JP2006169051A - 誘電体磁器組成物及び磁器コンデンサ並びにこれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明に係る誘電体磁器組成物は、主成分としてBa、Ca、及びTiの酸化物を、副成分としてCr、Mg、及びMnの酸化物を、含有してなる焼結体であって、前記主成分は、組成式(Ba1−xCax)TiO3 (x:0.005〜0.10、(Ba1−xCax)/Ti比:1.003〜1.030)で表される化合物であり、この化合物100mol部に対し、Cr酸化物をCr換算にて0.03〜1.5mol部、Mg酸化物をMg換算にて0.1〜3.0mol部、Mn酸化物をMn換算にて0.01〜1.0mol部、の割合で含み、さらに前記化合物100重量部に対する焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有。
【選択図】 図2
Description
しかしながら、チタン酸バリウムを還元雰囲気において焼成すると焼成中に半導体化して絶縁抵抗を失ってしまい、耐還元性質を有するシェル(shell) 成分をキャパシター内の全粒子に均一に形成できねば製品の絶縁抵抗が低下し寿命が激減する傾向があった。また、たとえ絶縁抵抗が大きいシェルを形成したとしても、厚さが極めて薄い場合には、粒子内のチタン酸バリウムが半導体化し、製品の絶縁抵抗を低下させ、寿命を激減させる虞があった。このような理由から、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体磁器組成物を用いた磁器コンデンサを製造する場合には、組成物の均一化を図るために多大な処理時間や製造コストを要していた。
チタン酸バリウムカルシウムは、Baの位置を置換するCaにより生成される格子欠陥が耐還元性をもたらすので、還元雰囲気において焼成中にシェルが形成されず、誘電体層の薄膜化を図った場合でも高い絶縁抵抗を保てるという長所を備えている。特許文献2には、このようなチタン酸バリウムカルシウムを含む出発原料(主成分)に、酸化物ガラスを副成分として添加した誘電体磁器組成物を用いることにより、誘電率の低下が少なく、静電容量の温度特性がEIA規格に定められたX7R特性を満たす、Niを内部電極とする積層磁器コンデンサが記載されている。また、特許文献2は、チタン酸バリウムカルシウムにRe成分、即ち稀土類成分(但し、ReはY、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、及びYbの中から選択される少なくとも一種以上の元素)を添加することにより、焼成時にRe成分が拡散し、粒子境界近傍及び粒子境界にRe成分が存在するコア-シェル(core-shell)構造が得られることも開示している。
これに対し、耐還元性の優れたチタン酸バリウムカルシウムを用いてなる誘電体磁器組成物において、拡散速度制御をより有利にすることにより、X7R特性を満足しながら誘電特性も優れる誘電体磁器組成物が開発された(特許文献3参照)。
特許文献12には、チタン酸バリウムカルシウムBaCaxTiO3(0.001≦x≦0.02)100モルあたり、MgO:0.5〜4モル、MnO:0.01〜0.5モル、BaO:0.1〜2モル、CaO:0.1〜2モル、及びSiO2 :1〜4モルを含み、これにY2O3、Dy2O3、Ho2O3、及びEr2O3から成るグループの中から選んだ少なくとも1種以上の成分を0.1〜3モル含む誘電体セラミック組成物(以下、誘電体磁器組成物とも呼ぶ)とともに、この誘電体セラミック組成物を含んだ誘電体層、前記誘電体層の間に形成し誘電体層と交代で積層した内部電極層、及び前記内部誘電体層に電気的に接続し誘電体層の両端に形成する外部電極を含む積層セラミックキャパシター(以下、磁器コンデンサとも呼ぶ)が開示されている。
請求項1に係る発明は、主成分として、Ba、Ca、及びTiの酸化物を、副成分として、Cr、Mg、及びMnの酸化物を、含有してなる焼結体であって、前記主成分は、組成式(Ba1−xCax)TiO3 (ただし、xは0.005〜0.10、(Ba1−xCax)/Ti比は1.003〜1.030)で表される化合物であり、この化合物100mol部に対して、前記副成分をなすCrの酸化物をCrに換算して0.03〜1.5mol部、Mgの酸化物をMgに換算して0.1〜3.0mol部、Mnの酸化物をMnに換算して0.01〜1.0mol部、の割合でそれぞれ含み、さらに前記化合物100重量部に対して、焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有させたことを特徴とする誘電体磁器組成物である。
本発明の誘電体磁器組成物は、主成分として、Ba、Ca、及びTiの酸化物を、副成分として、Cr、Mg、及びMnの酸化物を、含有してなる焼結体であって、前記主成分は、組成式(Ba1−xCax)TiO3(ただし、xは0.005〜0.10、(Ba1−xCax)/Ti比は1.003〜1.030) で表される化合物であり、この化合物100mol部に対して、前記副成分をなすCrの酸化物をCrに換算して0.03〜1.5mol部、Mgの酸化物をMgに換算して0.1〜3.0mol部、Mnの酸化物をMnに換算して0.01〜1.0mol部、の割合でそれぞれ含み、さらに前記化合物100重量部に対して焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有させたものである。
また、(Ba1−xCax)/Ti比が1.003より少ないとX5R特性を満足せず、1.030より多くなると焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。ゆえに、xを0.005〜0.10、(Ba1−xCax)/Ti比を1.003〜1.030の範囲にそれぞれ限定することにより、比誘電率(ε)と誘電損失(以下、tanδとも呼ぶ)を所望の値にするとともに、焼結性が向上し、緻密な焼結体を作製することができる。
温度25℃、1kHz、1Vrmsの条件でLCRメーターを用いて静電容量を測定した。この測定によって得られた静電容量、誘電体層の厚さ、及び電極面積から比誘電率を算出した。
誘電損失tanδは、LCRメーターを用い、上記した比誘電率(ε)と同一の条件下(または、25℃の条件下)で測定した。
25℃の条件下で、磁器コンデンサに直流20Vの電圧を2分間印加して絶縁抵抗Rを測定し、この絶縁抵抗、誘電体層の厚さ、及び電極面積から比抵抗ρを算出した。
磁器コンデンサを恒温槽に入れ、−55℃から85℃の各温度において、周波数1kHz、電圧1Vrmsの条件で、LCRメーターを用いて静電容量を測定し、25℃の静電容量に対する静電容量の変化率を算出した。この静電容量の変化率から、X5R特性の適合性を判断した。
150℃の条件下で、磁器コンデンサに直流20Vの電圧を印加して、その経時変化を測定し、各試料の絶縁抵抗値が1×108 Ω・cm以下に到達するまでの時間である。
本発明に係る磁器コンデンサは、上述した誘電体磁器組成物を成形してなるシート(以下、誘電体層とも呼ぶ)と、該シートの片面に形成した内部電極とを複数積層してなる構成を示す一例(以下、磁器コンデンサAと呼ぶ)であり、図2はその一実施形態を示す模式的な断面図である。
図2に示すように、磁器コンデンサAは、上述した誘電体磁器組成物を成形してなるシート(誘電体層)11と、内部電極12とを交互に重ねてなる積層体、及び、内部電極12の特定のものに電気的に接続され、前記積層体の外側面に配される外部電極13、14を備えている。換言すると、この磁器コンデンサAは、符号11、11・・・で示す本発明に係る誘電体磁器組成物を成形してなるシートと、このシート11、11・・・の片面に形成した薄厚の内部電極12、12・・・と、内部電極12、12・・・と垂直方向のシート11端面に設けられた外部電極13、14とから概略構成されている。
この内部電極12は、例えば上記の主たる材料からなる粉末に、有機バインダ、分散剤、有機溶剤、必要に応じて還元剤等を所定量加えた後に混練し、所定の粘度とした導電ペーストを、誘電体磁器組成物を成形してなるシートの片面に、所定のパターンとなるように印刷し、還元雰囲気中で、焼成することにより形成される。
一方、外部電極13、14としては、低抵抗で安価であることからCuが好ましい。この外部電極13、14は、内部電極12を有するシートを複数枚重ねてなる積層体に対して、その外側面に塗布法などを用いて形成される。
以下では、図1に示した、本発明に係る誘電体磁器組成物、及び該誘電体磁器組成物を成型してなる磁器コンデンサの製造方法の一例を示す工程図を用い、具体的に説明する。
以上の工程により、本発明に係る磁器コンデンサAを製造することができる。
次に、これら主成分の原料をボールミルに入れ、水を加えて湿式で約20時間混合・粉砕し、スラリーとした。このスラリーを脱水・乾燥し、1000℃以上で仮焼した後、粉砕して。仮焼結体の平均粒子径が0.2μm以下となるように整粒した。なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いて粉末を観察し、100個の粒子の粒子径を測長して求めた数値である。
<グループ1(G1)>
G1は、組成式(Ba1−xCax)TiO3 のxの値をx=0.02として、Cr添加量の依存性を検討した試料(試料番号1〜7)のグループである。
Cr添加量が0.03[mol部]の場合(試料番号2)は所望の特性になるが、Crを添加しない試料(試料番号1)は、容量温度変化のX5R特性を満足せず、加速寿命も極めて短く観測不能であった。また、Cr添加量が1.50[mol部]の場合(試料番号6)は所望の特性になるが、Cr添加量を1.70[mol部]とした試料(試料番号7)では、容量温度変化のX5R特性を満足しない。したがって、Cr添加量は、0.03〜1.50[mol部]の範囲が好ましい。
G2は、組成式(Ba1−xCax)TiO3 のxの依存性を検討した試料(試料番号8〜13)のグループである。
xを0.005〜0.10の範囲とした場合(試料番号9〜12)は所望の特性になるが、xを0とした場合(試料番号8)には比誘電率が2400より低下する。また、xを0.12とした場合(試料番号13)にも比誘電率が2400より低下する。したがって、xの値は、0.005〜0.10の範囲が好ましい。
G3は、組成式(Ba1−xCax)TiO3 のxの値をx=0.02として、(Ba1−xCax)/Ti比の依存性を検討した試料(試料番号14〜19)のグループである。
(Ba1−xCax)/Ti比が1.003の場合(試料番号15)は所望の特性になるが、1.000の場合(試料番号14)には、容量温度変化のX5R特性を満足せず、加速寿命も極めて短く観測不能であった。また、(Ba1−xCax)/Ti比が1.030の場合(試料番号18)は所望の特性になるが、1.035の場合(試料番号19)には、焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。したがって、(Ba1−xCax)/Ti比は、1.003〜1.030の範囲が好ましい。
G4は、前記組成式(Ba1−xCax)TiO3 で表記される化合物100重量部に対する焼結助剤aの割合[重量部]を検討した試料(試料番号20〜25)のグループであり、G5は、焼結助剤の依存性を検討した試料(試料番号26、27)のグループである。試料番号26は焼結助剤bを、試料番号27は焼結助剤cを使用した場合であり、試料番号22が、焼結助剤をa(Siの酸化物)とした場合に相当する。a〜cの各焼結助剤の構成は表1に示すものとした。
G4の結果より、焼結助剤aの割合が0.2[重量部]の場合(試料番号21)は所望の特性になるが、焼結助剤aの割合が0.1[重量部]の場合(試料番号20)には、焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。また、焼結助剤aの割合が1.2[重量部]の場合(試料番号24)は所望の特性になるが、1.4[重量部]の場合(試料番号25)には、容量温度変化のX5R特性を満足しない。したがって、焼結助剤aの割合は、0.2〜1.2重量部の範囲が好ましい。
G6は、組成式(Ba1−xCax)TiO3 のxの値をx=0.02として、Mg添加量の依存性を検討した試料(試料番号28〜33)のグループである。
Mg添加量が0.1[mol部]の場合(試料番号29)は所望の特性になるが、Mgを添加しない場合(試料番号28)には、容量温度変化のX5R特性が不適合になってしまう。また、Mg添加量が3.0[mol部]の場合(試料番号32)は所望の特性になるが、Mg添加量が3.2[mol部]の場合(試料番号33)には、焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られない。したがって、Mg添加量は、0.1〜3.0[mol部]の範囲が好ましい。
G7は、組成式(Ba1−xCax)TiO3 のxの値をx=0.02として、Mn添加量の依存性を検討した試料(試料番号34〜38)のグループである。
G7の結果より、Mn添加量が0.01[mol部]の場合(試料番号35)は所望の特性になるが、Mnを添加しない場合(試料番号34)には所望の比抵抗が得られない。また、Mn添加量が1.0[mol部]の場合(試料番号37)は所望の特性になるが、Mn添加量が1.2[mol部]の場合(試料番号38)には、比誘電率が2400より低下し、所望の比抵抗も得られない。したがって、Mn添加量は、0.01〜1.0[mol部]の範囲が好ましい。
G8は、組成式(Ba1−xCax)TiO3 のxの値をx=0.02として、一定量のCr、Mg及びMnを添加し、Reに属するY添加量の依存性を検討した試料(試料番号39〜42)のグループである。
また、G9は、Yに代えて、Dyを添加した試料(試料番号43)、Ybを添加した試料(試料番号44)、及びHoを添加した試料(試料番号45)のグループである。
G8の結果より、Y添加量が0.3〜2.0[mol部]の場合(試料番号39〜41)には、Y添加量の増加にともない、所望の特性が得られるとともに、加速寿命を延ばすことができる。しかし、Y添加量が2.2[mol部]の場合(試料番号42)には、容量温度変化のX5R特性が不適合になってしまう。したがって、Y添加量は、0.3〜2.0[mol部]の範囲が好ましい。
上述したY添加量として適正な範囲内にある添加量であれば、Dy、Yb、Hoも所望の特性が得られる。したがって、Reとしては、Yの他にDy、Yb、Hoも有効である。
Claims (7)
- 主成分として、Ba、Ca、及びTiの酸化物を、
副成分として、Cr、Mg、及びMnの酸化物を、含有してなる焼結体であって、
前記主成分は、組成式(Ba1−xCax)TiO3 (ただし、xは0.005〜0.10、(Ba1−xCax)/Ti比は1.003〜1.030)で表される化合物であり、この化合物100mol部に対して、
前記副成分をなすCrの酸化物をCrに換算して0.03〜1.5mol部、Mgの酸化物をMgに換算して0.1〜3.0mol部、Mnの酸化物をMnに換算して0.01〜1.0mol部、の割合でそれぞれ含み、さらに前記化合物100重量部に対して焼結助剤を0.2〜1.2重量部の割合で含有させたことを特徴とする誘電体磁器組成物。 - 前記焼結助剤は、Siの酸化物またはSiを主成分とする酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
- さらに、前記化合物100mol部に対して、前記副成分として、Re(ReはY、Dy、Yb及びHoからなる群から選択される少なくとも1種以上の希土類元素)の酸化物をReに換算して0.3〜2.0mol部の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
- 主成分の原料として、主成分の原料として、Ba、Ca、及びTiの化合物を混合して仮焼結体を形成し、該仮焼結体に、副成分の原料として、Cr、Mg、及びMnのの化合物を添加し、次いで、これを、1100〜1200℃の温度とした還元雰囲気で焼成することを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。
- 誘電体層と内部電極とを交互に重ねてなる積層体、及び
前記内部電極の特定のものに電気的に接続され、前記積層体の外表面に配される外部電極を備え、
前記誘電体層は、請求項1乃至3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物からなることを特徴とする磁器コンデンサ。 - 前記内部電極は、Ni又はNiを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項5に記載の磁器コンデンサ。
- 誘電体層をなすグリーンシートを、請求項1乃至3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物を用いて形成する工程と、
前記グリーンシートの片面に内部電極をなす導電層を形成する工程と、
前記導電層を介するように前記グリーンシートを複数枚、その厚み方向に重ね合わせ、加圧して積層体を形成する工程と、
前記積層体を、1100〜1200℃の温度とした還元雰囲気で焼成する工程と、
前記積層体の外表面に、前記内部電極の特定のものに電気的に接続される外部電極を形成する工程と、
を少なくとも具備したことを特徴とする磁器コンデンサの製造方法。
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