JP2006303178A - 強誘電体薄膜の作製方法 - Google Patents

強誘電体薄膜の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 強誘電体薄膜において、所望の膜厚及び所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製する。
【解決手段】 基板の上に、強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物を塗付する工程(a)と、工程(a)の後に、強誘電体微粒子の周囲に電場及び磁場のうちの少なくとも一方を形成する工程(b)と、工程(b)の後に、基板を熱処理することにより溶媒を除去する工程(c)とを含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、強誘電体メモリに用いられる強誘電体薄膜の作製方法に関するものである。
強誘電体メモリとは、強誘電体が電場−分極特性にヒステリシスをもつことを応用した不揮発性メモリである。
強誘電体メモリは、他の不揮発性メモリであるFLASHメモリ及びEEPROMと比べて、消費電力が少なく書き込み速度が速いことから、非接触型のICカード等に使用されている。
今後、強誘電体メモリの更なる微細化を図ることにより、強誘電体メモリの大容量化を達成することができれば、他の様々なメモリ機器の代替として強誘電体メモリを用いることも可能である。
強誘電体メモリを構成する強誘電体材料として、例えば、ペロブスカイト結晶構造を有する鉛・ジルコネート・チタネート:Pb(Zr,Ti)O3(以下、PZTと記す)、及び層状ペロブスカイト結晶構造を有するストロンチウム・ビスマス・タンタレート:SrBi2Ta2O9(以下、SBTと記す)等が用いられている。
強誘電体材料としてSBTを用いた場合、SBTよりなる強誘電体薄膜は、以下のようにして作製することができる。
例えば、スピンコート法を用いて、基板の上に、SBTを構成する金属元素であるストロンチウム(Sr)、ビスマス(Bi)、及びタンタル(Ta)よりなる有機金属化合物を含む原料溶液を塗布することにより塗布膜を形成した後、該塗布膜が形成された基板に対して800℃の熱処理を施すことにより、該塗布膜を構成するSBTの結晶化を図る。このようにして、基板の上に、SBTよりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
次に、強誘電体メモリをLSI(Large Scale Integrated Circuit)に混載した場合における、強誘電体薄膜の作製方法について、SBTよりなる強誘電体薄膜を例に挙げて説明する。
まず、基板の上に、トランジスタを形成する。続いて、トランジスタの上に、前述したように、塗布膜を形成した後、該塗布膜が形成された基板に対して800℃の熱処理を施すことにより、該塗布膜を構成するSBTの結晶化を図る。このようにして、トランジスタの上に、SBTよりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
近年、LSIの微細化が進行している。
例えば、最小加工寸法が65[nm]以下のトランジスタでは、ゲート電極及びソース/ドレイン電極における金属シリサイドとして、優れた加工性を有するニッケル・シリサイドが用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
ニッケル・シリサイドは高温に曝されると、ニッケル・シリサイドが有するシート抵抗値が上昇するため、トランジスタのオン電流が低下するので、トランジスタの電子回路における動作速度が低下する。
このため、強誘電体メモリが混載されたLSIにおける強誘電体薄膜の作製方法では、ニッケル・シリサイドが有する耐熱温度に応じて、トランジスタの形成工程以降の製造工程、すなわち、強誘電体薄膜の作製工程における温度の上限を決定する必要がある。
ここで、ニッケル・シリサイドが有するシート抵抗と温度との関係について以下に説明する(例えば、非特許文献2参照)。
温度が350℃以下の状態では、ニッケル・シリサイドは安定なシート抵抗値を示すが、温度が400℃、450℃、更には500℃と上昇するに従って、温度が350℃におけるニッケル・シリサイドが有するシート抵抗値は2倍、2.6倍、更には6倍の割合で上昇する。
このため、強誘電体メモリが混載されたLSIにおける強誘電体薄膜の作製方法では、450℃以下の温度の下で強誘電体薄膜の作製を行わなければならない。
しかしながら、従来例に係る強誘電体薄膜の作製方法では、前述したように、塗布膜が形成された基板に対して800℃の熱処理を施すことにより、該塗布膜を構成する強誘電体粒子の結晶化を図る工程が必要である。
このため、従来例に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体粒子の結晶化を図る工程において、ゲート電極及びソース/ドレイン電極を構成する材料であるニッケル・シリサイドが高温(すなわち、450℃以上の温度)の下に曝される。
これにより、前述したように、ニッケル・シリサイドが有するシート抵抗値が上昇するため、トランジスタのオン電流が低下するので、トランジスタの電子回路における動作速度が低下する。
したがって、従来例に係る強誘電体薄膜の作製方法では、トランジスタのオン電流を低下させることなく、強誘電体薄膜を作製することができない。
このように、従来例に係る強誘電体薄膜の作製方法では、トランジスタの形成工程以降の製造工程、すなわち、強誘電体薄膜の作製工程において、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で強誘電体薄膜の作製を行うことができない。
したがって、LSIの微細化に伴い、今後、強誘電体メモリの更なる微細化を図ることにより、強誘電体メモリの大容量化を達成するためには、これまでよりも低温(すなわち、450℃以下の温度)の下で、大きい残留分極値を有する強誘電体薄膜、すなわち、優れた分極特性を有する強誘電体薄膜の作製を行う必要がある。
このため、近年では、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で、優れた分極特性を有する強誘電体薄膜を作製することが可能な、強誘電体薄膜を作製する技術の開発が急務となっている。
以下に、従来技術に係る強誘電体薄膜の作製方法について説明する(例えば、特許文献1参照)。
従来技術に係る強誘電体薄膜の作製方法では、まず、電気泳動堆積法を用いて、強誘電体結晶粒子が有する分極軸方向を所望の方向に揃えるようにして、該強誘電体結晶粒子よりなる強誘電体薄膜を作製する。続いて、基板の上に、強誘電体結晶粒子が有する分極軸方向を基板に対して垂直な方向に揃えるようにして、予め作製された強誘電体薄膜を配置する。
ここで、電気泳動堆積法について以下に詳述する。
電気泳動堆積法とは、溶液中に粒子を分散させ、該溶液中に一対の電極を浸漬させ、該電極の間に直流電圧を印加することにより、該溶液中に分散している粒子が、正極及び負極のうちのいずれか一方の電極に向かって該溶液中を泳動し、該電極の各々の上に粒子が堆積していく現象を利用した成膜方法である。
このように、従来技術に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体薄膜の作製方法として電気泳動堆積法を用いることにより、予め結晶化された強誘電体微粒子(すなわち、強誘電体結晶粒子)を用いて強誘電体薄膜を作製することができるので、基板を熱処理することにより強誘電体微粒子の結晶化を図る工程を必要としない。
また、強誘電体薄膜の作製方法として電気泳動堆積法を用いることにより、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を所望の方向に揃えることができるので、大きい残留分極値を有する強誘電体薄膜、すなわち、優れた分極特性を有する強誘電体薄膜を作製することができる。
更には、強誘電体薄膜の作製方法として電気泳動堆積法を用いることにより、理論上、強誘電体薄膜の面積を強誘電体微粒子1個分まで小さくさせることが可能であるため、数ナノメートルサイズの強誘電体薄膜の作製も可能であるので、強誘電体メモリの微細化を図ることが可能である。
このように、従来技術に係る強誘電体薄膜の作製方法では、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で、優れた分極特性を有する強誘電体薄膜を作製すると共に微細化された強誘電体薄膜を作製することが可能である、と考えられている。
Material Research Society Symposium Proceeding誌 2004年 810巻C1.1.1〜12 International Electron Device Meeting Technical Digest誌 2003年 497頁 特開2002−208271号公報
しかしながら、従来技術に係る強誘電体薄膜の作製方法では、溶液中に浸漬された一対の電極の間に直流電圧を印加することによって、強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜の膜厚と該強誘電体微粒子が有する分極軸方向との双方を制御する。
このように、従来技術に係る強誘電体薄膜の作製方法では、同一の工程において、強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜の膜厚と、該強誘電体微粒子が有する分極軸方向との双方を制御しなければならない。
このため、強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜の膜厚と、該強誘電体微粒子が有する分極軸方向との各々を完全に制御することが困難であり、所望の膜厚及び所望の分極軸方向を得ることは困難であった。
また、従来技術に係る強誘電体薄膜の作製方法では、溶液中に基板全体を浸漬させる必要があるので、基板の表面だけでなく基板の裏面にも強誘電体微粒子が付着する。
このため、強誘電体薄膜の作製後における基板の洗浄工程において、基板の裏面に付着している強誘電体微粒子を除去しなければならず、更には、基板の裏面に付着している強誘電体微粒子を除去することは困難であるので、製造コストが増大される。
更には、強誘電体薄膜の作製後における基板の洗浄工程において、基板の裏面に付着している強誘電体微粒子が完全に除去されなかった場合、基板の洗浄工程以降の製造工程において、基板の裏面に残留している強誘電体微粒子によって基板等が汚染されるため、高い信頼性を有する強誘電体メモリを実現することが可能な強誘電体薄膜を作製することができないので、強誘電体メモリの信頼性が低下する。
前記に鑑み、本発明の目的は、強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜の膜厚と、該強誘電体微粒子が有する分極軸方向との各々を別途の工程において制御することにより、所望の膜厚及び所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜の作製方法を提供することである。
前記の課題を解決するために、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法は、基板の上に、強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物を塗付する工程(a)と、工程(a)の後に、強誘電体微粒子の周囲に電場及び磁場のうちの少なくとも一方を形成する工程(b)と、工程(b)の後に、基板を熱処理することにより溶媒を除去する工程(c)とを含むことを特徴とする。
本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、工程(a)において、強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜の膜厚を制御すると共に、工程(b)において、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を制御することができる。
このように、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜の膜厚と、該強誘電体微粒子が有する分極軸方向との各々を別途の工程において制御することができるので、所望の膜厚及び所望の分極軸方向を有する強誘電体薄膜を作製することができる。
また、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、基板の上に、強誘電体微粒子だけでなく溶媒をも塗布するため、工程(a)において、強誘電体微粒子と基板とが強固に物理吸着することを防止すると共に、工程(b)において、強誘電体微粒子を容易に回転させることができるので、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を精密に制御することができる。
また、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、基板の表面に強誘電体微粒子を塗付することにより強誘電体薄膜を作製するので、従来のように、基板の裏面に強誘電体微粒子が付着することはない。
このため、強誘電体薄膜の作製後における基板の洗浄工程において、基板の裏面に付着した強誘電体微粒子を除去する必要がないため、基板における洗浄の容易化を図ることができるので、製造コストの低減を図ることができる。
更には、強誘電体薄膜の作製後における基板の洗浄工程以降の製造工程において、従来のように、基板の裏面に残留している強誘電体微粒子によって基板等が汚染されることがないため、高い信頼性を有する強誘電体メモリを実現することが可能な強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体メモリの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、強誘電体微粒子が有する分極軸方向が制御された状態であって、且つ所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下、基板を熱処理することにより溶媒を除去することができる。
これにより、強誘電体微粒子と基板との付着力の向上を図ることができるので、基板の上に、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を揃えるようにして、該強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
更には、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、基板の上に、予め結晶化された強誘電体微粒子を塗布するため、基板を熱処理することにより強誘電体微粒子の結晶化を図る工程を必要としないので、高温(すなわち、450℃以上の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することなく、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することができる。
このように、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、所望の膜厚を有する強誘電体薄膜であって、且つ所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができるだけでなく、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することができる。
本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法において、工程(b)は、電極と基板とを電圧源を介して接続することにより、電場を形成する工程であることが好ましい。
このようにすると、強誘電体微粒子の表面において、正の電荷密度が高い部分には負の電界方向へ向く力が働き、負の電荷密度が高い部分には正の電界方向へ向く力が働く。
これにより、強誘電体微粒子が有する分極軸方向が電界方向と平行になるようにして、強誘電体微粒子を回転させることができる。
このように、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子の周囲に電場を形成することにより、強誘電体微粒子が有する分極軸に対して電場による配向効果が働くので、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を精密に制御することができる。
したがって、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、大きい残留分極値を有する強誘電体薄膜、すなわち、優れた分極特性を有する強誘電体薄膜を作製することができる。
本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法において、工程(b)は、電圧源を介して一対に配置された第1の電極と第2の電極との間に基板を配置することにより、電場を形成する工程であることが好ましい。
このようにすると、強誘電体微粒子の表面において、正の電荷密度が高い部分には負の電界方向へ向く力が働き、負の電荷密度が高い部分には正の電界方向へ向く力が働く。
これにより、強誘電体微粒子が有する分極軸方向が電界方向と平行になるようにして、強誘電体微粒子を回転させることができる。
このように、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子の周囲に電場を形成することにより、強誘電体微粒子が有する分極軸に対して電場による配向効果が働くので、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を精密に制御することができる。
したがって、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、大きい残留分極値を有する強誘電体薄膜、すなわち、優れた分極特性を有する強誘電体薄膜を作製することができる。
更には、このようにすると、基板を挟むようにして配置された一対の電極の間に形成された電場によって、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を制御することができるので、基板に対して電圧源を直接接続する必要がない。
このため、強誘電体微粒子の周囲に電場を形成する際に、強誘電体微粒子が塗布された基板に対して電圧による負担をかけることがないので、強誘電体微粒子が塗布された基板の表面が電気化学的に酸化されること防止することができる。
したがって、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、高い信頼性を有する強誘電体メモリを実現することが可能な強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体メモリの信頼性の向上を図ることができる。
本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法において、工程(b)は、非立法晶系の結晶構造を有する強誘電体微粒子の周囲に磁場を形成する工程であることが好ましい。
このようにすると、非立法晶系の結晶構造を有する強誘電体微粒子は結晶磁気異方性を有するので、強誘電体微粒子の周囲に磁場を形成することにより、強誘電体微粒子に対して結晶磁気異方性による磁気異方性エネルギーが働く。
このため、強誘電体微粒子における磁気異方性エネルギーが、強誘電体微粒子における熱振動エネルギーよりも大きくなるようにして、強誘電体微粒子の周囲に磁場を形成することにより、強誘電体微粒子における最も強い磁気異方性を示す結晶軸の方向が磁場の方向と平行になるようにして、強誘電体微粒子を回転させることができる。
これにより、強誘電体微粒子が有する分極軸方向が磁場の方向と垂直になるようにして、強誘電体微粒子を回転させることができる。
このように、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子の周囲に磁場を形成することにより、強誘電体微粒子が有する分極軸に対して磁場による配向効果が働くので、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を精密に制御することができる。
したがって、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、大きい残留分極値を有する強誘電体薄膜、すなわち、優れた分極特性を有する強誘電体薄膜を作製することができる。
本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法において、工程(b)は、非立法晶系の結晶構造を有する強誘電体微粒子の周囲に電場及び磁場を形成する工程であることが好ましい。
このようにすると、強誘電体微粒子の周囲に電場を形成すると共に、強誘電体微粒子における磁気異方性エネルギーが強誘電体微粒子における熱振動エネルギーよりも大きくなるようにして強誘電体微粒子の周囲に磁場を形成することができる。
このように強誘電体微粒子の周囲に電場を形成することにより、強誘電体微粒子の表面における正の電荷密度が高い部分には負の電界方向へ向く力が働き、一方、強誘電体微粒子の表面における負の電荷密度が高い部分には正の電界方向へ向く力が働くので、強誘電体微粒子が有する分極軸方向が電界方向と平行になるようにして、強誘電体微粒子を回転させることができる。
更には、このように強誘電体微粒子の周囲に磁場を形成することにより、強誘電体微粒子における最も強い磁気異方性を示す結晶軸の方向が磁場の方向と平行になるようにして、強誘電体微粒子を回転させることができるので、強誘電体微粒子が有する分極軸方向が磁場の方向と垂直になるようにして、強誘電体微粒子を回転させることができる。
このように、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子の周囲に電場と磁場との双方を形成することにより、強誘電体微粒子が有する分極軸に対して電場による配向効果と磁場による配向効果とが相乗されて働くので、強誘電体微粒子が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
したがって、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、大きい残留分極値を有する強誘電体薄膜、すなわち、優れた分極特性を有する強誘電体薄膜を作製することができる。
本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法において、前記強誘電体微粒子は、単結晶であることが好ましい。
これにより、強誘電体微粒子が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができるので、所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法において、工程(a)は、溶媒中に強誘電体微粒子を単分散させる工程と、基板の上に、強誘電体微粒子が溶媒中に単分散されてなる溶液を塗布する工程とを含むことが好ましい。
このようにすると、強誘電体微粒子の周囲に溶媒が存在しているため、工程(a)において、強誘電体微粒子と基板とが強固に物理吸着することをより一層防止すると共に、工程(b)において、強誘電体微粒子をより一層容易に回転させることができるので、強誘電体微粒子が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
更には、このようにすると、工程(a)において、強誘電体微粒子が凝集することを防止することができるので、工程(b)において、強誘電体微粒子が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
したがって、本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法では、所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
本発明に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、所望の膜厚を有する強誘電体薄膜であって、且つ所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができるだけでなく、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することができる。
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法について、図1並びに図2(a) 及び(b) を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法におけるフローチャートを示す図である。
また、図2(a) 及び(b) は、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法を示す要部工程断面図である。
まず、図1に示すように、工程(a1)において、基板の上に、強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物を塗布する。
本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物として、溶媒中に強誘電体微粒子が単分散された溶液を用いる。
以下に、溶媒中に強誘電体微粒子が単分散された溶液の調整方法について、溶媒としてオクタン溶液を用いると共に強誘電体微粒子としてSBT微粒子を用いる場合を例に挙げて詳述する。
まず、ナノサイズ型の強誘電体粒子(以下、強誘電体微粒子と記す)の作製を行う。
ナノサイズ型のSBT粒子(以下、SBT微粒子と記す)の作製方法として、粉砕法、電気炉・化学炎・プラズマ・及びレーザ等の手法による気相法、共沈・化合物沈殿・アルコキシド・水熱合成等の化学的手法による液相法、及び凍結乾燥・噴霧乾燥・噴霧熱分解等の物理的手法による液相法が挙げられる。
本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、SBT微粒子の作製方法としてプラズマ法を用いる。
具体的には、酸素よりなるプラズマ中に、SBTを構成する金属元素であるストロンチウム(Sr)、ビスマス(Bi)、及びタンタル(Ta)よりなる有機金属化合物を含む原料溶液を噴霧し、1200℃以上の高温下で噴霧された状態を瞬時に焼結させることにより、SBT微粒子の作製を行うことができる。
ここで、プラズマ法を用いて作製されたSBT微粒子の結晶性をX線回折法により調べたところ、層状ペロブスカイト結晶構造に特有の指数に関連したピークのみが検出された。
更に、プラズマ法を用いて作製されたSBT微粒子を透過型電子顕微鏡により観察したところ、該SBT微粒子は単一の結晶であることが確認された。
このように、プラズマ法を用いて作製されたSBT微粒子の評価を行うことにより、プラズマ法を用いて作製されたSBT微粒子は、層状ペロブスカイト結晶構造を有し且つ単結晶であることが確認された。
したがって、SBT微粒子の作製方法としてプラズマ法を用いることにより、層状ペロブスカイト結晶構造を有し且つ単結晶であるSBT微粒子を得ることができる。
更には、SBT微粒子の作製方法としてプラズマ法を用いることにより、高温下でSBT微粒子の作製を行うことができるので、層状ペロブスカイト結晶構造を有するSBT微粒子を得るのに適しており、且つ一度の焼結処理によって大量のSBT微粒子を作製することが可能である。
このように、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、SBT微粒子の作製方法としてプラズマ法を用いることにより、良好な結晶性を有し且つ単結晶であるSBT微粒子を作製することができる。
したがって、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、後工程において、予め結晶化されたSBT微粒子(すなわち、強誘電体結晶粒子)を用いて強誘電体薄膜を作製することができるので、従来のように、基板を熱処理することによりSBT微粒子の結晶化を図る工程を必要としない。
更には、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、後工程において、単結晶であるSBT微粒子を用いて強誘電体薄膜を作製することができるので、SBT微粒子が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
ここで、SBT微粒子の作製方法としてプラズマ法を用いた場合、酸素よりなるプラズマ中に噴霧されたSBT微粒子同士が互いに衝突することにより融合するので、プラズマ法を用いて作製されたSBT微粒子の中には、狙いとする粒径よりも大きな粒径を有するSBT微粒子が存在している。
実際に、プラズマ法を用いて作製されたSBT微粒子の粒径を走査型電子顕微鏡により観察したところ、粒径の数値は25[nm]〜325[nm]の範囲に分布していることが確認された。
このため、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、プラズマ法を用いてSBT微粒子を作製した後、該SBT微粒子の分級を行う必要がある。
SBT微粒子の分級手段として、例えば、沈降法による分級、遠心分離器による分級、微分型静電分級器による分級等が挙げられる。
本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、SBT微粒子の分級方法として沈降法を用いる。
具体的には、高さが100[nm]の容器内に満たされた純水中に、上記の範囲(25[nm]〜325[nm])に分布された粒径を有するSBT微粒子を懸濁する。続いて、例えば、3ヶ月の間、純水中にSBT微粒子が懸濁された溶液を放置する。
ここで、純水中に懸濁されたSBT微粒子における沈降速度は、SBT微粒子が有する粒径に応じて決定される。
重力による粒子の沈降速度vは、以下に示す式[1]から求められる。
v = D 2(ρ-ρ0 )g/18η・・・[1]
但し、Dは粒径、ρは粒子の密度、ρ0 は溶媒の密度、gは重力加速度、ηは溶媒の粘度に相当する。
式[1]を用いることにより、例えば、粒径が200[nm]を有するSBT微粒子における沈降速度vは0.16[nm/h]であり、一方、粒径が100[nm]を有するSBT微粒子における沈降速度vは0.04[nm/h]であると算出することができる。
このため、3ヶ月の放置後における、高さが100[nm]の容器内に満たされた純水中に懸濁されたSBT微粒子のうち、粒径が200[nm]を有するSBT微粒子は容器底に沈降するのに対し、一方、粒径が100[nm]を有するSBT微粒子は容器底に沈降することなく懸濁溶液中を浮遊する。
したがって、沈降法によるSBT微粒子の分級では、放置後における懸濁溶液の上澄み液を回収することにより、上記の範囲(25[nm]〜325[nm])に分布された粒径を有するSBT微粒子の中から、100[nm]以下の粒径を有するSBT微粒子を選別することができる。
このように、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、プラズマ法によるSBT微粒子の作製後、沈降法によるSBT微粒子の分級を行うことにより、強誘電体薄膜が狙いとする膜厚を有するように、所望の粒径を有するSBT微粒子を予め選別する。
例えば、100[nm]以下の粒径を有するSBT微粒子を予め選別することにより、後工程において、該SBT微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製する際に、膜厚が100[nm]である強誘電体薄膜を作製することができる。
次に、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、所望の粒径を有するSBT微粒子を選別した後、溶媒中に該SBT微粒子が単分散された溶液の調整を行う。
具体的には、オクタン溶液1L中に所望の粒径(例えば、100[nm]以下の粒径)を有するSBT微粒子10gを混合し攪拌する。
このとき、界面活性剤をオクタン溶液中に添加する、又はシランカップリング剤等を用いてSBT微粒子の表面を予め修飾することにより、所望の粒径を有するSBT微粒子が単分散されたオクタン溶液を調整する。
以上のようにして、溶媒中に強誘電体微粒子が単分散された溶液を調整する。
次に、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、図1に示すように、工程(a1)において、基板の上に、所望の粒径を有するSBT微粒子が単分散された溶液の塗布を行う。
具体的には、スピンコート法を用いて、表面に導電膜が形成された基板の上に、100[nm]以下の粒径を有するSBT微粒子が単分散されたオクタン溶液を塗布する。
このように、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、工程(a1)において、基板の上に所望の粒径を有する強誘電体微粒子のみが単分散された溶液を塗布する。
これにより、所望の粒径を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体薄膜の膜厚を所望の膜厚に制御することができる。
次に、図1に示すように、工程(b1)において、強誘電体微粒子の周囲に電場を形成する。
具体的には、図2(a) に示すように、基板1おける強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して垂直な方向D1に電場が形成されるようにして、電極5と基板1とを配置し、電圧源6を介して、基板1における導電膜2と電極5とを接続し、基板1と電極5との間に電圧を印加する。このようにして、強誘電体微粒子(例えば、SBT微粒子)3の周囲に電場を形成する。
ここで、基板1と電極5との間に印加される電圧の大きさは、基板1と電極5との間が絶縁破壊されない程度の電圧、具体的には、基板1と電極5との間が絶縁破壊されるときの電圧以下であればよい。
例えば、基板1と電極5との間に空気が存在する場合、空気の絶縁破壊電圧は35[kV/cm]であるので、基板1と電極5との間に印加される電圧は35[kV/cm]以下の電圧に設定される。
また、ここで、強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成することにより、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が揃う原理について以下に説明する。
工程(a1)、すなわち、基板1の上に強誘電体微粒子3が塗布された状態における、強誘電体微粒子3の表面には分極が発現しており、強誘電体微粒子3の表面における電荷分布は一様でない。
しかしながら、工程(b1)において、強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成することにより、強誘電体微粒子3の表面における正の電荷密度が高い部分には負の電界方向へ向く力が働き、一方、強誘電体微粒子3の表面における負の電荷密度が高い部分には正の電界方向へ向く力が働くので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が電界方向D1と平行になるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができる。
したがって、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、図2(a) に示すように、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して垂直な方向に電場が形成されるようにして、電極5と基板1とを配置し、基板1と電極5との間に所望の電圧(例えば、35[kV/cm])を印加することにより、強誘電体微粒子3の周囲に所望の電場を形成する。
これにより、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が、電場形成方向D1に対して平行な方向になるようにして、すなわち、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して垂直な方向になるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する残留分極値が最も大きくなるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができる。
このように、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成することにより、強誘電体微粒子3が有する分極軸に対して電場による配向効果が働くので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を精密に制御することができる。
次に、図1に示すように、工程(c1)において、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が揃った状態であって且つ450℃の温度の下、基板1を熱処理することにより溶媒4(例えば、オクタン溶液)の除去を行う。ここで、基板1に対して施される熱処理の温度は、基板1における電子素子が破壊されない温度に設定されている。
このように基板1を熱処理することにより、基板1の上に塗布された溶媒4の除去を行うだけでなく、強誘電体微粒子3と基板1との付着力の向上を図ることができるので、基板1の上に、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を揃えるようにして、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
以上のようにして、強誘電体薄膜を作製することができる。
本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、工程(a1)において、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜の膜厚を制御すると共に、工程(b1)において、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を制御することができる。
具体的には、工程(a1)において、基板1の上に所望の粒径を有する強誘電体微粒子3のみが単分散された溶液を塗布する。
これにより、所望の粒径を有する強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体薄膜の膜厚を所望の膜厚に制御することができる。
また、具体的には、工程(b1)において、強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成する。
これにより、強誘電体微粒子3の表面における正の電荷密度が高い部分には負の電界方向へ向く力が働き、一方、強誘電体微粒子3の表面における負の電荷密度が高い部分には正の電界方向へ向く力が働くため、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が電界方向D1と平行になるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を所望の方向に制御することができる。
このように、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜の膜厚と、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向との各々を別途の工程において制御することができるので、所望の膜厚及び所望の分極軸方向を有する強誘電体薄膜を作製することができる。
また、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、基板1の表面に強誘電体微粒子3を塗付することにより強誘電体薄膜を作製するので、従来のように、基板1の裏面に強誘電体微粒子3が付着することはない。
このため、強誘電体薄膜の作製後における基板1の洗浄工程において、基板1の裏面に付着した強誘電体微粒子3を除去する必要がないため、基板1における洗浄の容易化を図ることができるので、製造コストの低減を図ることができる。
更には、強誘電体薄膜の作製後における基板1の洗浄工程以降の製造工程において、従来のように、基板1の裏面に残留している強誘電体微粒子3によって基板1等が汚染されることがないため、高い信頼性を有する強誘電体メモリを実現することが可能な強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体メモリの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が制御された状態であって、且つ所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下、基板1を熱処理することにより溶媒4を除去することができる。
これにより、強誘電体微粒子3と基板1との付着力の向上を図ることができるので、基板1の上に、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を揃えるようにして、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
また、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、図2(a) に示すように、強誘電体微粒子3の周囲に溶媒4(例えば、オクタン溶液)が存在している。
このように、強誘電体微粒子3の周囲に溶媒4が存在することにより、工程(a1)において、強誘電体微粒子3と基板1とが強固に物理吸着することをより一層防止すると共に、工程(b1)において、強誘電体微粒子3の周囲に形成された電場によって、強誘電体微粒子3をより一層容易に回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
更には、工程(a1)において、強誘電体微粒子3が凝集することを防止することができるので、工程(b1)において、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
また、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、基板1の上に、予め結晶化された強誘電体微粒子3を塗布するため、基板1を熱処理することにより強誘電体微粒子3の結晶化を図る工程を必要としないので、高温(すなわち、450℃以上の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することなく、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することができる。
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、基板1の上に、所望の膜厚を有する強誘電体薄膜であって且つ所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができるだけでなく、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することができる。
尚、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、図2(a) に示すように、電圧源6を介して、基板1における導電膜2と電極5とを接続し、基板1と電極5との間に電圧を印加することにより、強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成したが、本発明はこれに限定されることはない。
以下に、強誘電体微粒子の周囲に電場を形成するその他の具体的な方法について、図2(b) を参照しながら説明する。
図2(b) に示すように、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して垂直な方向(前述した図2(a) D1参照)に電場が形成されるようにして、一対に配置された電極5aと電極5bとの間に基板1を配置し、電圧源6を介して電極5aと電極5bとを接続し、電極5aと電極5bとの間に電圧を印加する。このようにして、強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成する。
このようにすると、基板1を挟むようにして配置された一対の電極5aと電極5bとの間に形成された電場によって、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を制御することができるので、前述した図2(a) に示すように、基板1に対して電圧源6を直接接続することなく、強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成することができる。
このため、強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成する際に、強誘電体微粒子3が塗布された基板1に対して電圧による負担をかけることがないため、強誘電体微粒子3が塗布された基板1の表面が電気化学的に酸化されることを防止することができるので、高い信頼性を有する強誘電体メモリを実現することが可能な強誘電体薄膜を作製することができる。
尚、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子の分級手段として、沈降法による分級を用いたが、本発明はこれに限定されることはなく、遠心分離器による分級、及び微分型静電分級器による分級等を用いることが可能であり、これらの機器による強誘電体微粒子の分級を行うことにより、沈降法による分級と比較して、より短時間で強誘電体微粒子の分級を行うことができる。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法について、図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法を示す要部工程断面図である。
前述した本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、基板の上に強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物を塗付した後、電場によって、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を制御した後、該制御された状態であって且つ450℃以下の温度の下、基板の上に塗布された溶媒を除去することにより、強誘電体薄膜を作製した。
一方、本実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、基板の上に強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物を塗付した後、電場ではなく磁場によって、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を制御した後、該制御された状態であって且つ450℃以下の温度の下、基板の上に塗布された溶媒を除去することにより、強誘電体薄膜を作製する。
尚、本実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物として、溶媒中に強誘電体微粒子が単分散された溶液を用い、具体的には、溶媒としてオクタン溶液を用いると共に強誘電体微粒子としてSBT微粒子を用いる。
また、本実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法と同様の説明は繰り返し行わない。
まず、前述した本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法と同様に、スピンコート法を用いて、表面に導電膜が形成された基板の上に、所望の粒径を有するSBT微粒子が単分散されたオクタン溶液を塗付する(以下、工程(a2)と記す)。
このように、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、工程(a2)において、基板の上に所望の粒径を有する強誘電体微粒子のみが単分散された溶液を塗布する。
これにより、所望の粒径を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体薄膜の膜厚を所望の膜厚に制御することができる。
次に、図3に示すように、強誘電体微粒子3の周囲に磁場を形成する(以下、工程(b2)と記す)。
具体的には、図3に示すように、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して平行な方向D2に磁場が形成されるようにして、一対に配置された磁場発生器7aと磁場発生器7bとの間に基板1を配置する。このようにして、強誘電体微粒子(例えば、SBT微粒子)3の周囲に磁場を形成する。
ここで、強誘電体微粒子3の周囲に形成される磁場の大きさ及び方向は、以下のようにして決定される。
まず、強誘電体微粒子3の周囲に形成される、磁場の大きさの決定について以下に説明する。
一般に、磁性体の磁化率は、結晶格子の対称性を反映して、結晶軸に関して方向依存性を示す。
このように、非立法晶系の結晶構造を有する強誘電体微粒子は結晶磁気異方性を有するので、強誘電体微粒子の周囲に磁場を形成することにより、強誘電体微粒子に対して結晶磁気異方性による磁気異方性エネルギーが働くことが予想される。
結晶磁気異方性による粒子の磁気異方性エネルギーΔEは、以下に示す式[2]から求められる。
ΔE = ΔXVB2 /2μ0・・・[2]
但し、ΔXは磁化率の異方性、Vは粒子の体積、Bは磁束密度、及びμ0 は真空の透磁率に相当する。
そこで、例えば、SBT微粒子において、最も強い磁気異方性を示す結晶軸の方向がc軸であり、c軸方向における磁気異方性ΔX が10-7 [J]であって、且つSBT微粒子の粒径が100[nm]であると仮定する。
このとき、例えば、SBT微粒子の周囲に形成される磁場の大きさが10[T]である場合、10[T]の磁場の下では、式[2]を用いることにより、結晶磁気異方性によるSBT微粒子の磁気異方性エネルギーΔEは2.6×10-20 [J]であると算出することができる。
また、このとき、室温でのSBT微粒子が有する熱振動エネルギーは4×10-21[J]であり、このように、SBT微粒子の周囲に10[T]の磁場を形成することにより、SBT微粒子が有する、磁気異方性エネルギーΔEは熱振動エネルギーよりも大きくなる。
このように、SBT微粒子における磁気異方性エネルギーΔEが熱振動エネルギーよりも大きくなるようにして、SBT微粒子の周囲に磁場を形成することにより、SBT微粒子を回転させることができると考えられる。
続いて、強誘電体微粒子3の周囲に形成される、磁場の方向の決定について以下に説明する。
前述したように、SBT微粒子において、最も強い磁気異方性を示す結晶軸の方向がc軸である場合、最も強く分極が発現する結晶軸の方向はa軸である。
このため、磁場の方向が、基板1におけるSBT微粒子3が形成されている側の面と平行になるようにして、SBT微粒子3の周囲に磁場を形成する(図3 D2参照)。
これにより、SBT微粒子3が有する分極軸方向が、磁場形成方向D2と垂直になるようにして、SBT微粒子3を回転させることができる。
したがって、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、図3に示すように、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して平行な方向に磁場が形成されるようにして、一対に配置された磁場発生器7aと磁場発生器7bとの間に基板1を配置し、強誘電体微粒子3の周囲に所望の磁場(例えば、10[T]の磁場)を形成する。
これにより、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が、磁場形成方向D2に対して垂直な方向になるようにして、すなわち、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して垂直な方向になるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する残留分極値が最も大きくなるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができる。
このように、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子3の周囲に磁場を形成することにより、強誘電体微粒子3が有する分極軸に対して磁場による配向効果が働くので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を精密に制御することができる。
次に、前述した本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法と同様に、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が揃った状態であって且つ450℃の温度の下、基板1を熱処理することにより溶媒4の除去を行う(以下、工程(c2)と記す)。ここで、基板1に対して施される熱処理の温度は、基板1における電子素子が破壊されない温度に設定されている。
このように基板1を熱処理することにより、基板1の上に塗布された溶媒4の除去を行うだけでなく、強誘電体微粒子3と基板1との付着力の向上を図ることができるので、基板1の上に、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を揃えるようにして、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
以上のようにして、強誘電体薄膜を作製することができる。
本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、工程(a2)において、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜の膜厚を制御すると共に、工程(b2)において、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を制御することができる。
具体的には、工程(a2)において、基板1の上に所望の粒径を有する強誘電体微粒子3のみが単分散された溶液を塗布する。
これにより、所望の粒径を有する強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体薄膜の膜厚を所望の膜厚に制御することができる。
また、具体的には、工程(b2)において、強誘電体微粒子3が有する磁気異方性エネルギーΔEが、強誘電体微粒子3が有する熱振動エネルギーよりも大きくなるようにして、強誘電体微粒子3の周囲に磁場を形成する。
これにより、強誘電体微粒子3における結晶軸のうち、最も強い磁気異方性を示す結晶軸(例えば、c軸)の方向が磁場の方向と平行になるようにして、すなわち、強誘電体微粒子3が有する分極軸(例えば、a軸)方向が磁場形成方向D2と垂直になるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を所望の方向に制御することができる。
このように、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜の膜厚と、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向との各々を別途の工程において制御することができるので、所望の膜厚及び所望の分極軸方向を有する強誘電体薄膜を作製することができる。
また、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、基板1の表面に強誘電体微粒子3を塗付することにより強誘電体薄膜を作製するので、従来のように、基板1の裏面に強誘電体微粒子3が付着することはない。
このため、強誘電体薄膜の作製後における基板1の洗浄工程において、基板1の裏面に付着した強誘電体微粒子3を除去する必要がないため、基板1における洗浄の容易化を図ることができるので、製造コストの低減を図ることができる。
更には、強誘電体薄膜の作製後における基板1の洗浄工程以降の製造工程において、従来のように、基板1の裏面に残留している強誘電体微粒子3によって基板1等が汚染されることがないため、高い信頼性を有する強誘電体メモリを実現することが可能な強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体メモリの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が制御された状態であって、且つ所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下、基板1を熱処理することにより溶媒4を除去することができる。
これにより、強誘電体微粒子3と基板1との付着力の向上を図ることができるので、基板1の上に、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を揃えるようにして、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
また、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、図3に示すように、強誘電体微粒子3の周囲に溶媒4(例えば、オクタン溶液)が存在している。
このように、強誘電体微粒子3の周囲に溶媒4が存在することにより、工程(a2)において、強誘電体微粒子3と基板1とが強固に物理吸着することをより一層防止すると共に、工程(b2)において、強誘電体微粒子3の周囲に形成された磁場によって、強誘電体微粒子3をより一層容易に回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
更には、工程(a2)において、強誘電体微粒子3が凝集することを防止することができるので、工程(b2)において、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
また、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、基板1の上に、予め結晶化された強誘電体微粒子3を塗布するため、基板1を熱処理することにより強誘電体微粒子3の結晶化を図る工程を必要としないので、高温(すなわち、450℃以上の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することなく、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することができる。
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、基板1の上に、所望の膜厚を有する強誘電体薄膜であって且つ所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができるだけでなく、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することができる。
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法について、図4を参照しながら説明する。
図4は、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法を示す要部工程断面図である。
本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、基板の上に強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物を塗布した後、電場と磁場との双方によって、強誘電体微粒子が有する分極軸方向を制御した後、該制御された状態であって且つ450℃以下の温度の下、基板の上に塗布された溶媒を除去することにより、強誘電体薄膜を作製する。
尚、本実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物として、溶媒中に強誘電体微粒子が単分散された溶液を用い、具体的には、溶媒として酢酸ブチル溶液を用いると共に強誘電体微粒子としてBi3.25 La0.75 Ti3 O12 微粒子(以下、BLT微粒子と記す)を用いる。
また、本実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、本発明の第1及び第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法と同様の説明は繰り返し行わない。
まず、前述した本発明の第1及び第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法と同様に、スピンコート法を用いて、表面に導電膜が形成された基板の上に、所望の粒径を有するBLT微粒子が単分散された酢酸ブチル溶液を塗付する(以下、工程(a3)と記す)。
このように、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、工程(a3)において、基板の上に所望の粒径を有する強誘電体微粒子のみが単分散された溶液を塗布する。
これにより、所望の粒径を有する強誘電体微粒子よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体薄膜の膜厚を所望の膜厚に制御することができる。
次に、図4に示すように、強誘電体微粒子3の周囲に電場と磁場との双方を形成する(以下、工程(b3)と記す)。
具体的には、図4に示すように、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して垂直な方向(前述した図2(a) D1参照)に電場が形成されるようにして、一対に配置された電極5aと電極5bとの間に基板1を配置し、且つ基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して平行な方向(前述した図3 D2参照)に磁場が形成されるようにして、一対に配置された磁場発生器7aと磁場発生器7bとの間に基板1を配置する。このようにして、強誘電体微粒子(例えば、BLT微粒子)3の周囲に電場と磁場との双方を形成する。
このとき、一対に配置された電極5aと電極5bとの間に印加される電圧の大きさは、前述したように、電極5aと電極5bとの間が絶縁破壊されるときの電圧以下であればよい。
また、このとき、強誘電体微粒子3の周囲に形成される磁場の大きさは、前述したように、強誘電体微粒子3が有する磁気異方性エネルギーΔEが、強誘電体微粒子3が有する熱振動エネルギーよりも大きくなるように調整される。
更には、強誘電体微粒子3の周囲に形成される電場の方向と、強誘電体微粒子3の周囲に形成される磁場の方向とは、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向に応じて適宜決定される。
具体的には、強誘電体微粒子3の周囲に形成される電場の方向は、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して垂直な方向(前述した図2(a) D1参照)になるようにして調整されており、一方、強誘電体微粒子3の周囲に形成される磁場の方向は、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して平行な方向(前述した図3 D2参照)になるようにして調整されている。
これにより、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が、基板1における強誘電体微粒子3が形成されている側の面に対して垂直な方向になるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する残留分極値が最も大きくなるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができる。
このように、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子3の周囲に電場と磁場との双方を形成することにより、強誘電体微粒子3が有する分極軸に対して電場による配向効果と磁場による配向効果とが相乗されて働くので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
次に、前述した本発明の第1及び第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法と同様に、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が揃った状態であって且つ450℃の温度の下、基板1を熱処理することにより溶媒4の除去を行う(以下、工程(c3)と記す)。ここで、基板1に対して施される熱処理の温度は、基板1における電子素子が破壊されない温度に設定されている。
このように基板1を熱処理することにより、基板1の上に塗布された溶媒4の除去を行うだけでなく、強誘電体微粒子3と基板1との付着力の向上を図ることができるので、基板1の上に、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を揃えるようにして、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
以上のようにして、強誘電体薄膜を作製することができる。
本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、工程(a3)において、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜の膜厚を制御すると共に、工程(b3)において、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を制御することができる。
具体的には、工程(a3)において、基板1の上に所望の粒径を有する強誘電体微粒子3のみが単分散された溶液を塗布する。
これにより、所望の粒径を有する強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体薄膜の膜厚を所望の膜厚に制御することができる。
また、具体的には、工程(b3)において、強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成すると共に、強誘電体微粒子3における磁気異方性エネルギーΔEが熱振動エネルギーよりも大きくなるようにして強誘電体微粒子3の周囲に磁場を形成する。
このように強誘電体微粒子3の周囲に電場を形成することにより、強誘電体微粒子3の表面における正の電荷密度が高い部分には負の電界方向へ向く力が働き、一方、強誘電体微粒子3の表面における負の電荷密度が高い部分には正の電界方向へ向く力が働くため、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が電界方向と平行になるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を所望の方向に制御することができる。
更には、このように強誘電体微粒子3の周囲に磁場を形成することにより、強誘電体微粒子3における最も強い磁気異方性を示す結晶軸の方向が磁場の方向と平行になるようにして、すなわち、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が磁場の方向と垂直になるようにして、強誘電体微粒子3を回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を所望の方向に制御することができる。
このように、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜の膜厚と、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向との各々を別途の工程において制御することができるので、所望の膜厚及び所望の分極軸方向を有する強誘電体薄膜を作製することができる。
更には、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子3の周囲に電場と磁場との双方を形成することにより、強誘電体微粒子3が有する分極軸に対して電場による配向効果と磁場による配向効果とが相乗されて働くので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
また、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、基板1の表面に強誘電体微粒子3を塗布することにより強誘電体薄膜を作製するので、従来のように、基板1の裏面に強誘電体微粒子3が付着することはない。
このため、強誘電体薄膜の作製後における基板1の洗浄工程において、基板1の裏面に付着した強誘電体微粒子3を除去する必要がないため、基板1における洗浄の容易化を図ることができるので、製造コストの低減を図ることができる。
更には、強誘電体薄膜の作製後における基板1の洗浄工程以降の製造工程において、従来のように、基板1の裏面に残留している強誘電体微粒子3によって基板1等が汚染されることがないため、高い信頼性を有する強誘電体メモリを実現することが可能な強誘電体薄膜を作製することができるので、強誘電体メモリの信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向が制御された状態であって、且つ所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下、基板1を熱処理することにより溶媒4を除去することができる。
これにより、強誘電体微粒子3と基板1との付着力の向上を図ることができるので、基板1の上に、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向を揃えるようにして、強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができる。
また、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、図4に示すように、強誘電体微粒子3の周囲に溶媒4(例えば、酢酸ブチル溶液)が存在している。
このように、強誘電体微粒子3の周囲に溶媒4が存在することにより、工程(a3)において、強誘電体微粒子3と基板1とが強固に物理吸着することをより一層防止すると共に、工程(b3)において、強誘電体微粒子3の周囲に形成された電場と磁場との双方によって、強誘電体微粒子3をより一層容易に回転させることができるので、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
更には、工程(a3)において、強誘電体微粒子3が凝集することを防止することができるので、工程(b3)において、強誘電体微粒子3が有する分極軸方向をより一層精密に制御することができる。
また、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法によると、基板1の上に、予め結晶化された強誘電体微粒子3を塗布するため、基板1を熱処理することにより強誘電体微粒子3の結晶化を図る工程を必要としないので、高温(すなわち、450℃以上の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することなく、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で強誘電体薄膜を作製することができる。
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、基板1の上に、所望の膜厚を有する強誘電体薄膜であって且つ所望の分極軸方向を有する強誘電体微粒子3よりなる強誘電体薄膜を作製することができるだけでなく、所望の温度(すなわち、450℃以下の温度)の下で、強誘電体薄膜を作製することができる。
尚、本発明の第1〜第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子としてSBT微粒子又はBLT微粒子を用いたが、本発明はこれに限定されることはなく、その他の強誘電体微粒子、例えば、PZT微粒子及びチタン酸バリウム等を用いても良い。
このような等方性分極材料であっても、等方性分極材料の最大分極方向が、基板における強誘電体微粒子が形成されている側の面に対して垂直な方向になるようにして、強誘電体微粒子を回転させることができる。
また、本発明の第1〜第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、強誘電体微粒子を単分散させるときに用いられる溶媒としてオクタン溶液又は酢酸ブチル溶液を用いたが、本発明はこれに限定されることはなく、その他の溶媒を用いてもよい。
また、本発明の第1〜第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法では、基板の上に強誘電体微粒子を塗付する方法としてスピンコート法を用いたが、本発明はこれに限定されることはなく、その他の塗付方法を用いてもよい。
本発明は、所望の膜厚及び所望の分極軸方向を有する強誘電体粒子よりなる強誘電体薄膜の作製方法に有用である。
本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法におけるフローチャートを示す図である。 (a) 及び(b) は、本発明の第1の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法を示す要部工程断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法を示す要部工程断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る強誘電体薄膜の作製方法を示す要部工程断面図である。
符号の説明
1 基板
2 導電膜
3 強誘電体微粒子
4 溶媒
5 電極
5a 第1の電極
5b 第2の電極
6 電圧源
7a、7b 磁場発生器
D1 電場形成方向(電界方向)
D2 磁場形成方向


























Claims (7)

  1. 基板の上に、強誘電体微粒子及び溶媒よりなる混合物を塗付する工程(a)と、
    前記工程(a)の後に、前記強誘電体微粒子の周囲に電場及び磁場のうちの少なくとも一方を形成する工程(b)と、
    前記工程(b)の後に、前記基板を熱処理することにより前記溶媒を除去する工程(c)とを含むことを特徴とする強誘電体薄膜の作製方法。
  2. 前記工程(b)は、電極と前記基板とを電圧源を介して接続することにより、前記電場を形成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の強誘電体薄膜の作製方法。
  3. 前記工程(b)は、電圧源を介して一対に配置された第1の電極と第2の電極との間に前記基板を配置することにより、前記電場を形成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の強誘電体薄膜の作製方法。
  4. 前記工程(b)は、非立法晶系の結晶構造を有する前記強誘電体微粒子の周囲に前記磁場を形成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の強誘電体薄膜の作製方法。
  5. 前記工程(b)は、非立法晶系の結晶構造を有する前記強誘電体微粒子の周囲に前記電場及び前記磁場を形成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の強誘電体薄膜の作製方法。
  6. 前記強誘電体微粒子は、単結晶であることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の強誘電体薄膜の作製方法。
  7. 前記工程(a)は、
    前記溶媒中に前記強誘電体微粒子を単分散させる工程と、
    前記基板の上に、前記強誘電体微粒子が前記溶媒中に単分散されてなる溶液を塗布する工程とを含むことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の強誘電体薄膜の作製方法。
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JP2008219007A (ja) * 2007-02-23 2008-09-18 Samsung Electronics Co Ltd 強誘電体ナノドットを有する強誘電体情報記録媒体及びその製造方法

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