JP2006213953A - 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2006213953A
JP2006213953A JP2005026310A JP2005026310A JP2006213953A JP 2006213953 A JP2006213953 A JP 2006213953A JP 2005026310 A JP2005026310 A JP 2005026310A JP 2005026310 A JP2005026310 A JP 2005026310A JP 2006213953 A JP2006213953 A JP 2006213953A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
annealing
secondary recrystallization
temperature
steel sheet
time
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2005026310A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4432789B2 (ja
Inventor
Takeshi Imamura
今村  猛
Yasuyuki Hayakawa
康之 早川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2005026310A priority Critical patent/JP4432789B2/ja
Publication of JP2006213953A publication Critical patent/JP2006213953A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4432789B2 publication Critical patent/JP4432789B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Abstract

【課題】インヒビターを使用しない方向性電磁鋼板において、二次再結晶焼鈍における磁気特性の劣化を防止する。
【解決手段】質量比でC:0.08%以下、Si:2.0%〜8.0%、Mn:0.005〜1.0%を含有しインヒビター成分を含有しないスラブを出発材とする再結晶焼鈍板に825〜1000℃の温度範囲まで昇温して保持する二次再結晶焼鈍を施すに際し、該二次再結晶焼鈍において、焼鈍温度が800℃に到達した時点から焼鈍温度が鋼板の二次再結晶温度に到達した時刻から20時間後の時点までの区間における時間の70%以上をAr雰囲気とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、変圧器や回転機等の鉄心材料に好適な方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板については、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して仕上焼鈍中にゴス(Goss)方位を有する粒を二次再結晶させることが一般的な技術として使用されている。例えば、特許文献1に記載のAlN、MnSを使用する方法、特許文献2に記載のMnS、MnSeを使用する方法が開示され、工業的に実用化されている。
これらのインヒビターを用いる方法は安定して二次再結晶粒を発達させるのに有用な方法であるが、インヒビターはその機能を果たした二次再結晶後に残存すると磁気特性を劣化させる原因となることから、仕上焼鈍(特に仕上焼鈍の後半で行われる純化焼鈍)を1100℃以上の高温としかつ雰囲気を制御することで、地鉄中からインヒビターなどの析出物および介在物を除去する必要がある。
そこで、本発明者らはインヒビター形成元素を含有しない素材において、ゴス方位結晶粒を二次再結晶により発達させる技術を特許文献3、特許文献4などにて提案した。この方法では、インヒビターを純化する工程が不必要となるために、純化焼鈍を高温化する必要がなく、コスト面でもメンテナンス面でも大きなメリットを供する方法であった。
さらに、インヒビター形成元素を含有しない素材においてはインヒビターを鋼中に微細に分散させる必要がないため、従来必須であったインヒビター形成元素を固溶させることを目的とした高温でのスラブ加熱も必要としないことから、エネルギーコストの点からも有利であった。
また、高温でのスラブ加熱を行うと、結晶粒が粗大化して磁気特性の劣化を引き起こすため、鋼中に適量の炭素を含有させてγ変態を生じさせることで結晶粒の粗大化を防ぐ必要があったが、インヒビター形成元素を有さず、高温でのスラブ加熱を必要としない成分系では通常必要であった炭素を含有させないことも可能である。
このように炭素を含まない場合は、再結晶焼鈍において脱炭の必要性がないので乾燥雰囲気で焼鈍することが可能である。この場合、鋼板表層においてSiOの生成を極力低減することができるため、焼鈍分離剤に通常用いられるMgOを用いたとしても、フォルステライト質被膜の形成を抑制できる。かかる場合、硬質のSiOやフォルステライト質被膜が鋼板に存在しないことから、打ち抜き性に優れた方向性電磁鋼板を得ることができるという利点があり、これを特許文献5にて提案した。
その他にも、インヒビター形成元素を含有しない方向性電磁鋼板の応用技術が特許文献6、特許文献7などに開示されている。
特公昭40−15644号公報 特公昭51−13469号公報 特開2000−129356号公報 特開2000−119823号公報 特開2002−220623号公報 特開2001−158950号公報 特開2003−34821号公報 特開平2−200731号公報
しかしながらインヒビターを含まない成分系においては、二次再結晶焼鈍の雰囲気の影響を受けやすく、場合によっては磁気特性が安定しないという問題が生じている。
本発明はインヒビターを使用しない方向性電磁鋼板において、製品の磁気特性の高位安定化を図るものである。
本発明者らは、二次再結晶焼鈍の雰囲気を適切に制御することで製品の磁気特性を安定化する方法を見出し、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法を完成させた。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%でC:0.08%以下、Si:2.0%〜8.0%、Mn:0.005〜1.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物とした鋼片を熱間圧延し、得られた熱延鋼板に焼鈍を施す(熱延板焼鈍と呼ぶものとする)かあるいは施さずに、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで再結晶焼鈍および二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造工程において、前記鋼片の成分を質量比でAlを100ppm以下、N、S、Seを各50ppm以下に低減し、該二次再結晶焼鈍において825〜1000℃の温度範囲まで昇温して保持するとともに、二次再結晶焼鈍温度が800℃に到達した時点をt1、鋼板の二次再結晶温度に到達した時刻から20時間後の時点をt2としたとき、t1からt2の区間における時間の70%以上をAr雰囲気とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
2.二次再結晶焼鈍の後に、脱炭焼鈍および純化焼鈍を施すことを特徴とする、1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.熱間圧延する鋼片がさらに、質量%でNi:0.010〜1.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%、Sn:0.005〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Bi:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.50%、およびCr:0.005〜0.50%から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、インヒビター形成元素を有しない素材において、二次再結晶焼鈍中の磁気特性の劣化を効果的に防止し、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を製造することができる。
まず、本発明を成功に至らしめた実験について説明する。
<実験1>
質量%でC:0.0190%、Si:3.25%、Mn:0.06%、Sol.Al:58ppm、N:29ppm、S:21ppmを含む鋼のスラブ(鋼スラブと呼ぶものとする)を連続鋳造にて製造し、1200℃でスラブ加熱した後、熱間圧延により2.4mmの厚さに仕上げ、その後1050℃で45秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により0.30mmの厚さに仕上げた。さらに、均熱条件が910℃で10秒、乾燥窒素雰囲気下での再結晶焼鈍(一次再結晶焼鈍)を施した後、875℃で75時間保定する二次再結晶焼鈍を施した。
この二次再結晶焼鈍において焼鈍温度が800℃に到達した時点を始点(t1)とし、さらに昇温して二次再結晶温度に到達した後、さらに20時間経過した時点を終点(t2)とする区間において、焼鈍雰囲気をAr雰囲気とする時間を変化させた。このときAr雰囲気とした時間以外の時間ではN雰囲気とした。なお、本実験の場合、上記区間の長さは51時間であった。また、焼鈍温度が800℃に達するまでおよび二次再結晶温度に到達して20時間経過以降は、Ar雰囲気で焼鈍を行った。
ここで二次再結晶温度は、N雰囲気下における50時間の均熱で二次再結晶が完了する、最低の温度と定義する。具体的には、以下の測定方法により決定した。
炉の長手方向に対して温度傾斜をつけた焼鈍炉(例えば炉の低温側が800℃で高温側が900℃等)内に鋼板サンプル(一次再結晶後の鋼板)を静止状態で置き、N雰囲気下で50時間焼鈍する。その結果、温度が低い側は二次再結晶が発現しない微細な一次再結晶粒であり、高い側は二次再結晶が発現した粗大な二次再結晶となることから、その境界を読み取ることができ、およそ、その境界に相当する温度が二次再結晶温度に相当する。本発明では、上記のようにして得られたサンプルを酸洗して二次再結晶組織を観察し、板幅全長に渡って二次再結晶が発現している最も低い温度に相当する箇所を特定し、その箇所における炉内温度を便宜的に二次再結晶温度とした。この温度は一般に800℃より高温である。
本実験の試験材では、上記の方法で測定された二次再結晶温度は862℃であった。
二次再結晶焼鈍の後、平坦化焼鈍を湿潤雰囲気下で行うことによりサンプルを十分脱炭した後、JIS C2550に記載の方法で磁気測定を行った。
サンプルの磁気特性(磁束密度B)と、前記したt1からt2までの区間での経過時間のうちAr雰囲気を導入した時間の割合との関係を図1に示す。この図から、Ar雰囲気を導入した時間の割合が前記区間での経過時間の70%以上であれば良好な磁気特性が得られることが分かる。
焼鈍温度が800℃に到達してから鋼板の二次再結晶温度に到達して20時間後までの時間のうちで70%以上の時間をAr雰囲気で焼鈍することで、鋼板の磁気特性が良好になる理由は明らかではないが、発明者らは次のように推測している。
方向性電磁鋼板の二次再結晶過程においては、鋼板を徐々に昇温し、ある温度に達したときに二次再結晶が開始するような場合、このときの温度を通常は二次再結晶温度と称している。しかし、実際にはこの二次再結晶温度に達した瞬間に二次再結晶が発現するわけではなく、ある潜伏期を経て発現が開始する。この潜伏期は鋼スラブの成分や各種工程条件により変動するが、インヒビターを含有しない成分系では、概ね10〜20時間であることを、鋭意検討の結果、見出したのである。すなわち、二次再結晶温度到達から20時間後には本発明の成分範囲内であれば、どのような条件でもほぼ二次再結晶発現が開始しているといえる。
通常のインヒビターを用いる方向性電磁鋼板においては、二次再結晶直前の雰囲気が鋼板の磁性に大きく影響することは知られている。例えば特許文献8等では二次再結晶焼鈍初期の加熱過程でNHを導入して鋼板を窒化せしめ、(Al,Si)Nを主組成とするインヒビターを形成もしくは既存のインヒビターを強化することで、磁気特性を向上する技術が開示されている。しかしながら、本技術のようなインヒビターを用いない成分系においては、窒化により粒界に析出物が形成されることから、粒界エネルギーに基づくテクスチャーインヒビション効果(集合組織自体が有している結晶粒成長の抑制効果)が損なわれてしまい、結果として磁性が劣化してしまう。よって、NH雰囲気は勿論のこと、N雰囲気も窒化を生じさせるので好ましくない。
また、二次再結晶焼鈍で従来から使用されている雰囲気としては他にH雰囲気があるが、インヒビターを用いない成分系ではH雰囲気を導入すると粒成長が促進されて正常粒成長したような状態となり、二次再結晶が発現しないか、もしくは発現しても結晶方位が不揃いとなり磁気特性が不十分なものとなってしまう。
よって、本発明では、二次再結晶直前、すなわち窒化や正常粒成長が起こりやすくなる800℃に到達してから二次再結晶開始までの間の焼鈍雰囲気をAr雰囲気とすれば、前記した析出物の形成や粒成長を避けることができ、二次再結晶が開始するまでテクスチャーインヒビション効果を持続できて、磁気特性を良好なものとすることができるのである。本発明は上記のような知見に立脚するものである。
次に本発明の構成用件の限定理由について述べる。まず、出発材である鋼組成について説明する。鋼組成は質量比(質量%または質量ppm)で表すものとする。
C:0.08%以下
Cは0.08%を超えると、脱炭処理を行っても磁気時効の起こらない50ppm以下に低減することが困難になるので0.08%以下に限定される。
Si:2.0〜8.0%
Siは鋼の比抵抗を高め、鉄損を改善させるために必要な元素であるが、2.0%未満であると効果がなく、8.0%を超えると鋼の加工性が劣化し、圧延が困難となることから2.0〜8.0%に限定される。
Mn:0.005〜1.0%
Mnは熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005%未満であると効果がなく1.0%を超えると製品板の磁束密度が低下するので、0.005〜1.0%とする。
Al:100ppm以下、N、S、Se:各50ppm以下
インヒビター形成元素であるAlは100ppm以下、N、S、Seについても各々50ppm以下に低減することが、鋼板を良好に二次再結晶させる上で有効である。かかる成分は極力低減することが磁気特性の観点からは望ましく、Alについては70ppm以下がより好ましい。しかし、かかる成分を低減するためにコスト高となる場合があることから上記範囲内であれば残存させても問題はない。
その他の窒化物形成元素であるTi、Nb、B、V等についてもそれぞれ50ppm以下に低減することが、鉄損の劣化を防ぎ、良好な加工性を確保する上で有効である。
Ni:0.010〜1.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%、Sn:0.005〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Bi:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.50%、Cr:0.005〜0.50%
磁気特性向上の観点から、上記の各元素の中から選択される1種または2種以上を含有させることができる。まず、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるためにNiを含有させることができる。含有量が0.010%未満であると磁気特性の向上量が小さく、1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するので、0.010〜1.50%の範囲とする。また、磁気特性、なかでも鉄損を向上させる目的で、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%を含有されることができる。これらの含有量がそれぞれの下限量より少ない場合には鉄損向上効果がなく、上限量を超えるとかえって二次再結晶粒の発達が抑制される。さらに、磁束密度を向上させる目的で、Sn:0.005〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Bi:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.50%、Cr:0.005〜0.50%を含有させることができる。これらの含有量がそれぞれの下限量より少ない場合には鉄損向上効果がなく、上限量を超えるとかえって二次再結晶粒の発達が抑制される。
鋼の残部は鉄および不可避的不純物である。
上記組成を有する溶鋼は鋼片に鋳込むが、通常の造塊法や連続鋳造法でスラブを製造してもよいし、100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。鋼スラブは通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後加熱せずに直ちに熱間圧延してもよい。薄鋳片の場合には熱間圧延しても良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進んでもよい。熱間圧延前のスラブ加熱温度は従来必須であったインヒビターを固溶させるための高温焼鈍を必要としないことから、1250℃以下の低温とすることがコストの面で望ましい。
次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度は800℃以上1100℃以下が好適である。熱延板焼鈍温度が800℃未満であると熱間圧延でのバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を実現することが困難になり二次再結晶の発達が阻害される。熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎるため、整粒の一次再結晶組織を実現する上で極めて不利である。
熱延板焼鈍後、1回もしくは必要に応じて中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施した後、再結晶焼鈍を行う。この冷間圧延の温度を好ましくは100℃〜250℃に上昇させて行うことおよび/または冷間圧延途中で100℃〜250℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、ゴス組織を発達させる点で有効である。
再結晶焼鈍は、脱炭を必要とする場合には雰囲気を湿潤雰囲気とするが、脱炭を必要としない場合は乾燥雰囲気で行っても良い。また、再結晶焼鈍後にC量を100〜250ppm残存させたまま、二次再結晶を行うことにより磁束密度を向上させることができる。再結晶焼鈍後は、浸珪法によってSi量を増加させる技術を併用してもよい。その後、必要に応じて焼鈍分離剤を適用し、その後二次再結晶を発現させるための二次再結晶焼鈍を施す。
二次再結晶焼鈍は、前記の二次再結晶温度以上に昇温する処理を含むものとする。また、二次再結晶焼鈍に際しては必ず825〜1000℃の温度範囲内で保持する処理を施すものとする。ここで、保持とは、上記温度範囲内に維持することを意味し、該温度範囲内で温度を変化させることは自由である。保持温度が825℃未満では、鋼板全体に渡って二次再結晶を充分進行させることが困難となり、良好な磁気特性が得られず、保持温度が1000℃を超えると、所望の方位(ゴス方位やCube方位)以外の方位で二次再結晶するために、磁気特性を劣化させる。
なお、この上記温度域における保持時間は10時間以上とすることが好ましい。また、
100時間以下とすることがより好ましい。
また、本発明では、この二次再結晶焼鈍における雰囲気がとくに重要であり、焼鈍温度が800℃に到達して(t1)から鋼板の二次再結晶温度に到達して20時間後(t2)までの区間では、その区間における時間の割合で70%以上をAr雰囲気とすることが、磁気特性向上のためには必須である。t1からt2までの区間の一部でAr以外の雰囲気を使用する場合は、上述したメカニズムから推測されるように、Ar以外の雰囲気をどのタイミングで導入しても差し支えない。すなわち、該区間のうち、前半に導入しても後半に導入しても、数回に分けて導入してもよい。ただし、二次再結晶前の導入は析出物や粒径に若干の影響を与え、磁気特性にも影響を与える可能性があるため、後半に導入することが望ましい。t1からt2までの区間に適用される、Ar以外の雰囲気としては、Nガス、Hガスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない
なお、ここでいうAr雰囲気は、上述の効果を十分発揮できればよく、工業的に不可避な不純物を含んでいても問題ない。分圧換算で、Arが90%以上であればここではAr雰囲気であるとみなす。
図2〜図5には、二次再結晶焼鈍において焼鈍温度が800℃に到達した時点t1から鋼板の二次再結晶温度に到達して20時間後の時点t2までの区間の例を示す。図3および5における後段の高温処理はいわゆる純化焼鈍である。ただし、既に述べたように本発明の成分系においては高温の純化焼鈍を必要としないので、二次再結晶焼鈍温度と同じ温度で継続して純化焼鈍を施してもよいし、純化焼鈍を省略してもよい。二次再結晶焼鈍あるいはこれに連続する純化焼鈍をまとめて仕上焼鈍とも呼ぶ。
二次再結晶焼鈍後には、平坦化焼鈍を行い、その際、張力を付加して形状を矯正することが鉄損低減のために有効である。また、平坦化焼鈍を湿潤雰囲気で行い脱炭を兼ねてもよい。さらに、平坦化焼鈍前に独立して脱炭焼鈍を施したり、高温での純化焼鈍を施したりしても良い。
鋼板を積層して使用する場合には、鉄損を改善するために、平坦化焼鈍後、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことが有効である。良好な打抜き性を確保するためには樹脂を含有する有機コーティングが望ましく、溶接性を重視する場合には半有機や無機コーティングを適用することが望ましい。
なお、本発明における方向性電磁鋼板とは二次再結晶が発現した電磁鋼板を意味する。よって、ゴス方位のみでなくCube方位(〈100〉<001>方位もしくは〈100〉<011>方位)が二次再結晶している場合なども本特許の請求範囲内とする。
表1に記載の成分を含む鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1200℃でスラブを加熱した後、熱間圧延により2.2mmの厚さに仕上げ、その後1075℃で30秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により0.27mmの厚さに仕上げた。さらに、均熱条件が900℃で10秒、乾燥窒素雰囲気下での再結晶焼鈍を施した後、875℃で50時間保定する二次再結晶焼鈍を施した。
この二次再結晶焼鈍において焼鈍温度が800℃に到達して(t1)から鋼板の二次再結晶温度に到達して20時間後(t2)までの時間で、Ar雰囲気を使用する時間を変化させ(図2のパターン)、表2にAr導入時間割合として示した。この際、Arを使用しない時間はN雰囲気を適用し、このNは二次再結晶焼鈍温度が800℃に達したタイミングで導入した。二次再結晶温度は、長手方向に温度傾斜をつけた炉(780〜900℃)で再結晶焼鈍後の鋼板サンプルを焼鈍し、そのサンプルを酸洗して組織を観察し、どの温度から二次再結晶が開始しているか調査した。その結果も表2に併記した。焼鈍温度が800℃に達するまでおよび二次再結晶温度に到達して20時間経過以降はAr雰囲気で焼鈍を行った。
この後、平坦化焼鈍を湿潤雰囲気下で行い、サンプルを十分脱炭した後、JIS C2550に記載の方法で磁気測定を行った。
得られた磁気特性を表2に示した。同表から明らかなように、本発明範囲内において良好な磁気特性を得られることが分かる。
Figure 2006213953
Figure 2006213953
表3に記載の成分を含む鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1200℃でスラブを加熱した後、熱間圧延により2.4mmの厚さに仕上げ、その後1000℃で60秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により0.30mmの厚さに仕上げた。さらに、均熱条件が900℃で10秒、乾燥窒素雰囲気下での再結晶焼鈍を施した後、900℃で50時間保定する二次再結晶焼鈍を施した。
この二次再結晶焼鈍において、雰囲気は全てAr雰囲気とした。したがってt1〜t2の区間もAr雰囲気で焼鈍された(図2のパターン)。二次再結晶温度は、長手方向に温度傾斜をつけた炉(780〜900℃)で鋼板サンプル(再結晶焼鈍後)を焼鈍し、そのサンプルを酸洗して組織を観察し、どの温度から二次再結晶が開始しているか調査した。その結果も表3に併記した。
この後、平坦化焼鈍を湿潤雰囲気下で行い、サンプルを十分脱炭した後、JIS C2550に記載の方法で磁気測定を行った。
得られた磁気特性を表3に示した。同表から明らかなように、本発明範囲内において良好な磁気特性を得られることが分かる。
Figure 2006213953
表1記載のAおよびBの成分を有する鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1200℃でスラブを加熱した後、熱間圧延により2.6mmの厚さに仕上げ、その後1000℃で30秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により1.8mmの厚さに仕上げた。その後、1025℃で60秒間の中間焼鈍を行なった後、150℃の温間圧延で0.27mmの厚さに仕上げた。さらに、均熱条件が860℃で75秒、湿潤窒素水素混合雰囲気下での再結晶焼鈍を施した後、900℃で75時間保定しその後1150℃で5時間保定する二次再結晶焼鈍を施した。
この二次再結晶焼鈍において焼鈍温度が800℃に到達して(t1)から鋼板の二次再結晶温度に到達して20時間後(t2)までの時間で、Ar雰囲気を使用する時間を表4に記載のごとく変化させた(図3のパターンに近いが前段は徐加熱ではなく均熱)。この際、Arを使用しない時間はN雰囲気を適用し、このNはt1からAr雰囲気を導入し、表4に示すAr導入時間割合で決められた時間が経過したタイミングで導入した。ただしAr導入時間割合が0%の場合は、t1の時点からN雰囲気を導入した。焼鈍温度が800℃に達するまでおよび二次再結晶温度に到達して20時間後以降はN雰囲気とし、1050℃以上では水素雰囲気で焼鈍を行った。この後、平坦化焼鈍を乾燥雰囲気下で行い、その後JIS C2550に記載の方法で磁気測定を行った。得られた磁気特性を表4に示した。同表から明らかなように、本発明範囲内において良好な磁気特性を得られることが分かる。
Figure 2006213953
本発明によれば、インヒビター形成元素を有しない、種々の特性上および生産性上の利点を有する素材を用いて、二次再結晶焼鈍中に磁気特性を劣化させることなく、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を製造することができる。
二次再結晶焼鈍時に際し、t1(焼鈍温度が800℃に到達した時点)からt2(焼鈍温度が鋼板の二次再結晶温度に到達してから20時間後の時点)までの区間においてAr雰囲気を導入した時間の割合と、鋼板の磁気特性の関係を示した図である。 二次再結晶焼鈍時におけるt1からt2までの区間の一例を示した図である。 二次再結晶焼鈍時におけるt1からt2までの区間の他の一例を示した図である。 二次再結晶焼鈍時におけるt1からt2までの区間のさらに他の一例を示した図である。 二次再結晶焼鈍時におけるt1からt2までの区間のさらに他の一例を示した図である。

Claims (3)

  1. 質量%でC:0.08%以下、Si:2.0%〜8.0%、Mn:0.005〜1.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物とした鋼片を熱間圧延し、得られた熱延鋼板に焼鈍を施すかあるいは施さずに、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、ついで再結晶焼鈍および二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造工程において、
    前記鋼片の成分を質量比でAlを100ppm以下、N、S、Seを各50ppm以下に低減し、該二次再結晶焼鈍において825〜1000℃の温度範囲まで昇温して保持するとともに、二次再結晶焼鈍温度が800℃に到達した時点をt1、鋼板の二次再結晶温度に到達した時刻から20時間後の時点をt2としたとき、t1からt2の区間における時間の70%以上をAr雰囲気とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 二次再結晶焼鈍の後に、脱炭焼鈍および純化焼鈍を施すことを特徴とする、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 熱間圧延する鋼片がさらに、質量%でNi:0.010〜1.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%、Sn:0.005〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Bi:0.005〜0.50%、Mo:0.005〜0.50%、およびCr:0.005〜0.50%から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
JP2005026310A 2005-02-02 2005-02-02 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 Expired - Fee Related JP4432789B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005026310A JP4432789B2 (ja) 2005-02-02 2005-02-02 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005026310A JP4432789B2 (ja) 2005-02-02 2005-02-02 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006213953A true JP2006213953A (ja) 2006-08-17
JP4432789B2 JP4432789B2 (ja) 2010-03-17

Family

ID=36977421

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005026310A Expired - Fee Related JP4432789B2 (ja) 2005-02-02 2005-02-02 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4432789B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014129585A (ja) * 2012-12-28 2014-07-10 Jfe Steel Corp 方向性電磁鋼板の製造方法および方向性電磁鋼板製造用の一次再結晶鋼板
CN108291268A (zh) * 2015-12-04 2018-07-17 杰富意钢铁株式会社 方向性电磁钢板的制造方法
JP2020007637A (ja) * 2018-06-29 2020-01-16 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014129585A (ja) * 2012-12-28 2014-07-10 Jfe Steel Corp 方向性電磁鋼板の製造方法および方向性電磁鋼板製造用の一次再結晶鋼板
CN108291268A (zh) * 2015-12-04 2018-07-17 杰富意钢铁株式会社 方向性电磁钢板的制造方法
JP2020007637A (ja) * 2018-06-29 2020-01-16 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4432789B2 (ja) 2010-03-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2644716B1 (en) Method for producing directional electromagnetic steel sheet
EP3530770B1 (en) Hot-rolled steel sheet for electrical steel sheet production and method of producing same
JP6191780B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法および窒化処理設備
WO2007102282A1 (ja) 磁気特性が極めて優れた方向性電磁鋼板の製造方法
JP6531864B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
EP3214188B1 (en) Production method for oriented grain-electromagnetic steel sheet
US20170121785A1 (en) Primary recrystallization annealed sheet for grain-oriented electrical steel sheet production, and method of producing grain-oriented electrical steel sheet
KR102249920B1 (ko) 방향성 전기강판 및 그의 제조방법
JP4432789B2 (ja) 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法
JP2022509864A (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
CN111417737A (zh) 低铁损取向性电磁钢板及其制造方法
JP3893759B2 (ja) 方向性けい素鋼板の製造方法
JP2002030340A (ja) 磁気特性が優れた一方向性珪素鋼板の製造方法
CN111566244A (zh) 取向电工钢板及其制造方法
KR970007030B1 (ko) 고자속밀도급 방향성 전기강판의 제조방법
JP2001123229A (ja) 被膜特性に優れた高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法
WO2023157938A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
CN113166874B (zh) 取向电工钢板及其制造方法
WO2008078947A1 (en) Method of manufacturing grain-oriented electrical steel sheets
JP6607176B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JPH11269543A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2004285402A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP4259351B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
WO2022210504A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
WO2022210503A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20060921

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071025

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090827

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090908

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091105

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091201

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091214

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4432789

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130108

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130108

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140108

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees