JP2006233393A - 緻密な絡合不織布の製造方法 - Google Patents

緻密な絡合不織布の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】化学薬品などを用いることなく、水で処理することにより、良好な折り曲げ皺と天然皮革様の腰の有る柔らかさを両有する皮革様シート基体の製造に適した絡合不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を一成分とする極細繊維発生型多成分系繊維からなる緻密な絡合不織布を製造する方法において、該繊維を絡合処理して得られる絡合不織布に、該水溶性樹脂成分の5質量%以上の水を付与して、相対湿度75%以上の雰囲気下で、熱処理して該不織布の面積収縮率が15%以上となるように収縮させることを特徴とする緻密な絡合不織布の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を一成分とする極細繊維発生型多成分系繊維からなる緻密な絡合不織布の製造方法および該絡合不織布を用いた皮革様シート基体の製造方法に関する。
近年、人工皮革は、軽さ、取り扱い易さなどの特長が消費者に認められてきており、衣料、一般資材、スポーツ分野などで幅広く利用されるようになっている。従来の一般的な人工皮革の製造方法は、概略次の通りである。すなわち、溶解性を異にする2種類の重合体からなる極細繊維発生型多成分系繊維をステープル化し、カード、クロスラッパー、ランダムウェーバー等を用いてウェブ化し、ニードルパンチ等により繊維を互いに絡ませて絡合不織布化した後、ポリウレタンで代表される高分子弾性体の溶液若しくはエマルジョン液を付与して凝固させた後に該極細繊維発生型多成分系繊維中の一成分を除去する方法、あるいは高分子弾性体の溶液またはエマルジョンを含浸・凝固させる工程と該極細繊維発生型多成分系繊維中の一成分を除去する工程を逆の順序で行う方法である。これらの方法により繊維を極細化させて柔軟な人工皮革を得ることができる。
このような人工皮革の分野において、外観、風合等の感性面と、寸法安定性等の物性面をすべて満足する高品質なものが要求されている。具体的には、外観、風合等に優れた人工皮革を得るために、上記したように、極細繊維発生型多成分系繊維中の一成分を除去して繊維を極細化する方法が一般に用いられている。
上記方法は繊維として短繊維を用いるものであるが、短繊維に替えて長繊維を用いた場合に、短繊維からなる不織布の場合と比べて、その製造方法として原綿供給装置、開繊装置、カード機、クロスレイ機などの一連の大型設備を必要とせず、また長繊維からなることから強度も短繊維不織布に比べて高いという利点がある。
極細長繊維不織布の製造方法としては、相溶性のない2以上のポリマーからなる極細繊維発生型多成分系長繊維不織布を構成する該多成分系繊維を長さ方向に分割処理して該ポリマーの界面で剥離させて極細化する方法が主として適用される。しかし、この場合、剥離分割する方法での繊維の均一な分割には限界があり、スエード調人工皮革に適用できるような極細繊維を得ることは困難である。一方、1成分のみからなる極細長繊維不織布を得るには、相溶性のない2以上のポリマーからなる極細繊維発生型多成分系長繊維不織布から一方のポリマーを除去しなければならず、そのためには化学薬品を使用せざるを得なかった。例えば、ポリエステルを除去する場合には、薬品として苛性ソーダなどが用いられ、ポリアミドの場合にはギ酸などが用いられ、またポリスチレンの場合はトリクロロエチレンやトルエンなどが用いられる。
しかしながら、このような方法では、化学薬品の取り扱いの危険性や環境汚染などの面から特殊な抽出除去設備が必要となり、作業者の安全衛生面や製造コストの点で十分満足できるものではなかった。また、除去処理により、除去する成分とは別の成分が好ましくない影響を受けるため、極細繊維発生型多成分系繊維を構成する成分の組合せが限定されたり、除去すべき成分が十分除去できないままで使用せざるを得ず、満足できる品質の不織布および人工皮革が得られない場合があった。
一方、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)は水溶性のポリマーであって、その基本骨格と分子構造、形態、各種変性により水溶性の程度を変えることができ、更に溶融紡糸性を付与することが可能であることが知られている。また、PVAは生分解性であることも確認されている。これらのことから、地球環境的に、合成物を自然界といかに調和させるかが大きな課題となっている現在、このような基本性能を有するPVAおよびPVA系繊維は多いに注目されている。
長繊維を皮革様シートの不織布基体として利用する試みはこれまでにもなされているが、実際に上市されている製品は0.5デシテックス以上のレギュラー太さを有するファイバーを銀付調人工皮革の基体として用いている程度であり、極細長繊維使いの人工皮革は未だ上市されていない。これは、安定した目付の長繊維絡合シートを得ることの困難さ、極細繊維発生型多成分系繊維製造の取り扱い性、極細繊維発生型多成分系長繊維のムラや歪に起因する製品ムラなどが原因と推察される。実際、短繊維を使用した場合と同じ製法を極細長繊維不織布に適用した場合には、極細繊維化工程、染色工程等において、シートにシワ欠点を生じ、安定した製品の製造は困難である。
このようなムラを解消する方法として、長繊維を部分的に切断し部分的にひずみを解消する方法(例えば、特許文献1参照。)が提案されているが、このような方法では、長繊維の利点である繊維が連続していることによる強力物性への寄与を低下させ、長繊維の特徴を充分に生かすことができない。また、織編物等の補強布を導入し、繊維の形態変化を抑制する方法(例えば、特許文献2参照。)も提案されているが、単に補強布を導入するだけでは、摩擦等に対する繊維の脱落の防止効果には有効であっても、繊維のひずみ緩和に抗しきれず、シワ欠点を生じてしまう場合がある。また、上記のいずれの方法においても、化学薬品などを用いることなく水で処理することを前提として、水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸、凝固して皮革様シート基体を得る方法において、良好な折り曲げ皺を得るためには、多量の樹脂を添加することが必要であり、その結果、天然皮革様の腰のあるやわらかさを得ることが困難となる。
また、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールと熱可塑性ポリマーを溶融紡糸して得られるによる極細繊維発生型多成分系長繊維不織布を化学薬品などを用いることなく、単なる水で処理することにより得られる極細長繊維不織布の内部に弾性重合体を含浸して皮革様シート基体を得る方法(例えば、特許文献3参照。)が提案されているが、化学薬品などを用いることなく水で処理して皮革様シート基体を得ることを前提として、水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸、凝固して皮革様シート基体を得ようとすると、バインダー樹脂が極細繊維に接着することによる風合いの硬化が起こりやすく、かつ、良好な折り曲げ皺を得るためには、多量の樹脂を添加することが必要であり、その結果、良好な折り曲げ皺と天然皮革様の腰の有るやわらかさを両立することが困難である。
特開2000−273769号公報(3〜5頁) 特開昭64−20368号公報(1〜2頁) 特開2003−328276号公報(2〜3頁)
本発明の目的は、化学薬品などを用いることなく、水で処理することにより、良好な折り曲げ皺と天然皮革様の腰の有る柔らかさを両有する皮革様シート基体の製造を可能とすることにある。水で処理する為に、水溶性樹脂を一成分とする極細繊維発生型多成分系繊維からなる不織布を人工皮革の基体として使用する場合においては、使用する高分子弾性体量を低減して柔軟性を付与する為に不織布は収縮処理され緻密化されていることが必要である。しかしながら、不織布に高分子弾性体を含浸した後においては不織布の収縮は発現不可能であり、収縮処理は不織布の段階で実施することが必要であるが、通常の水中にて収縮処理する方法を用いた場合には、水溶性樹脂が溶け出して極細化した繊維と含浸した高分子弾性体が接着し風合いが硬化するため、水溶性樹脂は高分子弾性体を含浸・凝固させた時点まで繊維中に残っていることが必要である。以上のことから、不織布の段階で収縮処理を入れることが必要となるが、通常の水中にて収縮処理する方法は、水溶性樹脂が溶け出して使用できないため、本発明は、熱水または温水に浸漬して不織布を収縮させる方法以外の方法を提供するものである。
上記課題を達成すべく本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を一成分とする極細繊維発生型多成分系繊維からなる緻密な絡合不織布を製造する方法において、該繊維を絡合処理して得られる絡合不織布に、該水溶性樹脂成分の5質量%以上の水を付与して、相対湿度75%以上の雰囲気下で、熱処理して該不織布の面積収縮率が15%以上となるように収縮させることを特徴とする緻密な絡合不織布の製造方法であり、そして、上記の方法で得られた方法により得られた緻密な不織布に水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸し、凝固した後に該水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を抽出除去する皮革様シート基体の製造方法である。
そして、好ましくは、上記絡合不織布が長繊維不織布である場合であり、また上記水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.99モル%および融点が160℃〜230℃である場合である。
本発明の、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を一成分とする極細繊維発生型多成分系繊維からなる緻密な絡合不織布を製造する方法によれば、皮革様シートの基体に適した極細繊維発生型多成分系繊維絡合シートを得ることができ、該極細繊維発生型多成分系繊維不織布の内部に水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸することで、化学薬品などを用いることなく水のみで処理する方法で皮革様シート基体を製造することができる。また、化学薬品などを用いることなく、単なる水で処理することにより、皮革様シート基体として好適な極細繊維発生型多成分系繊維絡合不織布シートを得ることができるため、環境対応型の皮革様シートであると言える。さらには、本発明による絡合不織布の収縮方法により、良好な折り曲げ皺と天然皮革様の腰のあるやわらかさを両立する皮革様シート基体の製造に最適な極細繊維長繊維絡合不織布が得られる。
本発明を達成するための具体的な手段の例を次に述べる。
先ず、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂(以下PVAと略することがある。)を一成分に用いた極細繊維化後の単糸繊度が0.0003〜0.5デシテックスである極細繊維を形成することが可能な極細繊維発生型多成分系繊維からなるフィラメントを用いて長繊維ウェブを形成し、この長繊維ウェブを必要に応じてクロスラッピング等の手法により積層し、ニードルパンチング処理で代表される絡合処理を行って長繊維絡合シートとする。
次いで、ニードルパンチ等の絡合処理後の長繊維不織布を収縮処理して不織布を緻密化する必要がある。本発明では、長繊維不織布に、該水溶性樹脂(PVA)成分の5質量%以上の水を付与して、相対湿度75%以上の雰囲気下で、熱処理する方法が用いられる。好ましくは、長繊維不織布に該PVA成分の10質量%以上の水を付与して、相対湿度90%以上の雰囲気下で行う場合である。そして、収縮処理温度として、雰囲気温度60℃以上の条件下において収縮させることが設備上の管理が容易であり、長繊維不織布に高収縮を付与できるという点において好ましい。この際、長繊維不織布への水分付与量が5質量%未満である場合には、極細繊維発生型多成分系繊維の水溶性樹脂成分の可塑化が不十分となり、フィラメントの収縮を妨げる傾向となるため、充分な収縮率が得られない。また、相対湿度が75%未満の場合には、付与した水分が速やかに乾燥するために該水溶性樹脂が硬化し、これまた充分な収縮が得られない。また付与する水の上限値に関しては特に限定はないが、溶け出したPVAが工程を汚染することを防止や、乾燥効率のため、一般的には該PVA成分の50質量%以下である。なお、本発明でいう水の付与量は、不織布を標準状態(23℃、65%RH)の状態に放置した後の不織布重量を基準とした値である。
具体的な水の付与方法としては、水を不織布上に散布する方法、水蒸気または霧状の水滴を不織布に付与する方法、不織布表面に水を塗布する方法などが挙げられるが、特に水蒸気または霧状の水滴を不織布に付与する方法が好ましい。なお、この場合の付与する水の温度としては、PVAが実質的に溶解しない温度が採用される。また、具体的な水の付与順序としては、不織布に水を付与した後に相対湿度75%以上の雰囲気で熱処理を行ってもよいし、熱処理の際に水分の付与を同時に行っても良い。収縮処理は、上記雰囲気中に不織布にできる限り力のかからない状態で放置することにより達成される。収縮処理に要する時間としては、1〜5分が生産性の点で、さらに十分な収縮を付与できる点で好ましい。
この際、収縮処理による面積収縮率が15%以上であることが皮革様シート基体として使用する上で好ましい。より好ましくは30%以上である。面積収縮率が15%未満である場合には、得られる複合繊維絡合シートの見かけの密度が充分に高くならず、該シートの形態保持が困難となるため、皮革様シート基体の製造工程の取り扱い上または工程通過性の点で不都合を生じるとともに、皮革様シート基体として充分な強度を得られず、また、形態保持性改良のためには、多量のバインダー樹脂が必要となり天然皮革様の腰の有るやわらかさを得ることが困難となる。さらに、面積収縮率が15%未満の場合、長繊維に由来して不織布が有している不規則なシワや、表面に生じる大きな凹凸が収縮後にも残存した状態となり、改良のためには多量のバインダー樹脂が必要となり、風合いに悪影響をおよぼす。上記収縮方法によって複合繊維を構成するPVAを残存させた状態で不織布の収縮を発現させ、高密度の複合繊維絡合シートが得られる。本発明では、高密度の複合繊維絡合シートを用いることで、長繊維に由来する不規則なシワや、表面生じる大きな凹凸を抑制して、良好な折り曲げ皺を得ると共に、少ないバインダー樹脂で不織布の形態を良好に保持することを可能とし、結果として天然皮革様の腰の有るやわらかさを得ることができる。収縮の程度の上限値としては、収縮発現時の均一性の点から面積収縮率で60%程度である。
一般に、海島型長繊維不織布を用いて皮革様シートを製造する場合、海成分除去工程、染色工程等の高温における繊維の伸縮による動きを抑制することが難しく、シート全面に不規則なシワや、表面に凹凸を生じるケースが多いが、本発明方法を用いることにより、不規則なシワや表面凹凸の発生を軽減させることができるが、それでも不規則なシワや表面凹凸の発生が生じる場合には、本発明における残存したPVAを可塑化あるいは融解した状態下において、公知の方法によりプレス等の処理を施すことで、表面の平滑化を行い、シワの低減および表面凹凸の改善を図ってもよい。
本発明の目的の一つである、化学薬品などを用いることなく水のみで処理する方法で皮革様シート基体を製造するために、最後に、水系エマルジョンバインダー樹脂の含浸、凝固処理を行い、熱水処理により極細繊維発生型多成分系繊維からなる長繊維の一成分であるPVAを溶解除去し、極細繊維化処理を行い皮革様シート基体とする。ここで、従来の有機溶剤に溶解したバインダー樹脂を繊維質シート状物に含浸付与し、非溶剤で処理して湿式凝固させる方法では、バインダー樹脂が連続した発泡状態を形成して、少量のバインダー樹脂で形態安定化と天然皮革様の風合いを付与することが可能であったが、本発明の好適な方法である、化学薬品を使用せずに水系エマルジョンバインダー樹脂を用いる場合においては、バインダー樹脂が連続した構造体となるには多量の樹脂が必要となり、結果として風合いの硬化を引き起こす傾向にある。そのため、本発明の収縮方法を適用しない場合、すなわち、一般的に行われている熱水中での収縮を実施して、収縮処理時に極細繊維発生型多成分系繊維からなる長繊維の一成分であるPVAが脱落した状態で、水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸、凝固して皮革様シート基体を得ようとする場合は、該バインダー樹脂と極細化された繊維とが接着した部位が硬化するため、良好な折り曲げ皺と天然皮革様の腰の有るやわらかさを両立し難い。しかしながら、本発明では、長繊維の一成分であるPVAを残存させた状態で水系エマルジョンバインダー樹脂の含有処理するため、長繊維の一成分であるPVAを溶解除去した後の皮革様シート基体においてバインダー樹脂と極細化処理された繊維の間に適度な空隙が形成され、極細繊維同士がフレキシブルに動くことが可能となるため、良好な折り曲げ皺と天然皮革様の腰の有るやわらかさを両立させた皮革様シートが得られるのである。しかも、本発明では、水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸する不織布は、既に収縮処理され緻密化されているため、付与するバインダー樹脂量を相対的に減らすことができる。
本発明において、付与する水系エマルジョンバインダー樹脂の量としては、PVA抽出除去後の不織布の質量に対して、固形分換算で2〜40質量%が好ましい。この範囲よりも少ない場合には極細繊維の固定が不十分となり、折れ曲げ皺、形態安定性および表面平滑性が不良となり、逆に多い場合には風合いの硬化が生じる。より好ましくは5〜25質量%である。
このようにして得られた皮革様シート基体は、公知の方法により、表面を起毛処理し染色することによってスエード調人工皮革となる。また、かかる皮革様シート基体の表面に顔料を添加した仕上げ用の弾性重合体を塗布し、銀面被覆層を形成させることにより、あるいは表面を熱により溶融させて平滑面とすることにより銀付き調人工皮革とすることも可能である。
本発明において、極細繊維発生型多成分系繊維からなる不織布を得るための極細繊維発生型多成分系繊維としては特に限定されず、チップブレンド(混合紡糸)方式や複合紡糸方式で代表される方法を用いて得られる海島型断面繊維、多層積層型断面繊維、放射型積層型断面繊維等から適宜選択可能であるが、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を海成分、非水溶性熱可塑性樹脂を島成分とする海島型断面極細繊維発生型多成分系繊維がニードルパンチ時の繊維損傷が少なく、かつ極細繊維の均一性の点で好ましい。非水溶性熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する。)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと称する。)、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、芳香族ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系などの繊維形成能を有する重合体が好適である。これらの中でもPET、PBT等のポリエステル系樹脂は熱処理により収縮を発現しやすく、加工した製品の風合及び実用性能の点から特に望ましい。そして、これら重合体は融点が160℃以上であることが好ましく、160℃未満の場合には、形態安定性が劣り、実用性の点から好ましくない。より好ましくは、融点180〜250℃の繊維形成性結晶性樹脂である。なお、本発明で融点は、示差走査熱量計(以下、DSCと称する。)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した場合の重合体の融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を採用している。なお、極細繊維を構成する樹脂には、染料、顔料等の着色剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、消臭剤、防かび剤、各種安定剤が添加されていてもよい。
本発明では、極細繊維発生型多成分系繊維のマトリックス成分に水溶性熱可塑性PVA系樹脂を用いるが、該樹脂の使用は、複合繊維の紡糸性、環境汚染、溶解除去の容易さ等を総合的に考慮して選定されたものである。すなわち、このようなPVA系樹脂を1成分に用いた複合繊維不織布を水によって可塑化した状態で熱処理することにより不織布の高密度化が可能になると共に、水系エマルジョンバインダー樹脂を付与した後に、水により溶解除去することで、極細繊維とバインダー樹脂の間に空隙が生じて、人工皮革の高密度化と柔軟性が同時に達成され、人工皮革のドレープ性や風合い等が天然皮革に酷似したものとなる。PVA系樹脂溶解除去前の極細繊維発生型多成分系繊維中に占める質量比率としては5〜70質量%が好ましい。より好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは15〜50質量%である。極細繊維発生型多成分系繊維中のPVA系樹脂の比率が少なくなると、複合繊維の紡糸の安定性が低下すると共に、人工皮革とした場合の柔軟性が低下して好ましくなく、逆に比率が多くなると、絡合不織布を収縮の際に付与する水分量が多くなり余分な水分を乾燥させるため生産性が低下すると共に、人工皮革とした場合の形態を安定化するために多量のバインダー樹脂が必要になり好ましくない。水溶性熱可塑性PVA系樹脂自身の好ましい態様については後述する。
本発明においては繊維および不織布の形態としては、前記したように極細繊維発生型多成分系長繊維よりなる長繊維不織布が好ましいが、このような長繊維不織布は、溶融紡糸と直結したいわゆるスパンボンド不織布の製造方法によって効率よく製造することができる。すなわち、水溶性熱可塑性PVA系樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とをそれぞれ別の押し出し機で溶融混練し、溶融した樹脂流を複合ノズルを経て紡糸ヘッドに導きノズル孔から吐出させ、この吐出複合繊維を冷却装置により冷却せしめた後、エアジェット・ノズル等の吸引装置を用いて目的の繊度となるように1000〜6000m/分の複合繊維の引き取り速度に該当する速度で高速気流により牽引細化させ、移動式の捕集面の上に堆積させて必要に応じて部分圧着して長繊維ウェブを製造することができる。得られる極細繊維発生型多成分系繊維の繊度としては、1.0〜5.0デシテックスの範囲、長繊維ウェブの目付としては20〜500g/mの範囲が工程取り扱い性の面から好ましい。また、極細繊維とした後の単繊維繊度が0.0003〜0.5デシテックスの範囲となるように極細繊維発生型多成分系繊維の断面形状を設定することが好ましい。0.0003デシテックス未満ではスエード調人工皮革とした際に染色性に難があるため好ましくなく、0.5デシテックスを越える場合には人工皮革とした際に柔軟性および外観品位の劣るものとなるため好ましくない。より好ましくは、0.2〜0.01デシテックスの範囲である。
捕集面に堆積させた繊維ウェブを、場合によって複数枚重ね合わせ、ニードルパンチして不織布とするが、その際の油剤、ニードル形状、ニードル深度、パンチ数等の所謂ニードル条件については特に制限はなく、公知の方法から適宜選択することができる。例えばニードル形状は、バーブ数が多いほうが効率的であるが、針折れが生じない範囲で1〜9バーブの中から選ぶことができ、深度はニードル針のバーブが不織布裏面まで貫通するような条件でかつニードルマークが強くでない範囲で設定することができる。また、ニードルパンチ後の不織布の見掛け密度は0.10g/cm以上であることが好ましい。ニードルパンチ後の不織布の見掛け密度が0.10g/cm未満の場合には、不織布を熱処理して得られる面積収縮率を15%より大きくする必要が生じ、均一で緻密な構造の不織布することが困難となる。より好ましくは、見掛け密度0.13〜0.20g/cmの範囲である。なお、不織布の見掛け密度は、1cmあたり0.7gの荷重をかけた状態で測定された厚み値を用いて算出する。
次に本発明の不織布に用いられるPVAについて詳述する。本発明の不織布を構成する極細繊維発生型多成分系繊維に用いられるPVAとしては、平均重合度(以下、単に重合度と略記する)が200〜500のものが好ましく、中でも230〜470の範囲のものが好ましく、250〜450のものが特に好ましい。重合度が200未満の場合には溶融粘度が低すぎて、安定な複合化が得られにくい。重合度が500を超えると溶融粘度が高すぎて、紡糸ノズルから樹脂を吐出することが困難となる。重合度500以下のいわゆる低重合度PVAを用いることにより、熱水で溶解するときに溶解速度が速くなるという利点も有る。
ここで言うPVAの平均重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定された値である。すなわち、PVAを再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められるものである。
P=([η]10/8.29)(1/0.62)
重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好適に達せられる。
本発明に用いられるPVAのケン化度は90〜99.99モル%の範囲であることが好ましく、93〜99.98モル%の範囲がより好ましく、94〜99.97モル%の範囲がさらに好ましく、96〜99.96モル%の範囲が特に好ましい。ケン化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く、熱分解やゲル化によって満足な溶融紡糸を行うことができないのみならず、生分解性が低下し、更に後述する共重合モノマーの種類によってはPVAの水溶性が低下し、本発明の複合繊維を得ることができない場合がある。一方、ケン化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することが困難である。
本発明で使用されるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。PVAを溶解した後のPVA含有廃液の処理には活性汚泥法が好ましい。該PVA水溶液を活性汚泥で連続処理すると2日間から1ヶ月の間で分解される。また、本発明に用いるPVAは燃焼熱が低く、焼却炉に対する負荷が小さいので、PVAを溶解した排水を乾燥させてPVAを焼却処理してもよい。
本発明に用いられるPVAの融点(Tm)は、160〜230℃が好ましく、170〜227℃がより好ましく、175〜224℃が特に好ましく、180〜220℃がとりわけ好ましい。融点が160℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し繊維強度が低くなると同時に、PVAの熱安定性が悪くなり、繊維化できない場合がある。一方、融点が230℃を超えると、溶融紡糸温度が高くなり紡糸温度とPVAの分解温度が近づくためにPVA繊維を安定に製造することができない。
PVAの融点は、DSCを用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味する。
本発明に用いられるPVAは、ビニルエステル単位を主体として有する樹脂をケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを容易に得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
本発明で使用されるPVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変性PVAであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、共重合単位を導入した変性PVAを用いることが好ましい。共重合単量体の種類としては、共重合性、溶融紡糸性および繊維の水溶性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中にPVA構成単位の1〜20モル%存在していることが好ましく、さらに4〜15モル%が好ましく、6〜13モル%が特に好ましい。さらに、α−オレフィンがエチレンである場合には、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が4〜15モル%、より好ましくは6〜13モル%導入された変性PVAを使用する場合である。
本発明で使用されるPVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、a、a`−アゾビスイソブチロニトリル、2,2`−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜150℃の範囲が適当である。
以上の方法により得られた緻密化された不織布に、得られる皮革様シート基体の表面平滑性を向上するために、必要に応じてカレンダーロールによる面平滑化を施し、そして、内部に水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸、凝固する工程、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を熱水で抽出除去することにより極細繊維発生型多成分系繊維を極細化する工程を経て皮革様シート基体を製造することができる。ここで、含浸する水系エマルジョンバインダー樹脂溶液には感熱ゲル化処理または増粘処理を施すことにより凝固、乾燥時のマイグレーションを抑制することが人工皮革の風合いの点から好ましい。
含浸する水系エマルジョンバインダー樹脂を構成する樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルエーテルコポリマー、ポリアクリル酸エステルコポリマー、ポリウレタン、ネオプレン、スチレンブタジエンコポリマー、シリコーン樹脂、ポリアミノ酸、ポリアミノ酸ポリウレタンコポリマーなどの合成樹脂または天然高分子樹脂、またはそれらの混合物等を挙げることができ、さらに必要によっては顔料、染料、架橋剤、充填剤、可塑剤、各種安定剤などを添加してもよい。なかでも、ポリウレタンあるいはこれに他の樹脂を加えたものは、柔軟な風合いが得られるので、高分子弾性体として好ましく用いられる。水系エマルジョンバインダー樹脂液中の樹脂濃度としては3〜40質量%が好ましい。
エマルジョンを含浸、凝固、乾燥させた後の不織布から、同不織布を構成している極細繊維発生型多成分系繊維のPVA成分を抽出除去する。抽出除去する方法としては、液流染色機、ジッガー等の染色機や、オープンソーパー等の精練加工機を用いることができるが特にこれらに限定される物ではない。用いられる抽出浴の水温としては、80〜95℃が好ましく、また好ましい操作方法として、該不織布を抽出浴に浸漬したのち、絞液する操作を複数回繰り返すことにより、PVA成分の大半ないし全部を抽出除去する。なお、この際に、不織布は水温により収縮を生じることがあり、それにより一層の緻密感および充実感が得られる場合もある。
このようにして得られた皮革様シート基体は、その表面を毛羽立て、さらに必要により柔軟化処理、染色処理することによりスエード調の人工皮革とすることができる。毛羽立てる方法としてはサンドペーパーや針布等を用いたバフがけを用いることができる。また、公知の方法により所望の条件にて、表面被覆層用の樹脂を塗布し、更にエンボス加工、柔軟化処理、染色などの処理を行うことにより、また表面を加熱溶融させて表面を平滑化することにより、銀付き調、または半銀付き調の人工皮革とすることもできる。これらの人工皮革は、シワが無く、天然皮革様の充実感、長繊維由来のドレープ性を有しており、衣料用、靴用、手袋用、鞄用、野球用グローブ用、ベルト用、ボール用またはソファー等のインテリア用といった製品用途の素材として好適なものである。
以下実施例により、本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、繊維の平均繊度は、繊維形成に使用した樹脂の密度と走査型電子顕微鏡を用いて数百倍〜数千倍程度の倍率にて観察される、シートを構成する繊維の断面の面積とから計算されたものである。また、実施例中で記載される部および%は、特にことわりのない限り質量に関するものである。
樹脂の融点は、DSC(TA3000、メトラー社製)測定器を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した場合の樹脂の融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を採用した。
製造例1
[水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の製造]
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9kg/cmとなるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、AMVと略すこともある。)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9kg/cmに、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて610ml/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液200g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニルの酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してケン化を行った。アルカリ添加後約2分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で1時間放置してケン化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVAを得た。
得られたエチレン変性PVAのケン化度は98.4モル%であった。また該変性PVAを灰化させた後、酸に溶解したものを用いて原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有量は、変性PVA100質量部に対して0.03質量部であった。また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをd6−DMSOに溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレンの含有量は10モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5でケン化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置してケン化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたエチレン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ330であった。該精製PVAの1,2−グリコール結合量および水酸基3連鎖の水酸基の含有量を5000MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)装置による測定から前述のとおり求めたところ、それぞれ1.50モル%および83%であった。さらに該精製された変性PVAの5%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSCを用いて、前述の方法により融点を測定したところ206℃であった。
上記水溶性熱可塑性PVAを海成分に用い、イソフタル酸変性度6モル%のポリエチレンテレフタレ−トを島成分とし、極細繊維発生型多成分系繊維1本あたりの島数が25島となるような溶融複合紡糸用口金を用い、海成分/島成分の質量比30/70となるように260℃で口金より吐出した。紡速が4500m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、平均繊度2.0デシテックスの長繊維をネットで捕集し、30g/mの長繊維ウェブを得た。
上記長繊維ウェブ8枚相当分をクロスラッピングにより重ね合わせ、針折れ防止油剤をスプレー付与した。次いで、針先端からバーブまでの距離が5mmの1バーブの針を用い、針深度10mmにて両面から交互に3600P/cmのニードルパンチングをおこない、長繊維ウェブを絡合せしめ、長繊維不織布を得た。このニードルパンチ処理による面積収縮率は42%であり、ニードルパンチ処理後の長繊維絡合不織布の層間剥離強力は7kg/2.5cmであった。
上記長繊維絡合不織布に該PVAに対して30質量%の量の水を付与して、相対湿度95%、70℃の雰囲気下で、3分間張力がかからない状態で放置して熱処理により収縮を生じさせ、不織布の見かけの繊維密度を向上させ、緻密化された不織布を得た。この緻密化処理による面積収縮率は45%であり、また該不織布の目付は750g/m2、見かけ密度は0.46g/cmであった。ついで該緻密化不織布シートを乾熱ロールプレスし、水系ポリウレタンエマルジョンとしてスーパーフレックスE−4800(第一工業製薬株式会社製)を含浸付与し、150℃で乾燥およびキュアリングを施し、樹脂繊維比率R/F=18/82の樹脂含有不織布シートを得た。ついで、95℃の熱水中でPVAを溶解除去し、極細繊維よりなる極細長繊維絡合シート(皮革様シート基体)を得た。該皮革様シート基体を構成する極細長繊維の単繊度は0.1デシテックスであった。得られた皮革様シート基体に、離型紙上で作成した厚さ50μmのポリウレタン皮膜を二液型ウレタン系接着剤を用いて接着し、乾燥および架橋反応を十分に行った後、離型紙を剥ぎ取り銀付き調人工皮革を得た。得られた銀付き調人工皮革は、良好な折り曲げ皺と天然皮革様の充実感を有する柔軟なシートであった。
実施例1において、PVAに対して10質量%の量の水を付与して、120℃の高圧スチームをスプレーノズルから不織布に直接噴出させながら、1分間で収縮を付与する以外は実施例1と同条件で極細長繊維絡合不織布を作製した。熱収縮後の面積収縮率は43%であった。得られた高密度長繊維絡合シートを実施例1と同様の工程により、皮革様シートを作製したところ、良好な折り曲げ皺と天然皮革様の充実感を有する柔軟なシートであった。
比較例1
実施例1において、水を付与しない以外は実施例1と同条件で極細長繊維絡合不織布を作製した。熱収縮後の面積収縮率は13%であった。得られた高密度長繊維絡合シートを実施例1と同様の工程により、皮革様シートを作製したところ、風合いはよいものの、折れシワが発生しやすく、充実感が不足しており、皮革様シートの素材として不適格なものであった。
比較例2
実施例1において、水を付与することなく70℃雰囲気下で乾熱収縮させた以外は、実施例1と同条件で極細長繊維絡合不織布を作製した。熱収縮後の面積収縮率は10%であった。高密度長繊維絡合不織布を実施例1と同様の工程により、皮革様シートを作製したところ、風合いはよいものの、折れシワが発生しやすく、充実感が不足しており、皮革様シートの素材として不適格なものであった。
本発明の、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を一成分とする極細繊維発生型多成分系繊維からなる緻密な絡合不織布を製造する方法によれば、皮革様シートの基体に適した極細繊維発生型多成分系繊維からなる緻密な絡合不織布を得ることができ、該絡合不織布の内部に水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸することで、化学薬品などを用いることなく水のみで処理する方法で皮革様シート基体を製造することができる。また、化学薬品などを用いることなく、単なる水で処理することにより、皮革様基体としての複合繊維絡合シートを得ることができるため、環境対応型の皮革様シート基体であると言える。本発明における絡合不織布の収縮処理方法方法により、良好な折り曲げ皺と天然皮革様の腰の有るやわらかさを両有する皮革様シート基体の製造に最適な長繊維絡合不織布の製造を安定化させ、品質を改善するための絡合不織布の収縮方法を提供することを可能としたものである。本発明により得られる皮革様シートは、靴、ボール類、家具、乗物用座席、衣料、手袋、野球用グローブ、鞄、ベルトまたはバッグで代表される皮革製品に適用できる。

Claims (4)

  1. 水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を一成分とする極細繊維発生型多成分系繊維からなる緻密な絡合不織布を製造する方法において、該繊維を絡合処理して得られる絡合不織布に、該水溶性樹脂成分の5質量%以上の水を付与して、相対湿度75%以上の雰囲気下で、熱処理して該不織布の面積収縮率が15%以上となるように収縮させることを特徴とする緻密な絡合不織布の製造方法。
  2. 絡合不織布が長繊維不織布である請求項1記載の製造方法。
  3. 水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.99モル%および融点が160℃〜230℃である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により得られた緻密な不織布に水系エマルジョンバインダー樹脂を含浸し、凝固した後に該水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂を抽出除去する皮革様シート基体の製造方法。
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