JP2006249916A - 構造物および構造物の製造方法 - Google Patents

構造物および構造物の製造方法 Download PDF

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利治 岸
Koichi Maekawa
宏一 前川
Taiji Tanaka
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Abstract

【課題】優れたせん断耐力が得られ、エネルギー吸収量が多く、耐震性能に優れ、様々
な用途に適用可能であり、容易に施工できる構造物を提供する。
【解決手段】コンクリート1またはモルタルからなる構造物であって、内部に、コンク
リートまたはモルタルの硬化による一体化が阻止されたひび割れ阻止面9を備える構造物
とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、コンクリートまたはモルタルからなる構造物およびその製造方法に関し、特
に、耐震性能に優れたコンクリートまたはモルタルからなる構造物に関する。
RC構造物が荷重を受けると、曲げひび割れやせん断ひび割れが発生する。せん断ひび
割れは、曲げひび割れと比較すると大きいため、発生時に大きなエネルギーが解放される
。このため、せん断ひび割れに起因するせん断破壊は、破壊の進行が急激でじん性に欠け
、構造物に致命的な被害をもたらすことが多い。特に、地震荷重の作用によって生じる柱
材のせん断破壊は、構造物に大きい被害を与えることが多い。このため、従来から、構造
物のせん断耐力を確保するため、せん断補強用の鋼材(せん断補強筋)を所定量配置して
きた(例えば、特許文献1参照)。また、近年、社会基盤インフラの巨大化と阪神大震災
以来の耐震性向上のため、RC構造物に使用される鋼材量は非常に多くなっている。
特開平11−293849号公報
大型構造物等において所定のせん断耐力を確保するためには、多量のせん断補強筋を配
置する必要があり、多量のせん断補強筋を配置するには、大量の鉄筋を狭いピッチで配置
しなければならない。しかし、せん断補強筋は、一般に、建設現場において作業員による
手作業で配筋されているため、人間の手が入らないなどの理由でせん断補強筋の組み立て
が不能となり、せん断補強筋が所定量配置できない場合があった。また、大量の鉄筋を狭
いピッチで配置してコンクリートを打設した場合、コンクリートの充填不良が生じやすく
、コンクリートの充填不良による初期欠陥やそれに伴う耐久性能の劣化のリスクが大きく
なる。
この問題を解決するために、径の大きな鋼材を使用して鋼材間のピッチを確保する方法
がある。しかしながら、太径鉄筋を使用した場合、鉄筋の組み立て作業に手間がかかるた
め、工期の延長と工費の増大は避けられない。
また、せん断耐力を向上させるために、引張補強筋とコンクリートとの付着を排除し、
アンボンド化する手法がある。しかしながら、アンボンド手法を用いたRC構造物では、
荷重を受けると大きな割裂ひび割れが発生し、RC構造物の損傷が割裂ひび割れに極度に
集中するので、耐久性、耐疲労性、耐震時の減衰特性、美観に問題が生じる。このため、
アンボンド手法は、用途が厳しく限定されてしまう。
また、せん断耐力を向上させるために、コンクリート自体の品質を強化することが考え
られるが、コンクリート自体の品質を強化した場合には、コンクリートの材料単価が上が
ってしまい、それによる建設費の増加量はプロジェクトの採算性に大きく影響を与えてし
まう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、優れたせん断耐力が得られ、エネ
ルギー吸収量が多く、耐震性能に優れ、様々な用途に適用可能であり、容易に施工できる
構造物を提供することを目的とする。また、本発明の構造物を容易に施工できる製造方法
を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者は、コンクリートやモルタルのような脆性的な材
料に特有な性質であるひび割れの進展経路に着目して、以下に示すように、本発明を見出
した。すなわち、コンクリートの引き裂き破壊(せん断破壊)は、引張主応力が引張強度に
達すると発生する。したがって、コンクリートの引張主応力を小さくすることができれば
、コンクリートがせん断破壊に達する荷重を増大させることができる。一方でひび割れの
先端には、大きな引張主応力が作用しており、引張主応力によってひび割れが徐々に進展
する。引張主応力は、ひび割れの起点からひび割れの先端を通る円弧状の経路に沿って伝
達される。この経路に引張主応力を伝達しないひび割れ阻止面が存在すると、ひび割れ進
展の原動力である引張主応力が消散し、ひび割れの進展が抑止される。この原理を踏まえ
て、本発明者は、鋭意研究を重ね、ひび割れ阻止面によって、構造物の内部において引張
主応力の伝達とひび割れの進展とを阻止することで、構造物の引張主応力を小さくできる
ことを見出した。
本発明の構造物は、コンクリートまたはモルタルからなる構造物であって、内部に、コ
ンクリートまたはモルタルの硬化による一体化が阻止されたひび割れ阻止面を備えること
を特徴とする。
本発明の構造物は、ひび割れ阻止面を備えるものであるので、荷重により発生したひび
割れは、進展によりひび割れがひび割れ阻止面に達した時点でさらなる進展が阻止され、
大きなひび割れの発生が防止される。すなわち、本発明の構造物では、ひび割れ阻止面に
より、ひび割れ阻止面を貫通しようとする引張主応力の伝達が阻止され、せん断破壊を引
き起こす引張主応力が、ひび割れ阻止面によって分散される。このため、構造物の引張主
応力を小さくすることができ、構造物のせん断破壊に達するまでの荷重を増大させること
ができる。
また、本発明の構造物によれば、ひび割れ阻止面により、破壊に達するまでの変形量を
大きくすることができる。このように、構造物の内部に、ひび割れ阻止面を備えることに
より、ひび割れ阻止面のない構造物と比較して、せん断破壊に達するまでの荷重と破壊に
達するまでの変形量とをともに増大させることができ、構造物内に蓄えられるエネルギー
量(エネルギー吸収量)を増大させることができる。よって、例えば、連続梁における荷
重や地震荷重など正負繰り返し荷重を受けた場合に消費するエネルギー量が大きいものと
なり、振動を受けた場合におけるエネルギーの減衰が早い構造物となる。
このように本発明の構造物は、優れたせん断耐力が得られ、エネルギー吸収量が多く、
耐震性能に優れているので、従来の構造物のように大量の鉄筋を狭いピッチで配置したり
、太径鉄筋を使用したりする必要はない。また、本発明の構造物では、大きなひび割れの
発生を防ぐことができるので、アンボンド手法を用いた場合のように、構造物の損傷が極
度に集中することによる美観の問題が生じにくい。したがって、本発明の構造物は、大型
構造物等の様々な用途に適用できる。
また、上記の構造物においては、前記ひび割れ阻止面が、打ち継ぎ面に形成されたもの
とすることができる。
このような構造物とすることで、大型構造物等においても容易にひび割れ阻止面を設け
ることができる。
また、上記の構造物においては、前記ひび割れ阻止面が、板状のひび割れ阻止部材の表
面と接しているものとすることができる。
このような構造物とすることで、コンクリートまたはモルタルの硬化による一体化が確
実に阻止されたひび割れ阻止面を、構造物の内部に容易に設けることができる。よって、
荷重方向とひび割れ阻止部材との配置関係に関わらず、ひび割れ阻止面のない構造物と比
較して、破壊に達するまでの荷重(最大荷重)を増大させることができる。
また、上記の構造物においては、前記ひび割れ阻止部材に穴が設けられているものとす
ることができる。
このような構造物とすることで、穴の内部において、コンクリートまたはモルタルの硬
化による一体化がなされたものとすることができ、ひび割れ阻止部材に接するコンクリー
トまたはモルタルと、ひび割れ阻止部材とが噛み合うことによるエネルギー消費が多くな
る。よって、振動を受けた場合におけるエネルギーの減衰がより一層早い構造物となる。
また、穴の内部において、コンクリートまたはモルタルの硬化による一体化がなされた
ものとすることで、荷重方向とひび割れ阻止部材との配置関係に関わらず、ひび割れ阻止
面のない構造物と比較して、破壊に達するまでの荷重(最大荷重)を増大させることがで
きる。
また、上記の構造物においては、前記穴の総面積が、前記ひび割れ阻止部材の表面積に
対して20〜35%であるものとすることができる。
このような構造物とすることで、破壊に達するまでの荷重(最大荷重)をより一層増大
させることができる。
また、上記の構造物においては、前記ひび割れ阻止面が凹凸部を有するものとすること
ができる。
このような構造物とすることで、荷重を受けた際のひび割れ阻止面でのすべりが抑制さ
れるので、荷重を受けた場合に消費するエネルギー消費がより一層多くなる。よって、振
動を受けた場合におけるエネルギーの減衰がより一層早い構造物となる。
また、前記ひび割れ阻止面が、板状のひび割れ阻止部材の表面と接している場合には、
板状のひび割れ阻止部材として凹凸部を有するものを用いることにより、凹凸部を有する
ひび割れ阻止面を構造物の内部に容易に設けることができる。また、前記ひび割れ阻止面
が、板状のひび割れ阻止部材の表面と接している場合、ひび割れ阻止部材に接するコンク
リートまたはモルタルと、ひび割れ阻止部材とが噛み合うことによるエネルギー消費が多
くなり、振動を受けた場合におけるエネルギーの減衰がより一層早い構造物となる。
また、上記の構造物においては、前記ひび割れ阻止面が波型の断面形状を有するものと
することができる。
このような構造物とすることで、荷重を受けた際のひび割れ阻止面でのすべりが抑制さ
れるので、荷重を受けた場合に消費するエネルギー消費がより一層多くなる。よって、振
動を受けた場合におけるエネルギーの減衰がより一層早い構造物となる。
また、前記ひび割れ阻止面が、板状のひび割れ阻止部材の表面と接している場合には、
板状のひび割れ阻止部材として波型の断面形状を有するものを用いることにより、波型の
断面形状を有するひび割れ阻止面を構造物の内部に容易に設けることができる。また、前
記ひび割れ阻止面が、板状のひび割れ阻止部材の表面と接している場合、ひび割れ阻止部
材に接するコンクリートまたはモルタルと、ひび割れ阻止部材とが噛み合うことによるエ
ネルギー消費が多くなり、振動を受けた場合におけるエネルギーの減衰がより一層早い構
造物となる。
また、上記の構造物においては、前記ひび割れ阻止面に、セメントペーストの浸入を防
ぐ塗膜が形成されているものとすることができる。
このような構造物とすることで、打ち継ぎ面に形成されたひび割れ阻止面であって、コ
ンクリートまたはモルタルの硬化による一体化が確実に阻止されたひび割れ阻止面を、構
造物の内部に容易に設けることができる。
また、上記の構造物においては、前記ひび割れ阻止面が、せん断スパンの延在方向と平
行で有効高さの延在方向と直交する位置に設けられ、前記ひび割れ阻止面のせん断スパン
の延在方向長さが、せん断スパンの40〜60%の長さであるものとすることができる。
せん断スパンとは、せん断力が一定であるとみなすことのできる区間の長さであり、近
接する集中荷重の作用点間の距離(支点と載荷点間の距離)のことである。
このような構造物とすることで、破壊に達するまでの荷重(最大荷重)を向上させる効
果が十分に得られるとともに、大きな剛性が得られるものとなる。
また、上記の構造物においては、せん断スパン比が1.5以上であるものとすることが
できる。
せん断スパン比とは、せん断スパンをa、有効高さをdとしたときのa/dの値のこと
である。
このような構造物とすることで、破壊に達するまでの荷重(最大荷重)をより一層増大
させることができる。
また、上記の構造物においては、せん断スパンの延在方向と直交する方向にせん断補強
筋が配置されているものとすることができる。
このような構造物とすることで、破壊時の中央変位および最大荷重をより一層増大させ
ることができる。
上記課題を解決するために、本発明の構造物の製造方法は、コンクリートまたはモルタ
ルからなる構造物の製造方法であって、第1のコンクリートまたはモルタルを打設して硬
化させて打ち継ぎ面を形成する打ち継ぎ面形成工程と、前記打ち継ぎ面のうち、前記ひび
割れ阻止面となる領域を除く領域に打ち継ぎ処理を行う打ち継ぎ処理工程と、前記打ち継
ぎ面上に第2のコンクリートまたはモルタルを打設して、前記打ち継ぎ面において、前記
第2のコンクリートまたはモルタルの硬化による一体化がなされた一体化領域を形成する
とともに、前記第2のコンクリートまたはモルタルの硬化による一体化が阻止された前記
ひび割れ阻止面を形成する打設工程とを備えることを特徴とする。
このような製造方法によれば、内部に、コンクリートまたはモルタルの硬化による一体
化が阻止されたひび割れ阻止面を備え、前記ひび割れ阻止面が、打ち継ぎ面に形成された
コンクリートまたはモルタルからなる構造物を容易に得ることができる。よって、本発明
の構造物を大型構造物等にも適用することができ、本発明の構造物を様々な用途に適用で
きる。
上記の製造方法においては、前記打ち継ぎ面形成工程において、第1のコンクリートま
たはモルタルが硬化する前に、前記ひび割れ阻止面となる領域に板状のひび割れ阻止部材
を配置する工程を備える方法とすることができる。
このような製造方法とすることで、ひび割れ阻止面が、板状のひび割れ阻止部材の表面
と接している構造物を容易に得ることができる。
また、上記課題を解決するために、本発明の構造物の製造方法は、コンクリートまたは
モルタルからなる構造物の製造方法であって、型枠内の前記ひび割れ阻止面となる領域に
、板状のひび割れ阻止部材を固定部材により固定する固定工程と、型枠内に前記コンクリ
ートまたはモルタルを打設して、前記ひび割れ阻止部材によって前記コンクリートまたは
モルタルの硬化による一体化が阻止されたひび割れ阻止面を形成する打設工程とを備える
ことを特徴とする方法とすることができる。
このような製造方法によれば、内部に、コンクリートまたはモルタルの硬化による一体
化が阻止されたひび割れ阻止面を備え、前記ひび割れ阻止面が、板状のひび割れ阻止部材
の表面と接しているコンクリートまたはモルタルからなる構造物を容易に得ることができ
る。よって、本発明の構造物を大型構造物等にも適用することができ、本発明の構造物を
様々な用途に適用できる。
本発明によれば、優れたせん断耐力が得られ、エネルギー吸収量が多く、耐震性能に優
れ、様々な用途に適用可能であり、容易に施工できる構造物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の構造物を示す斜視図である。図1において符号1はコ
ンクリートを示している。図1に示す構造物は、四角柱状の梁部材であり、構造物の上部
と下部の所定の位置には、構造物の長さ方向に貫通する引張補強筋2が配置されている。
コンクリート1としては、いかなるものを用いてもよく、構造物の用途などに応じて適
宜選択して用いることができる。また、コンクリート1に代えて、モルタルを用いること
ができる。
引張補強筋2としては、鉄、PC鋼材、FRPロッド等からなるものを用いることがで
き、構造物の用途などに応じて適宜選択して用いることができる。
また、図1に示す構造物の内部には、コンクリートの硬化による一体化が阻止された2
つのひび割れ阻止面9、9が設けられている。ひび割れ阻止面9,9は、コンクリートの
硬化による付着力および接着力が阻止されてなるものであり、人工的に導入されたひび割
れである。2つのひび割れ阻止面9、9は、打ち継ぎ面に形成されたものであり、互いに
離間して設けられ、それぞれせん断スパンaの延在方向と平行で有効高さdの延在方向と
直交する位置に設けられている。ひび割れ阻止面9のせん断スパンaの延在方向長さL1
は、せん断スパンの40〜60%の長さとされている。
ひび割れ阻止面9のせん断スパンaの延在方向長さL1が、せん断スパンの4割未満で
あると、ひび割れ阻止面9を設けたことによるせん断耐力向上効果やエネルギー吸収量の
増大効果が十分に得られず、最大荷重を向上させる効果や耐震性能を向上させる効果が十
分に得られないため好ましくない。また、ひび割れ阻止面9のせん断スパンaの延在方向
長さL1が、せん断スパンの6割を超えると、剛性を向上させる効果が十分に得られなく
なるため好ましくない。
また、ひび割れ阻止面9のせん断スパンaの延在方向と直交する方向の長さL3は、構
造物の厚みtと同じされており、ひび割れ阻止面9の端部が構造物の側面に露出している
。なお、ひび割れ阻止面9のせん断スパンaの延在方向と直交する方向の長さL3は、構
造物の厚みtよりも小さくすることができ、例えば、構造物の厚みtの70%〜100%
の長さとした場合には、ひび割れ阻止面9を設けたことによる上記の効果が十分に得られ
、なおかつ、コンクリートによるひび割れ阻止面9の保護効果が得られる。
また、図1に示す構造物のせん断スパン比はとくに限定されないが、1.5以上である
場合には、ひび割れ阻止面9を設けたことによる効果が大きいものとなる。
次に、図1に示す構造物の製造方法を図2および図3を用いて説明する。なお、図面を
見やすくするため、図2および図3において、型枠および引張補強筋の図示を省略する。
図1に示す構造物を製造するには、まず、型枠、引張補強筋2を組み立てて、図2に示
すように、コンクリート1をひび割れ阻止面9の形成位置まで打設して硬化させて打ち継
ぎ面8を形成する(打ち継ぎ面形成工程)。
次に、打ち継ぎ面8のうち、ひび割れ阻止面9となる領域91を除く領域に打ち継ぎ処
理を行う(打ち継ぎ処理工程)。ここでの打ち継ぎ処理としては、表面のモルタルを除去
し骨材を露出させる方法など、打ち継ぐ新しいコンクリートの硬化によって一体化をはか
ることが可能となる方法であればいかなる方法であってもよい。また、ひび割れ阻止面9
となる領域91は、無処理とすることができるが、打ち継ぐ新しいコンクリートの硬化に
よる一体化が阻止される方法であればいかなる方法であってもよい。
その後、打ち継ぎ面8上にコンクリートを打設して、図3に示すように、打ち継ぎ面8
において、コンクリートの硬化による一体化がなされた一体化領域81を形成するととも
に、コンクリートの硬化による一体化が阻止されたひび割れ阻止面9を形成する(打設工
程)。その後、型枠を外すと図1に示す構造物が得られる。
図1に示す構造物は、ひび割れ阻止面9を備えるものであるので、構造物の引張主応力
を小さくすることができ、構造物のせん断破壊に達するまでの荷重を増大させることがで
きる。また、図1に示す構造物によれば、構造物内に蓄えられるエネルギー量(エネルギ
ー吸収量)を増大させることができる。
また、上述した構造物の製造方法によれば、図1に示す構造物を容易に得ることができ
る。
なお、上述した例では、打ち継ぎ面に形成されたひび割れ阻止面9は、ひび割れ阻止面
9となる領域91を無処理とすることによって形成したが、本発明は上述した例に限定さ
れるものではなく、以下に示す方法によって形成されたものであってもよい。
例えば、ひび割れ阻止面9となる領域91に波板の型枠を設置しておく方法や、ブラス
ト処理、チッピング等によりひび割れ阻止面9となる領域91に凹凸を設ける表面処理を
施してもよい。このようにして得られたひび割れ阻止面9は、荷重を受けた際のひび割れ
阻止面9でのすべりが抑制されるので、荷重を受けた場合に消費するエネルギー消費がよ
り一層多くなる。よって、振動を受けた場合におけるエネルギーの減衰がより一層早い構
造物となる。
また、ひび割れ阻止面9となる領域91に、グリス、剥離材などの油またはエポキシ樹
脂などからなるセメントペーストが浸入するのを防ぐ塗膜を形成しても良い。さらに、セ
メントペーストが浸入するのを防ぐために、塗膜の代わりにシートを敷設してもよい。
このようにして得られたひび割れ阻止面9は、コンクリートの硬化による一体化が確実
に阻止されたものとなり、効果的に耐震性能を向上させることができるものとなる。
なお、割れ阻止面9となる領域91には、上述した凹凸を設ける表面処理と、セメント
ペーストが浸入するのを防ぐ塗膜の形成のいずれか一方もしくは両方を行っても良い。
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態の構造物を示す断面図である。図4において図1と同一
の符号を付したものは、図1と同一のものを示し、重複する説明を省略する。図4に示す
構造物は梁部材であり、図4に示す構造物が図1に示す構造物と異なるところは、構造物
の上部に引張補強筋2が配置されていない点、構造物の下部に配置された引張補強筋2が
構造物の縁部で上方に向けて曲げられている点、1つのひび割れ阻止面92が、構造物の
中央部に設けられている点である。図4に示すひび割れ阻止面92は、凹凸部を有し、せ
ん断スパンaの延在方向と平行で有効高さdの延在方向と直交する位置に設けられている
次に、図4に示す構造物の製造方法を図4および図5を用いて説明する。なお、図面を
見やすくするため、図4および図5において、型枠の図示を省略する。
図4に示す構造物を製造するには、例えば、工場内で、型枠、引張補強筋2を組み立て
、コンクリート1を打設して硬化させて図5に示すPC(プレストレストコンクリート)
部材19を形成する(打ち継ぎ面形成工程)。図5に示すPC部材19の上面93および
側面83は打ち継ぎ面である。
次に、打ち継ぎ面のうちの側面83に打ち継ぎ処理を行う(打ち継ぎ処理工程)。また
、ひび割れ阻止面92となる領域93には、凹凸を設ける表面処理を行い、さらに、セメ
ントペーストが浸入するのを防ぐ塗膜の形成を行う。
その後、図5に示すPC部材19を工場から建設現場に運び、図4に示す構造物の形状
に合わせて組み立てられた型枠内に設置し、PC部材19の上面93および側面83上に
コンクリート1を打設して、図4に示すように、側面83において、コンクリートの硬化
による一体化がなされた一体化領域を形成するとともに、コンクリートの硬化による一体
化が阻止されたひび割れ阻止面92を形成する(打設工程)。その後、型枠を外すと図4
に示す構造物が得られる。
図4に示す構造物は、ひび割れ阻止面92を備えるものであるので、図1に示す構造物
と同様に、優れた耐震性能が得られる。
また、上述した構造物の製造方法によれば、工場内で製造されたPC部材19を建設現
場で型枠内に設置してコンクリート1を打設することによって製造できるので、建設現場
での配筋作業が軽減される。したがって、工期の短縮が可能となり、それに伴うコストの
削減が図ることができる。
また、第2実施形態を構成するPC(プレストレストコンクリート)部材19に代えて
、工場内で製造されたRC(鉄筋コンクリート)部材を用いることもできる。このような
構造物とした場合でも、図1に示す構造物と同様に、優れた耐震性能が得られるとともに
、建設現場での配筋作業が軽減される。
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態の構造物を示す断面図である。図6において図1と同一
の符号を付したものは、図1と同一のものを示し、重複する説明を省略する。図6に示す
構造物は梁部材であり、図6に示す構造物が図1に示す構造物と異なるところは、ひび割
れ阻止面9が、矩形の板状のひび割れ阻止部材3の表面と接しているものであるところで
ある。すなわち、ひび割れ阻止面9は、ひび割れ阻止部材3と接するコンクリート1の表
面となる。図6に示すひび割れ阻止部材3は、せん断スパンaの延在方向と平行で有効せ
いdの延在方向と直交する位置に設けられている。
ひび割れ阻止部材3としては、鉄、プラスチックなどの合成樹脂、ガラス、木材等の材
質で構成されているものを用いることができ、圧縮強度が十分に大きいものが望ましい。
また、ひび割れ阻止部材3の厚みは、ひび割れ阻止部材3の大きさや構造物の大きさなど
によって適宜決定することができる。
また、ひび割れ阻止部材3としては、平板状であってもよいが、表面上の任意の位置に
凹凸部を有するものであってもよい。
凹凸部を有するひび割れ阻止部材3としては、例えば、図7(a)に示すひび割れ阻止
部材31のように、矢印で示す第1の方向に沿って凹部21と凸部22を交互に繰り返す
凹凸形状であって、凹部21の厚みより凸部22の厚みが大きい断面形状とされているも
のとすることができる。
また、ひび割れ阻止部材3は、図7(b)に示すように、波型の断面形状を有していて
もよい。図7(b)に示すひび割れ阻止部材32は、矢印で示す第1の方向に沿って凹部
23と凸部24を交互に繰り返す凹凸形状であり、凹部23の厚みと凸部24の厚みとが
同じ厚みとされている。また、図7に示すひび割れ阻止部材31、32において、第1の
方向に沿って繰り返す凹凸形状のピッチや深さは、特に限定されず、ひび割れ阻止部材3
1、32付近でのコンクリートの締め固めに支障を来たすことがない範囲で、ひび割れ阻
止部材31、32の厚みや構造物の大きさなどによって適宜決定される。
また、ひび割れ阻止部材3の断面形状は、図7(a)、図7(b)に示す形状のみに限
定されるものではなく、例えば、図8に示すような断面形状としてもよい。
図8(a)に示すひび割れ阻止部材33は、滑らかな曲面からなる凹部と凸部とを交互
に繰り返す凹凸形状である。図8(b)〜図8(d)に示すひび割れ阻止部材34、35
、36は、台形状の凹部と凸部とを交互に繰り返す凹凸形状である。図8(b)に示すひ
び割れ阻止部材34では、凸部の頂上部(凹部の底部)の長さd1は凸部の頂上部の高さ
(凹部の底部の深さ)d2よりも大きくなっている。図8(c)に示すひび割れ阻止部材
35では、凸部の頂上部(凹部の底部)の長さd3は凸部の頂上部の高さ(凹部の底部の
深さ)d4と同程度となっている。図8(d)に示すひび割れ阻止部材36では、凸部の
頂上部(凹部の底部)の長さd5は凸部の頂上部の高さ(凹部の底部の深さ)d6よりも
小さくなっている。なお、図8(b)〜図8(d)に示すひび割れ阻止部材34、35、
36において、凹部から凸部へと向かう斜面の角度は、特に限定されず、ひび割れ阻止部
材34、35、36付近でのコンクリートの締め固めに支障を来たすことがない範囲で、
凸部の頂上部の長さと凸部の頂上部の高さとの関係や、構造物の設計強度などによって適
宜決定される。
また、ひび割れ阻止部材3は、図9に示すように、円形の穴4が千鳥に配置されていて
もよい。ひび割れ阻止部材3としては、穴4の総面積が、ひび割れ阻止部材3の表面積に
対して10〜40%であることが望ましく、20〜35%であることがより望ましく、3
0%とすることが最も好ましい。穴4の総面積が、ひび割れ阻止部材3の表面積に対して
10%未満であると、穴4を設けたことによるエネルギー消費の増大量が十分に得られな
いため好ましくない。また、穴4の総面積が、ひび割れ阻止部材3の表面積に対して40
%を超えると、穴4を介して伝達される引張応力が多くなり、ひび割れ阻止部材3を設け
たことによるせん断耐力向上効果やエネルギー吸収量の増大効果が十分に得られず、破壊
に達するまでの荷重(最大荷重)を向上させる効果や耐震性能を向上させる効果が十分に
得られないため好ましくない。
また、穴4は、図9に示すように、千鳥に配置されていてもよいが、図10(a)に示
すように、格子状に配置されていてもよい。また、穴4の形状としては、上述したように
、円形であってもよいが、図10(b)、図10(c)に示すように矩形の穴41であっ
てもよい。
また、ひび割れ阻止部材3は、図11に示すように、波型の断面形状を有しているひび
割れ阻止部材3に穴を設けたものであってもよい。具体的には、図11(a)に示すよう
に、凸部の頂上部(凹部の底部)の長さよりも小さい直径を有する円形の穴42が、凹凸
形状に沿って千鳥に配置されていてもよいし、図11(b)に示すように、凸部の頂上部
(凹部の底部)の長さよりも小さい直径を有する円形の穴43が、凹凸形状に沿って格子
状に配置されていてもよい。また、図11(c)に示すように、凸部の頂上部(凹部の底
部)の長さよりも大きい直径を有する円形の穴44が、凹凸形状に沿って千鳥に配置され
ていてもよい。
図6に示す構造物を製造するには、例えば、型枠、引張補強筋2を組み立てて、コンク
リート1をひび割れ阻止面9の形成位置まで打設し、コンクリートが硬化する前に、ひび
割れ阻止面9となる領域に板状のひび割れ阻止部材3を配置し、コンクリートを硬化させ
て打ち継ぎ面を形成する(打ち継ぎ面形成工程)。
次に、打ち継ぎ面のうち、ひび割れ阻止面9となる領域を除く領域に打ち継ぎ処理を行
う(打ち継ぎ処理工程)。
その後、打ち継ぎ面上にコンクリートを打設して、打ち継ぎ面において、コンクリート
の硬化による一体化がなされた一体化領域を形成するとともに、コンクリートの硬化によ
る一体化が阻止され、ひび割れ阻止部材3の表面と接しているひび割れ阻止面9を形成す
る(打設工程)。その後、型枠を外すと図6に示す構造物が得られる。
また、図6に示す構造物は、以下に示す方法で製造してもよい。
まず、型枠、引張補強筋2を組み立てて、型枠内のひび割れ阻止面9となる領域に、板
状のひび割れ阻止部材3を固定部材26により固定する(固定工程)。ひび割れ阻止部材
3の固定は、例えば、固定部材26として、図6に示す引張補強筋2と連結された鉄筋か
らなるものを用い、矩形のひび割れ阻止部材3の対向する2辺を引張補強筋2に連結する
ことによって行うことができる。また、固定部材26としては、例えば、引張補強筋2と
連結された型鋼からなるものや、型枠に連結されたセパレータに連結された金具からなる
ものなどを用いてもよい。ひび割れ阻止部材3に固定部材26を取り付ける場所や取り付
ける数は、固定部材26の種類やひび割れ阻止部材3の配置、引張補強筋2の配置などに
よって適宜決定することができる。
次いで、型枠内にコンクリートを打設して、ひび割れ阻止部材3によってコンクリート
の硬化による一体化が阻止されたひび割れ阻止面9を形成する(打設工程)。その後、型
枠を外すと図6に示す構造物が得られる。
図6に示す構造物は、ひび割れ阻止面9を備えるものであるので、図1に示す構造物と
同様に、優れた耐震性能が得られる。
また、図6に示す構造物は、ひび割れ阻止面9がひび割れ阻止部材3の表面と接してい
るので、コンクリートの硬化による一体化が確実に阻止されたものとなり、効果的に耐震
性能を向上させることができるものとなる。
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態の構造物を示す断面図である。図12において図6と
同一の符号を付したものは、図6と同一のものを示し、重複する説明を省略する。図12
に示す構造物は梁部材であり、図12に示す構造物が図6に示す構造物と異なるところは
、1つの板状のひび割れ阻止部材37が、構造物の中央部に設けられている点である。図
12に示すひび割れ阻止部材37は、せん断スパンaの延在方向と平行で有効高さdの延
在方向と直交する位置に設けられている。
図12に示す構造物は、ひび割れ阻止面9を備えるものであるので、図1に示す構造物
と同様に、優れた耐震性能が得られる。
(第5実施形態)
図13は、本発明の第5実施形態の構造物を示す断面図である。図13において図12
と同一の符号を付したものは、図12と同一のものを示し、重複する説明を省略する。図
13に示す構造物は梁部材であり、図13に示す構造物が図12に示す構造物と異なると
ころは、せん断スパンaの延在方向と直交する方向にせん断補強筋25が配置されている
点である。せん断補強筋25としては、引張補強筋2と同様の材質のものを用いることが
でき、具体的には、鉄、PC鋼材、FRPロッド等からなるものを用いることができる。
また、せん断補強筋25のピッチや太さは、構造物の大きさや用途などに応じて適宜決定
することができる。
図13に示す構造物は、ひび割れ阻止面9を備えるものであるので、図1に示す構造物
と同様に、優れた耐震性能が得られる。しかも、図13に示す構造物は、せん断補強筋2
5が配置されているので、破壊に達するまでの荷重(最大荷重)をより一層増大させるこ
とができる。
(第6実施形態)
図14は、本発明の第6実施形態の構造物を示す断面図である。図14において図13
と同一の符号を付したものは、図13と同一のものを示し、重複する説明を省略する。図
14に示す構造物は梁部材であり、図14に示す構造物が図13に示す構造物と異なると
ころは、平面的に重なり合う2枚の板状のひび割れ阻止部材38が、構造物の中央部に設
けられている点である。
図14に示す構造物は、ひび割れ阻止面9を備えるものであるので、図1に示す構造物
と同様に、優れた耐震性能が得られる。しかも、図14に示す構造物は、平面的に重なり
合う2枚の板状のひび割れ阻止部材38が配置されているので、非常に優れた耐震性能が
得られる。特に、せん断スパン比a/dが小さく、せん断破壊の生じやすい構造物におい
て効果的に耐震性能を向上させることができる。
なお、図14に示す構造物では、平面的に重なり合う2枚の板状のひび割れ阻止部材3
8が、構造物の中央部に設けられているものとしたが、平面的に重なり合うひび割れ阻止
部材は2枚に限定されるものではなく、例えば3枚以上とすることができ、構造物の大き
さや厚みなどに応じて適宜決定することができる。
(第7実施形態)
図15は、本発明の第7実施形態の構造物を示す断面図である。図15において図6と
同一の符号を付したものは、図6と同一のものを示し、重複する説明を省略する。図15
に示す構造物は梁部材であり、図15に示す構造物が図6に示す構造物と異なるところは
、板状のひび割れ阻止部材39が、せん断スパンaの延在方向と直交し有効高さdの延在
方向と並行する位置に設けられている点である。ひび割れ阻止部材39の厚みは、ひび割
れ阻止部材39の大きさや構造物の大きさなどによって適宜決定することができるが、構
造物の製造工程において、コンクリートが流し込まれることによって受ける圧力に対し、
抵抗しうる厚みとされる。
図15に示す構造物を製造するには、例えば、型枠、引張補強筋2を組み立てて、型枠
内のひび割れ阻止面9となる領域に、板状のひび割れ阻止部材39を固定部材により固定
する(固定工程)。
次いで、型枠内にコンクリートを打設して、ひび割れ阻止部材3によってコンクリート
の硬化による一体化が阻止されたひび割れ阻止面9を形成する(打設工程)。その後、型
枠を外すと図15に示す構造物が得られる。
図15に示す構造物においても、ひび割れ阻止面9を備えるものであるので、図1に示
す構造物と同様に、優れた耐震性能が得られる。
また、図15に示す構造物において、ひび割れ阻止部材39に穴が設けられている場合
には、コンクリートを打設する際に穴を介して生コンクリートが流れ出す。このため、ひ
び割れ阻止部材39の両面のコンクリートの打ち込み高さに差が生じにくくなる。よって
、コンクリートを打設する際にひび割れ阻止部材39に作用する側圧を小さくすることが
でき、ひび割れ阻止部材39の厚みを小さくすることができる。また、穴を介して生コン
クリートが自由に移動できることは、ひび割れ阻止部材39付近でのコンクリートの締め
固めが容易となり、硬化後のコンクリートの品質が確実に確保できる。
また、ひび割れ阻止部材39として凹凸部を有するものを使用した場合には、みかけの
断面2次モーメントが大きくなるため、耐えうる側圧が大きくなるので、ひび割れ阻止部
材39の厚みを小さくすることができる。
(第8実施形態)
図31は、本発明の第8実施形態の構造物を示す断両図である。図31において、図6と同一符号を付したものは、図6と同一のものを示し、重複する説明を省略する。図31に示す構造物は梁部材であり、図31に示す構造物が図6に示す構造物と異なるところは、板状のひび割れ阻止部材39が、せん断スパンaの延在方向および、有効高さdの延在方向から、斜め45度だけ支点7a,7bから遠ざかるように傾斜した位置に設けられている点である。ひび割れ阻止部材39の厚みは、ひび割れ阻止部材39の大きさや構造物の大きさなどによって適宜決定することができるが、構造物の製造工程において、コンクリートが流し込まれることによって受ける圧力に対し、抵抗しうる厚みとされる。
(第9実施形態)
図16は、本発明の第9実施形態の構造物を示す斜視図であり、図17は、図16に示
す構造物を構成する柱部の断面図である。図16および図17において図6と同一の符号
を付したものは、図6と同一のものを示し、重複する説明を省略する。
図16に示す構造物は、柱部材であり、基礎部12と、基礎部12上に立設された四角
柱状の柱部13とからなる。基礎部12は、鉄筋(図示略)とコンクリート1とからなる
。柱部13は、図17に示すように柱部13の外周に沿って配置された引張補強筋2と、
柱部13の側面と平行で、柱部13の中心で直交するように接続された断面十字型のひび
割れ阻止部材14と、コンクリート1とからなる。
ひび割れ阻止部材14は、せん断スパンaの延在方向と平行で有効高さdの延在方向と
直交する位置に設けられている。ひび割れ阻止面9のせん断スパンaの延在方向長さは、
せん断スパンと同じ長さとされている。
ひび割れ阻止部材14の材質としては、上述した実施形態と同様のものを用いることが
できる。また、ひび割れ阻止部材14は、上述した実施形態と同様に凹凸部を有するもの
とすることもできるし、穴が設けられていてもよい。また、ひび割れ阻止部材14の厚み
は、ひび割れ阻止部材14の大きさや構造物の大きさなどによって適宜決定することがで
きるが、構造物の製造工程において、コンクリートが流し込まれることによって受ける圧
力に対し、抵抗しうる厚みとされる。
図16に示す構造物を製造するには、例えば、基礎部12を形成した後、柱部13の形
状に対応する型枠、引張補強筋2を組み立てて、型枠内のひび割れ阻止面9となる領域に
、ひび割れ阻止部材14を固定部材27により固定する(固定工程)。ひび割れ阻止部材
14の固定は、例えば、固定部材27として、図17に示す引張補強筋2と連結された鉄
筋からなるものを用い、図17に示すように、固定部材27により断面十字型のひび割れ
阻止部材14の最外部を引張補強筋2に連結することによって行うことができる。
次いで、型枠内にコンクリートを打設して、ひび割れ阻止部材14によってコンクリー
トの硬化による一体化が阻止されたひび割れ阻止面9を形成する(打設工程)。その後、
型枠を外すと図16に示す構造物が得られる。
図16に示す構造物においても、ひび割れ阻止面9を備えるものであるので、図1に示
す構造物と同様に、優れた耐震性能が得られる。
また、図16に示す構造物においても、ひび割れ阻止部材14に穴が設けられている場
合には、コンクリートを打設する際にひび割れ阻止部材39に作用する側圧を小さくする
ことができ、ひび割れ阻止部材14の厚みを小さくすることができる。また、ひび割れ阻
止部材39付近でのコンクリートの締め固めが容易となり、硬化後のコンクリートの品質
が確実に確保できる。
また、ひび割れ阻止部材14として凹凸部を有するものを使用した場合には、みかけの
断面2次モーメントが大きくなるため、耐えうる側圧が大きくなるので、ひび割れ阻止部
材14の厚みを小さくすることができる。
(第10実施形態)
図18は、本発明の第10実施形態の構造物を示す斜視図である。図18において図16と同一の符号を付したものは、図16と同一のものを示し、重複する説明を省略する。
図18に示す構造物は、柱部材であり、図18に示す構造物が図16に示す構造物と異
なるところは、ひび割れ阻止部材15のせん断スパンaの延在方向長さL2が、せん断ス
パンの40〜60%の長さとされている点である。
図18に示す構造物においても、ひび割れ阻止面9を備えるものであるので、図1に示
す構造物と同様に、優れた耐震性能が得られる。しかも、図18に示す構造物は、ひび割
れ阻止部材15のせん断スパンaの延在方向長さL2が、せん断スパンの40〜60%の
長さとされているので、破壊に達するまでの荷重(最大荷重)をより一層増大させること
ができる。
なお、第9実施形態および第10実施形態においては、柱部13のせん断スパンaの延在方向と直交する方向にせん断補強筋が配置されているものとしてもよい。このような構造物とすることで、破壊に達するまでの荷重(最大荷重)をより一層増大させることができる。
(第11実施形態)
図19(a),(b)は、本発明の第11実施形態の構造物を示す断面図である。図19において図6と同一の符号を付したものは、図6と同一のものを示し、重複する説明を省略する。
図19に示す構造物は、柱部16と、柱部16に結合され一体化されたコーベル部17
とからなる。柱部16は、鉄筋(図示略)とコンクリート1とからなる。コーベル部17
は、図19(a)に示すようにコーベル部17の上面および端面に沿って配置された引張補強筋2と、せん断スパンaの延在方向と平行で有効高さdの延在方向と直交する位置に設けられた板状のひび割れ阻止部材18と、コンクリート1とからなる。この時、板状のひび割れ阻止面は図19(b)に示すように、せん断スパンaの延在方向と直交し、有効高さdの延在方向と平行となる位置に設けてもよい。
コーベルは、せん断スパン比a/dが1以下の梁部材であるディープビームと同様に、
せん断補強筋を配置しても補強効果が得られないものである。しかし、図19に示す構造
物では、ひび割れ阻止面9を備えるものであるので、図1に示す構造物と同様に、優れた
耐震性能を得ることができる。
(第12実施形態)
図32は、本発明の第12実施形態の構造物を示す斜視図であり、図33は図32に示す構造物の側両図である。図32および図33において図6と同一符号を付したものは、図6と同一のものを示し,重複する説明を省略する。
図32に示す構造物は、柱部材であり、基礎部12と基礎部12上に立設された四角柱状の柱部13とからなる。基礎部12は鉄筋2とコンクリート1および、柱部の延在方向と平行、かつ柱部断面よりも一回り大きな四角状のひび割れ阻止部材39からなる。また、柱部13は,鉄筋(図示略)とコンクリート1からなる。
ひび割れ阻止部材39の長さは、基部の有効高さdと同じ長さとされている。また、ひび割れ阻止部材39の替わりとして、ひび割れ阻止面9を上述した実施形態と同様の方法で作成してもよい。
ひび割れ阻止部材39の材質としては、上述した実施形感と同様のものを用いることができる。また、ひび割れ阻止部材39は上述した実施形熊と同様に凹凸部を有するものとすることもできるし、穴が設けられていてもよい。また、ひび割れ阻止部材39の厚みは、ひび割れ阻止部材39の大きさや構造物の大きさなどによって適宜決定することができるが、構造物の製造工程において、コンクリートが流し込まれることによって受ける圧力に対し、抵抗しうる厚みとされる。
(第13実施形態)
図34は、本発明の第13実施形態の構造物を示す斜視図であり、図35は図34に示す構造物の側面図である。図34および図35において図6と同一符号を付したものは、図6と同一のものを示し、重複する説明を省略する。
図34に示す構造物は、柱部材であり、基礎部12と基礎部12上に立設された四角柱状の柱部13とからなる。基礎部12は鉄筋2とコンクリート1および、柱部の延在方向と平行、かつ柱部断面よりも一回り大きな四角錐状のひび割れ阻止部材39からなる。また、柱部13は、鉄筋(図示略)とコンクリート1からなる。図34に示す構造物が図32に示す構造物と異なるところは、板状のひび割れ阻止部材39が、基部および柱部の延在方向から斜め45度だけ支点7a,7bから遠ざかるように傾いた位置に配置されている点である。
ひび割れ阻止部材39の長さは、基部の有効高さdの1.4倍と同じ長さとされている。また、ひび割れ阻止部材39の替わりとして、ひび割れ阻止面9を上述した実施形態と同様の方法で作成してもよい。
ひび割れ阻止部材39の材質としては、上述した実施形態と同様のものを用いることができる。また、ひび割れ阻止部材39は上述した実施形態と同様に凹凸部を有するものとすることもできるし、穴が設けられていてもよい。また、ひび割れ阻止部材39の厚みは、ひび割れ阻止部材39の大きさや構造物の大きさなどによって適宜決定することができるが、構造物の製造工程において,コンクリートが流し込まれることによって受ける圧力に対し、抵抗しうる厚みとされる。
なお、本発明は、コンクリートまたはモルタルからなる構造物であればいかなるもので
あっても用いることができるが、例えば、RC橋脚等のフーチング、RC短柱、コーベル
(張り出し部)、地下タンク側壁部材および底部との隅角部、ディープビーム、二次製品ス
ラブ、プレキャスト工法接合部などに特に好適に使用できる。
<実験例1>
長さが2100mm、高さが300mm、厚みが200mm、せん断スパンaが700
mmの図6に示す本発明の構造物を製造した。なお、ひび割れ阻止部材3として、せん断
スパンaの延在方向長さが350mm、せん断スパンaの延在方向と直交する方向の長さ
が198mm、厚みが0.6mm、平板状の穴のない鋼板(SS400相当品)を用い、
ひび割れ阻止部材3のせん断スパンaの延在方向長さを、せん断スパンaの50%とした
。また、コンクリート1として、水セメント比(水とセメントの重量比)が55%、圧縮
強度45MPaの普通コンクリートを使用した。また、引張補強筋2として、降伏強度7
35MPa、有効径D22の高強度異形鉄筋USD685を使用し、構造物の上面から5
0mmの位置と下面から50mmの位置(かぶり厚50mm)に配置した。また、固定部
材26として、引張補強筋2と連結された有効径D6の異形鉄筋を使用した。
<実験例2>
ひび割れ阻止部材3と固定部材26とを備えていないこと以外は実験例1と同様である
図21に示す構造物を製造した。
<実験例3>
引張補強筋2の一部が、引張補強筋2とコンクリート1との付着を排除したアンボンド
化されていること以外は実験例1と同様である図22に示す構造物を製造した。なお、図
22において符号32は、アンボンド化されている部分を示す。
実験例1〜実験例3の構造物に対し、符号7a、7bで示す点を支点として矢印6で示
す方向からの荷重したときのひび割れの状態を調べた。実験例1の結果を図20に示し、
実験例2の結果を図21に示し、実験例3の結果を図22に示す。また、ひび割れ本数を
調べた結果、実験例1は17本であり、実験例2は10本であり、実験例3は1本であっ
た。
また、ひび割れの状態を調べた結果を表1に示す。表1において、ひび割れ分散性は、
以下に示すように◎○×の3段階で評価した。
◎:実験例2よりもひび割れ本数が多い。
○:実験例2とひび割れ本数が同等である。
×:実験例2よりもひび割れ本数が少ない。
Figure 2006249916
図20に示すように、実験例1では、荷重6と対向する支点7aと支点7bとの中間付
近に複数の小さい曲げひび割れ5が発生した。また、支点7a、7b付近から荷重6され
ている点に向かって斜め方向に複数の小さいせん断ひび割れ35が発生した。
また、図21に示すように、実験例2では、荷重6と対向する支点7aと支点7bとの
中間付近に複数の小さい曲げひび割れ5が発生した。また、支点7a、7b付近から荷重
6されている点に向かって斜め方向に1本の大きいせん断ひび割れ45が発生した。
また、図22に示すように、実験例3では、荷重6と対向する支点7aと支点7bとの
中間付近に複数の小さい曲げひび割れ5が発生した。また、荷重6と対向する支点7aと
支点7bとの中間付近にY字型の1本の大きな割裂ひび割れ55が発生した。
図21より、実験例2では、1本の大きいせん断ひび割れ45が発生していることがわ
かる。また、図22より、実験例3では、1本の大きな割裂ひび割れ55が発生し、損傷
が集中していることがわかる。これに対し、図20より、本発明の構造物である実験例1
では、荷重により発生したせん断ひび割れ35は、進展によりせん断ひび割れ35がひび
割れ阻止面に達した時点でさらなる進展が阻止され、複数の小さいせん断ひび割れ35と
なっていることがわかる。すなわち、実験例1では、せん断破壊を引き起こす引張主応力
が、ひび割れ阻止面によって分散されることが確認できた。
さらに、実験例1〜実験例3の構造物に対し、部材剛性、変形性能、せん断耐力、地震
時減衰特性について以下に示すようにして調べた。
部材剛性:構造物にせん断ひび割れが発生する程度の荷重が作用しているときに、変位
センサにより構造物の中央部の変形量を測定し、荷重を変形量で除した値を求めた。
その結果、実験例1は39kN/mmであり、実験例2は35kN/mmであり、実験
例3は28kN/mmであった。
部材剛性は、以下に示すように◎○×の3段階で評価した。
◎:実験例2よりも部材剛性が大きい。
○:実験例2と部材剛性が同等である。
×:実験例2よりも部材剛性が小さい。
変形性能:符号7a、7bで示す点を支点として矢印6で示す方向からの荷重を与えた
ときの荷重と中央変位を測定し、荷重が急激に減少するときの変化量を調べた。
その結果、鉄筋が降伏する変化量は、13.2mmであり、実験例1は16.3mmで
あり、実験例2は7.8mmであり、実験例3は15.2mmであった。
変形性能は、以下に示すように◎○×の3段階で評価した。
◎:鉄筋が降伏する変化量を上回る変形量で破壊した。
○:鉄筋が降伏する変化量で破壊した。
×:鉄筋が降伏する変化量よりも小さい変形量で破壊した。
せん断耐力:せん断ひび割れが構造物を貫通することにより破壊したときの荷重の値を
求めた。
その結果、実験例1は300kNであり、実験例2は174kNであり、実験例3は3
42kNであった。
せん断耐力は、以下に示すように◎○×の3段階で評価した。
◎:せん断破壊が起こらなかった(曲げ破壊した)。
○:鉄筋が降伏する荷重でせん断破壊した。
×:鉄筋が降伏する荷重よりも小さな荷重でせん断破壊した。
地震時減衰特性:荷重を100kN→30kN→100kNと順次変化させて与えたと
きの荷重と中央変位とを測定し、荷重と中央変位との関係から求められるヒステリシスル
ープの面積からエネルギー吸収量を求めた。
その結果、実験例1は26.7kN/mmであり、実験例2は28.1kN/mmであ
り、実験例3は1.3kN/mmであった。
地震時減衰特性は、以下に示すように◎○×の3段階で評価した。
◎:実験例2よりもエネルギー吸収量が大きい。
○:実験例2とエネルギー吸収量が同等である。
×:実験例2よりもエネルギー吸収量が小さい。
<実験例4>
ひび割れ阻止部材3のせん断スパンaの延在方向長さを、せん断スパンaの0%、30
%、50%、70%、100%とした実験例1の構造物を製造し、せん断強度を測定した
。せん断強度は、せん断破壊したときの荷重の値を求め、構造物の断面積で除して求めた

その結果を図23に示す。
図23は、せん断強度とひび割れ阻止部材3のせん断スパンaの延在方向長さとの関係
を示したグラフである。図23に示すように、せん断スパンaの10%〜100%とした
場合にせん断強度を大きくする効果が得られ、せん断スパンaの40%〜60%とした場
合により一層せん断強度を大きくする効果が得られ、せん断スパンaの50%とした場合
に最もせん断強度が大きくなることが確認できた。
<実験例5>
ひび割れ阻止部材3のせん断スパンaの延在方向長さを、せん断スパンaの0%、30
%、50%、70%、100%とした実験例1の構造物を製造し、符号7a、7bで示す
点を支点として矢印6で示す方向からの荷重したときの荷重と中央変位との関係を調べた
。その結果を図24に示す。
図24は、荷重と中央変位との関係を示したグラフである。図24に示すように、せん
断スパンaの0%〜70%とした場合に中央変位を小さくする効果が得られ、せん断スパ
ンaの30%〜50%とした場合により一層中央変位を小さくする効果が得られ、剛性が
大きくなることが確認できた。
<実験例6>
実験例1および実験例2の構造物において、せん断スパン比を変化させたときの最大荷
重を調べ、せん断スパン比に対する実験例1の最大荷重と実験例2との最大荷重との比を
求めた。その結果を図25に示す。
図25は、実験例1の最大荷重と実験例2の最大荷重との比と、せん断スパン比との関
係を示したグラフである。図25に示すように、せん断スパン比が1.5以上であるとき
、効果的に最大荷重を大きくする効果が得られることが確認できた。
<実験例7>
ひび割れ阻止部材3として、図10(a)、図10(b)、図10(c)に示す穴を設
けたものを用いたこと以外は実験例1と同様である構造物を製造し、符号7a、7bで示
す点を支点として矢印6で示す方向からの荷重したときの最大荷重を求めた。なお、図1
0(a)、図10(b)、図10(c)に示す穴の総面積は、ひび割れ阻止部材3の表面
積に対して、いずれも30%であった。その結果を、図26に実験例1の構造物の最大荷
重とともに示す。
図26は、ひび割れ阻止部材の形状と最大荷重との関係を示したグラフである。図26
に示すように、ひび割れ阻止部材3として穴が設けられているものを用いることで、最大
荷重を増大できることが確認できた。また、ひび割れ阻止部材3の穴が円形であっても四
角形であっても、千鳥に配置されていても格子状に配置されていても、ひび割れ阻止部材
3の表面積と穴の総面積との比が同じである場合には、最大荷重に有意な差は見られなか
った。
<実験例8>
ひび割れ阻止部材3として、図7(a)に示す凹凸部を有するものを用いたこと以外は
実験例1と同様である構造物を製造した。
<実験例9>
ひび割れ阻止部材3として、図9に示す円形の穴が千鳥に配置されているものを用いた
こと以外は実験例1と同様である構造物を製造した。
実験例1、実験例2、実験例8、実験例9の構造物の最大荷重を調べ、実験例2の最大
荷重と、実験例1、実験例8、実験例9の構造物の最大荷重との比を求めた。その結果を
図27に示す。
図27は、実験例2の最大荷重と、実験例1、実験例8、実験例9の最大荷重との比を
示したグラフである。図27に示すように、ひび割れ阻止部材3を設けることで、最大荷
重を大きくする効果が得られることが確認できた。また、ひび割れ阻止部材3として穴が
設けられているものを用いることで、最大荷重をより一層増大できることが確認できた。
<実験例10>
図15に示す本発明の構造物を製造した。なお、ひび割れ阻止部材39として、平板状
の穴のないものを用いた。
<実験例11>
ひび割れ阻止部材39として、図7(a)に示す凹凸部を有するものを用いたこと以外
は実験例10と同様である構造物を製造した。
<実験例12>
ひび割れ阻止部材39として、図9に示す円形の穴が千鳥に配置されているものを用い
たこと以外は実験例10と同様である構造物を製造した。
実験例2、実験例10〜実験例12の構造物の最大荷重を調べ、実験例2の最大荷重と
、実験例2、実験例8、実験例9の構造物の最大荷重との比を求めた。その結果を図28
に示す。
図28は、実験例2の最大荷重と、実験例10〜実験例12の最大荷重との比を示した
グラフである。図28に示すように、板状のひび割れ阻止部材が、せん断スパンaの延在
方向と直交し有効高さdの延在方向と並行する位置に設けられている場合、平板状の穴の
ないひび割れ阻止部材を設けても最大荷重を大きくする効果が得られないが、ひび割れ阻
止部材として、凹凸部を有するものや穴が設けられているものを用いることで、最大荷重
を大きくする効果が得られることが確認できた。また、ひび割れ阻止部材3として凹凸部
を有するものを用いることで、最大荷重をより一層増大できることが確認できた。
また、図27および図28より、板状のひび割れ阻止部材は、せん断スパンaの延在方
向と直交し有効高さdの延在方向と並行する位置に設けるよりも、せん断スパンaの延在
方向と平行で有効高さdの延在方向と直交する位置に設けた方が、最大荷重を大きくする
効果が得られることが確認できた。図27および図28より、ひび割れ阻止部材として、
凹凸部を有するものや穴が設けられているものを用いることで、荷重方向とひび割れ阻止
部材との配置関係に関わらず、ひび割れ阻止面のない構造物や平板状の穴のないひび割れ
阻止部材を用いた構造物と比較して、最大荷重を増大できることが確認できた。
<実験例13>
ひび割れ阻止部材の表面積に対するひび割れ阻止部材の穴の総面積(開口率)を0〜6
0%の範囲で異ならせた実験例9の構造物を複数製造し、それぞれ最大荷重を調べて実験
例2の最大荷重との比を求めることにより、開口率と最大荷重との関係を求めた。その結
果を図29に示す。
図29は、開口率と最大荷重との関係を示したグラフである。図29に示すように、ひ
び割れ阻止部材の穴の総面積が、ひび割れ阻止部材の表面積に対して10〜40%である
ときに、最大荷重を増大でき、20〜35%であるときに、最大荷重をより一層増大でき
、30%であるときに、最大荷重を最も増大できることが確認できた。
<実験例14>
せん断スパンaの延在方向と直交する方向にせん断補強筋25が配置されていること以
外は実験例2と同様である構造物を製造した。
<実験例15>
図12に示す本発明の構造物を製造した。なお、ひび割れ阻止部材37として、図7(
b)に示す波型の断面形状を有するものを用いた。
<実験例16>
せん断スパンaの延在方向と直交する方向にせん断補強筋25が配置されていること以
外は実験例15と同様である図13に示す構造物を製造した。
実験例2、実験例14〜実験例16の構造物について、符号7a、7bで示す点を支点
として矢印6で示す方向からの荷重したときの荷重と、破壊時の中央変位および最大荷重
とを調べた。その結果を図30に示す。
図30は、荷重と破壊時の中央変位および最大荷重との関係を示したグラフである。図
30に示すように、ひび割れ阻止部材を用いることで、中央変位および最大荷重を増大で
き、非常に耐震性能が優れたものとなることが確認できた。さらに、ひび割れ阻止部材を
用い、せん断補強筋25を配置することで、中央変位および最大荷重をより一層増大でき
ることが確認できた。
図1は、本発明の第1実施形態の構造物を示す斜視図である。 図2は、本発明の第1実施形態の構造物の製造方法を説明するための図である。 図3は、本発明の第1実施形態の構造物の製造方法を説明するための図である。 図4は、本発明の第2実施形態の構造物を示す断面図である。 図5は、本発明の第2実施形態の構造物の製造方法を説明するための図である。 図6は、本発明の第3実施形態の構造物を示す断面図である。 図7は、凹凸部を有するひび割れ阻止部材の一例を示した斜視図であり、図7(a)は凹凸形状を有するものであり、図7(b)は波型の断面形状を有するものである。 図8は、ひび割れ阻止部材の断面形状一例を示した図である。 図9は、穴を有するひび割れ阻止部材の一例を示した斜視図である。 図10は、穴を有するひび割れ阻止部材における穴の配置と穴の形状の一例を示した図である。 図11は、凹凸部を有し、穴を有するひび割れ阻止部材の一例を示した斜視図である。 図12は、本発明の第4実施形態の構造物を示す断面図である。 図13は、本発明の第5実施形態の構造物を示す断面図である。 図14は、本発明の第6実施形態の構造物を示す断面図である。 図15は、本発明の第7実施形態の構造物を示す断面図である。 図16は、本発明の第9実施形態の構造物を示す斜視図である。 図17は、図16に示す構造物を構成する柱部の断面図である。 図18は、本発明の第10実施形態の構造物を示す斜視図である。 図19は、本発明の第11実施形態の構造物を示す断面図である。 実験例1の構造物の構造を示した図であり、実験例1におけるひび割れの状態を説明するための図である。 実験例2の構造物の構造を示した図であり、実験例2におけるひび割れの状態を説明するための図である。 実験例3の構造物の構造を示した図であり、実験例3におけるひび割れの状態を説明するための図である。 図23は、せん断強度とひび割れ阻止部材のせん断スパンの延在方向長さとの関係を示したグラフである。 図24は、荷重と中央変位との関係を示したグラフである。 図25は、実験例1の最大荷重と実験例2の最大荷重との比と、せん断スパン比との関係を示したグラフである。 図26は、ひび割れ阻止部材の形状と最大荷重との関係を示したグラフである。 図27は、実験例2の最大荷重と、実験例1、実験例8、実験例9の最大荷重との比を示したグラフである。 図28は、実験例2の最大荷重と、実験例10〜実験例12の最大荷重との比を示したグラフである。 図29は、開口率と最大荷重との関係を示したグラフである。 図30は、荷重と破壊時の中央変位および最大荷重との関係を示したグラフである。 図31は、本発明の第8実施形態の構造物を示す断面図である。 図32は、本発明の第12実施形態の構造物を示す斜視図である。 図33は、本発明の第12実施形態の構造物を示す側面図である。 図34は、本発明の第13実施形態の構造物を示す斜視図である。 図35は、本発明の第13実施形態の構造物を示す側面図である。
符号の説明
1・・・・コンクリート
2・・・・引張補強筋
3、14、15、18、31、32、33、34、35、36、37、38、39・・・
・ひび割れ阻止部材
4、41、42、43、44・・・・穴
5・・・・曲げひび割れ
6・・・・荷重
7a、7b・・・・支点
8・・・・打ち継ぎ面
9、92・・・・ひび割れ阻止面
12・・・・基礎部
13、16・・・・柱部
17・・・・コーベル部
19・・・・PC部材
21、23・・・・凹部
22、24・・・・凸部
25・・・・せん断補強筋
26、27・・・・固定部材
32・・・・アンボンド化されている部分
35、45・・・・せん断ひび割れ
55・・・・割裂ひび割れ
83・・・・側面
91・・・・ひび割れ阻止面となる領域
93・・・・上面
a・・・・せん断スパン
d・・・・有効高さ

Claims (14)

  1. コンクリートまたはモルタルからなる構造物であって、内部に、コンクリートまたはモ
    ルタルの硬化による一体化が阻止されたひび割れ阻止面を備えることを特徴とする構造物
  2. 前記ひび割れ阻止面が、打ち継ぎ面に形成されたものであることを特徴とする請求項1
    に記載の構造物。
  3. 前記ひび割れ阻止面が、板状のひび割れ阻止部材の表面と接していることを特徴とする
    請求項1または請求項2に記載の構造物。
  4. 前記ひび割れ阻止部材に穴が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の構造物
  5. 前記穴の総面積が、前記ひび割れ阻止部材の表面積に対して20〜35%であることを
    特徴とする請求項4に記載の構造物。
  6. 前記ひび割れ阻止面が凹凸部を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか
    に記載の構造物。
  7. 前記ひび割れ阻止面が波型の断面形状を有することを特徴とする請求項1〜請求項5の
    いずれかに記載の構造物。
  8. 前記ひび割れ阻止面に、セメントペーストの浸入を防ぐ塗膜が形成されていることを特
    徴とする請求項2に記載の構造物。
  9. 前記ひび割れ阻止面が、せん断スパンの延在方向と平行で有効高さの延在方向と直交す
    る位置に設けられ、
    前記ひび割れ阻止面のせん断スパンの延在方向長さが、せん断スパンの40〜60%の
    長さであることを特徴とする1〜請求項8のいずれかに記載の構造物。
  10. せん断スパン比が1.5以上であることを特徴とする請求項9に記載の構造物。
  11. せん断スパンの延在方向と直交する方向にせん断補強筋が配置されていることを特徴と
    する1〜請求項10のいずれかに記載の構造物。
  12. コンクリートまたはモルタルからなる構造物の製造方法であって、
    第1のコンクリートまたはモルタルを打設して硬化させて打ち継ぎ面を形成する打ち継
    ぎ面形成工程と、
    前記打ち継ぎ面のうち、前記ひび割れ阻止面となる領域を除く領域に打ち継ぎ処理を行
    う打ち継ぎ処理工程と、
    前記打ち継ぎ面上に第2のコンクリートまたはモルタルを打設して、前記打ち継ぎ面に
    おいて、前記第2のコンクリートまたはモルタルの硬化による一体化がなされた一体化領
    域を形成するとともに、前記第2のコンクリートまたはモルタルの硬化による一体化が阻
    止された前記ひび割れ阻止面を形成する打設工程とを備えることを特徴とする構造物の製
    造方法。
  13. 前記打ち継ぎ面形成工程において、第1のコンクリートまたはモルタルが硬化する前に
    、前記ひび割れ阻止面となる領域に板状のひび割れ阻止部材を配置する工程を備えること
    を特徴とする請求項12に記載の構造物の製造方法。
  14. コンクリートまたはモルタルからなる構造物の製造方法であって、
    型枠内の前記ひび割れ阻止面となる領域に、板状のひび割れ阻止部材を固定部材により
    固定する固定工程と、
    型枠内に前記コンクリートまたはモルタルを打設して、前記ひび割れ阻止部材によって
    前記コンクリートまたはモルタルの硬化による一体化が阻止されたひび割れ阻止面を形成
    する打設工程とを備えることを特徴とする構造物の製造方法。

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009155878A (ja) * 2007-12-26 2009-07-16 Taisei Corp プレキャストプレストレストコンクリート部材
JP2009209606A (ja) * 2008-03-05 2009-09-17 Shimizu Corp せん断補強構造

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