JP2006161218A - 軽量性に優れた異形断面繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】天然シルクに極めて近い高級感のある光沢やタッチを有するだけでなく、軽量性、嵩高性、白色性、遮光性、保温性が良好で、さらに微細空隙の耐久性に優れているために製品の製造工程通過性や、製品の耐久性が優れた軽量性に優れた異形断面繊維を提供する。
【解決手段】ポリマAおよびポリマBの互いに非相溶である2成分がブレンドされてなる繊維であって、繊維横断面が異形断面であり、繊維内部に繊維軸方向に不連続である微細空隙を多数有し、かつ繊維横断面において、外接円と内接円との間に包含される微細空隙の平均直径d1と、内接円の内側に包含される微細空隙の平均直径d2が下式を満足することを特徴とする軽量性に優れた異形断面繊維軽量性である。
d2/d1≧1.30
繊維の見かけ比重≦ポリマAの比重×0.9
【選択図】図1

Description

本発明は軽量性に優れた異形断面繊維に関する。さらに詳しくは、特定のポリマー組成で構成されるブレンド型の異形断面繊維であって、繊維内部に繊維表層部から繊維中央部に渡って空隙の直径が変化している傾斜構造を有するため、異形断面繊維の表面による光反射と、繊維内部の空隙による光反射が適度に干渉し合った光反射が生じるために、従来の異形断面繊維では得られなかった、天然シルクに極めて近い高級感のある光沢を呈する軽量性に優れた異形断面繊維に関するものである。
また傾斜的に存在する空隙は、その数が多数で、かつ繊維軸方向に連続していない孔構造であるため外力に対して優れた耐久性を持ち、該空隙がクッションの効果を果たすことにより、屈曲や摩耗によっても繊維断面形状、空隙の傾斜構造が変化しにくく、実使用においても光沢感が損なわれないものであって、さらに軽量性に優れた微細な空隙を多数有することにより、嵩高性、白色性、遮光性、保温性や適度な張り・腰も有するため、特にスーツ、ドレスなどのフォーマル衣料や、裏地、下着、水着あるいはスポーツ衣料などの衣料用途に好適であり、ハンカチ、スカーフ、ネクタイなどの装飾品用途、各種車両内装材や、カーペットやカーテンなどの産資用途にも好適に用いられる軽量性に優れた異形断面繊維に関するものである。
一般に合成繊維は表面形状が単調であるため表面反射が強め合ってギラツキのある光沢となり易く、プラスチック的な冷たい感じがあり、天然繊維と比較して低品位となり易い懸念があった。また肌と接触した時にヌメリ感があるという欠点を生じ易いこと問題があった。そこで古くから繊維の断面を異形断面とすることにより、繊維の表面における光反射特性を改善して繊維にマイルドな光沢を付与し、肌との接触面積を低減してヌメリ感を抑制することで、天然繊維ライクな繊維とする研究が行われてる。特に高級天然繊維の代表であるシルク調光沢を呈する合成繊維の開発は活発であり、様々な断面形状の合成繊維が提案されている。
例えば、単繊維横断面を実質的に点対称な三角断面とすることにより独特の風合いを有する繊維が提案されている(特許文献1参照)。該異形断面繊維は、確かに繊維の表面形状の単調さによって生じるヌメリ感を抑制することができ、肌との不快感を軽減した繊維ではあるものの、単に異形断面としただけでは天然繊維と比較して単調な光沢となり易く、光沢感の不十分な繊維であった。
そこで、繊維の表面にミクロな凹凸を付与することにより、さらに繊維の表面反射特性を改善し、より天然繊維に近い光沢を呈する繊維とする提案がなされている。
例えば、天然シルク調のマイルドな光沢を発現させることを目的とし、繊維の表面に筋状溝とミクロボイドを有する、3〜8葉型のポリエステル異形断面繊維が提案されている(特許文献2参照)。該技術はポリエステルと、熱アルカリ水溶液に対する溶解速度が大きい共重合ポリエステルと、無機粒子をブレンドしたポリマで構成した異形断面繊維をアルカリ減量することにより、繊維表面にミクロボイドと筋状溝を形成せしめ、表面形態を改質しない通常の多葉型異形断面繊維と比較してマイルドな光沢を有する繊維を提供するものである。しかしながら、天然品と比較するとやはり品位に劣るものしか得がたく、表面形状の改質による光沢感の改善には限界のある技術であった。またその光沢感を生む異形断面と表面のミクロな凹凸は、実使用における、繊維の屈曲、伸長、あるいは摩耗によって変化し易く、光沢感は損なわれてしまうものであった。
他方、近年高齢化に伴う軽量衣料の拡大、アウトドアスポーツの人気・定着による軽量あるいは保温衣料の拡大、省エネルギー化に伴う車両内装材の軽量化などの面から、軽量繊維の要望は年々強くなっている。また、最近では衣料用素材に限らず、カーシートやカーペットなどの産業資材用途においても高級感のある外観、例えば天然シルク調の光沢が要望されるようになった。しかしながら、これら両特性を十分満足する繊維は従来得られていなかった。
繊維に軽量性を付与する技術として、繊維軸方向に沿って連続した孔径0.14μm以上の中空部を形成せしめた多孔型中空繊維が提案されている(特許文献3参照)。該技術は海島状複合繊維において島部に熱水又はアルカリに可溶な成分を用い、島部を溶出することによって繊維の長さ方向に沿って連続した中空部を有する軽量性に優れた多孔中空繊維とすることが出来る。しかしながら繊維軸方向に連続した孔であるために中空部が変形しやすく、またに断面内に存在する中空部の大きさが同一であるため、中空部で反射された光が干渉により強め合ってギラつき易く、例え楕円や三角断面などの断面形状としても、合繊ライクの外観を呈する繊維となってしまう懸念があった。
また、ポリエステル樹脂と分子量6〜17万のスチレン・マレイミド樹脂からなる軽量ポリエステル繊維が提案されている(特許文献4参照)。ポリエステル樹脂とスチレン・マレイミド樹脂の剥離で発現する多数の微細空洞部を有するため軽量性に優れる。
しかしながら該軽量ポリエステル繊維は、ポリエステルとの親和性の高いマレイミド構造を有するスチレン・マレイミド樹脂を配合しているため、ポリエステルとスチレン・マレイミドによる界面剥離が起こり難く、空隙生成性が低いことから、空隙が繊維横断面の中央部に局在化し易く、結果として繊維の光沢感は単調となり易いものであった。また、スチレン・マレイミド樹脂はマレイミド構造に由来して非常に黄味が強く、繊維自体が黄変し易いため、天然シルク調の光沢感とはほど遠い、衣料用途しては用い難い繊維であった。
既に本発明者らは繊維に軽量性を付与するため、ポリエステルとマレイミド構造を持たない熱可塑性ポリマ(除くポリエステル)とからなる海島状ポリエステル複合繊維において、海島状の複合界面の少なくとも一部に空隙を形成せしめることで、繊維の見かけ比重が1.2以下である軽量性に優れるポリエステル複合繊維を提案している(特許文献5参照)。該技術は、繊維内部に微細空隙が多数存在することで、優れた軽量性を保持し、該空隙が微細であることにより繊維物性にも優れ、衣料用途、産業用途に好適な軽量繊維を得ることが出来る。本発明者らは該技術についてさらに詳細に検討を進め、特定の構成とすることで、繊維横断面内において、繊維内部に繊維表層部から繊維中央部に渡って、空隙の直径が空隙の直径が段階的に変化した空隙分布を形成せしめることが出来ることを見出したのである。本発明ではこの空隙の直径が段階的に変化した空隙分布を傾斜構造と呼ぶが、具体的には繊維横断面において繊維表層部から繊維中央部に向かって、それぞれの位置に存在する空隙の直径が段階的に大きくなる空隙分布を意味する。そして繊維内部にこのような傾斜構造を形成せしめることで、繊維の光沢感は著しく変化することを見いだした。しかしながら、単純な丸形繊維では繊維表面で光が直接反射され易く、繊維内部の空隙の傾斜構造を十分に生かし切れていなかった。また丸形繊維では繊維横断面における空隙の傾斜構造が、繊維表層部から繊維中央部に向かう全ての方向で等方的になり易く、結果として光沢は単調になる傾向があった。
特公昭36−20770号公報 特開平11−222725号公報(特許請求の範囲、段落[0001]) 特開平8−226009号公報(特許請求の範囲、段落[0011]) 特開2000−154427号公報(特許請求の範囲、段落[0012]) 特開2004−183196号公報
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、天然シルクに極めて近い高級感のある光沢やタッチを有するだけでなく、軽量性、嵩高性、白色性、遮光性、保温性が良好で、さらに微細空隙の耐久性に優れているために製品の製造工程通過性や、製品の耐久性が優れた軽量性に優れた異形断面繊維を提供することにある。
本発明は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のポリマ組成で構成されるブレンド異形断面繊維の内部に、空隙の傾斜構造を形成せしめることにより、繊維表面による光反射と、繊維内部の空隙の傾斜構造による光反射が相乗効果的に作用し、従来技術の欠点を解消でき、かつ更なるメリットをも付与しうることを見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、ポリマAおよびポリマBの互いに非相溶である2成分がブレンドされてなる繊維であって、繊維横断面が異形断面であり、繊維内部に繊維軸方向に不連続である微細空隙を多数有し、かつ繊維横断面において、外接円と内接円との間に包含される微細空隙の平均直径d1と、内接円の内側に包含される微細空隙の平均直径d2が下式を満足することを特徴とする軽量性に優れた異形断面繊維である。
d2/d1≧1.30
繊維の見かけ比重≦ポリマAの比重×0.9
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維は、繊維の内部に、繊維表層部から繊維中央部に渡って空隙の直径が変化している傾斜構造を有することにより、異形断面繊維の表面による光反射と、繊維内部の空隙の傾斜構造による光反射が相乗効果的に作用し、天然シルクに極めて近い高級感のある光沢を有する。また軽量性、白色性、遮光性、嵩高性、保温性や張り・腰が良好であり、布帛とした場合には繊維間においても空隙を形成するため、上記特性はさらに向上する。そして傾斜的に存在する多数の微細空隙は繊維長手方向に不連続に存在するため、空隙の変形が抑えられ、屈曲や摩耗によっても空隙の傾斜構造は変化せず、実用耐久性に優れた繊維であり、衣料用はもとより産業資材用途としても好適に用いることができる。
本発明における繊維とは細く長い形状を指し、一般的に言われる長繊維(フィラメント)であっても短繊維(ステープル)であってもよく、あるいは電気植毛加工などに用いられる短い繊維、すなわちパイルであってもよく、これらの繊維形状を有すると認められるものであれば特に制限はない。
本発明における軽量性に優れた異形断面繊維は、ポリマAとポリマBの2成分のポリマがブレンドされてなる繊維であることが必要である。ブレンド繊維とは、後述するような様々な方法により溶融紡糸が完結する以前の任意の段階においてポリマAとポリマBとが混練されてなるブレンド組成物から形成された繊維を意味し、繊維軸方向に直交する繊維横断面内において、ポリマAが海、ポリマBが島を形成している海島構造を形成している。また、島であるポリマBは繊維軸方向に筋状に存在し、その筋は適度な長さを有する不連続なものである。よって繊維中におけるポリマAとポリマBとの複合界面が非常に大きくなり、軽量繊維となした場合に、繊維軸に対して不連続な空隙が生成し、微細空隙を数多く有する繊維となる。この空隙の中にポリマBが存在している。
繊維に入射された様々な波長の光は、繊維表層と繊維外部との界面、ポリマAと空隙内部の界面、ポリマBと空隙内部の界面、あるいはポリマAとポリマBの界面において反射光と透過光に分割され、透過光は界面における屈折率差に対応して屈折される。繊維内部ではこの現象が繰り返し起こって、分割された光がそれぞれで干渉し合い、視覚に入ることで光沢が感知される。本発明の異形断面繊維は光の散乱現象を制御することを目的とし、反射および透過現象が上記界面の形態、サイズ、分布に強く依存することに着目し、繊維内部に特定の空隙分布の空隙を形成せしめることによって繊維の光沢感を向上させたものである。
本発明の異形断面繊維は繊維横断面内において繊維表層部から繊維中央部に渡って、空隙の直径が段階的に大きくなる空隙の傾斜構造を有するものである。そして繊維表層付近に存在する空隙の大きさと、繊維中央付近に存在する空隙の大きさの差が大きい、つまり傾斜傾向が大きい構造であるほど、繊維中に入射された光が幅広い空隙分布に対応して波長の異なる光が反射され、ギラギラとした光沢がない、やわらかい高級感のある光沢となる。また、繊維内部にポリマBを有するため、界面を形成する要素の屈折率差によって光は適度に屈折されて強め合わないため、ギラツキを抑制できるのである。そして繊維横断面が異形度1.20以上の異形断面であると、繊維に入射された光は、繊維表面における光反射と空隙の傾斜構造による光反射が相乗効果的に作用し、繊維の光沢感はより天然シルクに近い高級感のある光沢を呈する。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維は、島成分であるポリマBの平均分散直径が小さいほど空隙生成性が高く、空隙の傾斜構造が発現し易い。ポリマBの平均分散直径は1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらにより好ましい。また下限は低いほど好ましいが、ポリマAとポリマBが非相溶であるため、現状0.01μmが限界である。該平均分散直径は実施例Hにより確認することが可能である。なお繊維中の島成分が繊維軸方向に連続している、すなわち芯鞘複合繊維や海島複合繊維である場合、これはブレンド繊維ではなく、その複合界面(芯と鞘の界面もしくは海と島の界面)の面積はブレンド繊維と比較して極めて小さいものであり、空隙は全く生成しないか、生成したとしても本発明の空隙の傾斜構造は発現しないため、本発明の目的とするシルキー調の光沢は発現しないため好ましくない。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維は繊維軸方向に不連続な微細空隙を有することが必要である。繊維軸方向に不連続である空隙を有することにより、光沢がマイルドになり、かつ軽量性に優れたものとなる。また空隙が微細であることから繊維強度も良好となる。微細空隙が繊維軸方向に不連続でない場合、空隙が外力によって潰れ易く、繊維の光沢感、あるいは軽量性を維持し難いため好ましくない。空隙の不連続性については実施例の項のIの手法により観察した単繊維横断面写真、縦断面写真により確認することが出来る。
この繊維軸方向に不連続な微細空隙は後に例示した手法によって形成可能である。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維は空隙の傾斜構造を有する必要がある。ここで、傾斜構造とは、繊維横断面内において繊維表層部から繊維中央部に向かって、それぞれの位置に存在する空隙の直径が段階的に大きくなる空隙分布を有することを意味し、繊維横断面において、後述する繊維横断面の外接円と内接円に包含される領域に存在する微細空隙の平均直径d1と、内接円に包含される領域に存在する微細空隙の平均直径d2との直径比d2/d1が1.30以上である場合に、傾斜構造を有すると定義する。d1およびd2は実施例Iの手法により得られた繊維横断面写真を用いて画像解析により算出する。なお、繊維の光沢をよりマイルドにするためには、d2/d1≧1.5であることが好ましく、d2/d1≧1.8であることがより好ましい。さらに好ましくはd2/d1≧2.0である。d2/d1の上限については特に制限されないが1000以下程度が適当である。例えば図1に示す3葉型異形断面繊維の場合、外接円と内接円に包括される領域は3、内接円に包括される領域は4で示される。
また、本発明においては繊維横断面形状を異形断面とすることが必要である。前記の傾斜構造による光反射と、異形断面による光反射が相乗効果的に作用して繊維の光沢感が飛躍的に向上するが、これは異形断面特有の光反射の偏光性と、繊維内部の空隙の傾斜構造によって反射される各々の空隙から反射された光が適度に干渉し合うために光沢感が格段に向上するものと推測している。
また本発明の異形断面繊維の傾斜構造は異方性を有してもよい。繊維横断面に異方性のある傾斜構造を有すると、繊維に多方向から入射される光が、それぞれ多種多様な空隙の傾斜構造によって反射され、繊維の光沢がさらにマイルドになるため好ましい。本発明における異方性を有する傾斜構造とは、単繊維横断面における外接円の接点と重心とを結ぶ線分(l1)方向に存在する空隙の傾斜構造と、内接円の接点と重心とを結ぶ線分(l2)方向に存在する空隙の傾斜構造が異なることを意味する。そしてl1と交差するあるいは接する空隙の数(nl1)および空隙の平均直径(dl1)と、l2と交差するあるいは接する空隙の数(nl2)および空隙の平均直径(dl2)とがそれぞれ共に異なる場合、空隙の傾斜構造に異方性を有すると判断する。より繊維の光沢がマイルドになる点で、nl1/nl2≧1.1であることが好ましく、nl1/nl2≧1.3であることがより好ましい。またdl1とdl2の関係についても同様の理由によりdl1/dl2≧1.1であることが好ましく、dl1/dl2≧1.3であることがより好ましい。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維は微細空隙を多数有することが必要である。ここで微細空隙を多数有するとは、少なくとも後述する繊維横断面における空隙観察において100個以上の空隙が存在することが必要である。直径の異なる空隙が数多く存在することで、繊維横断面方向に緻密な傾斜構造が形成され、初めて繊維がマイルドで高級感のある光沢を呈するものとなる。そしてこの空隙が繊維軸方向に不連続な形態を有することで空隙の耐久性が向上し、この微細空隙が潰れることなくクッションの効果を果たすことにより、屈曲や摩耗によっても繊維断面形状、空隙の傾斜構造は変化しにくく、実使用において光沢感、軽量性などの各種特性が損なわれないのである。さらに本発明の繊維は延伸や仮撚などの加工工程においても空隙が潰れにくく、十分な軽量性が発現する。繊維横断面に存在する空隙の数は300個以上であることが好ましく、1000個以上であることがより好ましく、10000個以上であることがさらに好ましい。空隙の数の上限については特に制限されないが、概ね1000000個程度が適当である。空隙の数は下記実施例Iの手法で確認することが出来る。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維は空隙が潰れ難く、繊維の光沢感、あるいは軽量性を維持し易い点で、単糸横断面内に存在する微細空隙の平均直径が0.01μmを超えることが好ましい。より軽量性が良好となる点で、微細空隙の平均直径は0.03μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることが更により好ましい。但し空隙が大きくなりすぎると繊維強度の低下を招くことがあるため、微細空隙の平均直径は5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。微細空隙の平均直径は、下記実施例Iの手法により算出できる。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維中の空隙の割合を示す空隙率は本発明の異形断面繊維がより軽量性の良好なものとなる点から、空隙率は15%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。ここで該空隙率は、繊維見かけ比重を下記実施例Fの手法により測定することで算出できる。
本発明の繊維は繊維横断面において異形度が1.20以上の異形断面を有することが必要である。異形度の算出方法については後述にて示すが、ここで繊維横断面とは、繊維軸方向に直交する断面であり、異形断面とは単繊維横断面の断面が異形度が1.20以上の断面を指す。異形度が1.20以上であることで初めて異形断面による光反射と、繊維内部の空隙による光反射が相乗効果的に作用し、天然シルク調のマイルドな光沢が発現する。また異形断面であることにより肌との接触面積が低下してタッチ感の優れるものとなり、ドライタッチでキシミ感やシャリ感といった高級感のある風合いを有するものとなる。異形度が1.20未満である場合、繊維表面で直接反射される光が多くなり、傾斜構造による光沢改善効果を生かし切れずに光沢に単調さが生じるため好ましくない。異形度が大きいほど繊維に入射された光が繊維表面で直接反射されずに内部に入り込むだけでなく、空隙の傾斜傾向自体も大きくなり、異形断面と傾斜構造の相乗効果が発現し易い。このことから異形度は1.3以上であることがより好ましく、1.4以上であることがさらにより好ましく、1.5以上であることが特に好ましい。上限については特に制限されないが、繊維形態や光沢の耐久性、空隙生成性、あるいは繊維強度や工程通過性が良好となるという点で7.00以下であることが好ましく、5.00以下であることがより好ましく、3.00以下であることが更により好ましく、2.00以下であることが特に好ましい。
本発明における異形度とは単繊維横断面における外接円の直径D1と、内接円の直径D2の比(D1/D2)として定義される。異形断面については線対称性、点対称性などの対称性を保持した形状であっても、非対称性であってもよいが、均一な繊維物性を有する点で概ね対称性を有する形状であることが好ましい。異形断面が概ね線対称性、点対称性を保持すると判断される場合、内接円とは単繊維横断面において異形断面繊維の輪郭をなす曲線に内接する円であり、外接円とは単繊維横断面において異形断面繊維の輪郭をなす曲線に外接する円である。例えば図1に示す3葉型異形断面繊維の異形度は、外接円1の直径D1と内接円2の直径D2とを用いて算出される。また、異形断面が線対称性、点対称性を全く保持しない形状であると判断される場合には、異形断面繊維の輪郭をなす曲線と少なくとも2点で内接し、繊維の内部にのみ存在して内接円の円周と異形断面繊維の輪郭をなす曲線とが交差しない範囲においてとりうる最大の半径を有する円を内接円とする。外接円は異形断面繊維の輪郭を示す曲線において少なくとも2点で外接し、単繊維横断面の外部にのみ存在し、外接円の円周と異形断面繊維の輪郭が交差しない範囲においてとりうる最小の半径を有する円を外接円とする。なお、繊維の長手方向に連続的に存在し、かつ繊維外部と全く連通のない、単一もしくは複数の中空部を有する、中空繊維については本発明の異形断面繊維には含まない。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維の単繊維横断面の形状は特に制限されるものではなく、多種多様な断面形状をとることが出来る。例えば、一般的な呼称として多角形型、歯車型、花びら型、多葉型、星型、C型等といった形状が挙げられる。より光沢感の優れる繊維となる点で、多葉型、多角形型、歯車型、星型が好ましく、多葉型であることがより好ましい。多葉型断面とは、断面に凹凸を有し、凹部と凸部の数が同数であるものを指し、多葉型断面が長手方向に連続して形成された多葉型断面繊維は、繊維表面で反射した光が再度、繊維内部に入り込み、繊維内部の傾斜構造による光沢改善効果を活かしやすく、また繊維横断面内に存在する空隙の傾斜構造に異方性をも形成し易いため、繊維の光沢が非常にマイルドになり、天然シルク調となるため好ましい。また肌との接触面積が小さく、ドライタッチや、キシミ感、シャリ感、膨らみ感などの高級感のある風合いを保持し易いことに加え、軽量性、白色性、嵩高性、保温性といった特性をも具備しうるため好ましい。
本発明における異形断面繊維の断面形状が多葉型である場合、その葉数の上限、下限については特に制限されるものではないものの、よりシルキー調の光沢に優れ、肌との接触面積が小さくドライタッチな風合いを有し、さらに軽量性も良好となるという点で、3葉以上であることが好ましい。一方、紡糸性、および得られる繊維の繊維物性、あるいは断面形状を保持し易いといった点を考慮すると、8葉以下の多葉型異形断面であることが好ましく、6葉以下の多葉型断面であることがさらにより好ましい。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維は繊維表面に空隙のないスキン層を有することが好ましい。スキン層を有することで、繊維に屈曲や摩耗などによって削れることが無く、繊維内部に存在する傾斜構造の耐久性がさらに高くなる。また繊維の反発感、繊維強度が向上するため好ましい。これにより耐摩耗性の要求されるシートやカーペットなどの資材用途としても好適に使用できる。スキン層の厚さが厚すぎると繊維内部で空隙が形成される体積が減少し、結果として光沢感あるいは軽量性に劣る繊維となるため、スキン層の厚さは外接円の直径D1の1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましく、1/15であることがさらにより好ましい。またあまり薄いとスキン層の効果がなくなるため、D1の1/10000以上であることが好ましい。このスキン層は、後述する空隙が形成され過程において同時に形成できる。このためこのスキン層はポリマAとポリマBのブレンドポリマにより構成されるものである。
また繊維に吸水性や放湿性、あるいはさらに柔軟でドライなタッチ感を付与するために、アルカリ減量加工などの手法により繊維表面に空隙を有する構造であってもよい。このような構造であると例えば吸放湿性、吸水性、放湿性、保温性がより高くなるため好ましい。例えば吸放湿性については、衣料用の繊維製品として本発明の異形断面繊維を一部あるいは全部に用いた場合に、着用時にベタつくことなくより快適な着用感が得られることから、吸湿性の指標である吸湿性指数(ΔMR)の値は0.3%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましい。ここでΔMRを具体的に説明すると、30℃、90%RHでの吸湿率(MR2)から20℃、65%RHでの吸湿率(MR1)を差し引いた値である(ΔMR(%)=MR2−MR1)。軽〜中度の作業あるいは運動を行った際の衣服内温度を30℃、90%RHで代表させ、外気温度を20℃、65%RHで代表させ、両者の差をとったものである。ΔMRは大きければ大きいほど吸放湿能力が高く、着用時の快適性が良好であることに対応する。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維を形成するポリマAは、繊維形成能を有するものであれば特に限定されるものではなく、汎用的に用いられるポリマとして、ポリエステル系ポリマ、ポリアミド系ポリマ、ポリイミド系ポリマ、ポリオレフィン系ポリマやその他ビニルポリマ、フッ素系ポリマ、セルロース系ポリマ、シリコーン系ポリマ、エラストマー、その他多種多様なエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。
より具体的には、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合といったビニル基を有したモノマーが付加重合反応によりポリマが生成する機構により合成されるポリオレフィン系ポリマやその他のビニルポリマなどにおいては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、などが挙げられるが、これらは例えばポリエチレンのみ、あるいはポリプロピレンのみといった単独重合によるポリマであっても良いし、あるいは複数のモノマー共存下に重合反応を行うことで形成される共重合ポリマであっても良く、例えばスチレンとメチルメタクリレート存在下での重合を行うとポリ(スチレン−メタクリレート)という共重合したポリマが生成するが、このような共重合体であるポリマであっても良い。
また例えば、カルボン酸あるいはカルボン酸クロリドと、アミンの反応により形成されるポリアミド系ポリマを挙げることができ、具体的にはナイロン6、ナイロン7、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン6,9、ナイロン6,12、ナイロン5,7、ナイロン5,6などが挙げられるほか、本発明の主旨を損ねない範囲で他の芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸と芳香族、脂肪族、脂環族ジアミン成分が、あるいは芳香族、脂肪族、脂環族などの1つの化合物がカルボン酸とアミノ基を両方有したアミノカルボン酸化合物が単独で用いられていてもよく、あるいは第3、第4の共重合成分が共重合されているポリアミド系ポリマであっても良い。
また例えば、カルボン酸とアルコールのエステル化反応により形成されるポリエステル系ポリマを挙げることができる。具体的には、本発明でいうポリエステル系ポリマとは、特に制限されるものではなく、例えばジカルボン酸化合物とジオール化合物のエステル結合から形成される重合体を挙げることができ、これらにかかるポリマとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートなどが挙げられる。そして、特に制限されるものではないものの、ジカルボン酸化合物とジオール化合物のエステル結合から形成されるポリエステル系ポリマには、本発明の主旨を損ねない範囲で他の成分が共重合されていても良く、共重合成分のジカルボン酸化合物としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体を挙げることができ、これらジカルボン酸化合物のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
また共重合成分として、例えばジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、フェナントレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールS、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体を挙げることができ、これらジオール化合物のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
また共重合成分として、1つの化合物に水酸基とカルボン酸を具有する化合物、すなわちヒドロキシカルボン酸を挙げることができ、該ヒドロキシカルボン酸としては、例えば乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレートバリレート、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシフェナントレンカルボン酸、(ヒドロキシフェニル)ビニルカルボン酸といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体、光学異性体を挙げることができ、これらヒドロキシカルボン酸のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
またポリエステル系ポリマとしては、芳香族、脂肪族、脂環族などの1つの化合物がカルボン酸と水酸基を両方有したヒドロキシカルボン酸化合物を主たる繰り返し単位とする重合体であっても良く、特に制限されるものではないものの、例えばこれらにかかる重合体としては、ポリ乳酸、ポリ(3−ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレートバリレート)、といったポリ(ヒドロキシカルボン酸)を挙げることができ、その他にも、これらポリ(ヒドロキシカルボン酸)には、本発明の主旨を損ねない範囲で芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸、あるいは芳香族、脂肪族、脂環族ジオール成分が用いられていてもよく、あるいは複数種のヒドロキシカルボン酸が共重合されていても良い。
その他に本発明の繊維形成能を有するポリマとしては、アルコールと炭酸誘導体のエステル交換反応により形成されるポリカーボネート系ポリマ、カルボン酸無水物とジアミンの環化重縮合により形成されるポリイミド系ポリマ、ジカルボン酸エステルとジアミンの反応により形成されるポリベンゾイミダゾール系ポリマや、そのほかにもポリスルホン系ポリマ、ポリエーテル系ポリマ、ポリフェニレンスルフィド系ポリマ、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマ、ポリエーテルケトンケトン系ポリマなどの合成ポリマやセルロース系ポリマや、キチン、キトサンの誘導体など、天然高分子由来のポリマなども挙げられる。
これらポリマAについては、後述するように臨界表面張力γcAが大きく、かつ延伸時の張力が小さく、延伸時に空隙が発現しやすい方が好ましいことから、ポリマAとしてはポリエステル系ポリマ、ポリアミド系ポリマが好ましく、延伸時に低い延伸張力で延伸が可能であることからポリエステル系ポリマがより好ましい。そしてこれらポリエステル系ポリマのうち、より汎用性、繊維形成性に優れるという点で、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、あるいは乳酸であるポリエステル系ポリマが好ましく、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル系ポリマがより好ましい。なお、これらナイロン6などのポリアミド系ポリマあるいはポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系ポリマは、共に臨界表面張力γcAが約43dyne/cmである。
そして本発明のポリマAとして好ましいポリエステル系ポリマは、通常合成繊維に供する固有粘度(IV)のポリエステルを使用することが出来る。IVの下限、上限については特に制限されるものではないものの、例えばポリマAとポリマBを溶融混練する際に高い剪断応力が発現し、結果として繊維中でポリマBが微細化し、空隙生成性が優れるという点で、例えばポリエチレンテレフタレートであれば、0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。ポリプロピレンテレフタレートであれば0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。ポリブチレンテレフタレートであれば0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。また上限については特に制限されるものではないものの、ギヤポンプの計量性が良好で繊度ムラがなく、繊維が過度に硬くならならないという点で、例えばポリエチレンテレフタレートであれば、1.5以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましい。ポリプロピレンテレフタレートであれば2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。ポリブチレンテレフタレートであれば、1.5以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましい。また本発明に用いるポリエステルで、IVにて評価しないものとしてポリ乳酸に代表されるポリ(ヒドロキシカルボン酸)があるが、これらは重量平均分子量(以下単に平均分子量と称することがある)にて記載しうるものであり、例えばポリ乳酸であれば平均分子量が5万〜50万のものが通常用いられ、好ましくは10万〜30万、加工性や紡糸性を考えると15万〜25万の平均分子量のポリ乳酸がより好ましく用いられる。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維中におけるポリマAの含有量は50重量%以上であれば、特に制限されるものではなく、任意の含有量を取ることができる。特に、繊維物性において繊維強度が高いことが好ましいことから、繊維におけるポリマA含有量は、70重量%以上であることが好ましく、より好ましくは80重量%以上、さらにより好ましくは85重量%以上である。
そして、ポリマAは、これらの中から選ばれるポリマを1種類を単独で用いても良くあるいは発明の主旨を損ねない範囲において、複数種を併用しても良い。
本発明におけるポリマBは、ポリマAとブレンド繊維を形成し、かつ繊維横断面において島を形成することから、ポリマAとポリマBは互いに非相溶である。ここで、「非相溶」とは、ポリマAとポリマBが高分子の分子鎖サイズオーダーで相溶せず、ポリマAの中でポリマBにより形成される島成分の平均直径(下記実施例Hの手法により算出する)が、少なくとも10nmの大きさを有するものを指す。ポリマAとポリマBが相溶性である場合、すなわち成分Bで形成される平均ドメインサイズが10nm以下である場合、ポリマAとブレンド繊維を形成するものの前述したポリマBが形成する島は過度に小さく、空隙を有することがない、もしくは空隙が生成してもシルク調光沢を呈するのに必要な空隙の傾斜構造が十分に発現せず、結果的に光沢感に劣る異形断面繊維となり好ましくない。
本発明のポリマBは、ポリマAに対して前述のとおり非相溶であれば特に制限されるものではなく、多種多様なポリマを使用することができる。例えば、ポリアミド系ポリマ、ポリオレフィン系ポリマやその他ビニル重合体、フッ素系ポリマ、シリコーン系ポリマ、エラストマー、ポリカーボネート系ポリマ、カルボン酸無水物とジアミンの環化重縮合により形成されるポリイミド系ポリマ、ジカルボン酸エステルとジアミンの反応により形成されるポリベンゾイミダゾール系ポリマや、そのほかにもポリスルホン系ポリマ、脂肪族ポリエーテル系ポリマ、芳香族ポリエーテル系ポリマ、ポリフェニレンスルフィド系ポリマ、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマ、ポリエーテルケトンケトン系ポリマなどの合成ポリマやセルロース系ポリマや、キチン、キトサンの誘導体など、天然高分子由来のポリマ、その他多種多様なエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。
より具体的には、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合といったビニル基を有したモノマーが付加重合反応、もしくは開環重合反応によりポリマが生成する機構により合成されるポリオレフィンやその他のビニル重合体などのポリマにおいては、ポリオレフィンであればポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンの単独重合体あるいは共重合体、誘導体が挙げられ、またその他のビニル重合体であればポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、およびこれらの共重合体や誘導体などが挙げられるものの、これら付加重合反応もしくは開環重合反応により合成されるポリマの中で、後述する臨界表面張力、密度、あるいはガラス転移温度Tgなどの観点から好ましいものとして、ポリオレフィン系ポリマをまず挙げることができる。
該好ましいとするポリオレフィン系ポリマの中で、まず主たる繰り返し構造がオレフィンから成るポリオレフィンとして例えばエチレン、プロピレン、ブテン、メチルブテン、メチルペンテン、エチルペンテン、ヘキセン、エチルヘキセン、オクテン、デセン、テトラデセン、オクタデセンをモノマーとして用いたポリオレフィンのほかに、脂環族モノマーの開環重合、付加重合などにより合成される、例えば下記化学式1、化学式2、あるいは化学式3に示す、環状構造を有するポリオレフィン系ポリマが挙げられる。
Figure 2006161218
Figure 2006161218
Figure 2006161218
ここで置換基X、Yはそれぞれ、水素、アルキル基、脂環基、シアノ基、アルキルエステル基、脂環エステル基の中から選ばれる基。
該構造を有するものとしては、例えば、JSR(株)製アートン(登録商標)、日本ゼオン(株)製ゼオノア(登録商標)、ゼオネックス(登録商標)などが挙げられるものの環状構造を有するポリオレフィンは特にこれらに制限されるものではない。
上記これらポリオレフィン系ポリマはモノマー1種類を単独で用いた単独重合体であっても良く、あるいは複数種を用いた共重合体であっても良く、さらにはオレフィンと他のビニル化合物とを共重合した共重合体であってもよい。共重合成分として具体的には、2〜6個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステルや、1〜20個の炭素原子を有するアルコールから導かれるアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルや、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸などの不飽和カルボン酸あるいは該不飽和カルボン酸の酸ハライド、アミド、イミド、酸無水物およびエステルや、スチレンあるいはスチレン誘導体や、アクリロニトリルあるいはアクリロニトリル誘導体や、ビニロキシアルキル誘導体(アルコール型あるいはカルボン酸型)といったビニル化合物、あるいは脂環構造を持つビニル化合物が挙げられる。特に該脂環構造を共重合成分として有するポリオレフィン系ポリマとしては、例えば三井化学(株)製アペル(登録商標)、ポリプラスチックス(株)製トパス(登録商標)などが挙げられるが、該脂環構造を有する共重合ポリオレフィン系ポリマはこれに限定されるものではない。
そしてこれらポリマBの中で好ましいとして例示したポリオレフィン系ポリマのうち、形成される繊維の空隙生成性が高く、繊維断面内に空隙の傾斜構造が形成され易いという点で、プロピレンおよび/またはメチルペンテンを主たる繰り返し単位とするポリオレフィン系ポリマ、あるいは環状構造を有するポリオレフィン系ポリマ、脂環構造を有する共重合ポリオレフィン系ポリマが好ましい。
また、本発明のポリマBとしては、前記ポリオレフィン系ポリマ以外にもポリエーテル系ポリマが挙げられ、その中でポリフェニレンエーテルに代表される芳香族ポリエーテル系ポリマが好ましい。ポリフェニレンエーテルは、フェニレンオキサイドが主たる構造を成す単独重合体であっても良く、あるいは第2成分を共重合させた共重合体であっても良く、また発明の主旨を損ねない範囲において、添加物含有するもの、すなわちポリスチレン系ポリマ、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、ポリオレフィン系ポリマなどを第二成分としてアロイ化した変性ポリフェニレンエーテルであっても良い。該変性ポリフェニレンエーテルとしては、例えば三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユピエース(登録商標)、レマロイ(登録商標)や、日本ジーイープラスチックス(株)製のノリル(登録商標)、旭化成(株)製のザイロン(登録商標)、住友化学(株)製のアートレックス(登録商標)、アートリー(登録商標)などが挙げられるが、言うまでもなく好ましいポリマとして挙げられる芳香族ポリエーテル系ポリマがこれらに限定されるものではない。
あるいは、本発明におけるポリマBとしては、ポリカーボネート系ポリマが好ましい。ポリカーボネート系ポリマは、ビスフェノールAとC=Oが主たる繰り返し構造を成す単独重合体であっても良く、あるいは第3成分を共重合させた共重合体であっても良く、また発明の主旨を損ねない範囲において、添加物を含有するもの、すなわちポリスチレン系ポリマ、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、ポリメタクリレート系ポリマなどをアロイ化した変性ポリカーボネートであっても良い。該変性ポリカーボネートとしては、例えば三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユーピロン(登録商標)やノバレックス(登録商標)、日本ジーイープラスチックス(株)製のレキサン(登録商標)、住友ダウ(株)製のカリバー(登録商標)、帝人化成(株)製のパンライト(登録商標)、出光石油化学(株)製のタフロン(登録商標)などが挙げられるが、言うまでもなく好ましいポリマBとして挙げられるポリカーボネート系ポリマがこれらに限定されるものではない。
本発明におけるポリマBは、繊維自体が黄味を帯びないことが良いことから、マレイミド構造を持たないことが好ましい。一般的にマレイミド構造とは無水マレイン酸とアンモニアもしくは一級アミンとの反応によって得られる構造であり、N−アルキルマレイミド、N−シクロアルキルマレイミド、あるいはN−フェニルマレイミドなどの構造があるが、特に着色しやすいものとしてN−フェニルマレイミド構造が知られている。ポリマBが該マレイミド構造を有する場合、一般的にはマレイミド構造由来の黄味を帯びたものである。よってポリマAとブレンドされた繊維自体が黄味を帯びやすく、結果として用途が限定され好ましくない。またポリマAとしてポリエステル系ポリマを用いた場合、マレイミド構造は特にポリエステル系ポリマとの親和性が非常に高いため、ポリマAとポリマBの界面の親和性が高くなりすぎるため空隙生成性に乏しくなり易い。また理由はよく分からないが、この場合空隙は主として繊維横断面における中心部分で生成し易く、空隙が局在化しまって傾斜構造は形成されにくいため、低品位な光沢の繊維となり易い。また十分な軽量性も発現しない場合がある。マレイミド構造を持つポリマをポリマBとして十分な軽量性を発現させようとする場合には、逆に繊維強度が低くなりやすく、実用に耐えないことがある。特にポリマAがポリエステルであり、ポリマBが、マレイミド構造を持ちかつ無水マレイン酸残基を有する場合には、ポリエステルとポリマBとが反応しやすく、もはや軽量性は殆ど発現しないかあるいは軽量性が発現したとしても繊維強度は格段に劣るものとなる。該黄味を帯びたマレイミド構造を有する重合体としては、例えば電気化学(株)製のスチレン・マレイミドポリマ(タイプ:MS−NAなど)が挙げられる。
本発明の異形断面繊維におけるポリマBの屈折率nBが1.55以下であることが好ましい。繊維の空隙内部に存在するポリマBの屈折率が低いことで空隙に入射された光が全反射されずに繊維中央部まで到達し易く、空隙の傾斜構造による光沢改善効果が高くなるため好ましい。例えば、本発明においてポリマBとして好ましいとされる、環状構造を有するポリオレフィン系ポリマであれば1.51〜1.54であり、ポリプロピレンであれば1.47〜1.50であり、ポリエチレンであれば1.51〜1.54であり、ポリメチルペンテンであれば1.463である。屈折率は実施例Mの手法により算出する。
またポリマAとポリマBの屈折率の差であるポリマAの屈折率nA−nBが0.010以上であることが好ましい。光が表面から繊維に入射される際、繊維の表面で全反射が起こると繊維がギラツキ易い。繊維の主成分であるポリマAの見かけの屈折率を下げることで内部に光が入り込み空隙の傾斜構造による光沢改善効果が高まるため好ましい。そしてポリマAとポリマBに適度な屈折率差を有することで界面において光が屈折されて波長分布が変化し、特定の波長が強め合うことが無く、よりマイルドな光沢を呈するため好ましい。上記屈折率差は0.015以上であることがより好ましく、0.020以上であることが更により好ましい。上限については特に制限されないが0.200程度が適当である。
また本発明のポリマBの平均分子量については特に制限されるものではないものの、ポリマAとの混練性が優れ、繊維中で微細な島成分を形成し、繊維物性が均一になるといった点で、数平均分子量が2000〜10000000であることが好ましく、5000〜5000000であることがより好ましく、10000〜1000000であることがさらにより好ましい。
本発明のポリマBの添加量については特に制限されるものではないものの、より得られる繊維に空隙の傾斜構造が形成され、光沢感が優れるという点で、含有量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることが更により好ましい。またあまり添加量が多いと繊維強度の低下を招くことがあるため、30重量%以下であることが好ましく、20重量%であることがより好ましく、15重量%であることがさらにより好ましい。
本発明におけるポリマBはこれらポリマを1種類を単独で用いても良く、あるいは発明の主旨を損ねない範囲において、複数種を併用しても良い。また、本発明の軽量性に優れた異形断面繊維には、本発明の効果を妨げない範囲で、ポリマAとポリマB以外のポリマを配合しても良い。 本発明のポリマAの臨界表面張力γcAとポリマBの臨界表面張力γcBの差であるγcA−γcBは繊維の海成分であるポリマAと島成分であるポリマBの界面における親和性を表し、該γcA−γcBが大きいほど、ポリマAとポリマBの界面剥離性が高くなり、空隙生成性に優れ、繊維横断面内において空隙の傾斜構造が形成されて易いため好ましい。特に制限されるものではないもののγcA−γcB≧5dyne/cmであることが好ましく、10dyne/cm以上であることがより好ましい。但し、該γcA−γcBが大きすぎると、ポリマAとポリマBの界面親和性が低いため、繊維中の島成分であるポリマBの分散形態が粗大化し易く、繊維中の空隙の数が低下し、繊維物性も低下する懸念がある。このためγcA−γcB≧25dyne/cmであること好ましく、γcA−γcB≧20dyne/cmであることより好ましい。
そして本発明において好ましいとされるγcA−γcB≧5dyne/cmを満たすポリマAとポリマBの組み合わせとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンテレフタレートをはじめとするポリエステルをポリマAとし、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状構造を持つポリオレフィンをはじめとするポリオレフィンをポリマBとする組み合わせや、あるいはナイロン6やナイロン66などのポリアミドをポリマAとし、前述ポリオレフィンをポリマBとする組み合わせなどを挙げることができ、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンテレフタレートをポリマAとし、ポリメチルペンテンや環状構造を有するポリオレフィンをポリマBとする組み合わせがより好ましい。
また本発明のポリマBは、ポリマAとの界面において剥離して空隙を形成しやすくし、結果的に得られる繊維がより軽量性に優れるという点で、ポリマBの臨界表面張力γcBは10〜35dyne/cmであることが好ましく、10〜33dyne/cmであることがより好ましい。この臨界表面張力γcBの範囲を満足するポリマBとしては、前述のオレフィンモノマーあるいは他のエチレン性不飽和化合物からなるポリオレフィンのうち、プロピレンおよび/またはメチルペンテンおよび/または環状構造を有するポリオレフィンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体が好ましく、メチルペンテンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体がより好ましく、ポリエステルをポリマAとする組み合わせにおいて空隙形成性に非常に優れ、大変好ましい。特に前述のプロピレンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体の場合は29〜30dyne/cm、メチルペンテンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体の場合は24〜25dyne/cm、環状構造を有するポリオレフィンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体の場合は30〜32dyne/cmである。 また、本発明のポリマAおよびポリマBは、各々のガラス転移点Tgの差がTgB(ポリマBのTg)−TgA(ポリマAのTg)≧5℃であることが好ましい。ガラス転移温度の関係がTgB−TgA≧5℃を満たすことで、延伸工程において、ポリマA中に存在するポリマBの変形が起こり難いためポリマAとポリマBの複合界面が剥離し易く、繊維中に空隙が生成し、空隙形成性が高いため好ましい。またTgB−TgA≧5℃を満たす場合、溶融紡糸工程において負荷される紡糸応力を主としてポリマBに担わすことができ、ポリマAの分子配向が抑制される、いわゆる配向抑制効果が発現し、高倍率延伸が可能となり、生産性に優れるというメリットもあるため好ましい。また、ポリマBが紡糸工程で伸長化されて微細化するため、ポリマAとポリマBの界面の数が多くなり、延伸時に微細空隙が多数生成するため好ましい。上記理由により、TgB−TgA≧10℃であることがより好ましく、TgB−TgA≧30℃であることがさらに好ましく、TgB−TgA≧50℃であることが特に好ましい。またTgB−TgAの上限は溶融成形性の点から400℃が限界であり、好ましくはTgB−TgA≦300℃、より好ましくはTgB−TgA≦200℃である。
また該ポリマAのTgは、繊維の耐熱性、すなわち高温においてポリマAが変形し空隙が潰れてしまうといったことを回避する点で、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更に好ましい。また該ポリマBのTgは、繊維の耐熱性、すなわち繊維が高温下に晒されても空隙中でポリマBが変形して空隙を埋めてしまうといったことを回避する点で、70℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることが更に好ましい。
そして本発明において好ましいとされるTgB−TgA≧5℃を満たすポリマAとポリマBの組み合わせとしては特に制限されるものではないものの、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ乳酸をはじめとするポリエステルや、ナイロン6、ナイロン66をはじめとするポリアミドをポリマAとし、ポリスチレンやポリメタクリルメタクリレート、ポリカーボネート、環状構造を有するポリオレフィン、ポリフェニレンエーテルをポリマBとする組み合わせなどを挙げることができ、より延伸時の工程安定性が高く、空隙生成性が高いという点で、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66をポリマAとし、ポリスチレン、環状構造を持つポリオレフィン、ポリフェニレンエーテルをポリマBとする組み合わせがより好ましい。各ポリマのガラス転移温度は実施例C.の測定によって決定されるが、例えばポリエチレンテレフタレートであれば約79℃に、ポリプロピレンテレフタレートであれば約47℃に、ポリブチレンテレフタレートであれば約24℃に、ポリ乳酸であれば約58℃に、ナイロン6であれば71℃にそれぞれ観測される。
本発明のポリマAおよびポリマBは特に制限されるものではないものの、ポリマAの融点TmAとポリマBの融点TmBの関係はTmA>TmBであることが好ましい。該融点の関係がTmA>TmBを満たすことでポリマBはポリマAに対し微分散しやすく、空隙発現性が高くなるため好ましい。そして本発明のポリマAは特に制限されるものではないものの、本発明の方法により得られる繊維の耐熱性、すなわち高温においてポリマAが変形し空隙が潰れてしまうといったことを回避する点で、ポリマAの融点TmAは160℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることが更により好ましい。また本発明のポリマBは、繊維の耐熱性が良好、すなわち本発明の方法により得られた繊維が高温下に晒されても空隙中でポリマBが変形して空隙を埋めてしまうといったことを回避する点で、該ポリマBの融点TmBは150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。
本発明のポリマBの溶融粘度は、特に制限されるものではなく、用いるポリマの溶融紡糸温度で、剪断速度が10sec−1の剪断粘度が10〜100000poiseのポリマが通常用いられ、好ましくは100〜50000poiseである。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維は、白色性に優れ、色度b*が5以下であることが好ましい。色度b*は繊維自体の黄味を表す指標であり、小さいほど白色性が優れる。そしてこの色度b*は4以下であることがより好ましい。また下限については色度b*は小さいほど好ましいが、−5以上であれば特に問題なく、好ましくは−4以上であり、より好ましくは−3以上であり、0以上が特に好ましい。本発明における軽量性に優れた異形断面繊維は、異形断面の効果で繊維表面で反射された光が繊維内部に入り易く、かつ空隙の傾斜構造に異方性があるため、各々の空隙サイズに対応した波長の光が反射されることによって、ぎらつきのないマイルドな光沢を有し、白色性も良好な繊維となる。また人間の視神経は白いものを軽いと認知する傾向にあるため、高い白色性を有する素材は視覚的軽量感に優れる。また、本発明の異形断面繊維はこれを真に軽いものとしうるため、人間にとってより軽量感のある素材となる。色度b*が5以下となるには繊維中に黄色味を発色するものをできる限り添加しないことが好ましい。より具体的に述べるとポリマAはもちろんのこと、ポリマBとしても黄味の強いものは極少量のみ用いるか、あるいは黄味の弱いものであってもあまり大量には添加しないことが好ましい。色度b*は実施例Dの手法により算出した。
マルチフィラメントを構成する単繊維の本数は特に制限されるものではなく、衣料用途あるいは産業資材用途などの使用目的に応じて適宜設定すれば良い。用途によってはモノフィラメントでもよい。マルチフィラメントの場合は、紡糸あるいは延伸工程での製糸性や高次加工での工程通過性などを考慮すると、2本〜2000本となすことが好ましく、4本〜500本となすことがさらに好ましく、4本〜250本となすことがさらにより好ましい。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維は、繊維残留伸度が5%〜50%であることが好ましい。ここで繊維残留伸度とは本発明におけるブレンド繊維の残留伸度を実施例Eの方法により測定した値である。繊維残留伸度5%〜50%とは衣料用あるいは産業用の各種素材における様々な使用環境において適度な伸縮性を有する最適な残留伸度領域であり、該領域の残留伸度を有し、かつ本発明の効果である軽量性を具備することによって多種多様な繊維製品として利用可能となる。より好ましくは繊維残留伸度が8%〜40%であることが好ましく、10%〜30%であることがさらにより好ましい。
本発明における軽量性に優れた異形断面繊維は軽量性に優れている。ここで、軽量性に優れるとは、繊維の見かけ比重がポリマAの比重に対し90%以下であることと定義し、例えばPETであれば1.242以下、PTTであれば1.197以下、PBTであれば1.215以下、ポリ乳酸であれば1.134以下、以下ナイロンであれば1.024以下、PPであれば0.810以下、PEであれば0.846以下であることを指す。幼児あるいは年配者用衣料として用いる場合はもちろんのこと、スポーツ用ウェアあるいはアウトドア用衣料、カーシートなどの車両内装材として用いる場合に繊維の見かけ比重が小さく、同等の嵩(体積)で軽量性に優れることは非常に好ましい特性となる。より軽量性の高い繊維となる点で繊維の見かけ比重がポリマAの比重に対し85%以下であることが好ましく、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがさらにより好ましい。
本発明における異形断面繊維の繊維強度は、2.5cN/dtex以上であることが好ましい。スポーツ用ユニフォームあるいはアウトドア用衣料として用いる場合、さらには産業用素材として用いる場合を考えた場合には、丈夫な素材である必要がある。また、繊維あるいは繊維製品の加工性を考慮した場合であっても糸物性は繊維強度が高いことが求められる。そして、繊維強度は3.0cN/dtex以上であることがより好ましく、3.5cN/dtex以上であることがさらにより好ましく、4.0cN/dtex以上であることが特に好ましい。
本発明の異形断面繊維は、発明の主旨を損ねない範囲で艶消剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤等の添加剤を少量保持しても良い。
本発明の異形断面繊維は天然シルク調の優れた光沢、およびタッチを有し、軽量性、白色性、遮光性、嵩高性、保温性をも具備しうることから繊維そのものとしても非常に有用で、繊維をそのまま使用することができるが、他素材との混繊、交編織等、繊維製品の一部に用いても十分効果を発揮する。本発明の繊維製品とは、タフタ、ツイル、サテン、デシン、パレス、ジョーゼットなどの織物、平編、ゴム編、両面編、シングルトリコット編、ハーフトリコット編などの編物、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、ウォータージェットパンチ(スパンレース)法、スティッチボンド法、フェルト法などの方法により形成された不織布、およびロープ状、紐状物等を示す。また、生糸、撚糸、加工糸など繊維の形態等については特に制限はない。また、織物あるいは編物であれば常法の精練、染色、熱セット等の加工を受けてもよく、あるいは不織布であれば、艶付けプレス、エンボスプレス、コンパクト加工、柔軟加工、ヒートセッティングなどの物理的処理加工や、ボンディング加工、ラミネート加工、コーティング加工、防汚加工、撥水加工、帯電防止加工、防炎加工、防虫加工、衛生加工、泡樹脂加工などの化学的処理加工や、その他にマイクロ波応用や、超音波応用、遠赤外線応用、紫外線応用、低温プラズマ応用などの応用処理がなされていても良く、最終形態として、衣料品として縫製されていてもよい。
また他素材との組み合わせでは、汎用の合成繊維、半合成繊維、天然繊維など、例えばセルロース繊維、ウール、絹、ストレッチ繊維、アセテート繊維から選ばれた少なくとも1種類の繊維が挙げられる。具体的に例を挙げると、セルロース繊維としては、綿、麻等の天然繊維、鋼アンモニアレーヨン、レーヨン、ポリノジック等が挙げられ、これらセルロース繊維と混合比率は、セルロース繊維の吸湿性、吸水性、制電性を生かし、かつ本発明の異形断面繊維の天然シルク調の光沢、タッチ、および軽量性を生かすために、25〜75%が好ましい。また、混用繊維製品に用いられるウール、絹は既存のものがそのまま使用でき、これらウール、あるいは絹と混用する異形断面繊維の含有率については、ウールの風合い、また、絹の風合いを生かし、かつ本発明の軽量性を生かすために、25〜75%が好ましい。また、混用繊維製品に用いられるストレッチ繊維は、特に限定されるものではなく、乾式紡糸または溶融紡糸されたポリウレタン繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維やポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート繊維に代表されるポリエステル系弾性糸等が挙げられ、ストレッチ繊維を用いる混用繊維製品において、本発明の異形断面繊維の含有率は60〜98%程度が好ましい。また、異形断面繊維の含有率が70%を越える場合には、伸縮特性が抑えられるので、アウター、カジュアルウェアー用途等に用いることができる。また70%未満の場合には、その伸縮特性のためにインナーウェアー、ファンデーション、水着用途等に用いることができる。また、混用繊維製品に用いられるアセテート繊維は特に制限されるものではなく、ジアセテート繊維でもトリアセテート繊維でもよい。これらアセテート繊維と混用する本発明の異形断面繊維の含有率については、アセテート繊維の風合い、鮮明性、光沢と、異形断面繊維の天然シルク調の光沢、タッチ、および軽量性を生かすために、25〜75%が好ましい。
これら各種の混用繊維製品において、その混用方法については特に制限されるものではなく、例えば、混用方法としては経糸または緯糸に用いる交織織物、リバーシブル織物等の織物、トリコット、ラッセル等の編物などが挙げられ、その他交撚、合糸、交絡を施してもよい。
本発明の繊維製品は、混用繊維製品も含め、染色されていてもよく、また、必要に応じて、精練後、染色前に常法によりアルカリ減量処理することで、繊維は柔らかい風合いを呈するものとなるため好ましい。例えば製編織後、常法により精練、プレセット、染色、ファイナルセットの過程をとることが好ましい。精練は40〜98℃の温度範囲で行うことが好ましい。特にストレッチ繊維との混用の場合には、繊維製品をリラックスさせながら精練することが弾性を向上させるのでより好ましい。染色前後の熱セットは一方あるいは両方共省略することも可能であるが、繊維製品の形態安定性、染色性を向上させるためには両方行うことが好ましい。熱セットの温度としては、120〜190℃、好ましくは140〜180℃であり、熱セット時間としては10秒〜5分、好ましくは、20秒〜3分である。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維を製造する手段についてより具体的な方法を以下に例示する。
本発明の軽量異形断面繊維において、該異形断面を形成させる方法としては、例えば、紡糸口金孔の形状が、3葉型、4葉型、5葉型などの多葉型、三角形、四角形、五角形などの多角形型、歯車型、C型、Y型、T型、星型、といった異形断面を形成しうる断面形状である口金孔から本発明の異形断面繊維を形成するポリマAとポリマBとからなるブレンド組成物を吐出して異形断面繊維を得る方法や、水溶液や熱水、あるいは有機溶剤など試薬を用いて溶出しうる成分を鞘成分もしくは海成分として、本発明の異形断面繊維を形成するポリマAとポリマBとからなるブレンド組成物を芯成分もしくは島成分とし、すくなくとも芯成分もしくは島成分が異形断面を形成している芯鞘複合繊維もしくは海島複合繊維を得た後に、鞘成分もしくは海成分を溶出して異形断面繊維を得る方法が挙げられる。工程が簡便で生産性が高い点で、ポリマAとポリマBとからなるブレンド組成物を単一成分として異形断面を形成しうる断面形状の口金孔から吐出する方法が好ましい。異形度の高い断面の繊維を得るためには、ポリマが異形度の高い形態で吐出されることが好ましいことから、例えば、図2〜4に例示する多葉型断面を形成する孔形状を有する口金を用いる場合、口金孔のスリット長Xが、スリット幅Yに対して大きいほど、ポリマが異形度の高い形態で吐出され、得られる繊維の異形度が高くなるため好ましい。繊維の異形度が高くなり、空隙の傾斜構造との相乗効果により優れた光沢を呈する繊維となる点で、XとYの比であるX/Yが2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらにより好ましい。X/Yが大きすぎると、口金汚れが生じてパックライフが低下して生産性の低下を招くことがあるため、X/Yは20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることさらにより好ましい。なお、紡糸糸がマルチフィラメントである場合は該口金孔の形状は単繊維間で同じであっても異なっていても良い。
ポリマBの添加方法としては特に制限されるものではなく、例えば、(A)通常のポリマAの重合反応において、ポリマAの重合反応が停止する以前の任意の段階で添加する方法、(B)ポリマAの紡糸時にポリマBを添加しエクストルーダやスタティックミキサーといった混練機により常圧もしくは減圧下で溶融混練する方法、(C)通常のポリマAの重合反応においてポリマBを高濃度で添加し、エクストルーダやスタティックミキサーといった混練機によりポリマBを添加していないポリマAを同時に添加して希釈し、常圧もしくは減圧下で溶融混練する方法、(D)ポリマBをポリマAに添加しエクストルーダやスタティックミキサーといった混練機により常圧もしくは減圧下で高濃度で溶融混練したのち、ポリマAの紡糸時にエクストルーダやスタティックミキサーといった混練機によりポリマBを添加していないポリマAを同時に添加して希釈し、常圧もしくは減圧下で溶融混練する方法、(E)ポリマAの紡糸における吐出以前の任意の段階でポリマBの溶融体をノズル状の管などから吐出し、ポリマ流路における溶融剪断によりブレンドし、ポリマA中に含有せしめる方法、などが挙げられるが、好ましくは前述の(B)、(C)あるいは(D)の方法が採用される。
そして溶融紡糸において、口金孔から吐出された紡糸糸は、本発明のブレンド組成物のガラス転移温度以下に冷却され、100〜10000m/分の引取速度で引き取る。繊維の異形度を高くするためには吐出されたポリマを急冷することが好ましい。例えば冷却風を用いて糸条の冷却を行う場合、冷却風の温度が低いほど、冷却風吹き付け開始点と口金からの距離が短いほど、糸条が急冷される。より異形度の高い繊維を得ることが出来る点で、冷却風の温度は30℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることがさらにより好ましい。下限については特に制限されないが、あまりに低い温度とすると冷却風の流路で水蒸気が凍結して目詰まりを起こす懸念があるため0℃以上が適当である。また上述のように冷却風吹き付け開始点と口金の距離が短いほど糸条が急冷される。より異形度の高い繊維が得られる点で、該冷却風吹き付け開始点と口金との距離は20cm以下であることが好ましく、10cm以下であることがより好ましく、5cm以下であることがさらにより好ましい。このように口金直下から冷却風を吹き付ける場合、口金面が冷却されて口金面の温度が下がることがある。口金面の温度が過度に低下すると、未溶融のポリマが吐出され、結果として繊維が不均一になる懸念があるため、口金付近を局所的に加熱するヒーターを用いることも好ましい手法である。
延伸工程において延伸倍率を高くし、空隙形成性を良好にするために、引取速度は低いことが好ましく、4000m/分以下、より好ましくは3000m/分以下、さらに好ましくは2000m/分以下である。一方、異形度の高い繊維となす為には、上述のように吐出糸条の冷却効率を高める必要がある。このため、引取速度は100m/分以上、より好ましくは500m/分以上、さらに好ましくは1000m/分以上である。
引き取った後、巻き取ることなく、もしくは一旦巻き取った後、延伸を施す。延伸温度は、好ましくはポリマAのガラス転移温度(TgA)+100℃以下の温度で、より好ましくはTgA−80℃〜TgA+80℃の温度範囲、さらに好ましくは、TgA−80℃〜TgA+20℃の温度範囲で実施すればよい。
延伸倍率は、空隙形成性と極めて強い相関関係にあり、高倍率で延伸するほど、高い空隙率のボイドが形成される。すなわち、繊維の軽量性は高倍率延伸により達成される。延伸倍率は所望の空隙率にするために適宜変更すればよいが、延伸倍率が低すぎると空隙そのものが形成されない。高倍率で延伸するほど、空隙の傾斜傾向が大きくなり、光沢改善効果が大きくなるため好ましい。さらに延伸によって同時に繊維表面に空隙を有さないスキン層が形成され、高空隙率が達成される高倍率延伸ほどスキン層は薄くなる。このため、延伸後の残留伸度が5〜50%まで延伸することが好ましく、残留伸度8〜40%がより好ましい。最も好ましくは、残留伸度10〜30%まで延伸することである。
延伸時の加熱方法は汎用の装置を用いればとくに限定されることないが、繊維の異形度が高く保つことが出来る点で、繊維の伸長方向以外の方向に外力がかからない加熱方法が好ましく、加熱ピン、加熱プレート、加熱液体や加熱気体を用いた装置あるいは炭酸ガスレーザー等に代表される分子振動の励起を利用した加熱手法などを採用することが好ましい。
また、延伸した後、Tga+10℃以上の温度で熱処理する方法が好ましい。延伸後に熱処理を施すことで発現した空隙の周りが熱固定され、耐熱性に優れた軽量繊維となる。ここで延伸後に施す熱処理の温度は、発現したボイドが潰れることの無いよう、ポリマAの融点より低い温度で施すことが重要である。
延伸後の熱処理方法は汎用の装置を用いればとくに限定されることないが、加熱効率の高い方式ほど繊維の構造が緩和されることなく固定され、空隙の耐久性の高い繊維が得られることから、加熱ピン、加熱ローラー、加熱プレート、加熱液体や加熱気体を用いた装置あるいは炭酸ガスレーザー等に代表される分子振動の励起を利用した加熱手法などを採用することが好ましい。
また、前述の紡糸糸は延伸を施さずに、あるいは延伸を施した後に仮撚加工されてもよい。仮撚加工において延伸糸を用いる場合には、接触型もしくは非接触型の方法により加熱され、ディスク状物、ベルト状物、あるいはピン状物によって仮撚加工される。未延伸糸を用いる場合には、同様に接触型もしくは非接触型のヒーターなどにより加熱した後もしくは加熱されることなく延伸を施しながら、施撚体(ディスク、ピン、ベルト)によって仮撚加工される。仮撚加工された異形断面繊維はそのまま巻き取ることが可能であるものの、再度熱セットされた後に巻き取られることが好ましい。
本発明の軽量性に優れた異形断面繊維はポリマAとポリマBが非相溶であるため相溶性が悪い場合がある。そこで相溶化剤を含有していることが好ましい。本発明における相溶化剤とは、ポリマBをポリマAにブレンドする際に界面における相互作用を変化させて両者の相溶性を高め、該ポリマBを微分散させる化合物である。該相溶化剤としては、低分子化合物あるいは高分子化合物など多種多様の化合物を採用することができ、例えば、低分子化合物としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやアルキルスルホネートナトリウム塩、グリセリンモノステアレート、テトラブチルホスホニウムパラアミノベンゼンスルホネートなどのアニオン系あるいはカチオン系の界面活性剤や両性界面活性剤、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリ(アルキレンオキシド)グリコールやエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体などの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
また、相溶化剤として挙げられる高分子化合物としては、ポリマA、およびポリマBのそれぞれに対し、相溶性あるいは親和性の高い高分子化合物を用いれば良く、例えば、ポリスチレン系ポリマ、ポリアクリレート系ポリマ、ポリメタクリレート系ポリマ、ポリ(ビニルアルコール−エチレン)コポリマー、ポリ(ビニルアルコール−プロピレン)コポリマー、ポリ(ビニルアルコール−スチレン)コポリマー、ポリ(酢酸ビニル−エチレン)コポリマー、ポリ(酢酸ビニル−プロピレン)コポリマー、ポリ(酢酸ビニル−スチレン)コポリマーといったビニル系のポリマあるいはコポリマー、アイオノマー、側鎖部分を化学修飾することにより耐熱性及び溶融可塑性を向上させた多糖類、ポリアルキレンオキシドあるいはポリ(アルキレンオキシド−エチレン)コポリマー、ポリ(アルキレンオキシド−プロピレン)コポリマーなどのアルキレンオキシドと各ビニル誘導体のコポリマー、あるいはポリアルキレンオキシドの誘導体、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールのコポリマー、アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールのコポリマー、アルキレンテレフタレートとポリアルキレンジオールとのコポリマー、などといったポリマ、コポリマーなどが挙げられる。それらの中でも、相溶化剤としての効果が大きく、本発明の繊維を形成した場合の糸物性が良好であるという点で、ポリスチレン系ポリマ、ポリアクリレート系ポリマ、ポリメタクリレート系ポリマ、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールのコポリマー、アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールのコポリマー、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール、アルキレンテレフタレートとポリアルキレンジオールとのコポリマー、またはこれらポリマの誘導体が好ましい。
以下に、好ましいと思われるアルキレンテレフタレートとポリアルキレンジオール、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールのコポリマー、アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールのコポリマー、あるいはポリ(アルキレンオキシド)グリコールまたはその誘導体について具体例を述べるが、言うまでもなく、本発明における相溶化剤がこれらに制限されるものではない。
アルキレンテレフタレートとポリアルキレンジオールとのコポリマーとしてはエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、ペンタメチレンテレフタレート、ヘキサメチレンテレフタレートなどから選ばれたアルキレンテレフタレートと、ポリエチレンジオール、ポリブチレンジオールなどから選ばれたポリアルキレンジオールとからなるコポリマーであり、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールをそれぞれ1種類ずつ用いても良く、あるいは複数種用いても良い。特に制限されるものではないものの、具体的には、ポリ(エチレンテレフタレート−ポリエチレンジオール)コポリマー、ポリ(プロピレンテレフタレート−ポリエチレンジオール)コポリマー、ポリ(ブチレンテレフタレート−ポリブチレンジオール)コポリマーなどを挙げることができる。
アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールのコポリマーとしてはエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、ペンタメチレンテレフタレート、ヘキサメチレンテレフタレートなどから選ばれたアルキレンテレフタレートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(あるいはテトラメチレングリコール)、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールから選ばれたアルキレングリコールとからなるコポリマーであり、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールをそれぞれ1種類ずつ用いても良く、あるいは複数種用いても良い。特に制限されるものではないものの、具体的には、ポリエチレンテレフタレート−ブチレグリコールコポリマー、ポリプロピレンテレフタレート−エチレングリコールコポリマー、ポリブチレンテレフタレート−テトラメチレングリコールコポリマーなどを挙げることができる。
アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールのコポリマーとしてはエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、ペンタメチレンテレフタレート、ヘキサメチレンテレフタレートなどから選ばれたアルキレンテレフタレートと、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ジプロピレングリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体からなるポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)グリコール、などから選ばれたポリ(アルキレンオキシド)グリコールとからなるコポリマーであり、アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールをそれぞれ1種類ずつ用いても良く、あるいは複数種用いても良い。特に制限されるものではないものの、具体的には、ポリエチレンテレフタレート−ジエチレングリコールコポリマー、ポリエチレンテレフタレート−ポリ(エチレンオキシド)グリコールコポリマー、ポリブチレングリコール−ポリ(エチレンオキシド)グリコールコポリマー、ポリプロピレンテレフタレート−ポリ(エチレンオキシド)グリコールコポリマーなどを挙げることができる。
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールまたはその誘導体の主たる化学構造としては、脂肪族、芳香族、脂環族などの炭素が主鎖をなしている基(もしくはグループ)と酸素原子が交互に結合しているような繰り返し構造を有しているものであれば良く、例えば下記一般式(1)で表されるような単一アルキレンオキシドを繰り返し単位としたポリ(アルキレンオキシド)グリコールを用いることができる。
−[(CH−O] − ・・・(1)
(1)式を満足するものとしては、例えば、ポリ(エチレンオキシド)グリコール(a=2)、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール(a=3)、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(a=4)、などのポリ(アルキレンオキシド)グリコールが挙げられる。
また、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、たとえば下記一般式(2)で表されるような、異なったアルキレンオキシドの交互、ランダム、あるいはブロック共重合体でも良い。
−{[(CH−O] −[(CH−O]−・・・(2)
(2)式を満足するものとして、たとえばポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)共重合体(a=2または3、b=2または3、またaとbは同じであっても異なっても良い。)、ポリ(オキシテトラメチレン−オキシエチレン−オキシプロピレン)共重合体(a=1または2または3、b=1または2または3、またaとbは同じであっても異なっても良い。)などのように、異なったアルキレンオキシドの共重合体などが挙げられる。
さらに、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、上記一般式(1)あるいは(2)で表されるポリアルキレンオキシドを、1種単独であっても良いし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせたものを用いても良い。
本発明の繊維における相溶化剤の含有量としては、相溶化がより効果的に発現し、得られる繊維の繊維物性が優れたものとなるという点で、相溶化剤の含有量は、繊維総重量に対し0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。また多量に添加すると、ポリマAとポリマBの界面親和性が高くなりすぎて空隙生成性が悪化する懸念があるため、50重量%以下であることが好ましく、30重量%であることがより好ましい。
相溶化剤の添加方法としては、溶融紡糸が完結する以前の任意の段階でポリマAとポリマBのブレンド組成物に添加される方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、(A)通常のポリマAの重合反応において、重合反応が停止する以前の任意の段階で添加して溶融混練する方法、(B)あらかじめ調製したポリマAとポリマBとをブレンドした組成物に相溶化剤を添加しエクストルーダやスタティックミキサーといった混練機により常圧もしくは減圧下で溶融混練する方法、(C)溶融紡糸時にエクストルーダやスタティックミキサーといった混練機に相溶化剤、ポリマAとポリマBとを同時に規定量添加して、常圧もしくは減圧下で溶融混練する方法、などが挙げられ、特に制限されるものではないが、操業性の面で前述の(B)または(C)の方法が好適に採用される。

以下実施例により、本発明を具体的かつより詳細に説明するが、当然ながら以下の実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の物性値は以下の方法によって測定した。
A.固有粘度(IV)の測定
試料をオルソクロロフェノール溶液に溶解し、温度25℃にてオストワルド粘度計を用いて複数点の相対粘度ηrを求め、それを無限希釈度に外挿して求めた。
B.臨界表面張力の測定
ポリマAあるいはポリマBからなる厚み50μm以上のフィルムにおいて、純水72.8dyne/cm,エチルアルコール(特級以上)22.3dyne/cm,ジオキサン33.6dyne/cm,ベンゼン28.9dyne/cm,ヘキサン18.4dyne/cm,20%アンモニア水59.3dyne/cm,ニトロベンゼン43.4dyne/cmの表面張力を有する有機溶媒もしくは水溶液のすべての液体を用いて、20℃、湿度40〜80%、水平静置の条件下、固体上に液滴を置いて液滴が静止したときに、液滴が接している固体平面と液滴が空気層と接している液滴表面とがなす角度を接触角θとして測定し、用いた液体の表面張力に対しcosθをプロットし(Zismanプロット)、完全に濡れる、すなわちcosθ=1となるときの表面張力をプロットした点について外挿することで臨界表面張力γcを求めた。
C.ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)の測定
パーキンエルマー社製示差走査熱量分析装置(DSC−2)を用いて試料10mgで、昇温速度16℃/分で測定した。Tm、Tgの定義は、一旦昇温速度16℃/分で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、Tm+20℃の温度で5分間保持した後、室温まで急冷し、(急冷時間および室温保持時間を合わせて5分間保持)、再度16℃/分の昇温条件で測定した際に、段状の基線のずれとして観測される吸熱ピーク温度をTgとし、結晶の融解温度として観測される吸熱ピーク温度をTmとした。
D.色度b*の測定
マルチフィラメントの繊度が100dtexとなるよう得られた延伸糸を合糸もしくは分繊し、該マルチフィラメントを用いて、ゲージ巾が20/2.54センチ、ピッチ長が1mmである筒編を作製し、8枚重ねとした布帛のb*をミノルタカメラ(株)製色彩色差計MINOLTA CR−200を用いて測定した。各試料において一つの測定箇所につき3回、測定個所を違えて3回測定した結果を平均してその試料のb*とした。
E.繊維強度、残留伸度の測定の設定
オリエンテック社製テンシロン引張試験機(TENSIRON UCT−100)を用い、未延伸糸であれば初期試料長50mm、引張速度400mm/分で、延伸糸であれば初期試料長200mm、引張速度200mm/分でそれぞれ繊維強度および残留伸度を測定し、5回測定した平均値をそれぞれの測定値とした。
F.繊維、およびポリマの見かけ比重測定および空隙率の算出
(a)繊維の見かけ比重は、JIS−L−1013:1999 8.17.1(日本規格協会発行、化学繊維フィラメント糸試験方法)に定められた浮沈法に基づき、20℃±0.1℃の温度下、繊維の見かけ比重が1以上であればNaBr水溶液を用いて、繊維の見かけ比重が1〜0.789の間であれば重液に水を軽液にエチルアルコールを用いた混合液体にて、繊維の見かけ比重が0.789〜0.659の間であれば重液にエチルアルコールを軽液にn−ヘキサンを用いた混合液体にて、それぞれ繊維を30分放置した後の浮沈平衡状態を確認し、前述8.17.1項記載の通り、浮かびも沈みもしない混合液体の比重値を測定し、繊維5本を測定した比重値の平均値を測定比重値(Q)とした。
(b)繊維の見かけ比重が0.659未満の場合
本発明の繊維のみからなる100g±10gのD.に記載の方法により作成した筒編布帛を用いて事前に重量を測定し、またあらかじめ重量および体積の分かったおもりを筒編みした布帛に固定し、4℃±1℃に調製したイオン交換水に沈めて5分間の超音波による脱泡を行った後、筒編みの体積を測定し、10枚測定した布帛の比重値の平均値を測定比重値(Q)とした。
また繊維の空隙率の算出には、以下の式を用いた。
空隙率(%)=100(1−Q/R)、
R=100/(S/V+S/V+(100−S−S)/V)、
ただし、
:ポリマBの添加量(重量%)、
:相溶化剤の添加量(重量%)、
:ポリマBの密度(g/cm)、
:相溶化剤の密度(g/cm)、
:ポリマAの密度(g/cm
密度についてはJIS−L−1013に定められた密度勾配管法に基づいて測定した値を用い、例えばポリマAがポリエチレンテレフタレートである場合については、未延伸糸であれば1.34を、延伸糸であれば1.38を用い、例えばポリマAがナイロン6である場合には、未延伸糸であれば1.130を、延伸糸であれば1.138を用いた。
R:空隙のない場合の軽量性に優れた異形断面繊維の見かけ比重
G.異形度の算出
繊維をエポキシ樹脂中に包埋したブロックに必要に応じて金属染色を施し、ウルトラミクロトームにて繊維軸と垂直方向に切削して単繊維横断面出しを行った包埋ブロックを作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)、観察装置(日立製作所製 FE−SEM S−800型)にて、加速電圧6kVで、倍率1000〜20000倍の任意の倍率で横断面観察を行い、得られた写真をデジタル化した。該断面写真において上述した条件で単繊維横断面における外接円の直径D1と、内接円の直径D2の比(D1/D2)を算出し、異形度とした。
H.ポリマBの非相溶性、直径の平均値、不連続性の確認
繊維をエポキシ樹脂中に包埋したブロックに必要に応じて金属染色を施し、ウルトラミクロトームにて繊維軸と垂直方向に切削して単繊維横断面の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)、観察装置(日立製作所製 H−7100FA型)にて、加速電圧75kVで、倍率5000〜1000000倍の任意の倍率で横断面観察を行い、得られた写真をデジタル化した。該断面写真をコンピュータソフトウェアの三谷商事社製WinROOF(バージョン2.3)において画像解析することによってポリマBの非相溶性、不連続性について確認した。非相溶性については横断面写真上に存在する全てのポリマBの面積をそれぞれ計算し、該面積値から略円形と判断して計算したポリマBの直径の平均値によって評価した。更にポリマBの不連続性については、単繊維直径の少なくとも10000倍の任意の間隔で横断面写真を10箇所撮影し、ポリマBの直径の平均値、および分布が切断面箇所によって異なる場合に不連続であると判定した。不連続である場合を○、連続もしくはポリマBが存在しない場合を×として評価した。
I.空隙の数、径、不連続性の確認。
試料台に貼り付けたカーボンテープ上に単繊維を設置し、白金蒸着処理(蒸着膜圧:25〜50オングストローム 処理時間:約120秒)を行った後、収束イオンビーム(FIB)切削加工−走査型電子顕微鏡(SEM)観察装置(FEI社製 STRATADB235)にて、加速電圧30kVで加速したGa収束イオンビームにより、粗切削加工(電流:約7000pA 処理時間:約20分)、および精密切削加工(電流:約3000pA 処理時間:約4分)の2工程で、真空度1.4×10−13Paの雰囲気中において、単繊維横断面観察を行う際は試料を繊維軸方向に対して垂直に切削し、単繊維縦断面観察を行う場合には試料を繊維軸方向に対して平行に単繊維直径の5倍以上の長さで切削した。切削加工を施した後、該装置が所持する走査型電子顕微鏡を用い、真空度1.4×10−19Paの雰囲気中において、試料傾斜52度、加速電圧5kVの条件で、倍率80000倍で単繊維横断面、および単繊維縦断面の観察を行った。このとき該倍率で繊維横断面、および縦断面の全体像が撮影できない場合は、それぞれの位置で部分写真を撮影し、画像ソフトを用いて張り合わせることで全体像を得た。まず単繊維横断面写真について、コンピュータソフトウェアの三谷商事社製WinROOF(バージョン2.3)を用い、画像解析することによって繊維横断面全体に存在する空隙の数、空隙の直径の平均値について算出した。空隙の直径の平均値については各横断面写真上に存在する全ての空隙の面積からそれぞれの空隙を略円形と判断して円相当径算出し、該円相当径の総和を空隙の総数で割返すことにより直径の平均値とした。
さらに異形断面繊維の外接円と内接円に包括される領域に存在する空隙の平均直径d1と、内接円に包括される領域に存在する空隙の平均直径d2を上述の画像解析手法により算出し、d2/d1の値を求めた。また外接円と内接円に包括される領域に存在する空隙が存在しない場合、傾斜構造を持たないと判断し×と記載した。
なお横断面写真は試料傾斜52度で観察された写真であるため、外接円、内接円、および直径がD3の円は長軸が直径であり、短軸が0.79×直径である楕円となる。
更に空隙の不連続性については、上記横断面観察を、直径の1000倍以上の任意の間隔で10回行い、各断面における空隙の数が一致しないこと、さらに縦断面観察において繊維軸方向に途切れている空隙が少なくとも一つは存在することが確認できた場合、空隙が不連続であると判断した。繊維軸方向に不連続な空隙を有する場合は○、空隙が連続もしくは空隙を有さない場合は×として評価した。
J.延伸性の評価
延伸工程における延伸性について、1kgの未延伸糸を延伸したときに、単糸切れが起こり単糸が延伸ローラーに巻き付く回数で評価し、延伸不可能な場合もしくは20回以上単糸が巻き付く場合を×(不可)、単糸が巻き付く回数が10回以上19回以下を△(劣る)、単糸が巻き付く回数が4回以上9回以下を○(良好)、単糸が巻き付く回数が3回以下を二重丸(優れる)と評価した。
K.繊維構造物の風合い評価
D.において作製した筒編みを用いて、下記5項目について熟練者10人により各項目に5点満点で点数を加算する方法にて官能評価を行った。それぞれのサンプルについて各項目の得点(最低:0点、最高:50点)から評価を行い、0〜19点の場合に××(不良)、20〜29点の場合に×(劣る)、30〜39点の場合に△(可)、40〜44点の場合に○(良好)45〜50点の場合に二重丸(優れる)とした。
官能評価項目
i. 光沢感
ii. 軽量感
iii.タッチ感
L.マレイミド構造の同定
BIO−RAD製FT−IR測定装置FTS−40を用いて、透過光強度を測定し、1184cm−1(C−N結合に由来するピーク)付近、1384cm−1(5員環構造に由来するピーク)付近、及び1710cm−1(マレイミドのC=Oに由来するピーク)付近のそれぞれに全てピークを有することを確認した場合に、マレイミド構造を有すると判断した。
M.屈折率の測定
チップ状ポリマを用いて融点+30℃の温度で圧縮熱プレス成形し、即座に水冷して無配向非晶性フィルムを得た。該フィルムのD線(587.6nm)、25℃における屈折率を、アッベの屈折率計により測定した。
実施例1
テレフタル酸166重量部とエチレングリコール75重量部からの通常のエステル化反応によって得た低重合体に、着色防止剤としてリン酸85%水溶液を0.03重量部、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.06重量部、調色剤として酢酸コバルト4水塩を0.06重量部添加して重縮合反応を行い、通常用いられるIV0.70のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリエステルをポリマAとし、ポリマBとして、三井化学(株)製ポリメチルペンテン(TPX、タイプRT18、以下同製品を用いた。以下PMPと略記する)を得られるブレンド異形断面繊維総重量に対して8重量%となるようにチップ状態のままドライブレンドしたものをホッパーに充填し、2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて、口金孔が図2で示す断面形状であり、スリット長0.5mm、スリット幅0.08mm、孔深度0.4mm、孔数が24である口金を用い、紡糸温度290℃で溶融紡糸を行うに際し、口金から吐出されたポリマを冷却風にて冷却した後、1200m/分の引き取り速度で引き取って、断面形状が3葉型のブレンド異形断面繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は良好であった。
得られたポリエステル繊維について延伸を行うに際し、送糸ローラーの送糸速度100m/分とし、第1ローラーと第2ローラー間で延伸を行うために熱源として100℃のホットプレートを用いて、延伸倍率5.0倍で延伸し、第2ローラーを150℃で熱処理した後、冷ローラーで糸をポリエステルのTg以下に冷却した後に巻き取り、50dtex−24フィラメントの軽量性に優れた異形断面繊維を得た。延伸中に糸切れは発生せず、延伸性は優れていた。
得られた延伸糸の断面形状は3葉型であり異形度は1.50であった。またd2/d1が2.3であり、繊維内部に空隙の傾斜構造が形成されていた。得られた繊維の筒編みは、天然シルク調の光沢を呈するものであり、タッチ感、軽量感、嵩高感といった風合いが良好であり、かつ繊維内部に微細空隙を多数有することで軽量性にも優れる繊維であった。そしてこの繊維は屈曲あるいは摩耗させても光沢が変化せず、光沢の耐久性の高い繊維であった。実施例1の結果を表1に示す。
実施例2〜6、比較例1
実施例1において、異形度の異なる繊維を得るように、口金スペックを変更した以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸、延伸を行った。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は良好であった。
得られた延伸糸の単繊維横断面形状は、3葉型であり、異形度は実施例2は1.20、実施例3は1.30、実施例4は1.40であり、実施例5は1.80であり、実施例6は2.00であり、比較例1は1.10であった。表1に示すように、本発明の繊維において異形度の大きい異形断面を採用することによりd2/d1が大きく、かつ空隙の数が多くなり、繊維の光沢感、軽量性に優れた繊維となった。また、表2に示すように異形度が1.20未満の異形断面では、d2/d1が小さく、空隙の数も少ないため、実施例と比較して光沢感に劣るものとなった。実施例2〜6の繊維は屈曲あるいは摩耗させても光沢は変化せず、光沢の耐久性の高い繊維であった。実施例2〜6結果を表1に、比較例1の結果を表2に示す。
比較例2
口金として孔径が0.3mm、孔深度が0.4mm、孔数が24の丸孔口金を用いた以外は、実施例1と同様の手法により溶融紡糸、延伸を行った。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は良好であったことに加え、延伸性についても良好であった。得られた延伸糸の繊維強度などの繊維物性は良好であり、比重が0.98と軽量性に非常に優れる繊維であった。得られた繊維は丸形断面であり異形度1.0であった。通常の丸形繊維にはない光沢を有する繊維であったが、実施例と比較すると単調な光沢でありプラスチック的な感じがあった。得られた延伸糸中には繊維表層部から繊維中央部に向かって空隙の大きさが段階的に大きくなる傾斜構造となっていた。比較例2の結果を表1に示す。
比較例3
実施例1において、ポリマBを添加せず、ポリエステルのみを用いた以外は、実施例1と同様の方法で溶融紡糸、延伸を行い50dtex−24フィラメントの、断面形状が3葉型のポリエステルマルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は良好であり、延伸中に糸切れは発生せず、延伸性は優れていた。得られた延伸糸の単繊維横断面形状は3葉型であり、異形度は1.5であった。また得られた繊維の筒編みは、タッチ感の良好な繊維であったものの、繊維内部に微細空隙が形成されおらず、空隙の傾斜構造もないことで、実施例と比較して繊維は単調で冷たい感じのある光沢を有していた。そしてこの繊維を屈曲あるいは摩耗させると光沢は変化してテカリが生じて実使用における光沢の耐久性が低い繊維であった。さらに比重は1.38であり軽量性についても劣っていた。比較例3の結果を表2に示す。
比較例4
特許文献2の技術を参考に、平均粒径が0.6ミクロンのアナターゼ型酸化チタンを1重量%含有させたIV0.67のポリエステルと、5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%共重合した変成ポリエステルを、比率80:20でドライブレンドしたチップを用い、実施例1と同様にして溶融紡糸、延伸を行い62.5dtex−24フィラメントの延伸糸を得た。紡糸中に糸切れが頻発し、製糸性は実施例と比較して劣っており、また延伸中にも断糸が頻発した。
得られた延伸糸を筒編み地として、水酸化ナトリウム3重量%の水溶液を用いて、98℃の条件で、減量率が20%となるまで減量処理をおこない、50dtex−24フィラメントの延伸糸筒編み地を得た。
得られた繊維は繊維横断面が3葉型であり異形度は1.5であった。そして繊維表面にはミクロな凹凸および、筋状溝が形成されていたことから、特許文献2の技術を忠実に追試できたものと考えられるものであった。この繊維は確かにタッチ感の優れる繊維であったものの、実施例と比較してギラツキがあり、品位の劣る繊維であった。また表面にミクロな凹凸はあるものの、繊維内部は中実な繊維で空隙の傾斜構造を有さない繊維であった。このため軽量性も実施例と比較して劣っているだけでなく、繊維を屈曲あるいは摩耗させると光沢が変化してしまい比較例3と同等の光沢を呈するようになった。この繊維の断面を観察したところ、ミクロな凹凸、筋状溝はは消失してしまっていた。比較例4の結果を表2に示す。
比較例5
2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて溶融紡糸を行う際に、参考例で得られたポリエステルを複合紡糸における海成分として用い、またイソフタル酸を20モル%、イソフタル酸のスルホン酸ナトリウム塩誘導体を15モル%それぞれ共重合した熱水可溶性の共重合ポリエチレンテレフタレート(以下、熱水可溶PETと略す)を複合紡糸における島成分として用い、吐出口金孔が図2で示す断面形状であり、孔数が24個の口金を用いて、海:島=70:30となりかつ島数が16となるように海島複合紡糸を行った以外は、実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行い、72dtex−24フィラメントの断面形状が3葉型のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れが頻発し、製糸性は実施例と比較して劣っていたことに加え、延伸中にも断糸が頻発した。
得られた延伸糸を筒編み地として90℃の熱水中に60分間浸漬して島の熱水可溶PETを完全に除去したのち各単繊維につき繊維軸方向に連続した16個の中空部を有する3葉型の中空異形断面繊維を得た。得られた中空繊維は、比重1.02と軽量性が良好であったものの、繊維軸方向に中空部が連続的であるためギラギラとした嫌味のある光沢を有するものであり、実施例は明らかに異質なものであった。得られた繊維の異形度は1.5と高い異形度を示したが、d2/d1が1であり、繊維内部に空隙の傾斜構造は有さない繊維であった。比較例5の結果を表2に示す。
比較例6
ポリマBとして、電気化学工業(株)製スチレンマレイミド共重合体(MSN、平均分子量約11万、比重1.18g/cc、臨界表面張力約39dyne/cm、以下MSNと略記する)を得られるブレンド異形断面繊維総重量に対して10重量%添加した以外は、実施例1と同様の方法で溶融紡糸、延伸を行った。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は良好であったが、延伸時に単糸切れが頻発し、延伸性は実施例と比較して劣っていた。
得られた延伸糸の単繊維横断面形状は明瞭に3葉型と認識出来るものであったが、ギラギラとした光沢を有する繊維であり、繊維は黄味を帯びており色度b*が高く低品位な繊維であった。実施例Iの手法による横断面観察から空隙が繊維中央部に局在化しており、繊維表層部には空隙は確認されず、空隙の傾斜構造は有さない繊維であった。また軽量性にも劣った繊維しか得ることが出来ず、繊維強度も実施例に比較して低いものであった。比較例6の結果を表2に示す。
Figure 2006161218
Figure 2006161218
実施例7
口金として扁平断面繊維を形成しうる口金を用いた以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸、延伸を行った。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は良好であった。
得られた延伸糸の単繊維横断面形状は扁平型で異形度が3.0であり、d2/d1は1.5であった。この繊維は扁平繊維特有のギラツキ感は全くなく、シルキーな光沢を有するものであり、軽量性に優れ、遮光素材として有用な繊維であった。しかしながら実施例1と比較すると、光沢感、タッチ感、嵩高感といった点で一歩譲るものであった。すなわち本発明の軽量性に優れた異形断面繊維において単繊維横断面形状を多葉型異形断面とすることで、d2/d1の大きな傾斜構造が発現し、繊維の光沢感、タッチ感、軽量性にも優れた繊維となった。実施例7の結果を表3に示す。
実施例8
実施例1において、使用する溶融紡糸機として通常のプレッシャーメルター型溶融紡糸機を用い、紡糸口金から吐出されるまでのポリマ流路内で混練されるように供したこと(ポリマ流路内にミキサー等は配設していない)以外は、実施例1と同様の条件で溶融紡糸を行い、延伸を行った。
得られた延伸糸の単繊維横断面は3葉型断面であり、異形度は1.5であった。得られた繊維の筒編みは、シルク調のマイルドな光沢を有し高級感のある繊維であり、軽量性の良好な繊維であった。しかし、繊維の光沢感、タッチ感、軽量性について、全て実施例1には一歩譲るものであった。この繊維中のポリマBの直径の平均値は1μmを越えるものであった。すなわち、本発明の軽量性に優れた異形断面繊維において、ポリマBを微分散化させることにより空隙の数が多く、傾斜傾向の大きい繊維となり、光沢感、タッチ感、軽量性に優れるものとなった。実施例8の結果を表3に示す。
実施例9
実施例1においてポリマBとして、JSR(株)製ノルボルネン系樹脂アートン(グレードF5023 比重1.08g/cc、臨界表面張力約31dyne/cm、Tg166℃、以下アートンと略記する)を得られるブレンド異形断面繊維総重量に対して5重量%添加し、吐出量を調整し、延伸倍率を5.3倍とした以外は、実施例1と同様の方法で溶融紡糸、延伸を行って50dtex−24フィラメントの延伸糸を得た。延伸中に糸切れは発生せず、延伸性は非常に優れていた。
得られた延伸糸の繊維横断面は3葉型と認識出来るものであり、異形度は1.5であった。得られた繊維の筒編みは、シルク調のマイルドな光沢を有し極めて高級感のある繊維であり、ドライ感、キシミ感、シャリ感、嵩高感といった風合いにも優れていた。またd2/d1は3.5であり繊維内部に高度に発達した空隙の傾斜構造を有していた。このように本発明においてポリマBとしてポリマAよりもTgの高いポリマを採用することで、d2/d1の大きな傾斜構造を形成せしめることができ、より光沢感に優れる繊維となった。また同時に軽量性にも優れるものとなった。繊維は屈曲あるいは摩耗させても光沢が変化せず、光沢の耐久性の高い繊維であった。実施例9の結果を表3に示す。
実施例10
実施例9において、ポリマBとして旭化成(株)製ポリスチレン樹脂スタイロン(グレード8259 比重1.05g/cc、臨界表面張力約39dyne/cm、Tg100℃、以下PSと略記する)を用いた以外は実施例7と同様の方法で溶融紡糸、延伸を行って50dtex−24フィラメントの延伸糸を得た。延伸中に糸切れは発生せず、延伸性は良好であった。
得られた延伸糸の繊維横断面は3葉型と認識出来るものであり、異形度は1.5であった。得られた繊維の筒編みは、シルク調の光沢を有し、高級感のある繊維であった。しかし、実施例9と比較するとやや光沢が強く光沢感の点では実施例9にやや見劣りする感があった。d2/d1は2.0であり繊維内部に高度に発達した空隙の傾斜構造を有していた。このように本発明においてポリマBとしてよりTgが高いことで、d2/d1の大きな傾斜構造を形成せしめることができ、また屈折率が小さいポリマを採用することで、より光沢感に優れる繊維となった。この繊維は屈曲あるいは摩耗させても光沢が変化せず、光沢の耐久性の高い繊維であった。実施例10の結果を表3に示す。
実施例11
実施例1において、相溶化剤としてエチレンテレフタレートとポリ(エチレンオキシド)グリコールとの共重合体(以下PET−PEG;ポリ(エチレンオキシド)グリコール成分が10%共重合されたもの)を用い、ポリエステルとPMPとPET−PEGの重量比が72:8:20でドライブレンドしたものをホッパーに充填し、吐出量を調整した以外は実施例1と同様にして溶融糸を行い、5.3倍で延伸し、50dtex−24フィラメントの延伸糸を得た。得られた繊維の繊維物性、および製糸性、延伸性は非常に優れていた。
得られた延伸糸の繊維横断面形は3葉型と認識出来るものであり、異形度は1.5であった。得られた繊維の筒編みは、シルク調のマイルドな光沢を有し極めて高級感のある繊維であり、特にキシミ感、シャリ感、といった風合いに優れていた。またd2/d1は3.3であり繊維内部に空隙は傾斜的に分布していた。すなわち相溶化剤を含有することで、実施例1と比較して繊維中でポリマBが微分散することで、d2/d1の大きい傾斜構造となり、繊維の光沢感やタッチ感、嵩高感がさらに優れる繊維となった。そして比重も0.75と軽量性にも優れた繊維であった。この繊維は屈曲あるいは摩耗させても光沢が変化せず、光沢の耐久性の高い繊維であった。実施例11の結果を表3に示す。
実施例12
実施例11においてポリマBとして(株)グランドポリマー製ポリプロピレン(グレードJ108M、以下PPと略記する)を用い、ポリエステルとPPとPET−PEGの重量比が65:15:20となるようにドライブレンドしたものをホッパーに充填した以外は、実施例11と同様の方法で溶融紡糸および延伸を行った。また、製糸性および延伸性は良好であった。
得られた延伸糸の単繊維横断面形状は3葉型断面であり、異形度は1.5であった。得られた繊維の筒編みは、得られた繊維の筒編みは、シルク調のマイルドな光沢を有する高級感のある繊維であった。d2/d1は3.4であり繊維内部に空隙は傾斜的に分布していた。ドライ感、キシミ感、シャリ感といったタッチ感を有し、かつ比重も0.84と小さく軽量性に優れた繊維であった。この繊維は屈曲あるいは摩耗させても光沢が変化せず、光沢の耐久性の高い繊維であった。実施例12の結果を表3に示す。
Figure 2006161218
実施例13〜16
実施例1において、ポリマAとして実施例10ではPMPを用い、実施例11では東レ(株)製ナイロン6アミラン(タイプCM1017、以下ナイロン6と略記する)を用い、実施例15では下記(i)手法により重合したポリトリメチレンテレフタレート(以下PTTと略記する)を用い、実施例16では下記(ii)の手法により合成したポリ乳酸(以下PLAと略記する)を用い、それぞれポリマBとしてJSR(株)製ノルボルネン系樹脂(ARTON グレードFX4727 比重1.08g/cc、臨界表面張力約31dyne/cm、Tg120℃、以下FX4727と略記する)を用い、紡糸温度を270℃とし、実施例13、14ではホットプレートを用いずに冷延伸し、実施例15、16ではホットプレートの温度を80℃として延伸した以外は実施例1と同様条件で溶融紡糸、延伸を行い50dtex−24フィラメントの延伸糸を得た。製糸性、延伸性は優れていた。
得られた延伸糸の単繊維横断面形状は3葉型で、異形度は1.5であった。得られた繊維の筒編みは、シルク調のマイルドな光沢を有する高級感のある繊維であり、ドライなタッチ感を有していた。これらの繊維は屈曲あるいは摩耗させても光沢が変化せず、光沢の耐久性の高い繊維であった。実施例13〜16の結果を表4に示す。
(i)PTTの重合
テレフタル酸ジメチル130部(6.7モル部)、1,3−プロパンジオール114部(15モル部)、酢酸カルシウム1水和塩0.24部(0.014モル部)、酢酸リチウム2水和塩0.1部(0.01モル部)を仕込んでメタノールを留去しながらエステル交換反応を行うことにより得た低重合体に、トリメチルホスフェート0.065部とチタンテトラブトキシド0.134部を添加して、1,3−プロパンジオールを留去しながら、重縮合反応を行い、チップ状のプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを、さらに220℃、窒素気流下で固相重合を行い、IV1.12のPTTを得た。
(ii)PLAの重合
L−ラクチド300重量部に触媒としてオクチル酸スズを0.005重量部添加し、窒素置換を行った後、170℃で反応させて、重量平均分子量15.3万のPLAを得た。
Figure 2006161218
実施例17〜21
実施例9において、5葉型断面を形成する口金を用い、アートンの含有量を種々変更し、吐出量を調整した以外は実施例9と同様にして溶融紡糸を行い、5.3倍でそれぞれ延伸を行い、50dtex−24フィラメントの延伸糸を得た。
Figure 2006161218
表3から明らかなように、実施例17、21よりも実施例18〜20の方が繊維の光沢感、タッチ感、軽量感、に優れた繊維となった。実施例17、21と比較して、実施例18〜20は空隙の数が多く、d2/d1が大きい繊維であった。すなわちポリマBの含有量を適切な量とせしめることで、得られる延伸糸はより光沢感、タッチ感、軽量感の優れるものとなった。
実施例22〜26
実施例11において、8葉型断面を形成する口金を用い、PMPの含有量を5重量%とし、相溶化剤のPET−PEGを種々変更して、それぞれ含有せしめた以外は実施例11と同様にして溶融紡糸を行い、5.0倍でそれぞれ延伸を行った。表6から明らかなように、実施例22、26よりも実施例23〜25の方が繊維の光沢感、タッチ感、軽量感、に優れた繊維となった。実施例22、26比較して、実施例23〜25は空隙の数が多く、d2/d1が大きい繊維であった。すなわち相溶化剤の含有量を適切な量とすることで、得られる延伸糸はより光沢感、タッチ感、軽量感の優れるものとなった。
Figure 2006161218
天然シルクに極めて近い高級感のある光沢やタッチを有するだけでなく、軽量性、嵩高性、白色性、遮光性、保温性が良好で、さらに微細空隙の耐久性に優れているおり、適度な張り・腰も有するため、特にスーツ、ドレスなどのフォーマル衣料や、裏地、下着、水着、スポーツ衣料(ゴルフウエア、ゲートボール、野球、テニス、サッカー、卓球、バレーボール、バスケットボール、ラグビー、アメリカンフットボール、ホッケー、陸上競技、トライアスロン、スピードスケート、アイスホッケー等のウェア)、アウトドア衣料(靴、鞄、サポーター、靴下、登山着)、白衣等のユニフォーム衣料、などの衣料用途に好適であり、ハンカチ、スカーフ、ネクタイなどの装飾品用途、各種車両内装材や、カーペットやカーテンなどの産資用途にも好適に用いられる。
本発明における異形度を算出する手法を示す説明図である。 本発明における異形断面繊維(3葉型断面)を得ることが出来る口金孔形状の一例を示す説明図である。 本発明における異形断面繊維(5葉型断面)を得ることが出来る口金孔形状の一例を示す説明図である。 本発明における異形断面繊維(8葉型断面)を得ることが出来る口金孔形状の一例を示す説明図である。
符号の説明
1:外接円
2:内接円
3:外接円と内接円との間に包含される領域
4:内接円の内側に包含される領域
D1:外接円の直径
D2:内接円の直径
X:スリット長
Y:スリット幅

Claims (12)

  1. ポリマAおよびポリマBの互いに非相溶である2成分がブレンドされてなる繊維であって、繊維横断面が異形度1.20以上の異形断面であり、繊維内部に繊維軸方向に不連続である微細空隙を多数有し、かつ繊維横断面において、外接円と内接円との間に包含される微細空隙の平均直径d1と、内接円の内側に包含される微細空隙の平均直径d2が下式を満足することを特徴とする軽量性に優れた異形断面繊維。
    d2/d1≧1.30
    繊維の見かけ比重≦ポリマAの比重×0.9
  2. 繊維横断面内に存在する微細空隙が300個以上であることを特徴とする請求項1記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  3. 繊維の色度b*値が5以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  4. ポリマBの屈折率が1.55以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  5. ポリマBが環状構造を有するポリオレフィン系ポリマであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  6. ポリマAがポリエステル系ポリマ、ポリアミド系ポリマ、ポリオレフィン系ポリマから選ばれるポリマであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  7. ポリマAの主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、乳酸の中から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなるポリエステルであることを特徴とする請求項6記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  8. ポリマAのガラス転移温度TgAと、ポリマBのガラス転移温度TgBの関係がTgB−TgA≧5℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  9. ポリマAの臨界表面張力γcAとポリマBの臨界表面張力γcBの関係がγcA−γcB≧5dyne/cmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  10. ポリマBの含有量が繊維総重量に対して1重量%以上30重量%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  11. 繊維強度が2.5cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の軽量性に優れた異形断面繊維。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項記載の軽量性に優れた異形断面繊維を一部または全部に用いたことを特徴とするシルキー光沢を有する繊維製品。
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