JP2005004096A - 位相差補償フィルム、複合偏光板、偏光板、液晶表示装置及び位相差補償フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の位相差補償フィルムは、長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムをその幅方向に延伸してなる横延伸フィルムを、その長さ方向に延伸して得られる位相差補償フィルムであって、フィルムにおける長さ方向の延伸倍率と幅方向の延伸倍率との比(長さ方向の延伸倍率/幅方向の延伸倍率)が2/3以下であると共に、面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthが式1乃至式3の条件を満たすことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置のコントラスト及び視野角の改善に用いられる位相差補償フィルム、この位相差補償フィルムを用いた複合偏光板、偏光板及び液晶表示装置、並びに、上記位相差補償フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置が、パーソナルコンピュータの表示装置等として広く普及してきており、その一つにTN(Twisted Nematic )モード液晶表示装置が挙げられる。しかしながら、TNモード液晶表示装置は、視野角が狭いとともに応答速度が遅いといった問題点があった。
【0003】
そこで、TNモード液晶表示装置のような旋光モードではなく、複屈折モードを利用したVA(Vertically Aligned)モード液晶表示装置が提案されている。このようなVAモード液晶表示装置として、特許文献1には、液晶セルを構成する基板内面に傾斜面を有する突起等からなるドメイン規制手段を設け、このドメイン規制手段によって液晶分子の配向方向を2方向以上に分割して、液晶セルを通過してくる光量を均一化させることによって見込み角度によって表示輝度が大きく異なる視野角依存性を改善したMVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード液晶表示装置が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記MVAモード液晶表示装置であっても、液晶表示面の法線に対して斜め45°から液晶表示面を見ると、やはりコントラストが低下するといった問題点を有するものであり、この視野角依存性を改善するために位相差補償フィルムが用いられている。
【0005】
このような位相差補償フィルムの材料としては、ポリカーボネートやポリサルホンに代表されるような高透明性及び高耐熱性の合成樹脂フィルムが用いられてきたが、上記特性に加えて、光弾性係数、波長分散性及び水蒸気透過率等の特性にも優れた環状オレフィン系樹脂フィルムを位相差補償フィルムとして用いることが考えられる。
【0006】
ところが、環状オレフィン系樹脂は、リタデーションの発現性がポリカーボネートやポリサルホンに比して小さく、単位厚さ当たりのリタデーションRe ,Rthをともに大きくすることが困難であることから、必要な光学補償を得るためには、例えば、必要なリタデーションRthの半分の値を有する環状オレフィン系樹脂からなる位相差補償フィルムの遅相軸方向を揃え二枚重ねて用いるといった工夫を要するものであった。
【0007】
このように、位相差補償フィルムを重ね合わせて用いると、位相差補償フィルム同士の重ね合わせ時に異物が混入したり、位相差補償フィルム同士の重ね合わせミス等が発生するといった問題点があった。
【0008】
そこで、特許文献2には、二つの芳香環を有する芳香族化合物を添加してレターデションを向上させる方法が開示されているものの、このように添加剤を添加すると、添加剤が充分に分散し或いは相溶していないと、得られる位相差補償フィルムの透明性が低下したり或いは光学欠陥の原因となるといった別の問題点があった。
【0009】
また、位相差補償フィルムの製造方法としては、特許文献3に、長尺状のフィルムをその長さ方向に延伸して遅相軸を形成した後、フィルムの幅方向に延伸する光学補償フィルム(位相差補償フィルム)の製造方法が提案されている。
【0010】
一方、偏光板は、通常、その長さ方向に吸収軸が形成された上でロール状に巻回されており、液晶表示装置を組み立てるために、偏光板と位相差補償フィルムとを貼り合わせるにあたっては、偏光板の吸収軸と位相差補償フィルムの遅相軸とを所定の角度で交差させた状態で重ね合わせる必要がある。特に、VAモードの液晶セルを用いた液晶表示装置においてはこの角度を90°とする必要がある。
【0011】
しかしながら、特許文献3の製造方法によって製造された位相差補償フィルムは、その遅相軸が長さ方向に形成された状態となっていることから、偏光板と位相差補償フィルムとを貼り合わせるにあたっては、長尺状の偏光板と長尺状の位相差補償フィルムとを互いに直交させた状態で連続的に貼り合わせることができず、生産効率が悪いといった問題点があった。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−242225号公報
【特許文献2】
特開2002−14230号公報
【特許文献3】
特開2002−148438号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、一枚で充分に大きなリタデーションRe ,Rthを有しており、液晶表示装置の視野角依存性やコントラストを改善することができ、且つ、偏光子の保護フィルムとして代用可能であるとともに、偏光板との貼り合わせ効率に優れた位相差補償フィルム、この位相差補償フィルムを用いた複合偏光板、偏光板及び液晶表示装置、並びに、上記位相差補償フィルムの製造方法を提供する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の位相差補償フィルムは、長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムをその幅方向に延伸してなる横延伸フィルムを、その長さ方向に延伸して得られる位相差補償フィルムであって、フィルムにおける幅方向の延伸倍率に対する長さ方向の延伸倍率の比が2/3以下であるとともに、面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthが式1ないし式3の条件を満たすことを特徴とする。
10nm≦Re ≦200nm・・・式1
50nm≦Rth≦400nm・・・式2
Rth/d+2×Re /d≧0.004・・・式3
(但し、dはフィルムの平均厚み(μm)を示す。)
【0015】
なお、フィルムにおける面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthは下記式で定義されたものである。
Re (nm)=|nx −ny |×d
Rth(nm)=|(nx +ny )/2−nz |×d
但し、nx はフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、ny はフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nz はフィルムの厚み方向の屈折率であり、d(nm)はフィルムの平均厚みである。
【0016】
上記位相差補償フィルムに用いられる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの付加共重合体、ノルボルネン系モノマー同士の付加(共)重合体及びこれらの誘導体等のノルボルネン系樹脂が挙げられ、単独で用いられても併用されてもよい。
【0017】
上記ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を有するものであれば、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;テトラシクロペンタジエン等の七環体;これらのメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル、ビニル等のアルケニル、エチリデン等のアルキリデン、フェニル、トリル、ナフチル等のアリール等の置換体;さらにこれらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等の炭素、水素以外の元素を含有する基、いわゆる極性基を有する置換体等が挙げられ、入手が容易であり、反応性に優れ、得られる位相差補償フィルムの耐熱性が優れていることから、三環体以上の多環ノルボルネン系モノマーが好ましく、三環体、四環体及び五環体のノルボルネン系モノマーがより好ましい。なお、ノルボルネン系モノマーは、単独で用いられても二種類以上が併用されてもよい。
【0018】
上記ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体は、例えば、ノルボルネン系モノマーを、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の金属のハロゲン化物、硝酸塩もしくはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系、又は、チタン、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物もしくはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒系等を用いて、溶媒中又は無溶媒で、通常、−50℃〜100℃の重合温度、0〜5MPaの重合圧力で開環(共)重合させることにより得ることができる。
【0019】
また、上記ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの付加共重合体としては、ノルボルネン系モノマーとα−オレフィンとの共重合体、ノルボルネン系モノマーと環状オレフィン系モノマーとの共重合体が挙げられる。上記α−オレフィンとしては、炭素数が2〜20のα−オレフィンが好ましく、炭素数が2〜10のα−オレフィンがより好ましい。
【0020】
上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられ、共重合性が高いことから、エチレンが好ましく、他のα−オレフィンをノルボルネン系モノマーと共重合させる場合にも、エチレンを存在させている方が共重合性が高められる。
【0021】
上記環状オレフィン系モノマーとしては、例えば、シクロオクタジエン、シクロオクテン、シクロヘキセン、シクロドデセン、シクロドデカトリエン等が挙げられる。
【0022】
上記ノルボルネン系モノマーとビニル系化合物との付加(共)重合体は、例えば、モノマー成分を、溶媒中又は無溶媒で、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物(好ましくはハロゲン含有有機アルミニウム化合物)とからなる触媒系の存在下で、通常、−50℃〜100℃の重合温度、0〜5MPaの重合圧力で共重合させることにより得ることができる。
【0023】
これらのうち、開環を伴う(共)重合体には必然的に不飽和結合が残留し、また付加(共)重合体であってもモノマーの種類によっては不飽和結合が残留することがある。このような場合、熱履歴による酸化劣化や紫外線等による着変色といった耐久性を重視する観点から、これらの不飽和結合を水素添加しておくことが好ましい。
【0024】
上記ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体或いは付加(共)重合体を水素添加する方法としては、上記ノルボルネン系モノマーを公知の方法で開環(共)重合或いは付加重合させた後、残留している二重結合を公知の方法で水素添加すればよい。
【0025】
なお、上記ノルボルネン系樹脂の具体例としては、特開平1−240517号公報に記載されているものが挙げられ、商業的に入手できるノルボルネン系樹脂の具体例としては、例えば、JSR社製の商品名「アートン」シリーズ、日本ゼオン社製の商品名「ゼオノア」シリーズ、三井化学社製の商品名「アペル」シリーズ等が挙げられる。
【0026】
上記環状オレフィン系樹脂の数平均分子量は、小さいと、得られる位相差補償フィルムの機械的強度が低下することがある一方、大きいと、得られる位相差補償フィルムの位相差の発現性が低下するので、5000〜50000が好ましく、8000〜30000がより好ましい。なお、環状オレフィン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ法によって測定された標準ポリスチレン換算値を示す。
【0027】
上記環状オレフィン系樹脂には、位相差補償フィルムの機能を阻害しない範囲内において、成形中の環状オレフィン系樹脂の劣化防止や位相差補償フィルムの耐熱性、耐紫外線性、平滑性等を向上させるために、フェノール系、リン系等の酸化防止剤;ラクトン系等の熱劣化防止剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系等の紫外線吸収剤;脂肪族アルコールのエステル系、多価アルコールの部分エステル系、部分エーテル系等の滑剤;アミン系等の帯電防止剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。なお、添加剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0028】
更に、本発明の位相差補償フィルムは、長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムをその幅方向に延伸してなる横延伸フィルムを、その長さ方向に延伸してなるが、横延伸フィルムの長さ方向の延伸倍率の、環状オレフィン系樹脂フィルムの幅方向の延伸倍率に対する比(以下「縦横延伸比」という)は、2/3以下に限定される。
【0029】
これは、縦横延伸比が大きいと、遅相軸の方向が横延伸フィルムの縦方向に転換してしまう結果、偏光板との貼り合わせの際にロールツーロール法が採用できなくなるからである。
【0030】
更に、本発明の位相差補償フィルムにおける面内のリタデーションRe は10nm以上で且つ200nm以下に限定されるとともに、厚み方向のリタデーションRthは、50nm以上で且つ400nm以下に限定される。
【0031】
上記のように限定された位相差補償フィルムにおける面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthは上記式3の条件を満たすように調整される。これは、面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthが式3の条件を満たさないと、直線偏光がVA型液晶セル内を通過する際に生じる複屈折を充分に補償することができないからである。
【0032】
加えて、上記位相差補償フィルムの平均厚みは、厚いと、位相差補償フィルムを用いて構成された液晶表示装置が厚くなってしまうので、80μm以下が好ましい。
【0033】
次に、上記位相差補償フィルムの製造方法について説明する。先ず、環状オレフィン系樹脂フィルムを成膜するのであるが、この成膜方法としては、従来から汎用されている方法が用いられ、具体的には、環状オレフィン系樹脂を押出機に供給して溶融、混練し、押出機の先端に取り付けた金型からフィルム状に押し出して長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムを成膜する方法、所謂、溶融押出法の他に、環状オレフィン系樹脂を有機溶媒中に溶解してなる溶液をドラム又はバンド上に流延した後に有機溶媒を蒸発させて長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムを成膜する方法、所謂、溶液流延法等が挙げられる。
【0034】
得られた環状オレフィン系樹脂フィルムの厚みは、薄いと、所望のリタデーションを得ることが困難となる一方、厚いと、液晶表示装置の薄型化に不利となるので、50〜200μmが好ましく、80〜150μmがより好ましい。
【0035】
なお、環状オレフィン系樹脂フィルムの厚みが80μm以上となる場合には、溶液流延法では、有機溶媒を充分に蒸発、除去させることが困難となることがあるので、溶融押出法を用いて環状オレフィン系樹脂フィルムを製造するのが好ましい。
【0036】
次に、上記環状オレフィン系樹脂フィルムを延伸することによって環状オレフィン系樹脂分子を所定方向に配向させて位相差補償フィルムを得る。この環状オレフィン系樹脂フィルムを延伸する要領としては、例えば、▲1▼長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムを、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg付近の温度領域において、横方向(幅方向)に延伸した後に縦方向(長さ方向)に延伸する延伸方法、▲2▼長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムを、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg付近の温度領域において、縦方向(長さ方向)及び横方向(幅方向)に同時に延伸する延伸方法、▲3▼環状オレフィン系樹脂フィルムを、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg付近の温度領域において、厚み方向に押圧力を加えて薄膜化して縦方向(長さ方向)及び横方向(幅方向)に同時に延伸する延伸方法が挙げられ、環状オレフィン系樹脂フィルムの延伸工程内における熱緩和量が小さくて、厚み方向のリタデーションRthを高く発現させることができることから、上記▲1▼に示した要領で環状オレフィン系樹脂フィルムを延伸するのが好ましい。
【0037】
以下に、環状オレフィン系樹脂フィルムを、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg付近の温度領域において、横方向(幅方向)に延伸した後に縦方向(長さ方向)に延伸する延伸方法を詳細に説明する。
【0038】
先ず、長尺ロール状の環状オレフィン系樹脂フィルムを連続的に巻き出しながら、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg付近の温度領域において、環状オレフィン系樹脂フィルムの幅方向の両端部を、テンタークリップ等の任意の把持手段によって把持し、この把持手段を環状オレフィン系樹脂フィルムの搬送速度と同一速度にて搬送方向に移動させながら互いに離間する方向に徐々に変位させることによって環状オレフィン系樹脂フィルムをその幅方向に延伸して拡幅させた後、環状オレフィン系樹脂分子の配向を固定するために環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に冷却する。
【0039】
上記環状オレフィン系樹脂フィルムを横方向に延伸する際の環状オレフィン系樹脂フィルムの温度は、位相差補償フィルムに付与したい補償位相差量によって適宜、調整されるが、低いと、延伸時に環状オレフィン系樹脂フィルムが破断する虞れがある一方、高いと、所望のリタデーションを得ることが困難となることがあるので、(環状オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度Tg−5℃)〜(環状オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度Tg+20℃)が好ましく、(環状オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度Tg)〜(環状オレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度Tg+10℃)がより好ましい。なお、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計によって測定されたものをいう。
【0040】
また、環状オレフィン系樹脂フィルムを横方向に延伸する際の延伸倍率は、低いと、配向軸の方向が均一に揃わないことがある一方、高いと、環状オレフィン系樹脂フィルムにおける幅方向の張力分布にムラが生じ、リタデーションのムラが大きくなることがあるので、1.2〜2.5倍が好ましく、1.5〜2.0倍がより好ましい。
【0041】
なお、環状オレフィン系樹脂フィルムを幅方向に延伸させた後であって冷却する前に、環状オレフィン系樹脂分子の配向方向を揃える目的で熱緩和工程を行ってもよい。
【0042】
このようにして環状オレフィン系樹脂フィルムを横方向に延伸することによって延伸方向に環状オレフィン系樹脂分子が配列し、延伸方向の屈折率が大きくなり、横方向に遅相軸が形成された横延伸フィルムを得ることができる。
【0043】
この横延伸フィルムの面内におけるリタデーションRe は、低いと、横延伸フィルムをその長さ方向(幅方向と直交する方向、所謂、縦方向)に延伸しても厚み方向のリタデーションRthが発現しにくくなることがある一方、高いと、環状オレフィン系樹脂分子が歪み過ぎているのと同じ結果となり、横延伸フィルムを縦方向に延伸させて発現する厚み方向のリタデーションRthを上記式3を満たすように制御することが困難となることがあるので、80〜300nmが好ましく、120〜250nmがより好ましい。
【0044】
また、横延伸フィルムのNz係数は、小さいと、横延伸フィルムを縦方向に延伸しても、得られる位相差補償フィルムにおける厚み方向のリタデーションRthが大きくならず、二軸性の発現が小さくなり、直線偏光が液晶セルを通過する際に生じる液晶分子による複屈折を充分に補償することができないことがある一方、大きいと、横方向の分子配向に乱れが生じてしまうことがあるので、1.2〜2.0が好ましく、1.3〜1.8がより好ましい。
【0045】
なお、フィルムのNz係数は下記式によって定義されたものをいう。
Nz係数=|nx −nz |/|nx −ny |
【0046】
横延伸フィルムのNz係数の具体的な調整方法としては、環状オレフィン系樹脂フィルムを横方向に延伸、拡幅する際の拡幅角度θによって調整することができる。
【0047】
即ち、環状オレフィン系樹脂フィルムは、図1に示したように、その幅方向の両端部をテンタークリップ等の任意の把持手段によって把持し、この把持手段を環状オレフィン系樹脂フィルムの搬送速度と同一速度で搬送方向に移動させつつ互いに離間する方向に変位させることによって、幅方向に徐々に拡幅、延伸される。
【0048】
このとき、環状オレフィン系樹脂フィルムにおける拡幅前の幅方向の両端縁1,1は、環状オレフィン系樹脂フィルムの搬送方向に合致した方向に指向している一方、環状オレフィン系樹脂フィルムにおける拡幅後の幅方向の両端縁2,2は、環状オレフィン系樹脂フィルムの搬送方向における斜め横方向に指向した状態となっている。
【0049】
そして、環状オレフィン系樹脂フィルムにおける拡幅前の幅方向の端縁1を搬送方向に延長した仮想線1aと、環状オレフィン系樹脂フィルムにおける拡幅後の幅方向の端縁2とがなす角度(拡幅角度)θを調整することによって、横延伸フィルムのNz係数を調整することができる。
【0050】
つまり、上記環状オレフィン系樹脂フィルムの拡幅角度θは、小さいと、Nz係数が大きくなり、横方向の分子配向に乱れが生じてしまうことがある一方、大きいと、Nz係数が小さくなり過ぎて、横延伸フィルムをその長さ方向(縦方向)に延伸しても、得られる位相差補償フィルムにおける厚み方向のリタデーションRthが大きくならず、直線偏光が液晶セルを通過する際に生じる液晶分子による複屈折を充分に補償することができないことがあるので、3〜20°となるように調整するのが好ましく、5〜12°となるように調整するのがより好ましい。
【0051】
なお、環状オレフィン系樹脂フィルムにおける拡幅前の幅方向の左右端縁1,1を搬送方向に延長した左右仮想線1a,1aと、環状オレフィン系樹脂フィルムにおける拡幅後の幅方向の左右端縁2,2とがなす角度(拡幅角度)θ1 ,θ2 は同一角度であることが好ましい。
【0052】
更に、横延伸フィルムの正面複屈折の絶対値|nx −ny |は、小さいと、横延伸フィルムを縦方向に延伸しても、得られる位相差補償フィルムにおける厚み方向のリタデーションRthが発現しにくくなることがある一方、大きいと、得られる位相差補償フィルムのリタデーションの制御が困難となるので、0.001〜0.006となるように延伸を調整する必要があり、0.0015〜0.0040となるように延伸を調整するのが好ましい。
【0053】
次に、横延伸フィルムをその長さ方向(幅方向と直交する方向)に延伸し、横方向に発生した遅相軸と直交する方向に延伸力を加えて位相差補償フィルムを得る。この際、横延伸フィルムを縦方向に延伸する際の延伸倍率は、上述したように、縦横延伸比が2/3以下となるように調整する必要がある。
【0054】
この横延伸フィルムをその長さ方向(縦方向)に延伸する方法としては、ロール間ネックイン延伸法、近接ロール延伸法等が適用できるが、位相差を制御し易く、環状オレフィン系樹脂フィルムに傷や皺等の不良が発生しにくいといった利点を有するロール間ネックイン延伸法を採用することが望ましい。ロール間ネックイン延伸法とは、フィルム幅に比して十分に長い延伸ゾーンを挟んで位置する一対のニップロールで搬送中のフィルムを挟持するとともに、上流側のニップロールの周速に対して下流側のニップロールの周速を大きくすることによって、所望の延伸倍率を得る方法である。なお、このとき、横延伸フィルムの幅方向の両端部は拘束を受けない自由端とされており、縦方向の延伸に伴って幅方向にネックイン現象を呈する。
【0055】
上記横延伸フィルムを縦方向に延伸する際の横延伸フィルムの温度は、位相差補償フィルムに付与したい補償位相差量によって適宜調整されるが、低いと、延伸時に横延伸フィルムが破断する虞れがある一方、高いと、配向に乱れが生じ、所望のリタデーションを得ることが困難となることがあるので、(横延伸フィルムのガラス転移温度Tg−5℃)〜(横延伸フィルムのガラス転移温度Tg+20℃)が好ましく、(横延伸フィルムのガラス転移温度Tg)〜(横延伸フィルムのガラス転移温度Tg+10℃)がより好ましい。
【0056】
そして、上述の要領で、横延伸フィルムを縦方向に延伸して得られた位相差補償フィルムは、熱緩和によるリタデーションRe ,Rthの低下を防止するために、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に冷却される。
【0057】
このようにして得られた位相差補償フィルムは、上記式1ないし式3の条件を満たしており、液晶表示装置の部品として好適に用いられるが、上記位相差補償フィルムは、単独で用いられても、偏光板と積層一体化させて複合偏光板として用いられても、偏光板の液晶セル側の保護フィルムの代わりに接着剤を介して積層一体化されて偏光板を形成して用いられてもよい。液晶表示装置の薄型化及び製造効率を向上させることができることから、偏光板の液晶セル側の保護フィルムの代わりに、好ましくは接着剤を介して位相差補償フィルムを積層一体化させて偏光板として用いるのが好ましい。
【0058】
次に、上記位相差補償フィルムを単独で用いて液晶表示装置を製造する要領を説明する。上記位相差補償フィルムを用いた液晶表示装置としては、液晶セルを構成している一対の基板外面の夫々に偏光板を配設するとともに、上記液晶セルの基板のうちの少なくとも一方の基板、好ましくは液晶表示面側の基板と、この基板に対向する偏光板との間に上記位相差補償フィルムを介在させ、更に、液晶セルにおける液晶表示面とは反対側の基板側に配設した偏光板上に、バックライト型或いはサイドライト型の公知の照明システムを配設するとともに、駆動回路を組み込むことによって液晶表示装置を得ることができる。
【0059】
更に、上記液晶表示装置において、位相差補償フィルムは、予め、偏光板の一面に接着剤又は粘着剤を介して積層一体化させて複合偏光板として用いられてもよい。
【0060】
なお、位相差補償フィルムと偏光板とを積層一体化させるのに用いられる接着剤又は粘着剤としては、これらの光学特性を阻害しないものであれば、特に限定されず、アクリル系の接着剤又は粘着剤等の透明なものが用いられる。
【0061】
また、上記偏光板は従来から汎用されているものが用いられ、偏光子の両面に保護フィルムを積層一体化させてなる。この偏光子としては、ポリビニルアルコール・ヨウ素系偏光膜、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性染料を吸着配向させた染料系偏光膜、ポリビニルアルコール系フィルムより脱水反応を誘起させたり、ポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸反応により、ポリエンを形成させたポリエン系偏光膜、分子内にカチオン基を含有する変性ポリビニルアルコールからなるポリビニルアルコール系フィルムの表面及び/又は内部に二色性染料を有する偏光膜等が挙げられる。
【0062】
そして、上記偏光子の製造方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸後にヨウ素イオンを吸着させる方法、ポリビニルアルコール系フィルムを二色性染料による染色後に延伸する方法、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸後に二色性染色で染色する方法、二色性染料をポリビニル系アルコール系フィルムに印刷後に延伸する方法、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸後に二色性染料を印刷する方法等が挙げられる。
【0063】
なお、上記ポリビニルアルコールとしては、酢酸ビニルモノマーを単独重合させて得られたポリ酢酸ビニルをケン化してなるものだけでなく、酢酸ビニルモノマーに、少量のオレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩又は不飽和カルボン酸もしくはこの塩、エステル、アミド、ニトリル等のモノマーを共重合させてなるものであってもよい。
【0064】
そして、上記偏光子の両面に積層一体化される保護フィルムとしては、偏光子の光学特性を阻害しないものであれば、特に限定されず、例えば、トリアセチルセルロース、アルカリ処理したトリアセチルセルロース等からなるフィルムが挙げられる。
【0065】
次に、位相差フィルムを、偏光板の液晶セル側の保護フィルムの代わりに接着剤を介して偏光子に直接、積層一体化して偏光板を形成させて用いる場合について説明する。上記接着剤としては、偏光子及び位相差補償フィルムの光学特性を阻害しないものであればよく、水性ウレタン系接着剤が好ましい。
【0066】
そして、偏光子の液晶セル側の面に接着剤を介して位相差補償フィルムを積層一体化させる要領としては、偏光子と位相差補償フィルムとの対向面のうちの何れか一方の面、好ましくは位相差補償フィルム面に接着剤を全面的に略均一に塗布した後、偏光子と位相差補償フィルムとを接着剤を介在させた状態で重ね合わせて積層一体化させる要領が挙げられる。
【0067】
このとき、偏光子又は位相差補償フィルムに塗布される接着剤の塗布量は、少ないと、偏光子と位相差補償フィルムとの間の接着強度が低下して、偏光子と位相差補償フィルムとの間に隙間が生じて光学特性が阻害されることがある一方、多いと、接着剤の乾燥が不充分となって偏光子が湾曲したり或いは偏光度が低下したりすることがあるので、偏光子又は位相差補償フィルム上に塗布した直後の接着剤の塗布量が0.05〜10g/m2 となるように調整するのが好ましい。
【0068】
一方、偏光子における位相差補償フィルムが積層一体化される面とは反対側の面には、通常の光等方性の保護フィルムが接着剤を介して積層一体化されるが、この保護フィルムと位相差補償フィルムとの間の透湿度の差が大きいと、偏光板が湾曲してしまうといった問題が発生することから、保護フィルムを選択するにあたっては、保護フィルムの透湿度が位相差補償フィルムの透湿度に対して±50%程度以内、好ましくは±30%程度以内となるように選択するのが好ましい。
【0069】
このような観点から、保護フィルムの材料としては、位相差補償フィルムの材料として用いられている環状オレフィン系樹脂が好ましく、ノルボルネン系樹脂がより好ましい。
【0070】
上記位相差補償フィルムを保護フィルムとして用いた偏光板を使用した液晶表示装置としては、液晶セルを構成している一対の基板外面の夫々に配設される偏光板のうち、少なくとも液晶表示面側の偏光板として、この偏光板を、その位相差補償フィルム面を液晶セル側に配置する構成とすることで得られる。
【0071】
上記液晶セルとしては、従来から用いられている液晶セルであれば、特に限定されないが、OCBモード、VAモード、TNモードが好ましい。VAモードは、電圧オフ状態で液晶分子はその長さ方向を液晶セルの基板に対して垂直方向に向けた状態で立ち、黒表示される。このとき、液晶セルを通過する光における液晶セルの厚み方向の屈折率が大きくなって屈折率異方性が発現し、見る角度によっては光が漏れてしまう。上記位相差補償フィルムは、その厚み方向の屈折率nz が小さく、大きくなった液晶セルの厚み方向の屈折率を効果的に緩和して、得られる液晶表示装置の正面コントラストや、見込み角度によるコントラストの変化、所謂、視野角依存性を大幅に改善することができることから、上記位相差補償フィルムは、特にVAモードに好適なものである。
【0072】
なお、位相差補償フィルムを何れの態様で用いる場合も、位相差補償フィルムの遅相軸と、この位相差補償フィルムに隣接する偏光板或いは偏光子の吸収軸とが互いに直交するように調整する必要がある。
【0073】
【実施例】
(実施例1,2、比較例1〜3)
環状オレフィン系樹脂として熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製 商品名「ゼオノア#1600」、数平均分子量:約20000)を用い、この熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を一軸押出機に供給して溶融、混練し、一軸押出機の先端に取り付けたTダイから溶融押出を行って、幅500mmで且つ平均厚みが100μmの長尺状の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを得た。なお、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを示差走査熱量計(セイコー電子工業社製 商品名「DSC220C」)によって測定したところ、161.0℃であった。
【0074】
次に、得られた長尺状の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを連続的に巻き出し、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを予熱ゾーン内に供給、通過させて表1に示した温度に予熱した。
【0075】
しかる後、この予熱ゾーンにて予熱された熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを連続的に延伸ゾーン内に供給、通過させて表1に示した温度に加熱し、この加熱温度(横延伸温度)に保持した。
【0076】
そして、この延伸ゾーンにて横延伸温度に保持された熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムにおける幅方向の両端部をテンタークリップによって順次把持し、テンタークリップを熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの搬送速度と同一速度でフィルムの搬送方向に移動させながら互いに離間する横方向に変位させて、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを表1に示した拡幅角度θ(左右拡幅角度θ1 ,θ2 は同一角度とした)で表1に示した横延伸倍率にて押出方向に直交する方向(横方向)に延伸した。なお、拡幅角度θに応じて延伸ゾーンの長さを調整した。
【0077】
続いて、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを、熱緩和ゾーンに連続的に供給して155℃に保持して熱緩和を行った上で、冷却ゾーンに連続的に供給し、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを120℃まで冷却して、横方向に遅相軸が形成された横延伸フィルムをロール状に連続的に巻き取った。なお、横延伸フィルムにおける幅方向の両端150mm部分を除去した。
【0078】
横方向に延伸されて遅相軸が形成された熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムにおける面内のリタデーションRe を自動複屈折測定装置(王子計測機器社製 商品名「KOBRA−21ADH」)を用いて横方向に10mm間隔で測定して平均値を算出し、この平均値を正面位相差値として表1に示した。
【0079】
また、この横延伸フィルムの厚みを1/1000mmデジタル厚み計を用いて横方向に10mm間隔で測定して平均値を算出し、この平均値を平均厚みとして表1に示した。なお、上記正面位相差値及び平均厚みから正面複屈折値を計算により算出した。
【0080】
更に、この横延伸フィルムのNz係数を自動複屈折測定装置(王子計測機器社製 商品名「KOBRA−21ADH」)を用いて横方向に10mm間隔で測定して平均値を算出し、この平均値をNz係数として表1に示した。
【0081】
加えて、横延伸フィルムにおける遅相軸のフィルムの横方向への配向率(横方向配向率)を次の要領で測定した。即ち、同じく横方向に10mm間隔で遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)を測定し、フィルムの長手方向と直交する方向を0°としたときに、該方向から±1°の範囲に収まっている領域のフィルム全幅に対する百分率を求めた。
【0082】
【表1】
【0083】
次に、上記の要領で横方向に延伸され、横方向に遅相軸が形成されたロール状の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを連続的に5m/minの一定巻き出し速度で巻き出しながら、155℃の予熱ゾーンを通して予備加熱した後、引き続く165℃の延伸ゾーンにて表2に示した縦延伸倍率にて縦方向に延伸し、続いて、110℃の冷却ゾーンを通過させて配向を固定した後、再度ロール状に巻き取って位相差補償フィルムを得た。
【0084】
得られた位相差補償フィルムの幅方向両端部を各20mm除去した後、面内のリタデーションRe 、厚み方向のリタデーションRth、Nz係数、平均厚み、正面コントラスト比及び視野角を下記に示した方法にて測定し、その結果を表2及び表3に示した。
【0085】
(リタデーションRe ,Rth)
位相差補償フィルムにおける面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthを自動複屈折測定装置(王子計測機器社製 商品名「KOBRA−21ADH」)を用いて横方向に10mm間隔で測定して平均値をそれぞれ算出し、これらの平均値を面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthとした。
【0086】
(Nz係数)
位相差補償フィルムにおけるNz係数を自動複屈折測定装置(王子計測機器社製 商品名「KOBRA−21ADH」)を用いて横方向に10mm間隔で測定して平均値を算出し、この平均値をNz係数とした。
【0087】
(平均厚み)
位相差補償フィルムの平均厚みを1/1000mmデジタル厚み計を用いて横方向に10mm間隔で測定して平均値を算出し、この平均値を平均厚みとした。
【0088】
(正面コントラスト比及び視野角)
VAモードの液晶セルを用いた液晶表示装置(富士通社製 商品名「VL−1530SW」)の液晶セルの両面に配設されている偏光板及び位相差補償フィルムを剥離、除去し、液晶セルの基板外面上の夫々に、実施例及び比較例で得られた位相差補償フィルム及び偏光板(サンリッツ社製 商品名「HLC2−5618」)をアクリル系粘着剤を介して積層一体化して液晶表示装置を得た。なお、位相差補償フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸は、それぞれ剥離前の位相差補償フィルムの遅相軸及び偏光板の吸収軸と同一方向を向いた状態となるように調整した。
【0089】
得られた液晶表示装置に入力装置(リーダー電子社製 商品名「パターンジェネレータ408」)を用いて信号を入力し、液晶表示装置の表示面における任意の9箇所における黒輝度及び白輝度を輝度計(ミノルタ社製 商品名「LS−110」)を用いて測定し正面コントラスト比を算出した。なお、正面コントラスト比の最大値及び最小値を表3に示した。
【0090】
また、正面コントラスト比が最大となった測定点及び最小となった測定点それぞれにおける法線方向から水平方向左右に測定角度を変化させつつコントラスト比を測定し、コントラスト比が10未満となった測定角度を左右限界傾斜位置とし、この左右限界傾斜位置同士がなす角度を測定し、その角度を視野角として表3に示した。なお、液晶表示装置の表示面の法線方向から水平方向左右に80°以上傾けた状態ではコントラスト比の測定はできなかった。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【発明の効果】
本発明の位相差補償フィルムは、長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムをその幅方向に延伸してなる横延伸フィルムを、その長さ方向に延伸して得られる位相差補償フィルムであって、フィルムにおける幅方向の延伸倍率に対する長さ方向の延伸倍率の比が2/3以下であるとともに、面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthが式1ないし式3の条件を満たすことを特徴とするので、液晶セルを通過して楕円偏光となった光を光学的に効果的に補償することができ、この位相差補償フィルムを用いることによって、コントラスト及び視野角が大きく改善された液晶表示装置を得ることができる。
【0094】
そして、本発明の位相差補償フィルムは、その単位厚み当たりの面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthが充分な値を示し、一枚の位相差補償フィルムで必要とするリタデーションRe ,Rthを発現でき、よって、液晶表示装置に用いるにあたっては複数枚を重ね合わせることなく一枚の位相差補償フィルムで足り、得られる液晶表示装置を薄くすることができるとともに、液晶表示装置の構造も簡易化することができて生産効率を向上させることができる。
【0095】
更に、本発明の位相差補償フィルムは、偏光板の保護フィルムとしても用いることができるので、この位相差補償フィルムを用いることによって液晶表示装置を薄型化することができる。
【0096】
また、通常の位相差補償フィルムはその遅相軸が長さ方向に配向した長尺状に形成されているのに対し、本発明の位相差補償フィルムの遅相軸は長尺状フィルムの幅方向に配向している。
【0097】
従って、位相差補償フィルムと偏光板とを重ね合わせるにあたって、位相差補償フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸とを直交させた状態としなければならない場合、本発明の位相差補償フィルムによれば、この位相差補償フィルムを連続的に巻き出す一方、この位相差補償フィルムの巻き出し方向に沿って長尺状の偏光板を巻き出し、この偏光板を位相差補償フィルムに連続的に重ね合わせて両者を遅相軸と吸収軸とが直交した状態に飛躍的に効率良く貼り合わせることができる。
【0098】
また、本発明の位相差補償フィルムの製造方法によれば、フィルムにおける幅方向の延伸倍率に対する長さ方向の延伸倍率の比が2/3以下となるように調整していることから、得られる位相差補償フィルムの遅相軸方向を幅方向に配向させた状態のまま厚み方向のリタデーションRthを大きくすることができ、よって、この位相差補償フィルムを用いることにより、直線偏光が液晶セルを通過する際の液晶分子による複屈折によって生じた楕円偏光を効果的に補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】環状オレフィン系樹脂フィルムを横方向に延伸する要領を示した模式平面図である。
【符号の説明】
1,2 :環状オレフィン系樹脂フィルムの端縁
θ(θ1 ,θ2 ):拡幅角度
Claims (5)
- 長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムをその幅方向に延伸してなる横延伸フィルムを、その長さ方向に延伸して得られる位相差補償フィルムであって、フィルムにおける幅方向の延伸倍率に対する長さ方向の延伸倍率の比が2/3以下であるとともに、面内のリタデーションRe 及び厚み方向のリタデーションRthが式1ないし式3の条件を満たすことを特徴とする位相差補償フィルム。
10nm≦Re ≦200nm・・・式1
50nm≦Rth≦400nm・・・式2
Rth/d+2×Re /d≧0.004・・・式3
(但し、dはフィルムの平均厚み(μm)を示す。) - 偏光板の一面に請求項1に記載の位相差補償フィルムを積層一体化してなることを特徴とする複合偏光板。
- 偏光子の一面に水系接着剤を介して請求項1に記載の位相差補償フィルムを積層一体化してなることを特徴とする偏光板。
- 液晶セルの一対の基板外面の夫々に偏光板が積層されてなる液晶表示装置において、上記偏光板のうちの少なくとも一つの偏光板が請求項2又は請求項3に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
- 長尺状の環状オレフィン系樹脂フィルムをその幅方向に延伸して横延伸フィルムを製造し、この横延伸フィルムを、その長さ方向に幅方向の延伸倍率の2/3以下の延伸倍率で延伸して式1ないし式3の条件を満たす位相差補償フィルムを製造することを特徴とする位相差補償フィルムの製造方法。
10nm≦Re ≦200nm・・・式1
50nm≦Rth≦400nm・・・式2
Rth/d+2×Re /d≧0.004・・・式3
(但し、dはフィルムの平均厚み(μm)を示す。)
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