JP2006307000A - ポリウレタン組成物およびそれを用いてなるシート状物ならびに内装材 - Google Patents
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Abstract
【課題】柔軟で耐久性の良好なポリウレタン組成物、それを用いることによって高い耐久性と優美な外観・風合いを兼ね備えたシート状物、ならびにそのシート状物を表皮材とする内装材を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるカーボネート構造を分子鎖中に含むことを特徴とするポリウレタン組成物と、それを弾性樹脂バインダーに用いた極細繊維不織布からなるシート状物である。このシート状物は、家具、椅子、壁装、車輛座席、車輛天井、車輛内装などの表皮材とする内装材に好適に用いられる。
【化1】
(式中R1は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、R2は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、R1とR2の炭素数の合計は4以上7以下である。また、xは2〜20の正の整数である。)
【選択図】なし
【解決手段】下記一般式(1)で示されるカーボネート構造を分子鎖中に含むことを特徴とするポリウレタン組成物と、それを弾性樹脂バインダーに用いた極細繊維不織布からなるシート状物である。このシート状物は、家具、椅子、壁装、車輛座席、車輛天井、車輛内装などの表皮材とする内装材に好適に用いられる。
【化1】
(式中R1は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、R2は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、R1とR2の炭素数の合計は4以上7以下である。また、xは2〜20の正の整数である。)
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリウレタン組成物およびそれを用いてなるシート状物ならびに内装材に関するものである。具体的には、柔軟な膜が得られるポリウレタン組成物およびそれを用いてなる極細繊維不織布のシート状物ならびに家具、椅子、壁装、車輛座席、車輛天井、車輛内装などの表皮材として好適に用いられる内装材に関する。
繊維からなる基材にポリウレタン樹脂を含浸したシート状物の表面をサンドペーパーなどを用いて研削し、繊維を起毛させることによって、スエードやヌバックライクの立毛調皮革様シート状物を得ることは広く知られている。目的とする皮革様シート状物の特性は、繊維からなる基材とポリウレタン樹脂の組み合わせにより任意に幅広く設計ができる。例えば、特許文献1には、ポリテトラメチレングリコール、有機ジイソシアネート、グリコール鎖伸長剤を用いたポリウレタン樹脂が開示されているが、該ポリウレタン樹脂を用いることによって、背広などに用いられる高級ウール生地と比べても見劣りしない極めて柔軟な風合いを有する人工皮革状物を得ることが可能となったと記載されている。
立毛調皮革様シートは、天然皮革に酷似した外観や表面を有し、かつ天然皮革にはない均ー性や染色堅牢性などの長所が認められ、衣料のみならず、近年、ソファーなど家具の表皮、自動車用のシート表皮など5年〜10年といった長期にわたって使用される用途に広がりを見せている。
このため、特許文献1に記載のようなポリテトラメチレングリコールを用いたポリエーテル系ポリウレタン樹脂では、紫外線や熱によって容易に劣化するために、使用の過程で表面繊維のモモケや脱落、または毛玉が生じてしまい長期の使用に耐え得ないという問題があった。また、ポリエステル系のポリウレタン樹脂も皮革様シート状物によく用いられるポリウレタン樹脂ではあるが、紫外線などによる耐光性は良好であるもののエステル結合が加水分解によって劣化するために、長期の使用において表面繊維のモモケや毛玉が発生するといった同様の問題があった。
一方、特許文献2には、ポリカーボネートポリオールと脂環式ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートを反応して得られるポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が、家具用、車両用シートなど高度の耐久性を有する用途に有用なポリウレタン樹脂であることが開示されている。該特許文献には、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂として、ポリヘキサメチレンカーボネートを用いたポリウレタンが開示されているが、該ポリウレタンを極細繊維が絡合してなる不織布へ含浸樹脂として用いた場合は、シート状物の風合いがプラスチック様で粗硬なものとなる。特に表面をサンドペーパーなどによって繊維を起毛させた場合は、ポリウレタンが硬すぎることによって、表面の立毛が短い粗悪な表面となってしまい、優美な立毛を有する良好な品位を得ることが極めて困難であった。
立毛品位と耐光性や耐加水分解性などの耐久性を両立させることを目的として、特許文献3には、ポリカーボネートジオール、主にはポリヘキサメチレンカーボネートジオールを30〜90重量%としてポリエーテルやポリエステルジオールを併用したポリカーボネート/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂やポリカーボネート/ポリエステル系ポリウレタン樹脂を用いた立毛調皮革様シート状物が開示されている。しかしながら、ポリカーボネートジオールの比率を70重量%以下とした場合は、ポリエーテル成分もしくはポリエステル成分の劣化により耐久性が不充分なものとなり、一方、ポリカーボネートジオールの比率を70重量%以上とした場合は、ポリウレタンが硬くなりすぎ、サンドペーパーなどによって表面を研削した際に表面の立毛が短い粗悪なものとなり、立毛品位と耐久性を共に満足する立毛調皮革様シート状物を得ることが困難であった。
また、繊維質基材の上に樹脂層が塗布もしくは張り合わせされた皮革様シート、いわゆる合成皮革において、耐久性を向上させる目的で樹脂層にポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を用いることは知られている。また、合成皮革の主には風合い改良させる目的で、この樹脂層に用いられるポリカーボネート系ポリウレタン樹脂について種々の提案がなされている。
例えば、特許文献4には、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールから誘導される共重合ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタン樹脂や、1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールから誘導される共重合ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタン樹脂、特許文献5には、2−メチル−1,8−オクタンジオールから誘導されるポリカーボネートジオールを用いたポリウレタン樹脂、特許文献6には、炭素数5〜6のアルカンジオールとジカンボン酸から誘導されるポリエステルジオールと炭素数8〜10のアルカンジオールから誘導されるポリカーボネートジオールを併用したポリエステル/ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、特許文献7には、炭素数8〜10のアルカンジオールから誘導されるポリカーボネートジオールとポリエーテルジオールを併用したポリカーボネート/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂が開示されている。
これらのポリウレタン樹脂を、極細繊維が絡合してなる不織布へ含浸樹脂として、不織布の内部空間に存在させたシート状物、特に表面をサンドペーパーなどによって研削して表面繊維を起毛させた立毛調皮革様シート状物に適用した場合、例えば特許文献4に記載の炭素数4〜6の共重合ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂では、サンドペーパーによる研削が可能なほどの柔軟化効果は得ることが出来ずに、表面の立毛が短い粗悪な表面となってしまうため、優美な立毛を有する良好な品位を得ることが極めて困難であった。また、特許文献5に記載の2−メチル−1,8−オクタンジオールから誘導されるポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、長鎖アルキレンジオールを用いているため不織布に含浸後、湿式凝固させた場合、凝固速度が著しく速く、不織布内部のポリウレタンの発泡が大きな粗雑なものとなり、また一部発泡不良を生じる結果、サンドペーパーによる研削を行った場合に表面の立毛の長さに斑が生じた非常に立毛品位の粗悪なものしか得られない問題があった。また、得られたシート状物の表面をブラシなどで擦過させると繊維の脱落が多く、耐摩耗性において問題があった。特許文献6、7に記載のポリウレタン樹脂は、ポリエステルジオールやポリエーテルジオールを併用している点において、耐加水分解性もしくは耐光性の観点から、立毛調皮革様シート状物の長期の使用における耐久性、特に表面繊維のモモケや毛玉が発生する問題を改善するには至らない。
以上のように、従来の技術では、風合い、立毛品位、耐久性のいずれにも優れた立毛調皮革様シート状物を得ることは極めて困難であった。
特開昭59−192779号公報
特開平3−244619号公報
特開2002−30579号公報
特開平5−5280号公報
特開平2−33384号公報
特開平4−300368号公報
特開平5−9875号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、柔軟で耐久性の良好なポリウレタン組成物を提供することを目的とし、そのポリウレタン組成物を用いることによって長期の使用においても繊維の脱落やモモケ、毛玉の発生が少ない高い耐久性と、立毛による優美な外観、天然皮革のごとき風合いを兼ね備えた立毛調皮革様シート状物、さらには、そのシート状物を表皮材とする内装材を提供するものである。
本発明のポリウレタン組成物は、前記課題を解決するため、次の構成を有する。
すなわち、一般式(1)で示されるカーボネート構造を分子鎖中に含むことを特徴とするポリウレタン組成物である。
(式中R1は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、R2は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、R1とR2の炭素数の合計は4以上7以下である。また、xは2〜20の正の整数である。)
また、本発明のシート状物は、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維の繊維束が絡合してなる不織布とその内部空間に存在するポリウレタンを主成分とした弾性樹脂バインダーとから構成されるシート状物であって、該ポリウレタンが前記ポリウレタン組成物であることを特徴とするものである。
また、本発明のシート状物は、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維の繊維束が絡合してなる不織布とその内部空間に存在するポリウレタンを主成分とした弾性樹脂バインダーとから構成されるシート状物であって、該ポリウレタンが前記ポリウレタン組成物であることを特徴とするものである。
さらに、本発明の内装材は、前記シート状物を表皮材とすることを特徴とするものである。
本発明によれば、柔軟で耐加水分解性、耐光性等の耐久性の良好なポリウレタン組成物を提供することができる。
また、本発明のシート状物によれば、長期の使用においても繊維の脱落やモモケ、毛玉の発生が少ない高い耐久性と、立毛による優美な外観、天然皮革のごとき風合いを兼ね備えた立毛調皮革様シート状物を提供することができる。
さらに、本発明の内装材によれば、優美な外観を有する内装材を提供することができる。
本発明のポリウレタン組成物は、下記一般式(1)で示されるカーボネート構造を分子鎖中に含むものである。
ただし、式中R1は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基、R2は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であり、R1とR2の炭素数の合計は4以上7以下である。また、xは2〜20の正の整数である。
R1及びR2のような脂肪族炭化水素基の分岐構造を有することで、ポリウレタンは非晶構造となりやすく、柔軟な膜を得ることができる。
分岐構造を有しているR1及びR2は、炭素数は多いと柔軟な膜を得ることはできるが、膜強度が低下して耐摩耗性が悪化する。よって、R1の炭素数は好ましくは2または3、R2の炭素数は2〜3、R1とR2の炭素数の合計は4以上6以下であり、特に好ましくは下記一般式(3)で示される、R1の炭素数は3、R2の炭素数は2である。
ただし、式中xは2〜20の正の整数である。
また、本発明のポリウレタン組成物は、下記一般式(2)で示されるカーボネート構造を分子鎖中に含むものであることが好ましい。
ただし、式中、y及びzは0または正の整数であり、かつ3≦y+z≦30を満たす。また、R3及びR4は炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよいが、それぞれ異なった脂肪族炭化水素基であることが、ポリウレタンがより非晶構造となりやすく、得られる膜は柔軟な傾向にある。
さらなる柔軟性を得る観点から、好ましくは、R3とR4のいずれか少なくとも一方がメチル基もしくはエチル基が分岐した脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
そして、一般式(1)および(2)で示されるカーボネート骨格は、ブロック共重合もしくはランダム共重合のいずれでもよいが、よりポリウレタンが非晶構造となりやすいランダム共重合であることが好ましい。
かかるポリウレタン組成物は、より具体的には、一般式(1)で示されるカーボネート骨格を有する分子鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール(A)と、一般式(2)で示されるカーボネート骨格を有する分子鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール(B)と、有機ジイソシアネートと、鎖伸長剤との反応により得られる構造を有するものであることが好ましい。
本発明でいうカーボネート骨格とは、カーボネート結合を介して連結される高分子鎖を形成するものであり、ポリカーボネートジオールとは、当該高分子鎖の両末端にそれぞれ1個の水酸基を有するものである。
ポリカーボネートジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
一般式(1)で示されるカーボネート骨格を有するポリカーボネートジオール(A)を得るアルキレングリコールとしては、2−エチル−1,3−ペンタンジオール、2−プロピル−1,3−ペンタンジオール、2−プロピル−1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等を用いることができる。製膜した膜の柔軟性と耐摩耗性等を考えると、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールが好ましく用いられる。
また、一般式(2)で示される炭素数3〜6の長鎖脂肪族炭化水素基を有するカーボネート骨格を有するポリカーボネートジオール(B)を得るアルキレングリコールとしては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどの分岐アルキレングリコールを用いることができる。製膜した膜の柔軟性と耐摩耗性等を考えると、特に好ましくは、1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどから得られる直鎖アルキレングリコールと分岐アルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネートジオールである。
また、一般式(2)で示される炭素数3〜6の長鎖脂肪族炭化水素基を有するカーボネート骨格を有するポリカーボネートジオール(B)を得るアルキレングリコールとしては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどの分岐アルキレングリコールを用いることができる。製膜した膜の柔軟性と耐摩耗性等を考えると、特に好ましくは、1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどから得られる直鎖アルキレングリコールと分岐アルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネートジオールである。
エステル交換反応に用いられる炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
ポリカーボネートジオール(A)及び(B)の数平均分子量(Mn)としては、500〜3,000が好ましく、より好ましくは1,500〜2,500である。数平均分子量を500以上とすることで、風合いが硬くなるのを防ぎ、3,000以下とすることで、ポリウレタンとしての強度を維持することができる。
ポリウレタンの合成に用いられるポリマージオールは、耐加水分解性や耐光性といった耐久性を鑑みると、ポリカーボネートジオール以外のポリマージオール、例えばポリエステルジオール、ポリラクトンジオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリエーテルジオール、ポリエステル・エーテルジオールなどは用いない方が好ましい。
ポリウレタンの合成に用いる有機ジイソシアネートは、特に制限はないが、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラキシレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートを挙げることができる。中でも、得られるポリウレタンの強度、耐熱性など耐久性の観点から、芳香族ジイソシアネート、特に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
また、ジイソシアネートは複数組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネートジオール(A)と有機ジイソシアネートとの比率、またはポリカーボネート(A)と(B)を併用する場合はポリカーボネート(A)と(B)の総和と有機ジイソシアネートとの比率としては、両者のモル比率が1:2〜1:5となるようにするのが好ましい。またこの範囲内において、得られるポリウレタンの柔軟性を重視する場合には有機ジイソシアネートの比率を低くし、強度、耐熱性、耐久性などを重視する場合には有機ジイソシアネートの比率を多くすることによって調整が可能である。
ポリウレタンの合成に用いる鎖伸長剤としては、特に制限はなく、活性水素を2個以上有する化合物を用いることができ、有機ジオール、有機トリオール等のグリコール系、有機ジアミン、トリアミン等のアミン系、ヒドラジン誘導体などを用いることができる。
グリコール系の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、メチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリコールなどの脂環式ジオール、キシレングリコールなどの芳香族ジオールを挙げることができる。
アミン系の例としては、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、キシレンジアミン、フェニルジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどを挙げることができる。
ヒドラジン誘導体の例としては、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジドなどを挙げることができる。
ポリウレタンの耐加水分解性を重視する場合は、グリコール系を用いることが好ましく、中でもポリウレタンの強度や耐熱性、耐黄変性を鑑みるとアルキル鎖の炭素数が2〜6の脂肪族ジオール、特にエチレングリコールが好ましい。
また、ポリウレタンの耐熱性を重視する場合は、アミン系を用いることが好ましく、中でも4,4’−ジアミノジフェニルメタンのような芳香族ジアミンや、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートに水を添加して4,4’−ジアミノジフェニルメタンに変換して用いることが好ましい。
ポリウレタンの合成には、触媒として、例えば、トリエチルアミン、テトラメチルブタンジアミンなどのアミン類、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、チタンテチライソプロポキサイド、オクチル酸スズなどの金属化合物などを用いてもよい。
ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)としては、100,000〜300,000が好ましく、より好ましくは150,000〜250,000である。重量平均分子量(Mw)を、100,000以上とすることにより、製膜した膜の膜強度が向上し、耐摩耗性が良好となる。また、300,000以下とすることで、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑えて不織布への含浸を行いやすくすることができる。
また、本発明のポリウレタン組成物は、ゲル化点が2.5ml以上6ml未満であることが好ましい。より好ましくは、3ml以上5ml以下の範囲である。
本発明でいうゲル化点とは、ポリウレタン1重量%のN,N’−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)溶液100gを攪拌しながら、この溶液中に蒸留水を滴下し、25±1℃の温度条件でポリウレタンの凝固が開始しはじめて微白濁した時の水滴下量の値である。このため、測定に用いるDMFは水分0.03%以下のものを使用する必要がある。なお、この測定方法は、ポリウレタンDMF溶液が透明であることを前提に記載しているが、ポリウレタンDMF溶液があらかじめ微白濁している場合は、ポリウレタンの凝固が開始し始めて白濁程度が変化した時の水滴下量をゲル化点とみなすことが出来る。
ゲル化点は、ポリウレタンDMF溶液を用いてポリウレタンを湿式凝固させる際の水分許容度を示すものであり、一般的にはゲル化点が低いものは凝固速度が速く、ゲル化点が高いものは凝固速度が遅い傾向にある。このため、ゲル化点が2.5ml未満の場合は、ポリウレタン樹脂を湿式凝固させる際に、凝固速度が速すぎる結果、不織布内部に含浸した場合はポリウレタンの発泡が大きな粗雑なものとなり、また一部発泡不良を生じる。そして、サンドペーパーによりシート状物の表面を研削した場合に表面の立毛の長さに斑が生じた非常に立毛品位の粗悪なものとなる傾向にあるばかりか、ポリウレタン膜が薄いものとなるため、繊維間を固定するバインダーとしての効果が小さく、表面立毛をブラシなどによって擦過した場合、繊維の脱落が多い傾向にある。
一方、ゲル化点が6ml以上の場合は、ポリウレタン樹脂を湿式凝固させる際に、凝固速度が遅すぎる結果、不織布内に含浸した場合は、ポリウレタンにはほとんど発泡が認められず、非常に膜厚の厚い硬いポリウレタンとして存在する。そのため、サンドペーパーによりシート状物の表面を研削した場合に、ポリウレタンの研削を行いにくく、表面の立毛が非常に短い品位の粗悪なものとなる傾向にある。
本発明のゲル化点2.5ml以上6ml未満とするには、ポリウレタンの合成に用いる有機ジイソシアネート、鎖伸長剤の種類や量にもよるが、一般式(1)で示されるカーボネート骨格を有する分子鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール(A)と、一般式(2)で示されるカーボネート骨格を有する分子鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール(B)との重量比率で調整が可能である。
目的とするゲル化の範囲において、ゲル化点を低く抑えるには、ポリカーボネートジオール(A)の比率を高くし、逆にゲル化点を高くするには、ポリカーボネートジオール(A)の比率を低くすることによって調整できる。
また、弾性樹脂バインダーは、主成分としてポリウレタンを用いるが、バインダーとしての性能や風合いを損なわない範囲でポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていてもよく、各種の添加剤、例えばカーボンブラックなどの顔料、リン系、ハロゲン系、シリコーン系、無機系などの難燃剤、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、可塑剤、耐電防止剤、界面活性剤、柔軟剤、撥水剤、凝固調整剤、染料などを含有していてもよい。
次に、本発明のシート状物について説明する。
本発明のシート状物は、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維の繊維束が絡合してなる不織布とその内部空間に存在するポリウレタンを主成分とした弾性樹脂バインダーとからなる。
不織布を構成する極細繊維の素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル、6−ナイロン、66−ナイロンなどのポリアミド、アクリルなどの溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂を用いることができる。中でも、強度、寸法安定性、耐光性の観点からポリエステルを用いることが好ましい。
また、不織布は、異なる素材の極細繊維が混合して構成されていてもよい。
不織布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度としては、シートの柔軟性や立毛品位の観点から0.001dtex以上0.5dtex以下であることが重要である。好ましくは0.3dtex以下、より好ましくは0.2dtex以下である。一方、染色後の発色性やサンドペーパーなどによる研削など起毛処理時の束状繊維の分散性、さばけ易さの観点からは、0.005dtex以上であることが好ましく、より好ましくは0.01dtex以上である。
なお、平均単繊維繊度は、シート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して平均値を計算することで算出される。
極細繊維を得る手段としては、極細繊維発生型繊維を用いることが好ましい。極細繊維発生型繊維をあらかじめ絡合した後に繊維の極細化を行うことによって、極細繊維が束状で絡合してなる不織布を得ることができる。極細繊維が束状に絡合していることによって、シートの強度を得ることができる。
極細繊維発生型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分・島成分とし、海成分を溶剤などを用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面を放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。なかでも、海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束の内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、シートの柔軟性や風合いの観点からも好ましい。
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い海・島の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子相互配列体方式による海島型複合繊維がより好ましい。
特に、繊度の均一性に関して、繊維束内の繊度CVが10%以下であることが好ましい。ここで繊度CVとは、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)表示したものであり、値が小さいほど均一であることを示すものである。繊度CVを10%以下とすることで、シート表面の立毛の外観が優美で、また染色も均質で良好なものとすることができる。
海島型複合繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、ポリ乳酸などを用いることができる。
海成分を溶解する溶剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンの場合は、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤、共重合ポリエステル、ポリ乳酸の場合は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができ、溶剤中に海島型複合繊維を浸漬し、窄液を行うことによって除去することができる。
また、極細繊維の断面形状としては、丸断面でよいが、楕円、扁平、三角などの多角形、扇形、十字型などの異形断面のものを採用してもよい。
本発明のシート状物を構成する不織布は、短繊維不織布、長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位を重視する場合には、短繊維不織布が好ましい。また、不織布の内部には、強度を向上させるなどの目的で、織物や編物を挿入してもよい。
繊維を絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチにより絡合させる方法を採用することができる。
本発明のシート状物において弾性樹脂バインダーの主成分として用いるポリウレタンは、前記した本発明のポリウレタンを用いることが重要である。
本発明のシート状物において弾性樹脂バインダーは、極細繊維の繊維束が絡合してなる不織布の内部空間に存在するものであるが、極細繊維の繊維束内部には実質的に存在しないことが好ましい。繊維束の内部にまで弾性樹脂バインダーが存在すると、繊維束内部の空隙によって得られるシートの良好な風合いを得難くなる傾向となり、各極細繊維と接着して存在することになるため、サンドペーパーなどによる研削の際、シート表面に存在する繊維の切断が著しく、目的とする立毛長、それによる良好な品位が得られにくい。
ポリウレタンを主成分とした弾性樹脂バインダーが不織布の内部空間には存在するが極細繊維の繊維束内部には実質的に存在しない形態を得る方法としては、ポリウレタンをジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの溶剤により溶液とし、
(A)前述のような極細繊維発生型の海島型複合繊維が絡合した不織布に、前記した本発明のポリウレタンの溶液を含浸し、水もしくは有機溶媒水溶液中で凝固させた後、海島型複合繊維の海成分を、ポリウレタンは溶解しない溶剤で溶解除去する方法
(B)前述のような極細繊維発生型の海島型複合繊維が絡合した不織布に、鹸化度が好ましくは80%以上のポリビニルアルコールを付与し繊維の周囲の大部分を保護した後に、海島型複合繊維の海成分を、ポリビニルアルコールは溶解しない溶剤で溶解除去し、次いで前記した本発明のポリウレタンの溶液を含浸し、水もしくは有機溶媒水溶液中で凝固させた後、ポリビニルアルコールを除去する方法
などを好ましく用いることができる。
(A)前述のような極細繊維発生型の海島型複合繊維が絡合した不織布に、前記した本発明のポリウレタンの溶液を含浸し、水もしくは有機溶媒水溶液中で凝固させた後、海島型複合繊維の海成分を、ポリウレタンは溶解しない溶剤で溶解除去する方法
(B)前述のような極細繊維発生型の海島型複合繊維が絡合した不織布に、鹸化度が好ましくは80%以上のポリビニルアルコールを付与し繊維の周囲の大部分を保護した後に、海島型複合繊維の海成分を、ポリビニルアルコールは溶解しない溶剤で溶解除去し、次いで前記した本発明のポリウレタンの溶液を含浸し、水もしくは有機溶媒水溶液中で凝固させた後、ポリビニルアルコールを除去する方法
などを好ましく用いることができる。
尚、ポリウレタンを主成分とした弾性樹脂バインダーが不織布の内部空間に存在する形態を得る手段としては、極細繊維の繊維束内部に多くのポリウレタンが存在する製造方法、例えばポリウレタンを海成分のごとき分散媒成分とし、該ポリウレタンとは非相溶性のポリマーを分散成分としたポリウレタン系多成分繊維を用いて、一旦分散媒成分としてのポリウレタンを溶剤で溶解して分散成分であるポリマーの極細繊維を発現させた後に、ポリウレタンを除去することなく凝固固定する方法や、海島構造を有する繊維にポリビニルアルコールなどを付与することなく海成分を先に除去して極細繊維を発現させた後に、ポリウレタンを含浸、凝固する方法があるが、これらの方法では、極細繊維の繊維束内部には弾性樹脂バインダーが実質的に存在しないといった形態は達成し得ない。
また、弾性樹脂バインダーの不織布内部における形態としては、極細繊維の繊維束の最外周に位置する単繊維と部分的に接合している状態であることが、繊維の脱落、モモケが少なく、かつ良好な風合いが得られるためより好ましい。この形態は、上記(B)の方法によって得ることができる。すなわち、ポリビニルアルコールが極細繊維束の外周の大半を保護しているため、繊維束内部へのポリウレタンの侵入を防ぎ、部分的にポリビニルアルコールの保護がない繊維束の外周部にはポリウレタンが接着することになる。
本発明のシート状物は、シート状物に対する弾性樹脂バインダーの比率が、10重量%以上50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは15重量%以上35重量%以下である。10重量%以上とすることで、シート強度を得て、かつ繊維の脱落を防ぐことが出来、50重量%以下とすることで、風合いが硬くなるのを防ぎ、目的とする良好な立毛品位を得ることが出来る。
本発明のシート状物は、最終的にはその少なくとも片面に極細繊維の立毛を有する立毛調皮革様シート状物として好適に用いることができる。
シート表面に立毛を形成するための起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて研削する方法などにより施すことができる。起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を付与してもよい。
また、起毛処理の前に耐電防止剤を付与することは、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる傾向にあり好ましい。
また、シート状物は、起毛処理を行う前に、シート厚み方向に半裁ないしは数枚に分割されて得られるものでもよい。
これらシート状物、特にシートの少なくとも片面に極細繊維を起毛させて得られる立毛調皮革様シート状物は、家具、椅子、壁装や、自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席、天井、内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材として好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[評価方法]
(1)ゲル化点
ポリウレタン1重量%のN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液100gを攪拌しながら、この溶液中に蒸留水を滴下し、25±1℃の温度条件でポリウレタンの凝固が開始しはじめて微白濁した時の水滴下量の値をゲル化点とした。なお、測定に用いたDMFは水分0.03%以下のものである。
[評価方法]
(1)ゲル化点
ポリウレタン1重量%のN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液100gを攪拌しながら、この溶液中に蒸留水を滴下し、25±1℃の温度条件でポリウレタンの凝固が開始しはじめて微白濁した時の水滴下量の値をゲル化点とした。なお、測定に用いたDMFは水分0.03%以下のものである。
また、この測定方法は、ポリウレタンDMF溶液が透明であることを前提としているが、ポリウレタンDMF溶液があらかじめ微白濁している場合は、ポリウレタンの凝固が開始し始めて白濁程度が変化した時の水滴下量をゲル化点とした。
(2)ポリウレタン膜の柔軟性
官能評価にて下記のように評価した。なお、本発明のポリウレタン組成物の膜の柔軟性レベルは○以上である。
(2)ポリウレタン膜の柔軟性
官能評価にて下記のように評価した。なお、本発明のポリウレタン組成物の膜の柔軟性レベルは○以上である。
◎:非常に柔軟。
○:柔軟。
×:硬い。
(3)ポリウレタン膜の耐摩耗性
指で膜表面を10回摩擦し、摩擦部分を目視で確認して下記のように評価した。なお、本発明のポリウレタン組成物の膜の耐摩耗性レベルは○以上である。
(3)ポリウレタン膜の耐摩耗性
指で膜表面を10回摩擦し、摩擦部分を目視で確認して下記のように評価した。なお、本発明のポリウレタン組成物の膜の耐摩耗性レベルは○以上である。
◎:摩耗はまったく見られなかった。
○:摩耗部分は確認できるが、ほとんど摩耗していなかった。
×:摩耗していた。
(4)外観品位
得られた立毛調皮革様シート状物の表面品位は目視による官能評価にて下記のように評価した。
(4)外観品位
得られた立毛調皮革様シート状物の表面品位は目視による官能評価にて下記のように評価した。
◎ :立毛長・繊維の分散状態共に非常に良好である。
○ :立毛長・繊維の分散状態共に良好である。
× :立毛長は良好であるが、繊維の分散が不良である。
×× :立毛長が短く不良である。
×××:立毛がほとんど無く著しい不良である。
(5)平均単繊維繊度
不織布、またはシート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して平均値を計算することで算出した。
(6)繊度CV
不織布、またはシート状物の内部の厚み方向断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、その写真から、束状繊維の1つの束内を構成する極細繊維の繊維径を測定し、繊維径から各単繊維の繊度に換算して、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)表した。5つの束状繊維について、同様の測定を行い、平均値を繊度CVとした。
(7)ブラシ摩耗減量
長さ11mm、直径0.4mmのナイロン糸を100本そろえて束とし、この束を直径110mmの円内に6重の同心円状に97個配置した円形ブラシ(ナイロン糸9700本)を用い、荷重8ポンド(約3629g)、回転速度65rpm、回転回数45回の条件で、立毛調皮革様シート状物の円形サンプル(直径45mm)の表面を摩耗せしめ、その前後のサンプルの重量変化をブラシ摩耗減量とした。
(8)耐久性−耐加水分解性−
得られた立毛調皮革様シート状物に対し、ダバイ・エスペック社製恒温恒湿槽を用いて、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中に10週間放置する強制劣化処理を施した後、マーチンデール摩耗試験機としてJames H.Heal&Co.製のModel 406を、標準摩耗布として同社製のABRASTIVE CLOTH SM25を用い、12kPa相当の荷重をかけ、摩耗回数20,000回の条件で摩擦させた後の試料の外観を目視にて観察し、評価した。評価基準は、試料の外観が摩擦前と全く変化が無かったものを5級、毛玉が多数発生したものを1級とし、その間を0.5級ずつに区切った。また、本発明における合格レベルは4級とした。
(9)耐久性−耐光性−
得られた立毛調皮革様シート状物に対し、150W/m2キセノンランプ使用のスガ試験機器社製のキセノンウェザーメーターを用いて、波長300〜400nmの光を144時間光照射する強制劣化処理を施した後、マーチンデール摩耗試験機としてJames H.Heal&Co.製のModel 406を、標準摩耗布として同社製のABRASTIVE CLOTH SM25を用い、12kPa相当の荷重をかけ、摩耗回数20,000回の条件で摩擦させた後の試料の外観を目視にて観察し、評価した。評価基準は、試料の外観が摩擦前と全く変化が無かったものを5級、毛玉が多数発生したものを1級とし、その間を0.5級ずつに区切った。また、本発明における合格レベルは4級とした。
[化学物質の表記]
各実施例・比較例で用いた化学物質の略号の意味は以下の通りである。
MDI :4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
EG :エチレングリコール
DMF :N,N−ジメチルホルムアミド
EHG :2−エチル−1,3−ヘキサンジオールから誘導される数平均分子量2,000のポリカーボネートジオール
PHC :1,6−ヘキサンジオールから誘導される数平均分子量2,000のポリカーボネートジオール
PHMPC:下記一般式(4)で示される1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールから誘導される数平均分子量2,000の共重合ポリカーボネートジオール
(5)平均単繊維繊度
不織布、またはシート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して平均値を計算することで算出した。
(6)繊度CV
不織布、またはシート状物の内部の厚み方向断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、その写真から、束状繊維の1つの束内を構成する極細繊維の繊維径を測定し、繊維径から各単繊維の繊度に換算して、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)表した。5つの束状繊維について、同様の測定を行い、平均値を繊度CVとした。
(7)ブラシ摩耗減量
長さ11mm、直径0.4mmのナイロン糸を100本そろえて束とし、この束を直径110mmの円内に6重の同心円状に97個配置した円形ブラシ(ナイロン糸9700本)を用い、荷重8ポンド(約3629g)、回転速度65rpm、回転回数45回の条件で、立毛調皮革様シート状物の円形サンプル(直径45mm)の表面を摩耗せしめ、その前後のサンプルの重量変化をブラシ摩耗減量とした。
(8)耐久性−耐加水分解性−
得られた立毛調皮革様シート状物に対し、ダバイ・エスペック社製恒温恒湿槽を用いて、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中に10週間放置する強制劣化処理を施した後、マーチンデール摩耗試験機としてJames H.Heal&Co.製のModel 406を、標準摩耗布として同社製のABRASTIVE CLOTH SM25を用い、12kPa相当の荷重をかけ、摩耗回数20,000回の条件で摩擦させた後の試料の外観を目視にて観察し、評価した。評価基準は、試料の外観が摩擦前と全く変化が無かったものを5級、毛玉が多数発生したものを1級とし、その間を0.5級ずつに区切った。また、本発明における合格レベルは4級とした。
(9)耐久性−耐光性−
得られた立毛調皮革様シート状物に対し、150W/m2キセノンランプ使用のスガ試験機器社製のキセノンウェザーメーターを用いて、波長300〜400nmの光を144時間光照射する強制劣化処理を施した後、マーチンデール摩耗試験機としてJames H.Heal&Co.製のModel 406を、標準摩耗布として同社製のABRASTIVE CLOTH SM25を用い、12kPa相当の荷重をかけ、摩耗回数20,000回の条件で摩擦させた後の試料の外観を目視にて観察し、評価した。評価基準は、試料の外観が摩擦前と全く変化が無かったものを5級、毛玉が多数発生したものを1級とし、その間を0.5級ずつに区切った。また、本発明における合格レベルは4級とした。
[化学物質の表記]
各実施例・比較例で用いた化学物質の略号の意味は以下の通りである。
MDI :4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
EG :エチレングリコール
DMF :N,N−ジメチルホルムアミド
EHG :2−エチル−1,3−ヘキサンジオールから誘導される数平均分子量2,000のポリカーボネートジオール
PHC :1,6−ヘキサンジオールから誘導される数平均分子量2,000のポリカーボネートジオール
PHMPC:下記一般式(4)で示される1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールから誘導される数平均分子量2,000の共重合ポリカーボネートジオール
(式中、y,zは正の整数であり、ランダム共重合体である。またRは
(CH2)6もしくは(CH2)2−CH(CH3)−(CH2)2のいずれかの脂肪族炭化水素基を示す)
PTMG :数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール
PCL :数平均分子量2,000のポリカプロラクトンジオール
[実施例1]
ポリカーボネートジオール(A)としてEHGを60重量部、ポリカーボネートジオール(B)としてPHMPCを40重量部、有機ジイソシアネートとしてMDIをポリオール総量{(A)+(B)}:MDIのモル比率が1:3となるようにDMFを溶媒として冷却管付き四つ口セパラブルコルベンに仕込み、窒素雰囲気下で40〜60℃にて攪拌反応させ、さらに鎖伸長剤としてEGを、DMFにて希釈した状態で50〜60℃にて滴下反応させた後、DMFで徐々に希釈し、約10時間後に固形分25%のポリウレタン溶液Iを得た。ゲル化点は3.5mLであった。
離型紙上にクリアランス150μmでナイフコートし、30℃のDMF濃度30%の水溶液中に浸積することでポリウレタンを湿式凝固し、本発明のポリウレタン組成物の膜を得た。
(CH2)6もしくは(CH2)2−CH(CH3)−(CH2)2のいずれかの脂肪族炭化水素基を示す)
PTMG :数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール
PCL :数平均分子量2,000のポリカプロラクトンジオール
[実施例1]
ポリカーボネートジオール(A)としてEHGを60重量部、ポリカーボネートジオール(B)としてPHMPCを40重量部、有機ジイソシアネートとしてMDIをポリオール総量{(A)+(B)}:MDIのモル比率が1:3となるようにDMFを溶媒として冷却管付き四つ口セパラブルコルベンに仕込み、窒素雰囲気下で40〜60℃にて攪拌反応させ、さらに鎖伸長剤としてEGを、DMFにて希釈した状態で50〜60℃にて滴下反応させた後、DMFで徐々に希釈し、約10時間後に固形分25%のポリウレタン溶液Iを得た。ゲル化点は3.5mLであった。
離型紙上にクリアランス150μmでナイフコートし、30℃のDMF濃度30%の水溶液中に浸積することでポリウレタンを湿式凝固し、本発明のポリウレタン組成物の膜を得た。
膜の柔軟性は非常に柔軟であり、また、耐摩耗性は非常に良好であった。
[実施例2]
ポリカーボネートジオール(A)としてEHGを80重量部、ポリカーボネートジオール(B)としてPHMPCを20重量部とした以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液IIを得た。ゲル化点は2.6mLであった。
[実施例2]
ポリカーボネートジオール(A)としてEHGを80重量部、ポリカーボネートジオール(B)としてPHMPCを20重量部とした以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液IIを得た。ゲル化点は2.6mLであった。
実施例1と同様にして得た本発明のポリウレタン組成物の膜は、柔軟性は非常に柔軟であり、耐摩耗性は良好であった。
[実施例3]
ポリカーボネートジオール(A)としてEHGを20重量部、ポリカーボネートジオール(B)としてPHMPCを80重量部とした以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液IIIを得た。ゲル化点は5.4mLであった。
[実施例3]
ポリカーボネートジオール(A)としてEHGを20重量部、ポリカーボネートジオール(B)としてPHMPCを80重量部とした以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液IIIを得た。ゲル化点は5.4mLであった。
実施例1と同様にして得た本発明のポリウレタン組成物の膜は、柔軟性は柔軟であり、また、耐摩耗性は非常に良好であった。
[実施例4]
ポリカーボネートジオール(B)をPHCとした以外は実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液IVを得た。ゲル化点は3.9mLであった。
[実施例4]
ポリカーボネートジオール(B)をPHCとした以外は実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液IVを得た。ゲル化点は3.9mLであった。
実施例1と同様にして得た本発明のポリウレタン組成物の膜は、柔軟性は柔軟であり、また、耐摩耗性は非常に良好であった。
[比較例1]
ポリオールにPHMPC100重量部を用いた以外は実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液Vを得た。ゲル化点は6.6mLであった。
[比較例1]
ポリオールにPHMPC100重量部を用いた以外は実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液Vを得た。ゲル化点は6.6mLであった。
実施例1と同様にして得た比較用のポリウレタン組成物の膜は、耐摩耗性は良好であったが、柔軟性は硬かった。
[比較例2]
ポリオールにPHC100重量部を用いた以外は実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液VIを得た。ゲル化点は7.3mLであった。
[比較例2]
ポリオールにPHC100重量部を用いた以外は実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液VIを得た。ゲル化点は7.3mLであった。
実施例1と同様にして得た比較用のポリウレタン組成物の膜は、耐摩耗性は非常に良好であったが、柔軟性は不良であった。
[比較例3]
ポリオールにPHCを70重量部、PCLを30重量部用いた以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液VIIを得た。ゲル化点は7.0mLであった。
[比較例3]
ポリオールにPHCを70重量部、PCLを30重量部用いた以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液VIIを得た。ゲル化点は7.0mLであった。
実施例1と同様にして得た比較用のポリウレタン組成物の膜は、耐摩耗性は良好であったが、柔軟性は硬かった。
[比較例4]
ポリオールにPHCを70重量部、PTMGを30重量部用いた以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液VIIIを得た。ゲル化点は5.5mLであった。
[比較例4]
ポリオールにPHCを70重量部、PTMGを30重量部用いた以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液VIIIを得た。ゲル化点は5.5mLであった。
実施例1と同様にして得た比較用のポリウレタン組成物の膜は、柔軟性は柔軟であったが、耐摩耗性は不良であった。
[比較例5]
ポリオールにPTMGを70重量部、PCLを30重量部用いた以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液IXを得た。ゲル化点は3.1mLであった。
[比較例5]
ポリオールにPTMGを70重量部、PCLを30重量部用いた以外は、実施例1と同様にして固形分25%のポリウレタン溶液IXを得た。ゲル化点は3.1mLであった。
実施例1と同様にして得た比較用のポリウレタン組成物の膜は、柔軟性は柔軟であったが、耐摩耗性は不良であった。
[実施例5〜8、比較例6〜10]
海成分としてポリスチレン、島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、島数16島の海島型複合用口金を用いて、海成分55重量%、島成分45重量%の複合比率にて海島型複合繊維を紡糸した後、延伸、捲縮加工、カットして不織布の原綿を得た。
[実施例5〜8、比較例6〜10]
海成分としてポリスチレン、島成分としてポリエチレンテレフタレートを用い、島数16島の海島型複合用口金を用いて、海成分55重量%、島成分45重量%の複合比率にて海島型複合繊維を紡糸した後、延伸、捲縮加工、カットして不織布の原綿を得た。
得られた原綿を、クロスラッパーを用いてウエブとし、ニードルパンチ処理により不織布とした。
この、海島型複合繊維からなる不織布を、鹸化度87%のポリビニルアルコール10%水溶液に含浸した後、乾燥した。その後、トリクロロエチレン中で海成分であるポリスチレンを抽出除去し、乾燥を行って、平均単繊維繊度0.1dtexの極細繊維からなる繊維束が絡合した不織布を得た。
繊度CVは7.3%であった。
この不織布を、前述の実施例1〜4および比較例1〜5のいずれかで得られたポリウレタン溶液I〜IX(濃度12重量%)に浸漬し、絞りロールにてポリウレタン溶液の付着量を調節した後、30℃のDMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固せしめた。その後、90℃の熱水にてポリビニルアルコール及びDMFを除去し、乾燥後、次いでシリコーンエマルジョン水溶液に含浸、乾燥後、ポリウレタン含有量が32重量%、シリコーン含有量0.2重量%のシート状物を得た。
得られたシート状物の片面を150メッシュ、次いで240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理を行い、分散染料にて染色を施して本発明のシート状物を得た。
こうして得たシート状物の内部の厚み方向断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、いずれのシート状物においてもポリウレタンは極細繊維束の内部には実質的に存在しておらず、極細繊維束の最外周に位置する単繊維と部分的に接合していることが確認できた。
得られたシート状物の評価結果は表2にまとめて示した。
Claims (12)
- 一般式(1)で示されるカーボネート骨格を有する分子鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール(A)と、一般式(2)で示されるカーボネート骨格を有する分子鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール(B)と、有機ジイソシアネートと、鎖伸長剤との反応により得られる構造を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン組成物。
- 一般式(2)で示される式中に記載のR3とR4のいずれか少なくとも一方が、メチル基またはエチル基が分岐した脂肪族炭化水素基であることを特徴とする請求項2または3に記載のポリウレタン組成物。
- 平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維の繊維束が絡合してなる不織布とその内部空間に存在するポリウレタンを主成分とした弾性樹脂バインダーとから構成されるシート状物であって、該ポリウレタンが請求項1〜5のいずれかであることを特徴とするシート状物。
- 該極細繊維が、ポリエステルであることを特徴とする請求項6に記載のシート状物。
- 該弾性樹脂バインダーは極細繊維の繊維束内部には実質的に存在しないことを特徴とする請求項6または7に記載のシート状物。
- 該弾性樹脂バインダーが、繊維束の最外周に位置する単繊維と部分的に接合していることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のシート状物。
- シート状物に占める弾性樹脂バインダーの比率が10重量%以上50重量%以下であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のシート状物。
- シート状物の少なくとも片面に極細繊維の立毛を有することを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載のシート状物。
- 請求項6〜11のいずれかに記載のシート状物を表皮材とすることを特徴とする内装材。
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