JP2006163106A - コート膜の製造方法、塗布液および光学素子 - Google Patents

コート膜の製造方法、塗布液および光学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 上層との密着性が高く塗れ性の良い、ハードコート層の塗布液およびそれを用いたレンズおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 層の表面特性の1つを示す接触角は、下地となる層を平滑に塗布するために添加されている界面活性剤の特性が影響することに着目し、基材の上に、直に、または他の層を挟んで、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する下地層用の塗布液により、下地層を形成する第1の工程と、下地層の上に、上層用の塗布液により、上層を形成する第2の工程とを設けることで、塗れ性の良いハードコート層を提供できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学素子の表面処理などに用いられるコート層の製造方法に関するものである。
特許文献1には、透明基材上に設けられたハードコート層の塗布液中に界面活性剤を添加すること、またはハードコート層塗布後の表面処理により、親水化されたハードコートフィルムを得て、さらに、水/アルコール主体の導電性塗布溶液を塗布することが記載されている。
特開2001−272503号公報
特許文献1では、ノニオン系、アニオン系、カチオン系などの各タイプの界面活性剤を添加したときに接触角を測定しているが、サンプル数は多くなく、また、界面活性剤を添加したからといって、接触角が60°以下にはならないことが示されている。さらに、近年、眼鏡レンズの製造方法として、ハードコート層の上に、蒸着により無機物質からなる反射防止膜を形成する代りに、金属酸化物微粒子およびシラン化合物を主成分として含むハードコート層の上に、多孔質シリカやシラン化合物を含む塗布液を用いて湿式で、有機系の反射防止膜を形成する製造方法が提案されており、この湿式の製造方法に適したノニオン系(シリコーン系)の界面活性剤についてはほとんど検証されていない。
そこで、本発明においては、シリコーン系の界面活性剤と親水性との関係を検証し、上記の湿式でハードコート層に重ねて反射防止膜を形成するのに適した条件を見出すことを目的としている。そして、上層との密着性が高く、塗れ性の良い、下地層の塗布液、およびそれを用いたレンズなどの光学素子の製造方法を提供することを目的としている。
そこで、本願の発明者らが実験を繰り返して界面活性剤と親水性との関係を求めたところ、シリコーン系の界面活性剤の性質を示すHLB値と、それを添加した塗布液によるコート層の親水性との関係はリニアではなく、HLB値が所定の範囲のときに親水性が向上し、その傾向は界面活性剤の添加量を増すことよりも、むしろ明確化することを見出した。
界面活性剤のHLB(Hydrophile Lipophile Balance)値とは、一般に界面活性剤の性質を評価するのに用いられている。これは、エチレンオキシド付加型非イオン系界面活性剤について、親油基に付加された親水基が無限に長く親水性が最も大きい仮想的な化合物を考えて、この化合物のHLB値を20と定め、また親水基の全く無い親油性の化合物についてこのHLB値を0として、それらとの相対値として化合物のHLB値を求めるものである。すなわち、HLB値は親油性と親水性のバランスを表す指標と言える。したがって、HLB値の大きな界面活性剤を添加した塗布液により製造したコート層が、より親水性であると考えられる。しかしながら、本願の発明者らの実験により、HLB値が18を越える界面活性剤を添加した塗布液によるコート層の親水性は、HLB値が15程度の界面活性剤を添加した塗布液によるコート層の親水性より低いことが初めて示された。
すなわち、本願の発明者らの測定によると、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する下地層用の塗布液により、接触角が低く、例えば、60°あるいはそれ以下となり、良好な親水性を示すコート層が得られた。そして、HLB値が13以下あるいはHLB値が18以上の界面活性剤を添加した塗布液によるコート層の接触角は上記のコート層よりも高く、親水性は低くなることが判明した。
そこで、本発明においては、基材の上に、直に、または他の層を挟んで、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する下地層用の塗布液により、下地層を形成する第1の工程と、下地層の上に、上層用の塗布液により、上層を形成する第2の工程とを有するコート膜の製造方法を提供する。HLB値が14〜17の範囲の界面活性剤を添加した塗布液により形成された下地層は親水性が高いので、上層用の塗布液により上層を形成するときに、上層用の塗布液のハジキの発生が少ない。したがって、下地層と上層との密着性が向上し、耐久性などの物理的な性質の優れたコート膜を基材の上に製造することができる。下地層は、基材の上に直接塗布する場合でも良く、さらに、下地層と基材との間にプライマー層などを挟んで塗布する場合でも良い。また、上層を、さらに上層の下地層として、複数の層を積層したコート膜を本発明により製造することも可能である。
本発明は、レンズ基材などの光学基材にコーティングしてレンズなどの光学素子を製造する方法に適用できる。すなわち、本発明においては、光学基材の上に、直に、または他の層を挟んで、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する下地層用の塗布液により、下地層を形成する第1の工程と、下地層の上に、上層用の塗布液により、上層を形成する第2の工程とを有する光学素子の製造方法を提供できる。
光学基材は、例えば、レンズ基材であり、下地層はハードコート層である。本発明のシリコーン系の界面活性剤は、下地層用の塗布液として、金属酸化物微粒子およびシラン化合物を主成分として含むものに適している。さらに、この下地層に重ねて上層として反射防止膜を形成できる。この場合、上層用の塗布液は、中空シリカゾルおよびシラン化合物を含有したものを採用でき、本発明は、上述した湿式法によりレンズを製造する場合に適したものである。そして、本発明を採用することにより、下地層であるハードコート層と、上層である反射防止膜との密着性を向上できるので、反射防止膜の耐久性、耐摩耗性などを向上できる。
本発明は、コート膜の下地層を形成するための下地層用の塗布液であって、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する塗布液を提供することを含む。この塗布液は、ハードコート層用としては、金属酸化物微粒子およびシラン化合物を主成分として含むものが望ましい。
さらに、ハードコート層用の本発明の塗布液は、多官能エポキシ化合物を含有することが望ましい。柔軟性あるいは接着性に寄与する多官能エポキシ化合物を加えることで、基材との密着性を向上できる。
本発明は、光学基材と、その上に、直に、または他の層を挟んで、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する下地層用の塗布液により形成された下地層と、下地層の上に、上層用の塗布液により形成された上層とを有する光学素子を提供することを含む。
例えば、光学基材はレンズ基材であり、下地層はハードコート層であり、下地層用の塗布液は、金属酸化物微粒子およびシラン化合物を主成分として含み、上層は反射防止膜であり、上層用の塗布液は、中空シリカゾルおよびシラン化合物を含有するものである。
本発明において、ハードコート層用の塗布液に含まれる金属酸化物としては、メタノール分散アンチモン酸化物被覆酸化チタン含有複合酸化物ゾル、あるいは、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる1種以上の金属酸化物からなる、微粒子または複合微粒子を含む。金属酸化物微粒子の最外表面をシラン化合物で改質処理を施した微粒子であっても良く、混合物、固溶状態、他の複合状態で含んでいるものが挙げられる。酸化チタンは無定型であっても、アナタース型、ルチル型、ブルッカイト型或いはペロブスカイト型チタン化合物であっても良いが、ルチル型の酸化チタンが望ましい。ルチル型は、1.67程度の高屈折率を実現でき、さらに酸化チタンのように光活性が強くないので、ハードコート層の他の主成分であるシランカップリング剤(シラン化合物)等の有機物を分解することもなく安定した性能を発揮できるためである。
また、これらは分散媒たとえば水やアルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたものである。また複合酸化物微粒子は、その表面が有機ケイ素化合物(シラン化合物)又はアミン系化合物で処理され改質されていても良い。この際用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、あるいは二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等がある。処理に際しては加水分解性基を未処理で行ってもあるいは加水分解して行ってもよい。また処理後は、加水分解性基が微粒子の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部残存した状態でも安定性には何ら問題がない。またアミン系化合物としてはアンモニウムまたはエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンがある。これら有機ケイ素化合物とアミン化合物の添加量は微粒子の重量に対して1から15%程度の範囲内で加える必要がある。いずれも粒子径は約1〜300ミリミクロンが好適である。
ハードコート層または反射防止膜の塗布液に含まれるシラン化合物は、下記の一般式(A)で表される有機ケイ素化合物である成分を含有する組成物を用いて成膜することが好ましい。
SiX 3−n (A)
(式中、nは0または1である。)
ここで、Rは、重合可能な反応基または加水分解可能な官能基をもつ有機基であり、重合可能な反応基の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、アミノ基等が挙げられ、加水分解可能な官能基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
は炭素数1〜6の炭化水素基であり、具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。また、Xは加水分解可能な官能基であり、その具体例は、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
具体例としては、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトシキ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、テトラメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもかまわない。また、加水分解を行ってから用いた方がより有効である。
本発明において、ハードコート層用の塗布液に含まれる多官能性エポキシ化合物としては、例えば、過酸化法で合成されるポリオレフィン系エポキシ樹脂、シクロペンタジエンオキシドやシクロヘキセンオキシドあるいはヘキサヒドロフタル酸とエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエステルなどの脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAやカテコール、レゾシノールなどの多価フェノールあるいは(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ソルビトールなどの多価アルコールとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油、ノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリンから得られるエポキシノボラック、フェノールフタレインとエピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートアクリル系モノマーあるいはスチレンなどの共重合体、さらには上記エポキシ化合物とモノカルボン酸含有(メタ)アクリル酸とのグリシジル基開環反応により得られるエポキシアクリレートなどが挙げられる。
さらに、多官能性エポキシ化合物としては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒバリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル、等の脂肪族エポキシ化合物、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。
さらに、ハードコート層用の塗布液に含まれる成分は、上記に限定されない。例えば、ハードコート層用の塗布液には、上記成分の他に必要に応じて添加剤が含まれる。硬化触媒として、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類、Cu(II),Zn(II),Co(II),Ni(II),Be(II),Ce(III),Ta(III),Ti(III),Mn(III),La(III),Cr(III),V(III),Co(III),Fe(III),Al(III),Ce(IV),Zr(IV),V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトネ−ト、アミン、グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。この中でも最も好ましい硬化触媒としては、過塩素酸マグネシウム、Al(III),Fe(III)のアセチルアセトネ−トが挙げられる。添加量は、固形分濃度の0.01〜5.0重量%の範囲内が望ましい。
また、製造過程においては、上記成分に加えて溶剤などが用いられる。希釈に用いられる溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等がある。また、必要に応じて、少量の帯電防止剤、分散染料・油溶染料・蛍光染料・顔料、フォトクロミック化合物等を添加し、層を形成するコーティング液の塗布性および硬化後の被膜性能を改良することもできる。
以下では本発明を用いて光学素子として眼鏡用のレンズを製造した実施例および比較例に基づき、本発明についてさらに説明する。なお、以下に説明する実施例および比較例により得られたレンズの特性を図1に纏めて示してある。
(実施例1)
(ハードコート層)
レンズ基板の上にハードコート層を下地層として塗布するための塗布液(下地層用の塗布液)HC1を次のように調合した。先ず、プロピレングリコールメチルエーテル167部、ルチル型酸化チタン複合ゾル(触媒化成工業(株)製、商品名オプトレイク1120Z)625部を混合した後、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン141部、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、商品名デナコールEX313)25部を混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液39部を撹拌しながら滴下し、4時間撹拌した。
そして、一昼夜熟成させた後、Fe(III)アセチルアセトネート1.9部、HLB値が15のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名FZ−2162)0.15部、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業(株)製、商品名「アンテージクリスタル」)1.3部を添加して、塗布液HC1を得た。また、この塗布液HC1の界面活性剤の濃度は150ppmである。
この塗布液HC1をディッピング方式(引き上げ速度35cm毎分)でレンズ基材に塗布した。レンズ基材としては、セイコーエプソン(株)製、セイコースーパーソブリン用レンズ生地(以下SSVと略す。)を用いた。以下の実施例および比較例においても同じ基材を光学基材として用いている。塗布後、80℃で30分間風乾した後、120℃で90分焼成を行い2.3μm厚のハードコート層が形成されたレンズを得た。
接触角計(「CA−D型」協和科学(株)製)を使用し、液滴法により、本例により形成されたハードコート層の水接触角を測定したところ、ハードコート層の表面接触角θは約60°であった。
(反射防止膜)
次に、反射防止膜用の塗布液(低屈液)AR1を調製した。先ず、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン14部、テトラメトキシシラン15部を混合したものに0.1N塩酸水溶液13部を撹拌しながら滴下し、さらに4時間撹拌後一昼夜熟成させた。この混合液にプロピレングリコールメチルエーテル878部、中空シリカゾル(触媒化成工業(株)製、商品名オスカル特殊品)80部、過塩素酸マグネシウム0.04部、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7001)0.3部を添加して、反射防止膜用の塗布液AR1を得た。
上記にて形成されたハードコート層を下地層として、この塗布液AR1を、上層用の塗布液として、湿式(ディッピング方式)により、引き上げ速度15cm毎分で、下地層が形成されたレンズに塗布し、反射防止膜を上層として形成した。この際、反射防止膜の塗布液AR1はハードコート層上に、ハジキが発生すること無く塗布でき、得られた反射防止膜は、外観も良好であった。塗布後80℃で30分間風乾した後、120℃で60分焼成を行い、約100nm厚の反射防止膜(低屈膜)がハードコート層に重ねて成膜されたレンズを得た。
(実施例2)
(ハードコート層)
異なるハードコート層用の塗布液HC2を調合した。この塗布液HC2は、実施例1において調合した塗布液HC1と界面活性剤の添加量を除いて同一であり、塗布液HC2では、HLB値が15の界面活性剤FZ−2162を0.3部(塗布液中の界面活性剤の濃度は300ppm)加えた。
この塗布液HC2を用いて実施例1と同様の方法によりレンズ基材の上にハードコート層を形成した。本例において、生成されたハードコート層の表面接触角θを実施例1と同様の方法で測定したところ、約60°という結果が得られた。
(反射防止膜)
実施例1において調合した反射防止膜用の塗布液AR1を、実施例1と同じ方法によりハードコート層が形成されたレンズに塗布し、反射防止膜を形成した。本例においても、反射防止用の塗布液AR1は、ハードコート層の上に、ハジキが発生することなく塗布できた。
(比較例1)
(ハードコート層)
さらに異なるハードコート層用の塗布液HC3を調合した。この塗布液HC3は、実施例1において調合した塗布液HC1とは、界面活性剤を除いて同一である。塗布液HC3は、界面活性剤FZ−2162の代わりに、HLB値が7のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7001)0.15部(塗布液中の界面活性剤の濃度は150ppm)を添加した。
この塗布液HC3を用いて実施例1と同様の方法によりレンズ基材の上にハードコート層を形成した。本例において、生成されたハードコート層の表面接触角θを実施例1と同様の方法で測定したところ、約80°という結果が得られた。
(反射防止膜の形成)
実施例1において調合した反射防止膜用の塗布液AR1を、実施例1と同じ方法によりハードコート層が形成されたレンズに塗布し、反射防止膜を形成しようとした。しかしながら、反射防止用の塗布液AR1は、塗布後にハジキが発生し、きれいな膜を得ることができなかった。
(比較例2)
(ハードコート層)
さらに異なるハードコート層用の塗布液HC4を調合した。この塗布液HC4は、実施例1において調合した塗布液HC1とは、界面活性剤を除いて同一である。塗布液HC4は、界面活性剤FZ−2162を0.15部添加する代わりに、HLB値が7のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7001)0.30部(塗布液中の界面活性剤の濃度は300ppm)を添加した。
この塗布液HC4を用いて実施例1と同様の方法によりレンズ基材の上にハードコート層を形成した。本例において、生成されたハードコート層の表面接触角θを実施例1と同様の方法で測定したところ、約85°という結果が得られた。
(反射防止膜の形成)
実施例1において調合した反射防止膜用の塗布液AR1を、実施例1と同じ方法によりハードコート層が形成されたレンズに塗布し、反射防止膜を形成しようとした。しかしながら、反射防止用の塗布液AR1は、塗布後にハジキが発生し、きれいな膜を得ることができなかった。
(比較例3)
(ハードコート層)
さらに異なるハードコート層用の塗布液HC5を調合した。この塗布液HC5は、実施例1において調合した塗布液HC1とは、界面活性剤を除いて同一である。塗布液HC5は、界面活性剤FZ−2162の代わりに、HLB値が18のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名FZ−2161)0.15部(塗布液中の界面活性剤の濃度は150ppm)を添加した。
この塗布液HC5を用いて実施例1と同様の方法によりレンズ基材の上にハードコート層を形成した。本例において、生成されたハードコート層の表面接触角θを実施例1と同様の方法で測定したところ、約66°という結果が得られた。
(反射防止膜の形成)
実施例1において調合した反射防止膜用の塗布液AR1を、実施例1と同じ方法によりハードコート層が形成されたレンズに塗布し、反射防止膜を形成しようとした。しかしながら、反射防止用の塗布液AR1は、塗布後にハジキが発生し、きれいな膜を得ることができなかった。
(比較例4)
(ハードコート層)
さらに異なるハードコート層用の塗布液HC6を調合した。この塗布液HC6は、実施例1において調合した塗布液HC1とは、界面活性剤を除いて同一である。塗布液HC6は、界面活性剤FZ−2162を0.15部添加する代わりに、HLB値が18のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名FZ−2161)0.3部(塗布液中の界面活性剤の濃度は300ppm)を添加した。
この塗布液HC6を用いて実施例1と同様の方法によりレンズ基材の上にハードコート層を形成した。本例において、生成されたハードコート層の表面接触角θを実施例1と同様の方法で測定したところ、約70°という結果が得られた。
(反射防止膜の形成)
実施例1において調合した反射防止膜用の塗布液AR1を、実施例1と同じ方法によりハードコート層が形成されたレンズに塗布し、反射防止膜を形成しようとした。しかしながら、反射防止用の塗布液AR1は、塗布後にハジキが発生し、きれいな膜を得ることができなかった。
(比較例5)
(ハードコート層)
さらに異なるハードコート層用の塗布液HC7を調合した。この塗布液HC7は、実施例1において調合した塗布液HC1とは、界面活性剤を除いて同一である。塗布液HC7は、界面活性剤FZ−2162の代わりに、HLB値が13のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7604)0.15部(塗布液中の界面活性剤の濃度は150ppm)を添加した。
この塗布液HC7を用いて実施例1と同様の方法によりレンズ基材の上にハードコート層を形成した。本例において、生成されたハードコート層の表面接触角θを実施例1と同様の方法で測定したところ、約69°という結果が得られた。
(反射防止膜の形成)
実施例1において調合した反射防止膜用の塗布液AR1を、実施例1と同じ方法によりハードコート層が形成されたレンズに塗布し、反射防止膜を形成しようとした。しかしながら、反射防止用の塗布液AR1は、塗布後にハジキが発生し、きれいな膜を得ることができなかった。
(比較例6)
(ハードコート層)
さらに異なるハードコート層用の塗布液HC8を調合した。この塗布液HC8は、実施例1において調合した塗布液HC1とは、界面活性剤を除いて同一である。塗布液HC8は、界面活性剤FZ−2162の代わりに、HLB値が13のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7604)0.30部(塗布液中の界面活性剤の濃度は300ppm)を添加した。
この塗布液HC8を用いて実施例1と同様の方法によりレンズ基材の上にハードコート層を形成した。本例において、生成されたハードコート層の表面接触角θを実施例1と同様の方法で測定したところ、約75°という結果が得られた。
(反射防止膜の形成)
実施例1において調合した反射防止膜用の塗布液AR1を、実施例1と同じ方法によりハードコート層が形成されたレンズに塗布し、反射防止膜を形成しようとした。しかしながら、反射防止用の塗布液AR1は、塗布後にハジキが発生し、きれいな膜を得ることができなかった。
これらの実施例1および2、比較例1から6の結果を纏めた図1から分かるように、実施例1および2においては成膜されたハードコート層は、表面接触角が約60°と親水性が高く、それを下地層として反射防止膜を塗布により形成する際は、ハジキもなく、外観が良好な反射防止膜を備えたレンズを製造できた。実施例1および2では、ハードコート層の塗布液に含まれる界面活性剤の濃度を変えているが、濃度による表面接触角に変化は見られなかった。
一方、比較例1〜6において成膜されたハードコート層は、表面接触角が69°〜85°と大きく、実施例1および2で得られたハードコート層に比べて、親水性が低くなっている。このため、実施例1および2と同様の方法に、それを下地層として反射防止膜を成膜しようとしても、塗布する際にハジキが発生し、綺麗な反射防止膜を備えたレンズを製造することができなかった。さらに、比較例1〜6においては、同じHLB値の界面活性剤の添加量を増やすと、それにより形成されたハードコート層の表面接触角が増大するという結果が得られた。したがって、HLB値が所定の範囲以外の場合は、界面活性剤の添加量を増やすことは、親水性に逆に悪影響を与える可能性があるという結果が得られた。
これらの結果より、下地層を塗布するための下地層用の塗布液に添加するシリコーン系の界面活性剤は、HLB値が14〜17であることが望ましいことが判明した。また、HLB値がこの14〜17の範囲以外の場合は、界面活性剤の添加量を増やしても、親水性を改善することができず、むしろ親水性が低下するが、本発明に係るHLB値が14〜17の範囲であれば、塗布液中の界面活性剤の濃度は150ppm程度で十分な効果が得られることが判明した。
なお、上記では基板がプラスチックレンズを例に説明しているが、ガラスレンズであっても同様の効果を得ることができる。さらに、上記では、プラスチックレンズ(レンズ基板)の上に直にハードコート層を形成した例を示しているが、これに限らず、レンズ基板の上にプライマー層を設け、このプライマー層を介してハードコート層を形成したものにも適用できる。
また、ハードコート層は、多官能エポキシ化合物を含まないものであっても良いが、柔軟性や密着性に寄与するため、上記で説明したように、多官能エポキシ化合物(グリセロールポリグリシジルエーテル)を含むものが望ましい。さらに、反射防止膜用の塗布液に多官能エポキシ化合物を含ませることも、密着性の向上の点からも有用である。
さらに、本発明に適用可能なレンズ(光学素子)は、眼鏡レンズに限らず、カメラ用ンレンズであっても良く、さらに、本発明は、その他の光学素子、例えば、プリズムなどにも適用できる。
実施例および比較例のレンズの評価を示す図である。

Claims (8)

  1. 基材の上に、直に、または他の層を挟んで、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する下地層用の塗布液により、下地層を形成する第1の工程と、
    前記下地層の上に、上層用の塗布液により、上層を形成する第2の工程とを有する、コート膜の製造方法。
  2. 光学基材の上に、直に、または他の層を挟んで、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する下地層用の塗布液により、下地層を形成する第1の工程と、
    前記下地層の上に、上層用の塗布液により、上層を形成する第2の工程とを有する、光学素子の製造方法。
  3. 請求項2において、前記光学基材はレンズ基材であり、前記下地層はハードコート層であり、前記下地層用の塗布液は、金属酸化物微粒子およびシラン化合物を主成分として含み、前記上層は反射防止膜であり、前記上層用の塗布液は、中空シリカゾルおよびシラン化合物を含有する光学素子の製造方法。
  4. コート膜の下地層を形成するための下地層用の塗布液であって、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する塗布液。
  5. 請求項4において、さらに、金属酸化物微粒子およびシラン化合物を主成分として含み、光学素子の表面コートにおけるハードコート層を形成するために塗布される塗布液。
  6. 請求項5において、さらに、多官能エポキシ化合物を含有する塗布液。
  7. 光学基材と、その上に、直に、または他の層を挟んで、HLB値が14〜17であるシリコーン系界面活性剤を含有する下地層用の塗布液により形成された下地層と、
    前記下地層の上に、上層用の塗布液により形成された上層とを有する光学素子。
  8. 請求項7において、前記光学基材はレンズ基材であり、前記下地層はハードコート層であり、前記下地層用の塗布液は、金属酸化物微粒子およびシラン化合物を主成分として含み、前記上層は反射防止膜であり、前記上層用の塗布液は、中空シリカゾルおよびシラン化合物を含有する光学素子。
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