JP2006225686A - 金属体、レンズマウント、及び金属の表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 6価クロムを使用せず、しかも、6価クロムを使用した場合と匹敵する強度と耐摩耗性を有する金属体を提供する。
【解決手段】 真鍮からなるレンズマウント1の表面部2に、表面側から、ニッケル系鍍金層、純ニッケル層、3価クロム層がこの順に形成されている。3価クロム層は6価クロム層に匹敵する硬度と耐摩耗性を有するが、鍍金層が厚くできず、かつ真鍮との密着性が悪いので、その分をニッケル系鍍金層を鍍金することで補っている。純ニッケル層は、光沢を出すために使用されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 真鍮からなるレンズマウント1の表面部2に、表面側から、ニッケル系鍍金層、純ニッケル層、3価クロム層がこの順に形成されている。3価クロム層は6価クロム層に匹敵する硬度と耐摩耗性を有するが、鍍金層が厚くできず、かつ真鍮との密着性が悪いので、その分をニッケル系鍍金層を鍍金することで補っている。純ニッケル層は、光沢を出すために使用されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、摺動性と硬度に優れた金属体及びレンズマウント、さらには、金属体に摺動性と硬度を与える表面処理方法に関するものである。
カメラ用レンズマウントは、カメラ本体とレンズを結合する部分で、交換レンズの着脱の繰り返しに耐えるため、強度(高硬度)と耐磨耗性(摺動性)が必要となる。この要望に応えるものとして、従来は、レンズマウントの材質である真鍮に、強度と耐摩耗性を有する6価クロム鍍金処理を施して使用していた。
又、自動車や建築物等の表面処理方法の技術分野においては、例えば特開平10−251870号公報(特許文献1)に、皮膜構成として、基板側から電気ニッケル、無電解ニッケルリン、6価クロム鍍金を行い、耐食性を向上させる方法が開示されている。
しかし、6価クロム鍍金は有害化学物質である6価クロムを多量に使用しており、PRTR,RoHS指令対策の観点からも今後6価クロム鍍金を使用し続けるのは難しい。
そこで、これらの問題を解決する為に、多くの方法が提案されている。例えば、実開昭63−74628号公報(特許文献2)には、レンズマウント部材の摺動面にレ−ザ−ビ−ム又は電子ビ−ムによって微細穴をあけ、微細穴内に潤滑油を含浸し摺動性を向上させる方法が開示されている。また、特開2004−21170号公報(特許文献3)には、プラスチックと金属の一体成形により、レンズマウントを形成し、軽量化、低コスト化を図る方法が開示されている。
しかしながら、前記実開昭63−74628号公報に記載される方法では、レ−ザ−ビ−ム又は電子ビ−ムを使用するため、製造工程が複雑で高コストとなる。また、特開2004−21170号公報に記載される方法では、6価クロム鍍金を使用しているレンズマウントと比較して磨耗性が不十分である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、6価クロムを使用せず、しかも、6価クロムを使用した場合と匹敵する強度と耐摩耗性を有する金属体及びレンズマウント、さらには、金属に、6価クロムを使用せず、しかも、6価クロムを使用した場合と匹敵する強度と耐摩耗性を与える表面処理方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための第1の手段は、金属からなる基体の表面の一部又は全部に、当該基体の表面側から、ニッケル系鍍金層、3価クロム層がこの順に形成されていることを特徴とする金属体である。
6価クロム層と同等の硬さ(強度)と耐摩耗性(摺動性)を有しているものとして、3価クロム層が考えられる。発明者等の実験によると、マルテンス硬度(荷重1mN)は、6価クロムが約12000、3価クロムが約10000〜12000で、両者の硬度はほぼ等しい。又、耐摩耗性(摺動性)も同等である。さらに、3価クロムも6価クロムと同様、高級感のある光沢を出すことができる。よって、6価クロムの代わりに3価クロムを使用することが考えられる。しかしながら、3価クロムは銅や、真鍮等の銅系合金との付着性が悪く、かつ、厚さを厚くすることができない(最大でも0.5μm程度である)。
そこで、本手段においては、3価クロム層の厚さを補い、かつ、銅や銅系合金との密着性の良い金属としてニッケル系鍍金層を併せて使用することにし、金属表面にニッケル系鍍金層を形成し、その上に3価クロム層を形成するようにしている。例えば、ニッケル系鍍金層であるニッケルリン鍍金層の硬さは、ビッカース硬度で、電気鍍金の場合650〜700Hv、無電界鍍金の場合500〜550Hvであり、6価クロムの硬度800〜1000Hvに比べてやや劣るが、その表面に3価クロム層が形成されているので、この差は実用上問題とならない。なお、ニッケル系鍍金層とは、ニッケルを主成分とする金属の鍍金層である。
前記課題を解決するための第2の手段は、金属からなる基体の表面の一部又は全部に、当該基体の表面側から、ニッケル系鍍金層、純ニッケル層、3価クロム層がこの順に形成されていることを特徴とする金属体である。
前記第1の手段においては、3価クロム層の光沢が十分でなく、6価クロムの高級感のある光沢に及ばない。そこで、本手段においてはニッケル系鍍金層と3価クロム層の間に純ニッケル層を介在させている。これにより、6価クロムとほぼ同等の高級感のある光沢を出すことができる。
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段、又は第2の手段であって、前記ニッケル系鍍金層が、電気鍍金により形成されたものであることを特徴とするものである。
例えばニッケル系鍍金としてニッケルリン鍍金を行う場合、電気ニッケルリン鍍金においては、鍍金液を供給しながら鍍金できるため、鍍金液の全交換の必要性の観点から言えば、鍍金液寿命は半永久的であり、鍍金金属の析出速度は1分あたり1μmである。一方無電解ニッケルリン鍍金の場合は、液寿命は処理量にもよるが1ヶ月程度で、鍍金金属の析出速度は5分あたり1μmである。よって、生産性の点からも電気鍍金の方が有利である。
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段から第3の手段のいずれかであって、前記ニッケル系鍍金層が、ニッケルリン合金鍍金層であることを特徴とする金属体である。
ニッケル系鍍金層の中でも、ニッケルリン合金鍍金が、強度、耐摩耗性、色や光沢の高級感の点で、特に有利である。
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第1の手段から第4の手段のいずれかの金属体からなることを特徴とするレンズマウントである。
レンズマウントには、強度、耐摩耗性、及び色や光沢の高級感が必要とされるので、前記第1の手段から第4の手段のいずれかの金属体の用途として特に好ましい。
前記課題を解決するための第6の手段は、金属の表面の一部又は全部に、ニッケルリン合金鍍金を行い、続いてその上に3価クロム鍍金を施すことを特徴とする金属の表面処理方法である。
本手段においては、鍍金被膜として6価クロムを使用せず、6価クロムを使用したときと同等の硬さ、耐摩耗性、色味を金属に持たせることができる。
前記課題を解決するための第7の手段は、金属の表面の一部又は全部に、ニッケルリン合金鍍金を行い、続いてその上にストライクニッケル鍍金を行い、さらにその上に3価クロム鍍金を施すことを特徴とする金属の表面処理方法である。
本手段においては、鍍金被膜として6価クロムを使用せず、6価クロムを使用したときと同等の硬さ、耐摩耗性、色味を金属に持たせることができると共に、良好な光沢を金属に持たせることができる。
本発明によれば、6価クロムを使用せず、しかも、6価クロムを使用した場合と匹敵する強度と耐摩耗性を有する金属体及びレンズマウント、さらには、金属に、6価クロムを使用せず、しかも、6価クロムを使用した場合と匹敵する強度と耐摩耗性を与える表面処理方法を提供することができる。
図1に、本発明の実施例であるカメラのレンズマウントの概要を示す。レンズマウント1は、平面が円環状をしており、その内部円周部の3箇所にバヨネット爪2が設けられている。カメラの交換レンズにもバヨネット爪が設けられており、レンズマウント1にカメラの交換レンズを係合させるときは、カメラのバヨネット爪をレンズマウント1のバヨネット爪2が設けられていない場所に差し込んで、その後交換レンズを回転させることにより、互いのバヨネット爪同士を噛み合わせて係合させる。
本実施例においては、レンズマウント1の表面部3に表面処理を施した。なお、レンズマウント1は真鍮性である。
(実施例1)
レンズマウント1を溶剤脱脂後専用冶具に引っ掛け、その後下記の順の工程で処理を行った。
(1)脱脂:市販のアルカリ脱脂剤に、室温にて2〜5分浸漬した。その後水洗した。
(2)酸洗:10%塩酸に、30℃,30秒〜1分浸漬した。その後水洗した。
(3)電解洗浄:市販の電解洗浄剤中に浸漬し、電流密度2〜5A/dm2にて30秒〜1分洗浄した。その後水洗した。
(4)電気ニッケルリン合金鍍金:塩化ニッケル、硫酸ニッケルを主成分とする鍍金浴中(pH0.3〜1.2,温度50〜65℃)において、電流密度2〜10A/dm2で2〜10分処理鍍金処理した。その後水洗した。電気ニッケルリン合金鍍金層の厚さは3〜5μmとなった。
(5)ストライクニッケル鍍金:塩化ニッケル、塩酸を主成分とする鍍金浴中において、電流密度5〜10A/dm2でストライク鍍金を行った。その後水洗した。ニッケル鍍金層の厚さは0.1〜0.2μmとなった
(6)3価クロム鍍金:市販の3価クロム鍍金浴中(pH3.0〜3.4、温度40〜50℃)において、電流密度3〜8A/dm2で、2〜8分鍍金処理した。その後水洗した。3価クロム鍍金層の厚さは、0.2〜0.5μmとなった。
(実施例1)
レンズマウント1を溶剤脱脂後専用冶具に引っ掛け、その後下記の順の工程で処理を行った。
(1)脱脂:市販のアルカリ脱脂剤に、室温にて2〜5分浸漬した。その後水洗した。
(2)酸洗:10%塩酸に、30℃,30秒〜1分浸漬した。その後水洗した。
(3)電解洗浄:市販の電解洗浄剤中に浸漬し、電流密度2〜5A/dm2にて30秒〜1分洗浄した。その後水洗した。
(4)電気ニッケルリン合金鍍金:塩化ニッケル、硫酸ニッケルを主成分とする鍍金浴中(pH0.3〜1.2,温度50〜65℃)において、電流密度2〜10A/dm2で2〜10分処理鍍金処理した。その後水洗した。電気ニッケルリン合金鍍金層の厚さは3〜5μmとなった。
(5)ストライクニッケル鍍金:塩化ニッケル、塩酸を主成分とする鍍金浴中において、電流密度5〜10A/dm2でストライク鍍金を行った。その後水洗した。ニッケル鍍金層の厚さは0.1〜0.2μmとなった
(6)3価クロム鍍金:市販の3価クロム鍍金浴中(pH3.0〜3.4、温度40〜50℃)において、電流密度3〜8A/dm2で、2〜8分鍍金処理した。その後水洗した。3価クロム鍍金層の厚さは、0.2〜0.5μmとなった。
出来上がったレンズマウントの硬さと耐摩耗性は、6価クロム鍍金(3〜5μm)を施したものとほぼ同等であった。又、色味、光沢も、6価クロム鍍金(3〜5μm)を施したものとほぼ同等であった。
(実施例2)
実施例1の工程から(5)のストライクニッケル鍍金処理を省略した表面処理を、実施例1で使用したレンズマウントの表面に対して行った。得られた電気ニッケルリン合金鍍金層の厚さと、3価クロム鍍金層の厚さは、実施例1とほぼ同一であった。
(実施例2)
実施例1の工程から(5)のストライクニッケル鍍金処理を省略した表面処理を、実施例1で使用したレンズマウントの表面に対して行った。得られた電気ニッケルリン合金鍍金層の厚さと、3価クロム鍍金層の厚さは、実施例1とほぼ同一であった。
出来上がったレンズマウントの硬さと耐摩耗性は、6価クロム鍍金(3〜5μm)を施したものとほぼ同等であった。色味は、6価クロム鍍金を施したものとほぼ同等であったが、光沢が6価クロム鍍金を施したものに対してやや劣った。
なお、以上の実施例は、レンズマウントについてのものであるが、他に、金属(特に銅、又は銅系合金)の表面に6価クロム鍍金を行っていたものに代えて、このような方法により鍍金被膜を構成し、高強度、高耐摩耗性、色味、さらにこれに加えて良好な光沢を与えることができることは明らかである。
1…レンズマウント、2…バヨネット爪、3…表面部
Claims (7)
- 金属からなる基体の表面の一部又は全部に、当該基体の表面側から、ニッケル系鍍金層、3価クロム層がこの順に形成されていることを特徴とする金属体。
- 金属からなる基体の表面の一部又は全部に、当該基体の表面側から、ニッケル系鍍金層、純ニッケル層、3価クロム層がこの順に形成されていることを特徴とする金属体。
- 前記ニッケル系鍍金層が、電気鍍金により形成されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属体。
- 前記ニッケル系鍍金層が、ニッケルリン合金鍍金層であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の金属体。
- 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の金属体からなるレンズマウント。
- 金属の表面の一部又は全部に、ニッケルリン合金鍍金を行い、続いてその上に3価クロム鍍金を施すことを特徴とする金属の表面処理方法。
- 金属の表面の一部又は全部に、ニッケルリン合金鍍金を行い、続いてその上にストライクニッケル鍍金を行い、さらにその上に3価クロム鍍金を施すことを特徴とする金属の表面処理方法。
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2005
- 2005-02-15 JP JP2005037931A patent/JP2006225686A/ja active Pending
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