JP2007091500A - ガラス成形体の製造方法、結晶化ガラス体の製造方法、磁気ディスク基板ブランクの製造方法、磁気ディスク基板の製造方法および磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

ガラス成形体の製造方法、結晶化ガラス体の製造方法、磁気ディスク基板ブランクの製造方法、磁気ディスク基板の製造方法および磁気ディスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 結晶化ガラス体の母材であるガラス成形体を安定して製造することができ、該ガラス成形体から、結晶化ガラス体、磁気ディスク基板ブランク、磁気ディスク基板および磁気ディスクを好適に作製することができる方法を提供する。
【解決手段】
中心軸が直線状の貫通孔を有する鋳型を、前記中心軸が垂直になるようにまたは水平に対して傾斜するように配置し、前記貫通孔内に熔融ガラスを流し込み、成形して、結晶化ガラス体の母材となる棒状のガラス成形体を得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法であり、上記ガラス成形体を熱処理して結晶化ガラス体を製造する方法、上記ガラス成形体または結晶化ガラスをスライスして磁気ディスク基板ブランクを製造する方法、該磁気ディスク基板ブランクの主表面を研磨して磁気ディスク基板を製造する方法および該磁気ディスク基板上に磁気記録層を形成して磁気ディスクを製造する方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、結晶化ガラス体の母材であるガラス成形体を安定して製造する方法、該ガラス成形体を熱処理して結晶化ガラス体を製造する方法、上記ガラス成形体または結晶化ガラス体をスライスして磁気ディスク基板ブランクを製造する方法、該磁気ディスク基板ブランクの主表面を研磨して磁気ディスク基板を製造する方法および該磁気ディスク基板上に磁気記録層を形成して磁気ディスクを製造する方法に関する。
ハードディスクとも呼ばれる磁気ディスクは、パソコン、モバイル機器のメモリなどに不可欠な部品であり、この磁気ディスクの基板材料としては、現在、ガラスやアルミニウムが使用されている。一方、次世代の磁気ディスク用基板材料としては、例えば、特許文献1に示されるような結晶化ガラスが有望である。
特開2001−180975号公報
耐熱性が低いアルミニウム基板では、熱処理時や高温の使用環境下で基板が熱変形してしまうという問題がある。
これに対して結晶化ガラスからなる基板では、基板を薄くしても十分な機械的強度が得られる上に剛性が高く、高速回転時の安定性に優れており、また、耐熱性に優れているので、磁気記録層などの成膜や形成した膜の熱処理を高温で行うことができる。このように優れた基板材料である結晶化ガラスにも、以下に示すような問題があった。
結晶化ガラス体を製造する場合、まず非晶質ガラス成形体を作製し、この非晶質ガラス成形体に精密な熱処理を施すことにより、微小な結晶相を分散、析出させる必要がある。上記熱処理前に析出する結晶は、温度条件等を制御せずに偶発的に生じるものであり、結晶が粗大化したり、結晶相の分散、析出が不均一になったりして、磁気ディスク基板として使用できなくなるため、上記熱処理前までは、非晶質ガラス成形体中に結晶を析出させてはならない。
しかし、結晶化ガラス体の母材である非晶質ガラス成形体を構成するガラスは、熱処理によって所要の結晶相が析出しやすいように組成が決められているため、非晶質ガラス成形体を作製するプロセスにおいて結晶が析出しやすいという性質を有している。
このため、従来、結晶化ガラス体の母材である非晶質ガラス成形体を、結晶の析出を抑制しつつ、高い歩留まりで作製することは難しかった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、結晶化ガラス体の母材であるガラス成形体を安定して製造する方法、該ガラス成形体を熱処理して結晶化ガラス体を製造する方法、上記ガラス成形体または結晶化ガラス体をスライスして磁気ディスク基板ブランクを製造する方法、該磁気ディスク基板ブランクの主表面を研磨して磁気ディスク基板を製造する方法および該磁気ディスク基板上に磁気記録層を形成して磁気ディスクを製造する方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するため本発明者が鋭意検討したところ、中心軸が直線状の貫通孔を有する鋳型を、上記中心軸が垂直になるようにまたは水平に対して傾斜するように配置し、上記貫通孔内に熔融ガラスを流し込むことによって、棒状のガラス成形体を安定に製造し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)中心軸が直線状の貫通孔を有する鋳型を、
前記中心軸が垂直になるようにまたは水平に対して傾斜するように配置し、
前記貫通孔内に熔融ガラスを流し込み、成形して、
結晶化ガラス体の母材となる棒状のガラス成形体を得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法、
(2)前記ガラスが、TiOを含み、SiOとMgOをモル比(SiO/MgO)で0.8〜6.0含む上記(1)に記載のガラス成形体の製造方法、
(3)前記ガラスが、モル%表示で、SiO35〜65%、Al5%超〜20%、MgO 10〜40%、TiO5〜15%を含み、上記各成分の合計が92%以上であって、SiOとMgOのモル比(SiO/MgO)が0.8〜6.0である上記(1)に記載のガラス成形体の製造方法、
(4)ガラス成形体の側面を機械加工して、円柱状とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法、
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法で作製したガラス成形体を熱処理して、使用領域全体に結晶相が析出した結晶化ガラス体を得ることを特徴とする結晶化ガラス体の製造方法、
(6)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法で作製したガラス成形体を、該ガラス成形体の長手方向に対して垂直にスライスした後、熱処理して、使用領域全体に結晶相が析出した磁気ディスク基板ブランクを得ることを特徴とする磁気ディスク基板ブランクの製造方法、
(7)上記(5)に記載の方法で作製した結晶化ガラス体を、該結晶化ガラス体の長手方向に対して垂直にスライスすることを特徴とする磁気ディスク基板ブランクの製造方法、
(8)上記(6)または(7)に記載の方法で作製した磁気ディスク基板ブランクの主表面を研磨することを特徴とする磁気ディスク基板の製造方法、および
(9)上記(8)に記載の方法で作製した磁気ディスク基板上に磁気記録層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法
を提供するものである。
本発明によれば、結晶化ガラス体の母材であるガラス成形体を安定して製造する方法を提供することができ、上記ガラス成形体を熱処理して結晶化ガラス体を製造する方法、上記ガラス成形体または結晶化ガラス体をスライスして磁気ディスク基板ブランクを製造する方法、該磁気ディスク基板ブランクの主表面を研磨して磁気ディスク基板を製造する方法および該磁気ディスク基板上に磁気記録層を形成して磁気ディスクを製造する方法を提供することができる。
[ガラス成形体の製造方法]
本発明のガラス成形体の製造方法は、
中心軸が直線状の貫通孔を有する鋳型を、
前記中心軸が垂直になるようにまたは水平に対して傾斜するように配置し、
前記貫通孔内に熔融ガラスを流し込み、成形して、
結晶化ガラス体の母材となる棒状のガラス成形体を得ることを特徴とする。
以下、図1〜図6に基づいて、本発明のガラス成形体の製造方法を具体的に説明する。
図1または図2に示されるように、熔融ガラス2をパイプ1の下部から鋳型3の貫通孔内に流入する。図1または図2に示されるように、パイプ1の長手方向は、垂直方向になっていることが好ましく、このように配置することにより、後述する鋳型内におけるガラス流の乱れを低減することができる。
鋳型3の貫通孔は、中心軸が直線状になっている。該貫通孔の形状は、特に制限されるものではないが、鋳型3内でのガラスの動きを妨げないようにするには、貫通孔の任意の位置における、ガラスの移動方向に対する垂直断面形状が同一であるものが好ましく、例えば、円柱状や、楕円形状、角柱状の形状が挙げられる。また、鋳型3の温度分布を制御しない場合は、鋳型3の入口側の温度が出口側の温度よりも高くなり、鋳型3の熱膨張によってその断面形状が変化するため、ガラス成形前において、ガラスの移動方向に対する貫通孔の垂直断面形状が一定であったとしても、ガラス成形時においては、上記断面形状が貫通孔の入口側と出口側で異なってくる。このため、本発明のガラス成形体の製造方法において、ガラス成形前における貫通孔の形状は、貫通孔の入口から出口方向に向かって断面積が大きくなっているもの(テーパー状のもの)が好ましく、このような貫通孔であれば、ガラス成形時において、ガラスの移動方向に垂直な貫通孔の断面形状がガラスの移動方向に一定になるか、または出口に向けて僅かに拡大することとなる。特に、流出時の粘性が低いガラスを成形する場合やガラスの濡れ性が高い材質からなる鋳型を使用する場合、ガラスが鋳型に焼き付かないようにするため、貫通孔は、テーパー状にして、その傾きをガラスの移動方向に向かって大きくすることが望ましい。
結晶化ガラス体の母材となるガラス成形体は、ガラス原料を熔融し、成形して得られるものであるが、上述したように、上記ガラス成形体を構成するガラスは、加熱処理によって結晶化しやすい性質を有しており、このようなガラスを溶融状態から成形する場合、冷却スピードを極めて大きくしないと結晶化によりガラスが失透してしまう。この失透を防止するために、流出時の熔融ガラスの温度を失透温度域より十分高くし、鋳型へ流し込んだ後はガラスを急冷しなければならないが、本発明のガラス成形体の製造方法においては、貫通孔を有する鋳型を用いて、該貫通孔内にガラスを満たし、ガラスと貫通孔の内周面とを接触させることにより、ガラスの熱を急速に奪って熔融ガラスを急冷している。ガラスの単位体積あたりの貫通孔内周面の面積が小さいほど、ガラスの冷却スピードが低下し、逆にガラスの単位体積あたりの貫通孔内周面の面積が大きいほど、ガラスの冷却スピードが増加する。このため、上記鋳型3中に鋳込まれるガラスにおいて、ガラスの単位体積あたりの貫通孔内周面の面積、すなわち貫通孔内周面の面積/貫通孔の内容積は、0.057〜0.25mm−1が好ましく、0.08〜0.25mm−1がより好ましく、0.13〜0.25mm−1がさらに好ましく、0.13〜0.2mm−1が特に好ましい。また、貫通孔のガラス移動方向の長さは貫通孔の内径の1/50〜3倍が好ましく、1/20〜2倍がより好ましい。
本発明のガラス成形体の製造方法において、鋳型3の材質は、カーボン、鋳物や、ニッケルなどの耐熱性金属が好ましい。本発明のガラス成形体の製造方法において、熔融ガラスからガラス成形体を作製する工程は、鋳型3の劣化を防止するという観点から、不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
鋳型2(貫通孔内壁)の温度は、(1)ガラスが融着しない、(2)熔融ガラスが貫通孔内に隙間なく広がる、等の点を考慮して決定することが好ましい。鋳型3には、温度制御のために、必要に応じてヒーターを設けたり、冷却器を設けてもよい。貫通孔出口でのガラス成形体表面の温度が高すぎる場合には、鋳型2を空冷したり、水冷板を設ける等して冷却することにより、また、温度が低すぎる場合には、ヒーターで加熱することにより、温度調整することができる。
溶融ガラス2はパイプ1を通じて鋳型3内に流し込むが、パイプ1流出時のガラス温度を高温にするとガラスの粘度が低下して、水に近い低い粘性になる。粘性が低いガラスほど、パイプ1内壁付近のガラスの流速とパイプ1の中心軸に沿って流出するガラスの流速の差が大きく、パイプ1から同時に流出するガラスであってもパイプ1内に同時に流入したものではない。このため、パイプ1に流入するガラスが撹拌により十分均質化されたガラスであったとしても、パイプ1から流出するガラスはパイプ1に流入したガラスとガラス組成が極めて僅かに異なるものになる。このようなガラスが鋳型内で混じり合うと、得られるガラス成形体は、極めて僅かな組成ムラを有することになり、その組成ムラが脈理として光学的に観察されることになる。この組成ムラは、極めて僅かなものであっても、結晶化ガラス体中に析出する結晶相が不均一になる原因となり、高精度の結晶化ガラス体の製造にとって好ましくない。
本発明のガラス成形体の製造方法においては、図1または図2に示すように、中心軸が垂直になるように配置された貫通孔に熔融ガラス2を流し込んでおり、あるいは中心軸が水平に対して傾斜するように配置された貫通孔に熔融ガラス2を流し込むため、鋳型3への流し込みによってガラスの流れが乱れにくい。その結果、僅かに組成が異なるガラス同士が混じり合って生じる脈理を低減、防止することができるので、極めて均質性の高いガラス成形体4を得ることができ、結果として均質性の高い結晶化ガラス体を作製することができる。より均質性の高いガラス成形体を得るためには、貫通孔の中心軸を垂直にして鋳型を配置することが好ましい。
貫通孔内で急冷されたガラスは貫通孔の形状に対応する形状に成形され、貫通孔出口、すなわち、鋳型3の取り出し口から所定速度で取り出される。
ガラス成形体4の取り出し速度の制御方法としては、貫通孔出口から取り出されるガラスの成形体4の、貫通孔内壁によって成形された面(ガラス成形体4の側面)を保持して、速度制御する方法を挙げることができる。例えば、図1に示すように、複数のローラ5でガラス成形体の側面6を挟持して、ローラ5とガラス成形体の側面6とが滑らないようにした状態で、ローラ5の回転速度を制御することによりガラス成形体の下方への移動速度を制御することができる。図1に示すように、ローラ5をガラス成形体の移動経路に沿って複数組配置し、ガラス成形体に働く重力を複数組のローラで分散して支持することが好ましく、また、図1に示すように、上記ローラ5は後述する成形炉7内に配置することが好ましい。
この方法によれば、ガラス成形体4を成形しつつ、成形炉7を通過したガラス成形体下部を切断または割断することができるため、ガラス成形体の生産性を高めることができる。
他方、上述したような、ガラス成形体4の側面を保持して取り出し速度を制御する方法では、ガラス成形体4を挟持する力を大きくし過ぎるとガラスが破損するため、所定の力以上の力を加えることができない。そのため、ガラス成形体4の重量が大きくなるとガラス成形体4がローラ間を滑って、速度制御が困難となる。このような事態を避けるには、図2に示すように、貫通孔の出口から取り出されたガラス成形体4の先端部を支持機構10により支持することにより、貫通孔からのガラス成形体4の取り出し速度を制御する方法を用いればよい。
図1および図2に示すいずれの取り出し速度制御方法においても、鋳型3内の熔融ガラス液面の高さを液位センサ8によってモニターし、コントローラー9から制御信号を出力することにより、取り出し速度を制御することができる。
ところで、鋳型3から取り出したガラス成形体4を急速に冷やしてしまうと、ガラス成形体の表面と中心部で大きな温度差が生じるためガラス成形体4が破壊してしまうという問題がある。そこで、図1または図2に示すように、貫通孔出口下部に成形炉7を設け、成形炉7によって、雰囲気温度をガラス転移温度付近に設定し、ガラス成形体4の表面と中心部の温度差をゆっくり低減することによりガラス成形体4の破損を防止することが好ましい。この成形炉7内を通過したガラス成形体4は、表面と中心部の温度が調整されるだけでなく、歪みを低減することも可能となる。
次いで、取り出されたガラス成形体は、所定の長さに切断または割断される。ガラス成形体の割断方法の具体例を、図3〜図5に示す。
図3に示す態様においては、ガラス成形体の所定の位置においてその側面の一部に、スクライブ加工によってケガキ線(刻線)を形成する。ケガキ線はガラス成形体の取り出し方向に対して垂直な方向に形成することが好ましい。ガラス成形体の中心軸を挟んで前記スクライブ加工を施した位置の反対側の側面にはガラス成形体を局所的に支持する支点を置き、該支点により、支点より上部のガラス成形体の動きを制限する。一方、スクライブ加工位置の下部においてガラス成形体に水平方向に圧力を加えることによって、図4に示すように、支点を中心にしてスクライブ加工を施した部分からガラス成形体を破断してこれを割断することが可能になる。
また、外径が大きいガラス成形体を割断する場合には、図5に示すように、スクライブ加工を施したガラス成形体((a)図)のスクライブ加工位置に、内部に水路が形成された金属製のジャケット(水冷ジャケット)を局所的に接触し((b)図)、熱衝撃によりケガキ線からガラス内部へと向かうクラックを発生させると共に、ガラス成形体の中心軸を挟んでケガキ線の反対側の側面を支点で支え((c)図)、ケガキ線よりも下部のガラス成形体に水平方向に力を加えることにより、クラックが支点方向に成長するようにトルクが働いてガラス成形体を割断する((d)図)ことが可能になる。
上記のように割断されあるいは切断されたガラス成形体は、この後、アニールして歪みを低減することが好ましい。
本発明のガラス成形体の製造方法においては、得られるガラス成形体の1mあたりの真直度が2mm以下であることが好ましい。また、ガラス成形体の外径公差が±0.25mm以内であることが好ましい。
次に、アニールしたガラス成形体の割断方法として特に好ましい方法である側圧切断法を、図6および図7に基づいて説明する。まず、図6に示すように、側面の割断したい位置にスクライブ加工によりケガキ線を入れた棒状のガラス成形体11と、高圧容器12を用意し、高圧容器12の開口部にガラス成形体11を挿通するとともに、高圧容器12の側壁とガラス成形体11の間をシールする。上記スクライブ加工部位は高圧容器12の中央付近にくるように配置し、次に高圧容器12の液体導入口13から液体(好ましくは、水)を導入して前記容器内を液体で満たし、さらに液体の圧力を加えて密閉された高圧容器12内の圧力を高める。高圧容器12内において、ガラス成形体11のスクライブ加工されていない側面には圧力が均等に加わるが、スクライブ加工部位では前記圧力が加工部位を押し開くように作用し、ガラス成形体11の中心軸に対して垂直方向にクラックを成長させ、図7に示すように、スクライブ加工部位の両側を分断することにより、ガラス成形体を割断することができる。
本発明のガラス成形体の製造方法においては、ガラス成形体の側面を機械加工して、円柱状とすることが好ましい。
本発明のガラス成形体の製造方法においては、貫通孔が円柱状の鋳型を用いることにより、側面を機械加工しなくとも、真直性に優れ、外径公差の小さい円柱形状のガラス成形体を得ることができるが、円柱状のガラス成形体をスライスしてより精密なガラス物品を作製するためには、ガラス成形体の側面を機械加工して真直度を向上させ、外径公差をゼロに近づけることが望まれる。
例えば、図8に示すように、外径の等しい円柱状のガラス成形体を長手方向を揃えて複数本積み重ね、これらを同時にスライスしようとする場合、真直性が悪く、外径公差が大きいガラス成形体では各ガラス成形体の中心軸を互いに平行にして積み重ねることができない。このような状態でスライス加工すると、ディスク状物品の厚みが不揃いになったり、真円度が低くなってしまう。
そこで、本発明のガラス成形体の製造方法においては、ガラス成形体の側面を研削、あるいは研磨等により機械加工して、複数のガラス成形体を長手方向を揃えて積み重ねたときに、各ガラス成形体の中心軸が所要の平行度になるようにすることが好ましい。
ガラス成形体側面の機械加工法としては、公知のセンターレス加工が好ましく、センターレス加工によって、上記円柱状のガラス成形体を効率よく生産することができる。
ガラス成形体側面を機械加工して得られる円柱状のガラス成形体の真直度は、5.0×10−5×L[mm]以下が好ましく、4.0×10−5×L[mm]以下がより好ましく、3.0×10−5×L[mm]以下がさらに好ましく、2.8×10−5×L[mm]以下が特に好ましい。
また円柱状のガラス成形体の外径公差は±0.2mm以内が好ましく、±0.1mm以内がより好ましく、±0.08mm以内がさらに好ましく、±0.05mm以内が特に好ましい。
円柱状のガラス成形体の外径は、16〜70mmが好ましく、16〜50mmがより好ましく、16〜30mmがさらに好ましく、20〜30mmが特に好ましい。
また生産性を高め、一度のスライスで多数枚のディスク状ガラスを作る上から、円柱状のガラス成形体の長さL[mm]は、100mm以上であることが好ましい。ただし、スライス装置のスペース、取り扱いの容易さを考慮すると、上記長さを1000mm以下にすることがより好ましく、100〜500mmとすることがさらに好ましい。
次に、本発明のガラス成形体の製造方法において用いられるガラスについて説明する。
上述したように、結晶化ガラスの母材ガラスは、結晶化処理(加熱処理)に適するようにガラス組成が決められているので、母材ガラス成形時に意図しない結晶化が生じやすいという課題を有している。本発明のガラス成形体の製造方法によれば、得られるガラス成形体は多様な結晶化ガラス体の製造に有効であるが、その中でも、研磨によって極めて高いレベルの平滑性を有する表面を実現することができ、超音波洗浄などによって研磨表面から結晶相が脱落することがなく、ヤング率が大きい結晶化ガラス体を得るための母材ガラスについて、以下説明するものとする。なお、以下、特に説明しない限り各成分の含有量はモル%で示すものとする。
第1のガラス(以下、ガラスIという)としては、TiOを含み、SiOとMgOをモル比(SiO/MgO)で0.8〜6.0含むガラスを挙げることができる。
TiOは母材ガラスを加熱処理して結晶の核を生成させる機能を有する。SiOとMgOは加熱処理により析出するエンスタタイトあるいはエンスタタイト固溶体の結晶相の構成成分となる。
SiOとMgOのモル比(SiO/MgO)を0.8〜6.0とすることが好ましい理由は、上記モル比が当該範囲より小さくても大きくても、加熱処理によってエンスタタイトおよび/またはエンスタタイト固溶体(エンスタタイト系固溶体と呼ぶ)を析出させることが難しくなるからである。上記モル比(SiO/MgO)は1.0〜6.0が好ましく、1.0〜5.0がより好ましい。また、TiOの含有量は5〜15%が好ましい。
上記ガラスIとしては、SiO35〜65%、Al5%超〜20%、MgO10〜40%、TiO5〜15%を含み、上記各成分の合計が92%以上のガラスを挙げることができる。
このガラスは、スピネルタイプの結晶相や二珪酸リチウム結晶相を析出させないため、ZnO、LiOを含まないことが好ましく、SiO、Al、MgO、TiOに加え、ZrO、KO、Yを含み、SiO、Al、MgO、TiO、ZrO、KO、Yの合計含有量が99モル%以上のものが好ましく、100モル%のものがより好ましい。
さらに、SiO、Al、MgO、TiO、Yの合計含有量が99モル%以上のものが好ましく、100モル%のものがより好ましい。
但し、上記各ガラスには、脱泡清澄剤としてSbも含むことができるものとする。
上記各組成範囲内にあって、AlとMgOのモル比(Al/MgO)が0.2以上0.5未満のものが好ましく、SiO40〜60%、Al7〜20%、MgO 12〜39%、TiO 5.5〜14%を含むものがより好ましく、TiO8〜14%を含むものがさらに好ましい。
上記ガラス全般にわたり、Yを含むものが好ましく、Yを導入する場合、その導入量は10%以下とすることが好ましく、0.1〜10%とするのがより好ましい。
また、上記ガラス全般にわたり、ZrOを含むものが好ましく、ZrOを導入する場合、その導入量は10%以下とすることが好ましく、1〜10%とすることがより好ましく、1〜5%とするのがさらに好ましい。
さらに、上記ガラス全般にわたり、アルカリ金属酸化物の含有量は0〜5%とするのが好ましい。ただし、LiOは球状結晶粒子である二珪酸リチウムを発生させる要因となるので、導入しないことが望ましい。アルカリ金属酸化物としては、NaOおよびKOが好ましく、NaOとKOを合計で0%超〜5%含むものがより好ましい。中でもアルカリ金属酸化物として、KOのみを導入することが一層好ましい。
MgO以外のアルカリ土類金属酸化物を導入する場合は、CaOとSrOとBaOを合計で0〜5%含むものが好ましく、0〜1%含むものがより好ましく、0%含むものがさらに好ましい。
さらに、磁気ディスク基板では、内部に微少でも気泡が存在すると不良品の発生につながるが、これは、基板表面を研磨することによって気泡が表面に現れるとその部分が窪みになり、基板表面の平滑性を損なうためである。このため、ガラスの脱泡を十分行う必要があり、十分な脱泡を行うために有効な清澄剤としてSbとAsを挙げることができる。SbとAsを使用する場合、合計含有量で2%以下の導入が好ましい。さらにAsは毒性を有しているため、環境影響への配慮からはAsを導入しないことが好ましい。したがって、清澄剤としてはSbを0〜2%導入することが好ましく、0%を超え、2%以下導入することがより好ましい。
次に上記ガラスIを構成する各ガラス成分について詳細に説明する。
SiOはガラスの網目構造の形成成分であり、主な析出結晶であるMgO・SiOの組成を有するエンスタタイトおよび(Mg・Al)SiOの組成を有するエンスタタイト固溶体の構成成分でもある。SiOの含有量が35%未満では、溶解したガラスが非常に不安定なので、高温成形ができなくなるおそれがある上、上記のような結晶も析出し難しくなる。また、SiOの含有量が35%より少なくなると、残存ガラスマトリックス相(結晶化ガラスにおける非晶質相)の化学耐久性が悪化したり、耐熱性も悪化する傾向がある。一方、SiOの含有量が65%を超えると、主結晶としてエンスタタイトが析出しにくくなり、結晶化ガラスのヤング率が急激に小さくなる傾向がある。そのため、SiOの含有量は、析出結晶種およびその析出量、化学耐久性、耐熱性および成形・生産性などを考慮すると、35〜65%の範囲がよい。より好ましい物性を有する結晶化ガラスが得られるという観点から、SiOの含有量は、40〜60%の範囲が好ましい。尚、ほかの成分との組合せで、表面平滑性は多少劣るが、160GPa以上の高いヤング率を有する結晶化ガラスを得ることもでき、この場合、SiOの含有量が35〜55%であることが好ましい場合がある。
Alはガラスの中間酸化物であり、ガラス表面硬度の向上に寄与する。しかし、Alの含有量が5%以下ではガラスマトリックス相の化学耐久性も低下し、基板材料に要求される強度が得られにくくなる傾向がある。一方、Alの含有量が20%を超えると、主結晶としてのエンスタタイトの析出がしにくくなるとともに、溶融温度が高くなってガラスが溶けにくくなる上、失透しやすくなって容易に成形しにくくなる傾向がある。したがって、ガラスの溶解性、高温度成形性、析出結晶種などを考慮して、Alの含有量は5%超〜20%の範囲がよく、7〜20%の範囲がより好ましい。尚、ほかの成分との組合せで、表面平滑性は多少劣るが、160GPa以上の高いヤング率を有する結晶化ガラスを得ることもでき、この場合、Alの含有量が9〜20%であることが好ましい場合がある。
MgOはガラスの修飾成分であり、MgO・SiOの組成を有するエンスタタイトおよび(Mg・Al)SiOの組成を有するエンスタタイト固溶体の結晶の主成分でもある。MgOの含有量が10%未満では上記のような結晶が析出しにくく、ガラスの失透傾向および溶融温度が高くなり、かつガラス成形の作業温度幅が狭くなる傾向がある。一方、MgOの含有量が40%を超えると、ガラスの高温粘性が急激に低くなって熱的に不安定となり、生産性も悪化し、ヤング率や耐久性も低下する傾向がある。そこで、MgOの含有量は、ガラスの生産性、化学耐久性、高温粘性および強度などを考慮すると、10〜40%の範囲であることが好ましく、12〜39%の範囲であることがより好ましい。尚、ほかの成分との組合せで、表面平滑性は多少劣るが、160GPa以上の高いヤング率を有する結晶化ガラスを得ることもでき、この場合、MgOの含有量が20〜39%であることが好ましい場合がある。
但し、モル比(Al/MgO)は0.5未満となるように、MgOおよびAlの含有量を調整する。モル比(Al/MgO)が、0.5以上になると、結晶化ガラスのヤング率が急激に低下する傾向があるからである。
Al/MgO<0.5とすることで、150GPa以上の高ヤング率を有する結晶化ガラスを得ることもできる。Al/MgO<0.45であることがより好ましい。但し、モル比(Al/MgO)を小さくし過ぎると、ガラスの高温粘性が低下する傾向および結晶粒子径が大きくなる恐れがあるのでモル比(Al/MgO)は0.2以上が好ましく、0.25以上がより好ましい。
TiOはMgO・SiOの組成を有するエンスタタイトおよび(Mg・Al)SiOの組成を有するエンスタタイト固溶体の結晶相析出の核生成剤である。さらに、TiOは、SiOの含有量が少ない場合に、ガラスの失透を抑える効果も有する。但し、TiOの含有量が5%未満の場合、主結晶の核生成剤としての効果が充分に得られず、ガラスが表面結晶化してしまい、均質な結晶化ガラスの作製が難しくなる傾向がある。一方、TiOの含有量が15%を超えると、ガラスの高温粘性が低くなりすぎて分相したり、失透したりするので、ガラスの生産性が極端に悪化する傾向がある。そのため、ガラスの生産性、化学耐久性、高温粘性、結晶核生成などを考慮すると、TiOの含有量は5〜15%が好ましく、5.5〜14%がより好ましく、8〜14%がさらに好ましい。尚、ほかの成分との組合せで、表面平滑性よりもヤング率を重視した場合、160GPa以上の高いヤング率を有する結晶化ガラスを得ることもでき、この場合、TiOの含有量が8.5〜14%であることが好ましい場合がある。
ガラスIは、Yを含むことができる。Yの導入によって結晶化ガラスのヤング率を10GPa程度増大でき、かつ液相温度を50〜100℃程度低減することができる。すなわち、少量のYの導入によってガラスの特性や生産性を格段に向上させることができる。Yの含有量が0.1%以上であれば、上記Yを導入することによる効果が得られる。Yの導入量は、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上がさらに好ましい。但し、Yは前述のガラスに含まれる主結晶の成長を抑える力をもつため、Yの含有量が多過ぎると、ガラスを結晶化させる目的で行われる熱処理において、表面結晶化が起り易く、目的とする結晶化ガラスが作製できなくなる傾向がある。このような観点からYの含有量は、10%以下とするのがよい。特に、Yの含有量は、8%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
さらに、ガラスIは、10%以下のZrOを含有することができる。ZrOはガラスの安定性を高め、特にMgOを多く含むガラスの安定性の向上に大きな役割を果たすことができる。また、核生成剤としても作用し、TiOの補佐役として予備処理中のガラス分相を促進して結晶粒子の微細化に役立つ。しかし、ZrOの含有量が10%を超えると、ガラスの高温溶解性や均質性が悪化するおそれがあるので、その導入量は1〜10%であることが好ましい。さらに、ガラスの高温溶解性や結晶粒子の均質性などを考慮すると、ZrOの導入量は0〜6%がより好ましく、1〜5%がさらに好ましい。
上記ガラスにおいては、高ヤング率などの特性および均質な結晶性を保つという観点からSiO、Al、MgOおよびTiOの合計含有量は92%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
上記合計含有量範囲内であれば、SiO、Al、MgOおよびTiO以外の成分として、結晶化ガラスの所望の特性を損なわない範囲で、アルカリ金属酸化物RO(例えば、LiO、NaO、KO等)および/またはアルカリ土類金属酸化物RO(例えば、CaO、SrO、BaO等)等の成分を含んでもよい。アルカリ金属酸化物および/またはアルカリ土類金属酸化物のガラス原料としては、対応する各硝酸塩を使用することができる。アルカリ金属酸化物はヤング率を低下させる傾向があることから、その含有量は5%以下とすることが好ましい。一方、アルカリ金属酸化物はガラスの溶解温度を下げる効果や、白金溶解炉からの白金の混入物をイオン化して溶解させる効果を有するがあり、この場合、0.1%以上の添加が効果的である。
アルカリ金属酸化物の中で、特に、KOは、ガラスの溶解温度を下げる効果、および白金溶解炉からの白金の混入物をイオン化して溶解させる効果とともにヤング率を低下させにくい効果を有するため好ましい。KOを含む場合、その含有量は、5%以下とすることが好ましく、0.1〜2%がより好ましく、0.1〜1%がさらに好ましい。
また、MgO以外のアルカリ土類金属酸化物を含む場合、アルカリ土類金属酸化物は、結晶粒子を大きくする傾向があることから、その含有量は5%以下であることが適当であり、0〜1%の範囲がより好ましい。アルカリ金属酸化物を含む場合、その量は、0.1〜5%が好ましく、0.1〜2%がより好ましく、0.1〜1%がさらに好ましい。アルカリ金属酸化物としてはKOのみを導入することが好ましいが、この場合、上記アルカリ金属酸化物の量は、KOの量に等しくすることが好ましい。
また、上記ガラスは、ZnOおよびNiOを実質的に含まないことが好ましい。ZnOは、硬い結晶であるスピネルを形成し易くさせるためである。またNiOは、スピネルを形成し易くさせるという観点からも環境に影響する成分であるという観点からも含有しないことが好ましい。
各成分の含有量の好ましい範囲を任意に組合せて、より好ましい組成範囲を設定することができるが、その中でも好ましい組合せを具体的に示しておく。
SiOが35〜55%、Alが9〜20%、MgOが12〜39%、TiOが8〜14%、Yが0〜10%、ZrOが1〜10%、KOが0.1〜2%、MgO以外のアルカリ土類金属酸化物の合計量が0〜5%、SiO、Al、MgO、TiOの合計量が93%以上のガラス。
SiOが35〜55%、Alが9〜20%、MgOが12〜39%、TiOが8〜14%、YO3が0.1〜10%、ZrOが1〜10%、KOが0.1〜2%、MgO以外のアルカリ土類金属酸化物の合計量が0〜5%、SiO、Al、MgO、TiOの合計量が93%以上のガラス。
SiOが35〜55%、Alが9〜20%、MgOが12〜39%、TiOが8〜14%、Yが0.1〜8%、ZrOが1〜5%、KOが0.1〜1%、MgO以外のアルカリ土類金属酸化物の合計量が0〜1%、SiO、Al、MgO、TiOの合計量が93%以上のガラス。
SiOが35〜55%、Alが9〜20%、MgOが20〜39%、TiOが8〜14%、Yが0.1〜3%、ZrOが1〜5%、KOが0.1〜2%、MgO以外のアルカリ土類金属酸化物の合計量が0〜1%、SiO、Al、MgO、TiOの合計量が95%以上のガラス。
SiOが35〜55%、Alが9〜20%、MgOが20〜39%、TiOが8〜14%、Yが0.1〜3%、ZrOが1〜5%、KOが0.1〜1%、MgO以外のアルカリ土類金属酸化物の合計量が0〜1%、SiO、Al、MgO、TiOの合計量が95%以上のガラス。
さらに、いずれの場合においてもLiO、ZnO、NiO、As、PbO、Fを含まないものが好ましい。より一層好ましい組成は、上記いずれの組成範囲においても、SiO、Al、MgO、KO、ZrO、Y、TiOの合計量が99%以上、特に好ましくは100%のものである。なお、上記一層好ましい組成に脱泡清澄剤としてSbのみを加えたものもより一層好ましい組成である。
第2のガラス(以下、ガラスIIという)は、SiO、Al、LiOを含むガラスであり、二珪酸リチウム結晶相の析出に適したガラスである。
ガラスIIはガラスIよりも研磨加工性、表面平滑性の面で劣り、高いヤング率も得られないが、磁気ディスクなどの情報記録媒体用基板として使用できるものであるから、本発明のガラス成形体の製造方法を適用することが好ましい。
なお、上記ガラスI、ガラスIIは、公知の方法を用いて製造することができ、例えば、高温溶融法、すなわち所定の割合のガラス原料を空気中または不活性ガス雰囲気で溶解し、バブリングや脱泡剤の添加や撹拌などによってガラスの均質化を行い、気泡や未溶解物、異物を含まない、均質なガラスを得ることができる。溶解温度は1400〜1650℃とすることができるが、1500〜1650℃、さらには1550〜1600℃で溶解してもよい。溶解温度を下げる場合、KOを導入することが好ましい。
[結晶化ガラス体の製造方法]
次に、本発明の結晶化ガラス体の製造方法について説明する。
本発明の結晶化ガラス体の製造方法は、上記本発明のガラス成形体の製造方法で作製したガラス成形体を熱処理して、使用領域全体に結晶相が析出した結晶化ガラス体を得ることを特徴とする。
本発明の結晶化ガラス体の製造方法において、得られる結晶化ガラス体からディスク状磁気ディスクブランクを作製する場合は、ガラス成形体として、円柱状のガラス成形体を用いることが好ましく、その他形状の薄板状ガラスを得る場合は、ガラス成形体として、薄板主表面の形状と等しい断面形状を有する柱状のガラス成形体を用いることが好ましい。
以下、円柱状のガラス成形体を用いて結晶化ガラス体を熱処理する場合について説明する。
まず、本発明のガラス成形体の製造方法により作製された、円柱状のガラス成形体を用意する。ガラスを結晶化する際、まず、加熱処理によってガラスを分相させ、多数の結晶核をガラス中に析出させる。次いで、前記分相工程における温度よりも高温になるまでガラスをゆっくり昇温し、結晶核を成長させることにより、非晶質ガラスからなるガラス成形体中に所望の結晶相を多数分散させる。そして、上記ガラス成形体を損傷させない降温速度で冷却し、結晶化処理を終える。
上記一連の工程で、母材ガラスの体積は僅かに収縮する。結晶化ガラス体全体で均一な体積収縮がおきれば問題ないが、不均一な体積収縮がおきると、円柱形状のガラス成形体を用いても、得られる結晶化ガラス体の真直性が低下してしまう。その結果、結晶化ガラス体の真直性を改善するために、結晶化ガラス体の側面を加工する工程が必要になってしまう。ガラスを結晶化すると硬度が増加し、加工に要する時間と手間が増加するため、高精度のディスク状物品を高い生産性のもとに量産する上で不都合である。
したがって、円柱形状の結晶化ガラス体をスライスして平行度、平坦性の高いディスク状物品を生産するには、円柱形状のガラス成形体の真直性を極力損なわないことが大切である。
ガラス成形体を構成する母材ガラスの分相は、ガラス成形体をガラス転移温度付近の温度で加熱することにより行い、さらに結晶核の成長工程はより高温で行うことから、ガラスの粘度は外力に対して変形する程度にまで低下している。したがって、ガラス成形体の一部を把持した状態で加熱処理を行うと、自重による変形によりガラス成形体の真直性が低下してしまう。
このため、円柱形状のガラス成形体の加熱処理は、円柱中心軸を中心にして円周方向にガラス成形体を回転させながら行うことが好ましい。円柱中心軸を中心にして円周方向にガラス成形体を回転させながらこれを保持し、加熱、結晶化して、ガラス成形体の真直性が維持されるように結晶化ガラス体を製造すれば、真直性を可能な限り維持しつつ、ガラス成形体を結晶化することができる。このような結晶化は結晶相の均質性を高め、品質が一定な磁気ディスク基板ブランクを得る上からも好ましい。
上記ガラス成形体の回転は、ガラス成形体の側面が保持された状態で行われるが、ガラス成形体側面の保持は、中心軸方向の全長にわたって行われるものであることが好ましい。
円柱中心軸を中心にして円周方向にガラス成形体を回転させながらこれを保持する方法としては、ガラス成形体および結晶化ガラス体の外径よりも狭い間隔で配置した複数の耐熱性ローラ上にガラス成形体を配置し、前記ローラを回転させてガラス成形体の回転を行う方法や、平面上に円柱中心軸が平行になるように複数のガラス成形体を配置し、前記平面上でガラス成形体を転がすことにより回転させる方法などを例示することができる。さらに、次のような方法で回転させることもできる。ガラス成形体の外径よりも大きい内径を有する耐熱性の円筒体中にガラス成形体を挿入し、円筒体の中心軸とガラス成形体の円柱中心軸を平行にする。この状態で円筒体の中心軸を水平もしくは水平から傾斜させた状態とし、円筒体内からガラス成形体がすべり出てしまわないようにする。そして、中心軸を中心にして円筒体を回転させると、ガラス成形体は円筒体の内周面上を転がって、円柱中心軸を中心にして回転することとなる。
上記各回転方法や、上記以外の回転方法のいずれにおいても、ガラス成形体から結晶化ガラス体になるまで一定の回転スピードで連続的に回転させることが好ましい。
また、ガラス成形体の変形を防止するため、水平面に対するガラス成形体の中心軸の傾き角を小さくすることが好ましく、上記中心軸を水平にすることがより好ましい。
上記ローラの材料、ガラス成形体を転がす平面を形成する材料、円筒体を構成する材料としては、ガラスが融着しにくく、耐熱性が高いという理由から炭化ケイ素などが好ましい。
ガラス成形体の熱処理は加熱炉内で行うことが好ましく、炉内の温度分布は均一にすることが好ましい。また、ガラス成形体を炉内で回転移動させながら加熱処理する場合、炉内を複数の領域に区分し、各領域内の温度を独立して設定できるようにしてもよい。その場合には各領域内の温度分布を均一にすることが望ましい。
ガラス成形体の回転スピードは、炉内のヒータの配置方法や設定温度、ガラス成形体の寸法などに応じて適宜、設定すればよい。その際、予め、いくつかの回転スピード条件で加熱処理を行い、得られる結晶化ガラス体の真直性が高くなる条件を選択する。目標とする真直度は、本発明の結晶化ガラス体の真直度とすればよい。
真直性、外径精度の高い結晶化ガラス体を得るには、加熱処理工程で形状を損なわないよう配慮することに加え、ガラス成形体の真直性、外径精度を高めることが望まれる。
本発明の結晶化ガラス体の製造方法においては、本発明のガラス成形体の製造方法により作製された、所定の真直度と外径公差を有するガラス成形体を用いているため、熱処理時のガラス成形体の回転スピードを高い精度でコントロールすることができる。
得られる結晶化ガラス体の外径、長さは、対応するガラス成形体の外径、長さと同等とすることが好ましい。ただし、前述のように熱処理工程でガラス成形体の体積収縮がおきるため、ガラス成形体は、予め各部寸法を体積収縮による寸法減少分だけ大きく作製したものを用いることが好ましい。
表面粗さの小さい外周面を有する結晶化ガラス体を得るため、ガラス成形体の外周面(側面)を予め機械加工したものを用いてもよい。側面が機械加工されていないガラス成形体を熱処理する場合は、熱処理後、側面を適宜機械加することが好ましく、この場合、得られる結晶化ガラス体の真直度、外径公差等は、上記ガラス成形体の側面を機械加工した場合と同様の範囲にあることが好ましい。
次にエンスタタイト系結晶相を含む結晶化ガラスを例に本発明の結晶化ガラス体の製造方法について詳細に説明する。
まず、ガラス成形体に、(Tg−35℃)〜(Tg+60℃)の範囲の温度(ただし、Tgは前記母材ガラスのガラス転移温度である)で加熱する分相工程と結晶化工程を施す。
上記加熱処理工程では、初期の段階で比較的低温度、例えば、(母材ガラスの転移温度(Tg)−35℃)〜(Tg+60℃)、好ましくは(Tg−35℃)〜(Tg+60℃)、より好ましくはTg〜(Tg+60℃)で加熱して多数の結晶核を生じさせる。これらの温度は、具体的には700〜850℃の範囲である。その後、温度を850〜1150℃に上げて結晶を成長させることが、結晶を微細化するという観点からは好ましい。この際、ガラスが500〜850℃になった後は、微細な結晶粒子の析出、および板ガラスの外形変形防止の観点から、昇温速度は0.1〜10℃/分とすることがより好ましい。ガラスが500〜850℃になるまでは特に昇温速度には制限はないが、5〜50℃/分とすることが好ましい。また、上記方法において、同じヤング率や同じ結晶粒子の大きさまたは同じ結晶化均質性を有する結晶化ガラスを作製するための結晶核生成熱処理および結晶成長熱処理の許容温度範囲は30℃以上の温度幅をもつので、結晶化の製造工程を容易に制御することができる。
さらに、上記結晶化工程においては、熱処理によりMgO・SiOの組成を有するエンスタタイトおよび(Mg・Al)SiOの組成を有するエンスタタイト固溶体が主結晶として析出する熱処理条件とすることが好ましい。そのような条件としては、結晶化のための熱処理温度が850〜1150℃であることが好ましく、875〜1050℃であることがより好ましい。熱処理温度が850℃未満ではエンスタタイトやその固溶体が析出しにくく、1150℃を超えるとエンスタタイトやその固溶体以外の結晶が析出し易くなる。また、875〜1000℃にすることにより、エンスタタイトおよび/またはその固溶体の平均粒径を比較的小さく、例えば、100nm以下、好ましくは50nm以下にすることができる。結晶化のための熱処理時間は、熱処理温度との関係で、結晶化度、結晶粒子の大きさに作用するため、所望の結晶化度、結晶粒子の大きさによって、適宜選択できるが、850〜1150℃の熱処理の場合、1〜4時間とすることが好ましい。
結晶化ガラスとしては、エンスタタイト系結晶相を含むもの以外に、結晶相として、二珪酸リチウムを含むもの、コーディエライトを含むもの、ユークリプタイトを含むものなどを例示することができるが、前述のとおり、エンスタタイト系結晶相を含むものが最も好ましい。
結晶化ガラス体は円柱形状をしているが、側面と底面の交わる稜が鋭利になっていると、結晶化ガラス体のハンドリング時に損傷するなどの不具合がおきることがあるので、上記稜部分に面取り加工を施したり、予めガラス成形体の側面と底面の交わる稜に面取り加工を施すか、前記稜を曲面で構成することが好ましい。
次に上記結晶化ガラス体を構成する結晶化ガラスについて説明する。
ガラスIからなるガラス成形体を熱処理して得られる結晶化ガラス体において、結晶化ガラスは、エンスタタイトおよび/またはエンスタタイト固溶体の結晶相(エンスタタイト系結晶相と呼ぶ)を含む。エンスタタイト系結晶相では、結晶粒子の長径と短径の比(長径/短径)を大きくすることができる。本態様において長径と短径の比は3以上が好ましく、3.5以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、4.5以上がより一層好ましく、5以上が特に好ましい。このように上記比が大きい結晶相は、結晶粒子というよりも結晶繊維と呼ぶほうが相応しいかもしれない。また、このような結晶繊維状結晶相がつながって2次元的な広がりをもつ結晶相を構成することもある。以下、本明細書においては上記結晶相も一括して結晶粒子と呼ぶが、本態様の結晶化ガラス体においては、結晶粒子の形状上、結晶化ガラス体表面から結晶粒子が離脱しにくいものであるといえる。そのため、このような結晶化ガラスからなる結晶化ガラス体で基板を作製すれば、結晶粒子が基板表面から離脱することによる磁気記録領域の欠損を防止することができ、磁気ディスクとしての信頼性を高めることができる。なお、上記結晶粒子の長径と短径の比の上限に特に制限はないが、20以下を目安にすることができる。
結晶粒子の長径、短径は次のようにして測定することができる。透過型電子顕微鏡を用いて、結晶化ガラス体をスライスして得た表面、あるいは結晶化ガラスから作製した基板の磁気記録層が形成されることになる表面(基板の主表面)に垂直な方向から試料内の結晶粒子を拡大観察する。この拡大像から細長い結晶粒子の最も長い部分の長さを測定して結晶粒子の長径とし、長径に対して直交する方向の長さを測定して結晶粒子の短径とする。
透過型電子顕微鏡を用いた結晶粒子の長径、短径の測定では、結晶化ガラス中の結晶粒子を一方向から観察することになる。そのため、観察方向と結晶粒子の長手方向が同じ場合は、長径/短径の値は小さくなり、観察方向が結晶粒子の長手方向と直交する場合は、長径/短径の値は大きくなる。しかし、本発明の結晶化ガラス体の製造方法において、結晶化ガラスを構成する結晶粒子の長手方向がランダムに分布しているので、透過型電子顕微鏡の拡大画像中で結晶粒子の長手方向がすべて観察方向を向いている確率と、結晶粒子の長手方向がすべて観察方向に対して直交している確率はともに実質的にゼロと考えて差し支えない。したがって、拡大画像中で長径/短径の値の大きな結晶粒子を選び出し、この結晶粒子について長径/短径の値が3以上のものを本態様の結晶化ガラスと考えてよい。なお、上記拡大画像中に存在する長径/短径の値が3以上の結晶粒子の割合(結晶粒子の個数の割合)が10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
また、長径/短径の値が3.5以上の結晶粒子の割合(結晶粒子の個数の割合)が5%以上であることが望ましく、4以上の結晶粒子の割合(結晶粒子の個数の割合)が5%以上であることがより望ましく、4.5以上の結晶粒子の割合(結晶粒子の個数の割合)が5%以上であることがさらに望ましく、5以上の結晶粒子の割合(結晶粒子の個数の割合)が5%以上であることが特に望ましい。
エンスタタイト系結晶粒子は、Si、Mg、Oによって形成されるが、結晶の構造は、SiとOが繰り返しつながる鎖状構造をしている。そして複数のSi−Oの鎖状構造同士がMgやOを介してつながり、鎖状構造が面状に広がった構造をとるが、MgやOによる鎖状構造間の結合は弱く切れやすい。一方、Si−Oの鎖状構造が伸びる方向の強度は高いため、上記結晶種では鎖状の結晶粒子が織り成されたような構造になっている。そのため、一部が表面に露出してもエンスタタイト系結晶粒子であれば結晶化ガラスの一部を構成する非晶質相によって結晶粒子が強固に基板に束縛されているので、上記離脱を防止することができる。
エンスタタイトは硬度が低いため(モース硬度5.5)、エンスタタイト系結晶相を含む結晶化ガラス、特に、結晶相の中でエンスタタイトまたはエンスタタイト固溶体からなる結晶相が、体積割合で最も多い結晶化ガラス(主結晶がエンスタタイトまたはエンスタタイト固溶体)、あるいはエンスタタイトからなる結晶相とエンスタタイト固溶体からなる結晶相の体積割合が最も多い結晶化ガラス(主結晶がエンスタタイトおよびエンスタタイト固溶体)は非常に研磨しやすく、比較的短い時間で所望の表面粗さを得ることができるという特徴がある。さらに、エンスタタイトは、その鎖状構造が面状に連なった結晶の形状から、結晶粒子が非晶質相にくい込み、粒子サイズが小さくても高いヤング率が得られると考えられる。なお、このエンスタタイトには、クリノエンスタタイト、プロトエンスタタイトも含まれる。
さらに他の結晶種が含まれていても、上記エンスタタイト系結晶粒子の構造によって他の結晶粒子も基板に強固に束縛されるので、基板表面から結晶粒子の離脱が防止される。ただし、結晶相としてスピネルを含有しないことが好ましい。スピネル結晶相は硬度(モース硬度8)が高く、基板表面を研磨加工する際に結晶相と非晶質相の研磨スピードが異なるため、スピネル結晶相を含む基板では、結晶粒子による表面突起や結晶粒子の離脱が生じやすいからである。
なお、エンスタタイト系結晶粒子による結晶粒子離脱防止効果の高い結晶種としては、石英固溶体、チタン酸塩を例示できる。したがって、エンスタタイトおよび/またはエンスタタイトの固溶体からなる結晶粒子に加え、石英固溶体からなる結晶粒子を含む結晶化ガラス、エンスタタイトおよび/またはエンスタタイトの固溶体からなる結晶粒子に加え、チタン酸塩からなる結晶粒子を含む結晶化ガラス、エンスタタイトおよび/またはエンスタタイトの固溶体からなる結晶粒子に加え、石英固溶体からなる結晶粒子およびチタン酸塩からなる結晶粒子を含む結晶化ガラスが好ましい。
また、磁気ディスク基板に要求される諸性質を満たすと共に、上記結晶粒子の離脱防止効果を得るため、エンスタタイト系以外の結晶相を含む場合には、体積%で結晶化ガラス中に最も多く含まれる結晶種(以下、主結晶という)が、エンスタタイトおよび/またはエンスタタイトの固溶体であることが好ましい。特に、結晶化ガラス中のエンスタタイトおよび/またはその固溶体の合計含有量が70〜90体積%、チタン酸塩が10〜30体積%、そして、エンスタタイトおよび/またはその固溶体とチタン酸塩の合計含有量が90体積%以上であることがより好ましい。なお、結晶相に石英固溶体を含む結晶化ガラスと石英固溶体を含まない結晶化ガラスが存在する。
エンスタタイト系結晶相は上記のような結晶構造を有しているので、表面研磨の際、個々に弱く結合している鎖状構造が離れ、平滑性の優れた表面を実現することができる。
本態様において、結晶化ガラスのヤング率は140GPa以上であることが好ましく、160GPa以上であることがより好ましい。ヤング率を高めることにより、磁気ディスクの高速回転安定性、特に基板を薄板化した場合でも良好な高速回転安定性を得ることができる。また、比弾性率(ヤング率を密度で除した値)が37MN・m/kg以上であることが高速回転安定性を得る上から好ましい。
エンスタタイト系結晶相の存在は高ヤング率の実現にも寄与していると考えられる。前述のように、エンスタタイト系結晶相は結晶中の鎖状構造の方向に強く結合している。このような結晶繊維構造体が多数ランダムな方向に分散することにより、上記特性が実現されていると考えられる。
磁気ディスクを情報記録装置に組み込む際、磁気ディスクを固定するクランプがステンレス鋼などの金属であることから、金属材料の熱膨張係数に近い特性を有する結晶化ガラスが望まれる。さらに、上記基板として要求される諸性質を考慮すると、上記結晶化ガラスの100〜300℃における平均線膨張係数は50×10−7/℃以上であることが好ましく、50×10−7〜120×10−7/℃であることがより好ましく、55×10−7〜110×10−7/℃であることがさらに好ましく、60×10−7〜100×10−7/℃であることが特に好ましい。
結晶化ガラスの結晶粒子の大きさ、数密度、結晶化度は、基板の諸性質に影響を与える。そして、これらの値は透過率を用いて間接的に評価することができる。透過率を用いて上記評価を行う場合、1mmの厚みに換算して、波長600nmの光に対する透過率が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
結晶化ガラス中の結晶の割合(結晶化度)は、20〜70体積%であることが好ましい。さらに結晶化度が50体積%以上であることが、高いヤング率を有する基板とする上で好ましい。但し、結晶化後の後工程(基板の研削や研磨)の容易さを考慮すると、結晶化度は、20〜50体積%、さらには20〜30体積%とすることもできる。また、結晶化後の後工程の容易さよりもヤング率の高さを重視する場合には、結晶化度は50〜70体積%とするとよい。さらに、結晶化ガラスに含まれる結晶粒子のサイズは、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。なお、特に好ましい結晶粒子のサイズは1〜50nm、さらに望ましくは1〜40nmを目安にすることができる。なお、結晶粒子のサイズは前述の長径に相当する。
結晶粒子のサイズが100nmを超えると、ガラスの機械強度を低下させるだけでなく、研磨加工時に結晶粒子の欠落を引き起こしてガラスの表面粗度を悪化させるおそれがある。このような結晶粒子のサイズの制御は、主に、含まれる結晶相の種類および後述の加熱処理条件によって行うことができる。
[磁気ディスク基板ブランクの製造方法]
次に、本発明の磁気ディスク基板ブランクの製造方法について、説明する。
本発明の磁気ディスク基板ブランクの製造方法の第1の態様(以下、磁気ディスク基板ブランクの製法Iと呼ぶ)は、上記本発明のガラス成形体の製造方法により作製したガラス成形体を、該ガラス成形体の長手方向に対して垂直にスライスした後、熱処理して、使用領域全体に結晶相が析出した磁気ディスク基板ブランクを得ることを特徴とする。
ガラス成形体をスライスする方法としては、マルチワイヤーソーと呼ばれるスライス加工装置を使用する方法が好ましい。この加工装置は、ワークであるガラス成形体をスライスする領域に、複数のワイヤーが互いに平行かつ等間隔になるように、各ワイヤーを同一平面上に配置し、各ワイヤーがその長さ方向に回転し得るように複数のローラにかけ、上記領域を一定のピッチで繰り返し横断するように構成したものである。そして、上記ガラス成形体をスライスする領域において、ワイヤーの長さ方向に直交するようにガラス成形体の中心軸を位置決めし、ワイヤーをその長さ方向に一定のスピードで動かしながらガラス成形体の外周面(側面)に所定のスピードで押し当て、スライスするものである。このとき、ワイヤーの位置を固定し、ワークであるガラス成形体を移動させてスライスしてもよいし、ワークであるガラス成形体を固定し、ワイヤーを移動させてスライスしてもよいし、ワイヤーとワークを両方移動させてスライスしてもよい。
スライスはワークであるガラス成形体をスラリー中に浸漬して行ってもよいし、ドライな状態で行ってもよい。
ワイヤーの移動速度は、ガラス成形体の寸法、結晶化ガラス基板ブランクの寸法、機械的性質などを考慮して決めればよい。マルチワイヤーソーとしては、市販されているマルチワイヤーソー加工機を挙げることができる。
スライスしたディスク状のガラス成形体を洗浄して、磁気ディスク基板ブランクとする。この方法によれば、一度のスライスで多数枚の磁気ディスク基板ブランクを作製することができる。
より生産性を向上させるには、ガラス成形体の積層構造物を構成し、この積層構造物をスライスすることが好ましい。本発明の磁気ディスク基板ブランクの製法Iにおいては、本発明のガラス成形体の製造方法により作製したガラス成形体で積層構造物を構成するので、各ガラス成形体の中心軸をワイヤーに対して高精度に直交させることができ、平行度、平坦性の良好な磁気ディスク基板ブランクを得ることができる。
積層構造物を形成するガラス成形体の本数が少ない場合は、図8に示すように、一定の本数のガラス成形体で各層を形成し、各層を積層した積層構造物とすることが好ましい。このような積層構造物を、各層に対して垂直な方向からスライス加工することにより、積層構造物を構成するガラス成形体を同時に切断することができ、スライス速度などの切断条件を一定にすれば安定したスライス加工が可能になる。図8に示す態様において、積層構造物は、積層構造物を構成するガラス成形体の中心軸方向から見たときに各ガラス成形体の中心軸が正方形の格子を形成するように積層されている。
これに対し、積層構造物を形成する結晶化ガラスの本数が多い場合は、積層するにつれて各層を構成するガラス成形体の本数を減少させることが好ましい。一般に、ガラス成形体の本数が多くなると加工の安定性が低下するが、上記のようにガラス成形体の本数を漸次減少させて積層することにより、構造物の重心を低くすることができ、安定な積層構造体を得ることができる。より好ましい態様としては、積層構造物を構成するガラス成形体の中心軸方向から見たときに、各ガラス成形体の中心軸が正三角形の格子を形成するように積層された構造物を挙げることができる。なお、この構造は同方向から見たときのガラス成形体の最密充填構造になっている。
積層構造物を準備するにあたっては、エポキシ系接着剤を使用し、ガラス成形体を相互に密着するとともに、ワークである積層構造物を台の上に結束固定する。スライス加工後、スライスされたワークに付着している接着剤を有機系溶剤で溶解、除去し、洗浄、乾燥してディスク状のガラス成形体を得る。
本発明の磁気ディスク基板ブランクの製法Iにおいては、上記スライスしたディスク状のガラス成形体を、熱処理して、使用領域全体に結晶相を析出させる。
この場合、スライスしたディスク状ガラス成形体の加熱処理が不均一だと結晶化時の体積収縮が不均一になりディスク状ガラス成形体が反ってしまう。そのため、加熱処理炉内の温度分布を極力均一にし、輻射加熱においてもディスク状ガラス成形体の両主面間で均等な加熱を行うことが望ましい。また、一度に多数枚の薄板を加熱処理するために、ガラスとの熱融着がおこりにくい炭化ケイ素などのセラミック製平板をディスク状ガラス成形体の間に交互に積層し、この積層物をローラハウスキルン方式の加熱炉内に水平に保ちながら移送して加熱処理してもよい。
結晶化処理を行う際の加熱温度は、上記本発明の結晶化ガラス体の製造方法の説明において説明したものと同様であり、得られる磁気ディスク基板ブランクを構成する結晶化ガラスは、上記本発明の結晶化ガラス体の製造方法の説明において説明したものと同様である。
本発明の磁気ディスク基板ブランクの製造方法の第2の態様(以下、磁気ディスク基板ブランクの製法IIと呼ぶ)は、上記本発明の結晶化ガラス体の製造方法により作製した結晶化ガラス体を、該結晶化ガラス体の長手方向に対して垂直にスライスすることを特徴とするものである。
本発明の磁気ディスク基板ブランクの製法IIにおいて、結晶化ガラス体のスライス方法の具体例は、上記本発明の磁気ディスク基板ブランクの製法Iで説明したものと同様である。
本発明の磁気ディスク基板ブランクの製法IとIIは、結晶化のための加熱処理をスライスの前に行うか後に行うかが異なっている。結晶化後のスライス加工が難しい結晶化ガラスでは、本発明の磁気ディスク基板ブランクの製法Iが好ましく、結晶化後のスライス加工が可能な場合は、ガラス成形体の均一な加熱処理が可能であれば、本発明の磁気ディスク基板ブランクの製法IIの方が生産性を高めることができるので好ましい。
[磁気ディスク基板の製造方法]
本発明の磁気ディスク基板の製造方法は、本発明の磁気ディスク基板ブランクの製造方法により作製した磁気ディスク基板ブランクの主表面を研磨することを特徴とするものである。
ここで、主表面とは、磁気ディスク基板ブランクの面積が最も大きい面、すなわち、磁気ディスク基板ブランク作製時にスライスした対向する平面のことを意味する。
上記基板の機械加工は、公知の研削、精密研磨加工、内外径加工によって行うことができ、基板主表面の研磨は、例えば、合成ダイヤモンド、炭化珪素、酸化アルミニウム、炭化ホウ素などの合成砥粒や、天然ダイヤモンド、酸化セリウムなどの天然砥粒を用いて、公知の方法により行うことができる。
基板表面は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した平均粗さRa(JIS B0601)で1nm以下の表面平滑性に仕上げることが好ましい。表面の平均粗さRa(JIS B0601)は、磁気ディスクの記録密度に大きく影響し、表面平均粗さが1nmを超えると、高記録密度化を達成しにくくなる。高記録密度化を考慮すると、上記Raを0.7nm以下にすることがより好ましく、0.5nm以下にすることがさらに好ましく、0.3nm以下にすることが一層好ましい。
エンスタタイト系結晶相を含む結晶化ガラスからなる磁気ディスク基板は、高強度、高硬度、高ヤング率であり、かつ化学的耐久性や耐熱性が優れることから、磁気ディスク基板として有用である。さらに、上記基板によれば、無アルカリ、または低アルカリであるため、あるいはアルカリ金属酸化物としてKOのみしか含まないため、磁気記録膜等の膜の侵蝕を大いに低減することができ、磁気記録膜を最善に保つことができる。
なお、磁気ディスク基板には、清浄状態が厳しく求められるので、最終工程、あるいは中間工程において、適宜、基板の洗浄を行うことが好ましく、その際、基板を効率よく洗浄する上から超音波洗浄を行うことが好ましい。超音波洗浄の条件は公知の条件とすることができる。エンスタタイト系結晶相を含む結晶化ガラス基板は、基板表面の結晶粒子が離脱しにくいので、超音波洗浄によって汚れとともに基板表面の結晶粒子が基板から離脱してしまうこともない。
結晶化ガラスからなる磁気ディスク基板は、非晶質ガラスからなる磁気ディスク基板と異なり、化学強化なしでも十分な機械強度を有しており、そのため、基板の厚みを薄くできるという特徴を有している。基板の厚みは0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.28mm以下がさらに好ましく、0.1〜0.25mmがより一層好ましい。基板の形状は円板形状が好ましく、中心部分に記録装置に取り付けるための円形の孔を備えることが好ましい。基板の外径は16〜70mmが好ましく、16〜50mmがより好ましく、16〜30mmがさらに好ましく、20〜30mmがより一層好ましい。
[磁気ディスクの製造方法]
本発明の磁気ディスクの製造方法は、上記本発明の磁気ディスク基板の製造方法により作製した磁気ディスク基板上に磁気記録層を形成することを特徴とする。
磁気記録層は磁性層とも呼ばれるが、磁性層以外の層としては、機能面から、下地層、保護層、潤滑層などが挙げられ、必要に応じて形成される。これらの各層の形成には各種薄膜形成技術、例えば、スパッタ等を利用することができる。
磁性層の材料は特に制限されず、磁性層としては、例えば、Co系の他、フェライト系、鉄−希土類系などを挙げることができる。磁性層は、水平磁気記録方式、垂直磁気記録方式のいずれの磁気記録方式に用いられる磁性層であってもよい。磁性層としては、具体的には、Coを主成分とするCoPt系合金、CoCr系合金、CoCrTa系合金、CoPtCr系合金、CoCrPtTa系合金、CoCrPtB系合金、CoCrPtSiO系合金などの磁性薄膜を挙げることができる。また、磁性層を非磁性層で分割してノイズ低減を図った多層構成としてもよい。
下地層の材料は、磁性層の材料に応じて選択される。下地層の材料としては、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Alなどの非磁性金属から選ばれる少なくとも1種の材料、またはそれらの金属の酸化物、窒化物、炭化物等を挙げることができる。Coを主成分とする磁性層の場合には、磁気特性向上の観点からCr合金であることが好ましい。例えば、CrW系合金、CrMo系合金、CrV系合金があげられる。下地層は単層とは限らず、同一または異種の層を積層した複数層構造とすることもできる。また、基板と磁性層の間または磁性層の上部に、磁気ヘッドと磁気ディスクが吸着すること(ヘッドスティクション)を防止するための凹凸制御層を設けてもよい。この凹凸制御層を設けることによって、磁気ディスクの表面粗さは適度に調整されるので、磁気ヘッドと磁気ディスクが吸着することがなくなり、信頼性の高い磁気ディスクを得ることができる。
保護層としては、例えば、炭素保護層が挙げられる。
潤滑層の材料としては、多種多様な提案がなされているが、一般的には、液体潤滑剤であるパーフルオロポリエーテルをフレオン系などの溶媒で希釈し、媒体表面にディッピング法、スピンコート法、スプレイ法などによって塗布し、必要に応じて加熱処理を行って形成する方法を挙げることができる。
また、上記ヘッドスティクションを考慮すると、磁気ディスクの表面粗さは、最大表面粗さRmax=2〜30nmであることが好ましく、Rmax=3〜10nmがより好ましい。Rmaxが2nm未満の場合、磁気ディスク表面が平坦に近いため、磁気ヘッドや磁気ディスクが傷ついてしまったり、ヘッドクラッシュを起こすので好ましくない。また、Rmaxが30nmを超える場合、グライド高さ(グライドハイト)が大きくなり記録密度の低下を招くので好ましくない。尚、基板表面にテクスチャリング処理を施してもよい。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
以下、本実施例における、物性等の測定方法を示す。
[波長600nmでの透過率(%)]
対向する2平面を平行に精密光学研磨した1mm厚のものを透過率測定用サンプルとし、測定装置は、HITACHI分光器U−3410を用い、測定波長600nmでの透過率(%)を測定した。
[比重(密度)]
ガラスサンプル自体を比重測定用サンプルとした。装置は、アルキメデス法を利用した電子比重計(ミラージュ貿易(株)製MD−200S)を用いた。室温での比重の測定精度は±0.001(密度に換算すると±0.001g/cm)である。
[ヤング率(GPa)、ポアソン比]
端面積10mm角〜20mm角、長さ約95mmの平行出しされたサンプルを用い、ヤング率測定前に、比重(密度)測定および試料長さをノギスで測定し、それらを測定条件として用いた。装置は、(株)超音波工業製UVM−2を用いた。縦波(Tl1、Tl2)および横波(TS1、TS2)を測定する際、深触子接触媒体として、縦波の場合は「水」を、横波の場合は「ソニコートSHN20若しくはSHN−B25」を深触子とサンプル端面に塗布した。同一サンプルに対して縦波2回以上、横波5回以上の繰り返し測定を行い、平均を算出した。
尚、この操作により、ポアソン比も同時に得られる。ヤング率の測定精度は±1GPaであり、ポアソン比の測定精度は±0.001である。
〔結晶種〕
CuのKα線を用いて結晶化後のガラスを粉末にしたものについてX線回折を測定した(装置:マックサイエンス製X線回折装置MXP18A、管電圧:50kV、管電流:300mA、走査角度10〜90°)。得られたX線回折のピークから、析出している結晶の同定を行った。
[結晶化度]
結晶化ガラス試料について、X線の全散乱強度を測定し、その結果から、結晶化度x(%)は以下の式により求めることができる。X線回折装置としては、マックサイエンス製X線回折装置MXP18Aを用いた。
x=(1−(Ia/Ia100))×100
x=(Ic/Ic100)×100
Ia:未知物質の非晶質部分の散乱強度
Ic:未知物質の結晶質部分の散乱強度
Ia100:100%非晶質試料の散乱強度
Ic100:100%結晶質試料の散乱強度
100%非晶質試料の散乱強度分布はブロードなスペクトルとなり、100%結晶質試料の散乱強度分布は線幅の狭いスペクトルとなる。結晶化ガラスの散乱強度分布は、上記ブロードなスペクトルに線幅の狭いスペクトルが重畳した形になる。Iaは、スペクトルの裾野の部分を結ぶ水平線をベースラインを基準にしたブロードなスペクトルの最大部分の高さに相当する散乱強度である。いずれの散乱強度もスペクトルの裾野の部分を結ぶ水平線をベースラインとして算出した値である。
〔比弾性率(MN・m/kg)〕
上記ヤング率と室温における密度から、比弾性率=ヤング率/密度の式により算出した。
[平均線膨張係数(×10−7/℃)]
熱機械測定(Thermal Mechanical Analysis:略してTMA)により測定した。
ガラスサンプルを切り出し、φ50mm×20mmの円柱状に研削加工し、TMA測定用サンプルとした。測定装置は、(株)リガク製TAS100を用いた。測定条件は、昇温速度4℃/分、最高温度350℃とし、100〜300℃における平均線膨張係数を測定した。
また、平均線膨張係数以外の熱特性は、結晶化後の結晶化ガラスサンプルから試験片を切り出し、φ5mm×20mmの円柱状に研削加工して、上記(株)リガク製TAS100を用い、昇温速度4℃/分、最高温度350℃で測定した。
[表面平均粗さ(Ra)、最大表面粗さ(Rmax)〕
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:略してAFM)を用いて測定した。
結晶化ガラスサンプルから30×25×1mmに加工し、30×15mmの2平面を精密光学研磨したものを原子間力顕微鏡測定用サンプルとした。装置は、Digital Instrument社製NanoScope IIIを用いた。測定条件は、Tapping mode AFMで測定範囲、2×2μmまたは5×5μm、サンプル数256×256、スキャンレート1Hzとし、データ処理条件、Planefit Auto order 3(X,Y)、Flatten Auto order 3とした。Integral gain, Proportion gain, Set point は測定毎に調整した。尚、測定の前処理として、研磨されたサンプルはクリーンルーム内大型洗浄機にて純水、イソプロピルアルコールなどによる洗浄を行った。
[結晶粒子のサイズと結晶粒子の長径/短径比]
透過電子顕微鏡(TEM)を用いて結晶化ガラス中の結晶粒子を拡大撮影し、拡大画像から結晶粒子の最長部分の長さを長径、最短部分の長さを短径とした。
結晶粒子のサイズは前述のように測定した。なお、透過型電子顕微鏡の観察は、良好な拡大画像が得られるように表面に精密研磨加工を施した薄板状試料を用い、研磨面に対し垂直方向から行った。
実施例1(ガラス成形体の製造例)
表1および表2に示す組成の母材ガラスが得られるように、出発原料として、SiO、Al、Al(OH)、MgO、Y、TiO、ZrO、KNO、Sr(NOなどを合計250〜300g秤量した。尚、表には示していないが、全てのガラスには外割でSb0.03モル%を添加した。秤量した原料を十分に混合して調合バッチと成し、これを熔融容器に入れ、1550℃で攪拌しながら空気中で4〜5時間ガラスの溶解を行った。
図1に示すように、熔融容器内の溶融ガラスを、熔融容器に接続したパイプ1から、真っ直ぐな貫通孔が設けられた耐熱性材料からなる鋳型3の鋳込み口に連続して一定の流量で鋳込み、上記貫通孔内に熔融ガラス2を満たして成形を行った。なお、上記貫通孔の中心軸は垂直になるように配置し、また貫通孔の中心軸とパイプ1の中心軸が一直線上になるように、パイプ1と鋳型3の位置が調整された。
図1に示すように、ガラス成形体4の取り出しは、ガラス成形体の側面6を複数対のローラ5で挟持し、ローラ5の回転速度を制御して行った。ローラ5の回転速度は、鋳型貫通孔内の溶融ガラス液面を液位センサ8で光学的方法でモニターし、モニター信号に基づいて、コントローラ9からローラ5に取り出し速度調整信号を出力して、前記液面の高さが一定になるように制御した。
図1に示すように、取り出し口から取り出したガラス成形体は、鋳型3の下部に配置され、母材ガラスの転移温度付近の温度域に温度設定された成形炉7中を通過することにより、ガラス成形体の外表面と中心部の温度差を調整して、ガラス成形体の破損を防止した。
図3に示すように、成形炉7を通過したガラス成形体は、完全に冷却する前に、側面の所定位置でスクライブ加工によるケガキ線が付され、スクライブ加工位置と対向する位置を支点として、スクライブ加工位置の下部を水平方向に押圧することによって、支点を中心にしてガラス成形体にトルクを加え、これを割断した(図4参照)。その際、図5に示すように、水冷されたジャケットをスクライブ加工部位に押し当て、スクライブ加工部位から支点方向にクラックを発生させ、小さなトルクで割断してもよい。
上記割断により、引き出し中のガラス成形体から切り離した円柱状のガラス成形体をアニールして歪みを除去した。なお、ガラス成形体中には結晶の析出、脈理の発生は認められなかった。
次いで上記割断したガラス成形体をセンターレス加工して、外径28.8mm、外径公差±0.05mm以内、長さ180mm、真直度0.005mmの円柱形状のガラス成形体に仕上げた。
実施例2(結晶化ガラス体の製造例)
上記センターレス加工を施したガラス成形体を、熱処理炉内に平行に並んだ窒化ケイ素製のローラの間に、ローラの軸とガラス成形体の中心軸が平行になるように載せ、ローラを回転しながら、ガラス成形体の加熱処理を行った。ローラの回転速度はガラス成形体の回転速度が1回/分になるように設定した。
加熱処理は、表1、表2に示した第一次熱処理温度(結晶核形成熱処理温度)まで300℃/時間の昇温速度(第1の昇温速度)で昇温し、当該温度で4時間程度保持して第一次熱処理を行った。第一次熱処理を終えた後、直ちに第一次熱処理温度から表1、表2に示した第二次熱処理温度(結晶化熱処理温度)まで240℃/時間の昇温速度(第2の昇温温度)で昇温し、4時間程度、第二次熱処理温度に保持した後、炉内で室温まで冷却することによって結晶化ガラス体を作製した。得られた結晶化ガラス体を構成する結晶化ガラスのヤング率、比重等の測定結果を、母材ガラスの組成と共に表1、表2に示した。なお、結晶化ガラスの結晶化度は、20〜70体積%、結晶化ガラス中の結晶粒子であるエンスタタイトおよびその固溶体のモース硬度は5.5であった。
さらに、各結晶化ガラスの組成を分析した結果、母材ガラスと結晶化ガラスの組成の差は±0.1モル%以内であった。したがって、表1および表2に示す母材ガラス組成は、結晶化ガラスの組成と実質的に同一であると考えてよい。
Figure 2007091500
Figure 2007091500
[注]
(1)第1の昇温速度は、結晶核形成熱処理温度にまで昇温する際の昇温速度、第2の昇温速度は、結晶核形成熱処理温度から結晶化熱処理温度まで昇温する際の速度を示す。
(2)表中のエンスタタイトは、エンスタタイトおよびエンスタタイトの固溶体を示す。
(3)表中のガラス転移温度は、結晶化ガラスのガラス転移温度を示す。
表1、表2に示す結果から明らかなように、上記各結晶化ガラスは、結晶粒子の長径/短径比が3以上であった。また、ヤング率(140GPa以上)や比弾性率(40〜60MN・m/kgの範囲)などの強度特性が大きい。そのため、これらのガラスを磁気ディスク基板等の情報記録媒体用基板に使用した場合、これら基板が高速回転しても、基板に反りやブレが生じにくく、より基板の薄型化にも対応できることが分かる。また、No.1、No.3、およびNo.5の熱処理前のガラスについて液相温度を測定したところ、それぞれ1300℃、1290℃、および1270℃であり、ガラスの溶融および成形の面から要求される液相温度(例えば1350℃以下)を満足するものであった。
次に、上記棒状の結晶化ガラス体をセンターレス加工して、外径28.8mm、外径公差±0.050mm以内、長さ180mm、真直度0.005mmの円柱状結晶化ガラス体25本を得た。
実施例3 (磁気ディスク基板ブランク、磁気ディスク基板および磁気ディスクの製造例)
図8に示すように、実施例2で作製した円柱状結晶化ガラス体を、各円柱状結晶化ガラス体の長手方向を揃えつつ、各円柱状結晶化ガラス体の中心軸方向から見た場合に、各中心軸が正方形の格子を形成するように1層あたり5本づつ円柱体を積み上げて積層構造物を得た。積層構造物を構成する各結晶化ガラス体は、エポキシ系接着剤を用いて市販のマルチワイヤーソーのワークの固定台上で側面同士が密着した状態で固着した。
そして、駆動するワイヤーソーの下側から上記積層構造物を近づけて、その側面をワイヤーソーに押し当て、一定のスピードでスライスした。スライスはスラリー中で行い、ワイヤーの間隔は0.5mmとした。
切断後のワークを有機系溶剤中に入れて接着剤を溶解し、その後、超音波洗浄を行って同径、同厚の5400枚余りのディスク状結晶化ガラスを得た。これらディスク状結晶化ガラスを磁気ディスク基板ブランクとし、両主表面を表面平均粗さRa(JIS B0601)が0.4nm、最大表面粗さRmaxが4nmとなるように精密研磨加工するとともに、内外径加工を施して結晶化ガラス製の磁気ディスク基板を得た。磁気ディスク基板の外径は28.70mm、中心穴径は7mm、厚さは0.381mmであった。
なお、適宜、基板を超音波洗浄する工程を加えたが、超音波印加により、エンスタタイト系結晶相を含む結晶化ガラスからなる基板の表面から結晶粒子が離脱するようなことはなかった。本工程で超音波の周波数は、20kHzとした。
このようにして得た磁気ディスク基板上に、順次、下地層、磁性層(磁気記録層)、保護層、潤滑層を形成した。各層について具体的に説明すると、下地層は、厚さ25nmのCrVの薄膜で、組成比はCr:80at%、V:20at%である。磁性層は、厚さ約15nmのCoCrPtBの薄膜で、組成比はCo:60at%、Cr:20at%、Pt:14at%、B:6at%である。保護層は厚さ6nmの水素化カーボン薄膜である。潤滑層は、パーフルオロポリエーテルからなる。
上記磁気ディスクの製造は、まず、上記磁気ディスク基板を基板ホルダーにセットした後、静止対向型装置の仕込み室に送り込み、次いで、下地層、磁性層、保護層を順次、Ar系ガスを用いてDCマグネトロンスパッタにより成膜することにより行った。ここで、保護層の成膜においてはArガスに水素を20%混合したAr+Hガスを用いた。その後、水素化カーボン保護層の表面に、ディッピング法によってパーフルオロポリエーテルを塗布することにより厚さ1.0nmの潤滑層を形成して磁気ディスクを得た。
以上のようにして、高い生産性のもとに磁気ディスク基板、磁気ディスクを生産することができた。
本発明によれば、結晶化ガラス体の母材であるガラス成形体を安定して製造することができ、該ガラス成形体から、結晶化ガラス体、磁気ディスク基板ブランク、磁気ディスク基板および磁気ディスクを好適に作製することができる。
ガラス成形体の製造装置の一例を示す図である。 ガラス成形体の製造装置の一例を示す図である。 ガラス成形体の割断方法の一例を示す図である。 ガラス成形体の割断方法の一例を示す図である。 ガラス成形体の割断方法の一例を示す図である。 ガラス成形体の割断方法の一例を示す図である。 ガラス成形体の割断方法の一例を示す図である。 長手方向を揃えてガラス円柱体を複数本積み重ね、スライスする方法の一例を示す図である。
符号の説明
1 パイプ
2 熔融ガラス
3 鋳型
4 ガラス成形体
5 ローラ
6 ガラス成形体の側面
7 成形炉
8 液位センサ
9 コントロ−ラ
10 支持機構
12 高圧容器
13 液体導入口

Claims (9)

  1. 中心軸が直線状の貫通孔を有する鋳型を、
    前記中心軸が垂直になるようにまたは水平に対して傾斜するように配置し、
    前記貫通孔内に熔融ガラスを流し込み、成形して、
    結晶化ガラス体の母材となる棒状のガラス成形体を得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
  2. 前記ガラスが、TiOを含み、SiOとMgOをモル比(SiO/MgO)で0.8〜6.0含む請求項1に記載のガラス成形体の製造方法。
  3. 前記ガラスが、モル%表示で、SiO35〜65%、Al5%超〜20%、MgO 10〜40%、TiO5〜15%を含み、上記各成分の合計が92%以上であって、SiOとMgOのモル比(SiO/MgO)が0.8〜6.0である請求項1に記載のガラス成形体の製造方法。
  4. ガラス成形体の側面を機械加工して、円柱状とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で作製したガラス成形体を熱処理して、使用領域全体に結晶相が析出した結晶化ガラス体を得ることを特徴とする結晶化ガラス体の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で作製したガラス成形体を、該ガラス成形体の長手方向に対して垂直にスライスした後、熱処理して、使用領域全体に結晶相が析出した磁気ディスク基板ブランクを得ることを特徴とする磁気ディスク基板ブランクの製造方法。
  7. 請求項5に記載の方法で作製した結晶化ガラス体を、該結晶化ガラス体の長手方向に対して垂直にスライスすることを特徴とする磁気ディスク基板ブランクの製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の方法で作製した磁気ディスク基板ブランクの主表面を研磨することを特徴とする磁気ディスク基板の製造方法。
  9. 請求項8に記載の方法で作製した磁気ディスク基板上に磁気記録層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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