以下、本発明の実施形態に係る露光装置について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1〜図5には本発明の第1の実施形態に係る露光装置が示されている。また、図6及び図7には本実施形態に係る露光装置に設けられた感光材料搬送用のステージが示されている。
図1〜図5に示すように、露光装置10は装置本体20が大型のカバー体12に収容されて構成されており、図示の状態で、室内の温度及び湿度が管理されるとともに、室内の空気中を浮遊する塵埃や微粒子等が除去されて高い空気洗浄度に保たれたクリーンルーム等の空調環境に設置されている。
カバー体12は、棒状の角パイプ14(図5参照)を枠状に組み付けて形成した枠体に、内外を遮断する複数枚のパネル16が装着されて構成されており、下面部のみが開口して内部に装置本体20を収容する収容室13が形成され、下部の角パイプ14が床面上に設置された一対の架台24に連結されて支持されている。
このカバー体12は、内部に収容室13の一部を構成する露光室(チャンバ)15が設けられて装置本体20の主要部が収容されている略立方体形状のカバー本体部12A、及び、カバー本体部12Aの一側面に突設されて装置本体20のステージ28等を収容するとともにステージ28に基板等の感光材料40を着脱するためのセット部12Bにより構成されている。
図5に示すように、カバー本体部12Aに設けられたパネル16は、カバー本体部12Aの内壁面を構成して露光室15を形成する内パネル16Aと、内パネル16Aの外側に所定の間隔で配置されカバー本体部12Aの外装面を構成する外パネル16Bとで構成されており、これにより、カバー体12の壁面は2層構造とされている。また、内パネル16Aと外パネル16Bの間には部品収容室17が設けられており、この部品収容室17は略密閉された層状空間とされてカバー体12の壁面に沿って形成されている。
図1〜図3に示すように、セット部12Bは、上面がカバー本体部12Aよりも低くされて、セット部12Bの前に立つオペレータのほぼ腰の高さになるように設定されている。セット部12Bの上面には、ステージ28との対応部位に矩形状の開口18が形成され、更に開口18を開放及び閉塞する開閉パネル19が設けられている。開閉パネル19は、カバー本体部12A側の辺縁部が図示しないヒンジを介してセット部12Bに取り付けられており、オペレータの手動操作でヒンジを中心に回動されることにより開口18を開閉する。また、開閉パネル19の裏面には、収容室13の温度を測定する温度センサ72が取り付けられている。
この開閉パネル19が開放されると、ステージ28の上面である感光材料載置面28Aが開口18を介して露出され、開閉パネル19が閉塞されると、ステージ28は隠蔽されて温度センサ72がステージ28の上方近傍に配置され、セット部12Bでは下面部のみが開放された状態となる。なお、このステージ28の近傍に配置された温度センサ72は、ステージ28に載置された直後の感光材料40の温度を測定する非接触型の赤外線温度センサ等に代えてもよい。
上記のカバー体12の収容室13に収容された露光装置10の装置本体20は、ベース部となる矩形の厚板状に形成された定盤22を備えている。定盤22は、カバー体12を構成する角パイプ14が連結された架台24に支持されており、図示のようにセット部12B内からカバー本体部12A内(露光室15)に掛けて配置されている。
定盤22の上面には、長手方向(矢印Y方向)に沿って直線状に延出され互いに平行に配置された一対のガイドレール26が敷設されている。この一対のガイドレール26によって、定盤22上には直線状のステージ移動路が形成されており、また一対のガイドレール26上には、矩形の平盤状に形成された上記のステージ28と、ステージ28を移動可能に支持する基盤30、ステージ28を昇降する昇降機構32、及び、詳細については後述する光量測定手段、ビーム位置検出手段、及びカメラ校正用基準板を備える測定ユニット70とがステージ28にユニット化されて配設されている。
基盤30は矩形の平板状とされ、下面の四隅近傍に、ガイドレール26に摺動可能に係合した4本の脚部34が取り付けられている。基盤30の上面には、基盤30に対しステージ28を所定の間隔で平行に配置するとともに上下方向(矢印Z方向)へ移動させる昇降機構32が設けられている。また、図1〜図3では奥側に位置する昇降機構32の側面部には、図5及び図6に示すように、昇降動作のための駆動力を発生するステッピングモータ36が昇降機構32の側面部から突出(露出)して取り付けられている。
そしてステージ28は、長手方向がガイドレール26の延出方向に沿った向きにされて定盤22上に配置され、一対のガイドレール26に係合した基盤30の各脚部34が各ガイドレール26に対して摺動可能であることにより、各ガイドレール26にガイドされて定盤22上に直線状に設けられたステージ移動路を矢印Y方向に往復移動可能とされている。
定盤22の上面における一対のガイドレール26の間には、ステージ移動用の駆動源となる直動型のリニアサーボモータ38が配設されており、更にリニアエンコーダ37がリニアサーボモータ38に付設されている。
リニアサーボモータ38は、定盤22の長手方向(矢印Y方向)に沿ってガイドレール26と平行に延設された丸棒状のステータ部(磁石部)38Aと、基盤30の下面に取り付けられてステータ部38Aが挿通された筒状のコイル部38Bとにより構成されている(図3及び図5参照)。
図7(C)に示すように、コイル部38Bの下面と両側面には複数の放熱フィン38Cが一体的に設けられており、この放熱フィン38Cは、コイル部38Bの軸心方向(矢印Y方向)に沿って延出されている。また、基盤30の下面に設置されたこのコイル部38Bは、上面が基盤30の下面に直接接触しておらず、図7(A)〜(C)に示すように、リング状に形成された複数の断熱ブッシュ39を介して基盤30下面との間に隙間が設けられ、更に基盤30の下面から突出(露出)した状態で取り付けられている。なお、この断熱ブッシュ39は、例えばガラスやセラミック等の低熱伝導性/低熱膨張性材料によって形成されている。
そして上記のリニアサーボモータ38では、コイル部38Bへの通電によって形成される磁界とステータ部38Aの磁界との磁力作用により、ステータ部38Aに対してコイル部38Bに軸心方向への駆動力が発生する。この駆動力によって、ステージ28は一対のガイドレール26にガイドされ、定盤22上のステージ移動路を矢印Y方向に往復移動する(図10参照)。なお、図中ではステージ28の往路移動方向(アライメント計測方向)は矢印YAで示し、復路移動方向(露光方向/走査方向)は矢印YBで示している。また、リニアエンコーダ37は、ステージ28とともにコイル部38Bがステータ部38Aに対して相対移動する際に、往復移動方向に対応する所定極性のパルス信号を移動量に比例するパルス数だけパルスカウンタへ出力する。このリニアエンコーダ37からのパルス信号に基づいて、ステージ28の定速移動や反転移動、停止等の移動制御が行われる。
上述したステージ28の上面に設けられた感光材料載置面28Aには、本実施形態の露光装置10によって画像露光される露光対象物である、例えば配線パターン等を形成するためにそのパターン等が画像露光されるプリント配線板材料等の感光材料40が、図示しない位置決め部により所定の載置位置に位置決めされた状態でセットされる。
感光材料40には、図4に示すように、露光位置の基準を示すアライメントマークMが角部近傍に複数設けられており(本実施形態では各角部の近傍に4個)、これらのアライメントマークMは例えば円形の貫通孔等によって形成されている。また、ステージ28の感光材料載置面28Aには、図示しない複数の溝部が形成されており、それらの溝部内が負圧供給源によって負圧とされることにより、感光材料40はステージ28上に吸着されて保持される。そして、このステージ28上への感光材料40のセット及び取り外しは、図1〜図4に示すように、ステージ28が移動路の原点位置となるセット部12B側に配置されて停止した状態で、オペレータにより開閉パネル19が開放されて行われる。
定盤22上に設けられたステージ移動路のほぼ中間位置には、定盤22上面の幅方向(矢印X方向)両端部に一対の支柱42が立設されている。この一対の支柱42の一方側(セット部12B側)の上部には、ステージ28の復路移動で走査方向(矢印YB方向)へ搬送される感光材料40に対し、上方から光ビームを照射して走査露光する複数の露光ヘッド46を備えた露光ユニット44が取り付けられている。また、他方側の上部には、幅方向(矢印X方向)に沿って移動可能とされるとともに、ステージ28の往路移動でアライメント計測方向(矢印YA方向)へ搬送される感光材料40に対し、アライメントマークMの位置の合わせて配置され、上方からアライメントマークMを撮影する複数のカメラ62を備えたアライメントユニット60が取り付けられている。これらの露光ユニット44、アライメントユニット60、及び各ユニットの両端部を支持する一対の支柱42は、図1に示すようにステージ移動路を跨いでステージ28を通過可能としたゲート状に構成され、露光室15内に配置されている。
図1及び図4に示すように、露光ユニット44は、一対の支柱42に架設されたユニットベース48を備え、このユニットベース48に、ステージ28の移動方向(矢印Y方向)と直交する方向(矢印X方向)に沿ってm行n列(例えば2行4列)の略マトリックス状に配列された複数(例えば8個)の露光ヘッド46が取り付けられている。
また図1及び図2に示すように、カバー本体部12Aの他側部には、露光室15とは区画構成された部品収容室49が設けられており、この部品収容室49には光源ユニット50や、電源ユニット74及び制御ユニット76等、露光装置10の動作時に発熱する多数の発熱部品が収容されている。また、カバー本体部12Aの側面(外パネル16B)には、部品収容室49内の空気(高温空気)を外部に排気し、部品収容室49内の温度上昇を抑える送風ファン78が取り付けられている。
光源ユニット50には複数のレーザ光源(半導体レーザ)が内蔵されており、各レーザ光源から出射されるレーザ光は図示しない光ファイバを介して露光ユニット44の各露光ヘッド46に導かれる。
各露光ヘッド46は、光源ユニット50から入射されたレーザ光を画像データに応じて画素毎に変調する空間光変調素子として、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)を備えている(図示省略)。各露光ヘッド46では、このDMDによって、光源ユニット50からの入射光(レーザ光)が画素単位で変調され露光ビーム(レーザビーム)として出射される。これにより、露光ユニット44は、露光装置10の露光動作においてステージ28が一定速度で下方を通過する際に、各露光ヘッド46から所定のタイミングでステージ28上の感光材料40の表面にそれぞれ光ビームを照射し、画素パターンを露光(画像露光)する。
図8(B)に示すように、各露光ヘッド46から照射された光ビームで露光される各露光エリア52は、走査方向を短辺とする矩形状であり、走査方向に対して所定角度傾斜している。また、ステージ28の移動に伴い、図8(A)に示すように、感光材料40には露光ヘッド46毎に帯状の露光済み領域54が形成される。
図9に示すように、アライメントユニット60は、一対の支柱42に取り付けられるユニットベース64を備えており、このユニットベース64は、図3にも示すように断面がT字状に形成されている。
ユニットベース64における露光ユニット44側の面には、ステージ28の移動方向(矢印Y方向)と直交する方向(矢印X方向)に沿って一対のガイドレール66が延設されており、各カメラ62は、この一対のガイドレール66に摺動可能にガイドされるとともに、各々に個別に用意されたボールねじ機構68及びそれを駆動する図示しないステッピングモータ等の駆動源により駆動されて、ステージ28の移動方向と直交する方向に独立して移動する。また、各カメラ62は、カメラ本体62Aの先端に設けられたレンズ部62Bを下方へ向けるとともにレンズ光軸が略垂直になる姿勢で配置されており、このレンズ部62Bの先端部にはリング状のストロボ光源(LEDストロボ光源)62Cが取付けられている。
そして各カメラ62は、感光材料40のアライメントマークMを撮影する際に、上記の駆動源及びボールねじ機構68により矢印X方向に移動されてそれぞれ所定の撮影位置に配置され、すなわち、レンズ光軸が、ステージ28によって搬送される感光材料40のアライメントマークMの通過位置に合うように配置され、アライメントマークMが所定の撮影位置に至ったタイミングで、ストロボ光源62Cを発光させ、感光材料40へ照射したストロボ光の感光材料40上面での反射光をレンズ部62Bを介してカメラ本体62Aに入力させることにより、アライメントマークMを撮影する。
また、上述したように、露光ユニット44の各露光ヘッド46では、光源ユニット50から入射されたレーザ光をDMDにより変調して光ビームを感光材料40に照射し画像露光を行うが、その動作中に生じる外乱、あるいは経時的な変化等によって、DMDで反射されて出射される光ビームにおける、走査方向に直交する方向に対する光量分布が不均一になったり、感光材料40上における所定の露光量の値で露光されるべき各部分の露光量が、所定の露光量の値から変化してしまう場合がある。そこで、この露光装置10では、光量分布を均一化するシェーディング調整と露光量の調整をするために、DMD側から出射される光ビームにおける光量分布と露光量を測定するための光量測定器(光量測定手段)が備えられている。
また、各露光ヘッド46では、光源から結像面に至るまでに多数の光学部材や機構部材等が設けられているため、温度変化による熱膨張や熱収縮、及び長期間使用による経時変化の蓄積等により、各露光ヘッド46からの光ビームにより形成される画像(露光済み領域54)が、つなぎ目において無視できない程度のずれを起こし、画像品質が低下する場合がある。そこで、この露光装置10では、複数の露光ヘッド46が出射する光ビームによって形成される各画像(露光エリア52)のつなぎを補正するために、各光ビームの露光位置を検出するためのビーム位置検出用基準板及び受光素子(ビーム位置検出手段)が備えられている。
さらに、アライメント機能を備える本実施形態の露光装置10では、アライメントユニット60の各カメラ62が移動する際にローリング、ピッチング、及びヨーイングして姿勢変化を起こし、撮影位置に配置された状態でレンズ部62Bの光軸中心が正規の位置からずれる場合があるため、その影響により、アライメント機能を用いて露光位置を補正し画像露光を行っても、露光位置が適正位置からずれて許容範囲を超えてしまう場合がある。そこで、この露光装置10では、各カメラ62の姿勢変化による光軸ずれ要因により精度が影響されるアライメント機能を校正するため、各カメラ62によって撮影される校正用マークが複数設けられたカメラ校正用基準板が備えられている。
そして、これらの光量測定手段、ビーム位置検出手段、及びカメラ校正用基準板は、ステージ28の前端部に取り付けられた測定ユニット70に設けられて一体に構成されている。また、シェーディング調整及び露光量調整のための光量測定動作と、各露光ヘッド46が出射する光ビームによって形成される各画像のつなぎを補正するための各光ビームの露光位置検出動作とは、露光装置10の露光動作における所定のタイミング(例えば、所定数の感光材料に対する露光動作後等)に実施され、アライメント機能の校正については、露光装置10の製造時やメンテナンス時、あるいは、露光動作における所定のタイミングに実施される。
図1に示すように、露光装置10は、装置本体20を収容したカバー体12内の収容室13を空調する空調機80を備えている。空調機80は、カバー本体部12A内の露光室15と円筒状のダクト82によって連通されており、吸気口84から吸い込んだ設置環境の空気(外気)を、内蔵されたHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)88を通過させることによって塵埃や微粒子を捕集して浄化し、さらに所定の温度及び湿度に調整してダクト82へ噴出する。また、吸気口84には、空調機80に吸い込まれる外気の温度を測定する温度センサ86が取り付けられている。
ダクト82は、図3に示すように露光室15内における露光ユニット44が近接配置された内壁面と対向する内壁面15Aに先端部82Aが取り付けられており、この先端部82Aは内壁面15Aの上部位置で、且つ、図4に示すように露光室15の幅方向(矢印X方向)におけるほぼ中央に配置されている。ダクト82の吹出口82Bは円形開口とされ、空調機80からの冷却空気がほぼ真下へ吹き出されるよう下方へ向けられている。また、ダクト82の先端部82Aは直線状に形成されており、この直線状部の長さ(吹出口82Bまでの長さ:L)は所定の寸法に設定されている。
空調機80は、ダクト82の吹出口82Bから吹き出す冷却空気の流速や流量等が調整可能であり、本実施形態では、吹出口82Bでの流速が9.4m/s、流量(体積流量)が10m3/minに設定されている。また本実施形態のダクト82は、先端部82A(直線状部)の長さ(L)が30cm以上とされており、吹出口82Bの直径(D)が15cmとされている。
ダクト82の吹出口82Bの下方には、矩形平板状に形成された風向変更板90が設けられている。風向変更板90は、図4に示すように、ステージ28とほぼ同じ幅寸法にされて中央部がダクト82の吹出口82Bのほぼ真下に位置するよう、露光室15の幅方向におけるほぼ中央に配置されており、図3に示すように、一方の長辺縁部(基端部)がヒンジ92を介して露光室15の内壁面15Aに取り付けられ、ヒンジ92を中心に回動可能とされている。また、先端側が角度調整機構94に支持されており、この角度調整機構94を手動操作することで傾斜角度が調整可能とされている。
そして、この風向変更板90は、基端側から、露光室15の内方へ向けられた先端側へ掛けて所定の角度(例えば45度程度)で下り傾斜するよう傾斜角度が調整されており、この状態で先端部がステージ28の移動を妨げない高さに配置されている。これにより、ダクト82の吹出口82Bから下方へ吹き出されて露光室15内に供給された冷却空気は、風向変更板90によって送風方向が略水平方向に変えられ、走査方向(矢印YB方向)に沿った方向へ送風される。
また、図3及び図4に示すように、ステージ28側には導風板96が設けられている。図6に示すように、導風板96は、矩形平板状の板金等を長手方向にて鋭角に屈曲して作製したものであり、角部を挟んだ一方が導風板本体部96A、他方が取付板部96Bとされ、取付板部96Bの先端部(後端部)が基盤30の前端部に取り付けられてステージ28の前方に配置されている。
この導風板96は、図4に示すように、幅寸法がステージ28の幅寸法の1/2程度とされ、ステージ28(基盤30)に対して幅方向におけるほぼ中央に配置されている。また、図3に示すように、基盤30から前方へ突出された取付板部96Bがほぼ水平に配置され、取付板部96Bの上側に位置する導風板本体部96Aが、基端側(角部側)からステージ28側へ向けられた先端側へ掛けて所定の角度(例えば45度程度)で上り傾斜して配置されている。また導風板96は、ステージ28が図3及び図4に示す原点位置に配置されると、アライメントユニット60に設けられたカメラ62のほぼ真下に配置され、図10に示すように、ステージ28が露光室15内へ移動すると、露光室15を構成する内壁面15Aの下部に凹設された退避空間15Bに測定ユニット70とともに進入する。
これにより、ステージ28が原点位置で停止しているとき、及び、原点位置と露光室15との間を往復移動する途中では、走査方向に沿ってステージ28側へ送風される冷却空気のうち、ステージ移動路の中央を流れる空気流は導風板96によってステージ28の上面(感光材料載置面28A)側へ導かれ、ステージ28上を走査方向に沿って流動される。
また、原点位置に配置されたステージ28前部の上方には、ステージ28の幅方向に亘り、除電装置(イオナイザ)98が配設されている。除電装置98は、中空パイプ状の吹出部98Aと、吹出部98Aへイオン化されたエアを供給するイオン発生部98Bとで構成されており、イオン発生部98Bにおいて、アース電極と放電電極との間でコロナ放電を発生させることによりイオンを生成し、このイオンを送風源によって吹出部98Aに供給し、吹出部98Aからステージ28の感光材料載置面28Aに向けてイオン化されたエアを吹き出す。これにより、ステージ28によって搬送される感光材料40が除電装置98の下方を通過する際は、静電気で感光材料40に付着している塵埃が、吹出部98Aから吹き出されるイオン化されたエアによって除電され、エアブローによって感光材料40から剥離し除去される。
図1に示すように、露光装置10は、装置本体20及び空調機80等を制御するコントローラ100を備えている。このコントローラ100には、上述した装置本体20に設けられたステッピングモータ36、リニアエンコーダ37、リニアサーボモータ38、露光ユニット44の各露光ヘッド46、アライメントユニット60の各カメラ62とカメラ移動用駆動源、測定ユニット70、負圧供給源、収容室13内に設けられた温度センサ72、除電装置98、部品収容室49内に設けられた光源ユニット50、電源ユニット74、制御ユニット76、及び、空調機80と温度センサ86等が接続されており、これらはコントローラ100に制御されてそれぞれ動作する。
また、図5に示すように、前述したカバー体12の部品収容室17には、複数の制御基板102(102A〜102E)が収容されている。これらの制御基板102はそれぞれ基台104に固定されて内パネル16Aの外側面に取り付けられており、コントローラ100と接続されている。また、この制御基板102には、コントローラ100と連動して装置本体20の露光ユニット44、カメラ62、除電装置98等を制御する基板も含まれており、それらの制御基板は、各制御対象にそれぞれ近接して配置されている。また、カバー体12の上部に設けられた外パネル16Bには、部品収容室17内の空気(高温空気)を外部に排気し、部品収容室17内の温度上昇を抑える送風ファン106が取り付けられている。
次に、上記構成とされた露光装置10による収容室13の空調動作(室温制御動作)、感光材料40に対する露光動作、及び作用について説明する。
電源が遮断された非動作状態の露光装置10では、装置本体20に設けられたステージ28が図1〜図4に示す原点位置に配置されている。この状態で、オペレータがコントローラ100を操作して露光装置10の電源を投入すると、装置本体20の各電力供給部が通電されて発熱し、収容室13内の空気が暖められて次第に温度上昇する。また、露光動作時に特に高温となるステージ昇降用のステッピングモータ36やステージ移動用のリニアサーボモータ38のコイル部38B、露光ユニット44、アライメントユニット60が走査方向に沿って配設されているため、室温が走査方向に沿って不均一になり、走査方向に沿って温度分布が形成されやすくなる。
(空調動作)
電源投入後に、オペレータがコントローラ100から空調動作の開始操作をすると、空調機80が作動し、空調機80は、吸気口84から吸い込んだ外気を機内のHEPAフィルタ88を通過させて浄化するとともに所定の温度及び湿度に調整して空調のための冷却空気(冷気)を生成し、ダクト82へ噴出する。
この冷却空気は、コントローラ100を通して予め設定された流速及び流量で、ダクト82の吹出口82Bからほぼ真下へ向けて吹き出され(図3の矢印AR1)、露光室15に供給される。ダクト82から下方へ吹き出された冷却空気は、風向変更板90によって送風方向が略水平方向に変えられ、走査方向に沿った方向へ送風される(図3の矢印AR2)。
また、この冷却空気の流動に伴って、露光室15内の上部に滞留している周辺の空気(高温空気)も走査方向に沿った方向へ流動する(図3の矢印AR3、AR4)。さらに、露光室15内の下部では、走査方向に沿った方向へ送風されステージ28側へ流動する冷却空気のうち、ステージ移動路の中央を流動する空気流が導風板96に沿って上昇流となり、露光ユニット44の下方へ導かれる(図3の矢印AR5、AR6)。そしてこれらの流動空気を伴い、冷却空気は更に走査方向に沿って送風され、アライメントユニット60及び露光ユニット44の下方を通過し(図3の矢印AR7)、ステージ28の感光材料載置面28A上を通過して(図3の矢印AR8)、ステージ28の後端部に至ると、セット部12Bの内壁面に沿って送風方向が下方へ変えられる(図3の矢印AR9)。
また、露光室15内の下部におけるステージ移動路の両側部を走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気は、測定ユニット70の下側や両側に流れ込み(図3の矢印AR10)、そのまま走査方向に沿って定盤22と基盤30の間や昇降機構32の両側を流動し、それらを通過するとやはりセット部12Bの内壁面に沿って流動方向が下方へ変えられる(図3の矢印AR11)。そして、ステージ28上からの下降流と、昇降機構32の両側や基盤30下面側からの下降流とは、合流してセット部12Bの下面部開口を通し外部へ排気される。
また、コントローラ100は、収容室13内におけるステージ28の上方近傍に設けられた温度センサ72の測定温度から収容室13の温度を把握し、空調機80の吸気口84に設けられた温度センサ86が測定する外気の温度から、露光装置10が設置されるともに露光前の感光材料40が置かれるクリーンルーム等の装置設置環境の温度を把握する。そしてコントローラ100は、これらの測定温度に基づいて、収容室13(露光室15)に供給する空気の温度調整(空調制御)を行う。具体的には、空調機80を制御して、収容室13の温度(ステージ近傍の温度)が装置設置環境の温度とほぼ同じ又は所定の温度差内(例えば±0.2℃)になるよう、空調機80が生成する冷却空気の温度を調整する。これにより、収容室13、特にステージ28の上方近傍では、室温が常に装置設置環境の温度とほぼ同じ又は所定の温度差内に保たれる。
このように、露光装置10の空調動作では、露光室15に供給された冷却空気が露光室15を含む収容室13内を走査方向に沿った方向へ送風されるため、収容室13における走査方向に沿った温度分布はほぼ均一になり、走査方向に沿った温度変化も起こりにくくなる。また、露光室15では、室内の空気が上記冷却空気の送風によって循環され、室内全体の温度上昇が抑えられる。これにより、装置本体20の各発熱部は空冷されて温度上昇が抑えられ、さらに、収容室13内の空気中を浮遊する塵埃が室外へ排出されて室内は高い空気洗浄度に保たれる。
一方、露光装置10の部品収容室49では、電源投入後に光源ユニット50、電源ユニット74、制御ユニット76が通電されて発熱し、室内の空気が暖められて温度上昇する。この部品収容室49では、送風ファン78が作動して室内の高温空気が外部に排気され、室温及び各発熱部品の温度上昇が抑えられる。また、部品収容室17では、各制御基板102が通電されて発熱し、室内の空気が暖められて温度上昇するが、送風ファン106が作動して室内の高温空気が外部に排気され、室温及び各発熱部品の温度上昇が抑えられる。
(露光動作)
露光装置10の露光動作は、上記の空調動作が行われている状態で行われる。露光動作においては、まず、感光材料40の露光パターンに応じた画像データがコントローラ100に入力されると、コントローラ100は内蔵されたメモリに画像データを一旦記憶する。この画像データは、画像を構成する各画素の濃度を2値(ドットの記録の有無)で表したデータである。
次に、オペレータは、装置設置環境に置かれている露光対象の感光材料40を露光装置10にセットするため、セット部12Bの開閉パネル19を開放して装置本体20のステージ28上に感光材料40を載置する。
なお、本実施形態の露光装置10により画像露光を行う感光材料40としては、プリント配線板や液晶表示素子等のパターンを形成(画像露光)する材料としての基板やガラスプレート等の表面に、感光性エポキシ樹脂等のフォトレジストを塗布したもの、又ドライフィルムの場合はラミネートしたものなどが挙げられる。
この感光材料40については、製造過程で付着した塵埃等が除去しきれず、僅かに付着した状態で装置設置環境に搬入されることもある。その場合、ステージ28上へのセット作業時にオペレータの手が感光材料40に触れ、又、振動が加えられることで、感光材料40から塵埃が落ちて収容室13内に入り易くなる。
これに対し、本実施形態の露光装置10では、開閉パネル19が開放されると、ステージ28上を走査方向に沿って送風される冷却空気が、セット部12Bの開口18を通して外部へ排気されるため(図3の矢印AR13)、感光材料40から落ちた塵埃がその風圧で吹き飛ばされ収容室13内に入り難くされる。また、仮に収容室13内に侵入したとしても、上記の冷却空気によってステージ28上に落下する前にステージ28の後方へ吹き飛ばされ、そのステージ後方で生じている下降流(図3の矢印AR9、AR12)によって室外へ排出される。
また、ステージ28の感光材料載置面28Aは、コントローラ100によって駆動制御されるステッピングモータ36の駆動力で、昇降機構32が作動することにより昇降する(図1の矢印Z方向)。これにより、厚さの異なる複数種類の感光材料に対する露光などにも対応できている。また、コントローラ100は、このステージ昇降用のステッピングモータ36に対し、待機状態となるパルス信号の停止時に、供給するモータ駆動電流を所定量(例えば約50%)低下させるカレントダウン制御を行う。これにより、待機時におけるステッピングモータ36の発熱が抑えられる。
オペレータは、コントローラ100からの入力操作で、この露光する感光材料40に応じた感光材料載置面28Aの高さ設定を完了させた後に、原点位置に停止されたステージ28の感光材料載置面28Aに感光材料40をセットし、開閉パネル19を閉塞してコントローラ100から露光動作の開始操作を行う。すると、コントローラ100に制御されて負圧供給源が作動し、感光材料40はステージ28上に吸着されて保持される。
続いて、コントローラ100によりリニアサーボモータ38が駆動制御され、感光材料40を保持したステージ28は、ガイドレール26に沿ってアライメント計測方向(矢印YA方向/往路移動方向)に一定速度で移動開始する。このステージ28の移動に伴い、感光材料40が除電装置98の下方を通過する際には、コントローラ100に制御されて動作する除電装置98からのエアブローにより、静電気で感光材料40に付着している塵埃が取り除かれ露光面が清掃される。また、このエアブロー清掃で感光材料40から除去された塵埃も、ステージ28上を走査方向に沿って送風される冷却空気によってステージ後方へ吹き飛ばされ室外へ排出される。
ステージ28が更に移動し、感光材料40がアライメントユニット60の下方を通過する際には、コントローラ100に制御された各カメラ62によって、感光材料40の各アライメントマークMが撮影されアライメント計測が行われる。
このアライメント計測で、各カメラ62は真下(レンズ部62Bの光軸上)を通過するアライメントマークMを、所定のタイミングでそれぞれ撮影し、その撮影した画像データを、すなわち、露光位置の基準がアライメントマークMによって示された基準位置データを含む画像データをコントローラ100へ出力する。
コントローラ100は、入力された各アライメントマークMの画像データ(基準位置データ)から判明する画像内におけるマーク位置及びマーク間ピッチ等と、リニアエンコーダ37からのパルス信号から判明するそのアライメントマークMを撮影したときのステージ28の位置、及びカメラ62の位置から、演算処理によって、ステージ28上における感光材料40の載置位置のずれ、移動方向に対する感光材料40の傾きのずれ、及び、感光材料40の寸法精度誤差等を把握し、感光材料40の被露光面に対する適正な露光位置を算出する。そして、後述する露光ユニット44による画像露光時に、メモリに記憶されている露光パターンの画像データに基づいて生成する制御信号をその適正な露光位置に合わせ込んで画像露光する露光位置ずれの補正(アライメント)を実行する。
感光材料40がアライメントユニット60の下方を通過するとアライメント計測が完了し、図10に示すように、ステージ28が往路移動方向における最下流位置に達すると、コントローラ100は、リニアサーボモータ38を制御して逆方向へ駆動させる。
ここで、ステージ28がアライメント計測方向へ進行している途中や、図10に示す最下流部に位置しているときも、上述した空調動作が継続されていることで、収容室13内及びステージ28上では常に冷却空気が走査方向に沿って送風されている。したがって、このようにステージ28が移動しても収容室13における走査方向に沿った温度分布はほぼ均一な状態に保たれ、また走査方向に沿った温度変化も起こりにくされる。
往路移動方向における最下流位置に達したステージ28は、リニアサーボモータ38の逆方向への駆動によって反転移動し、ガイドレール26に沿って走査方向(矢印YB方向/復路移動方向)に一定速度で移動開始する。このステージ28の移動に伴い、感光材料40が露光ユニット44の下方を通過する際には、露光面の画像露光領域が露光開始位置に達すると、コントローラ100に制御された露光ユニット44の各露光ヘッド46は露光ビームを照射して感光材料40の露光面に対する画像露光を開始する。
ここで、コントローラ100は、メモリに記憶された画像データを複数ライン分ずつ順次読み出し、その画像データに基づいて各露光ヘッド46の制御信号を生成する。この制御信号には、前述した露光ビームの光量分布を均一化するシェーディング調整と露光量の調整、及びアライメント計測によって得られた感光材料40に対する露光位置ずれの補正が加えられる。そして、この生成及び補正された制御信号に基づいて各露光ヘッド46のDMDを制御する。
また、コントローラ100に制御された光源ユニット50はレーザ光を出射し、このレーザ光が各露光ヘッド46のDMDに照射されると、DMDの画素毎に変調された露光ビームが各露光ヘッド46から感光材料40に照射され、感光材料40の露光面がDMDの使用画素数と略同数の画素単位(露光エリア)で露光される。これにより、ステージ28とともに一定速度で移動される感光材料40は露光ユニット44によって走査露光され、露光ヘッド46毎に帯状の露光済み領域54(図8参照)が形成される。
感光材料40が露光ユニット44の下方を通過すると画像露光が完了し、ステージ28はリニアサーボモータ38の駆動力でそのまま走査方向の下流側へ移動する。そして、復路移動方向における最下流位置の原点位置に戻って停止し、ステージ28上への負圧供給源からの負圧供給が解除されて、感光材料40に対する露光動作が終了する。
オペレータは、セット部12Bの開閉パネル19を解放してこの露光済の感光材料40をステージ28上から取り外し、続けて露光する場合は、新たな(未露光の)感光材料40をステージ28上に載置し開閉パネル19を閉塞して、再びコントローラ100から露光動作の開始操作を行う。この露光動作の手順を繰り返すことにより、露光装置10によって複数枚の感光材料40を連続的に露光することができ、これにより、露光済の感光材料40が連続生産される。
以上説明したように、本実施形態の露光装置10では、空調動作によって空調機80からダクト82を通し収容室13(露光室15)に供給された冷却空気は、風向変更板90によって走査方向に沿った方向へ送風されるため、収容室13における走査方向に沿った温度分布は均一になり、走査方向に沿った温度変化も起こりにくくなる。これにより、ステージ28によって走査方向に沿った方向へ往復搬送される感光材料40がその走査方向に沿った温度分布や温度変化で熱変形し、露光位置ずれなどの精度低下を招くことが抑えられる。したがって、高精度な露光を実現することができる。
また、ステージ28の感光材料載置面28A上や、感光材料載置面28Aに載置された感光材料40上は、この走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気によって清掃され、塵埃等が蓄積することなくクリーンな状態に保たれる。これにより、感光材料載置面28Aに載置される感光材料40の浮きや位置ずれ、あるいは感光材料40上における塵埃等の蓄積が抑えられ、それらを要因とする露光精度の低下を防止することができる。特にここでは、空調機80から浄化された冷却空気が供給されるため、収容室13の空気洗浄度が向上し、収容室13内を浮遊する塵埃等による露光への悪影響を防止できる。また、この浄化された冷却空気が走査方向に沿った方向へ送風されることにより、ステージ28の感光材料載置面28Aや測定ユニット70、ステージ移動路上、さらに露光ユニット44やアライメントユニット60等の塵埃等よる汚染がより確実に防止される。
また、本実施形態では、ダクト82から下方へ吹き出された冷却空気の送風方向を、風向変更板90によって走査方向に沿った方向へ変更しており、これにより、例えば収容室13内に配設される装置構成部との関係でダクト82の設置位置や吹き出し方向が制限されるような場合でも、ダクト82から吹き出された空気を上記の風向変更板90によって容易に走査方向に沿った方向へ変更し送風することができる。また、本実施形態のように風向変更板90を可動式として傾斜角度を調整可能とした構成であれば、送風方向を微調整するようなことも可能となる。
また、本実施形態では、空調機80からの冷却空気がダクト82の先端部82A(直線状部)を通過し吹出口82Bから吹き出されるため、吹出口82B以降の空気の流れ(送風方向)が安定し、所望の方向(風向変更板90側)に正確に送風することができる。また、前述した流速(9.4m/s)及び流量(10m3/min)の元では、本実施形態のようにダクト82の直線状部の長さを30cm以上に設定することにより、上記の効果が得られている。ただし、流速や流量は空調条件に応じて適宜設定されるものであるため、例えば流速及び流量が上記の値より大きくされる場合でも十分な効果が得られるようにするために、直線状に形成するダクト82の先端部82Aの長さ(L)は長いほど好ましい。
また、本実施形態では、ステージ28の前方、すなわち、感光材料載置面28Aに対し、走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気の流動方向における上流側に設けられた導風板96によって、上記の冷却空気がより多く載置面上へ導かれるようになるため、感光材料載置面28A、及び感光材料載置面28Aに載置された感光材料40の温度変化が更に起こりにくくされ、温度の安定性が高められる。さらに、感光材料載置面28A上の送風量が増加することにより、送風による感光材料載置面28A上の清掃性も向上する。
また、ステージ28が原点位置に配置されているときは、ステージ28の移動中に比べてステージ28(測定ユニット70)と露光ユニット44との間の空間形状が大きくなり、このようにステージ28と露光ユニット44との間の空間形状が変化することによって、この空間に送風される空気の量や流動状態が変化し、露光ユニット44の空冷状態が変化しやすくなる。これに対し、本実施形態では、ステージ28が原点位置に配置されているときに、上記の導風板96によって、走査方向に沿ってステージ28側へ送風される冷却空気がより多く露光ユニット44の下方に導かれるため、露光ユニット44の下方を送風される空気の量や流動状態がステージ28の移動中とほぼ同じにされる。これにより、露光ユニット44の空冷状態がステージ28の移動によって変化することが抑えられて温度変化が抑制され、この温度変化を要因とする露光ユニット44(各露光ヘッド46)の熱変形による露光位置(各露光ヘッド46の光ビーム照射位置)の精度低下が抑えられる。さらに、ステージ28によって搬送され露光ユニット44に対し相対移動する感光材料40の空冷状態の変化も抑えられて熱変形が抑制される。
また、本実施形態では、感光材料40に対する露光位置を補正するために感光材料40に設けられたアライメントマークMを読み取る複数のカメラ62は、ユニットベース64に取り付けられてステージ移動路上に配設されている。このユニットベース64は、断面がT字状とされて上部以外はフラットであり、特に下部側に突起等が存在しない形状とされている。そのため、このユニットベース64の下方をステージ28が往復移動しても、図3及び図10のB部(一点鎖線の四角)に示すように、走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気の流れ(流動状態)はユニットベース64によって変化されずにほぼ一定とり、ユニットベース64及びカメラ62の空冷状態が安定する。
このように、ユニットベース64は、ステージ28が移動しても走査方向に沿った方向へ送風される空気の流れをほぼ変化させない形状とされているため、ユニットベース64及びカメラ62の温度変化が抑えられて温度は一定に保たれ、この温度変化を要因とするカメラ62の位置ずれ、すなわちアライメントマークMの読取位置の精度低下が抑えられる。さらに、ステージ28によって搬送され、ユニットベース64及びカメラ62に対し相対移動する感光材料40の空冷状態も安定し、熱変形が抑えられる。
また、このユニットベース64は両端部が一対の支柱42に支持されており、この一対の支柱42とともに、ステージ移動路上にゲート状の構造物を構成して配設されている。ユニットベース64の下方においては、この対向して配置された一対の支柱42が、走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気を整流する整流部(整流手段)として機能している。すなわち、図6に示すように、ユニットベース64付近を走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気(矢印AR14)は、対向する一対の支柱42間を通過することで、乱流や外側へ広がる拡散流の発生が抑えられ整流される。これにより、この一対の支柱42間を通過する冷却空気の流動状態が安定し、ユニットベース64の温度変化及びそれを要因とする悪影響がより効果的に抑えられている。
また、本実施形態では、ステージ28を駆動するリニアサーボモータ38のコイル部38Bが断熱ブッシュ39を介してステージ28を支持する基盤30に取り付けられているため(図7参照)、例えばステージ28を連続移動させることでコイル部38Bの高温状態が継続されるような場合でも、コイル部38Bから基盤30及び昇降機構32を介してステージ28に伝導される熱量は断熱ブッシュ39によって低減される。これにより、ステージ28の温度上昇(温度変化)が抑えられ、ステージ28からの熱伝導による感光材料40の熱変形が抑えられる。
また、このコイル部38Bは、基盤30の下面に露出されて取り付けられているため、やはり、ステージ28が連続移動されることで高温となるような場合でも、図7(A)に示すように、基盤30の下面側を走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気(矢印AR15)によって効率よく冷却される。これにより、コイル部38B及びステージ28の温度上昇(温度変化)が抑えられ、ステージ28からの熱伝導による感光材料40の熱変形が抑えられる。
さらに、このコイル部38Bは、下面及び両側面に設けられた放熱フィン38Cにより、表面積が拡大されて放熱が促進される。また、この放熱フィン38Cは走査方向に沿って延出されているため、走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気の流れを乱すことなく、その安定して流動する空気によって放熱効率が高められる。さらにここでは、コイル部38B上面(取付面)と基盤30下面との間に上記の断熱ブッシュ39が介在することで隙間が設けられているため、コイル部38Bの上面側も冷却空気が通過する。このように、このコイル部38Bでは、放熱(空冷)可能な表面積が更に拡大されていることで、放熱効率が更に高められる。
また、ステージ28を昇降するステッピングモータ36についても、昇降機構32の側面部に露出されて取り付けられているため、図6に示すように、昇降機構32の側面側を走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気(矢印AR16)によって効率よく冷却される。これにより、ステッピングモータ36及びステージ28の温度上昇(温度変化)が抑えられ、ステージ28からの熱伝導による感光材料40の熱変形が抑えられる。
さらに、このステッピングモータ36は、コントローラ100に駆動制御されて待機時にカレントダウンするため、待機時における発熱が抑えられる。これにより、このステッピングモータ36からの熱伝導によるステージ28の温度上昇(温度変化)が抑えられる。
また、本実施形態では、ステージ28近傍の温度が温度センサ72によって測定され、その測定温度に基づいて、コントローラ100に制御された空調機80は収容室13(露光室15)に供給する冷却空気の温度調整を行っている。このように、収容室13の空調をステージ近傍の測定温度を用いて行うことにより、装置外部からステージ28にセットされた感光材料40の温度(装置設置環境の温度)に即した室温制御が可能となり、例えば感光材料40の温度に収容室13の温度(室温)を近づけることも可能となる。これにより、ステージ28への載置後に、装置設置環境と室温の温度差によって生じる感光材料40の熱変形量が抑えられるようになる。
さらにここでは、空調機80の吸気口84に設けた温度センサ86によって、外気の温度を測定することにより、露光前の感光材料40が置かれる装置設置環境の温度を把握し、その外気の測定温度及び収容室13の測定温度に基づいて、コントローラ100に制御された空調機80が収容室13(露光室15)に供給する空気の調整温度を変更している。このように、収容室13の空調に装置設置環境の温度を利用することでも、装置外部からステージ28に載置された感光材料40の温度(装置設置環境の温度)に即した収容室13の温度制御が可能であり、本実施形態のように、収容室13の温度(室温)を装置設置環境の温度に近づける空調を行うことで、ステージ28に載置された感光材料40における装置設置環境と室温の温度差によって生じる熱変形量が抑えられるようになる。また、この場合は、ステージ28近傍に設けた温度センサ72による収容室13の室温測定とは無関係に、装置設置環境の温度、すなわち感光材料40の温度が外気の温度測定を通して把握できるため、上記の収容室13の温度制御が迅速に行えるようになる。
また、本実施形態では、装置動作時に発熱する光源ユニット50、電源ユニット74、制御ユニット76を、収容室13とは独立して設けた部品収容室49に収容し、また、装置動作時に発熱する制御基板102を、収容室13とは独立させてカバー体12の壁面に沿って形成した部品収容室17に収容していることにより、収容室13内に設けられる発熱部品(熱源)の数を少なくすることができている。これにより、収容室13の温度変化が抑えられて空調制御が容易となり、感光材料40の走査方向に沿って生じる温度分布や温度変化が抑制しやすくなる。さらにここでは、制御基板102を収容するための部品収容室17を、内部に収容室13が設けられて装置本体20を収容したカバー体12の壁面に沿って形成していることにより、装置本体20の被制御部や電力供給部に制御基板102を近づけて配置することができる。これにより、それらの間を電気的に接続する配線の経路が短縮され、配線処理が簡素化されるとともに配線の耐ノイズ性を向上することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態に係る露光装置10において、露光動作におけるステージ28の移動に応じて空調機80を制御し空調風量を変更する空調風量制御技術を取り入れたものであり、以下、第2の実施形態に係る露光装置10の空調動作(空調風量制御動作)について説明する。
本実施形態では、コントローラ100が露光動作におけるステージ28の移動に応じて空調機80を制御し空調風量を変更する。
具体的には、図11に示すように、ステージ28がダクト82の吹出口82Bから最も離間した原点位置に配置されるときは、空調機80がダクト82へ噴出する冷却空気の風量、すなわちダクト82の吹出口82Bから露光室15へ吹き出される冷却空気の流量を多くし(矢印AR21)、図12に示すように、ステージ28がダクト82の吹出口82Bに近接し往路移動方向における最下流位置付近に配置されるときは、上記の空調風量を少なくする(矢印AR22)。
また、原点位置での空調風量を最大値、最下流位置での空調風量を最小値とし、ステージ28が原点位置と最下流位置との間を往復移動する途中は、往路移動ではステージ28が原点位置から離れるに従い空調風量が最大値から最小値へ向けて少なくなるようにし、又、復路移動ではステージ28が最下流位置から離れるに従い空調風量が最小値から最大値へ向けて多くなるようにするなどしてもよい。さらにこの空調風量の増減については、ステージ28の移動距離(吹出口82Bとの相対距離)に比例して連続的(無段階)又は段階的に変化させる、あるいは、予め実験等を行って、移動路上における複数ポイントにステージ28を配置し各ポイントで風量を変化させたときの装置各部の温度変化や性能変化、ステージ28上の感光材料40の熱変形量を測定し、それらの変化量が最も小さくなる最適な空調風量制御条件を求め、その条件に基づいて変化させるなどしてもよい。また、この実験等で求めた空調風量制御条件はデータ化してコントローラ100のメモリに記憶しておくことで、コントローラ100によるそのデータを用いた空調機80の風量制御が可能となる。
以上により、本実施形態では、露光動作においてステージ28が原点位置側に配置される場合は、ダクト82の吹出口82Bから吹き出されて収容室13内を走査方向に沿って送風される冷却空気の風量(流量)が多くされ風圧が強まり、又、ステージ28が最下流位置側に配置される場合は、上記冷却空気の風量が少なくされ風圧が弱まる。これにより、収容室13内に走査方向に沿って配設された装置主要部の熱的平衡状態を保つことができ、感光材料40の熱変形を抑えたより高精度な露光を行うことができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態に係る露光装置10において、空調機80から露光室15に冷却空気を供給するためのダクトの構造を変更したものであり、以下、第3の実施形態に係る露光装置の構成について説明する。
図13に示すように、本実施形態では、露光室15内に第1の実施形態で説明した風向変更板90が存在せず、退避空間15Bの奥壁面15Cに、空調機80からの冷却空気を露光室15内に導くダクト110の先端部110Aが配置されている。
本実施形態のダクト110は、先端部110Aが直線状に形成されてほぼ水平に配置され、退避空間15Bの奥壁面15Cから内方へ少し突出されている。また、吹出口110Bが導風板96側へ向けられ、冷却空気をほぼ水平方向へ吹き出す構成とされている。さらに、このダクト110も、第1の実施形態と同じく先端部110A(直線状部)の長さ(吹出口110Bまでの長さ:L)は所定の寸法(例えば30cm以上)に設定されている。
以上により、本実施形態では、第1の実施形態で説明した空調動作により空調機80からダクト110を介して露光室15に吹き出された冷却空気は、ダクト110の吹出口110Bから直接的に走査方向に沿った方向へ送風される。
これにより、第1の実施形態と同様に、収容室13における走査方向に沿った温度分布は均一になり、走査方向に沿った温度変化も起こりにくくなる。したがって、ステージ28によって走査方向に沿った方向へ往復搬送される感光材料40がその走査方向に沿った温度分布や温度変化で熱変形し、露光位置ずれなどの精度低下を招くことが抑えられ、高精度な露光が実現できるなどの第1の実施形態と同様の効果が得られる。また本実施形態の場合も、露光室15に供給される冷却空気が、所定の長さ寸法に設定されたダクト110の先端部110A(直線状部)を通過し吹出口110Bから吹き出されるため、吹出口110B以降の空気の流れ(送風方向)が安定し、所望の方向(走査方向に沿った方向)に正確に送風することができる。
さらに、本実施形態では、風向変更板等を不要とした簡単な構成で、空調機80からの冷却空気を確実に走査方向に沿った方向へ送風することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第1の実施形態とほぼ同じ構成の露光装置において、露光動作におけるステージの移動によって露光ユニット44の空冷状態が変化しないようにしたものであり、以下、第4の実施形態に係る露光装置の構成及びステージの移動動作について説明する。
図14に示すように、本実施形態では、感光材料40を搬送する矩形の平盤状に形成されたステージ120は、移動方向(矢印Y方向)に沿った長手方向が第1の実施形態のステージ28よりも長くされており、原点位置に配置されているときに、平面視方向にて感光材料載置面120Aの前端部が露光ユニット44に掛かる(重なる)ようにされている。
また、図15に示すように、露光動作でステージ120が往路移動方向における最下流位置に配置されているときには、平面視方向にて感光材料載置面120Aの後端部が露光ユニット44に掛かる(重なる)ようにされている。
以上により、本実施形態では、ステージ120が原点位置で停止しているとき(図14の状態)、露光動作で最下流位置に配置されたとき(図15の状態)、及び原点位置と最下流位置との間を往復移動する途中で、露光ユニット44とステージ120との間に設けられた空間Cの形状はほぼ変化しないようになる。このように、ステージ120が移動しても、露光ユニット44とステージ120との間に設けられた空間形状がほぼ変化しないことにより、この空間Cに送風される冷却空気の流動状態がほぼ一定となり露光ユニット44の空冷状態が安定する。これにより、露光ユニット44の温度変化が抑えられて温度は一定に保たれ、この温度変化を要因とする露光ユニット44の熱変形による露光位置の精度低下が抑えられる。さらに、ステージ120によって搬送され露光ユニット44に対し相対移動する感光材料40の空冷状態も安定し、熱変形が抑えられる。
また、本実施形態では、図14及び図15に示すように、第1の実施形態で説明した露光ユニット44の空冷状態の変化を抑制する導風板96等をステージ前方に設けなくとも、上述した効果が得られ好適である。
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、第4の実施形態とは異なる構成によって、露光動作におけるステージの移動によって露光ユニット44の空冷状態が変化しないようにしたものであり、以下、第4の実施形態に係る露光装置の構成について説明する。
図16(A)、(B)に示すように、本実施形態では、走査方向(ステージ28の移動方向)に沿って並列配置された露光ユニット44及びアライメントユニット60の各カメラ62と、ステージ28(測定ユニット70)との間に、透明ガラス製の隔壁板130が設けられている。この隔壁板130は、両側端部が一対のガイドレール26の外側に配置された一対の支持板132に取り付けられて支持されてほぼ水平に配置されており、したがって、走査方向に沿った平面状とされている。また、露光ユニット44の各露光ヘッド46から照射された露光ビームは、この透明な隔壁板130を透過することができ、各カメラ62は、この透明な隔壁板130を通して感光材料40のアライメントマークMを読み取ることができる。
このように、本実施形態では、露光ユニット44及びアライメントユニット60の各カメラ62と、ステージ28との間に、透明な隔壁板130を走査方向に沿った平面状に設けることにより、露光ユニット44の各露光ヘッド46から照射された露光ビームによる感光材料40の露光を妨げず、且つ、各カメラ62による感光材料40のアライメントマークMの読み取りを妨げない状態を維持しつつ、ステージ28が移動しても、露光ユニット44及びアライメントユニット60の周辺の空間形状が変化しない構成となる。これにより、この空間に送風される冷却空気(図16(B)の矢印AR51)の流動状態がほぼ一定となって、露光ユニット44及びアライメントユニット60の空冷状態が安定する。
したがって、露光ユニット44の温度変化が抑えられて温度は一定に保たれ、この温度変化を要因とする露光ユニット44の熱変形による露光位置の精度低下が抑えられる。また、アライメントユニット60の温度変化が抑えられて温度は一定に保たれ、この温度変化を要因とするアライメントユニット60の位置ずれ、すなわちアライメントマークMの読取位置の精度低下が抑えられる。さらに、ステージ28によって搬送され露光ユニット44及びアライメントユニット60に対し相対移動する感光材料40の空冷状態も安定し、熱変形が抑えられる。
また、露光においては、露光ビームが照射された感光材料40からガスが揮発し、そのガスによって露光ヘッド46やカメラ62に設けられたレンズが汚染され透過率が低下する不具合を生じることがあるが、本実施形態では、露光ユニット44及びアライメントユニット60は隔壁板130によって上記の揮発ガスから保護されるため、露光ヘッド46やカメラ62のレンズが汚染されて悪影響が及ぶことを防止できる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、第1の実施形態に係る露光装置10の装置本体20に、ステージ28が移動してもステージ駆動源の周囲における冷却空気の流動状態がほぼ変化しないように抑制する流動変化抑制手段を設けたものであり、以下、第6の実施形態に係る露光装置の構成について説明する。
図17に示すように、本実施形態では、ステージ28とユニット化された基盤30の下面における両側部に、各脚部34の間に形成された開口を塞ぐ一対の閉塞板140が基盤30の長手方向(走査方向)と平行に配置されて取り付けられている。また、ステージ移動路には、原点位置に配置されたステージ28の前方(往路移動方向における下流側)で、且つ、一対のガイドレール26上を移動するステージ28の両側方(外側)に、一対の遮蔽板142がガイドレール26の延出方向(ステージ28の移動方向)と平行に配置されて立設されている。
以上の構成により、本実施形態では、ステージ28が一対のガイドレール26上を移動しても、基盤30の下面に取り付けられたステージ駆動源となるコイル部38Bの周囲を走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気の流動状態は、一対の遮蔽板142及び一対の閉塞板140によってほぼ変化しないように抑制される。これにより、コイル部38Bの空冷状態が安定して温度変化が抑えられ、コイル部38Bからの熱伝導によるステージ28の温度上昇(温度変化)が抑えられる。したがって、ステージ28からの熱伝導による感光材料40の熱変形が抑えられ、高精度な露光を行うことができる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態は、第1の実施形態に係るステージ28に、ステージ駆動源に冷却空気を吹き付けて空冷する空冷手段を設けたものであり、以下、第7の実施形態に係るステージの構成について説明する。
図18(A)、(B)に示すように、本実施形態では、ステージ28とユニット化された基盤30の下面に、コイル部38Bよりも前側(冷却空気の流動方向上流側)に位置して、送風ファン150が2個取り付けられている。この2個の送風ファン150は、走査方向に沿って流動する冷却空気をその流動方向に、すなわちコイル部38Bに流速を増加させて送風する。
以上の構成により、本実施形態では、2個の送風ファン150から吹き付けられる冷却空気でコイル部38Bが空冷されることにより、コイル部38Bの冷却作用が高められて、ステージ28の温度上昇(温度変化)を抑制する効果が高められる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態は、第1の実施形態に係るステージ28(基盤30)に放熱フィンを設けたものであり、以下、第8の実施形態に係るステージの構成について説明する。
図19に示すように、本実施形態では、ステージ28とユニット化された基盤30の下面に、複数の放熱フィン30Aが一体的に設けられており、この放熱フィン30Aは、基盤30の長手方向(走査方向)に沿って延出されている。
以上の構成により、本実施形態では、基盤30の下面に複数設けられた放熱フィン30Aにより、基盤30の表面積が拡大されて放熱が促進される。また、この放熱フィン30Aは走査方向に沿って延出されているため、走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気の流れを乱すことなく、その安定して流動する空気によって放熱効率が高められる。したがって、コイル部38Bからの熱伝導で温度上昇する基盤30の冷却作用が高められ、ステージ28の温度上昇(温度変化)を抑制する効果が高められる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態は、第1の実施形態に係るステージ28(基盤30)に遮熱部材を設けたものであり、以下、第9の実施形態に係るステージの構成について説明する。
図20に示すように、本実施形態では、ステージ28とユニット化された基盤30の下面に、ステンレス金属板からなる遮熱板160が取り付けられており、コイル部38Bは、この遮熱板160を介して基盤30の下面に取り付けられている。
以上の構成により、本実施形態では、遮熱板160を介して取り付けられたコイル部38Bからの熱伝導による基盤30及びステージ28の温度上昇や、基盤30の近傍に配置された発熱部品からの輻射熱による基盤30及びステージ28の温度上昇が遮熱板160によって抑えられる。
以上、本発明を上述した第1〜第9の実施形態により詳細に説明したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の形態が実施可能である。
例えば、上述した実施形態では、収容室13の室温や装置設置環境の温度を測定し、その測定温度に基づいて空調機80を制御し冷却空気の温度を調整する空調動作(室温制御動作)の場合で説明したが、空調動作はこれに限らず、所定の温度に調整した冷却空気を空調機80から収容室13に供給して空調するようにしてもよい。
また、走査方向については、感光材料を搬送する搬送手段としてのステージを水平方向へ移動させることで、走査方向を水平方向とした場合で説明したが、走査方向はこれに限らず、搬送手段を垂直方向へ移動させることで垂直方向を走査方向とするなどしてもよい。また、感光材料の搬送方向(ステージの移動方向)については、アライメント計測と露光とで逆方向へ搬送する往復搬送とした場合で説明したが、感光材料を一方向のみに搬送してアライメント計測と及び露光を連続的に行う片道搬送としてもよい。
また、上記の実施形態における露光装置10の感光材料40に対する露光動作では、ステージ28を移動させつつ感光材料40を走査露光する場合について説明したが、露光動作はこのような走査露光に限らず、他にも、最初の露光位置まで移動させた感光材料40を一旦停止して所定の露光領域のみを露光し、その露光後に、感光材料40を次の露光位置まで移動させて再び停止し次の所定の露光領域のみを露光する、というように、感光材料40の移動→露光位置に停止→画像露光→移動・・・・・・を繰り返すような動作としてもよい。
また、ダクトから吹き出された冷却空気の送風方向を走査方向に沿った方向へ変更する風向変更手段については、第1の実施形態で説明したような風向変更板90等の機構的な手段に限らず、他にも、送風ファン等の電気的な手段とする、あるいはそれらを組み合わせた構成などとすることができる。
また、アライメント計測用のカメラ62が取り付けられるアライメントユニット60のユニットベース64は、断面係数を大きくして強度(剛性)を確保しつつ、ステージ28が移動されても走査方向に沿った方向へ送風される冷却空気の流れをほぼ変化させない形状とするために、第1の実施形態で説明したように断面形状をT字状としているが、ユニットベース64の断面形状はこれに限らず、例えば厚さを大きくするなどして強度を確保できる場合には、I字状(フラット形状)等としてもよい。
また、収容室13の温度を測定する温度センサ72は、第1の実施形態で説明したように開閉パネル19の裏面に設置してステージ28の近傍に配置しているが、温度センサの設置位置はこれに限らず、例えば図6の温度センサ73で示すように、基盤30上に取付けてステージ28の前方に近接配置するようにしてもよい。またこの場合は、温度センサ73によって、ステージ28と、露光ユニット44及びアライメントユニット60の近傍の室温が測定可能となり、その測定温度情報も利用して収容室13の温度制御を行うことにより、すなわち、露光ユニット44及びアライメントユニット60の近傍の温度変化を抑えた空調を行うことにより、それらの性能変化を抑えることも可能となる。さらに、収容室13の温度測定箇所は1箇所に限らず、複数箇所としてもよい。そしてその複数箇所の測定温度情報に基づいて収容室13の温度制御を行うことも可能である。
また、第1の実施形態で説明したように、ステージ移動用の駆動源となるリニアサーボモータ38のコイル部38Bは、断熱ブッシュ39を介してステージ28(基盤30)取り付けているが、ステージ昇降用の駆動源となるステッピングモータ36も同様に、断熱ブッシュ等を介してステージ28(昇降機構32)取り付けることができる。またここでは、感光材料載置面28Aを構成するステージ28が昇降可能とされてステージ28(感光材料載置面28A)が可動部とされ、その可動部を駆動させるための駆動力を発生するステッピングモータ36は、待機時にカレントダウンするようにしているが、例えばステージに他の可動部が設けられてその駆動源にステッピングモータが用いられる場合には、そのステッピングモータに対して同様のカレントダウン制御を行うことにより発熱を抑えるようにしてもよい。
また、上記の実施の形態における露光装置10では、空間変調素子としてDMDを備えた露光ヘッドについて説明したが、このような反射型空間光変調素子の他に、透過型空間光変調素子(LCD)を使用することもできる。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの空間光変調素子(SLM;Special Light Modulator)や、電気光学効果により透過光を変調する光学素子(PLZT素子)や液晶光シャッタ(FLC)等の液晶シャッターアレイなど、MEMSタイプ以外の空間光変調素子を用いることも可能である。なお、MEMSとは、IC製造プロセスを基盤としたマイクロマシニング技術によるマイクロサイズのセンサ、アクチュエータ、そして制御回路を集積化した微細システムの総称であり、MEMSタイプの空間光変調素子とは、静電気力を利用した電気機械動作により駆動される空間光変調素子を意味している。さらに、Grating Light Valve(GLV)を複数ならべて二次元状に構成したものを用いることもできる。これらの反射型空間光変調素子(GLV)や透過型空間光変調素子(LCD)を使用する構成では、上記したレーザの他にランプ等も光源として使用可能である。
また、上記の実施の形態における光源(光源ユニット50)としては、合波レーザ光源を複数備えたファイバアレイ光源、1個の発光点を有する単一の半導体レーザから入射されたレーザ光を出射する1本の光ファイバを備えたファイバ光源をアレイ化したファイバアレイ光源、複数の発光点が二次元状に配列された光源(たとえば、LDアレイ、有機ELアレイ等)、等が適用可能である。
また、上記の露光装置10には、露光により直接情報が記録されるフォトンモード感光材料、露光により発生した熱で情報が記録されるヒートモード感光材料の何れも使用することができる。フォトンモード感光材料を使用する場合、レーザ装置にはGaN系半導体レーザ、波長変換固体レーザ等が使用され、ヒートモード感光材料を使用する場合、レーザ装置にはAlGaAs系半導体レーザ(赤外レーザ)、固体レーザが使用される。
また、本発明は、空間光変調素子を利用し、画像データに応じて変調した光ビームを走査方向へ搬送される感光材料に照射し画像露光を行う上述の画像露光装置に限らず、例えば、感光材料を副走査方向へ搬送しつつレーザ光を主走査しながら照射し所定のパターンを描画する走査露光装置等にも適用することができる。