JP2006331786A - 燃料電池用電極材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 燃料電池のガス拡散層として好適な導電性を有するとともに高い通気性及び排水性を実現した電極材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 燃料電池のガス拡散層の主体を成す多孔質炭素基材6を用意する。この炭素基材6に撥水化材料5を付与し、炭素基材6の少なくとも表面の一部を撥水化する。その後、炭素基材6の少なくとも撥水化された一部において、炭素基材6の触媒層配置面6a及び/又はその反対面6bから厚み方向に複数の貫通孔を形成する。このようにして、燃料電池のガス拡散層として用いられる電極材料4を得る。
【選択図】 図1
【解決手段】 燃料電池のガス拡散層の主体を成す多孔質炭素基材6を用意する。この炭素基材6に撥水化材料5を付与し、炭素基材6の少なくとも表面の一部を撥水化する。その後、炭素基材6の少なくとも撥水化された一部において、炭素基材6の触媒層配置面6a及び/又はその反対面6bから厚み方向に複数の貫通孔を形成する。このようにして、燃料電池のガス拡散層として用いられる電極材料4を得る。
【選択図】 図1
Description
本発明は、燃料電池用電極材料とその製造方法に関する。詳しくは、燃料電池においてガス拡散層を構成する炭素繊維を主体とする電極材料に関する。
いわゆる固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell;PEFC)やリン酸型燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell;PAFC)の最小構成単位(単セル)は、高分子電解質膜を挟んでその両側にそれぞれ燃料極(アノード)及び空気極(カソード)が配置されて構成される。燃料極及び空気極は、それぞれ、高分子電解質膜に接する触媒層と、該触媒層の外面側に配置された通気性及び導電性を有するガス拡散層とを備えている。かかる構成の電解質膜/電極接合体(Membrane electrode assembly;MEA)の外側には、集電、反応ガスの供給、単セル間における反応ガスの隔離等を目的に、導電性部材から成るセパレータが配置される。
この種の燃料電池の性能を左右する要因の一つとして、ガス拡散層における導電性と通気性及び排水性とのバランスが挙げられる。即ち、ガス拡散層では、触媒層との接触面積を良好に保つことによって高い集電効率(即ち導電性)を維持する必要がある。その一方で、外部から電極に導入された反応ガス(アノード側における水素ガス、カソード側における空気等)を拡散させつつ触媒層に効率よく供給し得る通気性(多孔性)が要求される。また、電極(特にカソード側)において、過剰な水がガス拡散層に堆積しないように良好な排水性が求められる。
このことに関して、例えば特許文献1には、ガス拡散層として使用する炭素電極基材であって機械的強度及び柔軟性とともに良好な通気性(ガス透過性)を実現するように開発された炭素繊維を主体とする電極基材が記載されている。また、特許文献2には、ガス拡散層を構成する多孔質炭素基材(カーボン不織布)に、撥水化材料(典型的にはポリテトラフルオロエチレン等の撥水性のよいポリマーと導電性カーボン粉末とを含む。)を溶媒に分散させて成るペースト(インク)状の撥水層形成用材料を塗布し、適当な処理(典型的には加熱処理)を施すことによって、少なくとも炭素基材表面が撥水化された(即ち撥水層が形成された)従来の一般的なガス拡散層が記載されている。なお、ガス拡散層に直接関連するものではないが、燃料電池の電極の通気性に関するその他の従来技術として例えば特許文献3が挙げられる。
このことに関して、例えば特許文献1には、ガス拡散層として使用する炭素電極基材であって機械的強度及び柔軟性とともに良好な通気性(ガス透過性)を実現するように開発された炭素繊維を主体とする電極基材が記載されている。また、特許文献2には、ガス拡散層を構成する多孔質炭素基材(カーボン不織布)に、撥水化材料(典型的にはポリテトラフルオロエチレン等の撥水性のよいポリマーと導電性カーボン粉末とを含む。)を溶媒に分散させて成るペースト(インク)状の撥水層形成用材料を塗布し、適当な処理(典型的には加熱処理)を施すことによって、少なくとも炭素基材表面が撥水化された(即ち撥水層が形成された)従来の一般的なガス拡散層が記載されている。なお、ガス拡散層に直接関連するものではないが、燃料電池の電極の通気性に関するその他の従来技術として例えば特許文献3が挙げられる。
特許文献1に記載の炭素電極基材は、その主体が特定の性状の炭素繊維に限定されている。即ち特許文献1に記載の技術は、種々の多孔質炭素材料、例えばカーボンクロス又はカーボンペーパー製のガス拡散層の導電性を確保しつつ通気性(及び必要に応じて排水性)を向上させるために広く適用される(汎用性のある)技術ではない。また、特許文献2のように多孔質炭素基材に撥水層を形成すると、当該撥水層の形成によりガス拡散層の通気性が低下する傾向にある。
本発明は、かかる事情に鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、種々の多孔質炭素材料(例えばカーボンクロス、カーボンペーパー)から成るガス拡散層の導電性を確保しつつ通気性及び排水性を向上させ得る方法(技術)を提供することにある。また、他の側面として、燃料電池のガス拡散層として好適な導電性を有するとともに高い通気性及び排水性を実現した電極材料及びその製造方法の提供を目的とする。また、そのような電極材料をガス拡散層として備える燃料電池の提供を他の目的とする。
本発明は、かかる事情に鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、種々の多孔質炭素材料(例えばカーボンクロス、カーボンペーパー)から成るガス拡散層の導電性を確保しつつ通気性及び排水性を向上させ得る方法(技術)を提供することにある。また、他の側面として、燃料電池のガス拡散層として好適な導電性を有するとともに高い通気性及び排水性を実現した電極材料及びその製造方法の提供を目的とする。また、そのような電極材料をガス拡散層として備える燃料電池の提供を他の目的とする。
本発明によると、燃料電池のガス拡散層として用いられる電極材料を製造する方法が提供される。その方法は、前記ガス拡散層の主体を成す多孔質炭素基材を用意することを含む。また、該炭素基材に撥水化材料を付与し、該炭素基材の少なくとも表面の一部を撥水化することを含む。また、前記炭素基材の少なくとも前記撥水化された一部において、該炭素基材の表面であって燃料電池の触媒層が配置される面及び/又はその反対の面から厚み方向に複数の貫通孔を形成することを含む。
かかる製造方法によると、多孔質炭素基材の厚み方向に形成された複数の貫通孔によって、該炭素基材の通気性又は通気性及び排水性(以下、通気性又は通気性及び排水性を「通気性等」ということもある。)を向上させることができる。該貫通孔の形成は、あらかじめ撥水化された多孔質炭素基材に対して行われる。このため、多孔質炭素基材に貫通孔を形成した後に撥水化処理を行う(撥水化材料を付与する)場合とは異なり、該撥水化処理によって貫通孔付炭素基材の通気性等が変化する(例えば通気性が低下する)ことはない。従って、上記製造方法によると、通気性等を適切に向上させた電極材料を得ることができる。
かかる製造方法によると、多孔質炭素基材の厚み方向に形成された複数の貫通孔によって、該炭素基材の通気性又は通気性及び排水性(以下、通気性又は通気性及び排水性を「通気性等」ということもある。)を向上させることができる。該貫通孔の形成は、あらかじめ撥水化された多孔質炭素基材に対して行われる。このため、多孔質炭素基材に貫通孔を形成した後に撥水化処理を行う(撥水化材料を付与する)場合とは異なり、該撥水化処理によって貫通孔付炭素基材の通気性等が変化する(例えば通気性が低下する)ことはない。従って、上記製造方法によると、通気性等を適切に向上させた電極材料を得ることができる。
あらかじめ撥水化された多孔質炭素基材に貫通孔を形成する本発明の方法は、得られる電極材料における貫通孔のサイズ及び配置を正確に制御するのに適している。かかる特長を利用して、本発明の好ましい一つの態様では、前記複数の貫通孔の形成を、前記炭素基材の触媒層配置面及びその反対面にほぼ同サイズの複数の貫通孔が100μm〜500μmの孔ピッチでほぼ均等に配列する領域が形成されるように行う。ここで「孔ピッチ」とは、ある貫通孔の中央部から隣接する貫通孔の対応する部分までの平均距離(ほぼ円形の貫通孔では中心間の平均距離)をいう。このような領域が形成された電極材料は、燃料電池のガス拡散層として好適な通気性等を有するものであり得る。上記ほぼ同サイズの複数の貫通孔の形成は、該貫通孔の孔径が例えば20μm〜200μmの範囲となるように行うことができる。この程度の孔径の貫通孔によると、多孔質炭素基材の通気性等を効果的に向上させることができる。
ここに開示される方法の好ましい一つの態様では、基体と該基体表面に形成された複数の針状突起とを備える孔あけ用器具であって前記孔径に対応する直径の針状突起が前記孔ピッチに対応するピッチで複数配列する孔あけ用器具を用意する。そして、該孔あけ用器具の針状突起形成面を前記炭素基材の触媒層配置面又はその反対面に押し当てることにより、前記同サイズの複数の貫通孔が所定の孔ピッチでほぼ均等に配列する領域を形成する。このような孔あけ用器具を用いることによって、サイズ及び配置がよく制御された貫通孔を効率よく形成することができる。また、多孔質炭素基材を撥水化する(例えば、ポリテトラフルオロエチレン微粒子を含む撥水化材料を付与する)と一般に多孔質炭素基材の脆さが改善される。従って、あらかじめ撥水化された多孔質炭素基材に貫通孔を形成する本発明の方法は、上記孔あけ用器具を用いて貫通孔を形成するのに適している。
本発明によると、また、燃料電池のガス拡散層として用いられる電極材料が提供される。その電極材料は、少なくとも燃料電池の触媒層が配置される表面に撥水化材料が付与された多孔質炭素基材を備える。該炭素基材の触媒層が配置される面の少なくとも一部には、該触媒層配置面から該基材の厚み方向の反対の面に至るほぼ同サイズの複数の貫通孔が100μm〜500μmの孔ピッチでほぼ均等に配列する領域が形成されている。前記貫通孔の孔径としては20μm〜200μmの範囲が好ましい。このような構成の電極材料は、燃料電池のガス拡散層として好適な導電性を有するとともに高い通気性及び排水性を実現するものであり得る。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示される技術は、燃料電池のガス拡散層の主体を成し得る種々の多孔質炭素材料(多孔質炭素基材)に対して特に限定なく適用され得る。例えば、主としてカーボン繊維から成る多孔質炭素材料に対して適用することができる。このような多孔質炭素材料としては、カーボン繊維から成る織布又は不織布(カーボンクロス、カーボンペーパー等)、カーボン繊維と炭化樹脂とから成る炭素材料等を例示することができる。また、本発明を適用し得る他の多孔質炭素材料としては、カーボン粒子を焼結して成る炭素材料、カーボン粒子と炭化樹脂とから成る炭素材料等が挙げられる。このような多孔質炭素材料の外形(面積、厚さ等)、性状(気孔率、カーボン繊維の長さ及び太さ、カーボン粒子の直径、カーボン繊維と炭化樹脂との割合等)も特に限定されず、目的とする燃料電池の形状、タイプ、運転条件に応じて適切なものを選択することができる。本発明の適用効果は、いずれの材質及び性状の多孔質炭素材料(多孔質炭素基材)に対しても発揮され得る。例えば、該多孔質炭素基材に貫通孔を形成しない場合に比べて、本発明によると通気性等が改善された電極材料が得られる。また、多孔質炭素基材を撥水化する前に貫通孔の形成を行う場合等に比べ、本発明によると、通気性等の向上をより適切に(例えば、安定した品質で)実現することができる。
本発明に使用する多孔質炭素基材としては、主としてカーボン繊維から成るシート状の多孔質炭素材料(カーボン繊維と炭化樹脂とから成るものを含む。)を好ましく採用することができる。貫通孔の形成が容易であることから、厚さ1mm以下(より好ましくは0.5mm以下)の多孔質炭素材料の使用が好ましい。該炭素基材の気孔率は特に限定されないが、例えば気孔率が凡そ50〜90%(より好ましくは凡そ65〜85%)のものを好ましく使用することができる。このような多孔質炭素基材としては、燃料電池の電極材料(ガス拡散層)用として市販されている種々の材料を適宜選択して使用することができる。例えば、東レ株式会社から入手可能な燃料電池用電極基材、製品名「TGP」シリーズは、ここに開示される技術の実施に際して採用し得る多孔質炭素材料の好適例である。
ここに開示される方法では、このような多孔質炭素基材に撥水化材料を付与し、該基材の少なくとも表面の一部を撥水化する。かかる撥水化材料としては、少なくとも撥水性のよいポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂等から選択される一種又は二種以上)を含む材料を使用することができ、該撥水性ポリマーとカーボン粒子とを含む材料を用いてもよい。このような撥水化材料を基材に付与する好適な一方法としては、該撥水化材料を適当な媒体に溶解又は分散させた液状組成物(典型的には、ペースト状又はインク状に調製される。)を多孔質炭素基材に付与し、該組成物を乾燥させる(溶媒を除去する)方法を例示することができる。
かかる撥水化材料により多孔質炭素基材の一部領域を撥水化してもよく、該炭素基材の実質的に全領域を撥水化してもよい。このような基材の面方向に対する撥水化範囲の調節は、該基材に撥水化材料を付与する範囲を選択することによって行うことができる。また、撥水化材料の付与方法(付与条件)を適切に設定することにより、多孔質炭素基材の主として表面を撥水化し(例えば、比較的高粘度の組成物を炭素基材の表面に塗布する)、あるいは、該基材の表面及び内部を撥水化する(例えば、比較的低粘度の組成物を炭素基材全体に含浸させる)ことができる。
かかる撥水化材料により多孔質炭素基材の一部領域を撥水化してもよく、該炭素基材の実質的に全領域を撥水化してもよい。このような基材の面方向に対する撥水化範囲の調節は、該基材に撥水化材料を付与する範囲を選択することによって行うことができる。また、撥水化材料の付与方法(付与条件)を適切に設定することにより、多孔質炭素基材の主として表面を撥水化し(例えば、比較的高粘度の組成物を炭素基材の表面に塗布する)、あるいは、該基材の表面及び内部を撥水化する(例えば、比較的低粘度の組成物を炭素基材全体に含浸させる)ことができる。
かかる撥水化材料が付与された多孔質炭素基材に、該基材を厚み方向に貫通する複数の貫通孔を形成する。該貫通孔の開口形状は特に限定されず、例えば円形、楕円形、多角形、線状等の形状とすることができる。開口形状が円形又は楕円形の貫通孔が好ましい。これらの貫通孔のサイズ及び基材の単位面積当たりの個数は、多孔質炭素基材自体又は撥水化材料付与後の多孔質炭素基材(即ち、貫通孔形成前の基材)の特性と、目的とする電極材料に要求される性能(通気性、排水性、導電性、強度等)とを考慮して適宜設定することができる。例えば、貫通孔のサイズについては、直径が凡そ20μm〜200μm(好ましくは凡そ30μm〜100μm)の円の面積に相当する開口面積を有するサイズとすることができる。また、基材の単位面積あたりの貫通孔の個数(即ち、貫通孔の配置密度)は、例えば2個〜200個/mm2(好ましくは4個〜100個/mm2)程度とすることができる。
基材に形成される複数の貫通孔は、ほぼ同じ形状及びサイズを有する一種類の貫通孔であってもよく、形状及びサイズの少なくとも一方が異なる二種以上の貫通孔であってもよい。二種以上の貫通孔を有する態様では、それら二種以上の貫通孔が均一に混在していてもよく、基材の一部領域と他の領域とで貫通孔の種類(形状及び/又はサイズ)を異ならせてもよい。それらの貫通孔の配置は規則的であってもよくランダムであってもよい。好ましい一つの態様では、基材の少なくとも一部領域(より好ましくは実質的に全領域)に、少なくとも一方向(より好ましくは、直交する二方向又は互いに60°の角度で交わる三方向)に対してほぼ一定の孔ピッチで(即ち規則的に)ほぼ均等に配列するように複数の貫通孔(好ましくは、ほぼ同形状かつ同サイズの貫通孔)を設ける。かかる態様によると、該貫通孔が設けられた領域において均一な(面方向に対する偏りの少ない)通気性等を実現することができる。上記孔ピッチは、例えば凡そ100μm〜500μmの範囲とすることができる。或いは、基材の一部領域と他の領域とで貫通孔の配置及び/又は個数(密度)を異ならせてもよい。例えば、この電極材料をガス拡散層に用いて構築された燃料電池の使用時に下方となる側の領域に、上方となる側の領域よりも開口面積の大きい貫通孔を設けることができる。かかる下方領域に設けられる貫通孔の密度を上方領域よりも高くしてもよい。或いは、図3に示すようにガス拡散層32,52に面する側に複数の溝2aが設けられたセパレータ2が配置される場合には、これらの溝2aに対応する位置に貫通孔を形成することができる。このような態様によると、多孔質炭素基材の強度を維持しつつ、該基材の実質的な(即ち、燃料電池のガス拡散層として使用される際の)通気性及び/又は排水性を効果的に向上させることができる。
貫通孔を形成する方法としては、従来公知の種々の方法を適宜選択することができる。ここに開示される方法において特に好ましく採用される貫通孔形成方法としては、基体と該基体表面に形成された複数の針状突起とを備える孔あけ用器具を用いる方法が挙げられる。かかる構成の孔あけ用器具の針状突起形成面を前記炭素基材の触媒層配置面及び/又はその反対面に押し当てることにより、前記針状突起の外形(形状及びサイズ)に対応した開口形状及びサイズの貫通孔を、該針状突起の配置に対応した配置で、前記炭素基材に適切に形成することができる。このような貫通孔形成方法によると、開口形状、サイズ及び配置がよく制御された複数の貫通孔を効率よく形成することができる。従って、このようにして貫通孔を形成することを含む本発明の電極材料製造方法によると、各性能(例えば、通気性、排水性、強度及び導電性)のバランスのよい電極材料を、効率よくかつ安定した品質で(再現性よく)製造することができる。
このような孔あけ用器具を用いて電極材料を製造する好ましい一態様につき、図1を用いてその概略を説明する。撥水化材料を含む液状組成物5を用意し、これをシート状の多孔質炭素基材6の触媒層配置面6a側に付与(例えば塗布)する。この炭素基材6を加熱して組成物5を乾燥させるとともに、撥水化材料相互及び撥水化材料と基材6とを結着させる。このようにして撥水化された基材6を孔あけ用器具60に供給する。この孔あけ用器具60は、相互に接近及び離隔可能な一対の平板状の基体62,64を備える。これらの基体62,64の対向面間に基材6が配置される。基材6の触媒層配置面6a側に位置する基体62の表面には、あらかじめ設定された所定の外形を有する複数の針状突起624が所定のピッチで配列されている。基体62及び/又は基体64を互いに接近させる方向に移動させることにより、基材6の触媒層配置面6aとは反対側の面(反対面)6bを基体64により支持しつつ、基体62の針状突起形成面を触媒層配置面6aに押し当てる。これにより、基材6の触媒層配置面6aから該基材の厚み方向に針状突起624を貫通させて、針状突起624の外形及び配置に対応した貫通孔(図示せず)を基材6に形成する。このようにして電極材料4を製造することができる。
なお、図1に示す例では基材6の触媒層配置面6a側に位置する基体62に針状突起624を設けているが、基材6の反対面6b側に位置する基体64に針状突起を設けてもよい。かかる構成の孔あけ用器具によると、基材6の反対面6bから厚み方向に貫通孔を形成することができる。また、基体62,64の双方に針状突起を設けた構成とすることにより、基材6の触媒層配置面6a及び反対面6bからそれぞれ貫通孔を形成してもよい。
なお、図1に示す例では基材6の触媒層配置面6a側に位置する基体62に針状突起624を設けているが、基材6の反対面6b側に位置する基体64に針状突起を設けてもよい。かかる構成の孔あけ用器具によると、基材6の反対面6bから厚み方向に貫通孔を形成することができる。また、基体62,64の双方に針状突起を設けた構成とすることにより、基材6の触媒層配置面6a及び反対面6bからそれぞれ貫通孔を形成してもよい。
孔あけ用器具を用いて電極材料を製造する他の好ましい一態様の概略を図2に示す。長尺状の多孔質炭素基材7が巻出ロール75に巻かれている。この巻出ロール75から巻き出された基材7は、塗布装置77、加熱炉78及び孔あけ用器具70を経て巻取ロール76に巻き取られる。塗布装置77を通過する基材7の触媒層配置面7a側には、撥水化材料を含む液状組成物5が塗布装置77により塗布される。この基材7は引き続き加熱炉78に導入され、この加熱炉78を通過することにより液状組成物5の乾燥及び撥水化材料の結着が行われる。次いで基材7は孔あけ用器具70に供給される。この孔あけ用器具70は一対のローラ72,74を備える。基材7の触媒層配置面6a側に位置するローラ72の表面には、あらかじめ設定された所定の外形を有する複数の針状突起724が所定のピッチで配列されている。これらのローラ72,74の間に基材7を通過させることにより、基材7の反対面7bをローラ74により支持しつつ、ローラ72の針状突起形成面を触媒層配置面7aに押し当てる。これにより基材7の触媒層配置面7aから該基材の厚み方向に針状突起724を貫通させて、針状突起724の外形及び配置に対応した貫通孔(図示せず)を基材6に形成する。このようにして電極材料4を製造することができる。
ここに開示される電極材料は、従来の一般的な燃料電池の電極に備えられるガス拡散層として好適に使用される。例えば、固体高分子型燃料電池やリン酸型燃料電池の電極(カソード及び/又はアノード)に備えられるガス拡散層に好ましく適用することができる。このような電極材料を用いて構築された固体高分子型燃料電池の概略構成例を図3に示す。この燃料電池1の単セルは、高分子電解質膜40を挟んでその両側にそれぞれ燃料極(アノード)30及び空気極(カソード)50が配置された構成を有する。アノード30は、高分子電解質膜40に接する触媒層32を備える。この触媒層32の外面側に、上記電極材料を用いて成るガス拡散層34が配置されている。このガス拡散層34には、所定のサイズを有する複数の貫通孔36が所定の配置で形成されている。カソード50も同様に、高分子電解質膜40に接する触媒層52を有し、その外側面に上記電極材料を用いて成るガス拡散層54が配置されている。このガス拡散層54には、所定のサイズを有する複数の貫通孔56が所定の配置で形成されている。かかる構成の膜・電極接合体3の外側にセパレータ2が配置されている。セパレータ2の電極側表面には複数の溝2aが設けられており、これらの溝2aを通じて燃料(例えばH2)又は空気の流通、過剰な水の排水等が行われる。かかる構成の燃料電池に用いられる電解質膜、触媒層、セパレータ等の材質及び構造は、従来公知の燃料電池と同様でよく、特に本発明を特徴づけるものではないため、詳細な説明は省略する。例えば、高分子電解質膜40の構成材料としてはNafion(登録商標)等のパーフルオロスルホン酸樹脂を主成分とする高分子電解質を好ましく用いることができる。また、触媒層32,52に用いられる触媒成分の好適例としては白金触媒が挙げられる。
かかる構成の燃料電池1によると、例えば図4に模式的に示すように、アノード30のガス拡散層34に該拡散層を厚み方向に貫通する貫通孔36が設けられていることにより、反応ガス(典型的にはH2を含むガス)を拡散させつつ触媒層32に効率よく接触させることができる。また、カソード50のガス拡散層54に該拡散層を厚み方向に貫通する貫通孔56が設けられていることにより、反応ガス(典型的にはO2を含むガス、例えば空気)を拡散させつつ触媒層52に効率よく接触させるとともに、ガス拡散層54から過剰な水を適切に排水することができる。ガス拡散層54に付与された撥水化材料によってかかる排水の効果が高められている。貫通孔36,56の形成は基材6,7に撥水化材料を付与した後に行われるので、該撥水化材料の付与により付与前に比べて基材6,7の通気性等が低下しても、その後に適切なサイズ及び/又は配置で貫通孔36,56を形成することによって、目的物たる電極材料に要求される通気性等を実現することができる。例えば、透気度3000×10-6m3/Pa・sの多孔質炭素基材に撥水化材料を付与することにより該基材の透気度が例えば20×10-6m3/Pa・sに低下したとしても、これに貫通孔を形成することにより数十〜数百×10-6m3/Pa・sの透気度を有する電極材料を得ることができる。この電極材料の透気度は貫通孔のサイズ及び配置等によって任意にコントロール可能である。なお、上記透気度(JIS P8117に規定する透気度をいう。以下同じ。)の値は、例えば、市販の透気度試験機(例えば、株式会社安田精機製作所製品、型式「323−B型」)を用いて測定することができる。
以下、本発明に関する好適な実施例を図面を参照しつつ説明するが、本発明をかかる図面に示すものに限定することを意図したものではない。
<第一実施例>
幅400mm、長さ800mm、厚さ0.2mmの長方形シート状の多孔質炭素基材(東レ株式会社製品、商品名「TGP−H」シリーズ(TGP−H−030,060,090等;炭素繊維と炭素の複合材料)を用意した。該炭素基材の片面(触媒層配置面)全体に、ポリテトラフルオロエチレン微粒子及びカーボン粒子(撥水化材料)を含む分散液を塗布した。これを320℃で60分間加熱した。炭素基材の単位面積当たりに塗布する分散液の量は、該加熱後における付着物(撥水化材料)の質量が100g/m2となるように調節した。このようにして、撥水化材料が付与された炭素基材を得た。
次いで、該炭素基材の撥水化材料付与面から厚み方向に複数の貫通孔を形成した。この貫通孔形成には、図1に示す構成の孔あけ用器具60であって、触媒層配置面6aに対向する基体62の表面に複数の針状突起624が互いに直交する二方向に(即ち格子状に)配列した孔あけ用器具60を使用した。それらの針状突起624はほぼ同一の外形及びサイズを有し、上記直交する配列のいずれの方向についても約300μmのピッチで均等に設けられていた。また、基体62の針状突起形成面を触媒層配置面6aに押し当てて該針状突起形成面が触媒層配置面6aに最も接近したときの基材6の位置における針状突起624の断面形状は直径60μmの円形であった。
このようにして製造された電極材料を電子顕微鏡で観察したところ、上記断面形状に対応するほぼ同サイズかつ同一形状の貫通孔が、約300μmの孔ピッチで縦横に配列して形成されていることが確認された。
幅400mm、長さ800mm、厚さ0.2mmの長方形シート状の多孔質炭素基材(東レ株式会社製品、商品名「TGP−H」シリーズ(TGP−H−030,060,090等;炭素繊維と炭素の複合材料)を用意した。該炭素基材の片面(触媒層配置面)全体に、ポリテトラフルオロエチレン微粒子及びカーボン粒子(撥水化材料)を含む分散液を塗布した。これを320℃で60分間加熱した。炭素基材の単位面積当たりに塗布する分散液の量は、該加熱後における付着物(撥水化材料)の質量が100g/m2となるように調節した。このようにして、撥水化材料が付与された炭素基材を得た。
次いで、該炭素基材の撥水化材料付与面から厚み方向に複数の貫通孔を形成した。この貫通孔形成には、図1に示す構成の孔あけ用器具60であって、触媒層配置面6aに対向する基体62の表面に複数の針状突起624が互いに直交する二方向に(即ち格子状に)配列した孔あけ用器具60を使用した。それらの針状突起624はほぼ同一の外形及びサイズを有し、上記直交する配列のいずれの方向についても約300μmのピッチで均等に設けられていた。また、基体62の針状突起形成面を触媒層配置面6aに押し当てて該針状突起形成面が触媒層配置面6aに最も接近したときの基材6の位置における針状突起624の断面形状は直径60μmの円形であった。
このようにして製造された電極材料を電子顕微鏡で観察したところ、上記断面形状に対応するほぼ同サイズかつ同一形状の貫通孔が、約300μmの孔ピッチで縦横に配列して形成されていることが確認された。
<第二実施例>
本実施例では、図1に示す構成の孔あけ用器具60であって、基体62の表面のうち約半分の領域(第一実施例で用いたものと同じ多孔質炭素基材の長手方向の約半分に対応する領域)には縦横に約200μmのピッチで針状突起624が配列し、残り半分の領域には縦横に約400μmのピッチで針状突起624が配列した孔あけ用器具60を使用した。それらの針状突起624の形状およびサイズは、いずれの領域に設けられた針状突起624についてもほぼ同一であり、それらの断面形状はいずれも約60μmの円形であった。かかる構成の孔あけ用器具60を使用した以外は第一実施例と同様にして電極材料を製造した。得られた電極材料を電子顕微鏡で観察したところ、上記断面形状に対応するほぼ同サイズかつ同一形状の貫通孔が、上記領域毎にそれぞれ約200μmおよび約400μmの孔ピッチで縦横に配列して形成されていることが確認された。
本実施例では、図1に示す構成の孔あけ用器具60であって、基体62の表面のうち約半分の領域(第一実施例で用いたものと同じ多孔質炭素基材の長手方向の約半分に対応する領域)には縦横に約200μmのピッチで針状突起624が配列し、残り半分の領域には縦横に約400μmのピッチで針状突起624が配列した孔あけ用器具60を使用した。それらの針状突起624の形状およびサイズは、いずれの領域に設けられた針状突起624についてもほぼ同一であり、それらの断面形状はいずれも約60μmの円形であった。かかる構成の孔あけ用器具60を使用した以外は第一実施例と同様にして電極材料を製造した。得られた電極材料を電子顕微鏡で観察したところ、上記断面形状に対応するほぼ同サイズかつ同一形状の貫通孔が、上記領域毎にそれぞれ約200μmおよび約400μmの孔ピッチで縦横に配列して形成されていることが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
1:燃料電池
2:セパレータ
3:膜・電極複合体
5:液状組成物(撥水化材料)
6,7:多孔質炭素基材
6a,7a:触媒層配置面
6b,7b:反対面
30:アノード
40:高分子電解質膜(電解質膜)
50:カソード
32,52:ガス拡散層(電極材料)
34,54:貫通孔
36,56:触媒層
60,70:孔あけ用器具
62,64:基体
624:針状突起
72,74:ローラ(基体)
724:針状突起
2:セパレータ
3:膜・電極複合体
5:液状組成物(撥水化材料)
6,7:多孔質炭素基材
6a,7a:触媒層配置面
6b,7b:反対面
30:アノード
40:高分子電解質膜(電解質膜)
50:カソード
32,52:ガス拡散層(電極材料)
34,54:貫通孔
36,56:触媒層
60,70:孔あけ用器具
62,64:基体
624:針状突起
72,74:ローラ(基体)
724:針状突起
Claims (6)
- 燃料電池のガス拡散層として用いられる電極材料を製造する方法であって:
前記ガス拡散層の主体を成す多孔質炭素基材を用意すること;
該炭素基材に撥水化材料を付与し、該炭素基材の少なくとも表面の一部を撥水化すること;及び
前記炭素基材の少なくとも前記撥水化された一部において、該炭素基材の表面であって燃料電池の触媒層が配置される面及び/又はその反対の面から厚み方向に複数の貫通孔を形成すること;
を包含する、電極材料製造方法。 - 前記複数の貫通孔の形成は、前記炭素基材の触媒層配置面及びその反対面にほぼ同サイズの複数の貫通孔が100μm〜500μmの孔ピッチでほぼ均等に配列する領域が形成されるように行われる、請求項1に記載の製造方法。
- 孔径が20μm〜200μmの範囲となるように前記複数の貫通孔を形成する、請求項2に記載の製造方法。
- 基体と該基体表面に形成された複数の針状突起とを備える孔あけ用器具であって前記孔径に対応する直径の針状突起が前記孔ピッチに対応するピッチで複数配列する孔あけ用器具を用意し、
該孔あけ用器具の針状突起形成面を前記炭素基材の触媒層配置面又はその反対面に押し当てることによって前記同サイズの複数の貫通孔が所定の孔ピッチでほぼ均等に配列する領域を形成する、請求項2又は3に記載の製造方法。 - 燃料電池のガス拡散層として用いられる電極材料であって、
少なくとも燃料電池の触媒層が配置される表面に撥水化材料が付与された多孔質炭素基材を備え、
該炭素基材の触媒層が配置される面の少なくとも一部には、該触媒層配置面から該基材の厚み方向の反対の面に至るほぼ同サイズの複数の貫通孔が100μm〜500μmの孔ピッチでほぼ均等に配列する領域が形成されている、電極材料。 - 前記貫通孔の孔径が20μm〜200μmの範囲にある、請求項5に記載の電極材料。
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JP2005152482A JP2006331786A (ja) | 2005-05-25 | 2005-05-25 | 燃料電池用電極材料及びその製造方法 |
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---|---|---|---|---|
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JP2017117543A (ja) * | 2015-12-21 | 2017-06-29 | トヨタ自動車株式会社 | 燃料電池及び燃料電池システム |
JP2020173944A (ja) * | 2019-04-09 | 2020-10-22 | 株式会社豊田中央研究所 | ガス拡散層及び固体高分子形燃料電池 |
-
2005
- 2005-05-25 JP JP2005152482A patent/JP2006331786A/ja active Pending
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