JP2006241551A - 溶接性及び低温靭性に優れた厚鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質重量%で、C:0.01〜0.14%、Mn:1.60%超3.00%以下、C+Mn/20≦0.22%、Mn≧2.30−10C(%)を満足するC及びMnを含有し、さらに、P:0.020−0.04(C+Mn/20)(%)以下、S:0.015−0.04(C+Mn/20)(%)以下、O:0.005%以下を含有し、さらに、Si:0.50%以下、Al:0.060%以下、Ti:0.025%以下、Ca:0.0060%以下、REM:0.0100%以下、Mg:0.0050%以下の群から選択された1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
溶接構造用鋼として溶接性を改善する最も一般的で基本的な方法は、厚鋼板のC量や溶接性を示す指標である炭素当量(Ceq)、溶接割れ感受性組成(PCM)を低減させることである。
これまでにも、溶接構造用鋼の溶接性を改善するために、合金成分の適正化と製造方法を組み合わせた多くの技術が提案されている。
例えば、Mnを含む鋼を例に採ると、Mnを1.6%超(2.0%以下)を含む鋼の製造法が提案されている(特許文献1、2参照)。
上記の日本工業規格でMnの添加量を1.60%以下と規定している理由は必ずしも明確ではないが、規格制定が古いこともあって、制定当時の鋳片または鋼片のマクロ偏析制御技術やMnS生成に関わる脱硫能力等からMnの添加量を1.60%以下と規定したものと思われる。
一方、Mnには鋼材の強度を増加させる効果があることが知られており、高強度の鋼材や厚手の鋼材を得ようとした場合、Mnの添加量を増加させればよいのであるが、Mnの添加量の上限が規定されていることから、Mnの添加量を増加させることができない。したがって、母材および溶接継手靭性への悪影響が比較的小さいが高価であるNiやCuを添加することで要求特性を満足せざるを得ないのが現状である。
なお、上述した特許文献1、2では、Mnが1.6%超(2.0%以下)を含む鋼の製造法に関する技術は開示されているものの、Mnの添加量は高々1.75%であり、しかも、Mnの添加量とCの添加量との関係については何等記載されていない。
さらに、P:0.020−0.04(C+Mn/20)(%)以下、S:0.015−0.04(C+Mn/20)(%)以下、O:0.005%以下を含有し、
さらに、Si:0.50%以下、Al:0.060%以下、Ti:0.025%以下、Ca:0.0060%以下、希土類元素:0.0100%以下、Mg:0.0050%以下の群から選択された1種または2種以上を含有し、
残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする溶接性及び低温靭性に優れた厚鋼板。
かつ、Mn≦2.0%のとき、Ni+Cu≦5.0−2Mn(%)、
Mn>2.0%のとき、Ni+Cu≦1.0%
を満足するCu及びNiを含有してなることを特徴とする(1)に記載の溶接性及び低温靭性に優れた厚鋼板。
また、NiやCuの添加量を削減あるいは全く添加しないので、高強度で、溶接性及び低温靭性に優れた厚鋼板を安価に提供することができる。
以上により、各種溶接鋼構造物の安全性を従来よりも低コストで高めることができる。
なお、この実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
質重量%で、C:0.01〜0.14%、Mn:1.60%超3.00%以下、C+Mn/20≦0.22%、Mn≧2.30−10C(%)を満足するC及びMnを含有し、
さらに、P:0.020−0.04(C+Mn/20)(%)以下、S:0.015−0.04(C+Mn/20)(%)以下、O:0.005%以下を含有し、
さらに、Si:0.50%以下、Al:0.060%以下、Ti:0.025%以下、Ca:0.0060%以下、希土類元素(以下、REMと略称する):0.0100%以下、Mg:0.0050%以下の群から選択された1種または2種以上を含有し、
残部が鉄および不可避不純物からなるものである。
Cは、鋼材の特性に最も顕著に効くもので、0.01〜0.14%の範囲に限定するものである。ここで、Cの含有量を上記の様に限定した理由は、下限値の0.01%は、強度確保及び溶接などの熱影響部が必要以上に軟化することのないようにするための最小量である。しかし、Cの添加量が多すぎると、焼入性が必要以上に上がり、鋼材が本来有すべき強度、靱性のバランス、溶接性などに悪影響を及ぼすため、上限を0.14%とした。
ここで、Mnの含有量を上記の様に限定した理由は、下限値の1.60%は、従来技術と一線を画し、本願発明の特徴を明確にするために高いレベルとしたものである。Mnは、母材の強度や靭性確保にも有効であり、溶接構造用鋼として一般に使用される引張強さ400MPa級以上の強度を、CuやNiを添加することなく、各種製造方法で厚鋼材を安定して得るためにはMnを1.60%を超えて添加することが必要である。
この添加量を1.60%超とすることにより、さらに高強度鋼において、高価なNi、Cu添加が不可欠の場合でも、Ni、Cuの添加量の低減を図ることが可能である。
そこで、C及びMnそれぞれの含有量を、C+Mn/20≦0.22%、Mn≧2.30−10C(%)のそれぞれを満足するように規定した。
C+Mn/20≦0.22%
と限定する必要がある。
溶接割れ感受性組成(PCM)は低いほど溶接性に優れ、溶接時の予熱が低減できるため、溶接割れ感受性組成(PCM)に関与する他の元素も考慮して上記のように限定した。
したがって、上限値の0.22%は、臨界的な意味合いを持つものではなく、他の元素が含まれる場合であっても、安定して優れた溶接性を確保することができる範囲として限定したものである。
そこで、Mnの含有量を
Mn≧2.30−10C
と限定した。
C+Mn/20≦0.22%
と併せ、C、Mnは図1に示す実線で囲まれた領域の如く、自ずとある領域に限定されることとなる。
そこで、P、Sそれぞれの含有量の上限を、CおよびMnそれぞれの含有量に応じて限定した。
P≦0.020−0.04(C+Mn/20)(%)
S≦0.015−0.04(C+Mn/20)(%)
なお、P、Sは、個別規制に加え、PとSの総量を0.018%以下にすることがさらに好ましい。
ここで、PとSの総量を0.018%以下と限定した理由は、母材及び溶接部の靭性を大きく劣化させないためである。
上記の各元素の含有量の上限値は、鋼の清浄度を損ねない範囲の上限値として設定される。
例えば、Siは、鋼の清浄性の観点のみならず溶接性、溶接部靭性にも影響を及ぼすため、その含有量を、これらの特性に悪影響を及ぼさない範囲に制限する必要がある。この上限規制は重要なものであるから、そこで、含有量の上限を0.50%とした。
なお、鋼の脱酸はTi、Alのみでも十分可能であるから、特に前記特性が強く要求される場合には、必ずしも添加する必要はない。
特に、Ti添加鋼の場合、後述するように、粒内変態を利用しているため、Alを含有しない方が望ましい場合もある。含有量が多くなると鋼の清浄性だけでなく、溶接金属の靭性も劣化するので、含有量の上限を0.060%とした。
なお、Tiの含有量が多過ぎると、鋼の清浄性を損なうだけでなく、Cと結合してTiCを生成し、低温靭性や溶接性を劣化させる虞がある。そこで、含有量の上限を0.025%とした。
上記の効果を得ることのできるCaおよびREMの含有量の下限値は、0.0005%である。
ここでは、鋼の清浄性確保の観点から、Caの含有量を0.0060%以下、REMの含有量を0.0100%以下とした。
ただし、添加量が増えると、鋼の清浄性を劣化させるだけでなく、添加量に対する効果の発現程度が小さくなるため、コスト上得策ではない。そこで、上限を0.005%とした。
さらに、質量%で、Ni:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Cu/2≦Ni≦Mn/2、
かつ、Mn≦2.0%のとき、Ni+Cu≦5.0−2Mn(%)、
Mn>2.0%のとき、Ni+Cu≦1.0%
を満足するCu及びNiを含有してなることが好ましい。
Ni、Cuは、いずれも溶接性、溶接部靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させるものであるが、本発明の厚鋼板が、Mnの含有量を増加させると共に、高価なNiやCuを極力低減することを目的としたものであるから、この点を考慮すると、Ni、Cuそれぞれの上限については冶金的、技術的に制約されるものではなく、また、それぞれの下限についても特に規定するものでもない。
以上の点を考慮すると、NiとCuとの和(Ni+Cu)は、図2に示す実線で囲まれた領域の如く、自ずとある領域に限定されることとなる。
このCuの含有量を0.60%以上とした場合、適切な製造条件を付与することにより顕著な析出硬化現象を示す。したがって、Cuの含有量は0.60%以上が好ましい。
さらに、質量%で、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.10%、V:0.01〜0.10%、B:0.0002〜0.003%の群から選択された1種または2種以上を含有してなることが好ましい。
なお、これらの元素を添加する理由は、本発明の鋼の溶接性、溶接部靭性等の優れた特徴を損なうことなく、強度、溶接性、低温靭性等の特性を向上させるためである。したがって、これらの元素の含有量は、溶接性、溶接部靭性に悪影響を及ぼさない範囲に制限される。
一方、Nbを過剰に添加した場合、溶接部の靭性劣化を招く。そこで、含有量の上限を0.10%とした。
一方、Nbと同様、過剰に添加した場合、溶接部の靭性劣化を招く。そこで、含有量の上限を0.10%とした。
一方、Bを過剰に添加した場合、B析出物が生成する虞があり、したがって、焼入性を向上させる効果が飽和するだけでなく、靭性が低下する可能性もある。そこで、含有量の上限を0.003%とした。
なお、Nが鋼中に微量含まれていた場合、TiN等を形成して前述のように鋼の性質を高めたり、Nb、V、C等と結合して炭窒化物を形成し、鋼の強度を増加させるという利点があり、一方、Nの含有量が多すぎた様な場合には、溶接部靭性や溶接性を低下させる虞があるが、Nの含有量は、意図的に添加しない限り、必要以上に高くなることはない。通常の鋼の製造工程では、Nの含有量が0.008%を越えることはないので、本願発明においては、鋼中のNの含有量を特に規定することはしない。
例えば、加熱・圧延温度規制のほとんどない普通圧延、加熱・圧延温度に規制を設けた制御圧延、さらにはその後の制御冷却(直接焼入れを含む)などはもちろん、焼戻処理、焼入−焼戻処理、焼きならし処理、二相域熱処理等、様々な製造プロセスを必要に応じて適宜選択可能である。
まず、転炉により、表1に示す様々な組成の鋼スラブを溶製し、次いで、表2に示す製造方法により、表2に示す板厚(38〜75mm)の厚鋼板を作製した。
製造方法は、普通圧延(OR)、制御圧延(CR)、加速冷却(ACC)、焼入−焼戻(QT)、直接焼入−焼戻(DQT)、焼き均し(N)の群から1種、または2種を組み合わせたものを適用した。
ここでは、機械的性質として、降伏強さ、引張強さ、靭性(vTrs)の3点を測定し、評価した。また、溶接性については、日本工業規格JIS Z 3158「斜めy形溶接割れ試験」に基づいてルート割れの停止予熱温度(℃)を測定し、評価した。
表1に鋼組成を示し、表2に厚鋼板の製造方法及び諸特性を示す。
すなわち、比較例21は、Mnの含有量が低いだけであるから、特性上、本願発明の鋼に対し大きく劣るものではないが、加速冷却を施しているにも関わらず、強度・靭性がやや劣るものとなっている。
比較例24は、C、Mnそれぞれの添加量に対してPの添加量が高く、PとSの添加量の合計も高いため、靭性が劣るものであった。
比較例25は、Oの含有量が高く、PとSの添加量の合計もやや高いため、靭性が劣るものであった。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.01〜0.14%、Mn:1.60%超3.00%以下、C+Mn/20≦0.22%、Mn≧2.30−10C(%)を満足するC及びMnを含有し、
さらに、P:0.020−0.04(C+Mn/20)(%)以下、S:0.015−0.04(C+Mn/20)(%)以下、O:0.005%以下を含有し、
さらに、Si:0.50%以下、Al:0.060%以下、Ti:0.025%以下、Ca:0.0060%以下、希土類元素:0.0100%以下、Mg:0.0050%以下の群から選択された1種または2種以上を含有し、
残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする溶接性及び低温靭性に優れた厚鋼板。 - さらに、質量%で、Ni:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Cu/2≦Ni≦Mn/2、
かつ、Mn≦2.0%のとき、Ni+Cu≦5.0−2Mn(%)、
Mn>2.0%のとき、Ni+Cu≦1.0%
を満足するCu及びNiを含有してなることを特徴とする請求項1記載の溶接性及び低温靭性に優れた厚鋼板。 - さらに、質量%で、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.10%、V:0.01〜0.10%、B:0.0002〜0.003%の群から選択された1種または2種以上を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の溶接性及び低温靭性に優れた厚鋼板。
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