JP2006219357A - 酸化物焼結体、スパッタリングターゲットおよび透明導電性薄膜 - Google Patents

酸化物焼結体、スパッタリングターゲットおよび透明導電性薄膜 Download PDF

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Abstract

【課題】光の透過性を維持しつつ、表面が平滑で、非晶質であり、かつ、成膜時に基板を加熱しなくても比抵抗が小さい透明導電性薄膜を提供する。
【解決手段】タングステン、亜鉛、マグネシウムを含有し、残部がインジウム、酸素および不可避的不純物からなる酸化物焼結体であって、タングステンがインジウムに対する原子数比で0.004〜0.033、亜鉛がインジウムに対する原子数比で0.005〜0.032、マグネシウムがインジウムに対する原子数比で0.007〜0.056の割合で含有される酸化物焼結体を用いてスパッタリングターゲットを作製する。作製したスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを実施して、透明導電性薄膜を形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、透明導電性薄膜製造用の酸化物焼結体、該酸化物焼結体を用いたスパッタリングターゲットおよび透明導電性薄膜に関する。得られる透明導電性薄膜は、例えば、有機物を利用する有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、トランジスタ、太陽電池、レーザなどの有機デバイスにおいて、電極として用いることができる。
透明導電性薄膜は、高い導電性(例えば、1×10-3Ωcm以下の比抵抗)と可視光領域での高い透過率とを有することから、表示素子、および太陽電池、その他の各種受光素子、発光素子、トランジスタ、レーザなどの電子デバイスの電極などに利用されるほか、自動車や建築用の熱線反射膜、帯電防止膜、冷凍ショーケースなどの各種の防曇用の透明発熱体としても利用されている。
透明導電性薄膜が使用される表示素子としては、近年、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)などのフラットパネルディスプレイが広く普及しているが、次世代のフラットパネルディスプレイとして、エレクトロルミネッセンス(EL)素子が注目を浴びている。
透明導電性薄膜が使用されるEL素子は、自己発光するため視認性が高い。また、完全固体素子であるためフレキシブルに変形し得るデバイスにも適用できる。このため、EL素子は、各種分野への適用が期待されている。
EL素子には、発光材料として無機化合物を用いる無機EL素子と、発光材料として有機化合物を用いる有機EL素子とがある。
このうち、有機EL素子は、駆動電圧を大幅に低くしても(例えば、10V以下の直流電圧で)明るい発光が得られるため、小型化が容易であるという特徴がある。
有機EL素子の構成は、透明絶縁性基板/陽極(透明電極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極(金属電極)の積層構造を基本とし、正孔輸送層、発光層および電子輸送層が有機層である。具体的には、ガラス板などの透明絶縁性基板上に透明導電性薄膜を形成して、該透明導電性薄膜を陽極とする構成のボトムエミッション型が、有機EL素子の構成として、通常、採用されている。
これに対し、透明絶縁性基板としてTFT(thin-film transistor)基板を使用する場合は、取出し光量を多くするために、前述のボトムエミッション型に代えて、透明絶縁性基板/陽極(金属電極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極(透明電極)の積層構造を有するトップエミッション型も提案されている。
また、透明導電性薄膜が使用される素子としては、前記有機EL素子のほかに、有機物を利用する発光素子、トランジスタ、太陽電池やレーザなどの有機デバイスも、近年、注目を浴びており、透明導電性薄膜の役割はますます大きくなっていくものと思われる。
透明導電性薄膜には、アンチモンやフッ素をドーパントとして含む酸化スズ(SnO2)や、アルミニウムやガリウムをドーパントとして含む酸化亜鉛(ZnO)や、スズをドーパントとして含む酸化インジウム(In23)などが、広範に利用されている。このうち、スズをドーパントとして含む酸化インジウム膜(In23−Sn系膜)は、ITO(Indium Tin Oxide)膜と称され、特に低抵抗の透明導電性薄膜が容易に得られることから、広く用いられている。
これらの透明導電性薄膜を製造する方法としては、スパッタリング法がよく用いられている。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料の成膜や、精密な膜厚制御を必要とする際に、有効な手法であり、かつ、操作も非常に簡便であるため、工業的に広く利用されている。
スパッタリング法においては、膜成分を供給する原料としてスパッタリングターゲットが用いられる。そして、一般に、約10Pa以下のガス圧のもとで、基板を陽極とし、スパッタリングターゲットを陰極として、これらの間にグロー放電を起こして、アルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のスパッタリングターゲットに衝突させ、これによって弾き飛ばされるターゲット成分の粒子を基板上に堆積させて、膜を形成する。
また、スパッタリング法は、アルゴンプラズマの発生方法で分類されるが、これには、高周波プラズマを用いる高周波スパッタリング法、直流プラズマを用いる直流スパッタリング法がある。また、スパッタリングターゲットの裏側にマグネットを配置して、低ガス圧でもアルゴンイオンの発生効率を上げるとともに、プラズマをスパッタリングターゲットの直上に集中させて成膜するマグネトロンスパッタ法もある。一般に、直流スパッタリング法は、導電性ターゲットを用いる必要があるが、高周波スパッタリング法に比べて成膜速度が速く、電源設備が安価で、成膜操作が簡単などの理由で、工業的に広く利用されている。
しかしながら、ITO膜は、低抵抗であるものの結晶化温度が150℃前後と低い。このため、スパッタリングにおいて基板を加熱しなくても結晶相が生じやすく、透明導電性薄膜の表面に凹凸が生じやすい。ボトムエミッション型の有機EL素子において、正孔輸送層側である陽極に凹凸が生じたITO膜を用いると、表面の凹凸により超薄膜の有機物層に過電流が流れて、有機EL素子に黒点(ダークスポット)が発生してしまう。
そこで、正孔輸送層側である陽極としてITO膜を用いる場合には、透明絶縁性基板に陽極となるITO膜を成膜後、研磨等により表面の凹凸をなくし、表面を平滑にしてから、正孔輸送層を積層させる必要が生じる。
また、トップエミッション型の有機EL素子において、電子輸送層側である陰極に結晶相のあるITO膜を用いた場合、結晶粒界を通して水分および酸素などが下地側の有機物層に拡散してダメージを与えるので、素子寿命が短くなる。しかし、該陰極が非晶質の膜であれば、結晶粒界がないため、水分および酸素などが拡散し難くなる。
従って、透明導電性薄膜を有機EL素子および有機デバイスの陽極として用いる際には、表面が平滑であること、および非晶質で水分および酸素などの拡散が少ないことが望まれる。
さらに、電極として用いる上で、より低抵抗の導電性薄膜であることが望まれるが、ITO膜においては、低温での成膜で低抵抗の薄膜を実現することが困難であり、より低抵抗の膜を得るためには、結晶化温度以上の温度において結晶化を促進し、移動度を上げる必要がある。しかし、有機層は耐熱性が悪いため、有機層の上に透明導電性薄膜を形成する際に、基板を加熱して成膜することは不可能である。室温で成膜した場合には、ITO膜の比抵抗は6×10-4Ωcm程度である。
したがって、基板を加熱せずに成膜して、低抵抗の透明導電性薄膜が得られるようにすることが望まれる。
一方、透明導電性薄膜を成膜する過程においては、ボトムエミッション型の有機EL素子であるか、トップエミッション型の有機EL素子であるかに関わらず、スパッタリングターゲットに黒化物(ノジュール)が発生すると、薄膜中に粗大粒子が存在するようになる。ボトムエミッション型の場合は、粗大粒子の部分に有機層が蒸着できず、ダークスポットになる。トップエミッション型の場合は、有機層中へ粗大粒子が入り込み、粗大粒子の部分は有機層としての機能を果たさず、ダークスポット等の欠陥となる。従って、いずれにおいても素子としての機能が低下することになる。
このため、透明導電性薄膜をスパッタリング法で製造する際においては、ノジュールの発生が少ないスパッタリングターゲットを用いることが望まれている。ITO膜の製造において、ノジュールの発生を抑制する方策としては、スパッタリングターゲットに用いる焼結体の焼結密度を高めること、焼結体中の空孔を制御すること、焼結体の強度を高めること、均一な焼結体にすることなどが知られている。これらの対策を講じると、確かにスパッタリングターゲットでのノジュールの発生は減少する。しかしながら、完全にはノジュールの発生を抑制できていない。そのため、ITO膜の製造において、現状でもノジュールが発生しており、成膜された導電性薄膜には欠陥が生じ、製品歩留まりが悪くなっている。
また、スパッタリングターゲットの焼結密度を高めても、スパッタリング中に焼結割れが発生すると、その部分におけるノジュールの発生確率が高くなるので、焼結体の高密度化を図るとともに、焼結体の強度を高くする必要がある。焼結体の強度を高くする方法としては、結晶粒径を小さくする方法等がある。
以上のように、有機EL素子の透明導電性薄膜については、ボトムエミッション型であるか、トップエミッション型であるかに関わらず、表面が平滑であること、非晶質であること、比抵抗が小さいことなどが望まれている。また、スパッタリングターゲットについては、ノジュールの発生抑制が望まれている。要求されるこれらの特性は、有機EL素子のほか、発光素子、トランジスタ、太陽電池およびレーザなどにおいて用いられる有機デバイスに関しても、同様である。
酸化インジウム系透明導電性薄膜に関しては、スズ以外の添加物を含む酸化インジウム系透明導電性薄膜が検討されており、ITO膜にはない特徴を有する材料がいくつか見出されている。
特許文献1(特開昭61−136954号公報)には、酸化インジウム系透明導電性薄膜の製造原料として、酸化ケイ素(SiO2)および/または酸化ゲルマニウム(GeO2)を含有している酸化インジウム系焼結体が記載されており、また、特許文献2(特開昭62−202415号公報)には、かかる酸化ケイ素および/または酸化ゲルマニウムを含有している酸化インジウム系焼結体を用い、高周波スパッタリング法と電子ビーム蒸着法で、Si添加酸化インジウム膜などを成膜する方法が記載されている。
この方法によれば、膜欠陥が解消されたSi添加酸化インジウム膜などが得られるものの、用いるスパッタリングターゲットは酸化ケイ素(SiO2)および/または酸化ゲルマニウム(GeO2)を含有している酸化インジウム系焼結体を用いたものであり、焼結体中に高抵抗物質である酸化ケイ素および/または酸化ゲルマニウムを含有しており、直流スパッタリングを行うと、アーキングなどが発生しやすく、安定して成膜することができないという問題がある。
また、直流電力を多く投入すれば、高抵抗物質の帯電が起きやすく、成膜中のアーキング発生頻度が増すため、成膜速度を上げるために高電力を投入することは難しいという問題もある。
さらに、得られる透明導電性薄膜の結晶構造が明記されていないことから、膜質が非晶質であるかどうかは不明であり、この方法により、純アルゴンガス中で高周波スパッタリングにより成膜しても、表面が平滑な膜を得ることができるかどうかは不明である。
これに対して、特許文献3(特許第3224396号公報)には、有機EL素子に使用する透明導電性薄膜として、Zn添加In23膜が記載されている。Zn添加In23膜は、非晶質構造をとりやすく、成膜時の基板温度が室温の場合だけでなく、例えば、200℃に加熱しても結晶化しない。従って、表面平滑性に優れた透明導電性薄膜を、安定して作製しやすいという利点も持っている。
しかし、特許文献3(特許第3224396号公報)に記載のZn添加In23膜には、短波長域における透過率、具体的には波長400nmの光の透過率がITOよりも低いという問題がある。
特開昭61−136954号公報
特開昭62−202415号公報
特許第3224396号公報
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、光の透過性を維持しつつ、表面が平滑で、非晶質であり、かつ、成膜時に基板を加熱しなくても比抵抗が小さい透明導電性薄膜を提供するとともに、このような透明導電性薄膜を安定的に成膜することを可能とする酸化物焼結体およびスパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
本発明に係る酸化物焼結体は、タングステン、亜鉛、マグネシウムを含有し、残部がインジウム、酸素および不可避的不純物からなる酸化物焼結体であって、タングステンがインジウムに対する原子数比で0.004〜0.033、亜鉛がインジウムに対する原子数比で0.005〜0.032、マグネシウムがインジウムに対する原子数比で0.007〜0.056の割合で含有される。
前記酸化物焼結体においては、ビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相を主相とすることが好ましい。また、前記酸化物焼結体においては、焼結密度は6.5g/cm3以上であることが好ましく、平均結晶粒径は5μm以下であることが好ましい。
本発明に係るスパッタリングターゲットは、前記のいずれかの酸化物焼結体を平板状に加工し、冷却用金属板に貼り合わせることで得ることができる。
本発明に係る透明導電性薄膜は、タングステン、亜鉛、マグネシウムを含有し、残部がインジウム、酸素および不可避的不純物からなる透明導電性薄膜であって、タングステンがインジウムに対する原子数比で0.004〜0.033、亜鉛がインジウムに対する原子数比で0.005〜0.032、マグネシウムがインジウムに対する原子数比で0.007〜0.056の割合で含有される非晶質の透明導電性薄膜である。
前記透明導電性薄膜においては、比抵抗は5×10-4Ωcm以下であることが好ましく、表面の平均粗さRa(算術平均粗さ)は、膜厚の1%未満であることが好ましく、波長400nmの光の透過率は65%以上であることが好ましい。
また、前記透明導電性薄膜と、3〜5nmの金属薄膜とを積層させて、比抵抗のより小さい透明導電性薄膜を形成することができ、前記金属薄膜としては、例えば、銀、銀合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金からなる群から選ばれた1種以上の金属からなる薄膜を用いることができる。
本発明に係る有機デバイスは、前記のいずれかの透明導電性薄膜を用いたものであり、前記有機デバイスとしては、例えば有機EL素子がある。
本発明に係る酸化物焼結体は、タングステン、亜鉛、マグネシウムを含有し、残部がインジウム、酸素および不可避的不純物からなる酸化物焼結体であって、タングステンがインジウムに対する原子数比で0.004〜0.033、亜鉛がインジウムに対する原子数比で0.005〜0.032、マグネシウムがインジウムに対する原子数比で0.007〜0.056の割合で含有されるので、本発明に係る酸化物焼結体を用いてスパッタリングを行うことにより、表面が平滑で、非晶質であり、かつ、成膜時に基板を加熱しなくても比抵抗が小さい透明導電性薄膜を得ることができる。
したがって、本発明に係る透明導電性薄膜を電極に使用することで、ダークスポット等の欠陥が抑制された有機デバイスを提供することが可能となる。
さらに、該透明導電性薄膜は、光の透過性も良好であるので、有機EL素子等の表示素子についての有機デバイスの電極に用いるのに極めて有用である。
本発明者は、前記課題を解決するために、スパッタリング法によって種々の組成の透明導電性薄膜を作製し、得られた透明導電性薄膜の結晶構造、電気特性および光学特性を検討した。その結果、インジウム、タングステン、亜鉛、マグネシウムおよび酸素からなり、タングステンがW/In原子数比で0.004〜0.033、亜鉛がZn/In原子数比で0.005〜0.032、マグネシウムがMg/In原子数比で0.007〜0.056の割合で含有されたスパッタリングターゲットを用いると、得られた透明導電性薄膜は、表面が平滑で、非晶質であり、比抵抗が小さく、有機EL素子の透明導電性薄膜として好適であること、さらには、スパッタリングの際にノジュールの発生が見られないことを見出し、本発明を完成するに至った。
<酸化物焼結体>
本発明に係る酸化物焼結体は、インジウム、タングステン、亜鉛、マグネシウムおよび酸素からなり、タングステンがW/In原子数比で0.004〜0.033、亜鉛がZn/In原子数比で0.005〜0.032、マグネシウムがMg/In原子数比で0.007〜0.056の割合で含有される。
なお、該酸化物焼結体から作製されるスパッタリングターゲット、および該スパッタリングターゲットを用いて成膜された透明導電性薄膜の組成は、前記酸化物焼結体と実質的に同じである。
まず、本発明に係る酸化物焼結体の添加金属元素(タングステン、亜鉛、マグネシウム)について説明する。
タングステンは、透明導電性薄膜の結晶化温度を上げる効果、および透明導電性薄膜に導電性を付与する効果がある。タングステンの添加により透明導電性薄膜の結晶化温度が上がる結果、透明導電性薄膜は非晶質となりやすくなる。W/In原子数比が0.004未満であると、透明導電性薄膜の比抵抗が高くなる。また、透明導電性薄膜が結晶化し、表面の凹凸が大きくなってしまう。一方、0.033を超えると、透明導電性薄膜の比抵抗が5×10-4Ωcm以上となってしまう。
また、タングステンは、酸化物焼結体において、酸化物焼結体の結晶粒の成長を妨げる効果がある。W/In原子数比が0.004以上であれば、酸化物焼結体の平均結晶粒径が、5μm以下と非常に微細になる。スパッタリング中に焼結体に割れが発生すると、ノジュールはその部分に発生しやすくなるが、本発明の酸化物焼結体は、W/In原子数比で0.004〜0.033であるため、平均結晶粒径は非常に小さくなり、酸化物焼結体の曲げ強さが大きくなる。このため、本発明の酸化物焼結体から作製したスパッタリングターゲットにおいては、ノジュール発生の原因となるスパッタリング中の焼結体の割れが、ほとんど生じない。
一方、W/In原子数比が0.033を超えると、タングステンが焼結を阻害するため、焼結密度が6.5g/cm3未満となってしまう。焼結密度が低いと、ノジュールの発生原因となったり、スパッタリング時の成膜速度が遅くなってしまったりするので、生産上好ましくない。
亜鉛は、酸化物焼結体において、直流スパッタリングが可能な程度の導電性を付与する目的、および結晶化温度を上げる目的で添加する。酸化物焼結体のZn/In原子数比が0.005未満であると、焼結体の比抵抗が大きくなるため、成膜速度が非常に小さくなり、生産性が悪くなる。また、スパッタリングを行っても、比抵抗が小さく、かつ、非晶質である透明導電性薄膜を得ることはできない。一方、Zn/In原子数比が0.032を超えると、可視域の短波長側(例えば、波長400nm付近)で、優れた透過特性をもつ透明導電性薄膜を得ることはできない。
マグネシウムは、酸化物焼結体において、組織の均一化に寄与する。焼結体中に異相が存在すると成膜速度低下の原因となるところ、酸化物焼結体のMg/In原子数比が0.007未満であると、タングステンおよび亜鉛を多く含んだ微細な相がビックスバイト相の中に局部的に存在する焼結体となる。この微細な相は酸化インジウムにタングステンや亜鉛が固溶しているため、酸化タングステン、酸化亜鉛ほど高抵抗の相でない。このため、このような相が存在しても成膜速度が著しく低下することはない。しかしながら、この微細な相はタングステン、亜鉛を多く含んでおり、主相であるビックスバイト相とは成膜速度が異なるので、スパッタリング時の異常放電の原因となる可能性がある。Mg/In原子数比を0.007以上添加すると、酸化インジウムへのタングステン、亜鉛の固溶限が増大するためか、このような微細な相は見られなくなる。スパッタリング法を用いての安定生産を考えた場合、この異相は存在しない方が好ましい。一方、酸化物焼結体のMg/In原子数比が0.056を超えると、スパッタリングによって得られる透明導電性薄膜の比抵抗が上昇してしまう。
次に、本発明に係る酸化物焼結体の結晶相について説明する。
本発明に係る酸化物焼結体においては、原料粉である酸化タングステン、酸化亜鉛および酸化マグネシウムに起因する結晶相が存在せず、ビックスバイト相のみで構成されていることが好ましい。ビックスバイト相のみで構成された酸化物焼結体の方が、原料粉に起因する酸化物の結晶相が検出された酸化物焼結体よりも、同一条件下におけるスパッタリングによる成膜速度が、明らかに速いという結果が得られているからである。このような結果が得られた理由は、原料に起因する酸化物結晶相のスパッタリングレートが、比較的遅いためであり、その存在する割合に応じて、スパッタリングレートが遅くなるからである。したがって、ビックスバイト型構造で単相の焼結体であれば、高速の成膜速度を実現することができる。
ここで、ビックスバイト(bixbyite)型構造は、酸化インジウム(In23)の結晶構造であり、希土類酸化物C型とも呼ばれる(「透明導電膜の技術」、オーム社、p.82参照)。タングステンや亜鉛、ゲルマニウムなどの陽イオンは、ビックスバイト型構造の酸化インジウム中のインジウムイオンと置換して、固溶体を形成する。なお、In23は、ビックスバイト型構造の他にコランダム型構造をとることもある。
<酸化物焼結体の製造>
本発明に係る酸化物焼結体は、例えば次のようにして製造することができる。まず、平均粒径が0.1〜3μm以下の酸化インジウム粉末、酸化タングステン粉末、酸化マグネシウム粉末、および酸化亜鉛粉末を所定の割合で調合し、水とともに樹脂製ポットに入れ、湿式ボールミルで混合し、スラリーとする。この際、スラリー内への不純物混入を極力避けるため、硬質ZrO2ボールミルを用いることが好ましい。混合時間は10〜30時間が好ましい。10時間より短いと、原料粉末の粉砕が不十分となり、安定的にビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相を主相とする高密度のターゲットを得ることが困難となるおそれがあり、30時間より長いと、過粉砕となり、粒子同士の凝集が強くなり、同様に安定的に高密度のターゲットを得ることが困難となるおそれがある。混合後、スラリーを取り出し、ろ過、乾燥、造粒する。
前述のようにして造粒した造粒粉(平均粒径25〜100μm程度)を、冷間静水圧(CIP)プレスで196MPa〜490MPa(2ton/cm2〜5ton/cm2)の圧力をかけて成形する。圧力は、196MPa(2ton/cm2)よりも低いと、成形体の密度が高まらず、高密度のターゲットが得られにくくなり、490MPa(5ton/cm2)を超えると、成形体密度を高めることはできるが、その圧力を得るための工程および設備等の条件調整が過大となり、製造コストが上がってしまう。
次に、得られた成形体を、炉内容積0.01m3当たり10L/minの割合で焼結炉内に酸素を導入して得られる雰囲気中で、温度:1200〜1500℃で、10〜30時間、焼結させる。1200℃よりも低温では、安定的に高密度のターゲットを得ることが難しく、1500℃を超えると、結晶粒径が大きくなるだけでなく、炉床板との反応が生じるおそれも生じる。処理時間が10時間より短いと、安定的に高密度のターゲットを得ることが難しく、30時間を超えると、結晶粒径が大きくなってしまう。
前記した1200〜1500℃での焼結を行う際の昇温速度は、750℃までを0.5℃/min程度で、750℃から所定の焼結温度までを1℃/min程度で行うことが好ましい。このように、昇温速度を遅くすることが好ましい理由は、炉内の温度分布を均一にするためである。また、前記焼結処理の終了後には、酸素導入を止め、熱衝撃で焼結体が割れないようにするため、1℃/min程度で降温することが好ましい。
なお、酸化物焼結体において異質な酸化物相が存在する場合、異常放電が起こりやすくなる。さらに、異質な酸化物相が高抵抗物質の場合、直流電力を多く投入すると、異質な酸化物相の帯電が生じやすくなり、成膜中のアーキング発生頻度が増してしまうため、直流電力を多く投入しても高成膜速度を得ることは難しい。しかし、酸化物焼結体に異質な酸化物相が存在せず、全添加元素がインジウムサイトに固溶している場合、このような現象が発生する可能性は小さくなる。本発明の酸化物焼結体においては、平均粒径が0.1〜3μmの酸化インジウム、酸化タングステン、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛を原料粉に用いて、十分に混合粉砕を行うことで、全添加元素をInサイトに置換させることができる。前記原料粉の平均粒径が0.1μm未満であると、固溶しやすくなるが、原料粉の凝集が強くなり、高密度化が達成しにくくなる。一方、前記原料粉の平均粒径が3μmを超えると、粉砕工程において適度な粉砕が行われにくくなり、造粒粉に粗い原料粉が存在してしまうことが懸念される。これにより原料粉の分散が不均一になると、焼結が均一に行われなくなり、高密度化が達成できなくなる。また、造粒粉に粗い原料粉が存在してしまうと、焼結処理を行っても粗い原料粉中の原子の拡散が進まず、酸化物焼結体中に異質な酸化物相が存在してしまうという問題も発生する。
<スパッタリングターゲット>
得られた酸化物焼結体については、スパッタリングする面をカップ砥石などで研磨し、厚さ3〜10mm程度に加工して、インジウム系合金などの冷却用金属板(バッキングプレート)に貼り合わせることにより、スパッタリングターゲットとすることができる。
<スパッタリング成膜>
本発明に係る透明導電性薄膜は、本発明のスパッタリングターゲットを用いて、例えば、スパッタリング時のターゲット基板間距離を50〜100mmとし、スパッタリングガス圧を0.5〜1.5Paとして、直流マグネトロンスパッタリング法により成膜することで得ることができる。
ターゲット基板間距離については、ターゲット基板間距離が50mmよりも短くなると、基板に堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが大きくなるため、基板の受けるダメージが大きく、低級酸化物などになってしまい、得られる透明導電性薄膜の比抵抗が大きくなってしまう。また、膜厚も不均一となり膜厚分布が悪くなる。ターゲット基板間距離が100mmより長いと、膜厚分布は良くなるが、基板に堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが低くなりすぎ、基板上で拡散による緻密化が起きにくくなり、そのため密度の低い透明導電性薄膜しか得られなくなり、好ましくない。
スパッタリングガス圧については、スパッタリングガス圧が0.5Paより低いと基板に堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが大きくなるため、基板の受けるダメージが大きく、低級酸化物などになってしまい、得られる透明導電性薄膜の比抵抗が大きくなってしまう。スパッタリングガス圧が1.5Paより高いと、成膜速度が遅くなるだけでなく、基板に堆積するスパッタ粒子の運動エネルギーが低くなりすぎて、基板上で拡散による緻密化が起きず、密度の低い透明導電性薄膜しか得られなくなり、好ましくない。
<透明導電性薄膜>
本発明の透明導電性薄膜は、インジウム、タングステン、亜鉛、マグネシウムおよび酸素からなり、タングステンがW/In原子数比で0.004〜0.033、亜鉛がZn/In原子数比で0.005〜0.032、マグネシウムがMg/In原子数比で0.007〜0.056の割合で含有される。なお、前記したように、前記スパッタリング成膜により得られた透明導電性薄膜の組成は、焼結体と実質的に同じである。
また、本発明の透明導電性薄膜は、完全に非晶質で、表面が平滑であり、その表面の平均粗さ(Ra)が膜厚の1%未満である。さらに、本発明の透明導電性薄膜は、加熱せずに成膜したとしても5×10-4Ωcm以下の比抵抗を示す。
このため、本発明に係る透明導電性薄膜は、耐熱性に劣る有機発光層の上においても、電極として形成することができ、上面電極である陰極から光を効率的に取り出すことが可能なトップエミッション型有機EL素子の実現に寄与できる。また、基板を加熱せずに成膜されたものであっても、上記のように比抵抗が小さく、表面も平滑であることから、本発明に係る透明導電性薄膜は、樹脂フィルム基板を用いたフレキシブル透明有機EL素子の陰極および/または陽極としても利用することができ、工業的価値が極めて高い。
なお、透明導電性薄膜として使用する場合に、さらに比抵抗を小さくすることが望まれる場合がある。この場合には、本発明に係る透明導電性薄膜と、銀、銀合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属薄膜とを積層すれば、比抵抗をさらに小さくすることが可能となる。ただし、透明導電性薄膜として機能させる以上、可視光領域での透過率が90%以上であることが望まれる。そのため、金属薄膜の膜厚は、3〜5nmが好ましい。金属薄膜は、膜厚が5nmを超えて厚くなれば、抵抗値は低くなるが、光の透過率が悪くなる。逆に、3nm未満であると、金属薄膜の連続性が失われ、金属薄膜を積層する効果を十分には発揮することができなくなる。
<酸化物焼結体の製造>
(実施例1〜3、比較例1、2)
原料として、平均粒径0.1μm〜3μmのIn23粉(純度99.99質量%)、平均粒径0.1μm〜3μmのWO3粉(純度99.99質量%)、平均粒径0.1μm〜3μmのMgO粉(純度99.99質量%)、および平均粒径0.1μm〜3μmのZnO粉(純度99.99質量%)を用いた。
各粉末を、所定量に配合して、純水、分散剤、バインダとともに樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2ボールミルを用いた湿式ボールミルを用いて、20時間、混合して混合スラリーとした。そして、該混合スラリーを取り出し、濾過、乾燥および造粒を行った。得られた造粒粉に、294MPa(3ton/cm2)の圧力をかけて、冷間静水圧プレスで成形した。
次に、得られた成形体を、炉内容積0.01m3当たり10L/minの割合で焼結炉内に酸素を導入して得られる雰囲気中で、1200℃で30時間、焼結した。この際、750℃までを0.5℃/minで、750℃から1200℃までを1℃/minで、それぞれ昇温した。焼結終了後、酸素導入を止め、1200℃から1000℃までを10℃/minで降温し、1000℃で3時間保持した後、放冷した。以上のようにして、酸化物焼結体を得た。
得られた酸化物焼結体の端材を粉砕し、X線回折装置(マックサイエンス社製、M18XHF22)で粉末X線回折測定を実施した。また、EPMAによる局所分析も行った。
また、得られた酸化物焼結体の焼結密度を、アルキメデス法で求めた。得られた酸化物焼結体の結晶粒径の測定については、得られた酸化物焼結体の表面を研磨した後、1100℃にてサーマルエッチングを施し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、平均粒径を求めた。
実施例1〜3および比較例1、2について、焼結温度ならびに得られた酸化物焼結体の組成(インジウムに対するタングステン、マグネシウムおよび亜鉛の原子数比で表示。)、焼結密度および平均粒径を、表1に示す。
Figure 2006219357
焼結密度については、W/In原子数比が0.036であり、本発明のW/In原子数比の上限値である0.033を超えている比較例2では、焼結密度が6.5g/cm3未満となっており、W量が多くなると焼結性が悪くなることがわかる。平均粒径については、W量の効果が大きく、W/In原子数比が0.003であり、本発明のW/In原子数比の下限値である0.004を下回っている比較例1では、焼結密度の面では問題がないものの、平均粒径が6.1μmであり、5μmよりも大きくなっており、焼結体の強度の点で問題があると考えられる。実際に比較例1の焼結体をターゲットとして用いてスパッタリングを行うと、スパッタリング中に焼結割れが発生した。なお、表1からわかるように、W量が少なくなると平均粒径が大きくなっている。
実施例1〜3、および比較例1、2で得られた酸化物焼結体の結晶構造、ならびに酸化物焼結体における添加元素の分布状態および異質な酸化物相の有無を、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)およびX線回折装置(XRD)で調査した結果は次のようになった。酸化物焼結体のX線回折測定における回折ピークはビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相に起因する回折ピークのみが観察された。また、X線回折測定の結果、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化マグネシウムの結晶相が存在していないことも確認した。さらに、EPMAによる局所分析により、各酸化物焼結体中の酸化インジウム結晶相には、タングステン、亜鉛、マグネシウムが均一に分散しており、固溶していることも確認した。
<成膜>
(実施例4〜8、比較例3〜8)
混合するIn23粉、WO3粉、MgO粉およびZnO粉の配合を変えて、実施例1とは組成を変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4〜8および比較例3〜8の酸化物焼結体を得た。そして、それぞれの酸化物焼結体のスパッタ面を、カップ砥石で磨き、直径152mm、厚さ5mmに加工し、インジウム系合金を用いてバッキングプレートに貼り合わせて、スパッタリングターゲットとした。
実施例4〜8、比較例3〜8で用いた直流マグネトロンスパッタ装置を図1に示す。直流マグネトロンスパッタ装置の非磁性体ターゲット用カソードに、前記スパッタリングターゲット2を取り付け、スパッタリングターゲット2の対向面に、厚さ1.1mmの#7059ガラス基板4を取り付けた。そして、雰囲気は、Ar+O2とし、全圧0.6Pa、O2/(Ar+O2)×100=2.5%という条件とし、ターゲット基板間距離を70mmとしてスパッタリングを実施し、ガラス基板4の上に、膜厚200nmの透明導電性薄膜を形成した。なお、基板加熱は行わなかった。
実施例4、5および比較例3、4の酸化物焼結体を用いてスパッタリングを実施した場合について、成膜時間と膜厚から成膜速度を求めた。実施例4、5および比較例3、4について、酸化物焼結体の組成、焼結密度および成膜速度を表2に示す。なお、膜厚は、ガラス基板4上にマジックインキでマークし、成膜後にマークしたマジックインキとその上に堆積した膜とを、アセトンで除去し、生じた段差を接触式表面形状測定器(Dektak3ST)で測定することにより求めた。
実施例6〜8および比較例3〜8に係る透明導電性薄膜の表面平滑性は、原子間力顕微鏡で平均粗さ(Ra)を測定することで評価した。比抵抗は、4端針法で測定した。また、透明導電性薄膜の組成をEPMAで測定した。さらに、基板を含めた400nmにおける光透過率を、分光光度計(日立製作所社製、U−4000)で測定した。実施例6〜8および比較例5〜8に係る透明導電性薄膜の組成、比抵抗、平均粗さ(Ra)および波長400nmの光の透過率を表3に示す。
なお、結晶性についても、X線回折装置(XRD)で評価した。
Figure 2006219357
実施例4および5の酸化物焼結体は、Zn/In原子数比がそれぞれ0.009および0.032であり、本発明の範囲の下限値である0.005よりも大きい。そのため、スパッタリングによる成膜速度はそれぞれ55nm/min、52nm/minであり、ITOの成膜速度(50nm/min程度)と同等程度まで大きくなった。
これに対して、比較例3の酸化物焼結体は、Zn/In原子数比が0.004であり、本発明の範囲の下限値である0.005を下回っており、酸化物焼結体の導電性は悪いと考えられる。そのため、スパッタリングによる成膜速度は29nm/minと小さく、ITOの成膜速度の60%程度しかなく、また、スパッタリン時にノジュールも発生し、生産上好ましくない結果となった。
比較例4の酸化物焼結体は、Mg/In原子数比が0.006であり、本発明の範囲の下限値である0.007を下回っている。そのため、焼結密度は実施例4、5と比べて同等程度であるものの、成膜速度が実施例4、5と比べて15%程度低下している。
比較例5の酸化物焼結体は、W/In原子数比が0.041であり、本発明の範囲の上限値である0.033を上回っており、焼結密度が6.41g/cm3と小さくなった。そのため、成膜速度は31nm/minと小さくなり、ノジュールも発生した。
比較例6の酸化物焼結体は、W/In原子数比が0.003であり、本発明の範囲の下限値である0.004を下回っている。このため、スパッタリング中に焼結体が割れて、ノジュールも発生した。
Figure 2006219357
本発明の範囲内の実施例6から8に係る透明導電性薄膜は、比抵抗の大きさが3.7〜4.8×10-4Ωcmであり、5×10-4Ωcm以下の良好な比抵抗を示す。なお、実施例6から8に係る透明導電性薄膜は、基板を加熱せずに成膜されたものである。
また、本発明の範囲内の実施例6から8に係る透明導電性薄膜は、表面の平均粗さ(Ra)が0.31〜0.43nmであり、膜厚に対しては0.16〜0.22%であり、平滑性に優れるものであった。
これに対して、比較例3に係る透明導電性薄膜は、Zn/In原子数比が0.004であり、本発明の範囲の下限値である0.005を下回っている。そのため、透明導電性薄膜の比抵抗が9×10-4Ωcmと大きくなり、電極としては不適となる結果となった。また、X線回折装置(XRD)による評価では、非晶質ではなかった。
比較例5に係る透明導電性薄膜は、W/In原子数比が0.041であり、本発明の範囲の上限値である0.033を上回っている。そのため、透明導電性薄膜の比抵抗が14×10-4Ωcmと大きくなり、電極としては不適となる結果となった。
比較例6に係る透明導電性薄膜は、W/In原子数比が0.003であり、本発明の範囲の下限値である0.004を下回っている。そのため、比抵抗が5.9×10-4Ωcmとなり、5×10-4Ωcmを超え、電極としては不適となる結果となった。また、結晶化温度が低くなり、スパッタ中に透明導電性薄膜が結晶化してしまい、表面に凹凸が発生し、表面の平均粗さ(Ra)は4nmとなった。膜厚が200nmであったので、表面の平均粗さ(Ra)は膜厚に対しては2%となり、1%を超えてしまった。
なお、比較のために、ITO膜についても、同様の測定をしたが、平均粗さ(Ra)は4.2nmとなり、膜厚の200nmに対して1%を超える平均粗さ(Ra)を示した。
比較例7に係る透明導電性薄膜は、Zn/In原子数比が0.035であり、本発明の範囲の上限値である0.032を上回っている。そのため、波長400nmの光の透過率が58%と小さくなり、60%以下となった。
比較例8に係る透明導電性薄膜は、Mg/In原子数比が0.058であり、本発明の範囲の上限値である0.056を上回っている。そのため、比抵抗は7.8×10-4Ωcmとなり、5×10-4Ωcmよりも大きくなった。
なお、本発明の範囲内の実施例4〜8に係るいずれの透明導電性薄膜においても、結晶ピークは観察されず、非晶質であった。
(実施例9、比較例9)
実施例9および比較例9は、さらなる低抵抗化を目的として、本発明の範囲内の実施例6と同組成の透明導電性薄膜とAg膜との積層を試みたものである。
実施例9は、実施例6と同じ組成で、かつ、同様に作製した膜厚75nmの透明導電性薄膜に、Ag層を5nm成膜し、さらに同組成の透明導電性薄膜を75nmの厚さだけ積層したものである。比較例9は、実施例6と同じ組成で、かつ、同様に作製した膜厚75nmの透明導電性薄膜に、Ag層を7nm成膜し、さらに同組成の透明導電性薄膜を75nmの厚さだけ積層したものである。実施例9および比較例9に係る積層膜について、前記と同様の方法で、比抵抗および波長550nmの光の透過率を測定した。その結果を下記表4に示す。
Figure 2006219357
実施例6に係る透明導電性薄膜の比抵抗の値は3.7×10-4Ωcmであるのに対し、5nmのAg層を設けた実施例9は、比抵抗の値が6×10-5Ωcmとなり、実施例9の1/6程度に小さくなった。また、実施例9は、波長550nmの光の透過率が93%であり、90%を上回っており、光の透過率は良好な結果を示した。
一方、7nmのAg層を設けた比較例9は、比抵抗の値が4×10-5Ωcmとなり、実施例6よりも低下したものの、波長550nmの光の透過率は87%となり、実施例9と比べて6%程度小さくなってしまい、90%を下回った。
実施例4〜9、比較例3〜9で使用した直流マグネトロンスパッタリング装置の概略図である。
符号の説明
1 真空チャンバ
2 ターゲット
3 直流電源
4 ガラス基板
5 供給管
6 マグネット

Claims (13)

  1. タングステン、亜鉛、マグネシウムを含有し、残部がインジウム、酸素および不可避的不純物からなる酸化物焼結体であって、タングステンがインジウムに対する原子数比で0.004〜0.033、亜鉛がインジウムに対する原子数比で0.005〜0.032、マグネシウムがインジウムに対する原子数比で0.007〜0.056の割合で含有される酸化物焼結体。
  2. ビックスバイト型構造の酸化インジウム結晶相を主相とすることを特徴とする請求項1に記載の酸化物焼結体。
  3. 焼結密度が6.5g/cm3以上である請求項1または2に記載の酸化物焼結体。
  4. 平均結晶粒径が5μm以下である請求項1〜3に記載の酸化物焼結体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物焼結体を平板状に加工し、冷却用金属板に貼り合わせたことを特徴とするスパッタリングターゲット。
  6. タングステン、亜鉛、マグネシウムを含有し、残部がインジウム、酸素および不可避的不純物からなる透明導電性薄膜であって、タングステンがインジウムに対する原子数比で0.004〜0.033、亜鉛がインジウムに対する原子数比で0.005〜0.032、マグネシウムがインジウムに対する原子数比で0.007〜0.056の割合で含有される非晶質の透明導電性薄膜。
  7. 比抵抗が5×10-4Ωcm以下である請求項6に記載の透明導電性薄膜。
  8. 表面の平均粗さ(Ra)が、膜厚の1%未満である請求項6または7に記載の透明導電性薄膜。
  9. 波長400nmの光の透過率が65%以上であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の透明導電性薄膜。
  10. 請求項6〜9のいずれかに記載の透明導電性薄膜と、3〜5nmの金属薄膜とを積層させて形成した透明導電性薄膜。
  11. 前記金属薄膜が、銀、銀合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金からなる群から選ばれた1種以上の金属からなる薄膜である請求項10に記載の透明導電性薄膜。
  12. 請求項6〜11のいずれかに記載の透明導電性薄膜を用いた有機デバイス。
  13. 請求項6〜11のいずれかに記載の透明導電性薄膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。
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