JP2006264161A - 流延ダイの洗浄方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 流延ダイを分解することなく洗浄を行う。
【解決手段】 フィルムの製造に用いられている流延ダイ31を洗浄する。洗浄器具102の布101に中性界面活性剤を含浸させる。洗浄器具102を流延ダイ31のスリット110に挿入する。スリット表面111,112の先端から5mmの範囲とランド113,114を拭き洗浄する。次に新たな布101に純水を含浸させる。洗浄器具102をスリット110に挿入して、中性界面活性剤を除去しながら拭き洗浄を行う。さらに、新たな布101にジクロロメタンを含浸させる。洗浄器具102をスリット110に挿入して純水を除去しながら拭き洗浄を行う。そして、ドープ構成溶媒を流延ダイ31に連続して送液してドープ流路を洗浄する。
【選択図】 図3

Description

本発明は流延ダイの洗浄方法に関し、より詳しくは溶液製膜方法に好ましく用いられる流延ダイの洗浄方法に関するものである。
セルロースエステル、特に58.0%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACと称する)から形成されるTACフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフィルム用支持体として利用されている。また、TACフィルムは光学等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フィルムなどに用いられている。
TACフィルムは、通常溶液製膜方法により製造されている。溶液製膜方法は、溶融製膜方法などの他の製造方法と比較して、光学的性質などの物性に優れたフィルムを製造することができる。溶液製膜方法は、ポリマーをジクロロメタンや酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒に溶解した高分子溶液(以下、ドープと称する)を調製する。そのドープを流延ダイより流延ビードを形成させて支持体上に流延して流延膜を形成する。その流延膜が支持体上で自己支持性を有するものとなった後に、支持体から膜(以下、この膜を湿潤フィルムと称する)として剥ぎ取り、乾燥させた後にフィルムとして巻き取る(例えば、非特許文献1参照。)。
発明協会公開技報公技番号2001−1745号
従来は、流延ダイを洗浄する場合、溶媒を流延ダイ内部に循環させることで行う。この場合に流延ダイに付着し散るドープは落とせるがチップなどから持ち込まれた不溶解物質などは落ちずに残存する。そのため、その残存した汚れがフィルムの製造の際に面状故障の原因となる。そこで、流延ダイ内部に付着した汚れは、流延ダイを分解した後に研磨で強制的に落としている。この場合には、研磨後、再度流延ダイの組み立てを行うため、所望のフィルムを得るためには、流延ダイの微調整を行わないと、新たな別の故障(例えば、フィルムの幅方向の厚みムラなど)を誘発する一因にもなり得る。
本発明の目的は、流延ダイを分解することなく流延ダイを洗浄し、フィルムの面状故障を防止する流延ダイの洗浄方法を提供することにある。
本発明者が鋭意検討した結果、溶液製膜方法に用いられる流延ダイを洗浄する際、従来の循環洗浄の前に、中性洗剤(中性界面活性剤)を使用して流延ダイのスリット先端部を拭き洗浄し、その後に水でスリット先端部得を拭き洗浄することで、流延ダイを分解することなく流延ダイ内部の汚れを起因としたフィルムの面状故障を防止できることを見出した。また、水による拭き洗浄の後に有機溶媒による拭き洗浄を行うことで、さらに流延ダイの洗浄の効果が高まることも見出した。
本発明の流延ダイの洗浄方法は、溶液製膜法に用いられ、ドープをそのスリットから流延する流延ダイの洗浄方法において、前記スリットの先端部を中性界面活性剤で拭き洗浄した後に、前記スリットの先端部を水で拭き洗浄する。
前記スリットの先端部を更に有機溶媒で拭き洗浄することが好ましい。前記スリットの先端部が、前記スリットの先端であるリップから上流側へ5mmまでのスリット内面と、
前記リップ表面であるランドとであることが好ましい。前記流延ダイが組み立てられたままの場合であって、前記スリットに布で覆われた基材を挿入して、前記スリットの先端部を拭き洗浄することが好ましい。前記スリット先端部の表面を疎水性にすることが好ましい。前記スリット先端部の表面の接触角を83°以上とすることが好ましい。
また、本発明には前記流延ダイの洗浄方法で洗浄される流延ダイを用いる溶液製膜方法も含まれる。
本発明の流延ダイの洗浄方法によれば、溶液製膜法に用いられ、ドープをそのスリットから流延する流延ダイの洗浄方法において、前記スリットの先端部を中性界面活性剤で拭き洗浄した後に、前記スリットの先端部を水で拭き洗浄するから、前記流延ダイを分解することなく前記流延ダイの洗浄が可能となるため、前記流延ダイの洗浄時間を大幅に短縮できる。
本発明の流延ダイの洗浄方法によれば、前記流延ダイの洗浄を行う際に、前記流延ダイが組み立てられたままの場合であって、前記スリットに布で覆われた基材を挿入して、前記スリットの先端部を拭き洗浄するから、特別な洗浄設備を用いることなく前記流延ダイを洗浄できる。
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
図1に示すように始めにドープ製造工程10を行う。ドープ製造工程10によりドープ11を得る。次にこのドープ11を用いてフィルム製造工程12を行う。フィルム製造工程12によりフィルム13が得られる。また、フィルム製造工程12で用いられる流延ダイが汚染した際には、流延ダイ洗浄工程14を行う。
[原料]
本実施形態においては、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
また、本発明に用いられるポリマーはセルロースアシレートに限定されるものではない。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは
0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿,パルプ綿のどちらから得られたものでも良いが、リンター綿から得られたものが好ましい。
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2質量%〜25質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特願2004−264464号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特願2004−264464号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
[ドープ製造工程]
上記原料を用いて、まずドープを製造するドープ製造工程10について説明する。まず始めに、溶媒が溶媒タンクから溶解タンクに送られる。次にホッパに入れられているTACが、計量されながら溶解タンクに送り込まれる。また、添加剤溶液は、必要量が添加剤タンクから溶解タンクに送り込まれる。なお、添加剤は、溶液として送り込む方法の他に、例えば添加剤が常温で液体の場合には、その液体の状態で溶解タンクに送り込むことが可能である。また、添加剤が固体の場合には、ホッパなどを用いて溶解タンクに送り込む方法も可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンクの中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、多数の添加剤タンクを用いてそれぞれに添加剤が溶解している溶液を入れて、それぞれ独立した配管により溶解タンクに送り込むこともできる。
前述した説明においては、溶解タンクに入れる順番が、溶媒(混合溶媒の場合も含めた意味で用いる)、TAC、添加剤であったが、この順番に限定されるものではない。例えば、TACを計量しながら溶解タンクに送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することもできる。また、添加剤は必ずしも溶解タンクに予め入れる必要はなく、後の工程でTACと溶媒との混合物(以下、これらの混合物もドープと称する場合がある)に混合させることもできる。
溶解タンクには、その外面を包み込むジャケットと、モータにより回転する第1攪拌機とが備えられている。さらに、溶解タンクには、モータにより回転する第2攪拌機が取り付けられていることが好ましい。なお、第1攪拌機は、アンカー翼が備えられたものであることが好ましく、第2攪拌機は、ディゾルバータイプの偏芯型撹拌機であることが好ましい。そして、溶解タンクとジャケットとの間に伝熱媒体を流すことにより溶解タンクは温度調整されており、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃の範囲である。第1攪拌機,第2攪拌機のタイプを適宜選択して使用することにより、TACが溶媒中で膨潤した膨潤液を得る。
膨潤液は、ポンプにより加熱装置に送られる。加熱装置は、ジャケット付き配管であることが好ましく、さらに、膨潤液を加圧することができる構成のものが好ましい。このような加熱装置を用いることにより、加熱条件下または加圧加熱条件下で膨潤液中の固形分を溶解させてドープ11を得る。以下、この方法を加熱溶解法と称する。なお、この場合に膨潤液の温度は、50℃〜120℃であることが好ましい。また、膨潤液を−100℃〜−30℃の温度に冷却する冷却溶解法を行うこともできる。加熱溶解法及び冷却溶解法を適宜選択して行うことでTACを溶媒に充分溶解させることが可能となる。ドープを温調機により略室温とした後に、濾過装置により濾過してドープ中に含まれる不純物を取り除く。濾過装置に使用される濾過フィルタは、その平均孔径が100μm以下であることが好ましい。また、濾過流量は、50L/hr以上であることが好ましい。濾過後のドープ11は、図2のフィルム製造ライン20中のストックタンク21に送られここに貯留される。
ところで、上記のように、一旦膨潤液を調製し、その後にこの膨潤液をドープとする方法は、TACの濃度を上昇させるほど要する時間が長くなり、製造コストの点で問題となる場合がある。その場合には、目的とする濃度よりも低濃度のドープを調製し、その後に目的の濃度とするための濃縮工程を行うことが好ましい。このような方法を用いる際には、濾過装置で濾過されたドープをフラッシュ装置に送り、フラッシュ装置内でドープ中の溶媒の一部を蒸発させる。蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮されて液体となり回収装置により回収される。回収された溶媒は再生装置によりドープ調製用の溶媒として再生されて再利用される。この再利用はコストの点で効果がある。
また、濃縮されたドープは、ポンプによりフラッシュ装置から抜き出される。さらに、ドープに発生した気泡を抜くために泡抜き処理が行われることが好ましい。この泡抜き方法としては、公知の種々の方法が適用され、例えば超音波照射法が挙げられる。ドープは続いて濾過装置に送られて、異物が除去される。なお、濾過する際のドープの温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。そしてドープ11はストックタンク21に送られ、貯蔵される。
以上の方法により、TAC濃度が5質量%〜40質量%であるドープ11を製造することができる。より好ましくはTAC濃度が15質量%以上30質量%以下であり、最も好ましくは17質量%以上25質量%以下の範囲とすることである。また、添加剤(主には可塑剤である)の濃度は、ドープ中の固形分全体を100質量%とした場合に1質量%以上20質量%以下の範囲とすることが好ましい。なお、TACフィルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡などのドープの製造方法については、特願2004−264464号の[0517]段落から[0616]段落が詳しい。これらの記載も本発明に適用できる。
[フィルム製造工程]
次に、上記で得られたドープ11を用いてフィルムを製造するフィルム製造工程12について説明する。図2はフィルム製造ライン20を示す概略図である。ただし、本発明は、図2に示すようなフィルム製造ラインに限定されるものではない。フィルム製造ライン20には、ストックタンク21、濾過装置30、流延ダイ31、回転ローラ32,33に掛け渡された流延バンド34及びテンタ式乾燥機35などが備えられている。さらに耳切装置40、乾燥室41、冷却室42及び巻取室43などが配されている。
ストックタンク21には、モータ60で回転する攪拌機61が取り付けられている。そして、ストックタンク41は、ポンプ62及び濾過装置30を介して流延ダイ31と接続している。
流延ダイ31の材質としては、析出硬化型のステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有するものも、この流延ダイ31の材質として用いることができ、さらに、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いられる。さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して流延ダイ31を作製することが好ましい。これにより流延ダイ31内をドープ11が一様に流れ、後述する流延膜にスジなどが生じることが防止される。流延ダイ31の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。流延ダイ31のスリットのクリアランスは、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能とされている。流延ダイ31のリップ先端の接液部の角部分について、そのRは全巾にわたり50μm以下とされている。また、流延ダイ31内部における剪断速度が1(1/sec)〜5000(1/sec)となるように調整されていることが好ましい。なお、この流延ダイ31を洗浄する流延ダイ洗浄工程14については後に詳細に説明する。
流延ダイ31の幅は、特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルムの幅の1.1倍〜2.0倍であることが好ましい。また、製膜中の温度が所定温度に保持されるように、この流延ダイ31に温調機(図示しない)を取り付けることが好ましい。また、流延ダイ31にはコートハンガー型のものを用いることが好ましい。さらに、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を流延ダイ31の幅方向において所定の間隔で設け、ヒートボルトによる自動厚み調整機構が流延ダイ31に備えられていることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)62の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、フィルム製造ライン20中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。流延エッジ部を除いて製品フィルムの幅方向の任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、2μm以下に調整することがより好ましい。また、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
流延ダイ31のリップ先端には、硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイ31と密着性が良く、ドープ11との密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al23 ,TiN,Cr23などが挙げられるが、なかでも特に好ましくはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
流延ダイ31のスリット端に流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために溶媒供給装置(図示しない)をスリット端に取り付けることが好ましい。この場合には、ドープを可溶化する溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部,アセトン13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビードの両端部、ダイスリット端部及び外気が形成する三相接触線の周辺部付近に供給することが好ましい。端部の片側それぞれに0.1mL/min〜1.0mL/minで供給することが、流延膜中への異物混合を防止するために好ましい。なお、この液を供給するポンプとしては、脈動率が5%以下のものを用いることが好ましい。
流延ダイ31の下方には、回転ローラ32,33に掛け渡された流延バンド34が設けられている。回転ローラ32,33は図示しない駆動装置により回転し、この回転に伴い流延バンド34は無端で走行する。流延バンド34は、その移動速度、すなわち流延速度が10m/分〜200m/分で移動できるものであることが好ましい。また、流延バンド46の表面温度を所定の値にするために、回転ローラ32,33に伝熱媒体循環装置63が取り付けられていることが好ましい。流延バンド34は、その表面温度が−20℃〜40℃に調整可能なものであることが好ましい。本実施形態において用いられている回転ローラ32,33内には伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、回転ローラ32,33の温度を所定の値に保持されるものとなっている。
流延バンド34の幅は特に限定されるものではないが、ドープ11の流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。また、長さは20m〜200m、厚みは0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。流延バンド34は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。また、流延バンド34の全体の厚みムラは0.5%以下のものを用いることが好ましい。
なお、回転ローラ32,33を直接支持体として用いることも可能である。この場合には、回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましい。この場合には、回転ローラ32,33の表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そこで、回転ローラの表面にクロムメッキ処理などを行い、十分な硬度と耐久性を持たせる。なお、支持体(流延バンド34や回転ローラ32,33)の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であることが好ましい。
流延ダイ31、流延バンド34などは流延室64に収められている。流延室64には、その内部温度を所定の値に保つための温調設備65と、揮発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)66とが設けられている。そして、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置67が流延室64の外部に設けられている。また、流延ダイ31から流延バンド34にかけて形成される流延ビードの背面部を圧力制御するための減圧チャンバ68が配されていることが好ましく、本実施形態においてもこれを使用している。
流延膜69中の溶媒を蒸発させるため送風口70,71,72が流延バンド34の周面近くに設けられている。また、流延直後の流延膜69に乾燥風が吹き付けられることによる流延膜69の面状変動を抑制するため流延ダイ31近傍の送風口70には遮風板73が設けられていることが好ましい。
渡り部80には、送風機81が備えられ、テンタ式乾燥機35の下流の耳切装置40には、切り取られたフィルム13の側端部(耳と称される)の屑を細かく切断処理するためのクラッシャ90が接続されている。
乾燥室41には、多数のローラ91が備えられており、蒸発して発生した溶媒ガスを吸着回収するための吸着回収装置92が取り付けられている。そして、図2においては、乾燥室41の下流に冷却室42が設けられているが、乾燥室41と冷却室42との間に調湿室(図示しない)を設けても良い。冷却室42の下流には、フィルム13の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)となるように調整するための強制除電装置(除電バー)93が設けられている。図2においては、強制除電装置93は、冷却室42の下流側とされている例を図示しているが、この設置位置に限定されるものではない。さらに、本実施形態においては、フィルム13の両縁にエンボス加工でナーリングを付与するためのナーリング付与ローラ94が強制除電装置93の下流に適宜設けられる。また、巻取室43の内部には、フィルム13を巻き取るための巻取ローラ95と、その巻き取り時のテンションを制御するためのプレスローラ96とが備えられている。
次に、以上のようなフィルム製造ライン20を使用してフィルム13を製造する方法の一例を以下に説明する。ドープ11は、攪拌機61の回転により常に均一化されている。ドープ11には、この攪拌の際にも可塑剤,紫外線吸収剤などの添加剤を混合させることもできる。
ドープ11は、ポンプ62により濾過装置30に送られてここで濾過された後に、流延ダイ31から流延バンド34上に流延される。回転ローラ32,33の駆動は、流延バンド34に生じるテンションが104N/m〜105N/mとなるように調整されることが好ましい。また、流延バンド34と回転ローラ32,33との相対速度差は、0.01m/min以下となるように調整する。流延バンド34の速度変動を0.5%以下とし、流延バンド34が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために流延バンド34の両端の位置を検出する検出器(図示しない)を設け、その測定値に基づき流延バンド34の位置制御機(図示しない)にフィードバック制御を行い、流延バンド34の位置の調整を行うことがより好ましい。さらに、流延ダイ31直下における流延バンド34について、回転ローラ33の回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以下となるように調整することが好ましい。また、流延室64の温度は、温調設備65により−10℃〜57℃とされていることが好ましい。なお、流延室64の内部で蒸発した溶媒は回収装置67により回収された後に、再生させてドープ調製用溶媒として再利用される。
流延ダイ31から流延バンド34にかけては流延ビードが形成され、流延バンド34上には流延膜69が形成される。流延時のドープ11の温度は、−10℃〜57℃であることが好ましい。また、流延ビードを安定させるために、この流延ビードの背面が減圧チャンバ68により所望の圧力値に制御されることが好ましい。ビード背面は、前面よりも−2000Pa〜−10Paの範囲で減圧することが好ましい。さらに、減圧チャンバ68にはジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つように温度制御されることが好ましい。減圧チャンバ68の温度は特に限定されるものではないが、用いられている有機溶媒の凝縮点以上にすることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものに保つために流延ダイ31のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。このエッジ吸引風量は、1L/min〜100L/minの範囲であることが好ましい。
流延膜69は、流延バンド34の走行とともに移動し、このときに送風口70,71,72により流延膜69に乾燥風があてられて溶媒の蒸発が促進される。そして、この乾燥風の吹き付けにより流延膜69の面状が変動することがあるが、遮風板73がこの変動を抑制している。なお、流延バンド34の表面温度は、−20℃〜40℃であることが好ましい。
流延膜69は、自己支持性を有するものとなった後に、湿潤フィルム74として剥取ローラ75で支持されながら流延バンド34から剥ぎ取られる。剥ぎ取り時の残留溶媒量は、固形分基準で20質量%〜250質量%であることが好ましい。その後に多数のローラが設けられている渡り部80を搬送させて、テンタ式乾燥機35に湿潤フィルム74を送り込む。渡り部80では、送風機81から所望の温度の乾燥風を送風することで湿潤フィルム74の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度が、20℃〜250℃であることが好ましい。なお、渡り部80では下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより湿潤フィルム74にドローテンションを付与させることも可能である。
テンタ式乾燥機35に送られている湿潤フィルム74は、その両端部がクリップで把持されて搬送されながら乾燥される。また、テンタ式乾燥機35の内部を温度ゾーンに区画分割して、その区画毎に乾燥条件を適宜調整することが好ましい。テンタ式乾燥機35を用いて湿潤フィルム74を幅方向に延伸させることも可能である。このように、渡り部80及び/またはテンタ式乾燥機35で湿潤フィルム74の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を0.5%〜300%延伸することが好ましい。
湿潤フィルム74は、テンタ式乾燥機35で所定の残留溶媒量まで乾燥された後、フィルム13として下流側に送り出される。フィルム13の両側端部は、耳切装置40によりその両縁が切断される。切断された側端部は、図示しないカッターブロワによりクラッシャ90に送られる。クラッシャ90により、フィルム側端部は粉砕されてチップとなる。このチップはドープ調製用に再利用されるので、この方法はコストの点において有効である。なお、このフィルム両側端部の切断工程については省略することもできるが、前記流延工程から前記フィルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
両側端部を切断除去されたフィルム13は、乾燥室41に送られ、さらに乾燥される。乾燥室41内の温度は、特に限定されるものではないが、50℃〜160℃の範囲であることが好ましい。乾燥室41においては、フィルム13は、ローラ91に巻き掛けられながら搬送されており、ここで蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置92により吸着回収される。溶媒成分が除去された空気は、乾燥室41の内部に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室41は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置40と乾燥室41との間に予備乾燥室(図示しない)を設けてフィルム13を予備乾燥すると、乾燥室41においてフィルム温度が急激に上昇することが防止されるので、これによりフィルム13の形状変化をより抑制することができる。
フィルム13は、冷却室42で略室温まで冷却される。なお、乾燥室41と冷却室42との間に調湿室(図示しない)を設けても良く、この調湿室でフィルム13に対して、所望の湿度及び温度に調整された空気を吹き付けられることが好ましい。これにより、フィルム13のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良の発生を抑制することができる。
また、強制除電装置(除電バー)93により、フィルム13が搬送されている間の帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)とされる。図2では冷却室42の下流側に設けられている例を図示しているがその位置に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ94を設けて、フィルム13の両縁にエンボス加工でナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸が、1μm〜200μmであることが好ましい。
最後に、フィルム13を巻取室43内の巻取ローラ95で巻き取る。この際には、プレスローラ96で所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻き取られるフィルム13は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、フィルム13の幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、1800mmより大きい場合にも効果がある。フィルム13の厚みが15μm以上100μm以下の薄いフィルムを製造する際にも本発明は適用される。
本発明の溶液製膜方法において、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時積層共流延又は逐次積層共流延させることもできる。さらに両共流延を組み合わせても良い。同時積層共流延を行う際には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5%〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行なう場合には、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特願2004−264464号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
[流延ダイ洗浄工程]
流延ダイ洗浄工程14には、図3に示すようにテフロン(登録商標)などの耐溶媒性に優れ、柔軟な素材から形成されている基材100が用いられる。基材100の素材としてはニューライト(商品名),デルリン(登録商標)なども好ましく用いられる。そして、基材100を覆い拭き洗浄に優れる布(例えば、木綿製など)101とから洗浄器具102が構成されている。
図3に流延ダイ31の先端部を示す。流延ダイ31の先端部はスリット110が形成されている。そのスリット110を形成するスリット表面111,112が対向して設けられている。また、スリット先端は、ランド113,114と称される平坦部が形成されている。本発明において、スリット先端部とは、スリット先端から上流側に向けて長さL1(mm)のスリット表面111,112及びランド113,114を含むものを意味する。なお、長さL1(mm)の好ましい範囲は、3mm以上15mm以下であり、最も好ましくは5mmである。
布101に中性界面活性剤を含浸させる。中性界面活性剤は特に限定されるものではない。また、濃度も特に限定されるものではないが、洗浄性及び洗い流しの容易さから30重量%以上60重量%以下であることが好ましい。
洗浄器具102をスリット110内に挿入して布101がスリット表面111,112に接触するように位置の調整を行いながら、ランド113,114と併せてスリット先端部を拭き洗浄する。拭き洗浄時間は特に限定されるものではないが、30分間以上120分間以下であることが好ましい。30分間未満であると、スリット先端部の洗浄が十分に行えないおそれがある。また、120分間を超えて洗浄を行っても洗浄性は特に上がらないため、時間損失が生じるおそれがある。
次に、布101を新しいものに代えてその布に水を含浸させる。本発明において、水は流延ダイ31に錆などの不純物が発生することを防止するため、純水を用いることが好ましい。水を布101に含浸させてある洗浄器具102をスリット110に挿入してスリット先端部に付着している中性界面活性剤を除去しながら拭き洗浄を合わせて行う。拭き洗浄時間は10分間以上40分間以下であることが好ましい。10分間未満であると中性界面活性剤の除去及び洗浄が十分に行われないおそれがある。また、40分間を超えると、時間損失の原因となる。
本発明者が鋭意検討した結果、フィルム13の面状の悪化を及ぼす原因は、流延ダイ31のスリット先端部にあることを見出した。そこで、スリット先端部、すなわちスリット表面111,112の先端からL1(mm)の長さ(通常は5mmである)とランド113,114のみを洗浄することで本発明の効果が得られる。
本発明においては、前記中性界面活性剤及び前記純水での拭き掃除により流延ダイ31のスリット先端部の洗浄が行われ、以降のフィルム製造工程12で用いられる流延ダイ31としては好ましいものである。しかしながら、前記純水の除去を行うことが更に好ましい。新しい布101に有機溶媒を含浸させた後に洗浄器具102を組み立てて、洗浄器具102を先の方法と同様にスリット110内に挿入してスリット表面111,112及びランド113,114を拭き洗浄する。拭き洗浄時間は10分間以上40分間以下であることが好ましい。なお、用いられる有機溶媒は特に限定されるものではないが、特に好ましくは酢酸メチルを用いることである。
前記拭き洗浄を行うことで、スリット表面111,112及びランド113,114は疎水性となる。疎水性の1つの指標としては、動的接触角にて測定される接触角(FTA動的接触角測定装置による純水での測定法)が用いられる。本発明の流延ダイの洗浄方法を行うことで流延ダイ31の先端部の接触角は83°以上となり、洗浄条件をより選択することで88°以上とすることも可能である。
本発明に係る流延ダイの洗浄方法の特徴として以下の2点が特に挙げられる。一番目としては、流延ダイの液流路を全て洗浄する必要が無い点である。スリット先端部、すなわちスリット表面111,112の先端から上流側に5mmとランド113,114のみを洗浄することで、その流延ダイをフィルム製造工程12に用いると、得られるフィルム13は面状に優れているものが得られることである。また、二番目としては、簡単な洗浄器具102を用いて流延ダイ31を組み立てた状態のまま洗浄が行える点である。従来の流延ダイの洗浄方法では、流延ダイを分解して付着している異物を研磨で落としている。そして、その後に流延ダイを組み立てて所望の流延が行えるように微調整していたので、流延ダイの洗浄には通常3日〜4日必要としていた。しかしながら、本発明の流延ダイ洗浄工程14では洗浄時間が60分〜90分と大幅に短縮することができる。
前記流延ダイの洗浄方法を行った後は、定法に従い流延ダイ31の洗浄を行う。この場合の流延ダイの洗浄は、溶媒特に好ましくはドープを構成する混合溶媒を流延ダイ31に連続送液して流延ダイ31のドープ流路の洗浄を行う。洗浄時間は特に限定されるものではないが、2時間以上6時間以下であることが好ましい。
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフィルムの性能及びそれらの測定法は、特願2004−264464号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらも本発明にも適用できる。
[表面処理]
前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
さらに前記セルロースアシレートフィルムをベースフィルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m2〜1000mg/m2含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m2 〜1000mg/m2含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m2〜1000mg/m2含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m2〜1000mg/m2含有することが好ましい。セルロースアシレートフィルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特願2004−264464号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
(用途)
前記セルロースアシレートフィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。セルロースアシレートフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特願2004−264464号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用できる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフィルムについての記載もある。更には適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することもできる。これらの記載は、本発明にも適用できる。特願2004−264464号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
また、本発明の製造方法により光学特性に優れるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を得ることができる。前記TACフィルムは、偏光板保護フィルムや写真感光材料のベースフィルムとして用いることができる。さらにテレビ用途などの液晶表示装置の視野角依存性を改良するための光学補償フィルムとしても使用可能である。特に偏光板の保護膜を兼ねる用途に効果的である。そのため、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどにも用いられる。また、前記偏光板保護膜用フィルムを用いて偏光板を構成しても良い。
[実験1]
次に、本発明の実施例を説明する。フィルム製造に使用したポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。
[組成]
セルローストリアセテート(置換度2.84、 粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8質量部
UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール 0.7質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−
クロルベンゾトリアゾール 0.3質量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチ
ルエステル混合物) 0.006質量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05質量部
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
(1−1)ドープ仕込み
攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製溶解タンクで前記複数の溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。なお、溶媒の各原料としては、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。次に、TACのフレーク状粉体をホッパから徐々に添加した。TAC粉末は、溶解タンクに投入されて、最初は5m/secの周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌機及び中心軸にアンカー翼を有する攪拌機を周速1m/secで攪拌する条件下で30分間分散した。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、予め調製された添加剤溶液を添加剤タンク送液量を調整して、全体が2000kgとなるように送液した。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌は停止した。そして、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液を得た。膨潤終了までは窒素ガスにより溶解タンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンクの内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また膨潤液中の水分量は0.3質量%であった。
(1−2)溶解・濾過
膨潤液を溶解タンクジャケット付配管に送液した。ジャケット付き配管で膨潤液を50℃まで加熱して、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。このときの加熱時間は15分であった。次に溶解された液を温調機で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置を通過させドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置における1次側圧力は1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。高温にさらされるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ(商品名)合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
(1−3)濃縮・濾過・脱泡・添加剤
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置内でフラッシュ蒸発させて、蒸発した溶媒を凝縮器で回収した。フラッシュ後のドープ11の固形分濃度は、21.8質量%となった。なお、凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置で回収した。再生装置で再生した後に溶媒タンクに送液した。回収装置,再生装置では、蒸留や脱水を行った。フラッシュ装置のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、その攪拌機により周速0.5m/secでフラッシュされたドープ11を攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープ11の温度は25℃であり、タンク内におけるドープ11の平均滞留時間は50分であった。このドープ11を採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(sec-1)で450Pa・sであった。
次に、このドープ11に弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施した。その後にポンプを用いて1.5MPaに加圧した状態で、濾過装置を通過させた。濾過装置では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次側圧力は1.5MPa,1.2MPaであり、2次側圧力は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後のドープ温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製ストックタンク21内にドープ11を送液して貯蔵した。ストックタンク21は中心軸にアンカー翼を備えた攪拌機61を有しており、周速0.3m/secで常時攪拌を行った。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
また、ジクロロメタンが86.5質量部、アセトンが13質量部、1−ブタノールが0.5質量部の混合溶媒Aを作製した。
(1−4)吐出・直前添加・流延・ビード減圧
図2に示すフィルム製造ライン20を用いてフィルム13を製造した。ストックタンク21内のドープ11を高精度のギアポンプ62で濾過装置30へ送った。このギアポンプ62は、ポンプ62の1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりギアポンプ62の上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプ62は容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、吐出圧力は1.5MPaであった。そして、濾過装置30を通ったドープ11を流延ダイ31に送液した。
流延ダイ31は、幅が1.8mであり乾燥されたフィルム13の膜厚が80μmとなるように、流延ダイ31の吐出口でドープ11の流量を調整して流延を行った。また流延ダイ31の吐出口からのドープ11の流延幅を1700mmとした。なお、流延速度は、65m/minとした。ドープ11の温度を36℃に調整するために、流延ダイ31にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
流延ダイ31と配管とはすべて、製膜中には36℃に保温した。流延ダイ31は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ31には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは、予め設定したプログラムによりギアポンプ62の送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フィルム製造ライン20に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。端部20mmを除いたフィルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
また、流延ダイ31の1次側には、この部分を減圧するための減圧チャンバ68を設置した。この減圧チャンバ68の減圧度は、流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差が生じるように調整され、この調整は流延速度に応じてなされる。その際に、流延ビードの長さが20mm〜50mmとなるように流延ビードの両面側の圧力差を設定した。また、減圧チャンバ68は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高い温度に設定できる機構を具備したものを用いた。ダイ吐出口におけるビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、流延ダイのダイ吐出口の両端には開口部を設けた。さらに、流延ダイ31には、流延ビードの両縁の乱れを調整するためのエッジ吸引装置(図示しない)を取り付けた。
(1−5)流延ダイ
流延ダイ31の材質は、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。これは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであった。また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有していた。流延ダイ31の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。流延ダイ31のリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。流延ダイ31内部でのドープ11の剪断速度は1(1/sec)〜5000(1/sec)の範囲であった。また、流延ダイ31のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
流延ダイ31を基材100にテフロン(登録商標),布101に金巾とした洗浄器具102でスリット先端部の洗浄を行った。スリット先端から上流側に向けて長さL1(mm)が5mmの範囲で拭き洗浄を行った。始めに布101に中性界面活性剤(50重量%)を含浸させた。そして、洗浄器具102をスリット110内に挿入して布101がスリット表面111,112に接触するように位置の調整を行いながら、ランド113,114と併せてスリット先端部を60分間拭き洗浄した。
次に、布101を新しいものに代えてその布に純水を含浸させた。そして洗浄器具102をスリット110に挿入してスリット先端部に付着している中性界面活性剤を除去しながら30分間拭き洗浄を行った。更に。新しい布101に有機溶媒である酢酸メチルを含浸させた後に洗浄器具102を組み立てて、洗浄器具102を先の方法と同様にスリット110内に挿入してスリット表面111,112及びランド113,114を30分間拭き洗浄した。そして、流延ダイ31のスリット先端部を滴下法で接触角を測定したところ90°であった。
そして、ドープを構成する混合溶媒と同比率の混合溶媒を流延ダイ31に連続して6時間送液して流延ダイのドープ流路の洗浄を行った。
さらに流延ダイ31の吐出口には、流出するドープ11が局所的に乾燥固化することを防止するために、ドープ11を可溶化するための混合溶媒Aを流延ビードの両側端部と吐出口との界面部に対し、それぞれ0.5ml/minずつ供給した。混合溶媒を供給するポンプの脈動率は5%以下であった。また、減圧チャンバ68により流延ビード背面側の圧力を前面部よりも150Pa低くした。減圧チャンバ68の内部温度を所定の温度で一定にするためにジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内には35℃に調整された伝熱媒体を供給した。前記エッジ吸引装置は、1L/min〜100L/minの範囲となるようにエッジ吸引風量を調整することができるものであり、本実施例ではこれを30L/min〜40L/minの範囲となるように適宜調整した。
(1−6)金属支持体
支持体として幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを流延バンド34として利用した。流延バンド34は、厚みが1.5mm、表面粗さが0.05μm以下になるように研磨した。その材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものを用いた。流延バンド34の全体の厚みムラは0.5%以下であった。流延バンド34は、2個の回転ローラ32,33により駆動させた。その際の流延バンド34の搬送方向における張力は1.5×105 N/m2 なるように調整した。また、流延バンド34と回転ローラ32,33との相対速度差が0.01m/min以下になるように調整した。このときに、流延バンド34の速度変動を0.5%以下とした。また1回転の幅方向の蛇行が、1.5mm以下に制限されるように流延バンド34の両端位置を検出して制御した。流延ダイ31の直下におけるダイリップ先端と流延バンド34との上下方向の位置変動は200μm以下にした。流延バンド34は、風圧変動抑制手段(図示しない)を有した流延室64内に設置した。この流延バンド34上に流延ダイ31からドープ11を流延した。
回転ローラ32,33は、流延バンド34の温度調整を行うことができるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。流延ダイ34側の回転ローラ33には5℃の伝熱媒体を流し、他方の回転ローラ32には乾燥のために40℃の伝熱媒体を流した。流延直前の流延バンド34中央部の表面温度は15℃であり、その両側端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド34には、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2以下、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であるものを用いた。
(1−7)流延乾燥
流延室64の温度は、温調設備65を用いて35℃に保った。流延バンド34上に流延されたドープ11から形成された流延膜69には、最初に流延膜69に対して平行に流れる乾燥風を送り、流延膜69を乾燥した。この乾燥風からの流延膜69への総括伝熱係数は24kcal/(m2・hr・℃)であった。乾燥風の温度は、流延バンド34上部の上流側の送風口70からは135℃の乾燥風を送風した。また下流側の送風口71からは140℃の乾燥風を送風し、流延バンド34下部の送風口72からは65℃の乾燥風を送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。流延バンド34上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、この酸素濃度を5vol%に保持するために空気を窒素ガスで置換した。また、流延室64内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)66を設け、その出口温度を−10℃に設定した。
流延後5秒間は乾燥風が、直接に流延ビード及び流延膜69に当たらないように遮風板73を設置して、流延ダイ31近傍の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。流延膜69中の溶媒比率が乾量基準で50質量%になった時点で流延バンド34から剥取ローラ75で支持しながらフィルム(以下、湿潤フィルムと称する)74として剥ぎ取った。なお、この乾量基準による溶媒含有率は、サンプリング時におけるフィルム重量をx、そのサンプリングフィルムを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。また剥取テンションは1×102N/m2あり、剥取不良を抑制するために流延バンド34の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。剥ぎ取った湿潤フィルム74の表面温度は15℃であった。流延バンド34上での乾燥速度は、乾量基準で平均60質量%/minであった。乾燥により発生した溶媒ガスは−10℃の凝縮器66で凝縮液化して回収装置67で回収した。回収された溶媒は、水分量が0.5%以下となるように調整した。また、溶媒が除去された乾燥風は、再度加熱して乾燥風として再利用した。湿潤フィルム74を渡り部80のローラを介して搬送し、テンタ式乾燥機35に送った。この渡り部80では送風機81から40℃の乾燥風を湿潤フィルム74に送風した。なお、渡り部80のローラで搬送している際に、湿潤フィルム74に約30Nのテンションを付与した。
(1−8)テンタ搬送・乾燥・耳切
テンタ式乾燥機35に送られた湿潤フィルム74は、クリップでその両端を固定されながらテンタ式乾燥機35の乾燥ゾーン内を搬送され、この間に乾燥風により乾燥された。クリップは、20℃の伝熱媒体の供給により冷却した。クリップの搬送は、チェーンで行い、そのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、テンタ式乾燥機35内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃,110℃,120℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃における飽和ガス濃度とした。テンタ式乾燥機35内での平均乾燥速度は乾量基準で120質量%/minであった。テンタ式乾燥機35の出口ではフィルム13内の残留溶媒量が7質量%となるように、乾燥ゾーンの条件を調整した。テンタ式乾燥機35内では搬送しつつ幅方向に延伸も行った。なお、この延伸前の湿潤フィルム74の幅を100%としたとき、延伸後の幅が103%となるように延伸した。剥取ローラ75からテンタ式乾燥機35の入口に至るまでの延伸率(テンタ駆動ドロー)は102%とした。
テンタ式乾燥機35内での延伸率は、クリップによる噛み込み開始位置から10mm以上離れた位置の任意の2点における各実質延伸率の差異が10%以下であり、かつ20mm離れた任意の2点の延伸率の差は5%以下であった。また、テンタ式乾燥機35の入口から出口までの長さに対する、クリップ挟持開始位置から挟持解除位置までの長さの割合は90%とした。テンタ式乾燥機35内で蒸発した溶媒は−10℃の温度で凝縮させ液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(コンデンサ)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。そして凝縮溶媒は、含まれる水分量が0.5質量%以下に調整されて再使用された。そして、テンタ式乾燥機35からフィルム13として送り出した。
テンタ式乾燥機35の出口から30秒以内にフィルム13の両端の耳切を耳切装置40で行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ90に風送して平均80mm2 程度のチップに粉砕した。このチップは、再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際の原料として利用した。テンタ式乾燥機35の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述する乾燥室41で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフィルム13を予備加熱した。
(1−9)後乾燥・除電
フィルム13を乾燥室41で高温乾燥した。乾燥室41を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。フィルム13のローラ91による搬送テンションを100N/mとして、最終的に残留溶媒量が0.3質量%になるまで約10分間乾燥した。ローラ91のラップ角度(フィルムの巻き掛け中心角)は、90度および180度とした。ローラ91の材質はアルミ製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラ91の表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ91の回転によるフィルム位置の振れは、全て50μm以下であった。また、テンション100N/mでのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
乾燥風に含まれる溶媒ガスは、吸着回収装置92を用いて吸着回収除去した。ここに使用した吸着剤は活性炭であり、脱着は乾燥窒素を用いて行った。回収した溶媒は、水分量を0.3質量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には、溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤,その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却器およびプレアドソーバでこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるよう、吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち、凝縮法で回収する溶媒量は90質量%であり、残りのものの大部分は吸着回収により回収した。
乾燥されたフィルム13を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥室41と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フィルム13のカールの発生を抑制する第2調湿室(図示しない)にフィルム13を搬送した。第2調湿室では、フィルム13に直接90℃,湿度70%の空気をあてた。
(1−10)ナーリング、巻取条件
調湿後のフィルム13は、冷却室42で30℃以下に冷却した後に耳切装置(図示しない)で再度両端の耳切りを行った。搬送中のフィルム13の帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置(除電バー)93を設置した。さらにフィルム13の両端にナーリング付与ローラ94でナーリングの付与を行った。ナーリングはフィルム13の片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフィルム13の平均厚みよりも平均12μm高くなるようにナーリング付与ローラ94による押し圧を設定した。
そして、フィルム13を巻取室43に搬送した。巻取室43は、室内温度28℃,湿度70%に保持した。巻取室43の内部には、フィルム13の帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVとなるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。このようにして得られたフィルム(厚さ80μm)82の製品幅は、1475mmとなった。巻取ローラ95の径は169mmのものを用いた。巻き始めテンションは300N/mであり、巻き終わりが200N/mになるようなテンションパターンとした。巻き取り全長は3940mであった。巻き取りの際の巻きズレの変動幅(オシレート幅と称することもある)を±5mmとした、巻取ローラ95に対する巻きズレ周期を400mとした。また、巻取ローラ95に対するプレスローラ96の押し圧は、50N/mに設定した。巻き取り時のフィルム13の温度は25℃、含水量は1.4質量%、残留溶媒量は0.3質量%であった。全工程を通しても平均乾燥速度は乾量基準で20質量%/minであった。また巻き緩み、シワもなく、10Gでの衝撃テストにおいても巻きずれが生じなかった。また、ロール外観も良好であった。そして、フィルム13を連続して12時間製造したが、フィルム面状は最後まで優れたものであった。
フィルム13のフィルムロールを25℃、55%RHの貯蔵ラックに1ヶ月保管して、さらに上記と同様に検査した結果、いずれも有意な変化は認められなかった。さらにロール内においても接着も認められなかった。また、フィルム13を製膜した後に、流延バンド34上にはドープから形成された流延膜69の剥げ残りは全く見られなかった。
次に、流延ダイ31の洗浄を先の方法で行った。接触角は88°であった。そして、フィルム13を連続して12時間製造したが、フィルム面状は最後まで優れたものであった。さらに、流延ダイ31の洗浄を先の方法で行った。接触角は90°であった。そして、フィルム13を連続して12時間製造したが、フィルム面状は最後まで優れたものであった。
そして、流延ダイ31の洗浄を先の方法で行った。接触角は89°であった。そして、フィルム13を連続して12時間製造したが、フィルム面状は最後まで優れたものであった。以上、4回の流延ダイ洗浄及びフィルムの製造を行った。流延ダイ31の接触角の平均値は89°であり、いずれのフィルムも面状に優れたものが得られた。
[実験2]
比較例である実験2では、中性界面活性剤に代えてシクロヘキサノンを用いて、流延ダイの洗浄を行った。その後に、フィルムの製造を行った。始めの流延ダイ31の洗浄では接触角が79°であった。この流延ダイを用いて連続して12時間フィルムを製造した。12時間が経った頃からフィルム面状の悪化が目視で確認できた。
次に、流延ダイ31の洗浄をシクロヘキサノンによる先の方法で行った。接触角は80°であった。そして、フィルム13を連続して12時間製造したが、12時間経った後からフィルム面状の悪化が確認できた。さらに、流延ダイ31の洗浄をシクロヘキサノンによる先の方法で行った。接触角は82°であった。そして、フィルム13を連続して12時間製造したが、12時間経った後からフィルム面状の悪化が確認できた。
そして、流延ダイ31の洗浄をシクロヘキサノンによる先の方法で行った。接触角は79°であった。そして、フィルム13を連続して12時間製造したが、12時間経った後からフィルム面状の悪化が確認できた。以上、4回の流延ダイ洗浄及びフィルムの製造を行った。流延ダイ31の接触角の平均値は88°であり、いずれのフィルムも製造途中から面状の悪化が認められた。
本発明に係る流延ダイの洗浄方法は、溶液を連続して送液する設備であって、前記溶液を吐出する吐出口を有する器具の洗浄に適用可能である。
本発明に係る流延ダイの洗浄方法の工程図である。 本発明に係る流延ダイを用いているフィルム製造ラインの概略図である。 本発明に係る流延ダイの洗浄方法を説明するための概略図である。
符号の説明
12 フィルム製造工程
13 フィルム
14 流延ダイ洗浄工程
20 フィルム製造ライン
31 流延ダイ
100 基材
101 布
102 洗浄器具
110 スリット
111,112 スリット表面
113,114 ランド
L1 先端部長さ

Claims (6)

  1. 溶液製膜法に用いられ、ドープをそのスリットから流延する流延ダイの洗浄方法において、
    前記スリットの先端部を中性界面活性剤で拭き洗浄した後に、
    前記スリットの先端部を水で拭き洗浄することを特徴とする流延ダイの洗浄方法。
  2. 前記スリットの先端部を更に有機溶媒で拭き洗浄することを特徴とする請求項1記載の流延ダイの洗浄方法。
  3. 前記スリットの先端部が、
    前記スリットの先端であるリップから上流側へ5mmまでのスリット内面と、
    前記リップ表面であるランドと、
    であることを特徴とする請求項1または2記載の流延ダイの洗浄方法。
  4. 前記流延ダイが組み立てられたままの場合であって、
    前記スリットに布で覆われた基材を挿入して、
    前記スリットの先端部を拭き洗浄することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の流延ダイの洗浄方法。
  5. 前記スリット先端部の表面を疎水性にすることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つ記載の流延ダイの洗浄方法。
  6. 前記スリット先端部の表面の接触角を83°以上とすることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載の流延ダイの洗浄方法。
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