JP2006348809A - 内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】 混合ガスを適切なタイミングにて確実に自着火させて燃焼させることが良好な燃費にて可能な内燃機関を提供すること。
【解決手段】 この内燃機関10は、シリンダヘッド部30に凹部30aと同凹部30aの開口部を開閉する区画用弁36とを備える。この内燃機関は、圧縮行程において区画用弁により開口部を閉じる。これにより、燃焼室25は、ピストン非隣接空間25aと、ピストン隣接空間25bと、からなる独立した2つの密閉空間に区画される。この結果、燃焼室が区画されない場合と比較してピストン隣接空間内の混合ガスがより大きく圧縮されるので、同混合ガスは自着火する。その直後、この内燃機関は、区画用弁により開口部を開く。これにより、ピストン隣接空間にて生成された燃焼ガスによりピストン非隣接空間内にて未燃であった混合ガスが加熱されるので、同混合ガスが自着火して燃焼する。
【選択図】 図4
【解決手段】 この内燃機関10は、シリンダヘッド部30に凹部30aと同凹部30aの開口部を開閉する区画用弁36とを備える。この内燃機関は、圧縮行程において区画用弁により開口部を閉じる。これにより、燃焼室25は、ピストン非隣接空間25aと、ピストン隣接空間25bと、からなる独立した2つの密閉空間に区画される。この結果、燃焼室が区画されない場合と比較してピストン隣接空間内の混合ガスがより大きく圧縮されるので、同混合ガスは自着火する。その直後、この内燃機関は、区画用弁により開口部を開く。これにより、ピストン隣接空間にて生成された燃焼ガスによりピストン非隣接空間内にて未燃であった混合ガスが加熱されるので、同混合ガスが自着火して燃焼する。
【選択図】 図4
Description
本発明は、空気と燃料と燃焼ガスとを含む混合ガスを燃焼室内に形成し、その混合ガスをピストンが圧縮することにより自着火させて燃焼させる予混合圧縮自着火方式による運転を行う内燃機関に関する。
従来から、内燃機関の運転方式として、燃焼室内に形成された混合ガスを圧縮することにより自着火させて極めて短い期間内に燃焼させる予混合圧縮自着火方式が知られている。この予混合圧縮自着火方式により内燃機関の運転を行えば、燃焼室内に形成された混合ガスを火花により点火して燃焼させる火花点火方式により内燃機関の運転を行う場合よりも、NOxの排出量が低減されるとともに燃費が向上する。
ところで、予混合圧縮自着火方式により運転される内燃機関において混合ガスが自着火するタイミング(自着火タイミング)は、混合ガスの温度と強い相関関係を有する。一方、混合ガスの温度は、運転状態が変化しなくとも外気の温度及び燃焼ガスの温度等の変化に伴って変動しやすい。従って、自着火タイミングは変動しやすい。
そこで、従来の内燃機関は、補助圧縮手段として、燃焼室の上方に同燃焼室と連通した副シリンダと、その副シリンダ内において油圧制御により往復動させられるコントロールピストンと、を備えている。そして、所定のタイミングにてコントロールピストンを駆動することにより混合ガスを副次的に圧縮するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開平10−196424号公報
この従来の内燃機関においては、混合ガスの副次的な圧縮により上記所定のタイミングにて混合ガスの温度が同混合ガスを自着火させるために必要な温度まで急激に上昇する。従って、この従来の内燃機関は、自着火タイミングを適切なタイミングに制御することができる。
しかしながら、上記従来の内燃機関において混合ガスの温度を急激に上昇させるためには、燃焼させようとするすべての混合ガスを圧縮する必要があるので、コントロールピストンを駆動するために消費されるエネルギーが大きくなり、燃費が悪化するという問題があった。
本発明は上述した課題に対処するためになされたものであって、その目的の1つは、混合ガスを適切なタイミングにて確実に自着火させて燃焼させることが良好な燃費にて可能な内燃機関を提供することにある。かかる目的を達成するため本発明による内燃機関は、シリンダボアが形成されたシリンダブロックと、前記シリンダブロックの上部に配置されたシリンダヘッドと、前記シリンダボア内において往復動するピストンと、を備え、少なくとも前記シリンダボアの壁面と前記シリンダヘッドの下面と前記ピストンの頂面とにより構成される燃焼室にて混合ガスを形成し形成された混合ガスをピストンが圧縮することにより自着火させて燃焼させる予混合圧縮自着火方式による運転を行う。
本発明による内燃機関は、前記燃焼室内にて移動することにより同燃焼室を1つの空間から前記ピストンの頂面に接しないピストン非隣接空間と前記ピストンの頂面に接するピストン隣接空間とからなる独立した2つの密閉空間に区画する区画手段と、
圧縮行程において前記ピストン非隣接空間と前記ピストン隣接空間とからなる前記2つの密閉空間を形成するように前記区画手段を駆動するとともに、同ピストン隣接空間にて混合ガスが自着火して燃焼を開始した直後に同ピストン非隣接空間と同ピストン隣接空間とが連通した前記1つの空間を形成するように同区画手段を駆動する駆動手段と、
を備える。
圧縮行程において前記ピストン非隣接空間と前記ピストン隣接空間とからなる前記2つの密閉空間を形成するように前記区画手段を駆動するとともに、同ピストン隣接空間にて混合ガスが自着火して燃焼を開始した直後に同ピストン非隣接空間と同ピストン隣接空間とが連通した前記1つの空間を形成するように同区画手段を駆動する駆動手段と、
を備える。
これによれば、圧縮行程において燃焼室が、ピストンの頂面に接しないピストン非隣接空間と、ピストンの頂面に接するピストン隣接空間と、からなる独立した2つの密閉空間に区画される。これにより、ピストンが上死点位置に近づいてもピストン非隣接空間の容積が変化しないので、同ピストン非隣接空間内の混合ガスは圧縮されない。一方、ピストン隣接空間内の混合ガスは、ピストンが上死点位置に近づくと、燃焼室が区画されない場合と比較して、より大きく圧縮される。
従って、燃焼室が2つの空間に区画された後、時間が経過するにつれてピストン隣接空間内の混合ガスの温度は急激に上昇する。これにより、燃焼室内に形成された混合ガスの温度が変動しても、混合ガスの温度が所定の温度(混合ガスが自着火されるために必要な温度)に到達するタイミングが大きく変動することを防止することができる。この結果、燃焼室が2つの空間に区画されてから所定の時間が経過したタイミングにて同混合ガスは自着火して燃焼を開始する。その直後に、ピストン非隣接空間とピストン隣接空間とが連通させられる。
これにより、ピストン隣接空間内における燃焼により生成された燃焼ガスがピストン非隣接空間にて未燃であった混合ガス(未燃混合ガス)を圧縮する。更に、燃焼ガスと、未燃混合ガスと、が混合する。この結果、未燃混合ガスが加熱されるので、同未燃混合ガスを自着火させて燃焼させることができる。
このように、混合ガスの温度が変動しても燃焼室内のすべての混合ガスを適切なタイミングにて確実に自着火させて燃焼させることができる。更に、混合ガス全体を副次的に圧縮する上記従来技術と比較して区画手段が駆動されるだけであるので、消費されるエネルギーを小さくすることもできる。
この場合、前記シリンダヘッドの下面は、前記ピストンの頂面に向けて開口した開口部を有する凹部を含むように形成され、
前記区画手段は、前記凹部の開口部を開閉する区画用弁であることが好適である。
前記区画手段は、前記凹部の開口部を開閉する区画用弁であることが好適である。
これによれば、ピストン非隣接空間と、ピストン隣接空間と、を容易に構成することができる。
この場合、前記区画用弁は、前記凹部の開口部を形成している面に対して垂直方向に移動することにより同開口部を開閉するように構成され、
更に、前記内燃機関は、前記区画用弁が前記凹部の開口部を閉じているときの同区画用弁の位置からの同区画用弁の移動距離が所定の距離より小さいとき、同区画用弁の外周部の一部から同外周部の残余の部分へ向かうガスの流れを同凹部内に形成するように、同残余の部分と同開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するとともに、同移動距離が同所定の距離より大きいとき、同空隙を通過するガスの流れを許容するように構成されたマスク部材を備えることが好適である。
更に、前記内燃機関は、前記区画用弁が前記凹部の開口部を閉じているときの同区画用弁の位置からの同区画用弁の移動距離が所定の距離より小さいとき、同区画用弁の外周部の一部から同外周部の残余の部分へ向かうガスの流れを同凹部内に形成するように、同残余の部分と同開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するとともに、同移動距離が同所定の距離より大きいとき、同空隙を通過するガスの流れを許容するように構成されたマスク部材を備えることが好適である。
上述したように、ピストン隣接空間内の混合ガスが燃焼を開始した直後のタイミングにて区画用弁により凹部の開口部は開かれる。これにより、ピストン隣接空間にて燃焼により生成された高圧のガスは、圧力が低い凹部内に流入し始める。このとき、上記マスク部材がなく、区画用弁の外周部の全体と凹部の開口部の縁部との間にガスの通路が形成されると、高圧のガスは、区画用弁の外周部の全体から略同一の流速にて一斉に凹部内に流入するので、凹部にて所定の方向へ向かう流れが形成されにくい。このため、凹部にて燃焼したガスが同凹部から排出されにくいという問題があった。
これに対し、上記マスク部材を備えれば、区画用弁により凹部の開口部が開かれ始めてから区画用弁の移動距離が所定の距離となるまでの間は、マスク部材により区画用弁の外周部の一部から同外周部の残余の部分へ向かうガスの流れを凹部内に形成するように、同残余の部分と凹部の開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れが遮断される。これにより、区画用弁の外周部の一部から同外周部の残余の部分へ向かうガスの流れが凹部内に形成される。
その後、区画用弁により凹部の開口部が更に開かれ、区画用弁の移動距離が上記所定の距離より大きくなると、上記区画用弁の外周部の残余の部分と凹部の開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れが許容されるようになる。これにより、上記形成されたガスの流れによって区画用弁の外周部の一部からガスが凹部内に流入し、同外周部の残余の部分から同ガスが凹部外へ流出するガスの流れが形成される。この結果、凹部内のガスを十分に排出することができる。
この場合、前記区画用弁は、前記凹部内に向けて移動することにより同凹部の開口部を開くように構成されることが好適である。
上述したように、混合ガスは、ピストン非隣接空間より先にピストン隣接空間にて自着火して燃焼を開始する。従って、同混合ガスが燃焼を開始した直後の時点においては、ピストン隣接空間における燃焼により生成されたガスの圧力により、区画用弁はピストン隣接空間(凹部外)からピストン非隣接空間(凹部内)に向けて押されている。
従って、上記構成のように、凹部内に向けて移動することにより凹部の開口部を開くように区画用弁を構成することにより、凹部の開口部を開く際に区画用弁を駆動するための力(駆動力)を小さくすることができる。この結果、区画用弁を駆動するために消費されるエネルギーを小さくすることができる。
また、前記区画用弁は、前記凹部の開口部を形成している面に対して垂直方向にて前記ピストンの頂面に向けて移動することにより同開口部を開くとともに、同垂直方向にて同凹部に向けて移動することにより同開口部を閉じるように構成され、
前記区画用弁が前記凹部の開口部を閉じているときの同区画用弁の位置からの同区画用弁の移動距離が所定の距離より小さいとき、同区画用弁の外周部の一部から同外周部の残余の部分へ向かうガスの流れを同凹部内に形成するように、同残余の部分と同開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するとともに、同移動距離が同所定の距離より大きいとき、同空隙を通過するガスの流れを許容するように構成されたマスク部材を備えることが好適である。
前記区画用弁が前記凹部の開口部を閉じているときの同区画用弁の位置からの同区画用弁の移動距離が所定の距離より小さいとき、同区画用弁の外周部の一部から同外周部の残余の部分へ向かうガスの流れを同凹部内に形成するように、同残余の部分と同開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するとともに、同移動距離が同所定の距離より大きいとき、同空隙を通過するガスの流れを許容するように構成されたマスク部材を備えることが好適である。
上述したように、上記マスク部材を備えれば、区画用弁により凹部の開口部が開かれ始めてから区画用弁の移動距離が所定の距離となるまでの間に、区画用弁の外周部の一部から同外周部の残余の部分へ向かうガスの流れが凹部内に形成される。その後、区画用弁により凹部の開口部が更に開かれ、区画用弁の移動距離が上記所定の距離より大きくなると、上記形成されたガスの流れによって区画用弁の外周部の一部からガスが凹部内に流入し、同外周部の残余の部分から同ガスが凹部外へ流出するガスの流れが形成される。この結果、凹部内のガスを十分に排出することができる。
ところで、区画用弁を駆動する駆動力は、区画用弁の駆動方向と逆向きの力であって同区画用弁に働く抗力より大きくなければならない。この抗力は、区画用弁の表面に働く圧力(主としてピストン頂面側の面に働く圧力と凹部側の面に働く圧力との差)と、区画用弁の周囲を流れるガスにより同区画用弁の表面に生じる抵抗力(抵抗)と、の和である。
一方、区画用弁により凹部の開口部が開かれることにより燃焼ガスの流入が開始した直後の時点においては、ピストン頂面側の面に働く圧力と凹部側の面に働く圧力との差は開弁前の圧力差と略同じである。更に、燃焼ガスが凹部外から凹部内へと流れることにより区画用弁の表面にガス流れによる大きな抵抗力が生じる。従って、燃焼ガスの流入が開始した直後の時点において抗力は最大となる。
ところで、上記マスク部材を備えれば、燃焼ガスの流入が開始した直後の時点においては、燃焼ガスが凹部外から凹部内へ流入する際のガス流れによる抵抗力の大きさを決定する有効面積は、同マスク部材を備えない場合と比較して小さい。従って、燃焼ガスの流れにより生じるガス流れによる抵抗力が小さくなるので、抗力の最大値も小さくなる。これにより、区画用弁の最大駆動力を小さくすることができる。
この場合、前記凹部の開口部は、前記シリンダヘッドの下面内の位置であって前記ピストンの中央部に対向する位置にて同シリンダヘッドの下面に形成されていてもよい。
また、前記凹部の開口部は円形であり、
2つの吸気ポートの各々に連通する2つの円形の開口部と、前記凹部の開口部と、が前記燃焼室を構成する前記シリンダヘッドの下面内の位置であって前記シリンダボアの周部に沿い且つ連なる位置にて同シリンダヘッドの下面に形成され、
1つの排気ポートに連通する1つの円形の開口部が前記燃焼室を構成する前記シリンダヘッドの下面の残余の部分にて同シリンダヘッドの下面に形成されることが好適である。
2つの吸気ポートの各々に連通する2つの円形の開口部と、前記凹部の開口部と、が前記燃焼室を構成する前記シリンダヘッドの下面内の位置であって前記シリンダボアの周部に沿い且つ連なる位置にて同シリンダヘッドの下面に形成され、
1つの排気ポートに連通する1つの円形の開口部が前記燃焼室を構成する前記シリンダヘッドの下面の残余の部分にて同シリンダヘッドの下面に形成されることが好適である。
これによれば、吸気ポートに連通する2つの開口部と、凹部の開口部と、からなる3つの円形の開口部がシリンダヘッドの下面内の位置であってシリンダボアの周部に沿い且つ連なる位置にて同シリンダヘッドの下面に形成される。更に、シリンダヘッドの下面の残余の部分にて排気ポートに連通する円形の開口部が形成される。
これにより、吸気ポートに連通する2つの開口部と、凹部の開口部と、からなる3つの開口部のうちの1つがピストンの中央部に対向する位置に形成された場合と比較して、排気ポートに連通する開口部の面積を大きくすることができる。この結果、排気抵抗を小さくすることができるので、燃費を良好にすることができる。
(第1実施形態)
以下、本発明による内燃機関の各実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る内燃機関10の概略構成を示している。この内燃機関10は、4サイクル予混合圧縮自着火方式により運転することが可能な多気筒(4気筒)内燃機関である。なお、図1は、特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
以下、本発明による内燃機関の各実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る内燃機関10の概略構成を示している。この内燃機関10は、4サイクル予混合圧縮自着火方式により運転することが可能な多気筒(4気筒)内燃機関である。なお、図1は、特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20に空気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、中心軸を有する中空円筒状のシリンダ(シリンダボア)21、略円柱状のピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21のボア壁面(シリンダボアの壁面)とピストン22の頂面(ピストンヘッド)及びシリンダヘッド部30の下面は、燃焼室25を形成している。以下、本明細書においては、シリンダ21の中心軸に沿った方向であって、ピストン22からシリンダヘッド部30に向かう方向を上方向と称呼し、その逆の方向を下方向と称呼する。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動する吸気弁駆動手段としての吸気弁駆動機構32a、燃焼室25に連通した排気ポート33、排気ポート33を開閉する排気弁34、排気弁34を駆動する排気弁駆動手段としての排気弁駆動機構34a、燃料を燃焼室25内に直接噴射する燃料噴射弁(燃料噴射手段)35、区画手段としての区画用弁36及び同区画用弁36を駆動する駆動手段としてのカム機構37を備えている。吸気弁駆動機構32a及び排気弁駆動機構34aは、駆動回路38に接続されている。
シリンダヘッド部30の下面には、図2に示したように、ピストン22の頂面に向けて開口した開口部を有する凹部30aが形成されている。凹部30aは、シリンダ21の中心軸と同軸の円筒形である。即ち、凹部30aは、シリンダヘッド部30の下面内の位置であってピストン22の中央部に対向する位置に配置されている。
図1に示した吸気ポート31は、シリンダヘッド部30の下面内の2箇所に円形の開口部を有するように形成されている。従って、シリンダヘッド部30の下面を燃焼室25側から見た図3に示したように、シリンダヘッド部30には2個の吸気弁32が備えられている。各吸気弁32は、各吸気ポート31の開口部を開閉するようになっている。吸気ポート31は、その開口部が吸気弁32により開かれたとき燃焼室25と連通し、その開口部が吸気弁32により閉じられたとき燃焼室25と遮断せしめられるようになっている。
図1に示した排気ポート33は、シリンダヘッド部30の下面内の2箇所に円形の開口部を有するように形成されている。従って、図3に示したように、シリンダヘッド部30には2個の排気弁34が備えられている。各排気弁34は、各排気ポート33の開口部を開閉するようになっている。排気ポート33は、その開口部が排気弁34により開かれたとき燃焼室25と連通し、その開口部が排気弁34により閉じられたとき燃焼室25と遮断せしめられるようになっている。
燃料噴射弁35は、図1及び図2に示したように、燃焼室25の吸気弁32側の側壁面に配設されている。燃料噴射弁35は、燃焼室25の略中央に向けて燃料を噴射する先端部を備え、同先端部が燃焼室25に露呈するようになっている。燃料噴射弁35には、図示しない燃料圧力調整手段及び燃料ポンプにより図示しない燃料タンク内の燃料が供給されるようになっている。
図1に示した吸気系統40は、吸気ポート31に連通したインテークマニホールド41、インテークマニホールド41に連通したサージタンク42、サージタンク42に一端が接続されインテークマニホールド41及びサージタンク42とともに吸気通路を形成する吸気ダクト43、吸気ダクト43の他端部から下流(サージタンク42)に向けて順に吸気ダクト43に配設されたエアフィルタ44、過給機91のコンプレッサ91a、インタークーラ45及びスロットル弁46を備えている。
インタークーラ45は水冷式であって、吸気ダクト43を通過する空気を冷却するようになっている。インタークーラ45は、図示しないラジエタ及び循環ポンプによりインタークーラ45内の冷却水の熱を大気中に放出するようになっている。
スロットル弁46は吸気ダクト43に回転可能に支持され、スロットル弁アクチュエータ46aにより駆動されることにより吸気通路の開口断面積を可変とするようになっている。
排気系統50は、排気ポート33に連通し同排気ポート33とともに排気通路を形成するエキゾーストマニホールドを含む排気管51、排気管51内に配設された過給機91のタービン91b及びタービン91bの下流の排気管51に配設された触媒装置52を備えている。
このような配置により、過給機91のタービン91bは排ガスのエネルギーにより回転する。更に、タービン91bは、シャフトを介して吸気系統40のコンプレッサ91aと連結されている。これにより、吸気系統40のコンプレッサ91aがタービン91bと一体となって回転して吸気通路内の空気を圧縮する。即ち、過給機91は、排ガスのエネルギーを利用して内燃機関10に空気を過給するようになっている。
一方、このシステムは、電気制御装置70を備えている。電気制御装置70は、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等(いずれも図示省略)を含むマイクロコンピュータである。電気制御装置70には、クランク軸24の回転速度からエンジン回転速度NEを検出するクランクポジションセンサ61と、図示しないアクセルペダルの操作量Accpを検出するアクセル開度センサ62と、が接続されている。電気制御装置70は、これらのセンサから各検出信号を入力するようになっている。更に、電気制御装置70は、各気筒の燃料噴射弁35、駆動回路38及びスロットル弁アクチュエータ46aと接続されている。電気制御装置70は、これらに駆動信号を送出するようになっている。
ここで、区画用弁36及びカム機構37について詳述する。区画用弁36は、図2に示したように、柄部36aと、つば部36bと、傘部36cと、からなる。柄部36aは棒状(円柱状)の部材である。つば部36bは、柄部36aの径より大きな径を有する円盤状の部材である。つば部36bは、柄部36aの中心軸と同軸に柄部36aの上部であって柄部36aの上端部より下方の位置にて柄部36aに固定されている。
傘部36cは、頂部と底面とを有する略円錐状の部材である。傘部36cの底面の径は、凹部30aの開口部の径と略同じである。傘部36cは、柄部36aの中心軸と同軸となるとともに、傘部36cの頂部が柄部36aの下端部と接するように柄部36aの下端部に固定されている。
一方、シリンダヘッド部30には、凹部30aの上方にスプリング収容空間SPが形成されている。スプリング収容空間SPは、凹部30aの中心軸と同軸であって、区画用弁36のつば部36bと同径の円筒状の空間である。区画用弁36は、柄部36aの中心軸が凹部30aの中心軸と一致するとともに、つば部36bがスプリング収容空間SP内に位置するように、シリンダヘッド部30に摺動可能に配設されている。
柄部36aの外周であって、スプリング収容空間SPの底面を構成する壁面と、つば部36bの下面と、の間には、コイル状のスプリングSGが軸方向にて圧縮された状態で介装されている。これにより、スプリングSGは、区画用弁36を上方に付勢している。
カム機構37は、カムシャフト37a及びカム37bを備えている。カムシャフト37aは図示しないチェーン及びプーリーを介してクランク軸24が720°回転することにより360°回転するようになっている。カムシャフト37aはカムシャフト37aの回転軸が区画用弁36(柄部36a)の中心軸上に位置するように配置されている。
カム37bは、カムシャフト37aと連結されていて、カムシャフト37aと一体となって回転するようになっている。カム37bのプロファイル(カム37bの回転軸に直交する平面によるカム37bの断面の形状)は、円形のベースサークル部と、カム山部と、からなる形状である。
カム37bのカム山部は、ベースサークル部の外縁部のうちの所定の位置(本例では、約340°の中心角を有する円弧部)にてベースサークル部の径より大径且つ約340°の中心角を有する円弧部を備えている。カム37bの回転軸は、ベースサークル部及びカム山部の中心を通るように配置されている。
このような構成により、カム37bは区画用弁36の柄部36aの上端部と当接していて、区画用弁36をスプリングSGが付勢する力に抗しながら押動するようになっている。従って、カム37bを回転させることにより、カム機構37は、区画用弁36を同区画用弁36の中心軸方向(凹部30aの開口部を形成している面に対して垂直方向)に移動させる。これにより、凹部30aの開口部が区画用弁36によって開閉される。
ここで、クランク角の変化(ピストン22の移動)に対する区画用弁36の位置の変化について図4を参照しながら説明を加える。
先ず、クランク角がBTDC40°であるとき、図4の(A)に示したように、カム37bのカム山部の円弧部が区画用弁36の柄部36aの上端部(上面)と当接している。BTDCは、圧縮上死点(TDC)を原点としクランク軸24の回転方向と逆方向を正の値とするクランク角である。このとき、区画用弁36は下方に押し下げられている。従って、区画用弁36の傘部36cは、凹部30aの開口部の縁部と離間している。従って、燃焼室25は1つの空間を構成している。
次に、クランク軸24が10°回転して(カム37bが5°回転して)クランク角がBTDC30°となるまでの期間(BTDC40°〜30°)においては、カム37bのカム山部の径方向に延びるカム面が区画用弁36の柄部36aの上端部と当接する。このとき、カム37bの回転軸と区画用弁36の柄部36aの上端部との距離は急激に小さくなる。即ち、区画用弁36はスプリングSGにより急激に上方に(凹部30aに向けて)引き戻される。
そして、クランク角がBTDC30°となると、図4の(B)に示したように、カム37bのベースサークル部が区画用弁36の柄部36aの上端部と当接する。このとき、区画用弁36の傘部36cが凹部30aの開口部の縁部と接しているので、凹部30aの開口部は閉じられている。この結果、燃焼室25を構成する1つの空間は、ピストン22の頂面に接しないピストン非隣接空間25aとピストン22の頂面に接するピストン隣接空間25bとからなる独立した2つの密閉空間に区画される。
その後、クランク軸24が更に40°回転して(カム37bが20°回転して)クランク角がATDC10°となるまでの期間(BTDC30°〜ATDC10°)においては、カム37bのベースサークル部が区画用弁36の柄部36aの上端部と当接し続ける。ATDCは、圧縮上死点(TDC)を原点としクランク軸24の回転方向を正の値とするクランク角である。従って、カム37bの回転軸と区画用弁36の柄部36aの上端部との距離は一定に維持される。この結果、区画用弁36の傘部36cは、凹部30aの開口部の縁部と接し続ける(ATDC10°の時点を示した図4の(C)を参照。)。従って、燃焼室25においては、ピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとが形成されたままである。
次いで、クランク軸24が更に10°回転して(カム37bが5°回転して)クランク角がATDC20°となるまでの期間(ATDC10°〜20°)においては、カム37bのカム山部の径方向に延びるカム面が区画用弁36の柄部36aの上端部と当接する。このとき、カム37bの回転軸と区画用弁36の柄部36aの上端部との距離は急激に大きくなる。この結果、区画用弁36はカム37bにより急激に下方に(ピストン22頂面に向けて)押し下げられる。
そして、クランク角がATDC20°となると、図4の(D)に示したように、カム37bのカム山部の円弧部が区画用弁36の柄部36aの上端部と当接する。このとき、区画用弁36の傘部36cが凹部30aの開口部の縁部と離間しているので、凹部30aの開口部は開かれている。この結果、ピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとが連通した1つの空間として燃焼室25が形成される。
その後、クランク軸24が660°回転してクランク角がBTDC40°になるまでの期間(カム37bが更に330°回転する期間)においては、カム37bのカム山部の円弧部が区画用弁36の柄部36aの上端部と当接し続ける。従って、カム37bの回転軸と区画用弁36の柄部36aの上端部との距離は一定に維持される。この結果、区画用弁36の傘部36cは、凹部30aの開口部の縁部と離間し続ける。
このように、カム機構37により、クランク角がTDCとなる前の所定のタイミングにてピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとからなる2つの密閉空間を形成するように区画用弁36が駆動されるとともに、クランク角がTDCとなった直後のタイミングにてピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとが連通した1つの空間を形成するように区画用弁36が駆動される。
図5の実線により示した曲線C1は、このような内燃機関10の燃焼室25に空気のみを導入した場合におけるクランク角に対する燃焼室25内の空気の圧力の変化を示している。曲線C1aは、ピストン非隣接空間25a内の空気の圧力の変化を示しており、曲線C1bは、ピストン隣接空間25b内の空気の圧力の変化を示している。点線により示した曲線C2は、燃焼室を区画しない従来技術の場合の燃焼室内の空気の圧力の変化を示している。
この曲線C1aにより示されるように、ピストン非隣接空間25a内の空気の圧力は、凹部30aの開口部が区画用弁36により閉じられた後、一定となる。一方、曲線C1bにより示されるように、ピストン隣接空間25b内の空気の圧力は、凹部30aの開口部が区画用弁36により閉じられた後、急激に増大する。これにより、ピストン隣接空間25b内の空気の温度が急激に上昇する。
次に、上記のように構成された内燃機関10の作動について説明する。この内燃機関10の電気制御装置70は、図6に示したように、所定のタイミングにて、吸気弁駆動機構32a、排気弁駆動機構34a及び燃料噴射弁35をそれぞれ作動させて内燃機関10の運転を行う。即ち、電気制御装置70は、自着火運転実行手段を構成している。
先ず、電気制御装置70は、排気弁駆動機構34aを駆動させることにより、内燃機関10の負荷に応じた排気弁開弁タイミングEOにて排気弁34を開弁させる((1)を参照。)。これにより、前回の燃焼サイクルにおける燃焼により生成された燃焼ガスの排気が開始する。次いで、電気制御装置70は、排気弁駆動機構34aを駆動させることにより、内燃機関10の負荷に応じた排気弁閉弁タイミングECにて排気弁34を閉弁させる((2)を参照。)。これにより、排気が終了する。
その後、電気制御装置70は、吸気弁駆動機構32aを駆動させることにより、内燃機関10の負荷に応じた吸気弁開弁タイミングIOにて吸気弁32を開弁させる((3)を参照。)。これにより、吸気が開始する。このように、排気が終了した時点から吸気が開始する時点までの期間である負のオーバーラップ期間が設けられている。この結果、燃焼室25内に燃焼ガスが残留する。
そして、電気制御装置70は、燃料噴射弁35を開弁させることにより、吸気弁開弁タイミングIOから後述する吸気弁閉弁タイミングICまでの吸気行程の初期及び/又は中期のタイミングθinjにて燃料を噴射させる((4)を参照。)。このとき噴射される燃料の量は、燃焼室25内の混合ガスの空燃比を極めてリーンな空燃比(超希薄空燃比)とするように、内燃機関10の負荷とエンジン回転速度NEとに基づいて定められる量である。噴射された燃料は、燃焼室25内に吸入される空気の流れにより同燃焼室25にて拡散する。
次に、電気制御装置70は、吸気弁駆動機構32aを駆動させることにより、内燃機関10の負荷に応じた吸気弁閉弁タイミングICにて吸気弁32を閉弁させる((5)を参照。)。これにより、吸気が終了するとともに空気と燃料と燃焼ガスとからなる混合ガスの圧縮(圧縮行程)が開始する。この時点においては、区画用弁36は下方に押し下げられている。従って、区画用弁36の傘部36cは、凹部30aの開口部の縁部と離間している。従って、燃焼室25は1つの空間を構成している。
その後、クランク角がBTDC30°となると、区画用弁36がカム機構37により駆動され、区画用弁36により凹部30aの開口部が閉じられる((6)を参照。)。即ち、燃焼室25を構成する1つの空間は、ピストン22の頂面に接しないピストン非隣接空間25aとピストン22の頂面に接するピストン隣接空間25bとからなる独立した2つの密閉空間に区画される。
そして、ピストン22が上死点位置に近づくと、ピストン非隣接空間25a内の混合ガスの圧力が燃焼室25が区画された時点の同圧力から変化しないのに対して、ピストン隣接空間25b内の混合ガスの圧力は急激に上昇する。これにより、ピストン隣接空間25b内の混合ガスの温度は急激に上昇する。その結果、ピストン隣接空間25b内の混合ガスは自着火して燃焼を開始する。
このように、本内燃機関10によれば、区画用弁36を駆動することにより、ピストン隣接空間25b内の混合ガスの温度が急激に上昇させられるので、燃焼室25内に形成された混合ガスの温度が変動しても、混合ガスの温度が所定の温度(混合ガスが自着火されるために必要な温度)に到達するタイミングが大きく変動することを防止することができる。即ち、混合ガスが自着火されるタイミングの範囲は、燃焼室25を区画しない従来技術の場合と比較して、狭くなる(図5を参照。)。
次いで、クランク角がATDC10°となると、区画用弁36がカム機構37により駆動され、区画用弁36により凹部30aの開口部が開かれる((7)を参照。)。この結果、ピストン隣接空間25bにて混合ガスが自着火して燃焼を開始した直後のタイミングにて、ピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとが連通させられる。
これにより、ピストン隣接空間25b内における燃焼により生成された燃焼ガスがピストン非隣接空間25aにて未燃であった混合ガス(未燃混合ガス)を圧縮する。更に、燃焼ガスと、未燃混合ガスと、が混合する。この結果、同未燃混合ガスが加熱されるので、同未燃混合ガスを自着火させて燃焼させることができる。このようにして、混合ガスの温度が変動しても燃焼室25内のすべての混合ガスを適切なタイミングにて確実に自着火させて燃焼させることができる。更に、燃焼室内の混合ガスのすべてを副次的に圧縮する上記従来技術と比較して混合ガスが自着火するタイミングを制御するために区画用弁36が駆動されるだけであるので、消費されるエネルギーを小さくすることができる。
このようにして、内燃機関10は予混合圧縮自着火方式により運転される。
図7の三角のプロットは、上記内燃機関10の基本圧縮比が12となるように構成されるとともに、実圧縮比が16となるように構成された場合であって、上述したような運転がなされる場合における圧縮初期温度に対する自着火タイミングの変化を示している。
基本圧縮比は、凹部30aの開口部が開かれたまま区画用弁36が移動しないと仮定した場合における燃焼室25の容積の最小値に対する最大値の比である。実圧縮比は、区画用弁36により凹部30aの開口部が閉じられる時点における燃焼室25の容積(ピストン非隣接空間25aの容積+ピストン隣接空間25bの容積)に対する燃焼室25の容積の最大値の比と、ピストン隣接空間25bの容積の最小値に対する最大値(区画用弁36により凹部30aの開口部が閉じられる時点におけるピストン隣接空間25bの容積)の比と、の積である。
圧縮初期温度は、吸気弁32及び排気弁34が閉弁して燃焼室25内の混合ガスをピストン22により圧縮する圧縮行程が開始する時点における同混合ガスの温度である。自着火タイミングは、ピストン隣接空間25b(燃焼室が区画されない場合には燃焼室)にて混合ガスが自着火されるタイミングである。
ひし形のプロットは、圧縮比(燃焼室の容積の最小値に対する最大値の比)が12となるように構成された内燃機関であって、燃焼室が区画されない内燃機関が予混合圧縮自着火方式により運転される場合の上記変化を示している。正方形のプロットは、圧縮比が16となるように構成された内燃機関であって、燃焼室が区画されない内燃機関が予混合圧縮自着火方式により運転される場合の上記変化を示している。
圧縮初期温度が450Kから500Kまでの温度である範囲に着目すると、ひし形及び正方形のプロットにより示された燃焼室が区画されない内燃機関の場合と比較して、三角形のプロットにより示された上記内燃機関10における圧縮初期温度に対する自着火タイミングの変動量は小さい。即ち、本実施形態に係る内燃機関10によれば、混合ガスの温度が変動しても、燃焼室が区画されない場合と比較して、適切なタイミングにて混合ガスを確実に自着火させて燃焼させることができることが理解される。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の第1実施形態は、圧縮行程において燃焼室25を1つの空間からピストン22の頂面に接しないピストン非隣接空間25aと、ピストンの頂面に接するピストン隣接空間25bと、からなる独立した2つの密閉空間に区画する。これにより、ピストン隣接空間内25bの混合ガスは、ピストンが上死点位置に近づくと、燃焼室25が区画されない場合と比較して、より大きく圧縮される。従って、燃焼室25が2つの空間に区画された後、時間が経過するにつれてピストン隣接空間25b内の混合ガスの温度は急激に上昇する。
これにより、燃焼室25が2つの空間に区画されてから所定の時間が経過したタイミングにて同混合ガスは自着火して燃焼を開始する。その直後に、上記第1実施形態は、ピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとを連通させる。これにより、ピストン隣接空間25b内における燃焼により生成された燃焼ガスがピストン非隣接空間25aにて未燃であった混合ガスを圧縮及び混合により加熱し、同混合ガスを自着火させて燃焼させる。この結果、混合ガスの温度が変動しても燃焼室25内のすべての混合ガスを適切なタイミングにて確実に自着火させて燃焼させることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関について説明する。第2実施形態に係る内燃機関は、区画用弁36の排気弁34側の外周部と凹部30aの開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するマスク部材を備えている点において第1実施形態に係る内燃機関と相違している。以下、かかる相違点を中心として説明する。
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関について説明する。第2実施形態に係る内燃機関は、区画用弁36の排気弁34側の外周部と凹部30aの開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するマスク部材を備えている点において第1実施形態に係る内燃機関と相違している。以下、かかる相違点を中心として説明する。
この内燃機関10は、シリンダヘッド部30の下面を燃焼室25側から見た図8に示したように、マスク部材81を備えている。
マスク部材81は、正面視において、凹部30aの開口部の径と同径の内径を有する半円環状の部材である。マスク部材81は、中心が凹部30aの中心軸と一致するように、排気弁34側の凹部30aの開口部の外周にてシリンダヘッド部30の下面に配設・固定されている。マスク部材81は、図9に示したように、端部から中央部へ向かうにつれて凹部30aの中心軸方向の厚みが大きくなるとともに、中央部の厚みが区画用弁36の軸方向の移動距離の半分となるように形成されている。
このような構成により、区画用弁36が凹部30aの開口部を閉じているときの区画用弁36の位置からの同区画用弁36の移動距離が所定の距離(移動距離の最大値の半分)より小さいとき、区画用弁36の排気弁34側の外縁部は、マスク部材81の内壁と当接している。従って、区画用弁36の排気弁34側においては、凹部30a内と凹部30a外との間のガスの流れは実質的に遮断される(図9の(B)を参照。)。一方、上記移動距離が上記所定の距離より大きいとき、同外縁部は、マスク部材81の内壁と離間している。従って、区画用弁36の排気弁34側においても、凹部30a内と凹部30a外との間のガスの流れが許容される(図9の(C)を参照。)。
次に、上記のように構成された内燃機関10の作動について説明する。この内燃機関10の電気制御装置70は、上記第1実施形態と同様に、吸気弁駆動機構32a、排気弁駆動機構34a及び燃料噴射弁35を所定のタイミングにて作動させる(図6を参照。)。これにより、吸気弁32が閉弁される時点((5)を参照。)にて、燃焼室25内に空気と燃料と燃焼ガスとからなる混合ガスが形成される。
次いで、ピストン22が上死点位置に向けて移動するにつれて、混合ガスが圧縮される。そして、クランク角がBTDC30°となると、上述したように、区画用弁36がカム機構37により駆動され、区画用弁36により凹部30aの開口部が閉じられる((6)を参照。)。これにより、ピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとからなる独立した2つの密閉空間が形成される。
そして、ピストン22が上死点位置に近づくと、上述したように、ピストン隣接空間25b内の混合ガスの温度が急激に上昇し、同混合ガスは自着火して燃焼を開始する。その後、クランク角がATDC10°となると、区画用弁36がカム機構37により駆動され、区画用弁36は下方(ピストン22の頂面側)に向けて移動させられる((7)を参照。)。
区画用弁36により凹部30aの開口部が開かれ始めると、ピストン隣接空間25b内における燃焼により生成された燃焼ガスが凹部30a内に流入し始める。この時点においては、区画用弁36の移動距離が上記所定の距離より小さい。従って、区画用弁36の排気弁34側にてガスの流れは遮断されている(図9の(B)を参照。)。即ち、区画用弁36の吸気弁32側からのみ、燃焼ガスが流入する。
従って、燃焼ガスが凹部30a外から凹部30a内へ流入する際のガス流れによる抵抗力の大きさを決定する有効面積は、マスク部材81を備えない場合と比較して小さくなる。これにより、燃焼ガスが凹部30a外から凹部30a内へと流れることにより区画用弁36の表面に生じるガス流れによる抵抗力は、マスク部材81を備えない場合と比較して小さくなる。この結果、区画用弁36を駆動するために必要とされる最大駆動力を小さくすることができる。
更に、区画用弁36の排気弁34側にてガスの流れが遮断されているために、区画用弁36の吸気弁32側の外周部から排気弁34側の外周部へ向かうガスの流れが凹部30a内に形成される(図9の(B)を参照。)。
次に、区画用弁36が更に下方に移動すると、区画用弁36の移動距離が上記所定の距離より大きくなる。従って、区画用弁36の排気弁34側においても、凹部30a内と凹部30a外との間のガスの流れが許容される。この時点においては、凹部30a内と凹部30a外との間の圧力の差は十分に小さくなっている。従って、既に形成されていたガスの流れによって区画用弁36の吸気弁32側の外周部からガスが凹部30a内に流入し、区画用弁36の排気弁34側の外周部から同ガスが凹部30a外へ流出するガスの流れが形成される。この結果、凹部30a内のガスを十分に排出することができる。
加えて、ピストン非隣接空間25aにて未燃であった混合ガスは、ピストン隣接空間25b内における燃焼により生成された燃焼ガスによる圧縮及び混合により加熱されるので、同混合ガスは自着火して燃焼する。この結果、混合ガスの温度が変動しても燃焼室25内のすべての混合ガスを適切なタイミングにて確実に自着火させて燃焼させることができる。更に、燃焼室内の混合ガスのすべてを副次的に圧縮する上記従来技術と比較して混合ガスが自着火するタイミングを制御するために区画用弁36が駆動されるだけであるので、消費されるエネルギーを小さくすることができる。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の第2実施形態は、区画用弁36の排気弁34側の外周部と凹部30aの開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するマスク部材81を備える。これによれば、区画用弁36により凹部30aの開口部が開かれ始めてから区画用弁36の移動距離が所定の距離となるまでの間は、マスク部材81によりガスの流れが遮断され、区画用弁36の吸気弁32側の外周部(外周部の一部)から排気弁34側の外周部(外周部の残余の部分)へ向かうガスの流れが凹部30a内に形成される。
その後、区画用弁36の移動距離が上記所定の距離より大きくなると、区画用弁36の排気弁34側の外周部と凹部30aの開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れが許容される。これにより、上記形成されたガスの流れによって区画用弁36の吸気弁32側の外周部からガスが凹部30a内に流入し、排気弁34側の外周部から同ガスが凹部30a外へ流出するガスの流れが形成される。この結果、凹部30a内のガスを十分に排出することができる。
(第2実施形態の変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。この変形例は、図10に示したように、第2実施形態のマスク部材81に代わるマスク部材82が区画用弁36の傘部36cの上面に配設・固定されている点のみにおいて第2実施形態と相違している。従って、以下かかる相違点について説明する。
次に、第2実施形態の変形例について説明する。この変形例は、図10に示したように、第2実施形態のマスク部材81に代わるマスク部材82が区画用弁36の傘部36cの上面に配設・固定されている点のみにおいて第2実施形態と相違している。従って、以下かかる相違点について説明する。
マスク部材82は、正面視において、凹部30aを形成する側壁面の径と同径の外径を有する半円環状の部材である。マスク部材82は、中心が凹部30aの中心軸と一致するように、排気弁34側の区画用弁36の傘部36cの上面に配設・固定されている。マスク部材82は、図10に示したように、端部から中央部へ向かうにつれて凹部30aの中心軸方向の厚みが大きくなるとともに、中央部の厚みが区画用弁36の軸方向の移動距離の半分となるように形成されている。
このような構成により、区画用弁36が凹部30aの開口部を閉じているときの区画用弁36の位置からの同区画用弁36の移動距離が所定の距離(移動距離の最大値の半分)より小さいとき、マスク部材82の外壁は、凹部30aを形成する側壁面と当接している。従って、区画用弁36の排気弁34側においては、凹部30a内と凹部30a外との間のガスの流れは遮断される(図10の(B)を参照。)。一方、上記移動距離が上記所定の距離より大きいとき、同外壁は、凹部30aを形成する側壁面と離間している。従って、区画用弁36の排気弁34側においても、凹部30a内と凹部30a外との間のガスの流れが許容される(図10の(C)を参照。)。
これによれば、上記第2実施形態と同様に、区画用弁36の吸気弁32側の外周部(外周部の一部)から排気弁34側の外周部(外周部の残余の部分)へ向かうガスの流れが凹部30a内に形成される。この結果、凹部30a内のガスを十分に排出することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関について説明する。第3実施形態に係る内燃機関10は、区画用弁36が凹部内に向けて(上方に)移動することにより凹部の開口部が開かれるように構成されている点及び区画用弁36の排気弁34側の外周部と凹部の開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するマスク部材を備えている点において第1実施形態に係る内燃機関10と相違している。以下、かかる相違点を中心として説明する。
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関について説明する。第3実施形態に係る内燃機関10は、区画用弁36が凹部内に向けて(上方に)移動することにより凹部の開口部が開かれるように構成されている点及び区画用弁36の排気弁34側の外周部と凹部の開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するマスク部材を備えている点において第1実施形態に係る内燃機関10と相違している。以下、かかる相違点を中心として説明する。
この内燃機関10が備えるシリンダヘッド部30には、図11に示したように、第1実施形態の凹部30aに代わる凹部83が形成されている。凹部83は、シリンダ21の中心軸と同軸の小径円筒状空間及び大径円筒状空間からなる。小径円筒状空間を形成する側壁面の下端部は、シリンダヘッド部30の下面に開口している。小径円筒状空間の上部は、大径円筒状空間と連接している。
更に、この内燃機関10が備える区画用弁36は、第1実施形態の傘部36cに代わる傘部84を備えている。傘部84は、頂部と底面とを有する略円錐状の部材である。傘部84の底面の径は、凹部83の開口部の径(小径円筒状空間を形成する側壁面の下端部の径)と略同じである。傘部84は、柄部36aの中心軸と同軸となるとともに、傘部84の頂部が柄部36aの下端部と接するように柄部36aの下端部に固定されている。
また、この内燃機関10が備えるカム機構37は、第1実施形態のカム37に代わるカム85を備えている。カム85は、カムシャフト37aと連結されていて、カムシャフト37aと一体となって回転するようになっている。カム85のプロファイル(カム37bの回転軸に直交する平面によるカム85の断面の形状)は、円形のベースサークル部と、カム山部と、からなる形状である。
カム85のカム山部は、ベースサークル部の外縁部のうちの所定の位置(本例では、約20°の中心角を有する円弧部)にて、カム85の回転軸に対して径方向に突出している。カム85の回転軸は、ベースサークル部の中心を通るように配置されている。
このような構成により、クランク角がBTDC30°からATDC10°まで変化する期間(クランク軸24が40°(カム85が20°)回転する期間)においては、カム85のカム山部の頂部が区画用弁36の柄部36aの上端部と当接する。従って、この期間において、カム機構37は区画用弁36を下方に押し下げる。これにより、区画用弁36の傘部84が、凹部83の小径円筒状空間を形成する側壁面に当接し、凹部83の開口部が区画用弁36により閉じられる。即ち、燃焼室25を構成する1つの空間は、ピストン22の頂面に接しないピストン非隣接空間25aとピストン22の頂面に接するピストン隣接空間25bとからなる独立した2つの密閉空間に区画される。
一方、クランク角がATDC10°からBTDC30°まで変化する期間(クランク軸24が680°(カム85が340°)回転する期間)においては、カム85のベースサークル部が区画用弁36の柄部36aの上端部と当接する。従って、この期間において、区画用弁36はスプリングSGにより上方に引き戻され、凹部83内に向けて(上方に)移動する。これにより、区画用弁36の傘部84が、凹部83の小径円筒状空間を形成する側壁面から離間し、凹部83の開口部が区画用弁36により開かれる。即ち、燃焼室25は1つの空間を構成する。
このようにして、カム機構37により、クランク角がTDCとなる前の所定のタイミングにてピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとからなる2つの密閉空間を形成するように区画用弁36が駆動されるとともに、クランク角がTDCとなった直後のタイミングにてピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとが連通した1つの空間を形成するように区画用弁36が駆動される。
加えて、この内燃機関10は、マスク部材86を備えている。
マスク部材86は、正面視において、凹部83の小径円筒状空間を形成する側壁面の上端部の径と同径の内径と、凹部83の大径円筒状空間を形成する側壁面と同径の外径と、を有する半円環状の部材である。マスク部材86は、中心が凹部83の中心軸と一致するように、凹部83の大径円筒状空間を形成する底面の排気弁34側に配設・固定されている。マスク部材86は、図12に示したように、端部から中央部へ向かうにつれて凹部83の中心軸方向の厚みが大きくなるとともに、中央部の厚みが区画用弁36の軸方向の移動距離の半分となるように形成されている。
このような構成により、区画用弁36が凹部83の開口部を閉じているときの区画用弁36の位置からの同区画用弁36の移動距離が所定の距離(移動距離の最大値の半分)より小さいとき、区画用弁36の排気弁34側の外縁部は、マスク部材86の内壁と当接している。従って、区画用弁36の排気弁34側においては、凹部83内と凹部83外との間のガスの流れは遮断される(図12の(B)を参照。)。一方、上記移動距離が上記所定の距離より大きいとき、同外縁部は、マスク部材86の内壁と離間している。従って、区画用弁36の排気弁34側においても、凹部83内と凹部83外との間のガスの流れが許容される(図12の(C)を参照。)。
次に、上記のように構成された内燃機関10の作動について説明する。この内燃機関10の電気制御装置70は、上記第1実施形態と同様に、吸気弁駆動機構32a、排気弁駆動機構34a及び燃料噴射弁35を所定のタイミングにて作動させる(図6を参照。)。これにより、吸気弁32が閉弁される時点((5)を参照。)にて、燃焼室25内に空気と燃料と燃焼ガスとからなる混合ガスが形成される。
次いで、ピストン22が上死点位置に向けて移動するにつれて、混合ガスが圧縮される。そして、クランク角がBTDC30°となると、上述したように、区画用弁36がカム機構37により駆動され、区画用弁36により凹部83の開口部が閉じられる((6)を参照。)。これにより、ピストン非隣接空間25aとピストン隣接空間25bとからなる独立した2つの密閉空間が形成される。
そして、ピストン22が上死点位置に近づくと、上述したように、ピストン隣接空間25b内の混合ガスの温度が急激に上昇し、同混合ガスは自着火して燃焼を開始する。その後、クランク角がATDC10°となると、区画用弁36がカム機構37により駆動され、区画用弁36は上方に向けて移動させられる((7)を参照。)。
上述したように、混合ガスは、ピストン非隣接空間25aより先にピストン隣接空間25bにて自着火して燃焼を開始する。従って、同混合ガスが燃焼を開始した直後の時点においては、ピストン隣接空間25bにおける燃焼により生成されたガスの圧力により、区画用弁36はピストン隣接空間25b(凹部83外)からピストン非隣接空間25a(凹部83内)に向けて押されている。
従って、凹部83内に向けて区画用弁36を移動させることにより凹部83の開口部を開くことにより、区画用弁36を駆動するための力を小さくすることができる。この結果、区画用弁36を駆動するために消費されるエネルギーを小さくすることができる。
区画用弁36により凹部83の開口部が開かれ始めると、ピストン隣接空間25b内における燃焼により生成された燃焼ガスが凹部83内に流入し始める。この時点においては、区画用弁36の移動距離が上記所定の距離より小さい。従って、上記第2実施形態と同様に、区画用弁36の排気弁34側にてガスの流れは遮断されている(図12の(B)を参照。)。即ち、区画用弁36の吸気弁32側からのみ、燃焼ガスが流入する。
従って、区画用弁36の排気弁34側にてガスの流れが遮断されているために、区画用弁36の吸気弁32側の外周部から排気弁34側の外周部へ向かうガスの流れが凹部83内に形成される(図12の(B)を参照。)。
次に、区画用弁36が更に上方に移動すると、区画用弁36の移動距離が上記所定の距離より大きくなる。従って、区画用弁36の排気弁34側においても、凹部83内と凹部83外との間のガスの流れが許容される。この時点においては、凹部83内と凹部83外との間の圧力の差は十分に小さくなっている。従って、既に形成されていたガスの流れによって区画用弁36の吸気弁32側の外周部からガスが凹部83内に流入し、区画用弁36の排気弁34側の外周部からガスが凹部83外へ流出するガスの流れが形成される。この結果、凹部83内のガスを十分に排出することができる。
加えて、ピストン非隣接空間25aにて未燃であった混合ガス(未燃混合ガス)は、ピストン隣接空間25b内における燃焼により生成された燃焼ガスにより圧縮される。更に、同未燃混合ガスと、同燃焼ガスと、は混合する。これにより、同未燃混合ガスが加熱されるので、同未燃混合ガスは自着火して燃焼する。この結果、混合ガスの温度が変動しても燃焼室25内のすべての混合ガスを適切なタイミングにて確実に自着火させて燃焼させることができる。更に、燃焼室内の混合ガスのすべてを副次的に圧縮する上記従来技術と比較して混合ガスが自着火するタイミングを制御するために区画用弁36が駆動されるだけであるので、消費されるエネルギーを小さくすることができる。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の第3実施形態は、凹部83内に向けて区画用弁36を移動することにより凹部83の開口部を開くように構成されている。これにより、区画用弁36を駆動するための力を小さくすることができる。この結果、区画用弁36を駆動するために消費されるエネルギーを小さくすることができる。
(第3実施形態の変形例)
次に、第3実施形態の変形例について説明する。この変形例は、図13に示したように、第3実施形態のマスク部材86に代わるマスク部材87が区画用弁36の傘部84の下面に配設・固定されている点のみにおいて第3実施形態と相違している。従って、以下かかる相違点について説明する。
次に、第3実施形態の変形例について説明する。この変形例は、図13に示したように、第3実施形態のマスク部材86に代わるマスク部材87が区画用弁36の傘部84の下面に配設・固定されている点のみにおいて第3実施形態と相違している。従って、以下かかる相違点について説明する。
マスク部材87は、正面視において、凹部83の小径円筒状空間を形成する側壁面の下端部の径と同径の外径を有する半円環状の部材である。マスク部材87は、中心が凹部83の中心軸と一致するように、排気弁34側の区画用弁36の傘部84の下面に配設・固定されている。マスク部材87は、図13に示したように、端部から中央部へ向かうにつれて凹部83の中心軸方向の厚みが大きくなるとともに、中央部の厚みが区画用弁36の軸方向の移動距離の半分となるように形成されている。
このような構成により、区画用弁36が凹部83の開口部を閉じているときの区画用弁36の位置からの同区画用弁36の移動距離が所定の距離(移動距離の最大値の半分)より小さいとき、マスク部材87の外壁は、凹部83の小径円筒状空間を形成する側壁面と当接している。従って、区画用弁36の排気弁34側においては、凹部83内と凹部83外との間のガスの流れは遮断される(図13の(B)を参照。)。一方、上記移動距離が上記所定の距離より大きいとき、同外壁は、同側壁面と離間している。従って、区画用弁36の排気弁34側においても、凹部83内と凹部83外との間のガスの流れが許容される(図13の(C)を参照。)。
これによれば、上記第3実施形態と同様に、区画用弁36の吸気弁32側の外周部(外周部の一部)から排気弁34側の外周部(外周部の残余の部分)へ向かうガスの流れが凹部83内に形成される。この結果、凹部83内のガスを十分に排出することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る内燃機関について説明する。第4実施形態に係る内燃機関は、凹部30aの開口部、吸気ポート31に連通する開口部及び排気ポート33に連通する開口部が異なる態様により配置されたシリンダヘッド部を備える点において上記各実施形態に係る内燃機関と相違している。以下、かかる相違点を中心として説明する。
次に、本発明の第4実施形態に係る内燃機関について説明する。第4実施形態に係る内燃機関は、凹部30aの開口部、吸気ポート31に連通する開口部及び排気ポート33に連通する開口部が異なる態様により配置されたシリンダヘッド部を備える点において上記各実施形態に係る内燃機関と相違している。以下、かかる相違点を中心として説明する。
この内燃機関10は、上記各実施形態におけるシリンダヘッド部30に代わるシリンダヘッド部101を備えている。シリンダヘッド部101の下面を燃焼室25側から見た図14に示したように、シリンダヘッド部101の下面には、ピストン22の頂面に向けて開口した開口部を有する凹部30aが形成されている。凹部30aは、シリンダ21の中心軸と平行な軸を中心軸とする円筒形である。凹部30aの開口部は、シリンダヘッド部101の下面内の位置であってシリンダ21のボアの周部に沿う位置に配置されている。
シリンダヘッド部101には、2つの吸気ポート31と、1つの排気ポート102と、が形成されている。
吸気ポート31は、シリンダヘッド部101の下面内の2箇所に円形の開口部を有するように形成されている。吸気ポート31の開口部は、シリンダ21のボアの周部に沿い且つ凹部30aの開口部に連なる位置に配置されている。シリンダヘッド部101には2個の吸気弁32が備えられている。各吸気弁32は、各吸気ポート31の開口部を開閉するようになっている。吸気ポート31は、その開口部が吸気弁32により開かれたとき燃焼室25と連通し、その開口部が吸気弁32により閉じられたとき燃焼室25と遮断せしめられるようになっている。
排気ポート102は、シリンダヘッド部101の下面内の1箇所に吸気ポート31の開口部より大径の円形の開口部を有するように形成されている。排気ポート102の開口部は、シリンダヘッド部101の下面の残余の部分に配置されている。シリンダヘッド部101には1個の排気弁103が備えられている。排気弁103は、排気ポート102の開口部を開閉するようになっている。排気ポート102は、その開口部が排気弁103により開かれたとき燃焼室25と連通し、その開口部が排気弁103により閉じられたとき燃焼室25と遮断せしめられるようになっている。
このような構成により、吸気ポート31に連通する2つの開口部と、凹部30aの開口部と、からなる3つの開口部のうちの1つがピストン22の中央部に対向する位置に形成された場合と比較して、排気ポート102に連通する開口部の面積を大きくすることができる。この結果、排気抵抗を小さくすることができるので、燃費を良好にすることができる。
このように、本発明による内燃機関の第4実施形態は、吸気ポート31に連通する2つの開口部と、凹部30aの開口部と、からなる3つの円形の開口部がシリンダヘッド部101の下面内の位置であってシリンダ21のボアの周部に沿い且つ連なる位置にて同シリンダヘッド部101の下面に形成されてなる。更に、上記第4実施形態は、シリンダヘッド部101の下面の残余の部分に排気ポート102に連通する円形の開口部が形成されてなる。これにより、排気ポート102に連通する開口部の面積を大きくすることができる。この結果、排気抵抗を小さくすることができるので、燃費を良好にすることができる。
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る内燃機関によれば、所定のタイミングにて区画用弁36により凹部の開口部を開閉することによって、自着火タイミングを適切なタイミングに制御することができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各実施形態における過給機91はターボチャージャであったが、機械式過給機(スーパーチャージャ)であってもよい。
また、上記各実施形態は、カム機構37により区画用弁36を駆動していたが、電磁式機構又は油圧式機構を備え同機構により区画用弁36を駆動してもよい。
更に、上記各実施形態は、内燃機関の負荷及びエンジン回転速度に応じて、予混合圧縮自着火方式による運転と点火プラグが発生する火花により混合ガスを点火して燃焼させる火花点火方式による運転とを切り替えて行うように構成されていてもよい。
10…内燃機関、20…シリンダブロック部、21…シリンダ、22…ピストン、23…コンロッド、24…クランク軸、25…燃焼室、25a…ピストン非隣接空間、25b…ピストン隣接空間、30…シリンダヘッド部、30a…凹部、31…吸気ポート、32…吸気弁、32a…吸気弁駆動機構、33…排気ポート、34…排気弁、34a…排気弁駆動機構、35…燃料噴射弁、36…区画用弁、36a…柄部、36b…つば部、36c…傘部、37…カム機構、37a…カムシャフト、37b…カム、38…駆動回路、61…クランクポジションセンサ、62…アクセル開度センサ、70…電気制御装置、81,82…マスク部材、83…凹部、84…傘部、85…カム、86,87…マスク部材、101…シリンダヘッド部、102…排気ポート、103…排気弁、SG…スプリング、SP…スプリング収容空間。
Claims (7)
- シリンダボアが形成されたシリンダブロックと、前記シリンダブロックの上部に配置されたシリンダヘッドと、前記シリンダボア内において往復動するピストンと、を備え、少なくとも前記シリンダボアの壁面と前記シリンダヘッドの下面と前記ピストンの頂面とにより構成される燃焼室にて混合ガスを形成し形成された混合ガスをピストンが圧縮することにより自着火させて燃焼させる予混合圧縮自着火方式による運転を行う内燃機関であって、
前記燃焼室内にて移動することにより同燃焼室を1つの空間から前記ピストンの頂面に接しないピストン非隣接空間と前記ピストンの頂面に接するピストン隣接空間とからなる独立した2つの密閉空間に区画する区画手段と、
圧縮行程において前記ピストン非隣接空間と前記ピストン隣接空間とからなる前記2つの密閉空間を形成するように前記区画手段を駆動するとともに、同ピストン隣接空間にて混合ガスが自着火して燃焼を開始した直後に同ピストン非隣接空間と同ピストン隣接空間とが連通した前記1つの空間を形成するように同区画手段を駆動する駆動手段と、
を備える内燃機関。 - 請求項1に記載の内燃機関において、
前記シリンダヘッドの下面は、前記ピストンの頂面に向けて開口した開口部を有する凹部を含むように形成され、
前記区画手段は、前記凹部の開口部を開閉する区画用弁である内燃機関。 - 請求項2に記載の内燃機関であって、
前記区画用弁は、前記凹部の開口部を形成している面に対して垂直方向に移動することにより同開口部を開閉するように構成され、
前記区画用弁が前記凹部の開口部を閉じているときの同区画用弁の位置からの同区画用弁の移動距離が所定の距離より小さいとき、同区画用弁の外周部の一部から同外周部の残余の部分へ向かうガスの流れを同凹部内に形成するように、同残余の部分と同開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するとともに、同移動距離が同所定の距離より大きいとき、同空隙を通過するガスの流れを許容するように構成されたマスク部材を備えた内燃機関。 - 請求項2又は請求項3に記載の内燃機関において、
前記区画用弁は、前記凹部内に向けて移動することにより同凹部の開口部を開くように構成された内燃機関。 - 請求項2に記載の内燃機関であって、
前記区画用弁は、前記凹部の開口部を形成している面に対して垂直方向にて前記ピストンの頂面に向けて移動することにより同開口部を開くとともに、同垂直方向にて同凹部に向けて移動することにより同開口部を閉じるように構成され、
前記区画用弁が前記凹部の開口部を閉じているときの同区画用弁の位置からの同区画用弁の移動距離が所定の距離より小さいとき、同区画用弁の外周部の一部から同外周部の残余の部分へ向かうガスの流れを同凹部内に形成するように、同残余の部分と同開口部の縁部との間に形成される空隙を通過するガスの流れを遮断するとともに、同移動距離が同所定の距離より大きいとき、同空隙を通過するガスの流れを許容するように構成されたマスク部材を備えた内燃機関。 - 請求項2乃至請求項5に記載の内燃機関において、
前記凹部の開口部は、前記シリンダヘッドの下面内の位置であって前記ピストンの中央部に対向する位置にて同シリンダヘッドの下面に形成された内燃機関。 - 請求項2乃至請求項5に記載の内燃機関において、
前記凹部の開口部は円形であり、
2つの吸気ポートの各々に連通する2つの円形の開口部と、前記凹部の開口部と、が前記燃焼室を構成する前記シリンダヘッドの下面内の位置であって前記シリンダボアの周部に沿い且つ連なる位置にて同シリンダヘッドの下面に形成され、
1つの排気ポートに連通する1つの円形の開口部が前記燃焼室を構成する前記シリンダヘッドの下面の残余の部分にて同シリンダヘッドの下面に形成された内燃機関。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005174699A JP2006348809A (ja) | 2005-06-15 | 2005-06-15 | 内燃機関 |
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JP2005174699A Withdrawn JP2006348809A (ja) | 2005-06-15 | 2005-06-15 | 内燃機関 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010065639A (ja) * | 2008-09-12 | 2010-03-25 | Koichi Hatamura | 予混合圧縮着火エンジン |
JP2010523890A (ja) * | 2007-04-10 | 2010-07-15 | ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー | 内燃機関における燃焼を開始させる方法および該方法を適用する機関 |
KR101416392B1 (ko) * | 2012-12-17 | 2014-07-08 | 현대자동차 주식회사 | 자동차의 실린더헤드 |
-
2005
- 2005-06-15 JP JP2005174699A patent/JP2006348809A/ja not_active Withdrawn
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