JP2007010883A - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、高いレターデーションを有し、面内及び厚み方向レターデーションが均一であり、液晶表示装置に組み込んだ場合に面内で実質的な表示むらが発生しない位相差フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 実質的に無配向の非晶性熱可塑性樹脂フィルムをテンターにより幅方向に一軸延伸し、熱処理及び冷却処理を経た後、フィルム端を把持するクリップより延伸フィルムを解放し、更にエアーフローティング式シート加熱処理装置により、下記式(1)及び(2)を満足する温度T(℃)及び搬送張力F(N/m/μm)で再度熱処理することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
Tg−20≦T≦Tg+20・・・(1)
0<F≦0.5・・・(2)
但し、Tgは非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度を示す。
【選択図】 なし

Description

本発明は、液晶表示装置に使用される、均一なレターデーションを有し、高い光学補償精度を有する、光学的に二軸性を示す位相差フィルムの製造方法に関する。
近年、ブラウン管方式のCRTに代わり、液晶表示装置が多く用いられるようになってきている。液晶表示装置は液晶分子の持つ電気光学特性を利用して表示を実現するものであるが、液晶には本来光学異方性があるため、複屈折性に起因する光学的な歪や、視覚方向による変調のため表示が着色するなどの視野角依存性が生じる。このような欠点を解消するために位相差板が光学補償フィルムとして広く採用されており、一般に波長550nmの光が入射する際のレターデーション(位相差)値が50〜800nmの範囲のものが使用されている。
液晶表示装置の表示品質は著しく向上しており、特に、液晶テレビやモニターといった大画面用途においては一般にVA液晶と呼ばれる、広視野角と高コントラストといった特徴を持つ垂直配向型液晶が主流となりつつある。
しかし、この液晶はその名の通り液晶が垂直に配向しているため、そこを通過した光を補償するには屈折率楕円体が縦に短いもの、一般的に負アンパンと呼ばれる二軸性を持つ必要がある。ここでの位相差フィルムとは、具体的にはNz係数が1.3以上のものを指す。
従来からこのような二軸性位相差フィルムの製造方法は種々提案されてきているが、縦一軸延伸のみや横一軸延伸のみによる方法では満足できる品位を有する位相差フィルムが得られないこと、更に製造効率を重視する観点から、熱可塑性樹脂フィルムを縦延伸した後に横延伸をする逐次二軸延伸法が主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
特に、上記横一軸延伸方法としては、熱可塑性樹脂フィルムの幅方向両端部を複数対のクリップで把持し、熱可塑性樹脂フィルムの両側に次第に拡幅するように設置された2本のレール上を前記クリップを走行させることにより、熱可塑性樹脂の分子主鎖を幅方向に配向させるテンター横一軸延伸方法が汎用されているが、この方法にはフィルムの全幅にわたって均一な延伸ができないという問題点が知られている。
即ち、フィルムを加熱延伸する際、フィルム幅方向に配置されたノズルから噴出される熱風は、幅方向に不均一な温度分布を取る。つまり、ノズル中央部は高いが端部になるほど低くなる。従って、加熱されたフィルムの材料温度は中央が高く端部は低くなるため、フィルム拡幅開始直後よりフィルム中央部分が優先的に延伸され、端部の延伸は遅延する。このため、拡幅終了時には幅方向の任意部分において、各々実質延伸倍率が異なる不均一延伸となる結果、幅方向において中央部と端部では異なるレターデーションが発現し、フィルム面内に不均一な光学特性を有することになり、十分な光学補償性能を発揮することができない。
熱風温度を幅方向に均一に制御する手法として、主に延伸炉内への熱風整流板の設置、熱源からの熱風流路の多様化、ノズル形状や取付け位置の工夫など、主に加熱設備面での対応が多くなされているが、高い温度分布精度を要求される位相差フィルムの延伸工程においては必ずしも十分とはいえない(例えば、特許文献2参照)。
このように、フィルムの幅方向において不安定かつ不均一な温度分布が不可避であるテンター横一軸延伸法において、均一なレターデーションを有し、高い光学補償精度を有する光学的に二軸性を示す延伸フィルムを得ることは困難であった。
特開2002−148438号公報(特に、従来技術の欄) 特開平5−96619号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、面内及び厚み方向レターデーションが均一であり、液晶表示装置に組み込んだ場合に面内で実質的な表示むらが発生しない位相差フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、非晶性熱可塑性樹脂フィルムをテンターにより幅方向に一軸延伸し、熱処理及び冷却処理を経た後、フィルム端を把持するクリップより延伸フィルムを解放し、更にエアーフローティング式シート加熱処理装置により、下記式(1)及び(2)を満足する温度T(℃)及び搬送張力F(N/m/μm)で再度熱処理することを特徴とする。
Tg−20≦T≦Tg+20・・・(1)
0<F≦0.5・・・(2)
但し、Tgは非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度を示す。
本発明で使用される非晶性熱可塑性樹脂とは、透明性、耐熱性及び液晶とのマッチング性に優れ、固有複屈折率が低く、光弾性係数が小さい等、光学部材として好適な特性を具備し、かつ実質的に結晶性を有さない樹脂であれば特に限定されない。例えば、主鎖あるいは側鎖に脂環式炭化水素構造を有する環状オレフィン系樹脂や、マレイミド構造を有するマレイミド系樹脂が特に好適に用いられる。
上記環状オレフィン系樹脂の一種であるノルボルネン系樹脂は、従来より光学用材料として検討されている樹脂であって、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの付加共重合体、ノルボルネン系モノマー同士の付加共重合体及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらノルボルネン系樹脂は単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、ノルボルネン系樹脂のうち、必然的に分子内に炭素−炭素不飽和二重結合が残留する開環(共)重合体或いは使用するモノマー種によっては分子内に炭素−炭素不飽和二重結合が残留する付加(共)重合体を採用する場合は、耐候性の観点から水素添加によって飽和されていることが望ましい。
上記ノルボルネン系樹脂を構成するノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を有するモノマーであれば、特に限定されず、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の2環体;ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン等の3環体;テトラシクロドデセン等の4環体;シクロペンタジエン3量体等の5環体、テトラシクロペンタジエン等の7環体;これらのメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル、ビニル等のアルケニル、エチリデン等のアルキリデン、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール等の置換体;更に、これらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等の炭素及び水素以外の元素を含有する基、所謂極性基を有する置換体等が挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーの中で、入手が容易であり、反応性に優れ、得られる位相差フィルムの耐熱性が優れたものとなるので、3環体以上の多環ノルボルネン系モノマーが好ましく、3環体、4環体及び5環体のノルボルネン系モノマーがより好ましい。なお、ノルボルネン系モノマーは単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記α−オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられ、共重合性の高い炭素数が2〜10のα−オレフィン系モノマーが好ましく、より好ましくはエチレンである。他のα−オレフィン系モノマーをノルボルネン系モノマーと共重合させる場合もエチレンが存在すると共重合性が高くなるので好ましい。
上記ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体は、公知の開環重合反応に従って得ることができ、例えば、ノルボルネン系モノマーをルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の金属のハロゲン化物、硝酸もしくはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系、又は、チタン、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物もしくはアセチルアセトン化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒系等を用いて、溶媒中又は無溶媒で、通常、−50〜100℃の重合温度、0〜5MPa/cm2 の重合圧力で反応させて得られる。
上記ノルボルネン系モノマー同士の付加重合体或いはノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの付加共重合体は公知の付加重合反応に従って得ることができ、例えば、これらのモノマーを溶媒中又は無溶媒で、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物、好ましくは、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物とからなる触媒系の存在下で、通常、−50〜100℃の重合温度、0〜5MPa/cm2 の重合圧力で反応させることで得られる。
上記ノルボルネン系樹脂の数平均分子量は、小さくなると得られた位相差フィルムの機械的強度が低下し、大きくなるとフィルムの成形性に支障を来すことがあるので、テトラヒドロフラン溶媒又はシクロヘキサン溶媒によるゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定して、5000〜50000が好ましく、より好ましくは8000〜30000である。
上記ノルボルネン系樹脂は、例えば、日本ゼオン社より商品名「ゼオノア」シリーズ、JSR社より商品名「アートン」シリーズ、三井化学社より商品名「アペル」シリーズ、チコナ(TICONA)社より商品名「トパス(TOPAS)」シリーズ等として上市されている。
上記マレイミド系樹脂も、従来より光学用途材料に検討されている樹脂であって、例えば、下記構成成分(A)と構成成分(B)からなるマレイミド−オレフィン共重合体が挙げられ、マレイミド類とオレフィン類とのラジカル共重合反応により得ることができる。
Figure 2007010883
Figure 2007010883
構成成分(A)を与える化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド等のマレイミド類が例示され、耐熱性、機械特性及び透明性の点から特にN−メチルマレイミドが好ましい。更に、これら化合物は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
構成成分(B)を与える化合物としては、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン等のオレフィン類が例示でき、このうち耐熱性、機械特性及び透明性の点から特にイソブテンが好ましい。また、これら化合物は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。構成成分(A)の含有量は共重合体全体の40〜60モル%が好ましく、45〜55モル%がより好ましい。
これらモノマーの重合には公知の重合方法、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、又は乳化重合法のいずれもが採用可能である。得られるフィルムの透明性、色調の点から特に沈殿重合法が好ましい。
上述のマレイミド−オレフィン共重合体は、無水マレイン酸とオレフィン類との共重合により得られる樹脂をアンモニア又はアルキルアミンを用いて、後アミド化することによっても得ることができる。
上記マレイミド系樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが、シート成形性や延伸性及び得られたフィルムの位相差フィルムとしての品位を勘案すると、より好ましくは1000〜500000程度である。
上記非晶性熱可塑性樹脂には、位相差フィルムの機能を低下させない範囲で、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系、アクリロニトリル系等の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系などの酸化防止剤;ラクトン系、フェノール系などの熱劣化防止剤;脂肪族アルコールのエステル系、多価アルコールの部分エステル系、部分エーテル系などの滑剤;アミン系などの帯電防止剤等が添加されてもよい。
上記非晶性熱可塑性樹脂フィルムの平均厚みは、薄いと位相差を発現しにくくなり、厚くなると液晶表示装置に使用する場合、液晶パネルの厚みが厚くなるので、一般に30〜200μmが好ましく、より好ましくは40〜150μmである。
上記非晶性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、例えば、非晶性熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融、混練し、押出機の先端に取り付けられた金型から薄膜状に押出して成膜する溶融押出法、非晶性熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液をドラム、無端ベルト等の上に流延した後、有機溶媒を蒸発させて成膜する溶液流延法等従来公知の任意の成形法が採用されればよい。
なお、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの厚みが80μm以上の場合には、溶液流延法では有機溶媒を充分に蒸発、除去することが困難になるので、溶融押出法で製造するのが好ましい。
本発明の位相差フィルムの製造方法においては、上記非晶性熱可塑性樹脂フィルムを、テンターにより幅方向に一軸延伸(以下、単に横一軸延伸という)する。この際、上記非晶性熱可塑性樹脂は実質的に無配向、即ちフィルム面内及びフィルム厚み方向のレターデーション値がゼロに近いものが好ましい。より具体的には、それぞれ20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
上記テンターによる横一軸延伸は、従来公知の任意の横一軸テンター延伸法が採用されればよく、例えば、非晶性熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の両端部をテンタークリップで把持し、テンタークリップの幅方向の間隔を次第に離間させることにより、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを幅方向に拡幅、延伸する方法が挙げられる。
そして、この横一軸テンター延伸法は、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを延伸可能なフィルム温度まで加熱する予熱工程、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを幅方向に拡幅、延伸する延伸工程、延伸された非晶性熱可塑性樹脂フィルムのボーイングを低減し、配向を揃える熱処理工程、非晶性熱可塑性樹脂の配向を固定する冷却工程からなる。
上記予熱工程においては、非晶性熱可塑性樹脂フィルムを延伸可能な温度付近まで加熱するのであり、延伸工程で設定された延伸温度付近まで加熱すればよい。なお、実質的に無配向の非晶性熱可塑性樹脂シートは、加熱により膨張変形しシート幅が広がることによって、該予熱工程通過中その自重により上下に弛緩し、熱風ノズルをはじめとする炉内部材へ接触する場合があるが、クリップレール幅をシート幅に対し予め広げることによって、かかる走行トラブルを回避することが可能となる。
上記延伸工程中の拡幅領域における非晶性熱可塑性樹脂フィルムの温度は、低いと、延伸時にフィルムが切断したり、テンタークリップが掴み外れたりすることがあり、逆に高くなり過ぎると、配向緩和が優先して所望のレターデーション値が得られないことがあるので、非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとすると、Tg〜Tg+20℃が好ましく、Tg+2〜Tg+10℃がより好ましい。なお、Tgは示差走査熱量計(TA Instruments社製、商品名「DSC2920 Modulated DSC」)を用い、以下の温度プログラム条件において、最終昇温時のガラス転移温度を本発明のガラス転移温度として測定した。
(温度プログラム条件)
室温から50℃までを10℃/分で昇温して5分間保持、50℃から200℃までを10℃/分で昇温して200℃で5分間保持、200℃から−50℃までを10℃/分で降温して−50℃で5分間保持、−50℃から200℃までを10℃/分で昇温して200分で5分間保持。
本発明において、拡幅開始から拡幅終了までの延伸時間は10〜100秒が好ましく、より好ましくは20〜60秒である。延伸時間をこの範囲に設定することにより、熱緩和によるレターデーションの著しい低下を伴うことなく、拡幅工程において生じるボーイングを修正することができる。これより長くなると熱緩和によるレターデーション低下が著しくなり、短くなると顕著なボーイング現象により、光軸をフィルム幅方向に対して平行となるように制御できず、更にはフィルムが切断したり、テンタークリップが外れたりするなど、延伸工程におけるフィルム走行安定性を損なうことになる。
本発明における延伸倍率は、得られる位相差フィルムの補償位相差量によって適宜決定されればよいが、延伸倍率が低いと配向方向が均一に揃わないことがあり、逆に高過ぎるとフィルムの中央部が弛み、レターデーション値が幅方向でばらついたり、主配向軸や厚みが不均一になったりするので、1.2〜2.5倍が好ましく、より好ましくは1.5〜2.0倍である。
上記延伸工程における延伸歪み速度は、小さくなると、熱緩和によりレターデーション値が低下したり、ボーイング現象の制御効果が低下するので、延伸歪み速度は300%/分以上が好ましく、あまり早くすると非晶性熱可塑性樹脂フィルムが切断したり、テンタークリップがはずれたりするので、より好ましくは400〜1000%/分である。また、高い歪み速度で延伸を実施することにより、レール開き角度を大きくし延伸ゾーンの炉長を短くすることが可能となる。
上記熱処理工程は、延伸された非晶性熱可塑性樹脂フィルムのボーイングを低減し、配向をフィルム幅方向に平行に揃えるための工程であり、この工程の温度が高過ぎると、レターデーション値が低下するので、この工程の温度はTg〜Tg+10℃であって、上記延伸温度より低い温度であることが好ましい。また該工程において、フィルムを幅方向に微弛緩ないしは微伸張変形させることによって、その処理効果を更に高めることも可能である。
上記冷却工程は、延伸された非晶性熱可塑性樹脂フィルムを急冷することにより、延伸フィルムに形成されたポリマー分子の配向を固定するための工程であり、この工程の温度はTg−5〜Tg−50℃が好ましく、更に好ましくはTg−40〜Tg−50℃である。
前記熱処理工程における横方向の弛緩処理により、幅方向の応力緩和を図ることはできるが、それと直交するフィルム長手方向については応力緩和はなされず、幅方向の面内レターデーションをより高度に均一化するためには、幅方向及び長手方向が拘束されることなく弛緩処理を実施することが必要である。そのために、幅方向及び長手方向の自由変形を拘束するクリップよりフィルムを解放した後にフィルム端の未延伸把持部を切除し、再度熱処理する再熱処理工程を設ける。
当該再熱処理工程の熱処理温度は下記式(1)を満たす範囲とする必要がある。
Tg−20≦T≦Tg+20・・・(1)
再熱処理温度が上記式範囲より低いと、位相差均一化の効果が十分得られず。また高いと、長手方向への伸張に伴い、横一軸延伸により得られた幅方向への分子配向が崩れたり、フィルム軟化に伴う搬送不良が発生する。当該処理温度はTg−10〜Tg+10℃が好ましく、Tg−10〜Tg+5℃がより好ましい。
更に、再熱処理時のフィルム走行方向の張力F(N/m/μm、厚み1μmフィルム幅1mにおける単位張力)を0<F≦0.5の範囲とすることが必要である。張力が0.5より高くなると、長手方向への伸張に伴い応力緩和が起こらず延伸され、横一軸延伸により得られた幅方向への分子配向が崩れたり、フィルム軟化に伴う搬送不良が発生する。
フィルム搬送をより安定させる為には、搬送張力Fは0.3≦F≦0.5とすることが好ましい。
再熱処理を行う方法としては、フィルムの走行路の上下に沿って千鳥状に配置されたノズルより走行フィルムに対して熱風を吹き付け、正弦波状態でフィルムを搬送するエアーフローティング方式が好ましい(例えば、特開平7−234070号公報参照)。当該熱処理設備はテンターから巻取設備の間に設置し、テンターでの延伸、熱処理、冷却工程を終了した後直ちに実施した後、巻取設備によって処理フィルムが巻取られる所謂インライン処理と、一連のテンター工程を終了した後巻取られたフィルムを、あらためて独立して設けられた熱処理設備で処理する所謂オフライン処理のいずれを選択することも可能である。
叙上のような構成とされた本発明の製造方法により製せられた位相差フィルムは、テンタークリップ把持部を除くフィルム幅方向の中央部80%における面内レターデーションR0のバラツキが容易に6nm以下に制御されたものとすることができる。
面内レターデーションR0のバラツキが上記範囲内に制御され、フィルムの位相差が均一な分布となされることによって、該位相差フィルムを液晶パネルに積層すると表示むらのない安定した画像表示を得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、テンタークリップ把持部を除くフィルム幅方向の中央部80%における厚さ方向のレターデーションRthのバラツキも容易に10nm以下に制御された位相差フィルムが得られる。
面内レターデーションと同様に、厚み方向レターデーションRthの変動が上記範囲内に制御できることで、該位相差フィルムを液晶パネルに積層しても表示むらがなく、特に大画面用途において使用されるVA型液晶パネルに適用することによって、VA液晶が本来有する広視野角と高コントラストといった特徴を効果的に高めることが可能となる。
本発明の製造方法で得られた位相差フィルムは、面内のレターデーションR0が50nm以上であることが好ましい。レターデーションR0 の値が小さくなると、液晶パネルに積層した際に、液晶を通過する際の複屈折を補償しきれず、位相差フィルムとしての商品価値が低下する。
更に、本発明の製造方法で得られた位相差フィルムのNz係数は、1.3以上であることが好ましい。Nz係数がこれを下回ると、VA型液晶パネルに積層した際に、複屈折性に起因する光学歪や、視覚方向による画像品位変調などの視野角依存性を補償しきれず、位相差フィルムとしての商品価値が低下する。
本発明の位相差フィルムは、非晶性熱可塑性樹脂分子主鎖のフィルム面内における配向方向である遅相軸のフィルム幅方向に対するずれ角度θ(°)が±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがより好ましい。ずれ角度θが上記範囲内となることによりフィルム全面で光軸が均一化するので、他部材との貼り合わせ角度が安定し、特に、画面サイズの大きな液晶パネルに積層した場合に顕著な効果を奏し、画面全体にむらのない高品位の画像を得ることができる。
本発明の位相差フィルムの平均厚みについては特に制限されるものではないが、所望のレターデーション発現性を損わず、一定の機械的強度を有するとともに、液晶表示装置に搭載される際に重視される部材の軽薄化に鑑みれば、30〜100μmであることが好ましく、30〜70μmがより好ましい。
本発明の構成は上述の通りであり、本発明により幅方向に均一なレターデーションを有する位相差フィルムを得ることができる。また、得られた位相差フィルムを液晶表示装置に使用すると、液晶物質の複屈折を効果的に補償して表示むらを解消するとともに、コントラストが良好で視角特性に優れた高品位な液晶表示画像を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1〜3)
非晶性熱可塑性樹脂であるノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア1420」、ガラス転移温度Tg=142℃)をTダイつき押出機に供給し、溶融温度230℃、引取速度20m/分で冷却ロール上に溶融押出し、フィルム状に連続成膜して塩化ビニル樹脂製コアにロール状に巻取り、実質的に無配向のノルボルネン系樹脂フィルムを得た。得られたノルボルネン系樹脂フィルムの幅は300mm、平均厚みは100μmであった。
得られたノルボルネン系樹脂フィルムを連続的に巻出し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーン及び冷却ゾーンを有するとともに、各ゾーン毎に加熱温度を設定可能とされた横一軸テンター延伸機に10m/分の速度で供給し、その幅方向両端部をテンタークリップで把持し、幅方向に2.0倍拡幅、延伸して位相差フィルムを得た。
なお、予熱ゾーンの温度は150℃に設定して、供給された樹脂フィルムを150℃に加熱した後、145℃に設定された延伸ゾーンで横一軸延伸し、直ちに熱処理ゾーンで140℃に弛緩処理したのち冷却ゾーンで100℃に冷却した。
得られた横一軸延伸非晶性熱可塑性樹脂フィルムの両端をテンタークリップから解放し、直ちに端部の未延伸残部をトリミングしたのち、エアーフローティング式熱処理装置にて、表1記載の熱処理温度及び搬送張力で20秒間処理し、直ちに付設の冷却炉で100℃に冷却し、位相差フィルムを得た。搬送中のフィルム状態を観察した結果を表1に示す。
得られた位相差フィルムの幅はテンタークリップ掴み部分を除いて約560mmであり、平均厚みは48μmであった。また、得られた位相差フィルムのNz係数、レターデーション値R0及びR0バラツキを測定し、結果を表1に示した。
なお、位相差フィルムのレターデーション値R0、Nz係数及び分子主鎖配向角のバラツキの測定方法は以下の通りである。
<レターデーション値R0の測定方法>
自動複屈折測定装置(王子計測機器社製、商品名「KOBRA−21ADH」を用いて、位相差フィルムの中央450mm幅部分を、幅方向に10mm間隔にレターデーションを測定し、その平均値をレターデーション値R0とした。また測定値中の最大値及び最小値の差をR0バラツキとした。
<Nz係数の測定方法>
自動複屈折測定装置(王子計測機器社製、商品名「KOBRA−WR」を用いて、位相差フィルムの中央450mm幅部分を、幅方向に10mm間隔にNz係数を測定し、その平均値をNz係数とした。
Figure 2007010883

Claims (4)

  1. 非晶性熱可塑性樹脂フィルムをテンターにより幅方向に一軸延伸し、熱処理及び冷却処理を経た後、フィルム端を把持するクリップより延伸フィルムを解放し、更にエアーフローティング式シート加熱処理装置により、下記式(1)及び(2)を満足する温度T(℃)及び搬送張力F(N/m/μm)で再度熱処理することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
    Tg−20≦T≦Tg+20・・・(1)
    0<F≦0.5・・・(2)
    但し、Tgは非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度を示す。
  2. 請求項1に記載の製造方法により製せられ、テンタークリップ把持部を除くフィルム幅方向の中央部80%における面内レターデーションR0のバラツキが6nm以下であることを特徴とする位相差フィルム。
  3. Nz係数が1.3以上であることを特徴とする請求項2に記載の位相差フィルム。
  4. 非晶性熱可塑性樹脂がノルボルネン系樹脂又はマレイミド系樹脂であることを特徴とする請求項2又は3に記載の位相差フィルム。
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