JP2006321681A - 炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 結晶多形の変態を制御し、所望の結晶構造の炭化珪素単結晶を得ることができる方法を提供する。
【解決手段】 1700〜1900℃の雰囲気温度において、Siと、Cと、第3の元素もしくはその化合物を含む原料を融解した融液に炭化珪素単結晶基板を接触させ、この接触部の温度を前記融液の温度よりも低い温度にして前記基板上に炭化珪素単結晶を成長させることを含む炭化珪素単結晶の製造方法において、前記第3の元素を選択することにより15R、3C及び6Hのうち所望の結晶構造の炭化珪素単結晶を成長させる。
【選択図】 図1
【解決手段】 1700〜1900℃の雰囲気温度において、Siと、Cと、第3の元素もしくはその化合物を含む原料を融解した融液に炭化珪素単結晶基板を接触させ、この接触部の温度を前記融液の温度よりも低い温度にして前記基板上に炭化珪素単結晶を成長させることを含む炭化珪素単結晶の製造方法において、前記第3の元素を選択することにより15R、3C及び6Hのうち所望の結晶構造の炭化珪素単結晶を成長させる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、マイクロパイプの発生を防ぎ、所望の結晶構造の炭化珪素単結晶を製造することができる方法に関する。
炭化珪素は、熱的、化学的に非常に安定であり、耐熱性及び機械的強度に優れていることから、耐環境性半導体材料として理想的な材料である。また、炭化珪素の結晶構造は数百種類あり、結晶多形を示すことが知られている。この結晶多形とは、化学組成が同じであっても多数の異なる結晶構造をとる現象であり、結晶構造においてSiとCとが結合した分子を一単位として考えた場合に、この単位構造分子が結晶のc軸方向([0001]方向)に積層する際の周期構造が異なることにより生ずる。
代表的な結晶多形としては、2H、3C、4H、6H及び15Rがある。ここで最初の数字は積層の繰り返し周期を示し、アルファベットは結晶系を表し、Hは六方晶系を、Rは菱面体晶系を、そしてCは立方晶系を表す。各結晶構造はそれぞれ物理的、電気的特性が異なり、その違いを利用して各種用途への応用が考えられている。例えば、4Hは高周波高耐電圧電子デバイス等の基板ウエハとして、また6Hはバンドギャップが約3eVと大きいため青色LEDの発光素子材料として用いられている。一方15Rは4H、6Hと比較して移動度が大きいが、基板の入手が困難である。そして3Cは結晶の対称性が高く、電子の移動度も大きいため、高速で動作する半導体素子材料として用いられている。
ところで従来、炭化珪素単結晶の成長方法としては、気相成長法、アチソン法、及び溶液成長法が知られている。
気相成長法としては、昇華法と化学反応堆積法(CVD法)がある。昇華法は、炭化珪素粉末を原料として、2000℃以上の高温下で昇華させ、SiとCからなる蒸気を低温にされた種結晶基板上で過飽和とさせ、単結晶を析出させる方法である。CVD法は、シランガスと炭化水素系のガスを用い、加熱したSiなどの基板上において化学反応により炭化珪素単結晶をエピタキシャル成長させる方法であり、炭化珪素単結晶薄膜の製造に用いられている。
アチソン法は、無水ケイ酸と炭素を2000℃以上の高温に加熱して人造研磨剤を製造する方法であり、単結晶は副産物として生成する。
溶液成長法は、炭素を含む材料(一般には黒鉛)からなるるつぼを用い、このるつぼ内で珪素を融解して融液とし、この融液にるつぼから炭素を溶解させ、低温部に配置された種結晶基板上に炭化珪素を結晶化させ、その結晶を成長させる方法である。
しかしながら、上記の昇華法により製造した単結晶にはマイクロパイプ欠陥と呼ばれる中空貫通状の欠陥や積層欠陥などの多種の格子欠陥が存在することが知られている。さらに昇華法では結晶成長条件と結晶多形の変態が密接に関わっているため、格子欠陥制御と多形制御を両立させることが困難であり、結晶多形が生じやすいという欠点を有する。
またCVD法ではガスで原料を供給するために原料供給量が少なく、生成する炭化珪素単結晶は薄膜に限られ、デバイス用の基板材料としてバルク単結晶を製造することは困難である。
アチソン法では原料中に不純物が多く存在し、高純度化が困難であり、また大型の結晶を得ることができない。
一方、溶液成長法では、格子欠陥が少なく、また結晶多形が生ずることも少ないため、結晶性の良好な単結晶が得られるとされている(例えば、特許文献1及び2参照)。
単結晶の製造は、特定方向に結晶を成長(積層)させて行うが、ある積層を境に、これまでとは異なる性質の単結晶が成長するという、結晶多形の変態が生ずる。従って種結晶と同じ性質の単結晶を成長させるには、積層中における結晶多形の変態を防ぐことが必要である。しかしながら、上記のような昇華法等では結晶多形の変態を防ぐことはできなかった。また、溶液成長法では結晶多形の変態を防ぐことができるが、得られる結晶構造は種結晶と同じものであり、結晶多形の変態を制御し、種結晶の結晶構造にかかわらず、所望の結晶構造の炭化珪素単結晶を得ることはできなかった。
本発明は、このような問題を解消し、種結晶の結晶構造にかかわらず、結晶多形の変態を制御し、所望の結晶構造の炭化珪素単結晶を得ることができる方法を提供することを目的とする。
上記問題点を解決するために1番目の発明によれば、1700〜1900℃の雰囲気温度において、Siと、Cと、第3の元素もしくはその化合物を含む原料を融解した融液に炭化珪素単結晶基板を接触させ、この接触部の温度を前記融液の温度よりも低い温度にして前記基板上に炭化珪素単結晶を成長させることを含む炭化珪素単結晶の製造方法であって、前記第3の元素を選択することにより15R、3C及び6Hのうち所望の結晶構造の炭化珪素単結晶を成長させることができることを特徴とする。
2番目の発明では1番目の発明において、前記第3の元素もしくはその化合物が硼化物又はSnであり、15R−炭化珪素単結晶が得られる。
3番目の発明では2番目の発明において、前記硼化物がFeB又はNiBである。
4番目の発明では1番目の発明において、前記第3の元素もしくはその化合物がGdであり、3C−炭化珪素単結晶が得られる。
5番目の発明では1番目の発明において、前記第3の元素もしくはその化合物がAl、DyもしくはLaであり、6H−炭化珪素単結晶が得られる。
本発明によれば、溶液成長法に準じて結晶を成長させることにより、マイクロパイプ欠陥等の格子欠陥のない炭化珪素単結晶が得られる。さらに、珪素を含む融液に所定の成分を添加することにより、その添加成分に応じて得られる炭化珪素を所望の結晶構造に結晶多形を制御することができる。
以下、本発明の炭化珪素単結晶の製造方法を具体的に説明する。まず、本発明の炭化珪素単結晶の製造方法に用いる製造装置の構成について図1を参照して説明する。この製造装置はチャンバー1を備え、このチャンバー1内にはるつぼ2が配置されている。るつぼ2の内部の底面部には種結晶5を配置し、るつぼ2の内部には、Siと、Cと、第3の元素もしくはその化合物を含む原料4が充填される。るつぼ2として黒鉛製のるつぼを用いる場合、Cはこのるつぼ2から溶融してくるため、原料に添加しなくてもよい。るつぼ2の周囲には加熱装置3が配置され、るつぼ2の外底面部には冷却板6が配置されている。
この製造装置を用いて炭化珪素単結晶を製造する方法について説明する。まず、るつぼ2内の底面に種結晶5を入れ、次いで内部に原料4を充填する。その後チャンバー1内を真空にした後、例えばAr等の不活性ガス雰囲気としてチャンバー1内を大気圧もしくはそれ以上に加圧する。加熱装置3によりるつぼ2を加熱し、原料4を溶融させ、SiとCと第3の元素もしくはその化合物を含む融液を形成し、この融液と種結晶5を接触させる。融液が1700〜1900℃の温度範囲になったときに冷却板6を冷却し、融液と種結晶の接触部の温度を融液の温度よりも低い温度にし、その結果、融液に温度勾配が生じ、種結晶5上に炭化珪素単結晶を成長させることができる。
図2は、本発明の炭化珪素単結晶の製造方法に用いる他の製造装置の構成を示す。この製造装置は、図1に示す製造装置と同様にチャンバー1を備え、このチャンバー1内にはるつぼ2が配置されている。るつぼ2の内部には、Siと、Cと、第3の元素もしくはその化合物を含む原料4が充填される。るつぼ2の周囲には加熱装置3が配置されている。るつぼ2の上方には治具7で固定された種結晶5が引き上げ棒8の先端に配置されている。図示していないが、引き上げ棒8には冷却装置が接続され、種結晶を所定の温度に冷却できるようになっている。
この製造装置を用いて炭化珪素単結晶を製造する方法について説明する。まず、るつぼ2の内部に原料4を充填し、その後チャンバー1内を真空にした後、例えばAr等の不活性ガス雰囲気としてチャンバー1内を大気圧もしくはそれ以上に加圧する。加熱装置3によりるつぼ2を加熱し、原料4を溶融させ、SiとCと第3の元素もしくはその化合物を含む融液を形成する。融液が1700〜1900℃の温度範囲になったときに引き上げ棒8を下降させ、種結晶5を融液と接触させる。種結晶を冷却させるとこの種結晶上に単結晶が成長するため、この結晶の成長にあわせて引き上げ棒8を徐々に引き上げ、種結晶5上に炭化珪素単結晶を成長させることができる。
上記のいずれの装置を用いる場合においても、得られる炭化珪素単結晶の結晶形は、原料に添加する第3の元素もしくはその化合物によってきまる。換言すると、原料に添加する第3の元素もしくはその化合物を選択することにより、得られる炭化珪素単結晶の結晶形を任意に設定することができる。
具体的には、第3の元素もしくはその化合物が硼化物(例えばFeB又はNiB)又はSnである場合15R−炭化珪素単結晶が得られ、第3の元素もしくはその化合物がGdである場合3C−炭化珪素単結晶が得られ、第3の元素もしくはその化合物がAl、DyもしくはLaである場合6H−炭化珪素単結晶が得られる。
この第3の元素もしくはその化合物の添加量は、原料の融液の0.5〜50wt%であることが好ましい。
種結晶の結晶構造は、製造しようとする炭化珪素単結晶の結晶構造と同一であっても異なっていてもよい。従来の方法では、種結晶は製造しようとする炭化珪素単結晶と同じ結晶構造を有するものを用いる必要があり、例えば6H−炭化珪素単結晶を得ようとする場合には6H−炭化珪素の種結晶を用いる必要があった。これに対して本発明では、用いる種結晶の結晶構造に関係なく、目的とする結晶構造の炭化珪素単結晶を得ることができる。具体的には、種結晶として6H−炭化珪素を用いた場合、原料に硼化物もしくはSnを加えれば15R−単結晶が得られ、Gdを加えれば3C−単結晶が得られ、Al、DyもしくはLaを加えれば6H−単結晶が得られる。種結晶として3C−炭化珪素を用いた場合でも同様である。
[添加元素の影響]
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子と各種添加元素を所定量添加し、各雰囲気温度において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として6H及び15Rを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表1及び表2に示す。なお、表1は種結晶として6Hを用いた場合の結果を示し、表2は種結晶として15Rを用いた場合の結果を示す。
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子と各種添加元素を所定量添加し、各雰囲気温度において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として6H及び15Rを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表1及び表2に示す。なお、表1は種結晶として6Hを用いた場合の結果を示し、表2は種結晶として15Rを用いた場合の結果を示す。
表1に示す結果より、1700〜1900℃の温度において、FeB、NiB、Snを添加することにより、6H種結晶を15Rに変態させることができることがわかった。また、1790℃においてGdを添加することにより、6H種結晶を3Cに変態させることができることがわかった。さらにAl、Dy、Laを添加することにより、6H種結晶から変態させることなく6H単結晶を得ることができることがわかった。
表2に示す結果より、1700〜1900℃の温度において、Al、Dy、Laを添加することにより、15R種結晶を6Hに変態させることができることがわかった。また、1790℃においてGdを添加することにより、15R種結晶を3Cに変態させることができることがわかった。さらにFeB、NiB、Snを添加することにより、15R種結晶から変態させることなく15R単結晶を得ることができることがわかった。
[雰囲気温度の影響]
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子と3wt%のSnを添加し、各雰囲気温度において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として6Hを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表3に示す。
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子と3wt%のSnを添加し、各雰囲気温度において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として6Hを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表3に示す。
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子と10wt%のAlを添加し、各雰囲気温度において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として15Rを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表4に示す。
表3に示す結果より、1700℃以上の温度においてSnを添加することにより、6H種結晶を15Rに変態させることができることがわかった。ただし、1900℃以上に加熱すると、結晶多形の変態は示すが、溶湯からのSiの蒸発が著しく進行する問題がある。また表4に示す結果より、1700℃以上の温度においてAlを添加することにより、15R種結晶を6Hに変態させることができることがわかった。また、上記と同様に、1900℃以上に加熱すると、結晶多形の変態は示すが、溶湯からのSiの蒸発が著しく進行する問題がある。
[添加量の影響]
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子とNiBを各種添加量で添加し、雰囲気温度1810℃において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として6Hを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表5に示す。
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子とNiBを各種添加量で添加し、雰囲気温度1810℃において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として6Hを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表5に示す。
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子とDyを各種添加量で添加し、雰囲気温度1830℃において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として15Rを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表6に示す。
表5及び表6に示す結果より、添加量0wt%では結晶多形の変態は示さなかったが、添加量0.5wt%以上で結晶多形の変態を示した。
[無添加における雰囲気温度の影響]
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子を添加し、第3の元素を添加せず、各雰囲気温度において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として6H及び15Rを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表7及び表8に示す。
図1に示す装置を用い、黒鉛製るつぼに珪素粒子を添加し、第3の元素を添加せず、各雰囲気温度において12時間保持し、炭化珪素単結晶を成長させた。種結晶として6H及び15Rを用いたときの結晶多形の変態について調べ、結果を以下の表7及び表8に示す。
上記結果より、雰囲気温度が1700℃未満ではいずれの種結晶も3Cに変態することがわかった。1700℃以上の温度では用いた種結晶の結晶形を維持していた。
1 チャンバー
2 るつぼ
3 加熱装置
4 原料
5 種結晶
6 冷却板
7 治具
8 引き上げ棒
2 るつぼ
3 加熱装置
4 原料
5 種結晶
6 冷却板
7 治具
8 引き上げ棒
Claims (6)
1700〜1900℃の雰囲気温度において、Siと、Cと、第3の元素もしくはその化合物を含む原料を融解した融液に炭化珪素単結晶基板を接触させ、この接触部の温度を前記融液の温度よりも低い温度にして前記基板上に炭化珪素単結晶を成長させることを含む炭化珪素単結晶の製造方法であって、前記第3の元素を選択することにより15R、3C及び6Hのうち所望の結晶構造の炭化珪素単結晶を成長させることができることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
前記第3の元素もしくはその化合物が硼化物又はSnであり、15R−炭化珪素単結晶が得られる、請求項1記載の方法。
前記硼化物がFeB又はNiBである、請求項2記載の方法。
前記第3の元素もしくはその化合物がGdであり、3C−炭化珪素単結晶が得られる、請求項1記載の方法。
前記第3の元素もしくはその化合物がAl、DyもしくはLaであり、6H−炭化珪素単結晶が得られる、請求項1記載の方法。
前記第3の元素もしくはその化合物の添加量が、融液の0.5〜50wt%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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