、自動変速機10は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速機10の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチ・ツウ・クラッチ変速が実行される。例えば、図2の係合作動表に示すように5速→4速のダウンシフトでは、クラッチC2が解放されると共にクラッチC4が係合され、変速ショックを抑制するようにクラッチC2の解放過渡油圧とクラッチC4の係合過渡油圧とが適切に制御される。このように、自動変速機10の係合装置(クラッチC、ブレーキB)がリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUにより各々制御されるので、係合装置の作動の応答性が向上される。或いはまた、その係合装置の係合/解放作動の為の油圧回路が簡素化される。
また、リニアソレノイドバルブSLUは、切換回路100による油路の切換えによって、クラッチCおよびブレーキBのうち所定の油圧式摩擦係合装置としての第2ブレーキB2の係合圧とロックアップクラッチ30のトルク容量とを択一的に制御する単一(兼用)のソレノイドバルブである。第2ブレーキB2はエンジンブレーキ時にのみ係合される油圧式摩擦係合装置であり、例えばエンジンブレーキ時(特に低速走行中のエンジンブレーキ時)にはエンジンストールが生じないようにロックアップクラッチ30はロックアップオンさせないことから、第2ブレーキB2の係合圧とロックアップクラッチ30のトルク容量とを同時に制御する必要がないので、それらの制御に単一(兼用)のソレノイドバルブが用いられ得るのである。
図4は、第2ブレーキ制御回路90や切換回路100の概略図を含み、その切換回路100によって切り換えられるリニアソレノイドバルブSLUによる第2ブレーキB2の係合圧制御とロックアップクラッチ30のトルク容量制御とを説明する為の図である。
図4において、第2ブレーキ制御回路90は、Dレンジ圧PDを元圧として制御圧PSLUに応じて第2ブレーキB2の係合圧PB2を出力する第2ブレーキコントロール弁92と、第2ブレーキコントロール弁92からの油圧PB2およびリバース圧PRのうち何れか供給された油圧を第2ブレーキB2に出力するシャトル弁94とを備え、制御圧PSLUが供給されたときには係合圧PB2を第2ブレーキB2に出力し、或いはリバース圧PRが供給された場合にはそのリバース圧PRを第2ブレーキB2に出力する。
ロックアップクラッチ30は、良く知られているように、係合油路102を介して供給される係合側油室104内の油圧PONと解放油路106を介して供給される解放側油室108内の油圧POFFとの差圧ΔP(=PON−POFF)によりフロントカバー110に摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチである。そして、トルクコンバータ28の運転条件としては、例えば差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ30が解放される所謂ロックアップオフ、差圧ΔPが零以上とされてロックアップクラッチ30が半係合される所謂スリップ状態、および差圧ΔPが最大値とされてロックアップクラッチ30が完全係合される所謂ロックアップオンの3条件に大別される。また、ロックアップクラッチ30のスリップ状態においては、差圧ΔPが零とされることによりロックアップクラッチ30のトルク分担がなくなって、トルクコンバータ28は、ロックアップオフと同等の運転条件とされる。
切換回路100は、ロックアップクラッチ30を解放側状態すなわちロックアップオフと係合側状態すなわち解放状態を含むスリップ状態乃至ロックアップオンとで切り換える為のロックアップリレー弁112と、このロックアップリレー弁112によりロックアップクラッチ30が係合側状態とされているときに差圧ΔPを調整してロックアップクラッチ30の作動状態を解放状態を含むスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えるロックアップコントロール弁114とを備えている。
ロックアップリレー弁112は、スプール弁子116と、そのスプール弁子116の一方の軸端側に設けられスプール弁子116を解放(OFF)側位置へ向かう推力を付与するスプリング118と、スプール弁子116をOFF側の位置へ付勢するためにリバース圧PRを受け入れる油室120と、そのスプール弁子116の他方の軸端側に設けられスプール弁子116を係合(ON)側の位置へ付勢するためにモジュレータ油圧PMを元圧とするON−OFFソレノイドバルブSLの出力油圧である制御圧PSLを受け入れる油室122とを備えている。このON−OFFソレノイドバルブSLは、電子制御装置160により励磁、非励磁され、ロックアップクラッチ30の係合、解放状態を切り換える制御圧発生弁として機能するものである。
ロックアップコントロール弁114は、スプール弁子124と、そのスプール弁子124をスリップ(SLIP)側位置へ向かう推力F126を付与するスプリング126と、そのスプール弁子124をSLIP側位置へ向かって付勢するためにトルクコンバータ28の係合側油室104内の油圧PONを受け入れる油室128と、そのスプール弁子124を完全係合(ON)側位置へ向かって付勢するためにトルクコンバータ28の解放側油室108内の油圧POFFを受け入れる油室130と、スプール弁子124をON側位置へ向かって付勢するために制御圧PSLUを受け入れる油室132とを備えている。
このように構成された切換回路100により、係合側油室104および解放側油室108への作動油圧の供給状態が切り換えられてロックアップクラッチ30の作動状態が切り換えられ、或いは第2ブレーキB2へ作動油圧が供給されてその第2ブレーキB2の係合圧が制御される。
まず、ロックアップクラッチ30がロックアップオフとされ、制御圧PSLUが第2ブレーキB2へ供給可能な状態とされる場合を説明する。ロックアップリレー弁112において、制御圧PSLが油室122へ供給されずスプリング118の推力によってスプール弁子116が解放(OFF)側位置へ付勢されると、入力ポート134に供給されたライン圧PL2が解放側ポート136から解放油路106を通り解放側油室108へ供給される。そして、係合側油室104を経て係合油路102を通り係合側ポート138に排出された作動油が排出ポート140からオイルクーラ(COOLER)やクーラバイパス(COOLER BY-PASS)へ排出される。これにより、ロックアップクラッチ30がロックアップオフとされる。
また、ロックアップリレー弁112が解放側位置へ切り換えられると、入力ポート142に供給された制御圧PSLUがブレーキ側ポート144から第2ブレーキ制御回路90へ供給可能な状態とされる。このとき、リニアソレノイドバルブSLUから第2ブレーキB2の係合トルクを発生させる所定圧以上の制御圧PSLUが出力されると、第2ブレーキ制御回路90により第2ブレーキB2の係合圧が出力されると共に、油圧スイッチ48からON信号SWONが電子制御装置160に出力される。
次に、ロックアップクラッチ30が解放状態を含むスリップ状態乃至ロックアップオンとされ、制御圧PSLUが第2ブレーキB2へ供給不能な状態とされる場合を説明する。ロックアップリレー弁112において、制御圧PSLが油室122へ供給されてスプール弁子116が係合(ON)側位置へ付勢されると、入力ポート134に供給されたライン圧PL2が係合側ポート138から係合油路102を通り係合側油室104へ供給される。この係合側油室104へ供給されるライン圧PL2が油圧PONとなる。同時に、解放側油室108は、解放油路106を通り解放側ポート136から迂回ポート146を経てロックアップコントロール弁114の制御ポート148に連通させられる。そして、解放側油室108内の油圧POFFがロックアップコントロール弁114により調整されて、つまりロックアップコントロール弁114により差圧ΔPが調整されて、ロックアップクラッチ30の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えられる。
具体的には、ロックアップリレー弁112のスプール弁子116が係合側位置へ付勢されているときに、すなわちロックアップクラッチ30が係合側状態に切り換えられたときに、ロックアップコントロール弁114において、スプール弁子124が完全係合(ON)側位置へ付勢されるための制御圧PSLUが油室132へ供給されずスプリング126の推力F126によってそのスプール弁子124がスリップ(SLIP)側位置とされると、入力ポート150に供給されたライン圧PL2が制御ポート148から迂回ポート146を経て解放側ポート136から解放油路106を通り解放側油室108へ供給される。この状態において、差圧ΔPが制御圧PSLUによって制御されてロックアップクラッチ30のスリップ状態(解放状態を含む)が制御される。
また、ロックアップリレー弁112のスプール弁子116が係合側位置へ付勢されているときに、ロックアップコントロール弁114において、スプール弁子124が完全係合(ON)側位置へ付勢されるための制御圧PSLUが油室132へ供給されると、入力ポート150から解放側油室108へはライン圧PL2が供給されず、解放側油室108からの作動油の排出が制御ポート148にて遮断される。これにより、油圧POFFが零とされることから差圧ΔPが最大とされてロックアップクラッチ30が完全係合状態とされる。
このように、ロックアップリレー弁112は、リニアソレノイドバルブSLUの出力油圧である制御圧PSLUに応じて所定の係合装置としての第2ブレーキB2の係合圧を制御するための第1の油路(以下、第1油路という)すなわち解放側位置と、制御圧PSLUに応じてロックアップクラッチ30のトルク容量を制御するための第2の油路(以下、第2油路という)すなわち係合側位置とを切り換えるリレーバルブである。
図5は、図1の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置160は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン26の出力制御や自動変速機10の変速制御やロックアップクラッチ30のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や自動変速機10およびロックアップクラッチ30の油圧制御用等に分けて構成される。
図5において、アクセルペダル54の操作量Accを検出するためのアクセル操作量センサ56、エンジン26の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン26の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TAを検出するための吸入空気温度センサ62、電子スロットル弁の開度θTHを検出するためのスロットル弁開度センサ64、車速V(出力軸24の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ66、エンジン26の冷却水温TWを検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72がどのレバーポジション(操作位置)PSHに位置しているかを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路50内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ78、車両の加速度(減速度)Gを検出するための加速度センサ80などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、アクセル操作量Acc、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA、スロットル弁開度θTH、車速V、出力軸回転速度NOUT、エンジン冷却水温TW、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT(=入力軸回転速度NIN)、AT油温TOIL、車両の加速度(減速度)G、油圧スイッチ48からのON信号SWONなどを表す信号が電子制御装置160に供給される。
また、クラッチCやブレーキBの係合/解放状態の切換えおよび係合/解放時の過渡油圧などを制御する為のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUの励磁/非励磁や電流制御信号、ロックアップリレー弁112の油路を切り換える為のON−OFFソレノイドバルブSLの励磁/非励磁信号、ロックアップクラッチ30のトルク容量例えば差圧ΔPを制御する為のリニアソレノイドバルブSLUの電流制御信号などが電子制御装置160から供給される。
シフトレバー72は例えば運転席の近傍に配設され、図6に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。
「P」ポジション(レンジ)は自動変速機10内の動力伝達経路を解放しすなわち自動変速機10内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸24の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)であり、「R」ポジションは自動変速機10の出力軸24の回転方向を逆回転とするための後進走行ポジション(位置)であり、「N」ポジションは自動変速機10内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジション(位置)であり、「D」ポジションは自動変速機10の第1速乃至第8速の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で自動変速モードを成立させて第1ギヤ段「1st」〜第8ギヤ段「8th」の総ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)であり、「S」ポジションは変速可能な高速側のギヤ段が異なる複数の変速レンジ或いは異なる複数のギヤ段を切り換えることにより手動変速が可能な前進走行ポジション(位置)である。
この「S」ポジションにおいては、シフトレバー72の操作毎に変速範囲或いはギヤ段をアップ側にシフトさせるための「+」ポジション、シフトレバー72の操作毎に変速範囲或いはギヤ段をダウン側にシフトさせるための「−」ポジションが備えられている。例えば、「S」ポジションにおいては、「D」レンジ、「7」レンジ、・・・・、「2」レンジ、「L」レンジの何れかがシフトレバー72の「+」ポジション或いは「−」ポジションへの操作に応じて変更される。また、「S」ポジションにおける「L」レンジは第1ギヤ段「1st」にて第2ブレーキB2を係合させて一層エンジンブレーキ効果が得られるためのエンジンブレーキレンジでもある。
上記「P」乃至「S」ポジションに示す各シフトポジションにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、自動変速機10内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする動力伝達遮断ポジション(位置)であって、車両を走行させないときに選択される非走行ポジション(位置)である。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「S」ポジションは、自動変速機10内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする動力伝達可能ポジション(位置)であって、車両を走行させるときに選択される走行ポジションである。
このように、シフトレバー72は、自動変速機10を動力伝達可能状態へ切り換えるための走行ポジションと、自動変速機10を動力伝達遮断状態へ切り換えるための非走行ポジションとに切り換えられる操作装置である。
図7は、電子制御装置160による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、変速制御手段162は、例えば図8に示すような車速Vおよびアクセル操作量Accをパラメータとして予め記憶された関係(マップ、変速線図)から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて変速判断を行い、自動変速機10の変速を実行すべきか否かを判断し、例えば自動変速機10の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速機10の自動変速制御を実行する。このとき、変速制御手段162は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速機10の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を油圧制御回路50へ出力する。
油圧制御回路50は、その指令に従って、自動変速機10の変速が実行されるように油圧制御回路50内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUを作動させて、その変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
図8の変速線図において、実線はアップシフトが判断されるための変速線(アップシフト線)であり、破線はダウンシフトが判断されるための変速線(ダウンシフト線)である。また、この図8の変速線図における変速線は、実際のアクセル操作量Acc(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、この値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。なお、図8の変速線図は自動変速機10で変速が実行される第1ギヤ段乃至第8ギヤ段のうちで第1ギヤ段乃至第6ギヤ段における変速線が例示されている。
例えば、変速制御手段162は、実際の車速Vが7速→8速アップシフトを実行すべき7速→8速アップシフト線を横切ったと判断した場合には、すなわち変速点車速V7−8を越えたと判断した場合には、クラッチC3を解放させると共にブレーキB1を係合させる指令を油圧制御回路50に出力する、すなわち非励磁によってクラッチC3の係合油圧を排油(ドレン)させる指令をリニアソレノイドバルブSL3に出力すると共に、励磁によってブレーキB1の係合油圧を供給させる指令をリニアソレノイドバルブSL5に出力する。
このように、変速制御手段162は、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUの励磁、非励磁をそれぞれ制御することにより、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5、SLUにそれぞれ対応するクラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2の係合、解放状態を切り換えて第1ギヤ段「1st」〜第8ギヤ段「8th」の何れかの前進ギヤ段を成立させる係合容量制御手段164を機能的に備えている。
また、「L」レンジにてエンジンブレーキ作用を得るために係合容量制御手段164がリニアソレノイドバルブSLUにより第2ブレーキB2の係合圧を制御させる場合には、ロックアップリレー弁112が第1油路に切り換えられる必要がある。そこで、変速制御手段162は、エンジンブレーキが必要なときに制御圧PSLUが第2ブレーキB2へ供給されるように、ON−OFFソレノイドバルブSLにより制御圧PSLを出力させずロックアップリレー弁112を第1油路側へ切り換えるリレーバルブ制御手段166を機能的に備えている。
また、ロックアップクラッチ30のトルク容量が制御され得るために電子制御装置160が制御圧PSLUにより差圧ΔPを制御させる場合には、ロックアップリレー弁112が第2油路に切り換えられる必要がある。そこで、リレーバルブ制御手段166は、リニアソレノイドバルブSLUにより差圧ΔPが制御されるように、ON−OFFソレノイドバルブSLにより制御圧PSLを出力させてロックアップリレー弁112を第2油路側へ切り換える。
電子制御装置160は、例えば図9に示すようなスロットル弁開度θTHおよび車速Vをパラメータとする二次元座標において解放(ロックアップオフ)領域、スリップ制御領域、係合(ロックアップオン)領域を有する予め記憶された関係(マップ、ロックアップ領域線図)から実際の車両走行状態例えばスロットル弁開度θTHおよび車速Vとに基づいてロックアップクラッチ30の作動状態の切換えを制御するロックアップクラッチ制御手段を機能的に備えている。
例えば、電子制御装置160は、ロックアップクラッチ30のロックアップオフへの切換え或いはスリップ乃至ロックアップオンへの切換えの為にON−OFFソレノイドバルブSLの制御指令を油圧制御回路50へ出力したり、差圧ΔPの制御の為にリニアソレノイドバルブSLUの制御指令を油圧制御回路50へ出力する。
前述のように、本実施例のリニアソレノイドバルブSLUは、ロックアップリレー弁112による油路の切換えによって、エンジンブレーキが必要なときには第2ブレーキB2の係合圧を制御し、ロックアップクラッチ30の作動状態をスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えるときにはそのロックアップクラッチ30のトルク容量(差圧ΔP)を制御する単一のソレノイドバルブである。
ところで、ロックアップリレー弁112自身の故障やON−OFFソレノイドバルブSLの故障等により、ロックアップリレー弁112による第1/第2油路の切換えが不能になる切換異常が生じる可能性がある。
例えば、制御圧PSLが供給されないにも拘わらずロックアップリレー弁112のスプール弁子116が係合側位置に固定される故障やリレーバルブ制御手段166による制御圧PSLを出力させない指令にも拘わらずON−OFFソレノイドバルブSLから制御圧PSLが出力される故障により、ロックアップリレー弁112による第1油路への切換えが不能になる切換異常すなわち切換回路100が第2油路に固定される切換異常が生じる可能性がある。
この第2油路に固定される切換異常が発生しているときに、係合容量制御手段164により第2ブレーキB2を係合させようとしてリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUが出力させられると、例えば図9に示すようなロックアップ領域線図に予め設定されているロックアップ解放領域となる車両走行状態であってリレーバルブ制御手段166によりON−OFFソレノイドバルブSLに制御圧PSLを出力させない指令が出力されたにも拘わらず、ロックアップクラッチ30が係合されてしまう可能性がある。
特に、本実施例では、エンジンブレーキ時に係合される第2ブレーキB2の係合圧とロックアップクラッチ30のトルク容量とが同じリニアソレノイドバルブSLUにより制御されることから、切換回路100が第2油路に固定される切換異常が発生しているときに、エンジンブレーキを作用させる為に係合容量制御手段164により第2ブレーキB2を係合させようとしてリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUが出力させられると、リレーバルブ制御手段166によりON−OFFソレノイドバルブSLに制御圧PSLを出力させない指令が出力されているにも拘わらずロックアップクラッチ30の作動状態がロックアップオンとされ、エンジン26と駆動輪との間の動力伝達経路が直結状態すなわち動力伝達可能状態とされて車速Vの低下に伴ってエンジンストールが発生する可能性がある。
そこで、第2油路に固定される切換異常が生じたときに予定しないロックアップクラッチ30のロックアップオンが防止されるように、ロックアップリレー弁112が第2油路に固定される切換異常が生じたときには、第2ブレーキB2の係合を禁止する。
具体的には、切換異常判定手段168は、リレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の切換が不能となって第2油路に固定される切換異常が生じたか否かを判定する。
例えば、切換異常判定手段168は、レバーポジションセンサ74の信号出力に基づいてシフトレバー72のレバーポジションPSHを判定するシフトポジション判定手段170と、油圧スイッチ48からのON信号SWONに基づいて第2ブレーキ制御回路90へ供給される第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUが検出されるか否かを判定する油圧スイッチ信号判定手段172とを備え、シフトポジション判定手段170によりシフトレバー72が「P」ポジションや「N」ポジションのような非走行ポジション(位置)へ切り換えられていると判定されているときに、ロックアップリレー弁112を第1油路側へ切り換えさせるようにリレーバルブ制御手段166によりON−OFFソレノイドバルブSLから制御圧PSLを出力させず、且つ係合容量制御手段164によりリニアソレノイドバルブSLUから第2ブレーキB2を係合させるための制御圧PSLUを出力させると共に、油圧スイッチ信号判定手段172による第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUの検出結果に基づいてリレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の切換えが不能となって第2油路に固定される切換異常が生じたか否かを判定する。
つまり、リレーバルブ制御手段166によりロックアップリレー弁112が第1油路へ切り換えられる正常時には、係合容量制御手段164によりリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUを出力させれば油圧スイッチ48からON信号SWONが出力されることから、油圧スイッチ信号判定手段172により第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUが検出されていると判定される場合には、切換異常判定手段168はリレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の第1油路への切換えが可能であって第2油路に固定される切換異常が生じない正常な状態であると判定する。
また、リレーバルブ制御手段166によりロックアップリレー弁112が第1油路へ切り換えられない切換異常が生じたときには、係合容量制御手段164によりリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUを出力させたとしても油圧スイッチ48からON信号SWONが出力されないことから、油圧スイッチ信号判定手段172により第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUが検出されていないと判定される場合には、切換異常判定手段168はリレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の第1油路への切換えが不能となって第2油路に固定される切換異常が生じた故障(フェイル)状態であると判定する。
また、シフトレバー72が「D」ポジションや「S」ポジションのような走行ポジションへ切り換えられた走行中に予定しないロックアップクラッチ30のロックアップオンが防止されるように、切換異常判定手段168はシフトレバー72が「P」ポジションや「N」ポジションのような非走行ポジションへ切り換えられた走行前の自動変速機10が動力伝達遮断状態とされているときに異常判定を行う。
また、第2油路に固定される切換異常が生じたとしてもエンジンストールが発生しないように、切換異常判定手段168はシフトレバー72が「P」ポジションや「N」ポジションとされているときに異常判定を行う。
係合禁止手段174は、前記切換異常判定手段168によりリレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の第1油路への切換えが不能となって第2油路に固定される切換異常が生じたと判定されたときには、第2ブレーキB2の係合を禁止する。例えば、係合禁止手段174は、切換異常判定手段168により第2油路に固定される切換異常が生じたと判定されたときには、第2ブレーキB2の係合を禁止する禁止フラグFをたてる。係合容量制御手段164は、係合禁止手段174により禁止フラグFがたてられている間は、リニアソレノイドバルブSLUから第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUを出力させない。
具体的には、自動変速機10が動力伝達遮断状態とされているときに切換異常判定手段168により第2油路に固定される切換異常が判定され、係合禁止手段174により禁止フラグFがたてられているときであって、シフトレバー72が「D」ポジションや「R」ポジションのような走行ポジションへ切り換えられる自動変速機10の動力伝達可能状態のときに、「L」レンジにて第2ブレーキB2を係合してエンジンブレーキ作用を得る為にON−OFFソレノイドバルブSLに制御圧PSLを出力させない指令がリレーバルブ制御手段166により出力された場合には、リニアソレノイドバルブSLUから出力される第2ブレーキB2を係合するための制御圧PSLUによりロックアップクラッチ30がロックアップオンとされてエンジンストールが発生することが防止されるように、係合容量制御手段164は、リニアソレノイドバルブSLUから第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUを出力させず、第1ギヤ段(1st)にてエンジンブレーキ作用を得るための第2ブレーキB2を係合しない。
また、係合容量制御手段164は、係合禁止手段174により禁止フラグFがたてられている間であっても、ロックアップクラッチ30のトルク容量を制御するためにON−OFFソレノイドバルブSLに制御圧PSLを出力させる指令がリレーバルブ制御手段166により出力された場合には、ロックアップクラッチ30の差圧ΔPを制御するためにリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUを出力させる。
図10は、電子制御装置160の制御作動の要部すなわちロックアップリレー弁112の切換異常を判定する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
先ず、前記シフトポジション判定手段170に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、レバーポジションセンサ74の信号出力に基づいてシフトレバー72のレバーポジションPSHが「P」ポジションや「N」ポジションのような非走行ポジション(位置)へ切り換えられているか否かが判定される。
上記S1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は前記切換異常判定手段168に対応するS2において、ロックアップリレー弁112を第1油路側へ切り換えさせるようにリレーバルブ制御手段166によりON−OFFソレノイドバルブSLから制御圧PSLを出力させず、且つ第2ブレーキB2を係合させるように係合容量制御手段164によりリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUを出力させる。
次いで、前記油圧スイッチ信号判定手段172に対応するS3において、油圧スイッチ48からのON信号SWONに基づいて第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUが検出されるか否かが判定される。
油圧スイッチ48からON信号SWONが出力されて上記S3の判断が肯定される場合は前記切換異常判定手段168に対応するS5において、リレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の第1油路への切換えが可能とされて第2油路に固定される切換異常が生じない正常な状態であると判定される。
油圧スイッチ48からON信号SWONが出力されず前記S3の判断が否定される場合は前記切換異常判定手段168に対応するS4において、リレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の第1油路への切換えが不能とされて第2油路に固定される切換異常が生じた故障(フェイル)状態であると判定される。
次いで、前記係合禁止手段174に対応するS6において、第2ブレーキB2の係合を禁止する禁止フラグFがたてられる。この禁止フラグFがたてられている間は、係合容量制御手段164によりリニアソレノイドバルブSLUから第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUが出力させられない。
上述のように、本実施例によれば、第2ブレーキB2の係合圧とロックアップクラッチ30のトルク容量とを択一的に制御する単一のリニアソレノイドバルブSLUの出力油圧である制御圧PSLUに応じて第2ブレーキB2の係合圧を制御するための第1油路とその制御圧PSLUに応じてロックアップクラッチ30のトルク容量を制御するための第2油路とを切り換えるロックアップリレー弁112が切換不能となって第2油路に固定される切換異常が生じたか否かを判定する切換異常判定手段168によりその切換異常が生じたと判定されたときには、係合禁止手段174により第2ブレーキB2の係合が禁止されるので、第2ブレーキB2の係合圧を制御するソレノイドバルブをロックアップクラッチ30のトルク容量制御を行なうソレノイドバルブと兼用させたときに第2の油路に固定される切換異常が生じたとしても、予定しないロックアップクラッチ30のロックアップオンが防止される。
特に、切換異常判定手段168により第2油路に固定される切換異常が生じたと判定されたときには、係合禁止手段174によりエンジンブレーキ作用を得るための第2ブレーキB2の係合が禁止されるので、第2油路に固定される切換異常が生じたときにロックアップクラッチ30がロックアップオンとされないことから車速Vが低下してもエンジンストールの発生が防止される。
また、本実施例によれば、切換異常判定手段168は、シフトレバー72が非走行ポジションへ切り換えられているときに、リレーバルブ制御手段166によりロックアップリレー弁112を第1油路側へ切り換えさせ且つ係合容量制御手段164によりリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUを出力させると共に、油圧スイッチ信号判定手段172による第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUの検出結果に基づいてリレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の切換えが不能となって第2油路に固定される切換異常が生じたか否かを判定するので、リレーバルブ制御手段166によりロックアップリレー弁112が第1油路へ切り換えられない切換異常が生じたときには、係合容量制御手段164によりリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUを出力させたとしても油圧スイッチ信号判定手段172により第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUが検出されないことから、切換異常判定手段168によりリレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の第1油路への切換えが不能となって第2油路に固定される切換異常の発生が判定され得る。
また、自動変速機10が動力伝達遮断状態のときに切換異常判定手段168により異常判定が行われることから、シフトレバー72が走行ポジションへ切り換えられたときに、予定しないロックアップクラッチ30の係合作動が防止される。見方を換えれば、走行前に切換異常判定手段168により異常判定が行われることから、車両走行中の予定しないロックアップクラッチ30の係合作動が防止される。
また、自動変速機10が動力伝達遮断状態とされていることから、第2油路に固定される切換異常が生じたとしてもエンジンストールが発生することなく切換異常判定手段168により異常判定が行われる。このように、自動変速機10が動力伝達遮断状態のときに切換異常判定手段168により異常判定が行われることから、シフトレバー72が走行ポジションへ切り換えられたときに、エンジンストールの発生が防止される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、前記係合禁止手段174は、前記切換異常判定手段168によりロックアップリレー弁112の切換異常が生じたと判定されたときには、第1ギヤ段(1st)にてエンジンブレーキ作用を得るための第2ブレーキB2の係合を禁止する禁止フラグFをたて、係合容量制御手段164によりリニアソレノイドバルブSLUから第2ブレーキB2を係合するための制御圧PSLUを出力させなかったが、少なくとも第1ギヤ段(1st)にてエンジンブレーキ作用を得るための第2ブレーキB2を係合するための制御圧PSLUが出力されなければ良く、切換異常判定手段168による禁止フラグFは第2ブレーキB2の係合を禁止する以外の種々の禁止フラグFが本発明において適用され得る。
例えば、係合禁止手段174は、切換異常判定手段168によりロックアップリレー弁112の切換異常が生じたと判定されたときには、シフトレバー72が走行ポジションへ切り換えられたときに変速制御手段162による第1ギヤ段「1st」への変速指令を禁止する禁止フラグをたてても良い。このようにしても、第2の油路に固定される切換異常が生じたとしても、予定しないロックアップクラッチ30のロックアップオンが防止される。
また、係合禁止手段174は、切換異常判定手段168によりロックアップリレー弁112の切換異常が生じたと判定されたときには、シフトレバー72が走行ポジションへ切り換えられたときに「L」レンジにおけるエンジンブレーキ作動を禁止する禁止フラグをたてても良い。このようにしても、第2の油路に固定される切換異常が生じたとしても、予定しないロックアップクラッチ30のロックアップオンが防止される。
また、係合禁止手段174は、切換異常判定手段168によりロックアップリレー弁112の切換異常が生じたと判定されたときには、シフトレバー72が走行ポジションへ切り換えられたときに係合容量制御手段164によるリニアソレノイドバルブSLUからの制御圧PSLUの出力指令を一律に禁止する禁止フラグをたてても良い。この場合には、第2ブレーキB2に加え、ロックアップクラッチ30も係合されない。このようにしても、第2の油路に固定される切換異常が生じたとしても、予定しないロックアップクラッチ30のロックアップオンが防止される。
また、前述の実施例では、クラッチCおよびブレーキBのうち所定の油圧式摩擦係合装置はエンジンブレーキ時にのみ係合される第2ブレーキB2であったが、所定の油圧式摩擦係合装置はエンジンブレーキ時にのみ係合される油圧式摩擦係合装置に限られない。
例えば、ロックアップクラッチ30をロックアップオンしない自動変速機10の変速段を成立させる油圧式摩擦係合装置であっても良い。つまり、その油圧式摩擦係合装置の係合圧とロックアップクラッチ30のトルク容量とを同時に制御する必要がないので、それらの制御に単一(兼用)のソレノイドバルブが用いられる。具体的には、第6ギヤ段乃至第8ギヤ段においてのみロックアップクラッチ30をロックアップオンする走行状態を設定し、第1ギヤ段乃至第5ギヤ段においてはロックアップクラッチ30をロックアップオンしないように設定するならば、第1ギヤ段乃至第5ギヤ段を成立させるために少なくとも係合させられる第1クラッチC1を所定の油圧式摩擦係合装置としても良い。このようにしても、第2の油路に固定される切換異常が生じたとしても、予定しないロックアップクラッチ30のロックアップオンが防止される。
また、前述の実施例において、切換異常判定手段168は、リレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の切換が不能となって第2油路に固定される切換異常が生じたか否かを、シフトレバー72が非走行ポジションへ切り換えられているときに、ロックアップリレー弁112を第1油路側へ切り換えさせ且つリニアソレノイドバルブSLUから制御圧PSLUを出力させると共に、第2ブレーキB2の係合圧を制御するための制御圧PSLUの検出結果に基づいて判定したが、その他の判定方法であっても良い。
例えば、切換異常判定手段168は、図9に示すようなロックアップ領域線図に予め設定されているロックアップ解放領域となる車両走行状態であるときに、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとを比較して判定しても良い。具体的には、切換異常判定手段168は、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとがロックアップオン時と同様に略同じである場合には、或いはそれら回転速度差(=NT−NE)がロックアップオン時と同様に略零である場合には、リレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の第1油路への切換えが不能となって第2油路に固定される切換異常が生じた故障(フェイル)状態であると判定する。このようにしても、切換異常判定手段168により第2油路に固定される切換異常が生じたと判定されたときには、係合禁止手段174により所定の油圧式摩擦係合装置の係合が禁止されるので、所定の油圧式摩擦係合装置の係合圧を制御するソレノイドバルブをロックアップクラッチ30のトルク容量制御を行なうソレノイドバルブと兼用させたときに第2の油路に固定される切換異常が生じたとしても、予定しないロックアップクラッチ30のロックアップオンが防止される。
また、第2油路に固定される切換異常が生じた場合には、所定の油圧式摩擦係合装置が係合されず自動変速機10内が動力伝達遮断状態とされることから、切換異常判定手段168は、走行中に、出力軸回転速度NOUTとそのときの成立させられるべき変速段における変速比γとから求められる推定タービン回転速度NT *(=NOUT×γ)と実際のタービン回転速度NTとを比較して判定しても良い。具体的には、切換異常判定手段168は、推定タービン回転速度NT *と実際のタービン回転速度NTとが略同じであるとされる予め定められた判定速度差以内でない場合には、リレーバルブ制御手段166によるロックアップリレー弁112の第1油路への切換えが不能となって第2油路に固定される切換異常が生じた故障(フェイル)状態であると判定する。このようにしても、切換異常判定手段168により第2油路に固定される切換異常が生じたと判定されたときには、係合禁止手段174により所定の油圧式摩擦係合装置の係合が禁止されるので、所定の油圧式摩擦係合装置の係合圧を制御するソレノイドバルブをロックアップクラッチ30のトルク容量制御を行なうソレノイドバルブと兼用させたときに第2の油路に固定される切換異常が生じたとしても、予定しないロックアップクラッチ30のロックアップオンが防止される。
また、前述の実施例において、第2ブレーキ制御回路90に備えられた第2ブレーキコントロール弁92は必ずしも備えられなくとも発明は適用され得る。この場合には、第2ブレーキコントロール弁92に供給される制御圧PSLUがそのままシャトル弁94を介してブレーキB2へ供給される。また、この場合、油圧スイッチ48はシャトル弁94とブレーキB2との間に備えられて、シャトル弁94から出力される制御圧PSLUを検出するようにしても良い。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。