JP2007062309A - プロセスレス印刷版材料用湿し水、プロセスレス印刷版材料の印刷方法およびプロセスレス印刷版材料 - Google Patents

プロセスレス印刷版材料用湿し水、プロセスレス印刷版材料の印刷方法およびプロセスレス印刷版材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、印刷機上で現像可能であり、かつ印刷時の汚れ回復性に優れ、耐刷性に優れるプロセスレス印刷版材料の印刷方法、それに用いられるプロセスレス印刷版材料用湿し水およびプロセスレス印刷版材料を提供することにある。
【解決手段】 プロセスレス印刷版材料の印刷に用いられる湿し水であって、防黴剤を含有し、かつフッ素イオン濃度が0〜0.1ppmでありカルシウムイオン濃度が0.01〜40ppmであることを特徴とするプロセスレス印刷版材料用湿し水。
【選択図】 なし

Description

本発明はプロセスレス印刷版材料用湿し水、プロセスレス印刷版材料の印刷方法およびプロセスレス印刷版材料に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能なプロセスレス印刷版材料の印刷方法、それに用いられる湿し水及びプロセスレス印刷版材料に関する。
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピューター・トゥー・プレート)技術が求められている。
近年、地球環境への負荷の低減のために、特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレスCTP印刷版への期待が高まっている。
その中でも近年、印刷版材料に画像を形成させた後に薬液で処理することなくそのまま印刷機に装着し、湿し水とインキにより不要部分を除去してすぐに印刷可能なプロセスレス印刷版材料(例えば特許文献1、2参照。)を用いた印刷方法が注目されている。
通常、印刷に使用する湿し水は一旦調製すると長期間、湿し水タンク内で保管されたり、印刷機の水船内で放置されたり、何度も繰り返し使用されることが多い。しかしながら、前記のような従来のプロセスレス印刷版材料を用いた印刷方法では、長期間保管された湿し水を使用した場合には、印刷画質が低下したり、印刷中に本来インキが付かない領域にインキが付着し汚れた場合に水量を増やし汚れを回復させる、いわゆる汚れ回復性が充分でない場合があったり、耐刷性能が不充分である場合があるなどの問題があった。
特開平4−261539号公報 特開2004−202870号公報
本発明の目的は、印刷機上で現像可能であり、かつ印刷時の汚れ回復性に優れ、耐刷性に優れるプロセスレス印刷版材料の印刷方法、それに用いられるプロセスレス印刷版材料用湿し水およびプロセスレス印刷版材料を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の手段により達成される。
(1)プロセスレス印刷版材料の印刷に用いられる湿し水であって、防黴剤を含有し、かつフッ素イオン濃度が0〜0.1ppmでありカルシウムイオン濃度が0.01〜40ppmであることを特徴とするプロセスレス印刷版材料用湿し水。
(2)プロセスレス印刷版材料を画像露光した後に印刷機に装着し、前記(1)項に記載のプロセスレス印刷版材料用湿し水及び印刷インキを画像露光済みのプロセスレス印刷版材料の表面に供給し機上現像処理を行い、印刷することを特徴とするプロセスレス印刷版材料の印刷方法。
(3)前記プロセスレス印刷版材料が、親水性表面を有する基材上に画像形成機能層を有することを特徴とする前記(2)項に記載のプロセスレス印刷版材料の印刷方法。
(4)前記親水性表面を有する基材が多孔質構造を有する親水性を有することを特徴とする前記(3)項に記載のプロセスレス印刷版材料の印刷方法。
(5)前記プロセスレス印刷版材料が、前記基材の画像形成機能層を有する側に光熱変換素材を含有する層を有することを特徴とする前記(3)または(4)項に記載のプロセスレス印刷版材料の印刷方法。
(6)前記(2)〜(5)項のいずれか1項に記載のプロセスレス印刷版材料の印刷方法に用いられることを特徴とするプロセスレス印刷版材料。
本発明の上記構成により、印刷機上で現像可能であり、かつ印刷時の汚れ回復性に優れ耐刷性に優れる、プロセスレス印刷版材料の印刷方法、それに用いられるプロセスレス印刷版材料用湿し水およびプロセスレス印刷版材料を提供することにある。
本発明は、プロセスレス印刷版材料の印刷に用いられる湿し水であって、防黴剤を含有し、かつフッ素イオン濃度が0〜0.1ppmでありカルシウムイオン濃度が0.01〜40ppmであることを特徴とする。
また本発明は、プロセスレス印刷版材料の印刷方法であって、プロセスレス印刷版材料を画像露光した後に印刷機に装着し、上記のプロセスレス印刷版材料用湿し水及び印刷インキを画像露光済みのプロセスレス印刷版材料の表面に供給し機上現像処理を行い、印刷することを特徴とする。
[湿し水]
本発明の湿し水は、防黴剤を含有することが特徴である。
本発明に係る防黴剤としては、チアゾリルベンゾイミダゾール系化合物、イソチアゾロン系化合物、クロロフェノール系化合物、ブロモフェノール系化合物、チオシアン酸やイソチオシアン酸系化合物、酸アジド系化合物、ダイアジンやトリアジン系化合物、チオ尿素系化合物、アルキルグアニジン化合物、4級アンモニウム塩、有機錫や有機亜鉛化合物、シクロヘキシルフェノール系化合物、イミダゾール及びベンゾイミダゾール系化合物、スルファミド系化合物、塩素化イソシアヌル酸ナトリウム等の活性ハロゲン化化合物、キレート剤、亜硫酸化合物、ペニシリンに代表される抗生物質等を挙げることができる。
その他、L.E.West,“Water Quality Criteria”Phot.Sci.and Eng.,Vol.9,No.6(1965)に記載の殺菌剤;特開昭55−111942号、同57−8524号、同57−157244号、同58−105145号及び同59−126533号に記載の各種防黴剤;「防菌防黴の化学」堀口博著・三共出版(昭和57年)、「防菌防黴技術ハンドブック」日本防菌防黴学会・技報堂(昭和61年)に記載の化合物等を使用することができる。
以下に防黴剤の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
AF−1)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン
AF−2)2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール
AF−3)イソチオシアン酸メチル
AF−4)3,5−ジクロロ−4′−フルオロチオカルバニリド
AF−5)4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール
AF−6)2,4,6−トリクロロフェノール
AF−7)デヒドロ酢酸ナトリウム
AF−8)スルファニルアミド
AF−9)3,4,5−トリブロモサリチルアニリド
AF−10)ソルビン酸カリウム
AF−11)ベンゾアルコニウムクロライド
AF−12)1−ブロモ−3−クロロ−5,6−ジメチルヒダントイン
AF−13)モノクロロアセトアミド
AF−14)モノブロモアセトアミド
AF−15)モノヨードアセトアミド
AF−16)ベンゾイミダゾール
AF−17)シクロヘキシルフェノール
AF−18)2−オクチルイソチアゾリン−3−オン
AF−19)エチレンジアミン4酢酸
AF−20)ニトリロ−N,N,N−トリメチレンホスホン酸
AF−21)1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
AF−22)エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンホスホン酸
AF−23)塩素化イソシアヌル酸ナトリウム
AF−24)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン
AF−25)10,10′−オキシビスフェノキシアルシン
AF−26)1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン
これらの化合物は、米国特許第2,767,172号、同2,767,173号、同2,767,174号、同2,870,015号、英国特許第848,130号、仏国特許第1,555,416号等を参照して合成することができる。更に、プレデントールON、パーマケムPD、トップサイド800、トップサイドEG5、トップサイド300、トップサイド600(以上パーマケムアジア社製)、ファインサイドJ−700(東京ファインケミカル社製)、ProzelGXL(I.C.I社製)の商品名で入手することができる。
これらの防黴剤は、湿し水1リットル当たり0.01〜50g程度、好ましくは0.05〜20gで用いる。
また防黴剤として、酸化剤を用いることもできる。用いることができる酸化剤としては、金属又は非金属の酸化物、酸素酸又はその塩、過酸化物、有機の酸系を含む化合物が挙げられる。上記酸素酸としては硫酸、亜硝酸、硝酸、次亜塩素酸等、過酸化物としては過酸化水素水、フェントン酸試薬等、そしてオゾンが好ましく用いられる。
本発明に係る湿し水には、さらにpH調整剤、濡れ性向上のための助剤、水溶性高分子化合物、キレート化剤などを用いることが好ましい。
pH調整剤としては、水溶性の有機酸、無機酸及びそれらの塩類から選ばれる少なくとも1種が使用できる。これらの化合物は湿し水のpH調整あるいはpH緩衝、平版印刷版支持体の適度なエッチング又は防腐食に効果がある。好ましい有機酸としては、例えばクエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、ヒドロキシ酢酸、蓚酸、マロン酸、レブリン酸、スルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、ホスホン酸、フィチン酸等が挙げられる。
無機酸としては例えば硝酸、硫酸が挙げられる。更にこれら有機酸及び/又は無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩あるいはアンモニウム塩、有機アミン塩も好適に用いられる。
これらの有機酸、無機酸及びこれらの塩類から1種を単独で使用しても、あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。
これらpH調整剤の湿し水への添加量は有機酸、無機酸及びこれらの塩類を合わせて0.001質量%以上0.1質量%以下の範囲が適当である。0.001質量%以上であると、平版印刷版の支持体であるアルミニウムのエッチング力により印刷時の汚れが良好である。一方、0.1質量%以下であれば、印刷機の錆びの点において好ましい。
また湿し水のpHは4.5以上7.5以下が好ましい。この範囲のpHであれば印刷時の汚れの発生が少ない。
濡れ性向上の助剤として、界面活性剤や他の溶剤を使用することが好ましい。
用いられる界面活性剤としては、アニオン型界面活性剤及び/またはノニオン型界面活性剤が好ましい。
アニオン型界面活性剤の例としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩類、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホ琥珀酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
ノニオン型界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類、トリアルキルアミンオキシド類などが挙げられる。その他、弗素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤も使用することができる。界面活性剤を使用する場合、その含有量は発泡の点を考慮すると、1質量%以下、好ましくは0.001〜0.5質量%が適当である。また、2種以上併用することもできる。
助剤としてはその他に、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール及びペンタプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、1−位が炭素原子数1〜8のアルキル基で置換された2−ピロリドン誘導体、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、プロパルギルアルコール(2−プロピン−1−オール)、3−ブチン−1−オール、1−ブチン−3−オール、2−ブチン−1,4−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールなどが挙げられる。
これらの中でも特に3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール及び1−ブトキシ−2−プロパノールが好ましい。
これらの溶剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。一般にこれらの溶剤は、湿し水の全質量に基づいて0.002〜1質量%の範囲で使用するのが適当で、好ましくは0.005〜0.5質量%である。
水溶性高分子化合物としては、例えばアラビアガム、澱粉誘導体(例えば、デキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、リン酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉)、アルギン酸塩、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)等の天然物及びその変性体、ポリエチレングリコール及びその共重合体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸及びその共重合体の合成物、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でもカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースは特に好ましい。水溶性高分子化合物の含有量は、湿し水に対して0.001〜0.5質量%が適しており、より好ましくは、0.005〜0.2質量%である。
湿し水には、キレート化剤を添加することが好ましい。好ましいキレート化剤としては例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。前記のキレート剤のナトリウム塩あるいはカリウム塩の代わりに、有機アミンの塩も有効である。これらのキレート化剤は使用時の湿し水中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。使用時の湿し水中のキレート化合物の含有量としては、0.0001〜0.5質量%が適当で、好ましくは0.0005〜0.2質量%である。
本発明に係る湿し水は、さらに、臭気マスキング剤、着色剤、防錆剤、消泡剤を含んでいてもよい。
臭気マスキング剤としては、下記一般式(I)で示されるものが好まし使用できる。
一般式(1)
1−COOR2
一般式(I)の化合物において、式中R1は炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはフェニル基である。アルキル基又はアルケニル基の場合、その炭素原子数は好ましくは4〜8である。R1がアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表す場合、それらは直鎖でも分岐鎖でもよい。アルケニル基は特に二重結合を1個有するものが適当である。
アラルキル基としては、ベンジル基やフェニルエチル基が挙げられる。なお、R1で示されるアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはフェニル基の1以上の水素原子が、水酸基又はアセチル基で置換されていてもよい。R2は炭素原子数3〜10のアルキル基、アラルキル基又はフェニル基であって、それらは直鎖でも分岐鎖でもよい。アルキル基の場合、その炭素原子数は好ましくは3個から9個である。アラルキル基としては、ベンジル基やフェニルエチル基が挙げられる。
臭気マスキング剤として具体的に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチル吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、4−メチルペンタン酸(イソヘキサン酸)、2−ヘキセン酸、4−ペンテン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、2−デセン酸、ラウリン酸又はミリスチン酸のエステルが挙げられる。
その他、フェニル酢酸ベンジル、アセト酢酸エチルやアセト酢酸2−ヘキシルといったアセト酢酸エステル等もある。中でも好ましいものとして、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、酪酸n−ブチル、酪酸n−ペンチル及び酪酸イソペンチルが挙げられ、特に酪酸n−ブチル、酪酸n−ペンチル及び酪酸イソペンチルが好適である。
これらの臭気マスキング剤の湿し水における含有量は、湿し水の全質量に基づいて0.001〜0.5質量%が適当で、より好ましくは0.002〜0.2質量%である。これらを使用することにより、作業環境をより改善することができる。また。バニリン、エチルバニリン等を併用してもよい。
着色剤としては、食品用色素等が好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCINo.19140、15985、赤色色素としてはCINo.16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCINo.42640、青色色素としてはCINo.42090、73015、緑色色素としてはCINo.42095、等が挙げられる。使用する場合の湿し水中の着色剤の含有量としては、0.0001〜0.5質量%が好ましい。
防錆剤としては、例えばベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、チオサリチル酸、ベンゾイミダゾール及びその誘導体等が挙げられる。使用する場合の湿し水中の防錆剤の含有量としては、0.0001〜0.5質量%が好ましい。
消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ましく、その中で乳化分散型及び可溶化型等いずれも使用することができる。
さらに本発明に係る湿し水は、表面張力及び粘度を調整して印刷適性を向上するためにアルコール類を添加しても良い。
添加できるアルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
本発明の湿し水組成物の成分として残余は、水である。
湿し水組成物は、通常商業ベースとするときは濃縮化して商品化するのが一般的である。
従って、水を使用して上記の各種成分を溶解した水溶液として濃縮湿し水組成物を得ることができる。このような濃縮湿し水組成物を使用するときに、通常使用時に水で10〜200倍程度に希釈し、使用時の湿し水組成物とする。
(湿し水中のフッ素イオン濃度)
本発明において湿し水に含まれるフッ素イオン濃度を本発明の範囲にするには、前記濃縮湿し水組成物にフッ素原子を有する素材を使用しないこと、及び/または希釈にフッ素イオン含有濃度を0〜0.1ppmにした水を使用することが好ましい。
希釈に使用する水からフッ素イオンを除去して本発明の範囲にする方法としては、沈殿法と吸収法がある。沈殿法としては、水酸化アルミニウムにより水中のフッ素イオンを凝集させ沈殿して除去する方法である。吸収法は、吸収剤を詰めこんだ容器に水を流しフッ素イオンを濾過するものであり、吸収剤としては活性アルミナ、活性炭、イオン交換樹脂、逆浸透膜などがある。
(湿し水中のカルシウムイオン濃度)
本発明において湿し水に含まれるカルシウムイオン濃度を本発明の範囲にするには、前記濃縮湿し水組成物にカルシウムイオンを有する素材を本発明の範囲内になるような量を使用すること、及び/または希釈にカルシウムイオン含有濃度を0.01〜40ppmにした水を使用することが好ましい。希釈に使用する水からカルシウムイオンを除去して本発明の範囲にする方法としては、純水、イオン交換水または逆浸透膜で浄化した水を用いることが好ましい。
本発明にかかる湿し水は、呼び出し給水方式、連続給水方式のいずれの湿し水の供給装置でも使用できるが、特に連続給水方式の湿し水の供給装置で用いられることが好ましい。三菱ダイヤマチックダンプナー、コモリマチック、ダールグレンダンプナーやハイデルベルグのアルカラーダンプナーといった印刷機でも使用することができる。
[インキ]
本発明に係る印刷方法に用いることができるインキは、平版印刷に使用できるインキであればいずれのインキでも良いが、具体的には、ロジン変性フェノール樹脂と植物油(アマニ油、桐油、大豆油等)、石油系溶剤、顔料、酸化重合触媒(コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛等)等の成分よりなる油性インキ、及びアクリル系オリゴマー、アクリルモノマー、光重合開始剤、顔料等の成分よりなる紫外線硬化型のUVインキ、さらに、油性インキの性質とUVインキの性質を併せ持つハイブリッドインキが挙げられる。
(印刷機)
本発明の印刷方法に用いられる印刷機としては、印刷版面上に湿し水を供給する部材、インクを供給する部材を有する公知の平版印刷機を用いることができる。
[印刷版材料]
本発明に係るプロセスレス印刷版材料は、基材上に機上現像可能な画像形成機能層を有する。機上現像可能な層とは、画像露光後、特に特別な薬剤を必要とせず、印刷機上で湿し水、あるいは湿し水と印刷インクにより、印刷時非画像部となる部分が除去され得る層である。
本発明に係る親水性表面とは、印刷時に、画像形成機能層が除去された部分が、水保持性を有し印刷インキ反撥性を有する非画像部、となりうる表面であり、本発明に係る親水性表面を有する基材は、基材の表面を親水化処理する方法あるいは基材上に親水性物質を含む親水性層を設ける方法により得られる。
本発明に係るプロセスレス印刷版材料は、親水性表面を有する側に画像形成機能層を有し、他方の面に必要に応じ裏塗り層等を有する。
本発明に係る、プロセスレス印刷版材料の画像形成機能層を有する側の表面、の中心線表面粗さRaは、300nm〜1200nmであることが、好ましい。
中心線平均粗さRaとは、測定する試料を23℃相対湿度48%の条件下で24時間放置した後に、23℃相対湿度48%の条件下で測定した三次元粗さ測定での中心線平均粗さRaを言い、JIS表面粗さのJIS−B−0601により定義される。
三次元デジタル測定による中心線(中心面)平均粗さ(Ra)は、特定のサンプリング長で、X方向にM点、Y方向にN点、合計でMN点の高さ測定を行って、粗さ中心面の高さを0とした粗さ曲面を求め、X方向がk点目で、Y方向がj点目の測定点における高さZをf(Zjk)として、下式に従って求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
Figure 2007062309
三次元デジタル測定による中心線(中心面)平均粗さ(Ra)を測定することのできる測定装置としては、例えば、WYKO社製RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることができる。
Raを上記範囲にするには、下記に述べる、基材及び/または画像形成機能層側の構成層を、適宜調整することで達成できる。
特に、下記に述べる親水性層を多孔質構造とする為の素材の粒径、含有量、塗布液の固形分濃度、ウェット膜厚、乾燥条件また、オーバーコート層に用いられるマット剤の粒径、含有量、塗布液の固形分濃度、ウェット膜厚、乾燥条件等を適宜調整することによりRaを上記範囲とすることができる。
[基材]
本発明に係る基材としては、従来の印刷版材料に用いられる公知の基材使用することができる。
基材としては、例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合支持体等が挙げられる。
基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、通常50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
金属板の金属としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムまたはアルミニウム合金(以下アルミニウムとする)が好ましい。
アルミニウム基材は、親水性表面を形成するために粗面化処理、陽極酸化処理などを施されて使用されるのが好ましい。
アルミニウム基材は、粗面化処理に先立ってアルミニウム表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。また、脱脂処理には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理にアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。
基材の粗面化処理としては化学的粗面化処理や機械的粗面化あるいは、これらを適宜組み合わせた粗面化処理により行うことができる。
粗面化処理の次に、陽極酸化処理を行うことが好ましい。
陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
陽極酸化処理された基材は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
また、陽極酸化処理された基材は適宜、上記封孔処理以外の表面処理を行うこともできる。表面処理としては、ケイ酸塩処理、リン酸塩処理、各種有機酸処理、PVPA処理、ベーマイト化処理といった公知の処理が挙げられる。また、特開平8−314157号に記載の炭酸水素塩を含有する水溶液による処理や、炭酸水素塩を含有する水溶液による処理に続けてクエン酸のような有機酸処理を行ってもよい。
また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行う方法が挙げられる。
基材として用いられるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等のフィルムを挙げることができる。
本発明では、これらのプラスチックフィルムのうち、特にポリエチレンテレフタレート(以降、略してPETという場合がある)、ポリエチレンナフタレート(以降、PENと略すことがある)などのポリエステルフィルムが基材として好ましく用いられる。
さらに特開平10−10676号に記載の方法で得られた120℃30秒での熱寸法変化率が0.001%以上0.04%以下の支持体を用いることが好ましい。
好ましいポリエステルフィルムとしては、未延伸ポリエステルフィルム、一軸延伸ポリエステルフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルムである。
このうちフィルムの押出し方向(縦方向)に一軸延伸した縦延伸ポリエステルフィルムが特に好ましい。
PETはテレフタル酸とエチレングリコール、またPENはナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを構成成分として重合されたものである。
PETまたはPENを構成するジカルボン酸またはジオールを他の適当な1種、または2種以上の第3成分を混合して重合したものでもよい。適当な第3成分としては、2価のエステル形成官能基を有する化合物で、例えば、ジカルボン酸の例として次のようなものを挙げることができる。
テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸等を挙げることができる。
また、グリコールの例としては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。
第3成分としては多官能性カルボン酸や多価アルコールも混合することができるが、これらは全ポリエステル構成成分に対して0.001〜5質量%程度混合することができる。
ポリエステルフィルムの固有粘度は0.5〜0.8であることが好ましい。また、固有粘度の異なるものを混合して使用してもよい。
ポリエステルフィルムの重合方法は特に限定があるわけではなく、従来公知のポリエステルの重合方法に従って製造できる。
例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させ、ジオールの片方の水酸基をジカルボン酸にジエステル化し、更に一方のジオールを減圧下加熱して余剰のジオールを留去することにより重合させる直接エステル化法、またジカルボン酸成分としてジアルキルエステル(例えば、ジメチルエステル)を用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させてアルキルアルコール(例えば、メタノール)を留出させてジオールの片方の水酸基をジカルボン酸にエステル化し、更に余剰のジオール成分を減圧下で加熱して留去することにより重合させるエステル交換法を用いることができる。
触媒としては、通常のポリエステルの合成に使用するエステル交換触媒、重合反応触媒及び耐熱安定剤を用いることができる。例えば、エステル交換触媒としては、Ca(OAc)2・H2O、Zn(OAc)2・2H2O、Mn(OAc)2・4H2O、Mg(OAc)2・4H2O等を挙げることができ、重合反応触媒としてはSb23、GeO2を挙げることができる。また、耐熱安定剤としてはリン酸、亜リン酸、PO(OH)(CH33、PO(OC653、P(OC653等を挙げることができる。また、合成時の各過程で着色防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料等を添加させてもよい。
印刷時の寸法を安定化させカラー印刷時の色ズレを防ぐために、延伸及び熱固定後のポリエステルフィルムについては熱処理をすることが好ましい。
熱処理は熱固定終了後冷却して巻き取った後に、別工程で巻きほぐしてから、以下のような手段で達成するのがよい。
熱処理する方法としては、テンターのようなフィルムの両端をピンやクリップで把持する搬送方法、複数のロール群によるロール搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送等により搬送させる方法(複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面あるいは両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーター等による輻射熱を利用する方法、加熱した複数のロールと接触させる方法等を単独または複数組み合わせて熱処理する方法、またフィルムを自重で垂れ下がらせ、下方で巻き等搬送方法等を単独あるいは複数組み合わせて用いることが好ましい。
熱処理の張力調整は、巻き取りロール及び/または送り出しロールのトルクを調整すること、及び/または工程内にダンサーロールを設置し、これに加える荷重を調整することで達成できる。
熱処理中及び/または熱処理後の冷却時に張力を変化させる場合、これらの工程前後及び/または工程内にダンサーロールを設置し、それらの荷重を調整することで所望の張力状態を設定してもよい。また、振動的に搬送張力を変化させるには、熱処理ロール間スパンを小さくすることにより有効に行うことができる。
熱処理は熱収縮の進行を妨げずに、その後の熱処理(熱現像)時の寸法変化を小さくする上で、できるだけ搬送張力を低くし、熱処理時間を長くすることが望ましい。
処理温度としてはポリエステルフィルムのTg+50℃〜Tg+150℃の温度範囲が好ましく、その温度範囲で、搬送張力としては5Pa〜1MPaが好ましく、より好ましくは5Pa〜500kPa、更に好ましくは5Pa〜200kPaであり、処理時間としては30秒〜30分が好ましくより好ましくは30秒〜15分である。上記の温度範囲、搬送張力範囲及び処理時間にすることにより、熱処理時に支持体の熱収縮の部分的な差により支持体の平面性が劣化することもなく、搬送ロールとの摩擦等により細かいキズ等の発生も押さえることができる。
熱処理は所望の寸法変化率を得るために少なくとも1回は行うことが好ましく、必要に応じて2回以上実施することも可能である。
熱処理したポリエステルフィルムをTg付近の温度から常温まで冷却してから巻き取り、この時の冷却による平面性の劣化を防ぐために、Tgを跨いで常温まで下げるまでに少なくとも−5℃/秒以上の速度で冷却するのが好ましい。
ポリエステルフィルム基材の場合、露光装置等における搬送を良好に行うためには、基材の含水率は0.5質量%以下であることが好ましい。基材の含水率とは下記式で表されるD′である。
D′(質量%)=(w′/W′)×100
式中、W′は25℃、60%相対湿度の雰囲気下で調湿平衡にある支持体の質量、w′は25℃、60%相対湿度の雰囲気下で調湿平衡にある支持体の水分含量を表す。
基材の含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.01〜0.5質量%であることが更に好ましく、特に好ましくは0.01〜0.3質量%である。
基材の含水率を0.5質量%以下に制御する手段としては、(1)親水性層及びその他の層の塗布液を塗布する直前に支持体を100℃以上で熱処理する、(2)親水性層及びその他の層の塗布液を塗布する工程の相対湿度を制御する、(3)親水性層及びその他の層の塗布液を塗布する前に支持体を100℃以上で熱処理し、防湿シートでカバーして保管し、開封後直ちに塗布する等が挙げられる。これらを2以上組み合わせて行ってもよい。
(微粒子)
ポリエステル基材中にはハンドリング性向上のため、0.01〜10μmの粒子を1〜1000ppm添加することが好ましい。
この粒子としては有機物及び無機物のいずれでもよい。
例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号明細書等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号明細書等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号明細書等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等を用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号明細書等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートのような有機微粒子を用いることができる。粒子の形状は定形、不定形どちらでもよい。
(基材への下引き層塗布)
ポリエステルフィルム基材においては、各種の機能を持たせるために易接着処理や下引き層塗布を行うことができる。
易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
下引き層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等をポリエステルフィルム支持体上に設けること等が好ましい。その中でも特開平7−191433号段落番号0044〜0116に記載の帯電防止下塗り層が好ましく用いられる。又特開平7−20596号公報段落番号0031〜0073に記載の導電性ポリマー含有層や特開平7−20596号公報段落番号0074〜0081に記載の金属酸化物含有層のような導電性層を設けることが好ましい。導電性層はポリエステルフィルム支持体上であればいずれの側に塗設されてもよいが、好ましくは支持体に対し画像形成機能層の反対側に塗設するのが好ましい。この導電性層を設けると帯電性が改良されてゴミなどの付着が減少し、印刷時の白抜け故障などが大幅に減少する。
(親水性層)
本発明においては、基材として上記のようなプラスチックフィルムを用いる場合には、基材上に親水性層を設けて親水性表面を有する基材とすることが好ましい。
この場合、親水性層は、多孔質構造を有することが好ましい。
多孔質構造を有する親水性層を形成するためには、下記に記載の親水性マトリクスを形成する素材が好ましく用いられる。
親水性マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。
(金属酸化物)
金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良く、平均粒径としては、3〜100nmの範囲が好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
(コロイダルシリカ)
中でも、コロイダルシリカが特に好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、更に、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
ネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称であり、一次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。
パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。
ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業社製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられ、製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらに各々対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、又、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
又、コロイダルシリカは、粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明では平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、更に好ましくは、3〜15nmのものである。
前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが、地汚れ発生を抑制する効果が高く特に好ましい。平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは、前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、形成する層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95の範囲が好ましく、更に好ましくは、70/30〜20/80の範囲がより好ましく、60/40〜30/70の範囲が更に好ましい。
本発明において、親水性層マトリクス構造の多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。
(多孔質金属酸化物粒子)
多孔質金属酸化物粒子としては、以下に記載の多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子又は、ゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
(多孔質シリカ多孔質シリカ、多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は、一般に湿式法又は、乾式法により製造される。湿式法では、ケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、もしくは中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では、四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により、多孔性や粒径を制御することが可能である。多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば、特開平10−71764号公報に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。又、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/gであることが更に好ましい。細孔容積は、塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。逆に、細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
(細孔容積の測定方法)
ここで、上記の細孔容積の測定は、オートソーブ−1(カンタクローム社製)を使用し、定容法を用いた窒素吸着測定により、粉体の空隙が窒素により、充填されていると仮定して相対圧力が0.998における窒素吸着量から算出されるものである。
(ゼオライト粒子)
ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3nm〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。
又、親水層を構成する親水性層マトリクス構造は、層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。特に、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。又、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性のものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
又、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダーとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。又、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。又、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを調製した後、塗布液に添加することが好ましい。
親水層を構成する親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
又、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば、「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
又、本発明では、水溶性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明に用いられる水溶性樹脂としては、多糖類を用いることが好ましい。
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜20μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。このような凹凸構造は、親水性層マトリクスに適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷適性を有する構造を得ることができ、好ましい。
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)は、アルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウェット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
本発明において、親水性マトリクス構造部に添加される水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが好ましい。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。又、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は、微粒子状の形態で添加しても良く、例えば、特開平6−161101号公報に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
又、親水性層を塗設する為に用いられる塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができ、Si系又は、F系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は、親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
又、親水性層には、リン酸塩を含むことができる。本発明では、親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
(画像形成機能層)
本発明に係る画像形成機能層は、印刷機上現像可能な層であり、例えば、サーマルレーザー記録またはサーマルヘッド記録される特表平8−507727号公報や特開平6−186750号公報に記載のようなアブレーションタイプと、特開平9−123387号公報に記載のような熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの印刷版材料に用いられる画像形成層が挙げられる。
印刷機寿現像可能な層とは、画像露光後、特に特別な薬剤を必要とせず、印刷機上で湿し水、あるいは湿し水と印刷インクを画像露光された印刷版材料上に供給することで、印
画像形成機能層としては、熱溶融性粒子または熱融着性粒子を含有する画像形成機能層が好ましく、さらに水溶性バインダーを含有する画像形成機能層であることが好ましい。
(熱溶融性粒子)
画像形成機能層に用いることができる熱溶融性粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された粒子である。
物性としては、保存性、インク着肉性の面から軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。
使用できる素材としては、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックスが挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には軟化点を下げたり作業性を向上させたりするためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミドまたはこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
また、本発明においては、露光後に画像部と非画像部を区別しやすくする、つまり露光可視画性と印刷性能を両立させるために、熱溶融性粒子を2種以上含有することが好ましい。これらの2種以上の熱溶融性粒子は構造が異なる、および/または平均粒径が異なる。
これらの熱溶融性粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は機上現像性の面から0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。
熱溶融性粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合が解像度の面で好ましい。
2種以上の熱溶融性微粒子を含む場合の平均粒径は互いに0.1μm以上離れていることが好ましい。
これらの熱溶融性粒子を水に分散するには、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または高分子界面活性剤を用いることが好ましい。これらの化合物を用いることで熱溶融性微粒子の水分散物を安定化でき、かつ故障がない均一な塗布物を得ることができる。
非イオン性界面活性剤の好ましい例としては次のものが挙げられる。アルキルポリオキシエチレンエーテル、アルキルポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレンひまし油、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物、アルキルポリオキシエチレンアミン及びアミド等のポリオキシエチレン付加物;脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリグリセリンエステル、脂肪酸ショ糖エステル等の多価アルコール及びアルキロールアミド;ポリエーテル変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシポリエーテル変性、アルコール変性、フッ素変性、アミノ変性、メルカプト変性、エポキシ変性、アリル変性といったシリコン系界面活性剤;ペルフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物といったフッ素系の界面活性剤;その他脂質系、バイオサーファクタント、オリゴソープが挙げられ、これらの少なくとも一種が使用できる。
カチオン性界面活性剤の好ましい例としては、第一級アミン塩、アシルアミノエチルアミン塩、N−アルキルポリアルキレンポリアミン塩、脂肪酸ポリエチリンポリアミド類、アミド類、およびその塩類、アミン塩などのアルキルアミン、アシルアミンの塩類;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アシルアミノエチルメチルジエチルアンモニウム塩、アシルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩、アシルアミノプロヒルジエチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、アシルアミノエチルピリジニウム塩、ジアシルアミノエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩若しくはアミド結合を有するアンモニウム塩;ジアシロキシエチルメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩、アルキルオキシメチルピリジニウム塩等のエステル、エーテル結合を有するアンモニウム塩;アルキルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−アルキルイミダゾリン、1−アシルアミノエチル−2−アルキルイミダゾリウム塩等のイミダゾリン、イミダゾリウム塩;アルキルポリオキシエチレンアミン、N−アルキルアミノプロピルアミン、N−アシルポリエチレンポリアミン、アシルポリエチレンポリアミン、脂肪酸トリエタノールアミンエステル等のアミン誘導体;その他脂肪系、バイオサーファクタント、オリゴソープが挙げられ、これらの少なくとも一種が使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、ロジン基、ナフテン基、エーテルカルボン酸塩、アルケニルコハク酸塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、硫酸第一アルキル塩、硫酸第二アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、硫酸アルキルフェニルポリオキシエチレン塩、硫酸モノアシルグリセリン塩、アシルアミノ硫酸エステル塩、硫酸油、硫酸化脂肪酸アルキルエステル等のカルボン酸の塩類;α−オレフィンスルホン酸塩、第二アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸、アシルイセチオン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン酸、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩等のスルホン酸の塩類;リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩等のリン酸エステルの塩類;スルホン酸変性、カルボキシル変性のシリコン系アニオン性界面活落剤;ペルフルオロアルキルカルボン領塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルリン酸エステル、ペルフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のフッ素系界面活性剤;その他脂質系、バイオサーファクタント、オリゴソープが挙げられ、これらの少なくとも一種が使用できる。
高分子界面活性剤の好ましい例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ブチル(メタ)アクリレート−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体などポリアルキル(メタ)アクリル酸の単独重合体又は共重合体;酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−マレイン酸共重合体等のマレイン酸共重合体;メチル(メタ)アクリレート−フマール酸共重合体、酢酸ビニル−フマール酸共重合体等のフマール酸共重合体;ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、ブチルナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ホルマリン縮合物等の芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物;ポリN−メチルビニルピリジニウムクロライド等のポリアルキルピリジニウム塩(ビニルピリジンとこれと共重合するビニルモノマーとの共重合体からの誘導体も含む);ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール;ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックポリマー;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリオキシアルキレン・ポリシロキサンコポリマー;アラビヤゴム、アラビノガラクタンなどの多糖類誘導体などが挙げられ、これらの少なくとも一種が使用できる。上記高分子界面活性剤の具体例に於いて、カルボキシル基、スルホン基を有する高分子界面活性剤が、ナトリウム、カリウム、アンモニウムなどのアルカリ塩類であっても構わない。
また、熱溶融性粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
構成層中での熱溶融性粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
(熱融着性粒子)
熱融着性粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。
熱可塑性疎水性高分子重合体粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
熱可塑性疎水性高分子重合体粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法または気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水または水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。
また、熱溶融性粒子、熱融着性粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させてもよい。
また、熱融着性粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は機上現像性、解像度の面から0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
また、熱融着性粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
構成層中の熱融着性粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%が更に好ましい。
(水溶性バインダー)
画像形成機能層に用いることができる水溶性バインダーとしては、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸あるいはその塩、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられる。その中でも印刷性能を劣化させないポリアクリル酸あるいはその塩又は多糖類を用いることが好ましい。
本発明に係る画像形成機能層には、塗布品質を向上させるために、メタノール、エタノール、イソプロプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類を含有させることが好ましい。また後述する光熱変換素材を含有させることできる。
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.1〜1.5g/m2、より好ましくは0.15〜1.0g/m2である。
ここから
(光熱変換素材)
本発明に係る印刷版材料は、基材の画像形成機能層を有する側に、光熱変換素材を含有する層を有することが好ましい態様である。
光熱変換素材を有する層は、画像形成機能層、またはその隣接層であることが好ましく、特に画像形成機能層に隣接する親水性層、親水性オーバーコート層であることが好ましい。
光熱変換素材としては赤外吸収色素または顔料を用いることができる。
(赤外吸収色素)
赤外吸収色素としては、一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。
具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号、同3−103476号、同7−43851号、同7−102179号、特開2001−117201の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。
カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でもよい。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。可視光域で黒色を呈している素材しては、黒色酸化鉄(Fe34)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは特開平8−27393号、同9−25126号、同9−237570号、同9−241529号、同10−231441号の各公報等に開示されている方法により製造することができる。本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり光熱変換効率が良好である。これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。但し、添加量に対する光熱変換能は粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると、分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。分散剤の種類は特に限定しないが、Si元素を含むSi系界面活性剤を用いることが好ましい。
素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材としては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn23(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al23・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
特に好ましい光熱変換素材の態様としては、前記の赤外吸収色素及び金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物であることである。
これらの光熱変換素材の添加量としては、これを含む層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
(親水性オーバーコート層)
本発明に係る印刷版材料は、取り扱い時の傷つき防止のために、画像形成機能層の上層として親水性オーバーコート層を有することが好ましい。
親水性オーバーコート層は画像形成機能層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成機能層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
親水性オーバーコート層は、水溶性樹脂または水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。かかる水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明では多糖類を用いることが好ましい。多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルラン等が使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
本発明においては、親水性オーバーコート層は前述の光熱変換素材を含有することができる。
またレーザー記録装置あるいは印刷機に本発明の印刷版を装着するときの傷つき防止のために、本発明においてオーバーコート層に平均粒径1μm以上、20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
好ましく用いられるマット剤としては、新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤が挙げられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば、金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。
有機マット剤としては、例えば、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートが挙げられる。
これらマット剤の添加量は1m2当たり0.1g以上、10g未満であることが好ましい。
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。このような非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
オーバーコート層の乾燥塗布量は0.05〜1.5g/m2が好ましく、更に好ましい範囲は0.1〜0.7g/m2である。この範囲内で印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止及びアブレーションカスの発生低減ができる。
(可視画性の付与)
通常、印刷業界においては、印刷する前に印刷版材料に画像形成した印刷版を正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。
検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性がよいことが好ましい。
本発明に係る印刷版材料は、露光することによる光または熱によって露光部分、または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
可視画性を付与する方法としては、露光することにより光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含有する方法、光酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法、露光前は失透して白濁している前記熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子が露光することにより透明化する作用を用いる方法等がある。
(裏塗り層)
本発明においては、基材を挟んで、画像形成機能層を有する面とは反対側の面に、少なくとも1層の裏塗り層を有することが好ましい。
裏塗り層は、反射防止機能を有する層であっても、導電性化合物を含む導電性層であってもよく、また導電性層の上に、更に1層以上の他の機能層を設けても良い。
本発明における好ましい態様としては、導電性層及び1層以上の保護層を有することである。
裏塗り層には、親水性結合剤あるいは疎水性結合剤が用いられる。
親水性結合剤としては、親水性のものなら特に限定はされないが、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂(メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、キチン類、及びデンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリビニルエーテル(PVE);アミド基又はアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)及びポリビニルピロリドン(PVP)等を挙げることができる。又、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩及びゼラチン類;スルホン基を有するポリスチレンスルホン酸塩;アミノ基、イミノ基、第3アミン及び第4級アンモニウム塩を有するポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、エポキシ化ポリアミド(EPAm)、ポリビニルピリジン及びゼラチン類を挙げることができる。
疎水性結合剤は、結合剤として疎水性のものなら特に限定されないが、例えばα,β−エチレン性不飽和化合物に由来するポリマー、例えばポリ塩化ビニル、後−塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、ポリ酢酸ビニル及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、出発材料としてポリビニルアルコールから作られ、繰り返しビニルアルコール単位の一部のみがアルデヒドと反応していることができるポリビニルアセタール、好ましくはポリビニルブチラール、アクリロニトリルとアクリルアミドのコポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン及びポリエチレン又はそれらの混合物等が挙げられる。
又疎水性結合剤は仕上がり印刷版材料表面が疎水性であれば、特開2002−258469号公報の段落0033〜0038に記載されている水分散系樹脂(ポリマーラテックス)から得られたものでもよい。
また印刷機の版胴への取り付けやすさ、および、印刷中における印刷版の位置ずれによるカラー印刷での色ずれを防止するために、裏塗り層の構成層のうちの最表面層に平均粒径1μm以上20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
好ましく用いられるマット剤としては新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤があげられる。
新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。
有機マット剤としては、例えばUSP2,322,037号明細書等に記載の澱粉、BEP625,451号やGBP981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、CHP330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、USP3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、USP3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートがあげられる。
これらマット剤の添加量は1m2あたり0.1g以上10g未満であることが好ましい。
裏塗り層の表面粗さは、マット剤の粒径、添加量および結合剤の量により、調整することができるが、Ra値で、0.1μm以上2μm未満であることが印刷適性の面から好ましい。
さらに、レーザー記録装置あるいはプロセスレス印刷機には、装置内部において印刷版の搬送を制御するためのセンサーを有しており、これらの制御を滞りなく行うために、本発明において、該構成層には、色素および顔料を含有させることが好ましい。色素及び顔料としては、前述の光熱変換素材に用いられる赤外吸収色素及び顔料が好ましく用いられる。また、更に、該構成層には公知の界面活性剤を含有させることができる。
(包装材料)
基材が、プラスチック基材である印刷版材料の場合は、所望のサイズに断裁した後に、後述する露光を行うまでの保管するためにロール状に巻かれて包装される。
この場合、直径が4〜10cmのコア部材にロール状に巻回されていることが好ましい。
長期の保管に耐えるためには、包装材料として、特開2000−206653号公報に記載の酸素透過度5×10-6ml/Pa・m2・30℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。
また、もう一つの好ましい形態として、特開2000−206653号公報に記載の水分透過度10-6g/Pa・m2・25℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。
(画像露光)
本発明に係る画像露光は、印刷版材料を画像形成機能層を有する面から画像データに応じてレーザー光を照射することにより行われる。
本発明においては、より具体的には赤外及び/または近赤外領域で発光する、即ち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。
レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用して、走査露光を行うことが特に好ましい。
本発明に用いることができる走査露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
一般的には、(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に1本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から1本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から1本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
本発明に係るプロセスレス印刷版材料を用いた印刷方法においては特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
このようにして画像形成がなされた印刷版材料は、現像処理を行うことなく印刷を行うことができる。
画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら湿し水供給ローラー及び/またはインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成機能層の非画像部を除去することが可能である。
本発明の印刷方法において、印刷版材料の画像形成機能層の非画像部の除去工程としては、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるものであり、いわゆる機上現像処理によりなされる工程である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、実施例中「部」は特に断りのないかぎり「質量部」を表す。
実施例1
《ポリエチレンテレフタレート支持体の作製》
(支持体1の作製)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し熱固定後の平均膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、延伸温度は前段延伸が102℃で1.3倍に、後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。
次いで、テンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後47.1N/mで巻き取った。
このようにして厚さ190μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのガラス転移温度(Tg)は79℃であった。得られたポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。得られた支持体1の厚み分布は3%であった。
《下引き済み支持体の作製》
上記で得られた支持体1のフィルムの一方の面に0.05kV・A・min/m2の条件でコロナ放電処理を施し、該一方の面に表5に示す組合せで、下記《下引き塗布液c−1》を乾燥膜厚0.06μmになるように塗設し、140℃で乾燥し、続いて下記《下引き塗布液d−1》を乾燥膜厚0.2μmになるように塗設した後140℃で乾燥した(下引き面B)。
《下引き塗布液c−1;導電性化合物を含有》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート(20/40/40)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 16.0g
スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシメチルメタクリレート(25/45/30)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 4.0g
SnO2ゾル(固形分10%) 9.1g
(特開平10−059720号実施例1記載の方法で合成)
アニオン系界面活性剤S−1 0.5g
以上に蒸留水をくわえて1000mlとし塗布液とした。
《下引き塗布液d−1》
変性ポリエステルA(下記参照、固形分18%) 215.0g
アニオン系界面活性剤S−1 0.4g
真球状シリカ シーホスター KE−P50(日本触媒(株)製) 0.3g
以上に蒸留水をくわえて1000mlとし、固形分濃度0.5%の塗布液とした。
《変性水性ポリエステルA》
水溶性コポリエステル成分/アクリル成分(80/20)の水分散物
水溶性コポリエステル成分は、テレフタル酸/イソフタル酸/シクロヘキサンジカルボン酸/5−スルホ−イソフタル酸ジメチルナトリウム塩(40/38/14/8)とエチレングリコールの混合成分
アクリル成分は、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(53/37/10)の共重合ポリマーラテックス
続いて、反対側の面に0.05kV・A・min/m2の条件でコロナ放電処理を施し、下記《下引き塗布液a》を乾燥膜厚0.25μmになるように塗設し、続いて下記《下引き塗布液b液》を乾燥膜厚0.06μmになるように塗設した後140℃で乾燥した(下引き面A)。これらを125℃で2分間熱処理し、下引き済み支持体試料を作製した。
《下引き塗布液a》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート(20/40/40)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 56.3g
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート(59.7/39.8/0.5)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 210g
アニオン系界面活性剤S−1(2%水溶液) 30g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし下引き塗布液aとした。
《下引き塗布液b》
変性ポリエステルB(下記参照、固形分21.7%) 31g
アニオン系界面活性剤S−1 5.7g
真球状シリカマット剤 シーホスター KE−P50(日本触媒(株)製)
1.9g
エチレン共重合ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製RS2117)(固形分5%)にF−1を250ppm添加した水溶液 57.7g
硬膜剤H−1(固形分0.5%水溶液) 50g
以上に蒸留水をくわえて1000mlとし下引き塗布液bとした。
Figure 2007062309
《変性水性ポリエステルB》
水溶性コポリエステル成分/アクリル成分(64/36)の水分散物
水溶性コポリエステル成分は、テレフタル酸/イソフタル酸/シクロヘキサンジカルボン酸/5−スルホ−イソフタル酸ジメチルナトリウム塩(40/38/14/8)とエチレングリコールの混合成分
アクリル成分は、スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレート(39.5/40/20/0.5)の共重合ポリマーラテックス
《下引き済み支持体の熱処理》
1.25m幅にスリットした後の下引き済み支持体に対し、張力2hPaで180℃、1分間の低張力熱処理を実施した。
《印刷版材料の作製》
親水性層を塗設する直前に、下引き済み支持体に対し、100℃で30秒間熱処理を加えて乾燥させ、防湿シートでカバーをして空気中の湿度が入らないようにした。支持体の一部をサンプリングして水分率測定をしたところ、0.2%であった。シートを除去後、すぐに親水性層の塗布を行った。
更に表1に示す親水性層1用塗布液(調製方法は下記に示す)及び表2に示す親水性層2用塗布液(調製方法は下記に示す)を用いて、下引き済み支持体の下引き面Aの上にワイヤーバーを用いて塗布した。それぞれ、下引き済み支持体上に親水性層1、親水性層2の順番でワイヤーバーを用いて、親水性層1が1.5g/m2、親水性層2が1.8g/m2になるように塗布し、120℃で3分間乾燥した後に60℃で48時間の加熱処理を施した。
その後、表3に示す画像形成機能層塗布液(調製方法は下記に示す)を、ワイヤーバーを用いて0.7g/m2になるよう塗布し、表4に示す裏塗り層用塗布液(調製方法は下記に示す)を用いて、下引き済み支体の下引き面Bの上にワイヤーバーを用いて2.0g/m2になるように塗布し、50℃で3分間乾燥した。
その後に各印刷版材料を50℃で48時間のシーズニング処理を施した。
〔親水性層1用塗布液の調製〕
表1に記載の各素材をホモジナイザーを用いて十分に攪拌混合した後、表1に記載の組成で混合、濾過し、純水で希釈、分散して親水性層1用塗布液を調製した。なお、各素材の詳細は表1に記載の通りである。
Figure 2007062309
〔親水性層2用塗布液の調製〕
表2に記載の各素材をホモジナイザーを用いて十分に攪拌混合した後、表2に記載の組成で混合、濾過し、純水で希釈、分散して親水性層2用塗布液を調製した。なお、各素材の詳細は表2に記載の通りである。
Figure 2007062309
〔画像形成機能層塗布液の調製〕
表3に画像形成機能層塗布液の素材の詳細を示す。純水で希釈、分散して画像形成機能層塗布液を調製した。
Figure 2007062309
Figure 2007062309
〔裏塗り最外層用塗布液の調製〕
表4に記載の各素材を、ホモジナイザーを用いて十分に攪拌混合した後、表4に記載の組成で混合、濾過し、純水で希釈、分散して裏塗り最外層用塗布液を調製した。なお、各素材の詳細は表4に記載の通りである。
Figure 2007062309
《印刷版試料の作製》
上記で作製した印刷版材料を、73cm幅で32mの長さに切断して直径7.5cmのボール紙でできたコアに巻き付けロール形状の印刷版試料を作製した。更に、印刷版試料をAl23PET(12μm)/Ny(15μm)/CPP(70μm)の材料でできた150cm×2mの包装材料で巻いた。作製した包装された印刷版試料を、強制劣化条件として50℃、60%相対湿度で7日間加温した。包装材料の酸素透過度は1.7×10-5ml/Pa・m2・30℃・day、水分透過度は1.8×10-5g/Pa・m2・25℃・dayであった。
《印刷版試料の評価》
(a)赤外線レーザー方式による画像形成
上記で作製した印刷版試料を印刷用のパンチブロックを有する赤外線レーザー露光装置で画像露光を行った。露光には、波長808nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを100〜350mJ/cm2まで50mJ毎に段階的に変化させ、2,400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、画像形成した印刷版試料を作製した。
作製した印刷版試料には印刷用のピン穴が空けられていた。
《湿し水の調製》
下記表5の組成に従って、湿し水処方E−1〜E−7を調製した。その際にクエン酸及びクエン酸ナトリウムにより表5に示す使用液pHに調製して用いた。表内の%は断りのない限りは質量%で表す。残りは水であるが、使用する希釈水は表5に示す水道水および逆浸透膜処理をした純水を用いた。なおE−6では水道水と純水を混合し、表6に示すフッ素イオン濃度及びカルシウムイオン濃度に調整した。
Figure 2007062309
(c)印刷版としての諸特性の評価
長期間保管の代用評価として、表5に示す湿し水を容器に入れて55℃相対湿度50%で7日間のサーモ処理をした。
《汚れ回復性の評価》
上記サーモ処理をした湿し水と、インクとしてT&K TOKA社製スーパーTEK−PLUS紅Mを用いて、露光した印刷版試料を三菱重工業(株)製DAIYA1F−1印刷機にかけてコート紙に印刷した。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。印刷後に版面を観察したところ、本発明に係る印刷版試料は非画像部は除去されていた。
インキローラーのみをニップして、全面にインキを付着した状態で通常の印刷(インキローラーと水ローラーをニップ)を行った。その際、印刷物における非画線部の汚れがなくなった枚数を測定し、汚れ回復性の指標とした。枚数が少ない方が良い。
結果を表6に示す。
《耐刷性の評価》
再度、露光した印刷版試料を印刷機(小森コーポレーション製のLITHRONE26)にかけて、前記サーモ処理した湿し水、インクとしてT&K TOKA社製スーパーTEK−PLUS−SOYA藍Mを使用して、パウダーとしてニッカリコ−AS−160(平均粒径20〜30μm;ニッカ株式会社製)を噴霧しながら5万枚印刷した紙を使い、同条件で印刷物の裏面に印刷をした。3%網点画像の点が半分以上欠落する印刷枚数を耐刷枚数として求め耐刷性の指標とした。印刷枚数の多いほど優れている。
以上により得られた結果を表6に示す。
表6から本発明の湿し水は、汚れ回復性に優れ、耐刷性に優れることが分かる。
Figure 2007062309
実施例2
下記に示す砂目を有するアルミ支持体上を用い、作製したプロセスレス印刷版材料を、画像形成以外は実施例1と同様にして印刷評価を行った。結果を表9に示す。
(支持体の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。
次いで、このアルミニウム板を、1.5%塩酸水溶液中で60A/dm2の電解解条件で25℃30秒間電解粗面化を行った。その後50℃に保たれた1%水酸化ナトリウム水溶液中で50℃40秒間デスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、30%硫酸溶液中で、25℃、電流密度30A/dm2、電圧25Vの条件下に30秒間陽極酸化処理を行った。次いで0.1%酢酸アンモニウム水溶液にて85℃120秒間封孔処理を行った。
(ポリビニルホスホン酸処理)
上記支持体を、0.44%のポリビニルホスホン酸水溶液に、75℃、30秒間ディップ処理を行い、次いで蒸留水で水洗し、25℃の冷風で乾燥し、感光性平版印刷版用支持体を得た。
中心線平均粗さ(Ra)は非接触三次元微小表面形状測定システム(Veeco社製WYKO)で40倍にて測定したところ、0.7μmであった。
微細粗面の平均径が30〜150nmで構成される凹部の個数は、日立走査型電子顕微鏡S−5000Hにて、Pt−Pd;1nmコーティング、加速電圧5kV、傾斜角;0度、倍率100000倍にて表面を観察し求めたところ、250個/μm2であった。
《印刷版材料の作製》
前記作製した支持体上に、下記にて作製した画像形成層塗布液及びオーバーコート層塗布液を下記条件の乾燥付き量になるようにコーターで塗布して、下記条件で乾燥し、その後エイジング処理を行ない、印刷版材料を得た。
画像形成層塗布:乾燥付き量0.75g/m2、乾燥条件55℃/3分
オーバーコート層塗布:乾燥付き量0.30g/m2、乾燥条件55℃/3分
エイジング条件:40℃/24時間
(画像形成層塗布液の作製)
表2に画像形成層塗布液の素材の詳細を示す。純水で希釈、分散して画像形成層塗布液を調製した。
Figure 2007062309
(オーバーコート層塗布液の調製)
表8にオーバーコート層塗布液の素材の詳細を示す。純水で希釈、分散してオーバーコート層塗布液を調製した。
Figure 2007062309
Figure 2007062309
(赤外線レーザー露光による画像形成)
印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを150mJ/cm2として、2400dpi(dpiは2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成した。
露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像とを含むものである。
作製した印刷版試料には印刷用のピン穴を空けた。
以上により得られた結果を表9に示す。
表6から本発明の湿し水は、汚れ回復性に優れ、耐刷性に優れることが分かる。
Figure 2007062309

Claims (6)

  1. プロセスレス印刷版材料の印刷に用いられる湿し水であって、防黴剤を含有し、かつフッ素イオン濃度が0〜0.1ppmでありカルシウムイオン濃度が0.01〜40ppmであることを特徴とするプロセスレス印刷版材料用湿し水。
  2. プロセスレス印刷版材料を画像露光した後に印刷機に装着し、請求項1に記載のプロセスレス印刷版材料用湿し水及び印刷インキを画像露光済みのプロセスレス印刷版材料の表面に供給し機上現像処理を行い、印刷することを特徴とするプロセスレス印刷版材料の印刷方法。
  3. 前記プロセスレス印刷版材料が、親水性表面を有する基材上に画像形成機能層を有することを特徴とする請求項2に記載のプロセスレス印刷版材料の印刷方法。
  4. 前記親水性表面を有する基材が多孔質構造を有する親水性を有することを特徴とする請求項3に記載のプロセスレス印刷版材料の印刷方法。
  5. 前記プロセスレス印刷版材料が、前記基材の画像形成機能層を有する側に光熱変換素材を含有する層を有することを特徴とする請求項3または4に記載のプロセスレス印刷版材料の印刷方法。
  6. 請求項2〜5のいずれか1項に記載のプロセスレス印刷版材料の印刷方法に用いられることを特徴とするプロセスレス印刷版材料。
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