JP2007041347A - 光学多層膜フィルタ及び光学多層膜フィルタの製造方法 - Google Patents

光学多層膜フィルタ及び光学多層膜フィルタの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 誘電体多層膜の内部応力による基板の反りの発生を防ぐと共に、誘電体多層膜の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪を防止した高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタ及び光学多層膜フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】 光学多層膜フィルタは、ガラス基板2の一方の面の表面に、光重合性樹脂からなる樹脂層3が形成される。樹脂層3は、光エネルギーを照射して基板の表面の周縁部に沿って形成された光重合性樹脂の硬化した領域3bと、光重合性樹脂の液状の領域3cと、フェムト秒レーザパルスビームを照射して、光重合性樹脂の液状の領域3cの誘電体多層膜の最下層部分に接する部分が硬化した領域3dとからなり、樹脂層3上に屈折率が異なる少なくとも2種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜が形成される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、光学部品に用いられる反射防止膜やハーフミラー等の光学多層膜フィルタ、及び光学多層膜フィルタの製造方法に関する。
従来より、ガラス基板上に高屈折率材料層と、高屈折率材料層を交互に多数層形成して所定のフィルタ特性を有する光学多層膜フィルタが知られている。こうした光学多層膜フィルタは、ガラス基板とガラス基板上に形成された多層膜との熱膨張率の差等により発生する内部応力により、ガラス基板が歪んだり、ガラス基板上に形成された膜の剥がれ等が発生する。
また、光学多層膜フィルタは、通常、スパッタ法や真空蒸着法等により成膜されるが、形成される薄膜層の内部応力は、膜が縮まろうとする方向の引張応力と、膜が広がろうとする圧縮応力とがある。膜が形成されたガラス基板は、膜の内部応力が引張応力の場合には、膜が形成された面が凹形状となり、圧縮応力の場合には凸形状となる。
こうした課題に対応するために、基板と光学多層膜の間に、光学多層膜の内部応力を緩和する材料と膜厚を選択して形成されたバッファ層を介在させる光学多層膜フィルタ(例えば、特許文献1参照。)、あるいは、基板上に屈折率が異なる少なくとも2種類の膜が交互に積層され、隣接する膜の内部応力が互いに相殺する方向に生じる膜材料を用いて形成された光学薄膜が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平8−262224号公報 特開2003−277911号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるバッファ層は、多層膜の内部応力を緩和する効果を得るためには、相当数の膜厚を形成する必要があり、光路長が増大して、伝搬光の散乱が発生し易い。また、特許文献2に記載の光学薄膜は、圧縮応力を内部応力とする薄膜と、引張応力を内部応力とする薄膜を交互に積層された多層膜により、多層膜全体の内部応力が緩和され、基板の表面を歪ませることは少ないが、基板とこれに接する第1層の薄膜との間で膜剥がれが発生し易い懸念がある。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、誘電体多層膜の内部応力による基板の反りの発生を防ぐと共に、誘電体多層膜の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪の発生を防止した、高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタ及び光学多層膜フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の光学多層膜フィルタは、基板上に屈折率が異なる少なくとも2種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜を有する光学多層膜フィルタにおいて、前記基板と前記誘電体多層膜の間に、前記誘電体多層膜の内部応力を吸収する樹脂層が形成されたことを特徴とする。
これによれば、基板と誘電体多層膜の間(基板の表面)に形成された樹脂層により、樹脂層上に形成される誘電体多層膜の内部応力が、樹脂層に広がることにより、内部応力が樹脂層に吸収されて、基板の反りの発生を防ぐことができる。反りの発生を防ぐことで、誘電体多層膜の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪の発生を防止した高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタが得られる。
また、本発明の光学多層膜フィルタは、前記樹脂層は光重合性樹脂からなり、活性エネルギー線を照射して前記基板の表面の周縁部に沿って形成された前記光重合性樹脂の硬化した領域と、前記光重合性樹脂の液状の領域と、フェムト秒レーザパルスビームを照射して、前記誘電体多層膜の最下層部分に接する部分が硬化した領域と、を有することを特徴とする。
これによれば、基板と誘電体多層膜の間(基板の表面)に形成された樹脂層が光重合性樹脂からなり、活性エネルギー線を照射して基板の表面の周縁部に沿って形成された光重合性樹脂の硬化した領域と、光重合性樹脂の液状の領域と、フェムト秒レーザパルスビームを照射して、誘電体多層膜の最下層部分に接する部分が硬化した領域とを有することにより、樹脂層上に形成される誘電体多層膜による膜応力(内部応力)が、液状の領域(未硬化の領域)に広がることにより、膜応力が液状の領域に吸収されて、基板の反りの発生を防ぐことができる。
また、本発明の光学多層膜フィルタは、前記光重合性樹脂の液状の領域は、前記基板と、前記活性エネルギー線を照射して光重合性樹脂の硬化した領域と、前記誘電体多層膜の最下層部分に接する部分が硬化した領域と、で把持されていることを特徴とする。
これによれば、光重合性樹脂の液状の領域が、基板と、活性エネルギー線を照射して光重合性樹脂の硬化した領域と、誘電体多層膜の最下層部分に接する部分が硬化した領域とで把持されることにより、液状の領域が基板上に保持されて、樹脂層上に形成される誘電体多層膜による膜応力(内部応力)が、液状の領域(未硬化の領域)に広がることにより、膜応力が液状の領域に吸収されて、基板の反りの発生を防ぐことができる。
また、本発明の光学多層膜フィルタの製造方法は、基板上に屈折率が異なる少なくとも2種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜を有する光学多層膜フィルタの製造方法であって、前記基板の一方の面の表面に、光重合性樹脂からなる塗布層を形成する塗布工程と、前記基板の周縁部に沿った前記塗布層に活性エネルギー線を照射して硬化した領域と前記光重合性樹脂の液状の領域を形成する活性エネルギー線照射工程と、前記液状の領域にフェムト秒レーザパルスビームを照射して前記誘電体多層膜の最下層部分に接する部分を硬化するレーザー照射工程と、を含み樹脂層が形成され、前記樹脂層上に前記誘電体多層膜が形成されることを特徴とする。
この製造方法によれば、基板の一方の面の表面に形成された光重合性樹脂からなる塗布層に、基板の周縁部に沿った塗布層に活性エネルギー線を照射して硬化した領域と、光重合性樹脂の液状の領域が形成され、さらに液状の領域にフェムト秒レーザパルスビームを照射して誘電体多層膜の最下層部分に接する部分が硬化されて、樹脂層が形成されることにより、樹脂層の液状の領域が、基板の表面に保持されて、樹脂層上に形成される誘電体多層膜による内部応力が、液状の領域に広がることにより、内部応力が液状の領域に吸収されて、基板の反りの発生を防いだ光学多層膜フィルタが得られる。また、樹脂層の形成工程は、例えば、基板製作工程に付加する等により、長い成膜時間を要する誘電体多層膜の形成工程と分離することが可能であり、成膜不良等により製造コストが嵩むことなく、効率的な製造を行うことができる。
以下、本発明の光学多層膜フィルタの実施形態を説明する。
本実施形態の光学多層膜フィルタは、例えば、可視波長域の光を透過し、所定波長以下の紫外波長域と、所定波長以上の赤外波長域での光の吸収が少ない反射特性を有する、いわゆる、UV−IRカットフィルタ(Ultraviolet-Infrared cut filter)に適用した場合の一例である。
図1は、本発明の光学多層膜フィルタに形成される膜構成を説明するための断面模式図である。
図1において、光学多層膜フィルタ1は、光を透過する基板としてのガラス基板2と、ガラス基板2の一方の面上に、ガラス基板2の表面から順に、樹脂層3、高屈折率材料層Hと低屈折率材料層Lとが交互に積層された誘電体多層膜4が形成されている。
ガラス基板2は、白板ガラス(透過率、n=1.52)からなり、例えば平面が、略50mm程度の矩形形状で、略0.5mm程度の板厚である。
樹脂層3は、樹脂層3の上層に形成される誘電体多層膜4の内部応力により、ガラス基板2に反り等が発生するのを防ぐための緩衝層であり、光重合性樹脂からなる薄膜層である。光重合性樹脂は、例えば、硬化温度が180℃以上の透明な紫外線硬化樹脂が用いられる。紫外線硬化樹脂としては、ポリイミド樹脂、あるいはエポキシ樹脂を好ましく用いることができる。
このように構成された光学多層膜フィルタ1の製造方法を説明する。
光学多層膜フィルタ1は、誘電体多層膜4の形成の前に、予め、ガラス基板2の一方の面の表面に、樹脂層3が形成される。
図2は、樹脂層の形成工程の態様を示すガラス基板の模式断面図であり、(a)は塗布工程後のガラス基板を示し、(b)は紫外線照射工程におけるガラス基板を示し、(c)は紫外線照射工程後のガラス基板を示し、(d)はレーザー照射工程におけるガラス基板を示し、(e)は樹脂層の形成後のガラス基板を示す。図3はレーザー照射装置の概略構成図である。なお、図2に示す模式断面図は、説明の便宜のために、各構成要素の寸法や比率は実際のものとは異なる。
樹脂層3は、塗布工程と、活性エネルギー線照射工程としての紫外線照射工程と、レーザー照射工程を経て形成される。
先ず、図2(a)に示すように、塗布工程において、ガラス基板2の一方の面の表面に、光重合性樹脂としての紫外線硬化樹脂が塗布されて塗布層3aが形成される。紫外線硬化樹脂は、例えば、硬化温度が180℃以上の透明なエポキシ樹脂が用いられる。
紫外線硬化樹脂の塗布方法は、例えばスピンコート法により行われる。スピンコート法を用いることにより、塗布される塗布層3aの膜厚を容易に制御することができる。形成される塗布層3aの膜厚みは、0.01〜10μm程度の範囲に形成される。なお、紫外線硬化樹脂には、ガラス基板2と樹脂層3との接着性付与成分であるシランカップリング剤、重合開始剤などを適宜含むことができる。
そして、塗布層3aが形成されたガラス基板2は、紫外線照射工程に移行する。
紫外線照射工程では、光学多層膜フィルタとして用いる所定の光学有効領域外となるガラス基板2の表面の周縁部に沿った領域のみに、紫外線が照射される。
紫外線の照射は、図2(b)に示すように、所定の光学有効領域外となる領域に開口部5aが形成されたマスク5が、塗布層3aが形成されたガラス基板2上に配置される。そして、いずれも図示しない紫外線照射装置に配備された高圧水銀灯から生成された活性エネルギー線としての紫外線URが、マスク5の上面側からマスク5の開口部5a(塗布層3a)に向けて局所照射される。なお、所定の光学有効領域は、ガラス基板2の外形形状に係わらず、矩形形状、あるいは円形形状等、光学物品に応じた所望の形状に設定することができる。
紫外線硬化樹脂は、本来、短時間に硬化させると収縮による応力が残留し易く、ある程度の時間を要して硬化させるのが望ましいが、本実施形態における硬化時間は、硬化される塗布層部分に収縮の応力が残留するように、0.2〜0.5秒程度の短い時間に設定される。これにより、後に、樹脂層3上に形成される高屈折率材料層Hの膜の引張応力と釣り合いを保つ一要因として作用する。
塗布層3aに紫外線URが照射されると、図2(c)に示すように、紫外線URが照射されて硬化した領域3bと、紫外線硬化樹脂の塗布状態が維持された液状の領域(未硬化の領域)3cが形成される。この紫外線硬化樹脂が硬化した領域3bは、液状の領域3cの紫外線硬化樹脂がガラス基板2の外周方向に流れ出すのを防止する側壁としての機能を有する。そして、塗布層3aに紫外線URが照射されたガラス基板2は、レーザー照射工程に移行する。
レーザー照射工程では、塗布層3aの液状の領域3cにレーザー照射装置からフェムト秒レーザパルスビーム(以後、ビームと表す場合がある。)LBが照射される。
レーザー照射工程の説明に先立ち、図3に基づいてレーザー照射装置10について説明する。
レーザー照射装置10は、フェムト秒レーザーパルスビームLBを出射するフェムト秒レーザー発振器11と、フェムト秒レーザー発振器11から出射されたビームLBのビーム径を調節するビームエキスパンダ12、ビームLBのビーム強度を調節する強度調節器13、ビームLBの進行方向を調節するミラー14、集光レンズ15、移動ステージ16、移動ステージ16の移動を制御するステージコントローラ17、ステージコントローラ17を制御するコンピュータ18を備えている。
集光レンズ15は、フェムト秒レーザー発振器11から出射されたビームLBを、塗布層3aの液状の領域3c(図2参照)の表面に集光する。
移動ステージ16は、ステージコントローラ17に制御され、移動ステージ16の直交座標系のX軸方向、Y軸方向ならびにZ軸方向に任意に移動可能なように構成され、集光レンズ15により集光するビームLBの集光位置を、ガラス基板2の面に沿った方向に相対移動する。この移動ステージ16上に、紫外線URが照射されたガラス基板2が載置される。
なお、本実施形態においては、ビームLBの照射方向(ミラー14)は、予め位置決め固定されている。したがって、移動ステージ16上に載置されたガラス基板2は、移動ステージ16がX軸方向、Y軸方向ならびにZ軸方向に任意に移動することにより、塗布層3aの液状の領域3cの表面に集光されるビームLBの集光位置を任意に走査することができる。
このように構成されたレーザー照射装置10を用いて、図2(d)に示すように、塗布層3aの液状の領域3cの表面部、すなわち、後述する誘電体多層膜4の最下層部分(高屈折率材料のTiO2膜H1)に接する部分にフェムト秒レーザパルスビームLBの照射が行われる。
フェムト秒レーザー発振器11から出射されるフェムト秒レーザパルスビームLBは、例えば、波長800nm、パルス幅100fs(フェムト秒)、繰り返し周波数220KHz、平均出力200mWに設定される。
フェムト秒レーザー発振器11から出射されたビームLBは、ビームエキスパンダ12、強度調節器13、ミラー14を介して集光レンズ15に入射する。そして、集光レンズ15に入射したビームLBは、集光レンズ15により、移動ステージ16上に載置されたガラス基板2上に形成された塗布層3aの液状の領域3cの表面部に集光される。ビームLBの集光スポット径は、液状の領域3cの表面において25μm程度に調節されている。
そして、ステージコントローラ17に制御されて移動ステージ16が、X軸方向、およびY軸方向に移動することにより、集光レンズ15により集光するビームLBの集光スポットの位置が、ガラス基板2の面に沿った方向に相対移動する走査が行われる。集光スポットの走査は、液状の領域3cの表面を、1mm/秒程度の一定速度で行われる。
集光スポットが、液状の領域3cの表面全体に、所定間隔で走査されると、液状の領域3cの表面部のみが硬化され、図2(e)に示すように、液状の領域3cが、ガラス基板2の表面と、紫外線照射工程において紫外線硬化樹脂が硬化した領域3bと、フェムト秒レーザパルスビームLBの照射により硬化した領域3dとで、取り囲むようにして把持され、樹脂層3が形成される。
フェムト秒レーザパルスビームLBの照射は、光重合性樹脂(紫外線硬化樹脂)に、800nm〜1200nm程度の近赤外光が照射されることにより、その集光点のフォトン密度の高い微小空間のみ多光過程が生じ、光重合作用により液状の領域3cの表面部のみが硬化して、硬化した領域3dを形成することができる。
なお、フェムト秒レーザパルスビームLBを用いることにより、通常レーザを用いた場合に生じる不必要な熱反応が起こらないために、樹脂自体に内部応力が生じることがない。また、集光スポットの走査速度をより遅くすることにより、硬化される紫外線硬化樹脂の屈折率を高くすると共に、表面部分が硬化した領域3dを、精度良く、より薄く形成することができる。
そして、樹脂層3が形成されたガラス基板2は、樹脂層3の表面に誘電体多層膜4が形成される。
誘電体多層膜4の形成は、樹脂層3が形成されたガラス基板2を成膜用のサセプタに取り付けて真空蒸着チャンバー内に投入し、真空蒸着法を用いてTiO2の高屈折率層HとSiO2の低屈折率層Lとを交互に多層で成膜して形成する(図1参照)。
図1において、誘電体多層膜4は、高屈折率材料層Hが、TiO2(屈折率:2.40)、低屈折率材料層LがSiO2(屈折率:1.46)の成膜材料で成膜される。
誘電体多層膜4は、第1層として、高屈折率材料のTiO2膜H1が積層され、積層された高屈折率材料のTiO2膜H1の上面に、低屈折率材料のSiO2膜L1が積層さる。以下、低屈折率材料のSiO2膜L1の上面に高屈折率材料のTiO2膜と低屈折率材料のSiO2膜が順次、交互に積層され、最上膜層は、低屈折率材料のSiO2膜L30が積層されて、高屈折率材料層と低屈折率材料層が各30層、計60層の誘電体の層が形成される。
この誘電体多層膜4の膜構成の詳細を説明する。
以下に説明する膜厚構成の表記は、高屈折率材料層Hの膜厚を光学膜厚nd=1/4λの値を1Hとして表記し、低屈折率材料層Lを同様に1Lと表記する。また、(xH、yL)Sで表すSの表記は、スタック数と呼ばれる繰り返しの回数で、括弧内の構成を周期的に繰り返すことを表している。なお、設計波長λは550nmである。
誘電体多層膜4の膜厚構成は、樹脂層3の上面に、第1層の高屈折率材料のTiO2膜(高屈折率材料層)H1が0.60H、第2層の低屈折率材料のSiO2膜(低屈折率材料層)L1が0.20L、以下、順次1.05H、0.37L、(0.68H、0.53L)4、0.69H、0.42L、0.59H、1.92L、(1.38H、1.38L)6、1.48H、1.52L、1.65H、1.71L、1.54H、1.59L、1.42H、1.58L、1.51H、1.72L、1.84H、1.80L、1.67H、1.77L、(1.87H、1.87L)7、1.89H、1.90L、1.90Hと、最上層に0.96Lの低屈折率材料のSiO2膜L30が形成され、計60層が形成される。
誘電体多層膜4が形成されて、光学多層膜フィルタ1が完成する。
そして、完成した光学多層膜フィルタ1が、真空蒸着チャンバー内から取り出されて、自然冷却される。
本来、高屈折率材料層Hと低屈折率材料層Lとが、交互に成膜されて多層が形成された光学多層膜フィルタ1(ガラス基板2)は、低屈折率材料のSiO2膜の強い圧縮応力と、高屈折率材料のTiO2膜の弱い引張応力により、成膜された多層面が凸になるように反りが発生する。しかし、光学多層膜フィルタ1は、自然冷却されることにより、ガラス基板2の表面に形成された樹脂層3の液状の領域(未硬化の紫外線硬化樹脂の領域)3cにより、おだやかに冷やされると共に、高屈折率層H1の膜応力(多層膜全体の内部応力)が、液状の領域3cに広がることにより、膜応力が液状の領域3cに吸収されて、光学多層膜フィルタ1(ガラス基板2)の反りの発生を防ぐことができる。
このように、光学多層膜フィルタ1の反りの発生を防ぐことにより、誘電体多層膜4の剥がれ、あるいはクラック等の発生を防ぐことができる。また、反りの発生を防ぐことにより、少なくても1枚の光学多層膜フィルタ1を含む2枚以上のガラス基板を張り合わせて使用する光学物品の場合等において、張り合わせ精度が向上し、高性能の光学特性を得ることができる。特に、ガラス基板の間に樹脂等の変形し易い基板等を挟んで使用する光学物品の場合に、反りの発生による変形をより抑えることが可能となる。
また、光学多層膜フィルタ1は、例えば、ガラス基板2が透明な水晶で構成されることにより、UV−IRカットフィルタ機能の光学多層膜フィルタを一体的に構成した光学ローパスフィルタを容易に得ることができる。
図4は、光学ローパスフィルタの構造及び光学軸と光線の進行方向について説明する模式図である。なお図4は、光学ローパスフィルタを構成する各層を分解して斜視図により示している。
光学ローパスフィルタ100は、複屈折性を有する2つの水晶板20,30と、水晶からなる1/4波長板40を備え、2つの水晶板20,30の間に、1/4波長板40を挿入した3層構造の45度分離タイプの一例である。これら3層構造を構成する水晶板20と、1/4波長板40と、水晶板30は、それぞれが光学接着剤等によって気泡が発生しないように一体に貼り合わされている。
水晶板20は、複屈折性を有する透明な水晶からなる光学多層膜フィルタであり、光入射側に配置される。水晶板20の光入射側の面には、前述のように、表面から順に樹脂層3、誘電体多層膜4が形成されている(図示せず、図1および図2参照。)。
また、水晶板20は、光入射面と直交し、かつ紙面と平行な面(x−z平面)において、z軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A1により示す方向)に光学軸(光学的主軸)を有している。この水晶板20に入射した光線L10は、水晶板20の有する複屈折性によって、互いに直交する2つの光線L11,L12に分離される。これらの光線L11,L12は、それぞれ偏光状態が直線偏光に変換されて1/4波長板40に出射する。
1/4波長板40は、光入射面(x−y平面)において、x軸と略45度の方位角をなす方向(矢印A2により示す方向)に光学軸を有している。これにより、1/4波長板40に入射した光線L11,L12は、それぞれ直線偏光光から円偏光光に偏光状態が変換されて、2つの光線L13,L14となって水晶板30に出射する。
光出射側に配置される水晶板30は、光入射面と直交し、かつ紙面と直交する面(y−z平面)において、y軸と略45度の方位角をなす方向(矢印A3により示す方向)に光学軸を有している。この水晶板30に入射した円偏光光線L13は、水晶板30の有する複屈折性によって、入射面に対して水平方向と垂直方向の互いに直交する2つの光線L15,L16に分離されて出射する。同様に、水晶板30に入射した光線L14は、入射面に対して水平方向と垂直方向の互いに直交する2つの光線L17,L18に分離されて出射する。これらの光線L15,L16,L17,L18は、それぞれ偏光状態が直線偏光に変換されて出射される。
このように構成された、光学ローパスフィルタ100は、UV−IRカットフィルタ機能を一体的に構成した光学ローパスフィルタを得ることができる。特に、構成するそれぞれの水晶板が貼り合わされて一体構造になっている構成において、反りの少ない、光学的歪を防止した光学ローパスフィルタ100を得ることができる。
このようにUV−IRカットフィルタ機能が一体的に構成された光学ローパスフィルタ100は、例えば、デジタルスチルカメラ等に用いることができる。また、光学ローパスフィルタ100を防塵ガラス機能として配置することも可能であり、貼り合せ制度が良い、良好な光学特性のデジタルスチルカメラ等が得られる。
光学ローパスフィルタ100は、デジタルスチルカメラ以外の電子機器装置として、例えば、カメラ付き携帯電話、カメラ付携帯パソコン(パーソナルコンピュータ)等の撮像部に用いることができる。
以上のように、本実施形態の光学多層膜フィルタ1によれば、ガラス基板2の表面に形成された樹脂層3の液状の領域(未硬化の紫外線硬化樹脂の領域)3cにより、樹脂層3上に形成される誘電体多層膜4による膜応力(内部応力)が、液状の領域3cに広がることにより、膜応力が液状の領域3cに吸収されて、光学多層膜フィルタ1(ガラス基板2)の反りの発生を防ぐことができる。反りの発生を防ぐことで、誘電体多層膜4の剥がれ、あるいはクラック等の発生を防ぐと共に、高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタが得られる。
また、本実施形態の光学多層膜フィルタの製造方法によれば、ガラス基板2の反りの発生を防いだ光学多層膜フィルタ1が得られると共に、樹脂層3の形成工程を、例えば、ガラス基板2の製作工程に付加する等により、長い成膜時間を要する誘電体多層膜の形成工程と分離することが可能であり、成膜不良等により製造コストが嵩むことなく、効率的な製造を行うことができる。
以上の実施形態において、光学多層膜フィルタ1は、UV−IRカットフィルタに適用した場合で説明したが、高反射膜、IRカットフィルタ(Infrared cut filter)、反射防止膜、ハーフミラー等の光学多層膜フィルタに適用することができる。
また、光学多層膜フィルタ1は、光を透過する基板としてのガラス基板2に、白板ガラスを用いた場合で説明したが、これに限定されず、水晶、BK7、サファイアガラス、ホウケイ酸ガラス、青板ガラス、SF3、SF7、あるいは、一般に市販されている光学ガラス等の透明基板を用いることができる。
また、高屈折率材料層Hの成膜材料としてTiO2を用いた場合で説明したが、Ta25、Nb25を適用することができる。一方、低屈折率材料層Lの成膜材料としてSiO2を用いた場合で説明したが、MgF2を用いることができる。
また、誘電体多層膜4の成膜は、真空蒸着法を用いた場合で説明したが、イオンアシスト蒸着法やイオンプレーティング法、スパッタリング法等を用いることができる。さらに、樹脂層3を形成する紫外線硬化樹脂の塗布は、スピンコート法を用いた場合で説明したが、ロールコート法を用いた場合であってもよい。
また、光学多層膜フィルタ1は、平面が略50mm程度の矩形形状のガラス基板2を用いて、ガラス基板2上に一つの光学多層膜フィルタ1を製造する場合で説明したが、より大きな平面サイズのガラス基板を用いて、多数の光学多層膜フィルタを一度に製造することができる。この場合には、樹脂層3及び誘電体多層膜4が形成され、冷却されたガラス基板を、レーザカッタ、あるいはダイシングカッタ等を用いて切断することにより、多数の光学多層膜フィルタを一度に完成することができる。
また、活性エネルギー線照射工程における活性エネルギー線として、紫外線照射装置の高圧水銀灯から生成された紫外線URを用いた場合で説明したが、紫外線の他に、X線、γ線、電子線等の活性エネルギー線を用いることができる。また、紫外線源としてケミカルランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。
本発明の光学多層膜フィルタの構成を説明するための断面模式図。 樹脂層の形成工程の態様を示すガラス基板の断面模式図であり、(a)は塗布工程後のガラス基板、(b)は紫外線照射工程におけるガラス基板、(c)は紫外線照射工程後のガラス基板、(d)はレーザー照射工程におけるガラス基板、(e)は樹脂層の形成後のガラス基板を示す。 レーザー照射装置の概略構成図。 本発明の光学多層膜フィルタを用いた光学ローパスフィルタの構造及び光学軸と光線の進行方向について説明する模式図。
符号の説明
1…光学多層膜フィルタ、2…基板としてのガラス基板、3…樹脂層、3a…塗布層、3b…紫外線を照射して硬化した領域、3c…液状の領域、3d…フェムト秒レーザパルスビームを照射して硬化した領域、4…誘電体多層膜、5…マスク、5a…開口部、10…レーザー照射装置、11…フェムト秒レーザー発振器、15…集光レンズ、16…移動ステージ、20,30…水晶板、40…1/4波長板、100…光学ローパスフィルタ、H…高屈折率材料層、L…低屈折率材料層、LB…フェムト秒レーザパルスビーム、UR…紫外線。

Claims (4)

  1. 基板上に屈折率が異なる少なくとも2種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜を有する光学多層膜フィルタにおいて、
    前記基板と前記誘電体多層膜の間に、前記誘電体多層膜の内部応力を吸収する樹脂層が形成されたことを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  2. 請求項1に記載の光学多層膜フィルタにおいて、
    前記樹脂層は光重合性樹脂からなり、
    活性エネルギー線を照射して前記基板の表面の周縁部に沿って形成された前記光重合性樹脂の硬化した領域と、
    前記光重合性樹脂の液状の領域と、
    フェムト秒レーザパルスビームを照射して、前記誘電体多層膜の最下層部分に接する部分が硬化した領域と、
    を有することを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  3. 請求項2に記載の光学多層膜フィルタにおいて、
    前記光重合性樹脂の液状の領域は、
    前記基板と、
    前記活性エネルギー線を照射して光重合性樹脂の硬化した領域と、
    前記誘電体多層膜の最下層部分に接する部分が硬化した領域と、
    で把持されていることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
  4. 基板上に屈折率が異なる少なくとも2種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜を有する光学多層膜フィルタの製造方法であって、
    前記基板の一方の面の表面に、
    光重合性樹脂からなる塗布層を形成する塗布工程と、
    前記基板の周縁部に沿った前記塗布層に活性エネルギー線を照射して硬化した領域と前記光重合性樹脂の液状の領域を形成する活性エネルギー線照射工程と、
    前記液状の領域にフェムト秒レーザパルスビームを照射して前記誘電体多層膜の最下層部分に接する部分を硬化するレーザー照射工程と、
    を含み樹脂層が形成され、
    前記樹脂層上に前記誘電体多層膜が形成されることを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
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