JP2006278502A - 発光素子及びその製造方法 - Google Patents

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明雄 登倉
Fumihiko Maeda
文彦 前田
Hiroki Hibino
浩樹 日比野
Koji Sumitomo
弘二 住友
Yoshihiro Kobayashi
慶裕 小林
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Abstract

【課題】ナノチューブにより活性領域を構成した実用的で広い発光波長帯域を持つ発光素子を、生産性やコストなどの観点でより製造しやすい状態でかつ発光波長の選択制という観点で利用しやすい状態で提供する。
【解決手段】レーザ媒質構造体102は、、屈曲部121aを備えたカーボンナノチューブ121から構成されている。基板101の表面には、上段部(第1支持体)101aと下段部(第2支持体)101bが形成され、上段部101aには、例えば鉄やコバルトなどの触媒金属からなる膜厚0.06〜0.5nm程度の触媒金属層111が形成されている。カーボンナノチューブ121は、触媒金属層111より成長し、上段部101aから下段部101bの平面上に延在し、上段部101aと下段部101bとの間の段差部において屈曲した屈曲部121aを備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ナノチューブから活性領域を構成した発光素子及びその製造方法に関するものである。
従来より、半導体レーザが、光通信用の小型の光源として一般に用いられてきた。半導体レーザは、小型化が可能であるという利点があるが、次に示すような問題もある。
まず第1に、素子作製に用いられる材料に問題がある。ほとんどの半導体発光素子では、活性層に化合物半導体を用いており、III族元素やV族元素が多く使用されてきた。しかしながら、化合物半導体を構成する、例えば、砒素といった元素は、環境に対する問題などの点で取り扱いに注意が必要であり、容易に用いることができない場合が多い。また、金属であるインジウムは、資源量が限られている貴重な元素であり、将来、長期にわたって使用するのが容易ではない材料である。
第2に、半導体レーザは、製造が容易ではないという問題がある。半導体発光素子は、三元ないしは四元合金の多層薄膜から構成する場合が多い。しかしながら、良い結晶性を保ちながら均一に薄膜を成長させる技術は難しく、さらに元素の種類が多いと膜を形成するための成膜条件を探すのが非常に困難となる。
さらに、適切な成膜条件は、膜を構成する化合物の種類によって異なるため、成長方法,作製装置,及び材料は、作製する化合物の種類毎に特化せざるを得ず、別の化合物には適用できない。このため、化合物の種類、即ち発光波長帯ごとに別々のプロセスや設備を用意しなければならず、投資効率が悪かった。また、構成する元素の種類が多いため、原料の調達が容易ではなく、原料調達のコストも割高になりやすい。
上述したような問題点を抱える半導体レーザなどの発光素子に対し、より容易に得られて環境にかかる負担も少ない原料を用い、より容易に製造が可能で、必要とされる広い発光波長帯の発振が得られる、高信頼性,高出力の小型の発光素子が期待されている。例えば、同じ材料を用いて同様の構成で、同様の製造過程で製造できる素子で、従来用いられてきた半導体発光素子の発光波長帯域を含む非常に幅広い発光波長帯域を持つ発光素子が期待されている。
上述した問題を解決するための発光素子の候補としては、例えば最近注目を集めているカーボンナノチューブに代表されるナノチューブを用いたものがある(非特許文献1,非特許文献2,非特許文献3参照)。なお、ナノチューブは、2次元の平面構造をとる物質が円筒状に丸まって構成され、擬似的に1次元状の物質と見なせる物質のことである。円筒を構成する壁は、一般的には隙間無く閉じており、物性は、構造の1次元性を反映している。ナノチューブは、主として上述した擬似1次元性によって特徴付けられており、直径や長さだけによって規定されるものではない。
ナノチューブは、炭素、窒素、ホウ素といった元素から構成されたものがあり、合成に用いる原料は安価で入手しやすく、従来の発光素子に用いられている砒素等に比較して環境にかかる負担がより小さい。電子構造の点から考えると、ナノチューブは、理想的な光学材料としての可能性を備えている。例えば、単層カーボンナノチューブは、グラフェンシート(1層のグラファイト)を円筒状にした構造をしている。
円筒の6員環の配列構造は、カイラリティー(螺旋度)と呼ばれ指数(n,m)によって表される。nとmの値によって、ナノチューブの直径や電子物性が異なる。(n−m)の値が3の倍数の時、単層カーボンナノチューブは、金属又は半金属の特性を示す。また、(n−m)の値が3の倍数以外の時、単層カーボンナノチューブは、半導体の特性を示す。金属的なカーボンナノチューブは、発光特性が極めて弱く、発光材料には適さない。
ただし、カーボンナノチューブの筒内部に、所定の原子,分子を内包させる、所定の原子,分子をカーボンナノチューブに化学修飾する、所定の原子分子をカーボンナノチューブにドーピングする、あるいはこれらを組み合わせることによりバンド構造を変調させることで、より強い発光を得ることが可能となる。
一方、半導体の特性を示すカーボンナノチューブ(半導体カーボンナノチューブ)は、発光材料に適している。半導体カーボンナノチューブは、直接遷移型のバンドギャップを持ち、また、筒状構造の1次元性のために、バンドギャップの外にファンホーブ特異点という鋭い状態密度のピーク構造が多数存在する。電子の状態密度が大きいファンホーブ特異点には、電子やホールが多数存在できるため、発光材料に適しているものと考えられる。例えば、電気的又は光学的方法により、バンドギャップの直近の第1又は第2ファンホーブ特異点の伝導帯に電子を注入し、価電子帯にホールを注入し、注入した電子が伝導体から価電子帯に遷移してホールと再結合すれば、バンドギャップエネルギーの値に対応した波長の光が放出される。
また、半導体カーボンナノチューブのバンドギャップは直径にほぼ反比例するので(非特許文献1)、カーボンナノチューブのカイラリティーや直径を制御できれば、バンドギャップ幅も制御できる。従って、カーボンナノチューブを用いれば、幅広い波長域の光放出が可能となる。さらに、様々な種類の原子や分子をナノチューブの内部空間へ内包し、もしくは化学修飾し、もしくはドーピングし、もしくはこれらの手法を組み合わせることによりバンド構造を変調させれば、さらに精密な波長の選択が可能である。
このため、半導体カーボンナノチューブで発光素子が作製できれば、発光波長ごとに全く異なる材料や製作工程を採用する必要がなくなり、生産性が高くなる。最近の研究によれば、カーボンナノチューブ自身を発光させる方法が、3通り報告されている。第1に、界面活性剤を溶解した溶液中にカーボンナノチューブを分散させ、ミセルなどによりチューブを包み込んでナノチューブの再凝集を防ぎ、1本もしくは数本に分離した半導体カーボンナノチューブは、発光特性を示す(非特許文献4,非特許文献5参照)。
第2に、リソグラフィーなどの手法で基板に作製した柱状構造体間に1本の単層カーボンナノチューブを架橋させ、基板から離間した部分を備えるようにカーボンナノチューブを形成した場合に、カーボンナノチューブが優れた発光特性を示す(非特許文献6参照)。
第3に、カーボンナノチューブを用いて電界効果トランジスタ(FET)を作製し、適当なゲート電圧を印加するなどしてナノチューブに電子とホールを注入した場合に、注入された電子とホールの再結合による発光が検出される(非特許文献7参照)。非特許文献7の技術によれば、注入された電子とホールは再結合を起こして発光し、エレクトロルミネッセンスが得られる。
発明者らは、上述した各技術の中で、「1.発光効率の高さ。」,「2.ナノチューブに光学特性の劣化の原因となる傷を与えずに、単独で存在している1本のナノチューブを、特定の方向に揃えて配置するプロセスを活用できる。」,「3.発光方法として光励起と電流励起の両方を利用できる。」などの利点に着目し、架橋ナノチューブを用いたレーザ装置及び発光素子に関する発明について特許出願を行っている(特願2004−1111175)。最近の研究により、カーボンナノチューブは、発光線幅が十分に狭く、また、発光強度と発光波長が温度によってあまり変化しない特性を備え、発光材料としては理想的な性質を持つことが明らかになっている(非特許文献8参照)
M.S.Dresselhaus, G.Dresselhaus, P.C.Eklund, "Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes", Academic Press Inc,1996. R.Saito, G.Dresselhaus, M.S.Dresselhaus, "Physical Properties of Carbon Nanotubes",Imperial College Press,1998. 齋藤理一郎,篠原久典,カーボンナノチューブの基礎と応用,倍風館,2004. M.J.O'Connell,et.al.,Science, 297,(2002),593. A.Hartschuh et al.,Science, 301, (2003), 1354. J.Lefebvre et.al.,Physical Review Letters, 90,(2003), 217401. J.A.Misewich, et.al.,Science, 300, (2003), 783. J.Lefebvre et.al.,Physical Review, B70,(2004),045419.
以上に説明したように、カーボンナノチューブをはじめとしたナノチューブを利用した発光素子は、従来の半導体発光素子における高環境負荷や材料の供給難、発光波長ごとに材料や製法を変える必要があり高コストであるといった問題を解決できる可能性を持っているが、広波長帯域かつ任意の波長の発光を実現するには問題がある。問題とは発光波長の制御の困難さである。先に述べたように、ナノチューブの発光波長を決めているバンドギャップの値は、ナノチューブのカイラリティーによって定まる。理論的には、カイラリティーの制御によって広帯域の発光を得ることが可能である。しかしながら、カイラリティーの制御は困難であり、カイラリティー制御技術は確立されておらず、ナノチューブの詳細な作りわけは実現されていない。従って、任意の波長の発光を得ること、特に発光波長の微調整が困難である。
また、将来カイラリティーの制御が可能になったとしても、得られるバンドギャップは各々のカイラリティーについて一意に定まる離散的な値である。従って、特に、直径が小さいナノチューブにおいては、カイラリティーの種類が少なくなるため、連続的に波長の選択を行うことが困難である。これらのことを解決する手段としては、作製されたナノチューブに手を加え、ナノチューブのバンドギャップの値を変調し、任意に制御する技術の確立が挙げられる。具体的な手段としては、先に述べたように、ナノチューブの筒の内部空間に種々の原子あるいは分子を内包する方法、ナノチューブの外壁に原子あるいは分子を化学修飾する方法、ナノチューブの外壁に原子あるいは分子を吸着させてドーピングを行う方法、あるいはこれらの方法を組み合わせる手段が考えられる。
しかしながら、上記の方法は有効ではあるものの、バンドギャップの値に及ぼす変化は連続的ではなく、例えば、バンドギャップの値を数電子ボルトだけ変化させるという離散的な変調になることが多い。この変調は、カイラリティーの制御と組み合わされば有効であるが、カイラリティーの制御が難しい現状では、他に、バンドギャップの値を連続的に変調する技術が望まれる。
バンドギャップの値を連続的に変調する手段としては、引っ張り,圧縮、ねじれ,及び曲げなどの構造的な歪をナノチューブに加え、バンドギャップの値を制御する方法が考えられる。特に、引っ張り、圧縮、ねじれによる歪に関しては、歪によりカーボンナノチューブのバンドギャップの値が連続的に変化することが、π電子近似法や強束縛近似法等の理論計算により予測されている(非特許文献9:L. Yang et al., Physical Review Lettera, 85, (2000), 154.、非特許文献10:H.Jiang et al.,Physical Review B70, (2004),125404.)。また、炭素と窒素から構成されたナノチューブ(BNナノチューブ)や炭素と窒素とホウ素から構成されたナノチューブ(BCNナノチューブ)における歪みの影響についても予測されている(非特許文献11:Yong-Hyum et al.,"Electronic structure of radially deformed BN and BC3 nanotubes", Physical Review B, Vol.63, 205408, (2001).)。
また、発光素子に不向きな金属ナノチューブも、歪により半導体ナノチューブのようにバンドギャップが開き、発光素子として利用できる可能性がある。ナノチューブは、柔軟で、かつ機械的強度も強いため、構造的な歪を加えても切断されにくいことが予想される。このため、構造的な歪形成によるバンドギャップ制御は、非常に有効な手法であると考えられる。
しかしながら、今まで、このような構造的な歪を加えたナノチューブは、歪の影響を調べる研究に利用されるにすぎず、デバイス、特に発光素子には利用されてこなかった。この場合、歪みは、原子間力顕微鏡(AFM)の探針によって加えられている(非特許文献12:J. Cao et al., Physical Review Letters, 90, (2003), 1577601.)。構造的な歪を加えたナノチューブが利用されていない理由は、次に示すような問題のためである。
問題の第1は、前述したナノチューブを発光させる条件を満たし、かつナノチューブに歪みを導入するための、素子に適した具体的な構造が未知であったことである。第2は、ナノチューブの構造的な歪みを加えた部分からの発光を効率的に得るための素子の構成が未知であったからである。第3は、ナノチューブの構造的な歪みを加えた部分からの発光を効率的に得るための素子構造を、少ない工程と低いコストで作製する方法が未知であったからである。第4は、バンドル(ナノチューブの束)を構成していない単独で存在する単層あるいは2層構造のナノチューブを、特定の方向に、かつ構造的な歪みを加えた部分からの発光を効率的に得るように配置することが困難であったからである。
一方、先に記載したように、化合物半導体などを用いる従来の発光素子では、高環境負荷や将来の材料供給難、また、発光波長ごとに材料や製法を変えなくてはならず、生産性が低く高コストという問題がある。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、ナノチューブにより活性領域を構成した実用的で広い発光波長帯域を持つ発光素子を、生産性やコストなどの観点でより製造しやすい状態でかつ発光波長の選択性という観点で利用しやすい状態で提供することを目的とする。
本発明に係る発光素子は、一本又は複数本のナノチューブからなる活性領域を基板の上に備えた発光素子において、ナノチューブの第1支持部を基板の上に支持する第1支持体と、ナノチューブの第2支持部を基板の上に支持する第2支持体と、活性領域に発光を起こすためのエネルギーを供給するエネルギー供給手段とを少なくとも備え、ナノチューブは、第1支持体と第2支持体との間の領域に歪みが形成されている。従って、形成されている歪みにより、ナノチューブのバンドギャップの値が変化する。
上記発光素子において、ナノチューブの第3支持部を基板の上に支持する第3支持体を少なくとも備え、ナノチューブは、第2支持体と第3支持体との間の領域に歪みが形成されているようにしてもよい。このとき、第2支持体が、第3支持体より基板の上で高く形成されていれば、ナノチューブに屈曲する部分が形成され、歪みが導入された状態となる。なお、第2支持体及び第3支持体は、基板の上に形成された階段状の構造体から構成され、階段状の構造体の上段部から第2支持体が構成され、階段状の構造体の下段部から第3支持体が構成されていればよい。
また、上記発光素子において、第1支持体が、第2支持体より基板の上で高く形成されていれば、ナノチューブに屈曲する部分が形成され、歪みが導入された状態となる。この場合においても、第1支持体及び第2支持体は、基板の上に形成された階段状の構造体から構成され、階段状の構造体の上段部から第1支持体が構成され、階段状の構造体の下段部から第2支持体が構成されていてもよい。なお、エネルギー供給手段は、所定の波長の光を活性領域に照射する励起用光源であり、歪みが形成された領域の一部は他の構造体より離間している状態であればよい。また、エネルギー供給手段は、ナノチューブに電流を注入する電流注入手段であってもよい。
上記発光素子において、ナノチューブは、単層ナノチューブ及び2層ナノチューブの少なくとも1つから構成されたものであればよい。なお、ナノチューブがホウ素・炭素・窒素の三元素を構成元素としてこれら元素の1つ、又は元素の組み合わせによって構成されるナノチューブ、あるいはホウ素・炭素・窒素の三元素を構成元素としてこれら元素の1つ、又は元素の組み合わせによって構成されるナノチューブに原子・分子を内包し、又は化学修飾し、又はドーピングし、又はこれらを組み合わせて構成したナノチューブであってもよい。また、ナノチューブは、カーボンナノチューブ及びボロンナイトライドナノチューブの少なくとも一方、及び、カーボンナノチューブ及びボロンナイトライドナノチューブの少なくとも一方に、原子・分子が内包された状態、化学修飾された状態、及びドーピングされた状態の少なくともいずれかの状態とされたものであってもよい。なお、支持体は、ステップバンチから構成されたものであってもよい。また、ナノチューブは、他のナノチューブから孤立しているとよい。
また、本発明に係る発光素子の製造方法は、基板の上に第1及び第2支持体が形成された状態とする工程と、少なくとも第1支持体に触媒金属の層が形成された状態とする工程と、基板を所定温度に加熱した状態で基板の表面上に炭素原料ガスを供給し、触媒金属の層を起点とし、基板の平面方向に延在して第1支持体及び第2支持体に渡って配置されたカーボンナノチューブが形成された状態とする工程と、カーボンナノチューブが形成されている活性領域に発光を起こすためのエネルギーを与えるエネルギー供給手段が形成された状態とする工程とを備え、カーボンナノチューブは、第1支持体と第2支持体との間の領域に歪みが形成されている状態とするものである。
上記発光素子の製造方法において、電界によって第1支持体から第2支持体の方向に成長するように制御して化学気相成長法によりカーボンナノチューブが形成された状態とすればよい。また、基板の上にステップバンチが形成された状態とすることで、第1及び第2支持体が形成された状態としてもよい。
以上説明したように、本発明では、第1支持部と第2支持部との間のナノチューブは、第1支持体と第2支持体とに渡って配置され、かつ第1支持体と第2支持体との間の領域に歪みが形成されているようにした。この結果、本発明によれば、ナノチューブにより活性領域を構成した実用的で広い発光波長帯域を持つ発光素子を、生産性やコストなどの観点でより製造しやすい状態でかつ発光波長の選択性という観点で利用しやすい状態で提供できるようになるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。なお、実施の形態は1つの例示であって、本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更あるいは改良を行い得ることは言うまでもない。図1は、本発明の実施の形態における発光素子の構成例を示す構成図である。ここでは、発光素子としてレーザ装置を例に説明する。図1(a)に基本構成を示すレーザ装置は、基板101の上に設けられたレーザ媒質構造体102と、レーザ媒質構造体102に対して励起光を照射する励起用光源(エネルギー供給手段)103と、共振器を構成している全反射鏡104,半反射鏡105を備えている。励起用光源103は、レーザ媒質構造体102にレーザ発振を起こすためのエネルギーを与えるエネルギー供給手段である。
図1(b),図1(c),図1(d)に示すように、本実施の形態におけるレーザ装置では、レーザ媒質構造体102を、屈曲部121aを備えたカーボンナノチューブ121から構成した。基板101の表面には、上段部(第1支持体)101aと下段部(第2支持体)101bが形成され、上段部101aには、例えば鉄やコバルトなどの触媒金属からなる膜厚0.01〜0.3nm程度の触媒金属層111が形成されている。カーボンナノチューブ121は、触媒金属層111より成長し、まず、上段部101aから下段部101bの平面上に延在している。また、カーボンナノチューブ121は、上段部101aと下段部101bとの間の段差部において屈曲した屈曲部121aを備え、この部分において歪みが形成されている。
段差の部分において、段差に沿うようにカーボンナノチューブ121は成長し、また、例えば、下段部101bの表面とカーボンナノチューブ121とは、ファンデルワールス力などにより結合し、固定されている。カーボンナノチューブ121は、上段部101aの段差部における端部において一部(第1支持部)が支持固定され、下段部101bの接触部において他の一部(第2支持部)が支持固定されている。また、2つの支持部の間(屈曲部121a)では、屈曲されることにより歪みが形成されている。加えて、図1に示すレーザ装置では、カーボンナノチューブ121の屈曲部121aは、他の構造体より離間している。
このように歪みが導入された状態とすることで、導入された歪みに対応し、カーボンナノチューブ121のバンドギャップの値を連続的に変化させることが可能となる。また、屈曲部121aは、基板101の表面とは離間した状態に形成されるため、励起光による励起で発光が起こる。このように、基板101の段差部により得られたカーボンナノチューブ121の屈曲部121aにより、活性部(発光部)が構成される。なお、共振器を構成する全反射鏡104及び半反射鏡105と、活性領域となるカーボンナノチューブ121が配置されている領域との間に、所望の波長の光のみを透過し、不必要な波長の光を遮断する機能をもつ光学フィルターなどが配置されているようにしてもよい。
前述したように、カーボンナノチューブ121は、上段部101aと下段部101bとの間で、段差に沿うように成長して屈曲し、屈曲部121aが形成された状態となる。また、カーボンナノチューブ121の基板101と接している部分、言い換えると、上段部101aに支持されている部分と下段部101bに支持されている部分とは、ファンデルワールス力などにより結合して固定されている。この結果、固定されている部分の間の屈曲部121aには、歪みが導入される。この歪みは、引っ張り,圧縮,曲がり,ねじれなどによるものである。この屈曲した状態は、走査型トンネル顕微鏡(STM)の測定(観察)により確認されている。
STMによる測定の結果、図2に示すように、基板の段差に対応し、カーボンナノチューブがなだらかに屈曲している。図2は、約1nmの高さの段差におけるラインプロファイルの測定値であり、グラフの上の曲線(a)が単層カーボンナノチューブ、下の曲線(b)が基板上の段差を示すデータである。比較を容易にするため、2つのデータにおける基準値をずらして表示している。ここで、2つのラインプロファイルの値を比較すると、段差の部分において、基板の高さが急激に変化しているのに対し、カーボンナノチューブの高さはなだらかにしか変化しておらず、基板の形状に追随していない。これは、段差の部分において、カーボンナノチューブが基板より離間していることを示している。
上述した屈曲部における歪みの大きさは、基板側の段差の高さ,段差を形成している端面の角度,ナノチューブと接している基板の平坦部分の長さなどにより変化させることができる。発明者らは、図2に示されている1nmの段差の他に、段差の高さとナノチューブの形状に関するSTM測定を様々な段差について行い、測定結果を十分に検討して上記の歪に関する事実を導き出し、本発明に至った。
上述したように、基板に設けた段差の上にナノチューブが形成された状態とすることで、以下に示すことが発明者らの研究によって初めて明らかになった。まず、(1)段差の部分において、ナノチューブと基板との間に離間する部分が形成できる。また、(2)段差の部分に形成されたナノチューブの離間部分には、歪みが導入される。また、(3)段差と平坦部分の制御などにより、歪みの大きさを変化させることが可能となる。
このような構造は、外部からの力が無くても歪みが形成され、構造が単純であるため、素子形成が容易であり、より低コストで素子の製造が可能となる。また、単純な構造であるため、励起及び発光を妨げる要素が介入しにくい点で、非特許文献12に記載の構成よりも優れている。また、上述した図1に示す構成とすることで、歪みを形成したナノチューブを、偶然に頼ることなく、選択的に基板の上の所望の位置に配置することが可能となる。形成される歪みの大きさとしては、例えば曲がりによる歪みの場合、曲がりの曲率半径が例えば50nm程度以下になることが望ましい。
前述したように、ナノチューブに歪みが導入されることで、ナノチューブのバンドギャップの値が変化し得る。このことから、ナノチューブのカイラリティーの制御とナノチューブが種々の原子・分子を内包する、化学修飾する、ドーピングする等のバンドギャップの変調と合わせて、歪によるバンドギャップ変調が実現することになり、さらに詳細に発光波長を制御できるようになる。先に述べたように、現状では、カイラリティー制御が完全に実現されておらず、内包,化学修飾,ドーピングによるバンドギャップ制御だけでは詳細な発光波長の制御が難しい。これに対し、本発明の歪みによるバンドギャップ変調を用いれば、連続的な変調が可能となり(非特許文献9)、広発光波長帯域の発光素子の実現、及び発光波長の詳細な制御に大変有効である。なお、後述するように、励起光のエネルギーが出力光のエネルギーに比して1.7倍であるという関係があるが、歪みによってバンドギャップを変調すると、この関係が変化する場合があるので、このようなときは調整を要する。
なお、段差を連続的に形成する等により、図1に示す発光素子の活性領域(カーボンナノチューブが配設される領域)を基板の全面に渡って複数形成しても良い。さらに、活性領域が形成された基板を複数集め、組み合わせて1つの活性領域とすることも可能である。さらに、活性領域に用いるナノチューブは、十分な発光が得られる場合は、1本であってもよい。
次に、励起用光源103について説明する。励起用光源103は、例えば、波長が0.87μm前後のTi:サファイアレーザである。励起光はカーボンナノチューブ121の光吸収効率を高めるため、カーボンナノチューブ121の軸に垂直に照射される状態とすることが望ましい。より一般的には、励起用光源103として、第2ファンホーブ特異点間のエネルギー差に相当する波長を持った光が望ましい。この波長の光は、カーボンナノチューブ121に共鳴的に吸収され、吸収効率が大幅に向上する。吸収された光は、カーボンナノチューブの価電子帯にある第2ファンホーブ特異点近傍の準位にある電子を励起する。励起された電子は、ホールを残して伝導帯にある第2ファンホーブ特異点近傍の準位に遷移する。
この新しく生成された電子とホールとは、結晶格子や他の電子・ホールとの相互作用により緩和し、各々伝導帯と価電子帯にある第1ファンホーブ特異点近傍の準位に遷移する。この遷移の後、電子が価電子帯に戻る際、ホールと再結合してバンドギャップ幅に対応した波長の光を発し基底状態に戻る。基底状態に戻ったときに光を照射すると、再び電子を励起することが可能である。これら一連のサイクルを、全反射鏡104,半反射鏡105から構成された共振器の内部で繰り返すことにより、反転分布が形成されレーザ発振する。
非特許文献6によれば、出力光のエネルギーに相当する第1ファンホーブ特異点間のエネルギーに対する、励起光のエネルギーに相当する第2ファンホーブ特異点間のエネルギーの比は、およそ1.7である。従って、光励起の発振のためには、励起用光源としては出力光のエネルギーの1.7倍前後のエネルギーの光を用いればよい。励起用光源としては、ハロゲンランプ、YAGレーザ、アレキサンドライトレーザ、HeNeレーザ、Ti:サファイアレーザ等が適する。ただし、1.7倍という値はあくまで目安であり、出力光ごとに最適化をする必要がある。なお、本発明においては、共振器を構成する鏡を配置しない場合でも、励起光により励起される発光素子、あるいは入力光の波長を変換する波長変換素子としての利用が可能である。
次に、図1に示した発光素子の製造方法例について説明する。まず、基板101として、例えば10mm角の石英(SiO2)板を用意する。用意した基板101を公知のフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とにより加工し、基板101の主表面に上段部101a,下段部101b及びこれらの境の部分に段差が形成された状態とする。なお、基板101に適用可能な材料としては、CVD法による成長に利用できるSi,SiO2(溶融石英を含む),Al23などを用いることが可能である。また、例えば、市販されているSiC基板やZnO基板などの半導体基板も使用可能である。また、GaAsなどの化合物半導体基板も使用可能である。
次に、例えばノボラック系の感光性樹脂などからなるフォトレジストを、基板101の上に塗布し、基板101の全域を覆うレジスト層が、基板101の上に形成された状態とする。次に、フォトリソグラフィー技術又は電子線リソグラフィー技術などの公知のリソグラフィー技術により、上段部101aの一部領域が開口するパターンが、レジスト層に露光された状態とする。この露光の後、現像処理を行い、触媒金属層111が配置される領域に開口部を備えたレジストパターンが形成された状態とする。
次に、形成されたレジストパターンの上に、例えば、真空蒸着法などにより、鉄(Fe)もしくはコバルト(Co)などの触媒金属を堆積する。形成する触媒金属の膜は、設計上の膜厚が0.01nm〜0.3nm程度、より望ましくは0.05nm以下となるようにする。なお、触媒金属と共にアルミニウム(Al)やモリブデン(Mo)などの触媒活性を高める金属を同時に形成(蒸着)しても良い。あるいは、触媒金属として、金属膜ではなく、あらかじめ形成したナノ粒子を配置してもよい。上述したようにすることで触媒金属の膜が形成された後、前述したレジストパターンを除去することで、上段部101aの所定領域に触媒金属層111が形成された状態とする。
次に、良く知られた触媒CVD法により、触媒金属層111を基点とし、カーボンナノチューブ121が形成された状態とする。カーボンナノチューブ121の成長において、基板101の平面に平行な方向(上段部101aから下段部101bに向かう方向)に電場(電界)の印加が可能なCVD装置を用い、電場を印加しながら成長させてもよい。このように電場を印加することで、ナノチューブの軸方向を電場方向に整列させて成長させることが可能となる。成長方向は、カーボンナノチューブ121の軸と、段差の部分の延在方向とが垂直な関係となる状態が好ましい。
なお、カーボンナノチューブ121の成長条件は、10KPa程度のAr雰囲気下で、Arガスが流量300sccmで供給された(流されている)状態で、基板温度が700〜1000℃、より望ましくは800〜900℃温度とされた状態とする。この加熱処理により、膜状に形成されていた触媒金属層111が凝集し、触媒金属層111が複数の触媒金属粒からが形成された状態となる。触媒金属膜の厚さを例えば0.01nm〜0.05nm程度としておくことで、触媒金属粒は例えば直径1〜3nmとなる。触媒金属粒の粒径は、触媒金属膜の膜厚により制御可能である。
次に、供給するArガスをCH4ガスに置換(変更)する。加熱されている触媒金属層111の部分に供給されたCH4は、熱分解されてCが生成する。生成したCは、触媒金属層111を構成している微粒子化した触媒金属粒に溶け込み、炭素が溶解した触媒金属粒からカーボンナノチューブ121が成長する。成長時間は1〜5分間程度である。この成長条件では、例えば平均直径1.2nm程度の単層カーボンナノチューブが孤立した状態で成長する。本発明に用いるカーボンナノチューブはできるだけ長さが長いものが望ましく、成長時間を長めにするとよい。
炭素供給源としてはCH4の他に、各種の炭化水素類やアルコール類でもよく、キャリアーガスもAr以外に、各種の希ガスあるいはH2でもよい。ただし、異なる炭素供給源及びキャリアーガスを用いる場合、成長条件が上述した条件とは若干異なる。以上のようにすることでカーボンナノチューブ121が形成された状態とした後、再びArガスを流しながら基板101を冷却し、冷却した基板101をCVD装置から取り出す。
次に、基板101の外部に、対向配置された状態で全反射鏡104及び半反射鏡105が配置された状態とする。例えば、各反射鏡の反射面が、カーボンナノチューブ121の軸方向(延在方向)と略平行となるように、全反射鏡104及び半反射鏡105が配置されていればよい。また、共振器を構成する全反射鏡104及び半反射鏡105は、カーボンナノチューブ121から発光する光の波長に共鳴するように調整する。例えば、直径1.2nmの半導体カーボンナノチューブからは波長1.48μm前後の発光が得られるので、共振器は波長1.48μm前後の光に共鳴するように調整する。
全反射光104は、例えば、ZrO2/SiO2の多層膜から構成され、反射率は99.99%である。また、半反射鏡105は、やはりZrO2/SiO2多層膜のから構成され、反射率は90.0%である。これらの共振器を構成する鏡については、SiO2、Si34、Al23、TiO2、ZrO2などから屈折率の差の大きな材料を複数選択し、交互に積層された多層膜を用いればよい。ところで、ここで述べた波長とは、真空における波長を光が導波する媒質の屈折率で割った管内波長と呼ばれるものである。
上述した触媒CVD法によるカーボンナノチューブの形成では、触媒薄膜の膜厚及びカーボンナノチューブの成長温度を制御することにより、様々な直径、即ち様々なバンドギャップのカーボンナノチューブが形成可能である。従って、波長1.48μmの光に限らず、他の波長帯域の発光も得られる。また、様々な種類の原子や分子をカーボンナノチューブ121の内部空間へ内包し、もしくは化学修飾し、もしくはドーピングし、もしくはこれらの手法の組み合わせ、カーボンナノチューブ121のバンドギャップ幅を制御することによっても発光波長域を変えられる。
なお、カーボンナノチューブ121の形成は、上述した触媒CVD法に限るものではなく、他の形成方法により、基板の上の所定位置にカーボンナノチューブが配置されているようにしてもよい。例えば、カーボンナノチューブが分散されたジクロロエタンなどの有機溶媒を、スピンコートなどにより基板の上に塗布することで、カーボンナノチューブが基板の上に配置された状態としてもよい。ただし、このとき、カーボンナノチューブがバンドルを組まずに孤立している必要がある。孤立したカーボンナノチューブは、ジクロロエタンに加えるカーボンナノチューブの濃度を適切に調整するなどの方法で得られる。また、配置されるカーボンナノチューブは、段差の部分にまたがるように配置されている必要があり、カーボンナノチューブの軸(延在方向)と段差の延在方向とが垂直であればさらに望ましい。
次に、本発明の他の実施の形態について図3を用いて説明する。図3(a)は、本発明の他の実施の形態における発光素子の特に活性領域の構成例を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は図3(a)中の1本のカーボンナノチューブ321についての断面図である。なお、本例においても、レーザ装置を例にして説明する。図3に一部を示すレーザ装置は、複数のステップバンチ301a及びテラス301bからなる段差構造領域を備えた基板301と、この段差領域状に配置されたカーボンナノチューブ321とからレーザ媒質構造体が構成されているようにしてものである。
例えば、主表面が(111)面より数°傾いた単結晶シリコンを用いることで、複数の原子レベルのステップが積層されたステップバンチ301が形成可能である。例えば、ステップ高さ数nm,テラス幅数十nmのステップバンチ301の形成が可能である。図3に示す例では、基板301の上端部301cに設けられた触媒金属層311を起点とし、複数のカーボンナノチューブ321が成長されている。また、カーボンナノチューブ321は、ステップバンチ301aの延在方向に垂直な方向に延在している。
このように構成されたレーザ媒質構造体においても、図3(b)に示すように、ステップバンチ301aとテラス301bとの段差部において、カーボンナノチューブ321は、屈曲部321aを備えている。また、本例では、複数の段差部を備え、これに対応し、複数の屈曲部321aが、1つのカーボンナノチューブ321に設けられた状態となっている。前述したように、ステップバンチ301aとテラス301bによる段差構造領域では、例えば100μm程度の距離の中に複数の段差部が形成されるため、1つのカーボンナノチューブ321に、複数の屈曲部321aが設けられた状態となる。このような構成によれば、1つのカーボンナノチューブ321により、図1(d)に示した基本的な構造が複数設けられている状態となるため、複数の発光部(活性部)を備えていることになる。この結果、図3に示すレーザ媒質構造体によれば、1本のカーボンナノチューブの各々の発光部においては、ナノチューブのカイラリティーがずれる可能性が非常に少なくなるため、複数の発光部から波長が揃った発光が得られ、よりレーザ発振が起きやすくなる。
次に、製造方法例について説明する。まず、基板301として、主表面が[111]方向から[−211]方向に2°傾斜した単結晶シリコンからなるシリコン基板を用意する。ついで、用意した基板301の表面を化学処理によりクリーニングした後、基板301が超高真空中に配置された状態とする。ついで、配置された超高真空中において、ACの直接通電加熱により、基板301が1200℃程度にまで加熱された状態とし、基板301の表面に形成されている自然酸化膜が除去された状態とする。この後、基板を、毎秒1℃の割合で、900℃から750℃まで冷却した後、750℃で30分間保持する。
冷却の過程において、基板301の表面のステップ端部の原子の再配列が進行し、複数の原子層ステップが積層(バンチング)され、ステップバンチ301a及びテラス301bが形成される。このようにして処理された基板301の表面には、段差(ステップ高さ)が2nm程度のステップバンチ301aと、60nmにわたって平坦なテラス301bとが形成される。これらの2つの構造が交互に繰り返され、基板301の表面には、連続的な階段状の構造が、自発的に形成される。なお、SiCヒーターなどによる傍熱加熱により、基板301が加熱されるようにしてもよい。このような加熱機構を用いることで、市販されているシリコンウエハー程度の大きさの基板を用いることが可能となる。
上述した形成(制御)技術(非特許文献13:T.Ogino et a1., Accounts of Chemical Research Vol.32, p.447,(1999).)により、ステップバンチ及びテラスからなる原子レベルの段差構造が容易に形成可能となる。よく知られているリソグラフィー技術を用いると、図3に示すような連続的な階段状の段差を形成するためには、非常に多くの手間を必要とし、容易ではない。上述した技術により、リソグラフィーと比較して、少ない費用で容易に原子ステップ構造が形成可能である。
また、上述した原子ステップ構造の形成において、単結晶シリコンの[111]方向に対する基板のミスカット角を変えることにより、ステップとテラスからなる1周期の幅を一定に保ったまま、段差の高さを変化させることが可能である(非特許文献14:F.K.Men et al., Phys.Rev.Lett., 88, (2002),096105.)。また、基板を清浄化した後、基板をDC電流により直接通電加熱する方法もある。この場合、前述した方法に比べ高い段差を形成可能であり、ステップの典型的な高さ(段差)は数十nmとなる(非特許文献15:Homma and N.Aizawa, Phys. Rev. B62,(2000), 8323.)。この方法では、ステップ高さとテラス幅の各々を、ミスカット角、電流を流す方向、基板温度、加熱時間によって制御可能である。また、原子ステップ構造は、Si(001)基板においては、自然酸化膜を除去した後、900℃〜780℃の温度に保ちながら、金を0.2−3ML/minの速度で蒸着することによっても形成できる(非特許文献16:M.Horn-von Hoegen et al., Surface Science pp.433-435, (1999), 475.非特許文献17:H.Minoda et a1. ,Physical Review, B60, (1999), 2715)。
次に、原子ステップ構造が形成された基板301を酸素雰囲気中で熱酸化することにより、段差の形状を保ったまま10〜20nmの厚さの酸化膜が基板301の上に形成された状態とする。酸化に要する時間は、酸化中の酸素濃度及び酸化温度によって定まる。酸化温度は、700℃以上の温度で行うのが望ましい。酸化膜が形成された後、基板301の上で最も高いテラスとなる上端部301cの一部分に、公知のフォトリソグラフィーと例えば電子ビーム蒸着装置を用いて触媒金属層311が形成された状態とする。触媒金属層311は、図1に示した触媒金属層111と同様であり、例えば鉄やコバルトなどの触媒金属からなる膜厚0.01〜0.3nm程度の薄膜から構成されていればよい。
ついで、良く知られた触媒CVD法により、ステップバンチ301aが延在する方向と垂直方向な方向に電場が印加された状態とし、触媒金属層311よりカーボンナノチューブ321が成長される状態とする。このときの成長は、長距離成長を行うのが望ましく、例えば非特許文献18記載に記載された方法を用いればよい(非特許文献18:S.Hmng et a1., Joumal of the American Chemical Society, 4125, (2003), 5636)。非特許文献18の方法では、あらかじめ基板を加熱する電気炉を成長温度である900℃に保ち、炭素供給源及びキャリアーガスであるCOとH2を各々800sccmと200sccmの流量でナノチューブ成長方向とガス流が一致するように流しておく。
この後、電気炉に基板を急いで導入し、急速に基板及び触媒が加熱された状態とする。このような成長法を用いると、例えば10μm以上の非常に長いカーボンナノチューブ321が得られる。こうして成長したカーボンナノチューブ321は、原子ステップ構造の部分の階段上の段差をまたぐ形で形成されており、前述したように、各々の段差の部分において屈曲部321aが形成され、この部分に歪みが形成されるようになる。また、屈曲部321aは、基板301の表面などの他の構造体と離間した状態に形成される。
なお、カーボンナノチューブ321の形成は、上述した触媒CVD法に限るものではなく、他の形成方法により、基板の上の所定位置にカーボンナノチューブが配置されているようにしてもよい。例えば、カーボンナノチューブが分散されたジクロロエタンなどの有機溶媒をスピンコートなどにより、基板の上に塗布することで、カーボンナノチューブが基板の上に配置された状態としてもよい。ただし、このとき、カーボンナノチューブがバンドルを組まずに孤立している必要がある。孤立したカーボンナノチューブは、ジクロロエタンに加えるカーボンナノチューブの濃度を適切に調整するなどの方法で得られる。また、配置されるカーボンナノチューブは、段差の部分にまたがるように配置されている必要があり、カーボンナノチューブの軸(延在方向)と段差の延在方向とが垂直であればさらに望ましい。
最後に、図1に示したレーザ装置と同様に、共振器となる全反射鏡及び半反射鏡が配置され、また、励起用光源が配置された状態とすれば、レーザ装置が完成する。各反射鏡においては、反射面がカーボンナノチューブ321の軸方向(延在方向)と平行となるように配置された状態とする。また、共振器を構成する全反射鏡及び半反射鏡は、カーボンナノチューブ321から発光する光の波長に共鳴するように調整する。
次に、本発明の実施の形態における他の発光素子について説明する。以下では、電流注入型のレーザ素子を例にして説明する。電流注入型レーザ素子では、ゲート電極を用い、レーザ媒質となるカーボンナノチューブに所定のゲート電圧を印加し、両極性伝導の状態とする。図4は、本実施の形態における電流注入型レーザ素子の構成例を模式的に示す斜視図である。図4に示すレーザ素子は、例えば平面視10mm角程度の基板401の上に、所定の方向に延在するゲート電極406を備える。また、基板401の上に、上段部402a及び下段部402bを備えた絶縁層402を備える。例えば、下段部402bの厚さは、100nm程度に形成されている。ここで、ゲート電極406の延在方向は、上段部402aと下段部402bとによる段差部の延在方向に平行であり、ゲート電極406は、下段部402b側の段差部近傍に配置されていればよい。
また、図4に示すレーザ素子は、上段部402aの上に設けられた上段電極411aと下段部402bの上に設けられた下段電極411bを備え、上段電極411aと下段電極411bとの間に、カーボンナノチューブ421が架設されている。また、反射鏡の反射面がカーボンナノチューブ421の軸方向(延在方向)と平行な状態となるように、全反射鏡404及び半反射鏡405が配置されている。
図4に示すレーザ素子においても、カーボンナノチューブ421は、上段部402aの段差部における端部において一部(第1支持部)が支持固定され、下段部402bの接触部において他の一部(第2支持部)が支持固定され、2つの支持部の間(屈曲部)では、上段部402aと下段部402bとにより張架されて他の構造体より離間し、屈曲されることにより歪みが形成されている。言い換えると、上段部402a及び下段部402bとによる段差部において、カーボンナノチューブ421は、屈曲部を備え、かつ、この屈曲部が下層の絶縁層402の表面から離間している。また、発光部となるカーボンナノチューブ421の屈曲部が、ゲート電極406の上方に配設された状態とされている。
上述したように構成された図4に示すレーザ素子では、所定のゲート電圧がゲート電極406に印加されている状態で、上段電極411aと下段電極411bとの間にゲート電圧の倍程度の電圧を印加することで、カーボンナノチューブ421に電子とホールとが注入された状態となる。カーボンナノチューブ421に電子とホールとが注入されれば、これらの再結合発光過程により、レーザ発振が得られる。図4に示すレーザ素子においても、活性部が、歪みを備えたカーボンナノチューブ421から構成されており、形成された歪により発光波長の制御が容易であり、広波長帯域の発光が可能となっている。なお、共振器を構成する全反射鏡404及び半反射鏡405を配置しない場合でも、電流注入型発光素子として利用可能である。
次に、図4に示すレーザ素子の製造方法例について説明する。まず、基板401として、例えば10mm角のシリコン基板を用意する。また、酸化シリコンなど他の材料からなる基板を用いるようにしてもよい。次に、基板401の中央部に公知のリソグラフィー技術と例えば電子ビーム蒸着装置を用い、例えば、膜厚300nmのタングステン(W)膜を蒸着し、ゲート電極406が形成された状態とする。ゲート電極406の線幅は、例えば100nmであればよい。ゲート電極406の材料は、Wの他にPtやMoなどの高融点の金属が望ましい。
次に、ゲート電極406を含む基板401の上に、例えばCVD法やスパッタ法によりSiO2を膜厚1μm程度堆積して酸化膜が形成された状態とする。ついで、形成した酸化膜を、公知のフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とにより加工し、図4に示すように、一部のゲート電極406が露出した状態とする。ついで、残した酸化膜を公知のフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とにより加工し、上段部402a及び下段部402bが形成された状態とする。ここで、上段部402a及び下段部402bによる段差は、ゲート電極406の延在方向に沿う状態とし、段差部に形成されるカーボンナノチューブ421の屈曲部が、ゲート電極406の上方に配置されるようにする。この構成とすることで、ゲート電極406からの電界が、カーボンナノチューブ421の離間している屈曲部に印加され、電界効果により電荷が誘起される。なお、ゲート電極406の上に堆積した酸化膜の厚さは、薄くても膜厚が、100nm程度になるように加工するのが望ましい。
次に、上段部402aの上段電極411aが形成される領域にFeもしくはCoなどの触媒金属からなる触媒金属層が形成された状態とする。次に、良く知られた触媒CVD法により、触媒金属層を基点とし、カーボンナノチューブ421が形成された状態とする。カーボンナノチューブ421の成長において、基板401の平面に平行な方向(上段部402aから下段部402bに向かう方向)に電場の印加が可能なCVD装置を用い、電場を印加しながら成長させてもよい。このように電場を印加することで、ナノチューブの軸方向を電場方向に整列させて成長させることが可能となる。成長方向は、カーボンナノチューブ421の軸と、段差の部分の延在方向とが垂直な関係となる状態が好ましい。これらは、図1に示すカーボンナノチューブ121の形成と同様である。
次に、電子ビーム蒸着装置を用い、上段電極411a及び下段電極411bが形成された状態とする。まず、触媒金属層が形成されている部分に、基板401の側面に沿うように配置された膜厚200nmの金膜からなる上段電極411aが形成された状態とする。ここで、上部電極411aは、段差の部分より少なくとも100nm離間していることが望ましい。また、同様に、下段部402bの上にも、基板401の側面に沿うように配置された膜厚200nmの金膜からなる下段電極411bが形成された状態とする。下段電極411bにおいては、段差の部分より少なくとも200nm離間していることが望ましい。電極の材料としては、励起あるいは発光を妨げないために、ITO(インジウムスズ酸化物)等の透明電極材料を用いることもできる。この後、図1に示す発光素子の場合と同様に共振器を配置することにより、電流注入型のレーザ素子が実現できる。
次に、本発明の実施の形態における他の発光素子について、図5,図6を用いて説明する。図5は、本実施の形態におけるレーザ装置の部分的な構成を示す平面図(a),及び断面図(b)である。また、図6は、本実施の形態のレーザ装置の構成を示す斜視図である。図5,図6に示すレーザ装置は、電極531,電極532により電流を注入することで、複数のカーボンナノチューブ521より構成された活性領域(レーザ媒質)502によりレーザ発振を行うようにした、電流注入型のレーザ装置である。
図5に示すレーザ装置は、例えば、平面視10mm角の石英基板501の上に、ゲート電極513を備え、ゲート電極513の上に、複数組の線条511,線条512から構成された支持構造体514を備える。1組の線条511と線条512とは、間隔2.5μm,各々の幅0.5μm程度に形成され、隣り合う組の間隔は15μmに形成されている。また、線条511は、高さ3〜4μm程度に形成され、かつ、線条512より高く形成されている。なお、図5では、3組の線条511,線条512を備えた構成について示している。
また、線条511の上には電極532が形成され、線条512の上には電極531が形成されている。各電極531は、共通の電極パッド541に接続し、各電極532は、共通の電極パッド542に接続している。支持構造体514は、例えば酸化シリコンから構成され、線条511,線条512の部分に、これら線条を構成するための溝を備える。また、支持構造体514の端部に設けられた低部514aに電極パッド541が設けられ、低部514bに電極パッド542が設けられている。このように構成された線条511と線条512の間に架橋するようにカーボンナノチューブ521が形成されている。
従って、電極パッド541,電極パッド542が設けられている平面と、カーボンナノチューブ521が設けられている平面とは、異なっている。加えて、線条511より低い線条512にかけてカーボンナノチューブ521が架設されている。従って、カーボンナノチューブ521の中央部は、支持構造体514の上面より離間し、かつ屈曲して歪みが導入された状態となっている。このように、図5,図6に示すレーザ装置においても、カーボンナノチューブ521は、線条(第1支持体)511に一部(第1支持部)が支持固定され、線条(第2支持体)512に他の一部(第2支持部)が支持固定され、2つの支持部の間(屈曲部)では、線条511と線条512とにより張架されて他の構造体より離間し、屈曲されることにより歪みが形成されている。
この結果、図5,図6に示すレーザ装置においても、導入された歪みに対応し、カーボンナノチューブ521のバンドギャップの値を連続的に変化させることが可能となる。また、線条511と線条512との間隔をより狭くすることで、上述した歪みの影響を大きくすることができる。ところで、電流注入型の場合、上記屈曲部が、他の構造体とは離間していなくても発光は起こる。従って、電流注入型の場合、必ずしも、屈曲している部分が、他の構造体と離間している必要はない。ただし、後述するように、離間している方がより高い発光強度が得られる可能性がある。
なお、支持構造体514のカーボンナノチューブ521が配置されている電極531,532の形成面を上面とすると、電極パッド541,電極パッド542が形成されている低部514a,低部514bの上面は、支持構造体514の上面より下に配置している。また、線条511,線条512の延在方向の支持構造体514の延長線上に、全反射鏡504と半反射鏡505とを備え、全反射鏡504,半反射鏡505により共振器が構成されている。
上述したように、電極パッド541,電極パッド542は、低部514a,552に設けられているので、カーボンナノチューブ521からなる活性領域502からの光は、共振器の間を往復するが、この状態を、電極パッド541,電極パッド542が阻害することがない。
図5,図6に示すレーザ装置では、電極531,532、電極パッド541,電極パッド542、ゲート電極513、及び図示しない電源などから、活性領域502を構成するカーボンナノチューブ521に電流を注入する電流注入手段が構成されている。従って、図5,図6に示すレーザ装置では、上記電流注入手段により、レーザ発振を起こすためのエネルギーを活性領域502に与える、エネルギー供給手段が構成されている。
図5,図6に示すレーザ装置は、ゲート電極513に所定の電圧のゲート電圧を印加した状態で、電極パッド541と電極パッド542との間にゲート電圧の倍程度の所定の電圧を印加することで、カーボンナノチューブ521に電子とホールとが注入された状態とすることができる。カーボンナノチューブ521に電子とホールとが注入できれば、これらの再結合発光過程を利用し、レーザ発振が得られる。
次に、製造方法例について簡単に説明する。まず、石英基板501の上に、例えば、電子ビーム蒸着装置を用いて、膜厚300nmのタングステン(W)膜を蒸着し、これによりゲート電極513が形成された状態とする。なお、PtやMoなどの高融点の金属からゲート電極513が形成されていてもよい。また、シリコンから基板を構成し、この下側に高濃度に不純物を導入したシリコン層を接合し、基板全体を電極としたバックゲート構造としてもよい。
次に、ゲート電極513の上に、例えば、CVD法やスパッタ法によりSiO2を膜厚5μm程度堆積して酸化膜が形成された状態とする。ついで、形成した酸化膜を、公知のフォトリソグラフィー技術とエッチング技術とにより加工し、図6に示すように、ゲート電極513の一部(幅1.5mm程度)が露出した状態とする。ついで、用いたレジストパターンを除去し、かつ基板を洗浄した後、残っている酸化膜を、公知のフォトリソグラフィー技術もしくは電子ビームリソグラフィー技術とエッチング技術とにより微細加工し、線条511,線条512が形成された状態とする。ついで、やはりリソグラフィー技術とエッチング技術とにより、線条511に対して線条512が低くなるように加工する。また、電極パッド541,電極パッド542を形成するための、低部514a,低部514bが形成された状態とする。
ついで、前述した触媒CVD法と同様にすることで、線条511,線条512に渡って架橋する複数のカーボンナノチューブ521が形成された状態とする。従って、図5,図6に示すレーザ装置においても、カーボンナノチューブ521は、端部が線条511,線条512に固定されているが、中央の部分は、いずれの構造体にも接触することなく離間し、かつ屈曲している。
カーボンナノチューブ521が形成された後、よく知られたリフトオフ法により、電極531,532及び電極パッド541,電極パッド542が形成された状態とする。これらは、膜厚50nmの金膜から構成すればよい。金は、通常の蒸着法を用いればよい。各電極及び電極パッドは、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明電極材料から構成されていてもよい。また、金の膜は、収束した電子線を照射して有機金属ガスを分解し、分解により生成した金属を目的の部位に蒸着する電子線誘起蒸着法を用いても良い。上述した電極を形成した後、カーボンナノチューブ521との電気的接触を改善するために、所定の温度による数分間程度のアニール処理を行うようにしてもよい。上述したようにレーザ媒質構造体を形成した後、この両端に、図6に示すように、全反射鏡504と半反射鏡505とが配置された状態として共振器が構成された状態とする。
また、図7に示すように、石英基板701の上にゲート電極713を介して配置される支持構造体714に、凹部751を設け、凹部751の内部に活性領域702を構成する活性構造体714aを備えるようにしてもよい。活性構造体714aの上面に、複数のカーボンナノチューブ721より構成された活性領域702及び電極731,電極732を備える。活性構造体714aの上面は、支持構造体714の上面より、ゲート電極713側に数百nm〜数μm低い(深い)位置に配置されている。
また、凹部751の内部において、活性構造体714aを挟むように、活性構造体714aの上面より低い部分が設けられ、低い部分に電極パッド741,パッド電極742が形成されている。カーボンナノチューブ721が形成されている領域は、図5,図6に示したレーザ装置と同様であり、高さが異なる2つの線条の間に、カーボンナノチューブ721が架設されており、カーボンナノチューブ721の中央部は、屈曲して歪みが導入され、また支持構造体714の上面より離間した状態となっている。なお、図7に示す発光素子においても、電流注入型として動作させる場合は、カーボンナノチューブ721の屈曲している部分が、必ずしも他の構造体と離間している必要はない。
図7に示すレーザ装置は、カーボンナノチューブ721の円筒軸方向に垂直な方向の、支持構造体714における2つの側面に、全反射鏡704と半反射鏡705とが形成されているようにしたものである。全反射鏡704と半反射鏡705とによる共振器の共振方向は、カーボンナノチューブ721の上記軸方向に垂直である。全反射鏡704,半反射鏡705は、前述した誘電体多層膜により構成することができる。なお、図7に示すレーザ装置においては、発振するレーザの波長に合わせて、適当な共振器長となるように、支持構造体714の寸法を調整する必要がある。
図7に示すレーザ装置は、ゲート電極713に所定の電圧のゲート電圧を印加した状態で、電極パッド741と電極パッド742との間にゲート電圧の倍程度の所定の電圧を印加することで、カーボンナノチューブ721に電子とホールとが注入された状態とすることができる。カーボンナノチューブ721に電子とホールとが注入できれば、これらの再結合発光過程を利用し、レーザ発振が得られる。また、カーボンナノチューブ721の発光部は、屈曲して歪みが導入されているので、導入された歪みに対応し、カーボンナノチューブ721のバンドギャップの値を連続的に変化させることが可能となっている。
図5,図6,図7に示したレーザ装置は、いずれの構造体にも接触することなく離間しており、他のカーボンナノチューブから孤立した複数のカーボンナノチューブから構成されているので、非特許文献7に示された構成に比較し、より高い効率で光を発生させることが可能となり、レーザの出力をより高くできる。なお、活性領域502や活性領域702の上部に励起用光源を設け、光励起によりレーザの発振を行うようにしてもよい。
また、カーボンナノチューブ521及びカーボンナノチューブ721は、発光部分に歪みを形成しているため、この歪みによるバンドギャップ変調が可能となっている。このため広帯域の発光が可能であり、かつ発光波長の制御を容易にしている。また、適切なナノチューブ成長法を用いることにより、線条の間にナノチューブを高密度で配置することが可能であるので、歪みが形成されたナノチューブからの高効率の発光が得られる。
なお、上述では、カーボンナノチューブを用いた場合について説明したが、これに限らず、ボロンナイトライドナノチューブ、炭素と窒素とホウ素から構成されたナノチューブ(BCNナノチューブ)を用いるようにしてもよい。これらのナノチューブにおいても、基本的な構成は前述したカーボンナノチューブの場合と同様である。
例えば、ボロンナイトライドナノチューブは、エネルギーギャップ幅が直径に比例して変化する半導体ナノチューブである。また、カイラリティーによって光学遷移が直接型と間接型に分かれる。本発明においては、成長時の直径とカイラリティーの制御、種々の原子や分子をナノチューブの内部空間へ内包、もしくは化学修飾、もしくはドーピング、もしくはこれらの手法の組み合わせによってバンド変調を行い、特定のバンドギャップを持つ直接遷移型半導体のボロンナイトライドナノチューブを選択的に作製する必要がある。
また、単層のナノチューブに限らず、2層のナノチューブであっても同様に用いることが可能である。単層のナノチューブと2層のナノチューブとは、成長条件を変えることによって作り分けることが可能である。ただし、本発明において用いられる2層のナノチューブは2層とも半導体のナノチューブであることが望ましい。
また、ナノチューブを配置する雰囲気は、ナノチューブの劣化を防止するために、真空又は化学的に不活性であって光の発振を妨げない気体もしくは液体媒質が望ましい。またナノチューブの光学特性を向上させるガスや液体の雰囲気中に、ナノチューブが配置されているようにしてもよい。雰囲気を特定の媒質あるいは真空にする場合は、前述したように作製した基板を一個あるいは複数個用意し、出力光も入力光も減衰させない石英のような材料で構成した容器のなかに収め、雰囲気を所望の媒質、あるいは真空にした後にこの容器を封じ、この容器全体を活性領域とすればよい。ただし、共振器やナノチューブの配置等の屈折率に敏感な要素には、雰囲気の変化に対する調整が必要となる。もちろん空気中でナノチューブが安定であり劣化しないならば、雰囲気に空気を用いても良い。
なお、図2に示す走査型トンネル顕微鏡による測定結果は、図8のSTM像に示す走査線(a)と走査線(b)の2カ所のライン上の測定結果である。走査線(a)は、カーボンナノチューブの上を走査し、走査線(b)は、カーボンナノチューブの脇の段差部を走査している。
本発明の実施の形態における発光素子の構成例を示す構成図である。 段差の部分における状態を走査型トンネル顕微鏡により測定した結果を示す説明図である。 本発明の他の実施の形態における発光素子の特に活性領域の構成例を模式的に示す斜視図(a)及び1本のカーボンナノチューブ321の部分を示す断面図(b)である。 本発明の他の実施の形態における電流注入型レーザ素子の構成例を模式的に示す斜視図である。 本発明の他の実施の形態におけるレーザ装置の部分的な構成を示す平面図(a),及び断面図(b)である。 図5に示すレーザ装置の構成を示す斜視図である。 本発明の他の実施の形態におけるレーザ装置の構成を示す斜視図である。 走査型トンネル顕微鏡で定電流モードにより測定された形状像である。
符号の説明
101…基板、101a…上段部(第1支持体)、101b…下段部(第2支持体)、102…レーザ媒質構造体、103…励起用光源(エネルギー供給手段)、104…全反射鏡、105…半反射鏡、111…触媒金属層、121…カーボンナノチューブ、121a…屈曲部。

Claims (16)

  1. 一本又は複数本のナノチューブからなる活性領域を基板の上に備えた発光素子において、
    前記ナノチューブの第1支持部を前記基板の上に支持する第1支持体と、
    前記ナノチューブの第2支持部を前記基板の上に支持する第2支持体と、
    前記活性領域に発光を起こすためのエネルギーを供給するエネルギー供給手段と
    を少なくとも備え、
    前記ナノチューブは、前記第1支持体と前記第2支持体との間の領域に歪みが形成されている
    ことを特徴とする発光素子。
  2. 請求項1記載の発光素子において、
    前記ナノチューブの第3支持部を前記基板の上に支持する第3支持体を少なくとも備え、
    前記ナノチューブは、前記第2支持体と前記第3支持体との間の領域に歪みが形成されている
    ことを特徴とする発光素子。
  3. 請求項2記載の発光素子において、
    前記第2支持体は、前記第3支持体より前記基板の上で高く形成されている
    ことを特徴とする発光素子。
  4. 請求項3記載の発光素子において、
    前記第2支持体及び前記第3支持体は、前記基板の上に形成された階段状の構造体から構成されたものであり、
    前記階段状の構造体の上段部から前記第2支持体が構成され、前記階段状の構造体の下段部から前記第3支持体が構成されている
    ことを特徴とする発光素子。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光素子において、
    前記第1支持体は、前記第2支持体より前記基板の上で高く形成されている
    ことを特徴とする発光素子。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光素子において、
    前記第1支持体及び前記第2支持体は、前記基板の上に形成された階段状の構造体から構成されたものであり、
    前記階段状の構造体の上段部から前記第1支持体が構成され、前記階段状の構造体の下段部から前記第2支持体が構成されている
    ことを特徴とする発光素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光素子において、
    前記エネルギー供給手段は、所定の波長の光を前記活性領域に照射する励起用光源であり、前記歪みが形成された領域の一部は他の構造体より離間している
    ことを特徴とする発光素子。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光素子において、
    前記エネルギー供給手段は、前記ナノチューブに電流を注入する電流注入手段である
    ことを特徴とする発光素子。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光素子において、
    前記ナノチューブは、単層ナノチューブ及び2層ナノチューブの少なくとも1つから構成されたものである
    ことを特徴とする発光素子。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光素子において、
    前記ナノチューブがホウ素・炭素・窒素の三元素を構成元素としてこれら元素の1つ、又は前記元素の組み合わせによって構成されるナノチューブ、あるいはホウ素・炭素・窒素の三元素を構成元素としてこれら元素の1つ、又は前記元素の組み合わせによって構成されるナノチューブに原子・分子を内包し、又は化学修飾し、又はドーピングし、又はこれらを組み合わせて構成したナノチューブである
    ことを特徴とする発光素子。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光素子において、
    前記ナノチューブは、
    カーボンナノチューブ及びボロンナイトライドナノチューブの少なくとも一方、及び、カーボンナノチューブ及びボロンナイトライドナノチューブの少なくとも一方に、原子・分子が内包された状態、化学修飾された状態、及びドーピングされた状態の少なくともいずれかの状態とされたものである
    ことを特徴とする発光素子。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の発光素子において、
    前記支持体は、ステップバンチから構成されたものである
    ことを特徴とする発光素子。
  13. 基板の上に第1及び第2支持体が形成された状態とする工程と、
    少なくとも前記第1支持体に触媒金属の層が形成された状態とする工程と、
    前記基板を所定温度に加熱した状態で前記基板の表面上に炭素原料ガスを供給し、前記触媒金属の層を起点とし、前記基板の平面方向に延在して前記第1支持体から前記第2支持体に渡って配置されたカーボンナノチューブが形成された状態とする工程と、
    前記カーボンナノチューブが形成されている活性領域に発光を起こすためのエネルギーを与えるエネルギー供給手段が形成された状態とする工程と
    を備え、
    前記カーボンナノチューブは、前記第1支持体と前記第2支持体との間の領域に歪みが形成されている状態とする
    ことを特徴とする発光素子の製造方法。
  14. 請求項13記載の発光素子の製造方法において、
    電界によって前記第1支持体から前記第2支持体の方向に成長するように制御して化学気相成長法により前記カーボンナノチューブが形成された状態とする
    ことを特徴とする発光素子の製造方法。
  15. 請求項13又は14記載の発光素子の製造方法において、
    前記基板の上にステップバンチが形成された状態とすることで、前記第1及び前記第2支持体が形成された状態とする
    ことを特徴とする発光素子の製造方法。
  16. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の発光素子において、
    前記ナノチューブは、他のナノチューブから孤立していることを特徴とする発光素子。
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JP2010245514A (ja) * 2009-04-03 2010-10-28 Internatl Business Mach Corp <Ibm> 半導体構造体およびその形成方法(内部応力を有する半導体ナノワイヤ)
JP2014058432A (ja) * 2012-09-19 2014-04-03 Fujitsu Ltd カーボンナノチューブ及び電界効果トランジスタ

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