JP2006232986A - 導電性高分子並びにそれを用いた有機電子デバイス及び電界効果トランジスタ - Google Patents

導電性高分子並びにそれを用いた有機電子デバイス及び電界効果トランジスタ Download PDF

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Abstract

【課題】 キャリア移動が有利となる二次元的導電経路を有する結晶構造、結晶子サイズ、及び/又は結晶化度が得られる導電性高分子を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表わされる構造の導電性高分子であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.3以下であり、且つ、隣り合うチオフェン環の結合に対する2,5’−結合の占める割合が95%以上である。
Figure 2006232986

(式(1)中、Rは、炭素数4以上のアルキル基を表わし、X及びX’はそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表わし、nは、110以上、220以下の整数を表わす。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、導電性高分子並びにそれを用いた有機電子デバイス及び電界効果トランジスタに関し、より詳しくは、アルキルチオフェン環を繰り返し単位として有する導電性高分子と、その導電性高分子を半導体層に含有する有機電子デバイス及び電界効果トランジスタに関する。
近年、有機半導体を半導体層に用いた有機電界効果トランジスタの研究開発が活発に行なわれている。有機電界効果トランジスタにおいては、有機半導体層の持つ機械的フレキシビリティを利用したフレキシブルシートディスプレイの画素駆動素子への応用等が期待されている。また、溶媒に可溶な有機半導体の場合、有機半導体の溶液からの塗布により半導体層を形成することができるため、製造プロセスにおいてコストのかかる工程を経て作製されるシリコンベースの電界効果トランジスタと比べ、安価に製造することが可能となるという利点を有する。
しかし、有機電界効果トランジスタを画素駆動素子へ応用する場合などに必要な高いキャリア移動度を得るためには、有機半導体層において有機半導体低分子或いは有機半導体高分子をキャリア移動が有利なように配列、配向させることが効果的であり、また、その配列、配向部分を大きくすること、及び/又はその配列、配向部分が有機半導体層において占める割合を高くすることが効果的である(非特許文献1、非特許文献2、特許文献1、特許文献2など参照)。
各種の有機半導体に対し、種々の方法により上述のような配列、配向を得る試みがなされている。例えば、導電性高分子の場合、導電性高分子が本質的に持つ一次元主鎖方向の鎖内導電経路を活かすように、高分子主鎖を電界効果トランジスタのソース電極からドレイン電極の方向へと配向させる試みがなされている。ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ジチオフェン)などの液晶相を示す可溶性導電性高分子を半導体層に用いる場合、前述した配向を促す目的で、ソース電極からドレイン電極の方向へラビング処理されたポリイミド絶縁層上に溶液を塗布して半導体層を形成した後、等方相に至るまで加熱してから急冷することにより、高分子主鎖をソース電極からドレイン電極の方向に配向させている。この方法で作製された、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ジチオフェン)からなる半導体層を有する電界効果トランジスタにおいては、0.01〜0.02cm2/Vs程度の比較的高いキャリア移動度が得られている(非特許文献2など参照)。
一方、繰り返し単位の結合様式の規則性が高い立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)などの可溶性導電性高分子においては、溶液塗布からの薄膜形成において、図1に示すように、高分子主鎖内の隣接チオフェン間同士の平面性が高い構造をとり、その結果として強いπ共役を示す。なお、図1は、立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)が自己組織的に形成する、二次元的導電経路を有する結晶構造を説明するための模式図であり、符号3は基板を表わしている。これとともに、隣接高分子鎖間の相互作用も強くなるような主鎖間π−πスタッキングの配列(図1の符号1の方向)をとり、この配列が更に上下方向に積層する(図1の符号2の方向)結晶構造を自己組織的に形成し易い性質を有している。この強い隣接鎖間相互作用の結果、前述した鎖内導電経路に加え有効な鎖間導電経路も形成するため、二次元的な導電経路を有するようになる(非特許文献1、非特許文献3など参照)。
この二次元的導電経路を有する結晶構造を利用することにより、立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を半導体層に用いた電界効果トランジスタにおいては、0.05〜0.1cm2/Vsの高いキャリア移動度が報告されている(非特許文献1、非特許文献4など参照)。
有機電界効果トランジスタの有機半導体層に前述した二次元的導電経路を有する結晶構造を利用する方法は、前述した液晶相を利用し高分子主鎖をソース電極からドレイン電極の方向へと配向させ鎖内導電経路のみを利用する方法に比べ、キャリア移動に対して有利であり、また、この結晶構造が溶液塗布後の薄膜形成過程で自己組織的に形成しやすいことから、製造プロセス的にも有利である。
有機電界効果トランジスタの有機半導体層に前述した二次元的導電経路を有する結晶構造を用い、キャリア移動を更に有利にするためには、その結晶のサイズを大きくする(結晶子を大きくする)こと、及び/又は、その結晶が有機半導体層において占める割合を高くする(結晶化度を高くする)ことが効果的である。これら二次元的導電経路を有する結晶構造、結晶子サイズ、結晶化度は、溶液濃度、固体薄膜に至るまでの溶媒蒸発速度などの薄膜形成プロセスに関わる因子に影響され、キャリア移動が有利となるようプロセス因子の制御がなされている(非特許文献1、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、特許文献3など参照)。
Nature,1999年,401巻,p.685 Applied Physics letters,2000年,77巻,p.406 Physical Review B,2001年,63巻,p.125204 Synthetic Metals,1999年,102巻,p.857 Macromolecules,1998年,31巻,p.7273 Journal of Applied Physics,2003年,93巻,p.6137 Advanced Materials,2003年,15巻,p.1519 特開平11−195790号公報 特表2003−502874号公報 特開2003−261654号公報
しかしながら、前述した二次元的導電経路を有する結晶構造、結晶子サイズ、結晶化度に最も強く影響を及ぼす材料としての立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)については、キャリア移動が有利となるよう、結合様式の立体規則性を高めるための制御は行なわれている(非特許文献1、非特許文献7、特許文献3など参照)が、キャリア移動度の向上はいまだ不十分であり、より高いキャリア移動度が得られる立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)が求められていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、ポリ(3−アルキルチオフェン)等の導電性高分子であって、キャリア移動が有利となる二次元的導電経路を有する結晶構造、結晶子サイズ、及び/又は結晶化度が得られる導電性高分子を提供すること、並びに、その導電性高分子を用いた、キャリア移動が有利な半導体層を有する電界効果トランジスタを提供することに存する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、高い立体規則性を有する立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)構造の導電性高分子であって、繰り返し単位である3−アルキルチオフェン単位の平均繰り返し数が特定範囲に存在し、且つ、シャープな分子量分布を有するものが、高い立体規則性を有するものの平均繰り返し数及び分子量分布が前記要件を満たさない従来の立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)と比べて、溶液塗布による薄膜形成に用いた場合に、得られた薄膜において前述した二次元的導電経路を有する結晶の結晶化度が高くなること、並びに、この導電性高分子を用いることにより、キャリア移動が有利な半導体層を形成できることを見出し、上記課題が効果的に解決されるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(1)で表わされる構造の導電性高分子であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.3以下であり、且つ、隣接するチオフェン環の結合に対する2,5’−結合の占める割合が95%以上であることを特徴とする、導電性高分子に存する(請求項1)。
Figure 2006232986
(式(1)中、Rは、炭素数4以上のアルキル基を表わし、X及びX’はそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表わし、nは、110以上、220以下の整数を表わす。)
また、本発明の別の要旨は、上述の導電性高分子を含有する半導体層を備えたことを特徴とする、有機電子デバイスに存する(請求項2)。
また、本発明の別の要旨は、基板と、該基板上に設けられた絶縁体層と、該絶縁体層により隔離されるように設けられたゲート電極及び電荷輸送層と、該電荷輸送層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極とを備え、該電荷輸送層が、上述の導電性高分子を含有する半導体層であることを特徴とする、電界効果トランジスタに存する(請求項3)。
本発明の導電性高分子によれば、キャリア移動が有利となる二次元的導電経路を有する結晶構造、結晶子サイズ、及び/又は結晶化度を得ることができる。従って、本発明の導電性高分子を用いることによって、例えば電界効果トランジスタ等の有機電子デバイスにおいて、キャリア移動が有利な半導体膜を形成することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
[I.導電性高分子]
<I−1.導電性高分子の特徴>
本発明に係る導電性高分子は、下記一般式(1)で表わされる構造を有する立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(gel permeation chromatography:以下適宜「GPC」と略する。)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.3以下であり、且つ、隣り合うチオフェン環の結合のうち2,5’−結合の占める割合が95%以上であることを特徴とする。
Figure 2006232986
上記一般式(1)中、Rは、チオフェン環のβ炭素に結合した、炭素数4以上のアルキル基を表わす。アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状の何れであっても良く、これらが結合したものであっても良い。中でも、溶液塗布からの薄膜形成において、前述した二次元的導電経路を有する結晶構造を自己組織的に形成し易いという理由から、直鎖状アルキル基が好ましい。Rの炭素数の下限は上述の様に4以上であり、炭素数の上限は特に制限されないが、好ましくは12以下、より好ましくは10以下の範囲である。直鎖状アルキル基の具体例としては、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等が挙げられるが、中でもn−ヘキシル基が好ましい。
上記一般式(1)中、X及びX’は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表わす。中でも、得られる高分子が優れたキャリア移動を示す前述した二次元的導電経路を有する結晶構造を自己組織的に形成し易いという理由や、モノマーが入手し易い等の製造上の理由から、X及びX’は何れも水素原子であることが好ましい。
上記一般式(1)中、nは、チオフェン環の平均繰り返し数を表わす整数である。nの値の下限は通常110以上、好ましくは130以上、より好ましくは150以上である。nの値がこの下限の値よりも大きいと、溶液塗布から薄膜形成の過程で経る高濃度液膜状態において、高分子鎖間の相互作用が弱い溶解した状態よりも高分子鎖間の相互作用が強くなり前述した二次元的導電経路を有する結晶構造を自己組織的に形成し易く、且つ、またこの結晶の結晶子サイズが大きくなり易い、及び/又は、結晶化度が高くなり易いという理由から好ましい。一方、nの値の上限は、通常220以下、好ましくは210以下、より好ましくは190以下の範囲である。nの値がこの上限の値よりも小さいと、溶液塗布から薄膜形成の過程で経る高濃度液膜状態においてゲル化し難いために、前述した二次元的導電経路を有する結晶構造を自己組織的に形成し易く、且つ、またこの結晶の結晶子サイズを大きくし易い、及び/又は、結晶化度を高くし易いという理由から好ましい。
なお、チオフェン環の平均繰り返し数nは、公知の方法(例えばGPC、質量分析法など)によって求めることができる。例えば、GPCにより求める場合、以下の式を使用すればよい。
Figure 2006232986
上記一般式(1)において、隣り合うチオフェン環の結合のうち2,5’−結合の占める割合は、上述のように通常95%以上である。中でも96%以上、更には97%以上の範囲であることが好ましい。
本明細書において「隣り合うチオフェン環の結合のうち2,5’−結合の占める割合」とは、隣り合うチオフェン環のα−炭素間において可能な3種類の結合(2,5’−結合、2,2’−結合、5,5’−結合)様式のうち、2,5’−結合(頭尾結合:head-to-tail)様式の占める割合(%)のことを表わす。以下、この割合のことを適宜「立体規則性」又は「HT(head-to-tail)」と呼ぶものとする。
ここで「2,5’−結合(頭尾結合)様式」とは、具体的には下記式(2)で表わされる結合様式のことを表わす。
Figure 2006232986
上記式(2)中、Rは、上記一般式(1)と同じ定義を表わす。
導電性高分子の立体規則性は、公知の手法により求めることが可能である。例えば、Journal of American Chemical Society,1995年,117巻,p.233(以下適宜「参考文献A」という。)に記載の方法で算出される。具体的には、1H−NMRでチオフェン環上のアルキル基のα−プロトンに帰属されるシグナルの積分比から算出される。すなわち、立体規則性の高いポリ(3−アルキルチオフェン)について、重クロロホルム溶媒中で1H−NMR測定を行なうと、チオフェン環のβ−炭素上のプロトンに帰属されるシグナルが本質的に6.98ppm(テトラメチルシラン(TMS)基準)にのみシングレットとして観測されるが、そのようなスペクトルにおいて、2.80ppm及び2.58ppm(テトラメチルシラン(TMS)基準)に現れるチオフェン環上のアルキル基のα−プロトンに帰属されるプロトンシグナルの積分値をそれぞれA、Bとすると、本発明において定義される立体規則性(%)は、以下に示す式で表わされる。
Figure 2006232986
また、本発明に係る導電性高分子は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が、上述のように通常1.3以下である。この比(Mw/Mn)の値が前記範囲内であることによって、得られる導電性高分子は、前述した二次元的導電経路を有する結晶構造を自己組織的に形成し易く、且つ、この結晶の結晶子サイズを大きくし易く、及び/又は、結晶化度を高くし易くなるという効果が得られる。中でも、比(Mw/Mn)の値は1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることが好ましい。
なお、本明細書における「重量平均分子量(Mw)」及び「数平均分子量(Mn)」と
は、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)のことを表わす。
上述の様に、本発明の導電性高分子は、π共役主鎖において一次元バンド構造を形成できる鎖長近辺以上における特定範囲の鎖長に値する特定範囲の分子量を有するとともに、単分散に近いシャープな分子量分布を有し、且つ、高い立体規則性を有するため、溶液塗布からの薄膜形成において、高分子主鎖内の隣接チオフェン間同士の平面性が高い構造をとり易く、その結果として強いπ共役を示すとともに、隣接高分子鎖間の相互作用も強くなるような主鎖間π−πスタッキングの配列を取り、この配列が更に上下方向に積層する結晶構造(前述の図1参照)、即ち、二次元的導電経路を有する結晶構造を自己組織的に形成し易く、また、この結晶の結晶子サイズを大きくし易い、及び/又は、結晶化度を高くし易いために、薄膜において優れたキャリア移動を有する材料となる。
<I−2.導電性高分子の製造方法>
本発明の導電性高分子は、例えば、通常の立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)と同様に、Ni触媒やPd触媒等の遷移金属触媒の存在下で、下記一般式(3)で表されるアルキルチオフェン誘導体(以下「アルキルチオフェン誘導体(3)」と呼ぶ。)をカップリング反応させることにより製造される。
Figure 2006232986
(上記一般式(3)中、Mは、Mg又はZnを表わし、Rは、式(3)における同符号の基と同じ基を表わす。)
特に、本発明の特定範囲の導電性高分子を得るためには、この触媒反応系に種々のハロゲン化アルキルチオフェンを加える方法、即ち、遷移金属触媒の存在下で、アルキルチオフェン誘導体(3)と種々のハロゲン化アルキルチオフェンとをクロスカップリング反応させる方法が好ましい。
ここで、アルキルチオフェン誘導体(3)は、N−ブロモスクシンイミドと3−アルキルチオフェンとの反応により容易に製造される2−ブロモ−3−アルキルチオフェン、又は2,5−ジブロモ−3−アルキルチオフェンから、Journal of American Chemical Society,第117巻,p.233,1995年や、特開2000−230040号公報、或いはこれらの文献において引用されている各種文献に記載の種々の方法によって製造される。
アルキルチオフェン誘導体(3)との反応に使用されるハロゲン化アルキルチオフェンの具体例としては、2−ブロモ−3−アルキルチオフェン、2−ヨード−3−アルキルチオフェンが挙げられる。
アルキルチオフェン誘導体(3)に対するハロゲン化アルキルチオフェンの使用量を増やす程、得られるポリマーの分子量は低くなる。従って、アルキルチオフェン誘導体(3)に対する好ましいハロゲン化アルキルチオフェンの使用量は、使用する触媒、反応温度、反応時間等に左右されるため特に限定されないが、後述する実施例で示した条件下では、通常1当量以上、好ましくは2当量以上であり、また、通常30当量以下、好ましくは20当量以下の範囲である。
ハロゲン化アルキルチオフェンとアルキルチオフェン誘導体(3)との混合物は、それぞれを独立に調製後混合する方法や、アルキルチオフエン誘導体(3)製造時に予め上記のハロゲン化アルキルチオフェンを過剰に共存させる方法等が挙げられる。
上記の様にして得られた混合物を遷移金属触媒の存在下で反応させることにより、本発明の導電性高分子が得られる。この際に用いられる遷移金属触媒は、通常、周期表(18族長周期型周期表)の3〜10族、中でも8〜10族、特に10族に属する遷移金属の錯体が好ましい。具体的には、公知のTi、Zr、Y、Cr、Fe、Co、Ni、Pd錯体が挙げられるが、中でもNi、Pd錯体が好ましく、安価で且つ高い立体規則性を有するポリマーが得られる理由から、Ni錯体が特に好ましい。また、使用する触媒の配位子としては、後述する本実施例で用いるdppe(1,2−ジフェニルホスフィノエタン)以外にも、PFh3、dppm(ジフェニルホスフイノメタン)、dppp(1,3−ジフェニルホスフィノプロパン)、dppb(1,4−ジフェニルホスフィノブタン)等のホスフィンが挙げられるが、テトラメチルエチレンジアミン、ビピリジン等のジアミンなどの公知の窒素系配位子等でもよい。好ましい触媒の具体例としては、得られるポリマーの立体規則性が高い理由から、NiCl2(dppe)、NiCl2(dppp)が挙げられる。
また、本発明の導電性高分子を製造する別の方法としては、水素存在下でアルキルチオフェン誘導体(3)を上記の遷移金属触媒を用いて重合させる方法や、好ましい触媒の具体例として上に挙げたNi触媒におけるNi上の配位子をdppm、dppbに変化させる方法等が挙げられる。これらの手法を用いる場合、反応時間、反応温度、反応圧力、反応濃度等は適宜調整すればよい。
更に、通常のNiCl2(dppe)やNiCl2(dppp)等のNi触媒やPd触媒を用いたアルキルチオフェン誘導体(3)のカップリング反応も原理的には採用可能である。しかし、この場合、製造される立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)は、本発明の導電性高分子よりチオフェン環の平均繰り返し数(n)が大きいか、分子量分布が広いかの何れかであるため、特定の有機溶媒(例えばテトラヒドロフランやクロロホルム等)による抽出精製により所望の導電性高分子とする必要があり、操作が煩雑であるばかりか精製効率も悪いため本発明の導電性高分子を得る方法としては、上述したような種々の製造方法が好ましい。
本発明の導電性高分子の合成の際に用いられる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族又は脂環式飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル等のニトリル系溶媒等;並びにこれらの混合物などが挙げられる。有機溶媒中における上記の遷移金属触媒の濃度は、通常0.001mmo1/L以上、好ましくは0.01mmo1/L以上、より好ましくは0.1mmo1/L以上、また、通常10mmo1/L以下、好ましくは1mmo1/L以下の範囲である。
本発明の導電性高分子の合成の際の重合温度は、通常は−78℃以上であり、また、通常は250℃以下、好ましくは150℃以下である。更に、反応時間は、通常10分以上、好ましくは1時間以上であり、通常48時間以下、好ましくは24時間以下である。
更に、得られた生成物から、溶剤分割又はカラム分離等の手法によって、目的とする導電性高分子(特定範囲のMw/Mn比、特定範囲のn、特定の立体規則性を有する本発明の導電性高分子)を単離・精製することも可能である。
<I−3.導電性高分子の特性及び用途>
本発明の導電性高分子は、絶縁体よりは電気を通しやすいが、本質的な電荷を持っていないために、金属領域の電気伝導度よりは電気を通しにくいものである。その電気伝導度は通常10-6S/cm以下、好ましくは10-7S/cm以下、また、通常10-12S/cm以上、好ましくは10-11S/cm以上である。
また、本発明の導電性高分子は、好ましくは可溶性である。ここで「可溶性」とは、常温、常圧の条件下において、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、THF等の溶媒に、0.1mg/mL以上の濃度で溶解することをいう。
本発明の導電性高分子は、繰り返し単位間の結合の立体規則性が高い上に、単分散に近いシャープな分子量分布を有するため、溶液塗布から薄膜形成の過程で経る高濃度液膜状態においてゲル化し難い。また、繰り返し単位の平均繰り返し数が所定範囲内に存在することにより、溶解した状態よりも鎖間相互作用が強くなり、その結果、溶液塗布からの薄膜形成において二次元的導電経路を有する結晶構造を自己組織的に形成し易く、且つ、この結晶の結晶子サイズを大きくし易い、及び/又は、結晶化度を高くし易いという効果を有する。従って、本発明の導電性高分子を用いることにより、キャリア移動が有利な半導体薄膜を形成することが可能である。
以上の効果を有することから、本発明の導電性高分子は、各種の有機電子デバイスの電荷輸送材料として、好適に使用することができる。有機電子デバイスの中でも、電界効果トランジスタ(FET)や、光により起電力を生じる太陽電池、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子、有機EL素子などの電荷輸送材料として用いることが好ましい。
[II.有機電子デバイス]
本発明に係る有機電子デバイスは、本発明の導電性高分子を有機半導体として用い、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気、又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置である。例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子が挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振が挙げられる。現在シリコン等で実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー等、あるいはこれらの素手の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。
有機電子デバイスのより具体的な例としては、Physics of Semiconductor Devices, 2nd Edition,S. M. Sze著,Wi1ey-Interscience刊,1981年)に記載されているものを挙げることができる。
本発明の有機デバイスの中でも特に好ましいのは、上述のように、電界効果トランジスタ(FET)である。図4(a)〜(c)はそれぞれ、本発明の有機電子デバイスの一種である電界効果トランジスタ(以下「本発明の電界効果トランジスタ」或いは「本発明のFET」と略する場合がある。)の構成例を模式的に示す断面図である。本発明の電界効果トランジスタの基本的な構造は、図4(a)〜(c)に示すように、支持基板100上に、絶縁体層300と、この絶縁体層300により隔離されたゲート電極200及び電荷輸送層400と、この電荷輸送層400に接するように設けられたソース電極500及びドレイン電極600とを有するものである。各層が積層される順番は特に制限されず、図4(a)〜(c)の何れの順序で積層されていてもよい。更には、本発明の電界効果トランジスタは何ら図4(a)〜(c)に示す構造の電界効果トランジスタに限定されず、更に図4(a)〜(c)に示される層以外の層が形成されていても良い。
本発明の導電性高分子を有機電子デバイスに用いる場合には、基板等の上に成膜して半導体膜として用いることが適当である。
成膜対象となる基板の材料は、電界効果トランジスタ及びその上に作製される表示素子、表示パネル等を支持できるものであれば、その種類は特に制限されない。例としては、ガラス等の無機基板やポリマーからなるプラスチック基板が挙げられる。中でも好ましくは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、アモルファスポリオレフィン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ビニル系ポリマー、ポリパラバン酸、ポリシルセスキオキサン、及びシロキサンよりなる群から選択されるプラスチック基板が好適である。更に、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル類やポリカーボネート等の汎用樹脂が強度やコストの点から好ましく、また、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸等の縮合系高分子や、熱処理などにより不溶化が行なえるポリビニルフェノール等の架橋体が耐熱性や耐溶剤性の点から好ましい。支持基板の構成材料としては、特に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが好ましく、最も好ましいのはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル及びポリイミドである。
導電性高分子を成膜する方法も特に制限はなく、公知の方法を用いて成膜することができる。例えば、導電性高分子を有機溶媒に溶解させた溶液を用いた塗布プロセスは、簡便に多層構造素子を作製する場合に好適である。
塗布の方法としては、溶液をたらして乾燥するだけのキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、更にはこれらの手法を複数組み合わせた方法を用いることができる。更に、塗布に類似の技術として、水面上に形成した単分子膜を基板に移し積層するラングミュア・ブロジェット法、液晶や融液状態を2枚の基板で挟んだり毛管現象で基板間に導入したりする方法等も挙げられる。
本発明の導電性高分子を用いた半導体膜の膜厚は特に制限されない。先に例示した電界効果トランジスタの場合、素子の特性は必要な膜厚以上であれば膜厚には依存しない。膜厚が厚くなると漏れ電流が増加してくることが多い。従って、好ましい膜厚は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上である。また、通常10μm以下、中でも500nm以下が望ましい。
また、本発明の導電性高分子は、それを単独で用いることはもちろんであるが、他の材料との混合で用いることもできるし、更には他の層との積層構造で用いることも出来る。
作製された半導体膜は、後処理により特性を改良することが可能である。例えば、加
熱処理により、成膜時に生じた膜中の歪みを緩和することができ、特性の向上や安定化を図ることができる。更に、酸素や水素等の酸化性或いは還元性の気体や液体にさらすことにより、酸化或いは還元による特性変化を誘起することもできる。これは例えば膜中のキャリア密度の増加或いは減少の目的で利用することができる。
有機電子デバイスを作製する際の電極や配線には、金、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、InO2、SnO2、ITO等の導電性の酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、等の導電性高分子及びそれに塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウムカリウム等の金属原子等のドーピングされた材料、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、等の半導体及びそのドーピングされた材料、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料や金属粒子を分散した導電性の複合材料等の、導電性を有する材料が用いられる。これらを形成する方法も、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等を用いることができる。また、そのパターニング方法も、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法及びこれらの手法を複数組み合わせた手法を利用することができる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去したり材料の導電性を変化させたりすることにより、直接パターンを作製することも利用できる。
形成した電荷輸送膜や電極、配線等の表面には、外気の影響を最小限にするために、保護膜を形成することができる。これには、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール等のポリマー膜、酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化膜や窒化膜等が挙げられる。ポリマー膜の形成方法としては、ポリマー溶液を塗布、乾燥する方法や、モノマーを塗布或いは蒸着して重合する方法等が挙げられる。更には、架橋処理を施したり、多層膜を形成することも可能である。無機物の膜の形成には、スパッタ法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、ゾルゲル法に代表される溶液プロセスでの形成方法も用いることができる。
本発明の有機電子デバイスは、その種類に応じて任意の用途に用いることができる。例えば、本発明の電界効果トランジスタは、ディスプレーのアクティブマトリクスのスイッチング素子として利用することが出来る。これは、ゲートに印加される電圧でソースとドレイン間の電流をスイッチング出来ることを利用して、ある表示素子に電圧を印加或いは電流を供給する時のみスイッチを入れ、その他の時間は回路を切断することにより、高速、高コントラストな表示を行なうものである。また、従来のアクティブマトリクスの代替としても、省エネルギープロセス、低コストプロセスの可能な素子として有利である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〔導電性高分子の調製〕
上述の参考文献Aに記載の方法により製造された立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を用い、溶剤分割及びカラム分離(日本分析工業製LC−908W型、カラムJAIGEL−5H及びJAIGEL−3H使用、展開溶媒トルエン)を行なうことにより、GPC(東ソー製HLC−8220型)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、及び、重量平均分子量(Mw)とGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、それぞれ下記の表1に示す値のポリ(3−ヘキシルチオフェン)を取得した。これらを下記の表1に従って、それぞれ実施例1及び比較例1〜7の導電性高分子と呼ぶ。
また、実施例1及び比較例1〜7の導電性高分子の重量平均分子量(Mw)と、モノマーである3−ヘキシルチオフェンの分子量(168)から、上述の式に基づいて、3−ヘキシルチオフェン環の平均繰り返し数(n)の値を算出した。その結果を下記の表1に示す。
また、これらの立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の立体規則性(以下適宜「HT」で表わす。)を、Varian製400MHz 1H−NMR INOVE400型を用い、前述した方法によって算出したところ、全て97〜98%であった。その結果を下記の表1に示す。
Figure 2006232986
〔評価1〕
上述の実施例1、比較例1、比較例2の導電性高分子を、それぞれトルエンに加熱溶解することにより、1.4重量%のトルエン溶液を調製した。これらの溶液を用いて、吸光度計測器(島津製作所製 UV-3100PC UV-VIS-NIR Scanning Spectrophotometer、密封可能型光路長1mmセル使用)を用い、紫外−可視吸収の室温における経時変化を測定した。その結果を図2に示す。610nm近辺の吸収ピークは、上述の非特許文献3、非特許文献5などに記載されているように、図1に示す結晶構造において、立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)主鎖における隣接チオフェン間同士の平面性が高いために起こる振電(バイブロニック)構造における0−0遷移に帰属される。従って、このピーク強度は、高濃度溶液における立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の凝集による、図1に示す結晶構造の形成の程度を表わしている。加熱溶解後はいずれの分子量の溶液においてもこのピークは観測されなかった。図2から分かるように、9時間後における実施例1の導電性高分子の溶液(図2の符号4)におけるピーク強度は、9時間後における比較例1の導電性高分子の溶液(図2符号5)におけるピーク強度、及び、16時間後における比較例2の導電性高分子の溶液(図2符号6)におけるピーク強度よりも強かった。
従って、立体規則性が97%以上、Mw/Mnが1.1以下の立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)において、重量平均分子量(Mw)が17880より大きく、37270より小さい範囲のもの、即ち、3−ヘキシルチオフェン環の平均繰り返し数nが、108より大きく、225より小さい範囲のもの(実施例1の導電性高分子)が、溶液塗布からの薄膜形成において、図1に示す結晶構造を形成し易いことが分かる。
〔評価2〕
上述の実施例1、比較例1、比較例4、比較例6、比較例7の導電性高分子を用い、ドライアルゴン雰囲気下で0.6重量%のトルエン溶液を調製し、2インチSi基板のヘキサメチルジシラザン処理を行なったSiO2膜(厚み2000Å)上にキャストして製膜した。膜厚は全て1μmであった。これらキャスト膜に対して、斜入射X線回折測定(リガク製 RINT 2000、インプレーンゴニオメーター使用)を行なった。主鎖間π−πスタッキングの方向は、図1に示すように基板(図1符号3)と平行となっており、膜面内での主鎖配向の異方性は見られなかった。測定結果を図3(a)、(b)、(c)に示す。図3(a)の回折ピークは主鎖間π−πスタッキング配列の基板に垂直方向への積層に由来する(符号7:1次の回折ピーク、符号8:2次の回折ピーク、符号9:3次の回折ピーク)。図3(b)は図3(a)の回折ピークにおける1次の回折ピーク近辺のものである。図3(c)の回折ピークは主鎖間π−πスタッキングに由来する。図3(b)から分かるように、実施例1の導電性高分子の立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を用いたキャスト膜の回折ピーク(符号10)面積は、比較例6の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク(符号11)面積、比較例4の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク(符号12)面積よりも広く、また、比較例7の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク(符号13)面積、比較例1の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク(符号14)面積よりも広い。また、図3(c)から分かるように、実施例1の導電性高分子を用いたキャスト膜の回折ピーク(符号15)面積は、比較例6、比較例4、比較例7の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク(符号16)面積、及び、比較例1の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク(符号17)面積よりも広い。
従って、立体規則性が97%以上、重量平均分子量(Mw)が17880より大きく、37270より小さい範囲の立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)においても、特にMw/Mnが1.1以下のもの(実施例1の導電性高分子)が、溶液塗布からの薄膜形成において、図1に示す結晶構造を形成し易いことが分かる。
以上の実施例及び比較例から、立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)は、立体規則性が97%以上でGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.1以下であり、重量平均分子量(Mw)から求められるチオフェン環の平均繰り返し数(n)が109以上、224以下であることが分かる。図1に示す二次元的導電経路を有する結晶構造を自己組織的に形成し易く、且つ、この結晶の結晶子サイズを大きくし易い、及び/又は、結晶化度を高くし易い
〔評価3〕
実施例1、比較例7の導電性高分子を用い、ドライアルゴン雰囲気下で0.6重量%トルエン溶液を調製し、2インチSi基板のヘキサメチルジシラザン処理を行なったSiO2膜(厚み2000Å)上にキャストして製膜した。膜厚は全て1μmであった。これらキャスト膜に対して真空蒸着法によりシャドウマスクを用いてチャネル長20μm、チャネル幅5mmの金ソース・ドレイン電極を形成し、トップコンタクト型電界効果トランジスタを作成した。電極厚みは約500Åであった。ゲート電圧を変化させ測定したソース・ドレイン間の電流−電圧特性(Keithley製 Model 2400 Source Meter, Model 6430 Sub- Femtoamp Remote Source Meter)における飽和電流領域から算出した移動度は、実施例1の導電性高分子を用いた電界効果トランジスタにおいて0.01cm2/Vsであり、比較例7の導電性高分子を用いた電界効果トランジスタにおいて0.005cm2/Vsであった。
従って、実施例1の導電性高分子を用いた半導体層の方が、比較例7の導電性高分子を用いた半導体層よりも、キャリア移動に対して有利であった。
本発明の導電性高分子は、各種の有機電子デバイスの半導体層用材料として、好適に使用することができる。中でも、電界効果トランジスタ(FET)や、光により起電力を生じる太陽電池、光電流を生じるフォトダイオード、フォトトランジスター等の光素子、有機EL素子などの電荷輸送材料として用いることが好ましい。
導電性高分子の一種である立体規則的ポリ(3−アルキルチオフェン)が自己組織的に形成する、二次元的導電経路を有する結晶構造を説明するための模式図である。 実施例1、比較例1、比較例2の導電性高分子を加熱溶解させた1.4重量%トルエン溶液に対する紫外−可視吸収の室温における経時変化を測定した結果である。 (a),(b),(c)は、実施例1、比較例1、比較例4、比較例6、比較例7の導電性高分子の0.6重量%トルエン溶液からのキャスト膜に対する斜入射X線回折測定の結果を表わす図で、(a)は、導電性高分子の主鎖間π−πスタッキング配列の基板に垂直方向への積層に由来する回折ピークを表わす図、(b)は、(a)における1次の回折ピーク近辺を表わす図、(c)は、導電性高分子の主鎖間π−πスタッキング配列に由来する回折ピークを表わす図である。 (a),(b),(c)は何れも、本発明の有機電子デバイスの一種である電界効果トランジスタの構造例を示す断面図である。
符号の説明
1 主鎖間π−πスタッキング配列の方向
2 主鎖間π−πスタッキング配列の積層方向
3 基板
4 実施例1の導電性高分子の溶液の9時間後におけるスペクトル
5 比較例2の導電性高分子の溶液の9時間後におけるスペクトル
6 比較例1の導電性高分子の溶液の16時間後におけるスペクトル
7 主鎖間π−πスタッキング配列の基板に垂直方向への積層に由来する1次の回折ピーク
8 主鎖間π−πスタッキング配列の基板に垂直方向への積層に由来する2次の回折ピーク
9 主鎖間π−πスタッキング配列の基板に垂直方向への積層に由来する3次の回折ピーク
10 実施例1の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク
11 比較例6の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク
12 比較例4の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク
13 比較例7の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク
14 比較例1の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク
15 実施例1の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク
16 比較例6の導電性高分子、比較例4の導電性高分子、比較例7の導電性高分子のキャスト膜の回折ピーク
17 比較例1の導電性高分子の立体規則的ポリ(3−ヘキシルチオフェン)キャスト膜の回折ピーク
100 支持基板
200 ゲート電極
300 絶縁体層
400 電荷輸送層(半導体層)
500 ソース電極
600 ドレイン電極

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で表わされる構造の導電性高分子であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.3以下であり、且つ、隣り合うチオフェン環の結合に対する2,5’−結合の占める割合が95%以上である
    ことを特徴とする、導電性高分子。
    Figure 2006232986
    (式(1)中、
    Rは、炭素数4以上のアルキル基を表わし、
    X及びX’はそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表わし、
    nは、110以上、220以下の整数を表わす。)
  2. 請求項1記載の導電性高分子を含有する半導体層を備えた
    ことを特徴とする、有機電子デバイス。
  3. 基板と、
    該基板上に設けられた絶縁体層と、
    該絶縁体層により隔離されるように設けられたゲート電極及び電荷輸送層と、
    該電荷輸送層に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極とを備え、
    該電荷輸送層が、請求項1記載の導電性高分子を含有する半導体層である
    ことを特徴とする、電界効果トランジスタ。
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